説明

配線具及びワイヤハーネス

【課題】電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、配線具を電線に取り付けるための工数を簡素化できること。
【解決手段】配線具10は、凹凸をなす板状に成形され、電線9を挟み込んで組み合わされるベース部1及びカバー部2を備える。ベース部1は、配線空間に面した配線部11と、ベース部1の外縁部において電線9が固定される電線固定部14,15とを有する。カバー部2は、配線部11に対して配線空間を隔てて対向する対向壁部21を有する。さらに、配線具10は、カバー部2をベース部1に対して留める仮留め機構を備える。仮留め機構は、ベース部1及びカバー部2の一方又は両方に形成され窪みを形成する仮留め用凹部16と、仮留め用凹部16に対向する位置に突起して形成され、仮留め用凹部16の窪みに嵌り込むことによりカバー部2をベース部1に対して留める仮留め用凸部26とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を予め定められた形状で保持する配線具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線に取り付けられた樹脂製の配線具を備え、電線がその配線具によって予め定められた経路に沿って保持された状態で敷設されることが多い。例えば、従来の一般的なワイヤハーネスにおいて、電線は、粘着テープ又はベルト部材などの結束材によって板状又は棒状の樹脂部材に固定される。これにより、電線は、予め定められた形状で保持される。
【0003】
また、特許文献1に示されるワイヤハーネスは、電線束を挟み込む状態で熱プレスによって固着された2つの板状の樹脂部材からなる配線具を備える。一方の樹脂部材は、平板状の基部と基部から起立するリブとからなる基体である。他方の樹脂部材は、基体のリブが挿入される貫通孔が形成され、基体に重ねられた状態で基体の基部に固着される平板状の被覆体である。
【0004】
特許文献1に示される配線具において、基体のリブは、配線経路の両側に形成され、配線のガイド部として機能する。また、基体のリブは、被覆体に形成された孔に通され、被覆体は、加熱されながらプレス加工されることにより、基体上の電線を跨ぐ形状へ変形しつつ、基体におけるリブの間の配線部以外の部分に対して溶着される。
【0005】
ところで、ワイヤハーネスの形状において特に重要なことは、各電線が、接続相手に近い予め定められた基準位置から予め定められた長さで存在することである。ここで、接続相手は、電装機器又は他の電線の端部に設けられたコネクタなどである。
【0006】
例えば、自動車の座席の下側に配置されるワイヤハーネスにおいては、各電線の端部のコネクタが、座席駆動用のモータなどの機器又は他の電線のコネクタに対して過不足なく届くように、各電線における端部のコネクタまたはコネクタに近い部分が、予め定められた位置(基準位置)に固定されることが重要である。
【0007】
一方、ワイヤハーネスにおいて、基準位置に至るまでの途中の電線の経路は、比較的許容範囲の広い既定の領域内に収まっていればよいことがある。例えば、自動車の座席の下側に配置されるワイヤハーネスにおいては、各電線における基準位置に至るまでの途中の部分は、座席駆動用のモータなどの機器と座席との間の空間内に収まっていれば、任意の経路での配線が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−27242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の配線具が採用された場合、被覆体を成形しつつ基体に溶着させるために、大がかりなホットプレス加工装置が必要となる。
【0010】
また、電線は、弾性を有するため、基体の表面から浮き上がった状態になりやすく、さらに、基体の表面から浮き上がって基体のリブと重なる状態にもなりやすい。そのため、特許文献1に配線具が採用された場合、基体に配置された電線の上に載置された被覆体の位置及び姿勢を安定的に保持しながら、配線具をホットプレス加工装置にセットすることは難しい。
【0011】
以上に示したように、特許文献1の配線具は、電線への取り付けのために大がかりな装置を要する上、基体と被覆体とを安定した品質で接合することが難しいという問題点を有している。
【0012】
また、従来の一般的なワイヤハーネスにおいては、図板などの大型の治具と、コルゲートチューブなどの多くの樹脂部材と、その樹脂部材に電線を固定するための多くの結束材と、多くの部材を電線に取り付けるための煩雑な作業とが必要となる。
【0013】
本発明は、電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、配線具を電線に取り付けるための工数を簡素化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る配線具は、電線を予め定められた形状で保持する配線具であり、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、凹凸をなす板状に成形された部材からなり、電線が配置される配線空間に面した配線部及び当該部材の外縁部において電線が固定される電線固定部が形成された基体である。
