説明

配管加熱用被覆体

【課題】 装着及び取外しが容易で、外部環境の汚染のおそれも無い配管加熱用被覆体を提供する。
【解決手段】 配管用の貫通孔を有し、少なくとも2分割してなり、かつ、少なくとも一方の外周面に長手方向に延びる凹溝を備える囲繞体と、囲繞体の半周よりも長い円弧状の帯状板で、一方の端部に切欠を形成してなる延出部が形成された第1の嵌合板と、第1の勘合板と相互に係合し合う切欠及び延出部が形成された第2の嵌合板とを蝶番により開閉自在に連結してなる嵌合部材とから構成され、嵌合部材は、蝶番を囲繞体の凹溝に収容し、かつ、第1の嵌合板の延出部が第2の嵌合板の切欠に収容されるように囲繞体に装着される配管加熱用被覆体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスや液体等の流体を加熱しながら配管内を流通させるために、該配管に装着される配管加熱用被覆体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置や設備において、1/4“管、3/8”管、1/2“管等のガス配管では、内部を流通する反応性のガスや液体が凝集して目詰まりを起こすことがあり、その対策として配管を加熱して所定の温度に保持することが行われている。また、加熱したガスや液体を高温状態を維持して流通するためにも、配管を加熱することが行われている。
【0003】
配管の加熱方法として、配管を均一に加熱するために、円筒状のアルミブロックのような金属製の囲繞体を配管に装着し、この囲繞体を加熱して間接的に配管を加熱する方法が一般に採られている。このような加熱に使用される配管加熱用被覆体として、半筒状のアルミブロック等の囲繞体を配管に被嵌し、囲繞体同士をねじ止めして配管に保持する構成のものが知られている。しかし、この配管加熱用被覆体では、ねじ穴にはある程度の位置精度が要求されるため囲繞体の加工コストが高くなり、また、複数箇所をねじ止めしなければならず作業に手間取り、しかも狭いスペースでのねじ止め作業が困難になる。更には、ねじ止めによる締付け具合によっては、囲繞体の内壁が配管と均等に接触せず、ある程度の習熟も必要である。
【0004】
また、円筒を複数分割し、外周面に軸線方向に沿って多数の凹溝を形成した囲繞体を配管に被嵌し、半円状のバネ材からなる嵌合体の両端部を囲繞体の凹溝に嵌め込むことで囲繞体を配管に装着、保持する構成の配管加熱用被覆体も知られている(特許文献1参照)。この配管加熱用被覆体では、作業性も良く、狭いスペースでも容易に嵌合体を囲繞体に装着でき、保持状態にもムラが無くなる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−185086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、半導体製造装置や設備では、定期的に配管のメンテナンスが行われ、その際、配管加熱用被覆体を取り外す必要がある。上記特許文献2の配管加熱用被覆体は、上記のように嵌合体の装着性に優れるものの、囲繞体から嵌合体が簡単に外れないように、嵌合体の両端部は囲繞体の凹溝に強く嵌め込まれているため、嵌合体を囲繞体から取り外すのにはかなりの労力を必要とする。
【0007】
嵌合体を取外すために、嵌合体と囲繞体との隙間にヘラ状の工具を挿入し、テコの原理で嵌合体を押し上げる方法もあるが、囲繞体は一般にアルミニウムブロックであり、工具の挿入や押し上げに際して表面が損傷しやすく、アルミニウム粉も発生しやすい。半導体製造装置や設備では、高度の清浄性が要求されており、アルミニウム粉による汚染は大きな問題となる。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、装着が容易で、かつ、取外しも容易で、外部環境の汚染のおそれも無い配管加熱用被覆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の熱媒体流通管の被覆体を提供する。
(1)配管に装着され、外部からの熱を伝熱して前記配管を加熱する配管加熱用被覆体であって、
配管の外径に相当する径の貫通孔を有する筒状体を軸線に沿って少なくとも2つに分割してなり、少なくとも一方の外周面に長手方向に延びる凹溝を備える囲繞体と、
囲繞体の半周よりも長い円弧状の帯状板で、一方の端部に切欠を形成してなる延出部が形成された第1の嵌合板と、囲繞体の半周よりも長い円弧状の帯状板で、一方の端部に第1の勘合板の切欠及び延出部と係合し合う切欠及び延出部が形成された第2の嵌合板とを、それぞれ他方の端部同士を蝶番により開閉自在に連結してなる嵌合部材とから構成されるとともに、
嵌合部材は、蝶番を囲繞体の凹溝に収容し、かつ、第1の嵌合板の延出部が第2の嵌合板の切欠に収容されるように囲繞体に装着されることを特徴とする配管加熱用被覆体。
(2)第1の嵌合板及び第2の嵌合体の各延出部の先端が、外側に湾曲していることを特徴とする上記(1)記載の配管加熱用被覆体。
