説明

配線・配管材支持具

【課題】配線・配管材をボルトの一側方に支持させる場合と両側方に支持させる場合とのいずれにおいても、1種類で対応して支持することができる配線・配管材支持具を提供する。
【解決手段】ケーブル41を支持する支持部2と、ボルトに対して固定可能な固定部3とを備え、固定部3は、ヒンジ4を介して開閉可能な一対のベース11とカバー31とからなり、ベース11には支持部2を備えた。そして、ベース11とカバー31とを閉じることによりカバー31の係合部34をベース11の第1被係合部18に係合させ、ボルトを挟持して固定するよう形成し、かつ、ベース11を他の支持具1のベース11と対面させた状態でカバー31の係合部34を他の支持具1のベース11の第2被係合部19に係合させ、ボルトを挟持して連結及び固定するよう形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の二重天井等に布設されるケーブル等の配線材や二重床の空間等に布設される給水管、給湯管等の配管材を吊りボルトや高さ調整ボルト等のボルトに支持させるために使用する配線・配管材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、支持具を使用して、前記ボルトにケーブルや給水管等の配線・配管材を支持させ、配線・配管材を二重天井や二重床等の布設路に沿って布設することが行なわれている。この種の配線・配管材支持具として、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の配線・配管材支持具は、ヒンジ部を介して開閉自在な一対の挟着部を備え、各挟着部の内面にボルトの外径に対応した圧着溝からなる凹部を有し、挟着部を閉じることによりボルトに固定可能に形成されている。一方の挟着部にはケーブルを支持するケーブル係止部を備えている。この配線・配管材支持具は、ボルトに取付けた状態でボルトの一側方にケーブルを支持させることができる。
【0004】
特許文献2に記載の配線・配管材支持具は、ケーブルを支持するケーブル係止部とボルトを挟着するための挟着部とを備えており、同一の一対の配線・配管材支持具を、ボルトの側方から互いに係合、連結させてボルトを挟持することによりボルトに取付けられるようになっている。この配線・配管材支持具は、一対をボルトに取付けることにより、ボルトの両側方にケーブルを支持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−23889号公報
【特許文献2】実開平4−23890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の支持具は、ボルトの一側方にケーブルを支持させるものであり、1個単独で使用されるものである。
一方、特許文献2の支持具は、一対の支持具を係合、連結してボルトの両側方にケーブルを支持させるものである。
したがって、従来は、1種類の支持具で、ケーブルをボルトの一側方に支持させる場合と両側方に支持させる場合との双方に共通して使用することはできなかった。
【0007】
ここで、仮に、特許文献1の支持具について、この支持具を2個使用し、これらを互いに反対向きにボルトに固定してケーブルをボルトの両側方に支持させようとするならば、2個の支持具は上下に積み重ねられた状態で上下方向にずれた位置でしかボルトに固定することができないから、ケーブルの布設上好ましくないものとなる。つまり、特許文献1の支持具は、本来的に1個単独で使用されるものであって、2個使用によるボルトの両側方へのケーブルの支持には適さない。
また、特許文献2の支持具は、2個を互いに連結することによってボルトに固定されるものであるから、1個単独では、特許文献1の支持具のような、ボルトの一側方にケーブルを支持させるような使用とすることはできない。
【0008】