(2)第2の構成要素は、凹凸をなす板状に成形された部材からなり、基体の配線部に対して配線空間を隔てて対向する対向壁部が形成され、基体との間に電線を挟み込む状態で基体に対して組み合わされる被覆体である。
(3)第3の構成要素は、基体の一部と被覆体の一部とにより構成され、被覆体を基体に対して留める仮留め機構である。この仮留め機構は、仮留め用凹部と仮留め用凸部とからなる。仮留め用凹部は、基体における配線部以外の部分及び被覆体における対向壁部以外の部分のうちの一方又は両方に形成され、組み合わされる相手側に開口する窪みを形成する部分である。仮留め用凸部は、被覆体における対向壁部以外の部分及び基体における配線部以外の部分のうちの一方又は両方における仮留め用凹部に対向する位置に突起して形成され、仮留め用凹部の窪みに嵌り込むことにより被覆体を基体に対して留める部分である。
【0015】
本発明に係る配線具において、仮留め用凹部及びこれに嵌り込む仮留め用凸部のペアは、基体の外縁部における、配線部から基体の外側へ亘って配置される電線が通過する部分の側方の位置に設けられていることが望ましい。
【0016】
また、本発明に係る配線具において、基体及び被覆体が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていることが考えられる。また、この場合、仮留め用凹部及びこれに嵌り込む仮留め用凸部のペアは、接続部と前記配線空間との間の位置に設けられていることが望ましい。
【0017】
また、本発明に係る配線具において、基体及び被覆体が、平板状の樹脂部材の真空成形により得られた部材であることが考えられる。
【0018】
また、本発明は、本発明に係る配線具と、その配線具が取り付けられた電線とを備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【0019】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、仮留め機構における仮留め用凹部と仮留め用凸部との接触部が溶着されていることが考えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明において、電線は、配線具を構成する基体及び被覆体の間に挟み込まれる。さらに、板状の基体において内側の配線部から外縁部に亘って配置された電線は、外縁部における予め定められた位置に設けられた電線固定部で固定される。
【0021】
従って、本発明に係る配線具が取り付けられた電線において、電線固定部で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線固定部で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線の形状が配線具によって保持される。また、電線は、基体及び被覆体によって保護される。
【0022】
また、本発明に係る配線具において、被覆体は、凸部と凹部との嵌め合い構造によって基体に対して留められる。そのため、電線が配線部から浮き上がっていても、仮留め用凸部を仮留め用凹部の窪みに嵌め入れるというごく簡易な作業により、電線の中間部分が配線部と対向壁部との間の配線空間に収容される状態で、被覆体が基体に固定される。また、基体及び被覆体は、仮留め機構により、電線を挟み込んで組み合わされた一定の形状で保持されるので、基体と被覆体とを安定した品質で接合することも容易である。
【0023】
以上に示したことから、本発明によれば、電線を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具を備えるワイヤハーネスにおいて、配線具を電線に取り付けるための工数を簡素化できる。
【0024】
また、仮留め機構、即ち仮留め用凹部及びこれに嵌り込む仮留め用凸部のペアが、基体の配線部から基体の外側へ亘って配置される電線が通過する部分の側方の位置に設けられていることが好ましい。基体の外縁部における電線が通過する部分は、電線が変位することによって電線から力が加わりやすい。仮留め機構が、電線が通過する部分の側方(近傍)に設けられていれば、電線から加わる力によって被覆体が基体から外れるという不具合が生じにくい。
【0025】
また、本発明において、基体及び被覆体が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていればなお好適である。この場合、部品点数が少なくなり、配線具を電線に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0026】
また、基体及び被覆体が接続部を介して一体に形成されている場合、接続部の弾性によって基体と被覆体とを引き離す力が、接続部に近い部分に加わりやすい。そのため、仮留め機構が、接続部と配線空間との間の位置に設けられていれば、接続部の弾性力によって被覆体が基体から外れるという不具合が生じにくい。
【0027】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。従って、本発明において、基体及び被覆体が、平板状の部材の真空成形により得られた部材であれば、製造工数及び製造コストが低減される。なお、特許文献1に示される平板状のリブを有する基体は、一般に、平板状の部材の真空成形によって得ることはできない。
