説明

配線・配管材固定具、配線・配管材固定構造及び配線・配管材固定方法

【課題】配線・配管材がサドル等の固定部材によって壁面に固定される特定箇所に該配線・配管材の荷重が集中して加わることによりサドル等の固定部材及び建屋の壁面が変形したり損傷するのを防止し、また、配線・配管材の荷重により配線・配管材が屋上と壁面との角縁や壁面における建屋内への引込口の角縁等に強く押し付けられて擦られたり急激に折曲することにより損傷し断線するのを防止する。
【解決手段】ケーブル31が挿通される保護管3に取付けられる筒状に形成された固定具本体11を備え、この固定具本体11は、保護管3が内挿されて接続される接続部と、ケーブル31を結束する結束線32が係合する係合部14としての棒体15と、ケーブル31が通過する空間を露出させてケーブル31を結束線32により結束する作業を行なうための開口を形成する開閉自在の蓋体17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護管の内部に挿通されるケーブル等の配線や電線管、給水管等の配管材を固定するための配線・配管材固定具、配線・配管材固定構造及び配線・配管材固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建屋の屋上に設置された受変電装置から引き出された配線・配管材としてのケーブルは屋上を水平方向に配線された後、屋上の角縁から建屋の壁面に沿って垂下し、屋内等に引込まれている。屋上及び壁面の布設路におけるケーブルは、例えば、特許文献1に記載の梯子状の受具に載置され、結束バンド等を介して受具に支持固定され、受具の端部等から引き出された後、屋内等に引込まれている。なお、通常、受具には外部からの保護のためのカバーが取付けられる。
【0003】
ところで、ケーブルの布設においては、梯子状の受具を使用する以外に、内部にケーブルが挿通される波付管等の保護管が使用されることがある。この場合、図10に示すように、建屋41の屋上42の受変電装置45から引き出されたケーブル31は屋上42の受具46に載置されて水平方向に布設された後、屋上42の角縁44から垂直下方に屈曲して、建屋41の壁面43に沿って垂設された波付管からなる保護管3内に挿通されて垂下し、下端において地上48を水平に配線されて図示しない屋内等に引込まれる。ここで、ケーブル31は屋上42の角縁44で屈曲して垂下する箇所においてサドル47を使用して壁面43の上端部に支持固定された後、保護管3内に挿通され、壁面43に沿って垂下している。ケーブル31は保護管3内を挿通して雨水等から保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ケーブル31を波付管等の保護管3内に挿通して壁面43に沿って垂下させるものにおいては、通常、ケーブル31は壁面43の上端部の露出している1箇所においてサドル47により壁面43に直接支持固定される。このため、壁面43に沿って垂下する部分のケーブル31の荷重W1は壁面43の上端部のサドル47が取付けられている1つの固定箇所に集中し、ここに多大な荷重W2が加わる。その結果、該固定箇所には多大な負荷が作用し、支持固定するサドル47がケーブル31の荷重W1に耐えられずに変形したり破損することがあった。また、壁面43についても、被固定箇所即ちサドル47が固定されている箇所が損傷を被ったり崩れたりすることがあった。このことは、当然ながら、ケーブル31が大径である程、また、ケーブル31の垂下長が大きい程顕著となる。
【0006】
また、サドル47が主にケーブル31の位置ずれを防止する位置固定として機能するものであって、ケーブル31の荷重W1を支える支持力が十分でないときは、ケーブル31は自身の垂下部分の荷重W1により強く下方に引張られ、屋上42と側壁43との境界の角縁44における屈曲部分が強く該角縁44に押し付けられ擦られて摩耗したり、急激に直角方向に折り曲げられることによって損傷し、更には断線する恐れもあった。
なお、ケーブル31は、図2に示すように、屋外の地上48に設置された受変電設備45から建屋41の壁面43に沿って立上がり壁面43の引込口49から各階に配線されることもあり、このような場合も同様の不具合を生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、配線・配管材がサドル等の固定部材によって壁面に固定される特定箇所に該配線・配管材の荷重が集中して加わることによりサドル等の固定部材及び建屋の壁面が変形したり損傷するのを防止し、また、配線・配管材の荷重により配線・配管材が屋上と壁面との角縁や壁面における建屋内への引込口の角縁等に強く押し付けられて擦られたり急激に折曲することにより損傷し断線するのを防止できる配線・配管材固定具、配線・配管材固定構造及び配線・配管材固定方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の配線・配管材固定具は、筒状に形成されて内部に配線・配管材が挿通される保護管に取付けられ、前記保護管内の前記配線・配管材を固定するためのものであって、前記保護管内の前記配線・配管材が通過する空間を有する筒状に形成された固定具本体を備え、前記固定具本体は、前記保護管が内挿されて接続される接続部と、前記配線・配管材を結束する結束線が係合する係合部と、前記空間を露出させて前記配線・配管材を前記結束線により結束する作業を行なうための開口を形成する開閉自在の蓋体とを備えている。