結局、従来は、1種類の支持具で、ケーブルをボルトの一側方に支持させる場合と両側方に支持させる場合との双方に共通して使用することはできず、ボルトの一側方に支持させる場合、及び両側方に支持させる場合には、それぞれについて種類の異なる専用の支持具を用意しなければならなかった。その結果、現場の布設状況に応じて支持具を使い分けなければならず、部品管理が煩雑となっていた。また、コスト高で不経済となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、配線・配管材をボルトの一側方に支持させる場合と両側方に支持させる場合とのいずれにおいても、1種類で対応して支持させることができる配線・配管材支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の配線・配管材支持具は、配線・配管材を支持する支持部と、ボルトに対して固定可能な固定部とを備えたものであって、前記固定部は、ヒンジを介して開閉可能な一対のベースとカバーとからなり、前記ベースには前記支持部を備えている。そして、前記固定部は、前記ベースと前記カバーとを閉じることにより前記ボルトを挟持して固定可能に形成され、かつ、前記ベースを他の前記支持具のベースと対面させた状態でこれら一対のベースにより前記ボルトを挟持して該他の支持具と連結して該ボルトに固定可能に形成されている。
【0011】
即ち、この配線・配管材支持具は、カバーとベースとでボルトを挟持することにより、1個の支持具の形態でボルトに固定可能であるとともに、ベースと他の配線・配管材支持具のベースとを対面させてこれら一対のベースによってボルトを挟持することにより、2個の支持具を連結しこの連結した形態でボルトに固定可能に形成されている。これにより、1種類の支持具で、1個単独で使用して配線・配管材をボルトの一側方に支持させる場合と、2個連結して両側方に支持させる場合とのいずれにも対応することができる。
【0012】
請求項2の配線・配管材支持具は、請求項1のベース及びカバーが、互いに係合する係合部及び被係合部を備え、該係合部及び該被係合部の少なくとも一方は、前記他の支持具との連結にも使用されるものである。即ち、ベース及びカバーは、それぞれ少なくとも係合部及び被係合部のいずれかを備えており、これらを係合することによりベースとカバーとでボルトを挟持して1個の支持具を固定できるとともに、これらの係合部及び被係合部の少なくとも一方は、他の配線・配管材支持具を連結するときに、他の配線・配管材支持具の被係合部或いは係合部にも係合し得て、1個単独使用及び2個連結使用のいずれにも共用できるものとなっている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、1種類の支持具で、1個単独で使用して配線・配管材をボルトの一側方に支持させることができるとともに、2個連結して両側方に支持させることができる。そして、それにより、部品管理が容易となり、部品コストを削減できる。
【0014】
請求項2の発明は、ベース及びカバーに備えられた係合部及び被係合部の少なくとも一方が、他の配線・配管材支持具との連結にも使用できるから、係合部及び被係合部の数を減らして支持具の構造を簡素化でき、また、それにより、互いを係合する際に係合箇所を把握し易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の配線・配管材支持具を示し、(a)は前面側から見た斜視図、(b)は背面側から見た斜視図である。
【図2】図1の支持具を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図である。
【図3】図1の支持具を3分ボルトに固定し、ケーブルをボルトの一側方に支持させる場合の状態を示す平面図であり、(a)は固定直前の状態、(b)は固定後の状態を示す。
【図4】図1の支持具を4分ボルトに固定し、ケーブルをボルトの一側方に支持させる場合の固定直前の状態を示す平面図である。
【図5】図4の4分ボルトの固定後の状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面ず、(c)及び(d)は斜視図である。
【図6】図1の支持具を2個連結し、ケーブルをボルトの両側方に支持させる場合の状態を示す平面図である。
【図7】本発明の第1変形例の支持具を示す平面図であり、(a)は連結固定直前の状態、(b)は連結固定後の状態を示す。
【図8】本発明の第2変形例の支持具を示す平面図であり、(a)は連結固定直前の状態、(b)は連結固定後の状態を示す。
【図9】本発明の第3変形例の支持具を示す平面図であり、(a)は連結固定直前の状態、(b)は連結固定後の状態を示す。