【0028】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、仮留め機構における仮留め用凹部と仮留め用凸部との接触部が溶着されていれば、基体及び被覆体は、組み合わされた状態で強固に接合される。また、仮留め機構の部分の溶着は、超音波溶接機などの小型のスポット加熱装置を用いた簡易な工程で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る配線具10の斜視図である。
【図2】配線具10の斜視図に領域区分を表す網掛けが付された図である。
【図3】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100の斜視図である。
【図4】配線具10及び電線9の斜視図である。
【図5】ワイヤハーネス100の一部の断面図である。
【図6】配線具10の電線結束部に電線及び結束ベルトが固定される様子を示す斜視図である。
【図7】電線が固定された電線結束部の正面図である。
【図8】配線具10のコネクタ支持部の斜視図である。
【図9】電線の端部におけるコネクタの部分の斜視図である。
【図10】コネクタが固定されたコネクタ支持部の正断面図である。
【図11】配線具10に適用可能な他の実施例に係るコネクタ支持部及びコネクタの斜視図である。
【図12】配線具10に適用可能な他の実施例に係る仮留め用凹部の平面図及び縦断面図である。
【図13】配線具10に適用可能な他の実施例に係る仮留め用凸部の平面図及び縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0031】
<概略構成>
まず、図1から図5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る配線具10及び本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100の概略の構成について説明する。なお、図5は、図3に示されるD−D平面における断面図である。
【0032】
ワイヤハーネス100は、複数の電線9からなる電線群とその電線群に取り付けられた配線具10とを備える。ワイヤハーネス100は、例えば、車両における座席の下方のスペース、天井裏のスペース又はトランクルームなどに取り付けられ、周囲に存在する他の電線又は電装機器と接続される。そのため、ワイヤハーネス100が備える電線9は、絶縁電線と、その絶縁電線の端部に取り付けられたコネクタ91とからなるコネクタ付電線である。
【0033】
ワイヤハーネス100において、複数の電線9は、予め定められた形状に保持された状態で、配線具10によって一体化されている。そのため、ワイヤハーネス100は、クランプなどの固定具を用いて簡易に所定の位置に取り付け可能である。
【0034】
本実施形態において、配線具10は、板状の樹脂部材が真空成形されることにより得られる部材である。配線具10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリアミド(PA)などの樹脂の部材である。
【0035】
図1に示されるように、配線具10は、ベース部1と、それに重ねられるカバー部2と、ベース部1とカバー部2とに連なってそれらを一体に接続する接続部3と、により構成されている。接続部3は、弾性的に曲げ変形可能な部分である。カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされる。なお、ベース部1及びカバー部2は、それぞれ基体及び被覆体の一例である。
【0036】
図3に示されるように、配線具10は、接続部3が曲がることによって接続部3の部分で折り返し、カバー部2がベース部1に重なる。ベース部1及びカバー部2は、それらの間に電線9を挟み込む状態で固着され、これにより、配線具10は、ベース部1とカバー部2との間に挟み込まれた電線9を予め定められた形状で保持する。
【0037】
<ベース部>
配線具10を構成するベース部1は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。前述したように、本実施形態におけるベース部1は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。図1及び図2に示されるように、ベース部1は、配線部11と第一段差部12と第一枠部13とを有している。
【0038】
図2に示される斜視図のベース部1において、格子の網掛けが記された領域は、配線部11の領域であり、斜線の網掛けが記された領域は、第一枠部13の領域である。第一段差部12は、配線部11の外縁と第一枠部13の内縁とに連なって形成されている。
【0039】
ベース部1を構成する配線部11は、電線9が配置される配線空間90に面する板状の部分である。配線部11には、配線空間90を区分する仕切は形成されていない。但し、配線部11における比較的広く形成された部分には、補強用の複数の凸部111が形成されている。凸部111は、後述する第一段差部12の高さ以下の高さで形成されている。なお、配線部11は、ベース部1の底面を形成する底板部であるともいえる。
【0040】