即ち、配線・配管材固定具は、保護管同士を接続するカップリングとして用いられるとともに、内部において配線・配管材が固定されるものであり、固定具本体の蓋体を開いて配線・配管材を結束する結束線を固定具本体内の係合部に係合させ固定した後、蓋体を閉じるものとなっている。ここで、保護管としては、波付管等が使用される。
【0009】
請求項2の配線・配管材固定具は、特に、係合部が、固定具本体に着脱可能に形成されてなり、接続部に保護管が接続されかつ配線・配管材が挿通された状態で、固定具本体に組付け可能になっている。
請求項3の配線・配管材固定具は、特に、係合部が、固定具本体の軸方向に直交する方向に延びる棒体で形成されている。
請求項4の配線・配管材固定具は、特に、開口から固定具本体の内面に取付けられる取付体を備え、その取付体は、外面に固定具本体の内面に沿って当接する当接部を備えるとともに、内面に配線・配管材の通過部を備えてなり、係合部は、該通過部に突出して形成されている。取付体は、これに係合部が取付けられ該係合部とともに固定具本体に着脱自在に取付けられる。
請求項5の配線・配管材固定具は、固定具本体が半円筒状の二つの分割体からなる円筒形状に形成され、取付体が半円筒状に形成され、前記固定具本体の一方の分割体は蓋体として機能し、固定具本体の他方の分割体は取付体が取付け可能になっている。
請求項6の配線・配管材固定具は、接続部が、固定具本体の両端部に備えられ、二つの接続部の間に取付体が取付けられるものである。
【0010】
請求項7の配線・配管材固定構造は、壁面に沿って垂直に配管された保護管内に挿通された配線・配管材を固定するものであって、垂直に配管された前記保護管と、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材固定具とからなり、前記壁面に固定される前記保護管の配管路の上部及び途中の一方または双方に前記配線・配管材固定具が接続され、該配線・配管材固定具の内部において、前記係合部に係合する結束線で前記配線・配管材を結束してなる。
【0011】
請求項8の配線・配管材固定方法は、壁面に沿って垂直に配管される保護管内に挿通される配線・配管材を固定するものであって、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材固定具を前記保護管の配管路の上部及び途中の一方または双方に接続し、前記保護管を前記壁面に沿って垂直に固定した後、前記保護管内に前記配線・配管材を挿通し、次に、前記配線・配管材が挿通されているとともに前記配線・配管材固定具の蓋体が開いて該配線・配管材が通過する空間が露出する状態で、前記配線・配管材固定具の係合部を前記開口から前記固定具本体に組付け、次いで、前記配線・配管材固定具の内部において結束線を前記係合部に係合させつつ該結束線で前記配線・配管材を結束し、前記蓋体を閉じることにより、前記配線・配管材を固定するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明は、固定具本体が、その内部において係合部と結束線とを使用して配線・配管材を確実に固定するとともに、固定具本体に接続された保護管はサドル等を介して建屋の壁面に固定されるので、配線・配管材の荷重は壁面の複数箇所で分散して支持される。このため、各固定箇所に加わる荷重は軽減され、特定の1つの固定箇所に配線・配管材の荷重が過大に加わることによってサドル等及び建屋の壁面が破損するのを防止できる。また、配線・配管材が自身の荷重により壁面の上端の角縁に強く押し付けられて擦られたり急激に折り曲げられて損傷するのを防止できる。更に、配線・配管材は配線・配管材固定具の内部で固定されるので、その固定箇所は固定具本体で覆われて保護され、確実に配線・配管材固定具に固定される。
【0013】
請求項2の発明は、特に、配線・配管材が保護管内に挿通された状態で係合部を固定具本体に組付け可能となっているから、保護管内に係合部が組付けられる前の内部スペースが広い状態で配線・配管材を保護管内に挿通できる。その結果、配線・配管材を円滑かつ楽に作業性良く挿通させることができる。
請求項3の発明は、特に、係合部が、固定具本体の軸方向に直交する方向に延びる棒体で形成されているから、係合部を簡易な構造でかつ安価に形成できるとともに、結束線を係合部に係合させ易く配線・配管材を結束し易い。