【図10】本発明の別の支持具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の配線・配管材支持具を図に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、図中のボルトの軸方向を上下方向として説明する。
図1及び図2において、支持具1は、建物の二重天井に垂設された吊りボルト等のボルト42に固定されて配線・配管材としてのケーブル41を支持するものであり、ケーブル41を支持する支持部2と、ボルト42に対して固定可能な固定部3とを備えてなる。固定部3は、ヒンジ4を介して開閉可能な一対のベース11とカバー31とからなり、ベース11は前記支持部2を備えている。そして、固定部3は、ベース11とカバー31とを閉じることによりボルト42を挟持して固定可能に形成され、かつ、ベース11を他の支持具1のベース11と対面させた状態でボルト42を挟持して連結可能及びボルト42に固定可能に形成されている。支持具1は合成樹脂等により一体に形成することができる。以下、各構成部材について説明する。
【0017】
まず、前記支持部2は、上方が開口した略U字状に形成され、固定部3のベース11に形成された挟持凹部12の開口12aとの反対側に水平方向に突設されて、内部にケーブル41が収容されるようになっている。なお、支持部2は上部の挿入開口2aをケーブル41より小さく形成しておき、ケーブル41を支持する際には、挿入開口2aを弾性的に拡開して挿入するものとすれば、内部に収容後、ケーブル41が挿入開口2aから外方に抜脱するのを防止することができる。
【0018】
次に、前記固定部3のベース11は、略四角柱状に形成され、前面11a側にボルト42の外形と対応する半割円柱状の挟持凹部12が凹設されている。本実施形態においては、挟持凹部12はW1/2即ちいわゆる4分のボルト42の外形と対応した形状に凹設されている。この挟持凹部12の内面には円の弦を形成するように開口12a側に突出して4分ボルト42bのねじ山と係止する係止突条13がボルト42の軸方向に複数設けられている。挟持凹部12におけるヒンジ4と反対側の端縁部には接合部16を介して略半割円管状の挟持片14が接続されており、挟持片14の内面にはW3/8即ちいわゆる3分のボルト42の外形と対応する半割円柱状の挟持凹部15が形成されている。この挟持凹部15の内面には3分ボルト42aのねじ山と係止するねじ溝17が設けられている。ベース11がこのように形成された固定部3は、挟持片14の挟持凹部15と後述するカバー31の挟持凹部32とで3分のボルト42を挟持できるようになっているとともに、接合部16で挟持片14を切断除去することにより、ベース11の挟持凹部12とカバー31の挟持凹部32とで4分のボルト42を挟持できるようになっている。
【0019】
前記ベース11におけるヒンジ4と反対側の側面11bには、それぞれ、上下両端部に、一対の第1被係合部18,18及び一対の第2被係合部19,19が設けられている。前記上下一対の第1被係合部18,18は、ベース11の側面11bの開口12a側の端部に突設され、中央部に角孔18aが設けられた枠状突起で形成されており、この角孔18aには後述するカバー31の係合部34を挿通させて係合させることができるようになっている。前記上下一対の第2被係合部19,19は、ベース11の側面11bの支持部2側の端部に凹設され、中央部に角孔19aが設けられてなり、この角孔19aにはカバー31の係合部34を挿通させて係合させることができるようになっている。第1被係合部18の角孔18aと第2被係合部19の角孔19aとは90度異なる方向に穿設されている。
【0020】