配線部11に形成された凸部111は、配線部11の底面を形成する平板状の底板部の一部が成形されて配線空間90側へ盛り上がった中空の部分である。図1に示される例では、凸部111の形状は、正六角錐がその底面に平行な面で切断されたときに底面から切断面に至る部分が形成する形状である。なお、凸部111の形状は、例えば円柱状などの他の形状であってもよい。
【0041】
ベース部1を構成する第一段差部12は、配線部11の外縁に沿って形成されるとともに配線部11から配線空間90の側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、配線部11の外縁は、第一段差部12の内縁に沿って形成されている。本実施形態における第一段差部12は、表面が配線部11の縁から末広がりに傾斜して形成されている。
【0042】
図1に示される例では、第一段差部12は、全体が一定の高さで形成されているわけではなく、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含む。例えば、図1に示される背高段差部121は、第一段差部12の一部であり、他の部分よりも高く形成されている。但し、第一段差部12は、少なくとも配線部11の凸部111の高さ以上の高さで形成されている。
【0043】
ベース部1を構成する第一枠部13は、第一段差部12の外縁に沿って形成された部分であり、ベース部1の外縁部分をなす。第一枠部13は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。図1に示される例では、第一枠部13は、平坦な部分と凹部及び凸部とが混在する形状で形成されている。
【0044】
また、図1に示されるように、第一枠部13の一部には、電線結束部14、コネクタ支持部15及び仮留め用凹部16が形成されている。電線結束部14及びコネクタ支持部15は、配線部11から第一枠部13へ亘って配置される電線9が固定される部分である。
【0045】
なお、電線結束部14及びコネクタ支持部15は、電線固定部の一例である。電線結束部14及びコネクタ支持部15の詳細な説明、及びベース部1に形成された仮留め用凹部16についての説明は後に示す。
【0046】
配線具10において、ベース部1の第一段差部12は、凹凸をなす板状のベース部1の剛性を高める補強部として機能する。そのため、ベース部1は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。
【0047】
<カバー部>
配線具10を構成するカバー部2は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。前述したように、本実施形態におけるカバー部2は、ベース部1とともに、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。図1及び図2に示されるように、カバー2は、対向壁部21と第二段差部22と第二枠部23とを有している。さらに、カバー部2は、第二枠部23の一部及び第二枠部の外側に形成された複数の仮留め用凸部26も有している。
【0048】
図2に示される斜視図のカバー部2において、格子の網掛けが記された領域は、対向壁部21の領域であり、斜線の網掛けが記された領域は、第二枠部23の領域である。第二段差部22は、対向壁部21の外縁と第二枠部23の内縁とに連なって形成されている。
【0049】
なお、以下の説明において、カバー部2の構成要素の位置又は形状が、ベース部1と関連付けて説明される場合、カバー部2がベース部1に対して重ねられて組み合わされた状態を前提としている。
【0050】
図5に示されるように、カバー部2を構成する対向壁部21は、ベース部1の配線部11に対して配線空間90を隔てて対向する部分である。対向壁部21には、配線空間90を区分する仕切は形成されていない。本実施形態における対向壁部21は、その全体が平板状に形成されている。しかしながら、ベース部1における配線部11の凸部111と同様の凸部が、対向壁部21に形成されることも考えられる。
【0051】
カバー部2を構成する第二段差部22は、対向壁部21の外縁に沿って形成されるとともに対向壁部21からベース部1の反対側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、対向壁部21の外縁は、第二段差部22の内縁に沿って形成されている。本実施形態における第二段差部22は、表面が対向壁部21の縁から末広がりに傾斜して形成されている。
【0052】
図1に示される例では、第二段差部22は、全体が一定の高さで形成されている。しかしながら、第二段差部22が、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含むことも考えられる。
【0053】
カバー部2を構成する第二枠部23は、第二段差部22の外縁に沿って形成された部分であり、カバー部2の外縁部分をなす。第二枠部23は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。図1に示される例では、第二枠部23の一部に、ベース部1側へ突出する凸部が形成されている。なお、カバー部2に形成された仮留め用凸部26についての説明は後に示す。
【0054】