請求項4の発明は、固定具本体の内面に沿って当接する当接部を備えるとともに内面に配線・配管材の通過部を備えた取付体を備えているから、配線・配管材を保護管内及び固定具本体内に挿通させた後に、蓋体を開いた固定具本体の開口から取付体を挿入し固定具本体の内面に取付けて配線・配管材を固定具本体に固定することができる。
請求項5の発明は、固定具本体が半円筒状の二つの分割体からなる円筒形状に形成されているので、保護管に対応して接続することができる。また、取付体は半円筒状に形成されているので、簡易な構造で、取付体を固定具本体の分割体の内面に沿って当接させ、内面に配線・配管材を通過させることができるとともに、係合部を前記通過部に突出させて形成することができる。更に、係合部が前記棒体で形成されている場合は、簡単に係合部を取付体に取付け、固定具本体に設けることができる。そして、固定具本体の一方の分割体は蓋体として機能し、固定具本体の他方の分割体は取付体が取付け可能になっているので、配線・配管材を結束線により結束する作業を行なうための開口を広くすることができる。
請求項6の発明は、保護管の接続部が、固定具本体の両端部に備えられているので、保護管の途中に配線・配管材固定具を設置することができる。
【0014】
請求項7の発明は、垂直に配管された保護管と、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材固定具とからなり、壁面に固定される保護管の配管路に配線・配管材固定具が接続され、配線・配管材固定具の内部において、係合部に係合する結束線で配線・配管材を結束するものであるから、請求項1と同様の効果を奏する。
【0015】
請求項8の発明は、配線・配管材固定具を保護管に接続し、保護管を壁面に沿って垂直に固定してから、保護管内に配線・配管材を挿通した後に、配線・配管材が挿通された状態で開口から配線・配管材固定具の係合部を固定具本体に組付け、配線・配管材固定具の内部において結束線を係合部に係合させ該結束線で配線・配管材を結束することによって、配線・配管材を固定するものであるから、配線・配管材の挿通時には未だ係合部は固定具本体内に組付けられていないので、保護管の配管路が長い場合であっても、保護管内のスペースは広く確保されており、配線・配管材を円滑かつ作業性良く保護管内に挿通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の配線・配管材固定構造を示す正面図である。
【図2】建屋へのケーブルの配線例を示す概略図である。
【図3】図1の配線・配管材固定構造の要部斜視図である。
【図4】図3の蓋体が開いた状態の配線・配管材固定構造を示す要部斜視図である。
【図5】図3の配線・配管材固定具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図6】図5の蓋体が開いた状態の配線・配管材固定具を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図7】図5の係合部及び取付体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は係合部を取付体に取付けるときの状態を示す斜視図である。
【図8】図5の配線・配管材固定具内に配線・配管材を固定する方法を示す斜視図である。
【図9】配線・配管材を挿通した図8(b)の固定具本体に係合部及び取付体を取付ける状態を示す平面図である。
【図10】従来の配線・配管材固定構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の配線・配管材固定具、配線・配管材固定構造及び配線・配管材固定方法を図に基づいて説明する。なお、本実施形態では、配線・配管材としてケーブルを用いている。
図1及び図2において、ケーブル31は屋外の地上48に設置された受変電設備45から建屋41の壁面43に沿って立上がり壁面43の引込口49から各階に配線されている。ここで、図1は、図2に示す受変電設備45から引き出された3本のケーブル31のうち建屋41の3階に引き込まれたケーブル31の配線状態を示す。なお、図2では、図1の保護管3、固定具2、サドル47の図示は省略してある。
【0018】
図1、図3及び図4において、配線・配管材の固定構造1は、建屋41の壁面43に沿って垂直に配管された保護管3内に挿通されたケーブル31を固定具2の内部で固定するものである。固定構造1は、垂直に配管された保護管3と、保護管3に取付けられ、保護管3内のケーブル31を固定する固定具2とからなり、壁面43に固定される保護管3の配管路に固定具2が接続され、その固定具2の内部において、固定具2内の係合部14に係合する結束線32でケーブル31を結束する構造となっている。ここで、保護管3は、周壁が山部3a及び谷部3bによる凹凸形状に形成された波付管が用いられている。