一方、前記固定部3のカバー31は、略半割円管状に形成され、内面側にボルト42の外形と対応する半割円柱状の挟持凹部32が形成されている。本実施形態においては、この挟持凹部32は4分ボルト42bの外形と対応した形状に形成されている。そして、カバー31の挟持凹部32の開口32aは、ベース11とカバー31とを閉じたときに、ベース11の挟持凹部12の開口12aと対面する位置に形成されている。したがって、カバー31の挟持凹部32は、接合部16を軸に挟持片14を180度回動して固定部3の外側に移動させ、ベース11とカバー31とで4分ボルト42bを挟持したとき、ベース11の挟持凹部12とともに、4分ボルト42bの外面全体に密接する。一方、カバー31の挟持凹部32は、3分ボルト42aより大きい曲率半径を有するので、ベース11の挟持片14とカバー31とで3分ボルト42aを挟持したとき、ベース11の挟持片14の挟持凹部15は全体的に3分ボルト42aの外面に密接し、カバー31の挟持凹部32は3分ボルト42aの外面とは線接触する状態となる。更に、第1被係合部18から第2被係合部19に至る間の側方には、カバー31の係合部34を第2被係合部19の角孔19aに挿通する際の案内となる案内壁20が立設されている。
【0021】
カバー31におけるヒンジ4と反対側の先端縁部には、その上下両端部に一対の突片33,33が外側に突設されており、更に、各突片33の中央部であってベース11の第1被係合部18及び第2被係合部19と対応する位置には、係合突起からなる係合部34が突設されている。そして、係合部34の先端側には、ベース11の第1被係合部18の角孔18aまたは第2被係合部19の角孔19aに挿通された後これらに弾性的に係止する係合爪34aが設けられている。ここで、上下一対の係合部34の係合爪34aは互いに反対側を向く方向、即ち、図1に示すように、上側の係合爪34aは上方に向けて設けられ、下側の係合爪34aは下方に向けて設けられている。
【0022】
次に、上記のように構成された支持具1を使用してケーブル41をボルト42の一側方に支持させる方法について説明する。
まず、1個の支持具1を使用してケーブル41を3分ボルト42aの一側方に支持させるには、図3(a)に示すようにして、3分ボルト42aの側方からベース11の挟持片14の挟持凹部15を3分ボルト42aの外周面にあてがい、ヒンジ4を軸にカバー31をベース11側に回動して閉じる。このとき、カバー31の上下一対の係合部34,34をベース11の一対の第1被係合部18,18の角孔18a,18aに挿入し、カバー31の係合部34の係合爪34aを第1被係合部18に係止させる。これにより、図3(b)に示すように、3分ボルト42aはベース11の挟持片14の挟持凹部15とカバー31の挟持凹部32とで挟持され、支持具1は3分ボルト42aに固定される。このとき、ベース11の挟持片14の挟持凹部15のねじ溝17が3分ボルト42aのねじ山に係止するので、支持具1は3分ボルト42aに対して上下方向に移動するのが防止され、一定高さに保持される。
【0023】
支持具1が3分ボルト42aに固定されたら、支持部2の上部の挿入開口2aからケーブル41を挿入し、内部に収容する。これにより、ケーブル41は3分ボルト42aの一側方において支持される。なお、支持具1は3分ボルト42aに固定する前に、予め支持部2にケーブル41を支持させておき、この状態で3分ボルト42aに固定することもできる。このようにして、支持具1に支持されたケーブル41は二重天井等において複数の支持具1により布設路に沿って水平方向等に布設される。
【0024】
なお、一旦ボルト42に固定した後、支持具1を取り外すには、カバー31の上下一対の突片33,33を上下両側から挟圧してその間隔を弾性的に僅かに狭めれば、一対の係合部34,34は互いに近接する方向に僅かに移動し、係合爪34aとベース11の第1被係合部18との係止状態が解除されるので、支持具1を取り外すことができる。
【0025】
次に、1個の支持具1を使用してケーブル41を4分ボルト42bの一側方に支持させるには、予め、図4に示すように、3分ボルト42a用の挟持片14を、ベース11の接合部16を軸に外方に向けて180度回動し固定部3の外側に移動させておく。以下、上記3分ボルト42aの場合と同様にして、図4に示すようにして、4分ボルト42bの側方からベース11の挟持凹部12を4分ボルト42bの外周面にあてがい、ヒンジ4を軸にカバー31をベース11側に回動して閉じる。このとき、接合部16を軸に180度回動して外側に移動させている挟持片14は、カバー31の上下一対の突片33,33間の空間を通過するので、カバー31と干渉することはなく、挟持片14がカバー31の回動の妨げになることはない。カバー31の上下一対の係合部34,34は、3分ボルト42aの場合と同様に、第1被係合部18に係止させる。
【0026】