配線具10において、カバー部2の第二段差部22は、凹凸をなす板状のカバー部2の剛性を高める補強部として機能する。そのため、カバー部2は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。
【0055】
<接続部>
接続部3は、直線状の溝を形成するように折り返して湾曲した板状に形成された部分である。このような形状で形成された接続部3は、それが形成する溝を開閉する方向において可撓性を有し、弾性的に曲げ変形可能に構成されている。
【0056】
接続部3が溝に沿って折り返されると、カバー部2が、ベース部1に対して予め定められた位置で重なる。
【0057】
<仮留め機構>
ベース部1における第一枠部13の一部には、仮留め用凹部16が形成されている。仮留め用凹部16は、組み合わされる相手側に開口する窪みを形成する部分である。本実施形態では、仮留め用凹部16がベース部1に設けられているため、仮留め用凹部16が形成する窪みは、カバー部2側に開口している。
【0058】
また、図1に示される例では、5つの仮留め用凹部16が、第一枠部13における電線結束部14の側方の位置と、接続部3と配線空間90との間の位置とに分かれて形成されている。なお、ベース部1は凹凸をなす板状の部材であるため、仮留め用凹部16は、カバー部2に対向する側の反対側においては凸部を形成している。
【0059】
一方、カバー部2における第二枠部23の一部及び第二枠部23の外側には、ベース部1の仮留め用凹部16の窪みに嵌り込む仮留め用凸部26が形成されている。仮留め用凸部26は、ベース部1とカバー部2とが組み合わされたときに、仮留め用凹部16に対向する位置に突起して形成された部分である。
【0060】
図1に示される例では、5つの仮留め用凸部26が、5つの仮留め用凹部16各々に対向する位置に形成されている。なお、カバー部2は凹凸をなす板状の部材であるため、仮留め用凸部26は、ベース部1に対向する側の反対側においては窪みを形成している。
【0061】
仮留め用凸部26は、仮留め用凹部16の窪みに嵌り込むことにより、カバー部2をベース部1に対して留める部分である。即ち、配線具10において、ベース部1の一部に形成された仮留め用凹部16及びカバー部2の一部に形成された仮留め用凸部26は、カバー部2をベース部1に対して留める仮留め機構を構成している。
【0062】
仮留め用凸部26の側面の外形は、わずかに圧縮した状態で仮留め用凹部16の内壁面に内接する形状で形成されている。これにより、仮留め用凸部26が、仮留め用凹部16の窪みへ押し入れられると、仮留め用凸部26の側面と仮留め用凹部16の内壁面との摩擦抵抗により、カバー部2は、ベース部1の配線部11を覆う状態でベース部1に対して留められる。
【0063】
以上に示したように、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26は、凸部と凹部との嵌め合い構造により、カバー部2をベース部1に対して配線部11を覆う状態で留める仮留め機構を構成している。
【0064】
図1に示される例では、仮留め用凹部16は、概ね四角柱状の窪みを形成し、仮留め用凸部26の外形は、概ね仮留め用凹部16の窪みに内接する円柱状に形成されている。しかしながら、仮留め用凹部16の窪み及び仮留め用凸部26の形状は、他の形状であることも考えられる。
【0065】
図12は、配線具10に適用可能な他の実施例に係る仮留め用凹部16の平面図及び縦断面図である。また、図13は、配線具10に適用可能な他の実施例に係る仮留め用凸部26の平面図及び縦断面図である。なお、図12(a)は平面図、図12(b)は、図12(a)に示されるE−E断面の図である。また、図13(a)は平面図、図13(b)は図13(a)に示されるF−F断面の図である。
【0066】
図12に示されるように、仮留め用凹部16における窪みを形成する内側の側面が、深さ方向に沿う溝161をなす形状で形成されていることが考えられる。図12に示される例では、2つの溝161が、仮留め用凹部16における窪みを形成する内側の側面における相互に対向する位置に形成されている。なお、溝161の部分は、裏側から見れば、仮留め用凹部16の窪みの深さ方向に沿う稜線を形成する縦長の凸部を形成している。
【0067】
図12に示される形状の仮留め用凹部16は、仮留め用凸部26が嵌め入れられたときに、溝161の幅が拡がって窪みの幅が拡がるように弾性変形しやすい。そのため、仮留め用凹部16の窪みが、仮留め用凸部26の幅よりも若干小さな幅で形成された場合に、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26とが、仮留め用凹部16の弾性力によってより強固に密着する。
【0068】
また、図13に示されるように、仮留め用凸部26の外側の側面が、高さ方向に沿う溝261をなす形状で形成されていることが考えられる。図13に示される例では、2つの溝261が、仮留め用凸部26の外側の側面における正反対の位置に形成されている。なお、溝261の部分は、裏側から見れば、仮留め用凸部26の高さ方向に沿う稜線を形成する縦長の凸部を形成している。
【0069】
