説明

配管用抱持材

【課題】 配管からの水漏れを早期にしかも外観で簡単に判別できる抱持材を提供する。
【解決手段】 抱持材1,2の外周面は透明なシート4でカバーされている。このシート4の巻き終いに沿って両面テープ5が設けられ、更にその上からジョイントテープ6が貼り付けられている。好ましくはジョイントテープ6も透明とする。また、前記シート4の内側面と接触する抱持材1,2の表面には、水分に接触することで変色する物質を含んだ層7が形成されている。そして、結露或いは配管の継ぎ目などから水漏れがあると、水分に接触することで変色する物質を含んだ層7が水と接触し、水と接触した部分のみが変色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保温、断熱或いは遮音を目的として配管の外周に装着される抱持材に関する。
【背景技術】
【0002】
配管からの水漏れや包装材に水が付着したことを検知する手段として特許文献1〜4に開示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1には、配管の水漏れ検査部に感温変色性液体を塗布し、配管内に高温の空気を送入して感温変色性液体の変色によって、水漏れの有無とその箇所を検出するようにしている。
【0004】
特許文献2には、配管の継ぎ目部分に水と反応して変色する物質を含んだ塗料を塗布して、水漏れを検出する技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、水漏れ検出用のテープとして、テープの表面に水に可溶な着色材で図柄などを描いておき、水漏れがあった場合には当該図柄が崩れるなどの現象がおきるので、早期に水漏れを発見できるようにした技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には包装材として、水分に接触することで無色から有色に変化する成分を含んだ混合物で「水に濡れました」などの文字を印刷し、水に濡れた場合に、上記の文字が顕在化する内容が開示されている。
【特許文献1】特開昭56−49935号公報
【特許文献2】特開昭61−83265号公報
【特許文献3】特開昭61−250535号公報
【特許文献4】特許第2719843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、水と反応して変色する液体ではなく温度に感知する液体を用いているため、配管内に高温の空気を送り込まないと漏れ箇所を検知することができない。また、配管の通常使用状態において継続的に水漏れや結露などを監視することができない。
【0008】
特許文献2に開示される手段では、水漏れ箇所が保温材にて抱持されていると水漏れを外部から発見することができない。
【0009】
特許文献3に開示される手段では、特許文献2と同様に水漏れ箇所が保温材にて抱持されていると水漏れを外部から発見することができない。
【0010】
特許文献4に開示される包装材にあっては、外側から水が掛けられた場合には有効であるが、配管の結露や配管の継ぎ目などからの水漏れを有効に検出することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく本発明は、保温、断熱或いは遮音を目的として配管の外周に装着される抱持材の外周面には透明な防湿層を設け、また前記抱持材の配管と接触する内周面、または前記抱持材の防湿層と接触する外周面、または前記抱持材の内部に、水分に接触することで変色する物質を含んだ層を形成した。
【0012】
前記抱持材は例えばグラスウール又はロックウールを成形して構成される。また、抱持材の外周面には透明な防湿層としては樹脂シート、樹脂テープが考えられるが、従来のアルミ箔シートは内部の変色を外部から視認できなくなるため、使用することはできない。つまり本発明において透明とは内部の変色を認識できる程度まで透明であることが必要である。
【0013】
また、水分に接触することで変色する物質を含んだ層とは、抱持材に液状の水分に接触することで変色する物質を含浸させたもの、テープ、シート、布或いは不織布に水分に接触することで変色する物質を含んだ層を形成したものなどが考えられる。
【0014】
前記水分に接触することで変色する物質を含んだ層としては、抱持材の外側部、内側部または全体に含浸することで形成するか、抱持材の外側面または内側面に抱持材とは別体として貼着するか、或いは透明な防湿層の内側面に形成することが考えられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば配管からの漏水や結露が少量の場合でも、早期にしかも漏水箇所を正確に特定することができる。また、漏水や結露の有無を外観で認識できるため、検査が容易である。
【0016】
特に抱持材の配管と接触する内周面に水分に接触することで変色する物質を含んだ層を設けた場合には、漏水箇所が抱持材の端面に近いときには早期に発見することができ、また端面に近くない場合でも変色する物質が水に溶けると抱持材を構成するグラスウールなどを伝って外部に滲み出てくるので漏水や結露を発見できる。
【0017】
また、抱持材の防湿層と接触する外周面に水分に接触することで変色する物質を含んだ層を設けた場合には、変色したことを容易に視認することができる。
【0018】