(3)第1の嵌合板及び第2の嵌合板の少なくとも各延出部の内面に、摩耗防止用の被膜または複数の小突起が形成されていることを特徴とする上記(1)または(2)記載の配管加熱用被覆体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配管加熱用被覆体によれば、嵌合部材の一対の嵌合板を展開状態にして蝶番を囲繞体の凹溝に収容し、両勘合板を一方の延出部が他方の切欠に収容されるように閉じるだけで、嵌合部材の囲繞体への装着が完了するとともに、勘合部材により囲繞体を配管に良好に保持できる。また、メンテナンス時に囲繞体を配管から取り外す際にも、一対の嵌合板の延出部を互いに蝶番側に向かって展開するだけでよく、工具や大きな力も不要で極めて簡単に、勘合部材を囲繞体から取外すことができる。また、勘合部材の装着及び取外しの際、勘合板の開閉は少ない力で済み、囲繞体を損傷、摩耗させることも無くなり、外部を汚染することも無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る好適な実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る配管加熱用被覆体の組付け状態を示す外観斜視図、図2は図1の正面図、図3は図1に示す配管加熱用被覆体の組付け前の状態を示す外観斜視図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、配管加熱用被覆体10は、各種流体が流通する配管1に被嵌される囲繞体11と、第1の勘合板13及び第2嵌合板14を連結部材15で連結してなる嵌合部材12と、から構成されている。
【0013】
配管1は、ステンレス鋼材の耐熱、耐食性の材料からなるパイプである。
【0014】
囲繞体11は、熱伝導に優れた材料、例えばアルミニウム合金からなる円筒状のブロック体であり、軸線に沿って2分割された半筒状の第1囲繞部材16及び第2囲繞部材17から構成される。第1第1囲繞部材16の外周部には、筒方向に沿って凹溝18を有し、また、第2囲繞部材17の外周部には、第1囲繞部材16の凹溝18に対向配置された凹溝19を有する。尚、この凹溝は第1囲繞部材16及び第2囲繞部材17の何れか一方にのみ形成してもよい。
【0015】
また、第1囲繞部材16及び第2囲繞部材17は、両者の平面状の合わせ面20,21を一致させて合わせることで円筒形状を形成し、その軸線に一致して配管1を挿通するための貫通孔22が形成されている。貫通孔22の周壁は、第1囲繞部材16の周壁及び第2囲繞部材17の周壁が、それぞれ配管1の半径R3よりも大きい曲率半径R1、R2で形成されることが好ましい。これにより、貫通孔22の周壁は断面略瞳状となり、配管1の外周と確実に線接触するようになり、第1囲繞体16及び第2囲繞部材17を通じて配管1に確実に、効率よく伝熱できるようになる。
【0016】
一方、嵌合部材12を構成する第1勘合板13及び第2嵌合板14は、何れも耐熱性を有するバネ材、例えばステンレス鋼製バネ材からなる帯状板を、囲繞体11の外径よりも僅かに大きい内径を有する湾曲形状に加工したものであり、一端を連結部材15で連結したものである。連結部材15は、同じくステンレス鋼製の蝶番であって、一対の回動片23,24を有する。そして、一方の回動片23が第1嵌合板13の端部に固定され、他方の回動片24が第2嵌合板14の端部に固定されており、第1勘合板13及び第2嵌合板14を開閉自在に支持する。
【0017】
第1嵌合板13は、連結部材15側の端部から先端までが、囲繞体11の半周L1を超えた長さL2を有しており、先端から所定長さ後退するように矩形状の切欠25が形成されている。この切欠25により残った部分が周方向に延出して延出部26を形成し、更にその先端部分は外側に向けて折り曲げ成形され、突起27を形成している。尚、切欠25及び延出部26は、第1勘合板13の全幅を二等分するように形成することが好ましい。
【0018】
第2嵌合板14は、第1嵌合板13と同様に、基端部から先端部までが、囲繞体11の半周L1を超えた長さL2を有し、先端部分には、第1勘合板13の延出部26と対向する位置に第1勘合板13の切欠25と同形状の切欠28が形成され、第1の勘合板13の切欠25と対向する位置に第1勘合板13の延出部26と同形状の延出部29が形成されている。即ち、第1係合板13及び第2係合板14の各先端部分は、相互に切欠及び延出部が係合し合う形状に形成されている。
【0019】
上記の如く構成される勘合部材12は、囲繞体11への装着に対して、先ず、蝶番15の軸部分を囲繞体11の一方の凹溝(ここでは第2囲繞部材17の凹溝19)に収容する。この状態で、次に、第1勘合板13と第2嵌合部材14とをそれぞれ囲繞体11に向けて移動させ、最終的に、第1嵌合板13の切欠25に第2嵌合板14の延出部29が入り込むとともに、第2嵌合板14の切欠28に第1嵌合板13の延出部26が入り込ませ、第1勘合板13と第2勘合板14とで円を閉じるようにする。第1勘合板13及び第2勘合体14はともにバネ材であり、しかもそれぞれの延出部26,29が囲繞体11の半周よりも長く設定されているため、両延出部26,29に外力が加わらない状態では囲繞体11から外れることはなく、囲繞体11を筒状に保持する。
【0020】
上記の装着作業は、例えば、親指と、人差し指または中指とで勘合部材12の第1勘合板13と第2の勘合板14とを摘むようにして保持し、囲繞体11の凹溝19に蝶番を収容したまま、両方の指を内方に動かすだけで済み、極めて簡易である。