【0019】
前記固定具2は、図5及び図6に示すように、内部にケーブル31が挿通される筒状のものであり、保護管3内のケーブル31が通過する空間12を有する筒状に形成された固定具本体11を備えている。固定具本体11は、いわゆるカップリングとして機能するものでもあって両側開口端部に保護管3が内挿されて接続される接続部13を備えている。加えて、固定具本体11は、ケーブル31を結束する結束線32が係合する係合部14と、ケーブル31が通過する空間12を露出させてケーブル31を結束線32により結束する作業を行なうための開口16を形成する開閉自在の蓋体17とを備えている。
【0020】
前記固定具本体11は、半円筒状の二つの分割体である第1分割体21及び第2分割体22からなる円筒形状に形成されている。第1分割体21及び第2分割体22は各一端側の隣接端部がヒンジ24を介して連結されており、開閉自在に組付けられている。ヒンジ24は、詳細には、図5(a)、図6(a)に示すように、第1分割体21及び第2分割体22それぞれの隣接端部に、ピン孔を有する所定長さの略円筒状のピン挿通部24aが軸心方向に互いに異なる位置で外方に突設され、これらのピン挿通部24aにピン体24bが挿通されて形成されている。
【0021】
そして、固定具本体11は、第1分割体21と第2分割体22とをヒンジ24を軸に回動して閉じ、第1分割体21の連結端部21aと第2分割体22の連結端部22aとを突き合わせた後、両連結端部を連結金具26を介して連結固定することにより円筒形状に組付けられる。固定具本体11は、詳細には、第1分割体21及び第2分割体22それぞれの連結端部が外方に突設され、両連結端部同士が当接する箇所には、ボルト27の頭部が収容されるボルト頭部収容部25が設けられている。更に、固定具本体11は、図6に示すように、両連結端部に跨って連結金具26が取付けられているとともに、ボルト頭部収容部25に頭部が収容されたボルト27が軸部の先端を外方に向けて取付けられている。各分割体の連結端部は、分割端面である突き当て面と反対側の側壁面21b,22bが傾斜面となっている。そして、前記連結金具26は頂部が平面である略山型の断面形状に形成され、両側面は傾斜角度が各分割体の連結端部21a,22aの傾斜面と略一致する傾斜面に形成されており、各連結端部の傾斜面と連結金具26の傾斜面とは面接するようになっている。連結金具26の頂部の平面の中央部には挿通孔が設けられており、この挿通孔をボルト27の軸部が挿通し、該軸部にナット28が螺着されている。
【0022】
このような構成により、第1分割体21と第2分割体22とを閉じるときは、第1分割体21をヒンジ24を軸に回動して両分割体の連結端部同士を突き合わせた後、両連結端部に跨って上方から連結金具26を被せ、ボルト27に対してナット28を締付ける。すると、両分割体の連結端部21a,22aの側壁面21b,22bと連結金具26の側面とは傾斜面の傾斜角度が一致しているので、連結金具26は各連結端部の基端側まで押し込まれ、両分割体は閉じた状態に維持される。
【0023】
逆に、第1分割体21を開けるときは、ナット28の締付けを緩めて連結金具26の位置を連結端部21a,22aの基端と反対の外側方向に移動させる。すると、両分割体の連結端部21a,22aの側壁面21b,22b及び連結金具26の側面は傾斜面に形成されているので、連結金具26の移動につれて両分割体の連結端部の突き当て面は互いに離間し、連結金具26による連結状態が解除されて、第1分割体21を開けることが可能となる。
【0024】
ここで、固定具本体11の一方の分割体である第1分割体21は前記蓋体17として機能し、他方の分割体である第2分割体22は後述する取付体18が取付け可能となっている。固定具本体11において保護管3が接続される接続部13は、固定具本体11の両端部に備えられており、各接続部13の内壁面には保護管3である波付管の谷部3bに嵌合する嵌合突起23が周方向に沿って設けられている。同様に、各分割体の両接続部13の軸方向における中間部分も嵌合突起23が周方向に沿って平行に設けられている。ここで、両分割体は、左右対称に設けられている。保護管3は蓋体17として機能する第1分割体21を閉じることにより、谷部3bに固定具本体11の接続部13の嵌合突起23が嵌合して管軸方向に移動し抜脱するのが防止される。
【0025】
固定具本体11の内面である第2分割体22の内面には、第1分割体21を開くことによって第2分割体22の割面に形成される開口16から取付体18を挿入して両端部の接続部13の間に取付けられるようになっている。この取付体18は、図7に示すように、半円筒状に形成され、固定具本体11に着脱可能に形成されており、外面に固定具本体11の内面に沿って当接する当接部19を備え、内面にケーブル31が通過可能な通過部20を備えている。そして、接続部13に保護管3が接続されかつケーブル31が挿通された状態で、固定具本体11の第2分割体22とケーブル31との隙間に滑り込ませるようにして第2分割体22の内面に沿って着脱自在に取付けられるようになっている。