これにより、図5に示すように、挟持片14が外側にはみ出た状態で、4分ボルト42bはベース11の挟持凹部12とカバー31の挟持凹部32とで挟持され、支持具1は4分ボルト42bに固定される。このとき、ベース11の挟持凹部12の係止突条13が4分ボルト42bのねじ山に係止するので、支持具1は4分ボルト42bに対して上下方向に移動するのが防止され、一定高さに保持される。なお、4分ボルト42bへの支持具1の固定は、ベース11の接合部16を切断して挟持片14を除去して行なってもよい。
【0027】
次に、2個の支持具1を連結して使用することによりケーブル41をボルト42の両側方に支持させる方法について説明する。
2個の支持具1を使用してケーブル41を3分ボルト42aの両側方に支持させるには、まず、図6(a)に示すように、両側方から挟むようにして、2個の支持具1の各挟持片14を3分ボルト42aにあてがう。このとき、カバー31の係合部34の先端は第1被係合部18近辺に位置し、両支持具1は図6(a)の上下方向に僅かに位置ずれした状態にある。
【0028】
次に、図6(b)に示すように、それぞれのカバー31の係合部34を互いに他の支持具1のベース11の案内壁20に沿って移動させ、第2被係合部19に位置させる。このとき、両支持具1はほぼ一直線上に並んだ状態となり、各ベース11同士が対面した状態となる。次いで、カバー31の係合部34を押し込むことにより、他の支持具1におけるベース11の第2被係合部19の角孔19aに挿入し、図6(c)に示すように、係合爪34aを第2被係合部19に係止させる。
【0029】
これにより、3分ボルト42aは2個の支持具1におけるベース11の挟持片14の挟持凹部15によって挟持され、2個の支持具1は互いに連結されると同時に3分ボルト42aに固定される。このとき、3分ボルト42aの外周面の全周に至って一対の挟持片14,14の挟持凹部15,15が密接するので、両支持具1は安定して3分ボルト42aに固定されるとともに、各挟持片14の挟持凹部15のねじ溝17が3分ボルト42aのねじ山に係止するので、支持具1は3分ボルト42aに対して上下方向に移動するのが防止され、一定高さに保持される。2個の支持具1が連結され、3分ボルト42aに固定されたら、両支持部2の上部の挿入開口2aからケーブル41を挿入し、内部に収容することにより、ケーブル41は3分ボルト42aの左右両側方に支持される。
【0030】
次に、支持具1の作用を説明する。
支持具1は、ベース11とカバー31とでボルト42を挟持することにより、1個の支持具1のみでボルト42に固定できるとともに、ベース11と他の支持具1のベース11とを対面させてボルト42を挟持することにより、2個の支持具1を連結できると同時にボルト42に固定することができる。これにより、1種類の支持具1で、1個単独で使用してケーブル41をボルト42の一側方に支持させることができるとともに、2個連結して左右両側方にケーブル41を支持させることができる。その結果、部品管理が容易となるとともに、部品コストが削減される。
【0031】
加えて、支持具1は支持部2を1個のみ備えているから、嵩張らない。また、ケーブル41をボルト42の一側方に支持させるとき、仮に、2個の支持部を備えた支持具を使用した場合には、一方にケーブル41を支持しない空きの支持部を生ずるが、本発明の支持具1はそのようなことはない。
即ち、仮に、支持具が左右両側に支持部を備えたものであると、1個で、ケーブル41をボルト42の一側方に支持させる場合と両側方に支持させる場合とのいずれにも対応することはできるが、両側に支持部が突設されているから、嵩張る。また、一側方のみに支持させたときには、両支持部のうちの片方は使用されず空きの状態となるから、無駄な部分を生じ得る。
しかし、本発明の支持具1は、上述のように、支持部2は1個のみ設けられているから、嵩張らないし、ケーブル41をボルト42の一側方に支持させるときでも、使用しない空きの支持部2が生ずることはなく、無駄な部分は生じない。
【0032】