【0021】
また、メンテナンス時等において嵌合部材12を囲繞体11から取り外す場合は、上記の装着状態から、第1勘合板13の突起27と第2嵌合板14の突起30とを近づけることで、第1勘合板13と第2嵌合板14とを囲繞体11の外周の相対向する方向へそれぞれ回動させる。これにより、第1勘合板13及び第2嵌合板14は、囲繞体11への嵌合状態が解除され、囲繞体11から取り外される。
【0022】
この取外し作業も、第1勘合板13の突起27と第2嵌合板14の突起30とを指で摘むだけでよく、極めて簡易である。
【0023】
尚、上記の装着並びに取外し作業において、第1勘合板13の延出部26及び第2勘合板14の延出部29は、第1囲繞部材16の凹溝18の近傍で拡径され、凹溝18を越えた時点で縮径して凹溝19の反対側の外周面へと滑るように移動する。そのため、第1囲繞部材16の凹溝19の周辺の外周面を損傷したり、場合によっては摩耗を起こす可能性がある。
【0024】
そこで、図3に示すように、第1勘合板13の延出部26及び第2嵌合板14の延出部29の各内面、更に必要に応じてそれぞれの切欠25,28から所定長さ後退した部分を含めた各内面に、摩耗防止用被膜31,32(尚、第1勘合板13側の接触防止用皮膜層31は図2に図示)を形成することが好ましい。例えば半導体製造装置では、配管を250℃程度まで加熱することがあるため、摩耗防止用被膜31,32は摺動性と耐熱性とを兼備し、更には剥離したときの外部汚染への影響が少ない材料からなることが好ましく、フッ素樹脂やポリイミド/アミド等の耐熱性樹脂からなるコーティング膜が好適である。
【0025】
以上、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。例えば、第1勘合板13の延出部27を2つとし、これに対応して第2勘合板14の切欠28を2つにすることもできる。また、摩耗防止用被膜31,32に代えて、多数の小突起を設けて囲繞体11との接触面積を減じ、それにより損傷や摩耗を低減することもできる。更には、第1勘合体13及び第2嵌合板14の内面全面に多数の突起を設けることで、勘合部材12と囲繞体11との間に隙間があっても囲繞体11への押圧力が確保でき、囲繞体11を安定して保持できるようになる。
【0026】
本発明の配管加熱用被覆体10は、上記の如き囲繞体11及び勘合部材12とで構成される。そして、その使用形態は従来と同様であり、配管1に囲繞体11を嵌合部材12により装着し、その外周全面をマントルヒータ等の加熱手段で被覆し、加熱手段を通電して囲繞体11を加熱し、伝熱により配管を加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る配管加熱用被覆体の組付け状態を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す配管加熱用被覆体の正面図である。
【図3】図1に示す配管加熱用被覆体の組付け前の状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 配管
10 配管加熱用被覆体
11 囲繞体
12 嵌合部材
13 第1嵌合板
14 第2嵌合板
15 蝶番
16 第1囲繞部材
17 第2囲繞部材
22 貫通孔
27 突起
30 突起
31,32 摩耗防止用被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に装着され、外部からの熱を伝熱して前記配管を加熱する配管加熱用被覆体であって、
配管の外径に相当する径の貫通孔を有する筒状体を軸線に沿って少なくとも2つに分割してなり、少なくとも一方の外周面に長手方向に延びる凹溝を備える囲繞体と、
囲繞体の半周よりも長い円弧状の帯状板で、一方の端部に切欠を形成してなる延出部が形成された第1の嵌合板と、囲繞体の半周よりも長い円弧状の帯状板で、一方の端部に第1の勘合板の切欠及び延出部と係合し合う切欠及び延出部が形成された第2の嵌合板とを、それぞれ他方の端部同士を蝶番により開閉自在に連結してなる嵌合部材とから構成されるとともに、
嵌合部材は、蝶番を囲繞体の凹溝に収容し、かつ、第1の嵌合板の延出部が第2の嵌合板の切欠に収容されるように囲繞体に装着されることを特徴とする配管加熱用被覆体。
【請求項2】
第1の嵌合板及び第2の嵌合体の各延出部の先端が、外側に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の配管加熱用被覆体。
【請求項3】
第1の嵌合板及び第2の嵌合板の少なくとも各延出部の内面に、摩耗防止用の被膜または複数の小突起が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の配管加熱用被覆体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−283807(P2006−283807A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101800(P2005−101800)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】