【0026】
取付体18の内面におけるケーブル31が挿通可能な通過部20には、結束線32が係合する係合部14が着脱自在に取付けられている。この係合部14は、固定具本体11の軸方向に直交する方向に延びる棒体15で形成されており、取付体18の通過部20に突出して形成されている。係合部14である棒体15は、更に具体的には、図7に示すように、丸棒で形成され、外方から取付体18の周壁の挿通孔18aに挿入しこの周壁を円の弦となる方向に貫通させて取付体18の通過部20を横断するように突出させた後、取付体18の対向側の周壁の挿通孔18aに挿通させて取付体18に取付けられる。なお、棒体15は、取付体18の対向する周壁間に跨って挿脱自在に架設される長さであり、かつ、取付体18に取着した状態で取付体18の周壁から外部に突出しない長さに形成されている。また、棒体15は、丸棒で形成するのが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
棒体15からなる係合部14は、取付体18に取付けられ一体となって固定具本体11に着脱可能に形成されており、固定具本体11の接続部13に保護管3が接続されかつケーブル31が挿通された状態で、固定具本体11の第2分割体22とケーブル31との隙間に取付体18と一体となって滑り込ませるようにして第2分割体22の内面に組付けられるようになっている。
【0028】
ケーブル31を結束する結束線32は、結束バンド、紐体などで形成され、係合部14である棒体15とケーブル31とを一体に結束し、ケーブル31を固定具2に固定する。
【0029】
次に、上記のように構成された本実施形態の固定具2を使用して、壁面43に沿って垂直に配管される保護管3内に挿通されるケーブル31を固定する固定方法を図8に基づいて説明する。
【0030】
まず、図8(a)に示すように、保護管3の配管路の途中で上下の保護管3の間に固定具2を配置し、固定具2の蓋体17として機能する第1分割体21が開いた状態で、上下の保護管3を固定具2の接続部13にあてがい、固定具2の第2分割体22の上下の接続部13上に保護管3を載置し、第2分割体22の嵌合突起23と保護管3の谷部3bとを嵌合させる。次に、一旦、第1分割体21を閉じて固定具本体11を円筒形状に組付け、保護管3を固定具本体11の接続部13に内挿した状態で接続する。このとき、各分割体の嵌合突起23は保護管3の谷部3bに嵌合するので、保護管3は固定具本体11に管軸方向に対して抜脱不能に接続される。その後、サドル47を使用して保護管3を建屋41の壁面43に沿って垂直に固定する。
【0031】
次に、図8(b)に示すように、壁面43に沿う保護管3の配管路の上端から保護管3内に1乃至複数本のケーブル31を挿通する。このとき、固定具2内には未だ係合部14及び取付体18は取付けられていない状態にあるので、ケーブル31はこれらと干渉して挿通を妨げられることなく円滑に保護管3内に挿通される。なお、図8(b)において、第1分割体21は閉じているが、固定具2内を示すため、図示は省いてある。
【0032】
一方、予め係合部14である棒体15を外方から取付体18の周壁に差し込んで対向する2つの周壁に架設するように取付けておく。次に、図8(c)に示すように、再度第1分割体21の蓋体17を開いて開口16を形成し、ケーブル31が通過する空間12を露出させる。その状態で、棒体15が取付けられた取付体18を固定具本体11の側方向から第2分割体22とケーブル31との隙間に滑り込ませるようにして挿入し組付ける。このとき、取付体18は、半円筒状に形成され、外面に第2分割体22の内面に沿って当接する当接部19を備え、内面にケーブル31の通過部20を備えているから、図9に示すように、円弧を描くようにして支障なく第2分割体22とケーブル31との隙間に挿入し組付けることができるとともに、第2分割体22の内面形状に合致させて収まり具合良く組付けることができる。
【0033】
続いて、先に第1分割体21を開いたことによって、固定具本体11内の作業を行なうための開口16が形成されている状態で、図8(d)に示すように、固定具本体11の内部において結束バンド、結束紐等の結束線32を係合部14の棒体15に係合させるとともにこの結束線32でケーブル31を結束する、即ち、結束線32でケーブル31と係合部14とを一体に結束する。このとき、係合部14は棒体15で形成されているので、結束線32はたすきがけにしてケーブル31を結束することができ、簡単かつ強固に結束できる。但し、結束線32は勿論たすきがけでなくてもよく、単なる環状に結束してもよく、結束状態は問わない。
【0034】