図13に示される仮留め用凸部26は、仮留め用凹部16に嵌め入れられたときに、溝261の幅が狭まって仮留め用凸部26の幅が狭まるように弾性変形しやすい。そのため、仮留め用凸部26が、仮留め用凹部16の窪みの幅よりも若干大きな幅で形成された場合に、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26とが、仮留め用凸部26の弾性力によってより強固に密着する。
【0070】
仮留め機構において、図12に示される形状の仮留め用凹部16及び図13に示される仮留め用凸部26の一方又は両方が採用されることが考えられる。
【0071】
なお、図1に示される例では、仮留め用凹部16がベース部1側に設けられ、仮留め用凸部26がカバー部2側に設けられているが、その逆の構成も考えられる。即ち、仮留め用凹部16がカバー部2側に設けられ、仮留め用凸部26がベース部1側に設けられてもよい。また、ベース部1及びカバー部2の各々において、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26とが混在してもよい。
【0072】
<ワイヤハーネス>
図3及び図4に示されるように、ワイヤハーネス100において、複数の電線9の中間部分は、ベース部1の配線部11に配置されている。また、一部の電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1のコネクタ支持部15に固定されている。従って、コネクタ支持部15に固定されたコネクタ91に繋がる電線9の中間部分は、ベース部1における配線部11から第一段差部12を通過して第一枠部13へ亘って配置されている。
【0073】
また、他の一部の電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1の外側に配置され、そのコネクタ91に繋がる電線9の中間部分は、ベース部1における配線部11から第一段差部12と第一枠部13における電線結束部14の部分とを通過して第一枠部13の外側へ亘って配置されている。また、その電線9は、電線結束部14に対して結束ベルトにより固定されている。
【0074】
そして、図3に示されるように、ベース部1及びカバー部2は、配線部11に配置された複数の電線9の中間部分を配線部11と対向壁部21との間に挟み込んで組み合わされた状態で固着されている。本実施の形態では、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26における相互に接触する部分が、超音波溶接機などの小型のスポット加熱装置により溶着され、カバー部2がベース部1に対して固着されている。これにより、カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされた状態で保持されている。
【0075】
例えば、仮留め用凸部26が仮留め用凹部16に嵌め入れられたときに、仮留め用凹部16における窪みの底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触することが考えられる。この場合、図3に示されるように、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触する部分に溶着部6が形成される。
【0076】
ワイヤハーネス100において、ベース部1の配線部11から第一枠部13に亘って配置された電線9は、第一枠部13における予め定められた位置に設けられた電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定される。
【0077】
一方、配線具10が取り付けられた電線9において、配線部11に配置された部分、即ち、ベース部1の第一枠部13に至るまでの途中の中間部分は、ベース部1の内側の領域を占める配線部11とカバー部2の内側の領域を占める対向壁部21との間の仕切の無い配線空間90内に収容される。
【0078】
従って、電線9をベース部1の配線部11に配線する作業において、配線部11内の任意の経路での配線が許容され、電線9が配線部11から浮き上がっていても、カバー部2をベース部1に重ねて押し付けるだけで、電線9は配線部11と対向壁部21との間の配線空間90に収容される。即ち、配線部11から浮き上がる電線9を配線部11に対して押さえ込みつつ電線9を配線するという煩雑な作業は不要である。
【0079】
<電線結束部>
次に、図6及び図7を参照しつつ、電線結束部14について説明する。図6は、配線具10電線結束部14に電線9及び結束ベルト8が固定される様子を示す斜視図である。また、図7は、電線9が固定された電線結束部14の正面図である。なお、図6及び図7において、電線9の端部は省略されて電線9の断面が示されている。
【0080】
図6に示されるように、本実施形態における電線結束部14は、第一枠部13における、電線通過部141と第一ベルト通過部1420と第二ベルト通過部1430とにより構成されている。電線通過部141は、第一枠部13における電線9が通る部分である。第一枠部13において、第一ベルト通過部1420は、電線通過部141に隣接し、第二ベルト通過部1430は、電線通過部141に対し第一ベルト通過部1420の側の反対側に隣接している。
【0081】