また、1個単独で使用してケーブル41をボルト42の一側方に支持させるために、カバー31に設けられた係合部34及びベース11に設けられた第1被係合部18のうち、カバー31の係合部34は、2個連結して左右両側方にケーブル41を支持させるときに、他の支持具1のベース11の第2被係合部19とも係合する。つまり、カバー31の係合部34は、ケーブル41をボルト42の一側方に支持させる場合と両側方に支持させる場合との双方に共用できる。したがって、係合部の数を減らして支持具1の構造を簡素化できる。また、簡素化により、係合部と各被係合部とを係合させる際に係合箇所を確認し易い。
【0033】
ところで、上記実施形態においては、ボルト42を挟持するための係合部及び被係合部を、カバー31の係合部34及びベース11の第1被係合部18、第2被係合部19で形成しているが、本発明を実施する場合は、これらに限られるものではない。以下に、係合部及び被係合部の変形例を挙げる。
【0034】
まず、第1変形例の支持具を図7に示す。
図7(a)において、支持具1Aは、ベース11の前面11aにおいて開口12aを挟んでヒンジ4と反対側の位置には、上下両端部に、後述するカバー31の被係合部に係合可能な角柱状の係合突起からなる一対の係合部21,21が突設されている。そして、各係合部21における先端にはカバー31の被係合部の角孔に挿通された後これらに弾性的に係止される係合爪21aが設けられている。ここで、上下一対の係合部21,21の係合爪21a,21aは互いに反対側を向く方向に設けられている。また、ベース11の前面11aにおいて開口12aを挟んだヒンジ4側の位置には、上下両端部に、他の支持具1Aのベース11の係合部21が係合可能な被係合部22が設けられている。この被係合部22は、ベース11の前面11aに、他の支持具1Aのベース11の係合部21が挿入される角穴22aが形成され、この角穴22aの底部に外部側に開放する横孔22bが形成されてなる。この被係合部22は、ベース11の前面11aから角穴22a内に他の支持具1Aのベース11の係合部21が挿入されると、他の支持具1Aの係合部21の係合爪21aが横孔22bから弾性的に外部側に突き出してこの横孔22bに係止するようになっている。
【0035】
一方、カバー31の被係合部35は、カバー31におけるヒンジ4と反対側の先端縁部の上下両端部に一対の突片36が図7(a)の略水平方向に突設され、この突片36にベース11の係合部21が挿入可能な角孔35aが形成されてなる。したがって、カバー31の被係合部35の角孔35aにベース11の係合部21が挿入されると、係合部21の係合爪21aが被係合部35に弾性的に係止される。なお、図7及び以下の図8、図9においては、3分ボルト42aを挟持する挟持片14の図示は省略してある。
【0036】
この支持具1Aを単独で使用してケーブル41をボルト42の一側方に支持させる場合は、ベース11とカバー31とを閉じてベース11の係合部21をカバー31の被係合部35の角孔35aに挿入し、ボルト42を挟持せしめることにより、支持具1Aをボルト42に固定する。
【0037】
そして、2個の支持具1Aを連結してケーブル41をボルト42の両側方に支持させる場合は、図7(a)に示すように、2個の支持具11Aのベース11同士が対面した状態で、互いにベース11の係合部21を他の支持具1Aのベース11の被係合部22の角穴22aに挿入し、係合爪21aを被係合部22の横孔22bに係止させる。すると、図7(b)に示すように、2個の支持具1Aは互いに連結されると同時にボルト42を挟持し、ボルト42に固定される。これにより、ケーブル41はボルト42の両側方に支持させることができる。
【0038】
なお、2個の支持具1Aをボルト42に固定した後、この固定を解除するには、図7(b)の矢印で示すように、ベース11の被係合部22の横孔22bの上方からドライバ等の工具を使用してベース11の係合部21の係合爪21aを押し下げて係合部21と被係合部22との係合を解除すればよい。
【0039】
この第1変形例の支持具1Aは、図1等に示した上記実施形態の支持具1の場合には、カバー31側の係合部34が2個の支持具1を連結するときにも使用されるのに対し、ベース11の係合部21及びカバー31の被係合部35のうち、ベース11側の係合部21が2個の支持具1Aを連結するときにも使用され、他の支持具1Aのベース11の被係合部35に係合する。なお、この支持具1Aは、2個が最初から一直線上に並んでベース11同士が対面した状態で、互いを近接させて連結し、ボルト42に固定することができる。
【0040】