最後に、第2分割体22に対して第1分割体21を閉じる。第1分割体21の閉鎖は、第1分割体21の連結端部21aと第2分割体22の連結端部22a同士を突き合わせ、両連結端部の外側に連結金具26を架け渡し、ナット28を締付けることにより行なう。
以上により、保護管3を壁面43に固定するとともに、固定具2内でケーブル31を固定する作業が完了する。
【0035】
次に、本実施形態のケーブル31の固定構造1、固定具2及び固定方法の作用を説明する。
本実施形態の固定構造1及び固定具2は、保護管3同士を接続する固定具2内で保護管3内を挿通するケーブル31が固定され、その固定具2は壁面43に沿って垂下する保護管3の配管路において所定間隔をおいて複数設けられているとともに、固定具2と接続された保護管3は壁面43に沿って垂下する配管路の複数箇所でサドル47を使用して壁面43に固定される。ここで、結束線32による結束によって各固定具2に加わるケーブル31の荷重は、固定具2に接続された保護管3を介して最終的には保護管3を壁面43に固定するサドル47及び該壁面43が支持している。したがって、図1に示すように、壁面43に沿って保護管3内を垂下する部分のケーブル31の荷重W1は、複数箇所のサドル47及び壁面43の複数の被固定箇所に分散し、各サドル47及び壁面43の被固定箇所には図1の上から順にw0〜w4の分散した負荷となって加わることとなる。その結果、サドル47の各固定箇所及び壁面43の各被固定箇所にかかる重量負担は、図10に示す、従来の壁面43の上端部1箇所でケーブル31を直接壁面43に支持固定していたものと比較すれば、大幅に軽減される。これにより、従来のように特定の1つの固定箇所にケーブル31の荷重が過大に加わることによってサドル47及び壁面43が破損するのが防止される。
【0036】
また、分散による負荷軽減に加え、ケーブル31は、固定具2の内部で固定されることによりその固定箇所は固定具本体11で覆われて保護されるとともに、結束線32により固定具2に強固に固定されるから、垂下する部分のケーブル31は壁面43に確実に支持固定される。このため、ケーブル31の荷重W1によって壁面43における建屋41内への引込口49の角縁44に押し付けられる力は大幅に軽減される。その結果、ケーブル31が前記角縁44に強く押し付けられて擦られたり急激に直角に折曲して損傷し更には断線するのが防止される。
【0037】
更に、係合部14及び取付体18は、ケーブル31が保護管3内に挿通された状態で一体として固定具本体11とケーブル31との隙間に滑り込ませて組付けできるようになっているから、未だ保護管3内に係合部14が組付けられておらず内部スペースが広い状態でケーブル31を上端から保護管3内に挿通することができる。このため、ケーブル31を円滑かつ作業性良く保護管3内に挿通させることができる。
【0038】
加えて、係合部14は、棒体15で形成されているから、簡単に係合部14を取付体18に取付けて固定具本体11に組付けることができ、また、係合部14を簡易な構造でかつ安価に形成できるとともに、結束線32を係合部14に係合させ易いとともにケーブル31を結束し易い。更に、結束線32を例えばたすきがけにしてケーブル31を結束することができ、簡単かつ強固に結束できる。
【0039】
そして、固定具本体11は半円筒状の第1分割体21及び第2分割体22からなる円筒形状に形成されているので、保護管3の形状に適合させて接続でき、また、第1分割体21と第2分割体22とを閉じることで円筒形状に形成されるので、周壁が山部3a及び谷部3bによる凹凸形状の波付管である保護管3を簡単に接続できる。
【0040】
また、固定具本体11の一方の分割体は蓋体17として機能し、固定具本体11の他方の分割体は取付体18が取付け可能になっているので、ケーブル31を結束線32により結束する作業を行なうための開口16を広くすることができる。
【0041】
更に、取付体18は別体として組付けられるから、水平方向に延びている配管路などにおいて、不要のときは、固定具2から取り外しておくこともできる。
【0042】
本実施形態のケーブル31の固定方法は、固定具2を保護管3に接続し、保護管3を壁面43に沿って垂直方向に固定し、保護管3及び固定具2内にケーブル31を挿通した後に、固定具2の係合部14を固定具本体11に組付け、固定具2の内部において結束線32を係合部14に係合させ該結束線32でケーブル31を結束することにより、ケーブル31を固定具2内で固定するものである。したがって、保護管3の配管路が長い場合であっても、ケーブル31の挿通時には未だ係合部14は固定具本体11内に組付けられていないので、保護管3内のスペースを広く確保でき、ケーブル31を円滑に作業性良く保護管3内に挿通させることができる。
【0043】
ところで、上記実施形態では、固定具2は、保護管3の配管路の途中の複数箇所で接続しているが、これに限定されるものではなく、保護管3の配管路の上部にも取付けることもできる。