第一ベルト通過部1420は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な貫通孔142が形成された部分である。この貫通孔142は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8のベルト部81が通される孔である。従って、貫通孔142は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な大きさで形成されている。なお、結束ベルト8は、結束材の一例であり、ベルト部81は、結束ベルト8における結束対象への巻き付け部である。
【0082】
また、第二ベルト通過部1430は、結束ベルト8のベルト部81の厚みよりも大きな幅で、第一枠部13における外縁から内側へ切れ込んで形成された切れ込み部143が形成された部分である。切れ込み部143は、第一枠部13における電線通過部141に対して貫通孔142が位置する側の反対側に隣接する部分に形成されている。
【0083】
貫通孔142及び切れ込み部143は、例えば、真空成形される前の平板状の樹脂部材に対するトムソン加工などによって形成される。
【0084】
図6に示される例では、切れ込み部143は、第一枠部13における外縁から内側へ切れ込んで形成されたスリット状の外側孔部1431と、外側孔部1431と連通し外側孔部1431の幅よりも広い幅の孔である内側孔部1432とにより構成されている。
【0085】
内側孔部1432は、貫通孔142に対して電線通過部141を挟んで対向する位置に形成され、外側孔部1431から電線通過部141側へ幅が拡がって形成されている。そのため、外側孔部1431における電線通過部141側の縁と内側孔部1432における電線通過部141側の縁との境界部分には、段差1433が形成されている。即ち、内側孔部1432は、外側孔部1431から電線通過部141側へ段差1433を経て幅が拡がって形成されている。
【0086】
結束ベルト8は、まず、切れ込み部143における外側孔部1431から内側孔部1432へ通される。その後、結束ベルト8は、先端が貫通孔142に通されるとともに、電線通過部141と電線通過部141に配置された電線9とに巻き付けられる。
【0087】
以上のようにして取り付けられた結束ベルト8は、図7に示されるように、電線9と電線通過部141とを結束した状態で保持され、電線9は、電線結束部14の電線通過部141に固定される。
【0088】
図6に示される電線結束部14において、貫通孔142の縁部及び切れ込み部143の段差1433の部分は、振動などによって電線9に対する結束ベルト8の位置が移動し、結束ベルト8が第一枠部13から外れることを防止する。そのため、電線9は、電線結束部14において安定的に強固に固定される。また、結束ベルト8の先端を貫通孔に挿入する作業の回数が1回で済み、2つの貫通孔に結束ベルト8を通す場合に比べ、結束作業の工数が軽減される。
【0089】
なお、配線具10に適用可能な電線結束部14の他の例としては、以下のような例も考えられる。第一例に係る電線結束部は、第一枠部13における電線通過部141と、第一枠部13における電線通過部141の両側に隣接する2つの貫通孔が形成された部分とを有する。この場合、2つの貫通孔は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8が通される孔である。
【0090】
<コネクタ支持部>
次に、図8から図10を参照しつつ、コネクタ支持部15について説明する。図8は、配線具10におけるコネクタ支持部15の斜視図である。図9は、電線9の端部におけるコネクタ91の部分の斜視図である。図10は、コネクタ91が固定されたコネクタ支持部15の正断面図である。
【0091】
ここで、コネクタ支持部15について説明する前に、コネクタ支持部15に固定されるコネクタ91の構造について説明する。
【0092】
図9に示されるように、電線9の端部のコネクタ91には、クランプなどの他の部材と連結される連結部92が形成されている。連結部92は、連結される相手側部材の一部が嵌り込む隙間を形成する平行な一対のガイドレール部921と、一対のガイドレール部921に架け渡された架設部922とを有する。
【0093】
また、架設部922におけるコネクタ91の本体の底面に対向する面には、コネクタ91の本体側に向かって突出する突起部923が形成されている。
【0094】
一対のガイドレール部921は、コネクタ91の外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行な凸部を形成している。また、架設部922は、一対のガイドレール部921の間においてコネクタ91の外表面に対して間隔を空けて形成された梁部を形成している。また、突起部923は、架設部922からコネクタ91の外表面に向かって突起して形成された凸部を形成している。
【0095】
図9に示されるコネクタ91は、自動車に搭載されるワイヤハーネスにおいて広く用いられている。一般的には、連結部92に対する相手側部材は、連結部92における一対のガイドレール部921が形成する隙間に嵌り込む嵌入片を有する。また、その嵌入片には、その嵌入片が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔が形成されている。嵌入片が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられることにより、連結部92と相手側部材とは、連結した状態で保持される。