また、抱持材をグラスウール又はロックウールにて構成した場合には、抱持材全体に水分に接触することで変色する物質を含浸せしめることができる。更に、抱持材の外側面または内側面に抱持材とは別体として変色する層を貼着するか、或いは透明な防湿層の内側面に変色する層を形成することで、施工性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る抱持材の使用態様の一例を示す斜視図、図2は本発明に係る抱持材の断面図であり、この実施例では抱持材として、配管の直配部分用の抱持材1とエルボ部分用の抱持材2を示している。
【0020】
何れの抱持材1,2もグラスウール又はロックウールを成形することで、直配部またはエルボ部を抱持する形状とされる。尚、配管Pへの装着を容易にするため、抱持材1,2の何れも長さ方向に1箇所切り離し部3を設け、配管への装着の際には当該切り離し部3を広げて配管を内部に入れ、手を離せば抱持材1,2自身が有する閉じ方向の弾発力で配管から抱持材1,2が落ちないようにしている。
【0021】
抱持材1,2の外周面は透明なシート4でカバーされている。このシート4の巻き終いに沿って両面テープ5が設けられ、更にその上からジョイントテープ6が貼り付けられている。好ましくはジョイントテープ6も透明とする。
【0022】
そして、前記シート4の内側面と接触する抱持材1,2の表面には、水分に接触することで変色する物質を含んだ層7が形成されている。水分に接触することで変色する物質としては、塩化コバルトなど結晶水の脱着で変色する無機化合物や、水溶性の染料が挙げられる。また、前記層7は、水に接触することで変色する物質を、天然樹脂または合成樹脂に混練してインキ化したものを塗布するなどの方法によって、形成することができる。
【0023】
以上において、結露或いは配管の継ぎ目などから水漏れがあると、水分に接触することで変色する物質を含んだ層7が水と接触し、図3に示すように、水と接触した部分のみが変色する。
【0024】
図4は別実施例を示す図2と同様の図であり、この実施例にあっては水分に接触することで変色する物質を含んだ層7を配管Pと直接接触する内周面に形成している。
【0025】
また、図示はしていないが、抱持材1,2を構成するグラスウール又はロックウールの各繊維の表面に水分に接触することで変色する物質を含んだ層7を形成してもよい。この場合には抱持材1,2の全体が変色する。
或いは、抱持材1,2を構成するグラスウール又はロックウールを2層状にすれば、厚み方向の中間部分に水分に接触することで変色する物質を含んだ層7を設けることもできる。
【0026】
また、布或いは不織布などに水分に接触することで変色する物質を含浸せしめて層7を形成し、この層7を抱持材1,2の外側面または内側面に貼着するようにしてもよい。
【0027】
図5は更なる別実施例を説明した図であり、この実施例にあっては抱持材1,2の外周面に巻回される透明シート4の内側面に予め水分に接触することで変色する物質を含んだ層7を形成している。
【0028】
本発明に係る抱持材は、ビルやマンションなどの空調用の配管の水漏れ検査に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る抱持材の使用態様の一例を示す斜視図
【図2】本発明に係る抱持材の断面図
【図3】水に接触して変色した状態を示す図1と同様の図
【図4】別実施例を示す図2と同様の図
【図5】別実施例を示す図
【符号の説明】
【0030】
1,2…抱持材、3…切り離し部、4…透明なシート、5…両面テープ、6…ジョイントテープ、7…水分に接触することで変色する物質を含んだ層、P…配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保温、断熱或いは遮音を目的として配管の外周に装着される抱持材であって、この抱持材の外周面には透明な防湿層が設けられ、また前記抱持材の配管と接触する内周面、または前記抱持材の防湿層と接触する外周面、または前記抱持材の内部に、水分に接触することで変色する物質を含んだ層が形成されていることを特徴とする配管用抱持材。
【請求項2】
請求項1に記載の配管用抱持材において、前記水分に接触することで変色する物質を含んだ層は、抱持材の外側部、または内側部または全体に含浸することで形成されていることを特徴とする配管用抱持材。
【請求項3】
請求項1に記載の配管用抱持材において、前記水分に接触することで変色する物質を含んだ層は、抱持材の外側面または内側面に抱持材とは別体として貼着されていることを特徴とする配管用抱持材。
【請求項4】
請求項1に記載の配管用抱持材において、前記水分に接触することで変色する物質を含んだ層は、透明な防湿層の内側面に形成されていることを特徴とする配管用抱持材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−284511(P2006−284511A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108115(P2005−108115)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000232922)日油技研工業株式会社 (67)
【出願人】(390032090)株式会社マグ (27)
【Fターム(参考)】