また、壁面43に沿う保護管3の垂直方向の配管路が短い場合は、固定具2は、保護管3の配管路の上部のみに取付けることも可能である。この場合、固定具本体11の接続部13は、固定具本体11の両端部に形成してもよいし、いずれか一方のみに形成してもよい。
【0044】
ここで、従来においては、図10に示すように、保護管3の上端から僅か上方にサドル47を取付けてケーブル31を直接壁面43に固定したものは、サドル47及び壁面43における一つの被固定箇所にケーブル31の垂直部分の荷重が集中的に加わり、サドル47及び被固定箇所が破損することもあるが、本発明の実施形態では、保護管3の配管路の上部のみに固定具2を取付けた場合においても、前述の、固定具2を保護管3の配管路の途中に複数取付けた場合と同様に、固定具2に接続された保護管3は複数のサドル47を介して複数箇所で壁面43に固定されているから、ケーブル31の垂直部分の荷重は、これを結束支持する固定具2及び保護管3を介して壁面43の複数の被固定箇所に分散して加わる。このため、固定具2を保護管3の配管路の途中に取付けた場合と同様に、壁面43の1つの被固定箇所に加わるケーブル31の荷重は軽減されるから、壁面43の被固定箇所が破損するのを防止することができる。
【0045】
次に、上記実施形態の係合部14は、棒体15からなり、これを取付体18の挿通孔18aに挿通し周壁に架設して取付体18とともに固定具2に着脱自在に取付けているが、本発明を実施する場合は、これに限られるものではなく、例えば、図示しないが、第2分割体22の内面にフック状の突起部を形成し、これに結束線32を係合させてケーブル31を結束固定するものであってもよい。この場合、フック状の突起部は、第2分割体22に一体に設けた着脱不能なものとしてもよく、或いは第2分割体22に取着部を挿着するなどして着脱自在なものとすることもできる。
【0046】
また、上記実施形態の固定具本体11は、第1分割体21と第2分割体22とを開閉自在に組付けて円筒形状に形成し、蓋体17は第1分割体21で形成して固定具本体11の両端部に形成された接続部13をも含めて閉じるものとしているが、これに限られるものではなく、例えば、円筒形状の一体物で形成し、これに、前記作業を行なうための窓部を設け、蓋体17は、この窓部を開閉自在に閉じるものとすることもできる。
【0047】
次に、ケーブル31の固定方法においては、ケーブル31の挿通は、固定具2の接続部13に保護管3を接続し、保護管3及び固定具2を壁面43に固定した後、一旦、第1分割体21を閉じて固定具本体11の作業のための開口16が閉塞した状態としてからケーブル31を保護管3の上端から挿通し、挿通後、再度第1分割体21を開いて前記開口16を開放し、その後、係合部14及び取付体18を固定具本体11に取付けている。しかし、第1分割体21を開いた状態においても、挿通するケーブル31の先端が前記開口16の縁部等に当接せずに支障なく固定具本体11内にケーブル31を挿通させることができる場合は、最初の保護管3の接続時に、固定具2の第2分割体22に保護管3を載置した後、第1分割体21はそのまま開いた状態として、ケーブル31を保護管3及び固定具2の内部に挿通する作業を行なうことも可能である。
【0048】
そして、サドル47を使用して保護管3を壁面43に固定する作業は、保護管3と固定具2とを接続した時点で行なっているが、それ以外の工程中に行なうことも可能である。
【0049】
また、ケーブル31を結束する結束線32は、係合部14である棒体15に挿通孔を形成し、これに挿通するなどして予めこの係合部14に取付け係合させておくこともできる。この場合、係合部14及び取付体18を固定具本体11に取付けた後、直ちにケーブル31を結束することができる。
【0050】
更に、上記実施形態では、連結金具26、ボルト27及びナット28を介して第1分割体21と第2分割体22とを閉じた状態に維持しているが、これらの手段により閉じた状態を維持するものに限られるものではない。
【0051】
また、上記実施形態の固定具本体11の第1分割体21及び第2分割体22は、ヒンジ24を介して開閉可能となっているが、ヒンジ構造でなく、各分割体は分離可能なものとし、周方向の両端部に連結具を取付け、両端で開閉するものとすることもできる。
【0052】
なお、上記実施形態では、固定具2は、壁面43に沿った垂直方向の配管路に配管された保護管3の途中或いは上部に取付けているが、これに限られるものではなく、水平方向の配管路、斜め方向の配管路に配管された保護管3の途中などに取付けてもよい。この場合は、保護管3の配管路の途中などにおいて結束線32等によってケーブル31を固定する箇所を固定具2によって覆い、保護できるという効果が得られる。
【0053】
また、上記実施形態では、保護管3として波付管を使用しているが、本発明は、外周面が平滑な平滑管、直状管等にも同様に適用することができる。