次に、第2変形例の支持具を図8に示す。
第2変形例の支持具1Bは、図7に示した支持具1Aと比較して、係合部が1個追加されており、図8(a)に示すように、ベース11には、係合部21の他に、側面11bに補助係合部23が立設されている。この補助係合部23は、係合部21と同様に形成されていて、2個の支持具1Bを連結するときには、カバー31の被係合部35の角孔35aに挿入され係合する。即ち、支持具1Bは、2個を連結するときは、図8(b)に示すように、ベース11の係合部21が他の支持具1Bのベース11の被係合部22と係合することに加え、ベース11の補助係合部23が他の支持具1Bのカバー31の被係合部35と係合する。なお、支持具1Bを単独でボルト42に固定するときは、第1変形例の支持具1Aと同じく、ベース11の係合部21とカバー31の被係合部35とが係合してベース11とカバー31とでボルト42を挟持する。この支持具1Bの場合、ベース11の補助係合部23が追加され、しかも、係合部21に対して係合方向が90度異なるので、図7の支持具1Aと比較して、連結強度が大きく、より安定してボルト42に固定される。
【0041】
第2変形例の支持具1Bは、単独で使用してボルト42に固定してケーブル41をボルト42の一側方に支持させるために設けられたベース11の係合部21及びカバー31の被係合部35の双方が、2個連結してケーブル41をボルト42の両側方に支持させるときにも使用されるものを例示する。
【0042】
次に、第3変形例の支持具を図9に示す。
第3変形例の支持具1Cは、図7に示した支持具1と比較して、図9(a)に示すように、ベース11の被係合部22の部分に、これに替えて、他の支持具1Cのベース11の係合部21を収容可能な干渉回避空間24が形成されており、また、ベース11の背面11c側に被係合部25が突設され、更に、カバー31の突片36の端部に係合部37が立設されている。前記干渉回避空間24は2個の支持具1Cを連結する際に、他の支持具1Cのベース11の係合部21がベース11の前面11aにおけるヒンジ4側の部分と干渉して2個連結の支障となるのを回避するために設けられた空間であり、他の支持具1Cのベース11の係合部21全体を収容可能な大きさを有する。ベース11の背面11c側の被係合部25は、2個の支持具1Cを連結するときに、他の支持具1Cのカバー31の係合部37と対応する位置に設けられており、この係合部37と係合可能となっている。
【0043】
この支持具1Cは、単独で使用するときには、ベース11の係合部21とカバー31の被係合部35とが係合し、2個連結するときには、図9(b)に示すように、ベース11の被係合部25とカバー31の係合部37とが係合する。即ち、第3変形例の支持具1Cにおいては、1個単独でケーブル41を支持するときに使用する係合部21及び被係合部35は、いずれも、2個連結するときには使用されず、共用されるものではない。2個連結してケーブル41を支持するときは、係合部21及び被係合部35とは別個の係合部37及び被係合部25が使用される。
【0044】
ベース11とカバー31とを閉じてボルト42を挟持するための係合部及び被係合部は簡素化のためできる限り支持具を単独で使用するときと2個連結して使用するときとに共用できるものが望ましいが、必ずしもそれに限られるものではなく、第3変形例は共用されない支持具を例示する。
【0045】
ところで、上記各実施形態の支持部2は、固定部3のベース11において挟持凹部12の開口12aとは反対側の背面11cに突設されているが、本発明を実施する場合には、固定部3のいずれか側方即ちベース11のいずれか側面11b側に設けてもよい。図10に示す支持部2は、第1被係合部18及び第2被係合部19が設けられている側面11b側に設けられ、かつ、支持部2の幅方向の中心を通る中心線Lが固定部3の中心Oを通る位置に設けられている。この位置に設けたのは、支持部2には、ケーブル41の荷重により固定部3の中心Oを中心として下方に回動させようとするモーメントが発生するが、支持部2が固定部3内を貫通するボルト42の外周面と当接することによって前記下方への回動が阻止され、支持部2に加わる負荷がボルト42によって支持され軽減されるからである。したがって、ベース11の側面11b側に設ける場合は、支持部2は図10に示す位置に設けるのが望ましい。