加えて、上記実施形態では、配線・配管材としてケーブル31を例示しているが、それ以外の信号線、電線管、給水管、給湯管等にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 固定構造 17 蓋体
2 固定具 18 取付体
3 保護管 19 当接部
11 固定具本体 20 通過部
12 空間 21 第1分割体
13 接続部 22 第2分割体
14 係合部 31 ケーブル
15 棒体(係合部) 32 結束線
16 開口 43 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されて内部に配線・配管材が挿通される保護管に取付けられ、前記保護管内の前記配線・配管材を固定するための配線・配管材固定具であって、
前記保護管内の前記配線・配管材が通過する空間を有する筒状に形成された固定具本体を備え、
前記固定具本体は、前記保護管が内挿されて接続される接続部と、前記配線・配管材を結束する結束線が係合する係合部と、前記空間を露出させて前記配線・配管材を前記結束線により結束する作業を行なうために形成された開口を開閉自在に覆う蓋体とを備えたことを特徴とする配線・配管材固定具。
【請求項2】
前記係合部は、前記固定具本体に着脱可能に形成されてなり、前記接続部に前記保護管が接続されかつ前記配線・配管材が挿通された状態で、前記固定具本体に組付け可能であることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材固定具。
【請求項3】
前記係合部は、前記固定具本体の軸方向に直交する方向に延びる棒体で形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項4】
前記開口から前記固定具本体の内面に取付けられる取付体を備え、
前記取付体は、外面に前記固定具本体の内面に沿って当接する当接部を備えるとともに、内面に前記配線・配管材の通過部を備えてなり、
前記係合部は、前記通過部に突出して形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の配線・配管材固定具。
【請求項5】
前記固定具本体は、半円筒状の二つの分割体からなる円筒形状に形成され、
前記取付体は、半円筒状に形成され、
前記固定具本体の一方の分割体は前記蓋体として機能し、前記固定具本体の他方の分割体は前記取付体が取付け可能であることを特徴とする請求項4に記載の配線・配管材固定具。
【請求項6】
前記接続部は、前記固定具本体の両端部に備えられ、二つの前記接続部の間に前記取付体が取付けられることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の配線・配管材固定具。
【請求項7】
壁面に沿って垂直に配管された保護管内に挿通された配線・配管材を固定する配線・配管材固定構造であって、
垂直に配管された前記保護管と、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材固定具と
からなり、
前記壁面に固定される前記保護管の配管路の上部及び途中の一方または双方に前記配線・配管材固定具が接続され、該配線・配管材固定具の内部において、前記係合部に係合する結束線で前記配線・配管材を結束してなることを特徴とする配線・配管材固定構造。
【請求項8】
壁面に沿って垂直に配管される保護管内に挿通される配線・配管材を固定する配線・配管材固定方法であって、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線・配管材固定具を前記保護管の配管路の上部及び途中の一方または双方に接続し、前記保護管を前記壁面に沿って垂直に固定した後、前記保護管内に前記配線・配管材を挿通し、次に、前記配線・配管材が挿通されているとともに前記配線・配管材固定具の蓋体が開いて該配線・配管材が通過する空間が露出する状態で、前記配線・配管材固定具の係合部を前記開口から前記固定具本体に組付け、次いで、前記配線・配管材固定具の内部において結束線を前記係合部に係合させつつ該結束線で前記配線・配管材を結束し、前記蓋体を閉じることにより、前記配線・配管材を固定することを特徴とする配線・配管材固定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−19473(P2013−19473A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153372(P2011−153372)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【出願人】(591048830)日本電設工業株式会社 (21)
【Fターム(参考)】