【0046】
なお、図1等に示す、支持部2がベース11の背面11cに突設されている前述の支持具1も、図4等からも明らかなように、支持部2の幅方向の中心を通る中心線は固定部3の中心を通るから、同様に、支持部2に加わるケーブル41の負荷はボルト42によって支持される。但し、図10に示す支持具1の場合、支持部2が突設されている部分の強度は、図1等に示す支持具1のベース11と比べると小さいので、前記ボルト42の支持による効果は大きい。
更に、支持部2は固定部3に対して水平方向に所定角度回動可能に接続してもよい。
【0047】
また、支持部2は上方が開口した略U字状に形成されているが、この形状に限られるものではなく、ケーブル41の種類、大きさ等に適した形状とすればよい。
そして、支持部2の内壁面には、必要に応じて、収容されたケーブル41の抜脱を防止するための小突起を内壁面に沿って多数設けてもよい。
加えて、支持部2に収容されたケーブル41は結束バンド等を使用して結束し、支持部2からの抜脱を防止するようにしてもよい。
【0048】
また、上記各実施形態の支持具は、ベース11とカバー31とを閉じてボルト42を挟持するために、係合部及び被係合部を設け、これらを互いに係合させることにより挟持しているが、ボルト42の挟持手段はこれらの係合部及び被係合部による係合手段に限られるものではなく、例えば、ベース11及びカバー31におけるヒンジ4と反対側の側端部に対向するフランジを突設し、両フランジをねじ止めするなどしてボルト42を挟持するようにしてもよい。
【0049】
加えて、上記各実施形態の支持具は、接合部16を軸に回動して固定部3の外側に移動可能な挟持片14を設けて3分ボルト42a及び4分ボルト42bのいずれにも対応して固定できるようにしているが、挟持片14等を設けることなく、3分ボルト42a及び4分ボルト42bのいずれか一方のみに対応して固定するものとしてもよい。
【0050】
そして、上記実施形態において、ベース11の第1被係合部18には、カバー31の係合部34の挿入を案内する案内壁20が設けられているが、円滑に係合させることができれば、必ずしもこれを設ける必要はない。
【0051】
なお、上記各実施形態の支持具は、建物の二重天井に垂設された吊りボルト等のボルト42にケーブル41を支持させるものに適用しているが、本発明は、他の配線材を支持する場合や、二重床の空間等に設けられた高さ調整ボルト等のボルト42に給水管、給湯管等の配管材を支持させる場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1、1A、1B、1C 支持具
2 支持部
3 固定部
4 ヒンジ
11 ベース
18 第1被係合部
19 第2被係合部
21、34、37 係合部
22、25、35 被係合部
23 補助係合部
31 カバー
41 ケーブル
42 ボルト
42a 3分ボルト
42b 4分ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線・配管材を支持する支持部と、ボルトに対して固定可能な固定部とを備えた配線・配管材支持具であって、
前記固定部は、ヒンジを介して開閉可能な一対のベースとカバーとからなり、前記ベースには前記支持部を備え、前記ベースと前記カバーとを閉じることにより前記ボルトを挟持して固定可能に形成され、かつ、前記ベースを他の前記支持具のベースと対面させた状態でこれら一対のベースにより前記ボルトを挟持して該他の支持具と連結して該ボルトに固定可能に形成されてなることを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
前記ベース及び前記カバーは、互いに係合する係合部及び被係合部を備え、該係合部及び該被係合部の少なくとも一方は、前記他の支持具との連結にも使用されることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−281369(P2010−281369A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134437(P2009−134437)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】