【0096】
一方、図8に示されるように、本実施形態におけるコネクタ支持部15には、一対の平行凹部151と、それら一対の平行凹部151の間の部分である中間板部152とが形成されている。
【0097】
コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、ベース部1における第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びる平行な一対の溝を形成する部分である。より具体的には、第一枠部13の外縁から内側へ直線状に延びて形成された底板部1511と、その底板部1511の両側方において底板部1511に連なって形成された2つの側壁部1512とにより構成されている。側壁部1512は、底板部1511の両側方において底板部1511から起立する段差を形成している。一対の平行凹部151が形成する一対の溝には、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921が嵌め入れられる。
【0098】
また、コネクタ支持部15において、中間板部152は、一対の平行凹部151の間の板状の部分であり、コネクタ91の本端部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入される部分である。本実施形態においては、中間板部152は、平板状である。
【0099】
また、中間板部152には、中間板部152がコネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入されたときに、架設部922に形成された突起部923が嵌り込む孔153が形成されている。
【0100】
図10に示されるように、コネクタ91がコネクタ支持部15に固定された状態において、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921は、コネクタ支持部15における一対の平行凹部151に嵌め入れられている。さらに、コネクタ支持部15の中間板部152は、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入されており、連結部92の架設部922に形成された突起部923が、中間板部152に形成された孔153に嵌り込んでいる。
【0101】
コネクタ支持部15において、一対の平行凹部151は、一対の平行凹部151の溝の長手方向に対して直交する方向におけるコネクタ91の動きを制限する。また、中間板部152は、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入されることにより、一対の平行凹部151の溝の深さ方向におけるコネクタ91の動きを制限する。さらに、中間板部152における孔153の縁部は、一対の平行凹部151の溝の長手方向におけるコネクタ91の動きを制限する。
【0102】
また、本実施形態においては、中間板部152の両側における一対の平行凹部151各々との境界部分に、内側へ切れ込んだ切れ込み部154が形成されている。これにより、中間板部152における第一枠部13の外縁側の端部は、片持ち梁状に張り出した庇部1521を形成している。
【0103】
図9に示されるコネクタ91の連結部92においては、一対のガイドレール部921各々と架設部922との間に、一対の平行凹部151の側壁部1512の一部が入り込む隙間924が形成されている。この場合、コネクタ支持部15において、切れ込み部154が形成されていることは必須ではない。
【0104】
本実施形態においては、中間板部152が、コネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間により深く挿入されるように、中間板部152の両側に切れ込み部154が形成されている。これにより、中間板部152が、架設部922に対してより安定した状態で引っ掛かり、コネクタ91がコネクタ支持部15から外れにくくなる。
【0105】
しかしながら、コネクタ91の連結部92に隙間924が形成されていない場合、コネクタ支持部15において、切れ込み部154が形成されていることが必要である。これにより、中間板部152をコネクタ91の本体部分の外表面と連結部92の架設部922との間の隙間に挿入することが可能となる。
【0106】
また、図9に示されるコネクタ91の連結部92においては、中間板部152よりも内側において一対の平行凹部151が形成する一対の溝を繋ぐ溝を形成する部分である内側凹部155がさらに形成されている。この内側凹部155は、凹凸をなす板状の部分であるコネクタ支持部15の剛性を高める効果、特に、コネクタ支持部15をねじるように作用する外力に対する剛性を高める効果を発揮する。
【0107】
以上に示したように、コネクタ91は、コネクタ支持部15によって支持され、第一枠部13の一部に固定される。即ち、コネクタ支持部15は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91の外表面に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。
【0108】
<他の実施例に係るコネクタ支持部>
次に、図11を参照しつつ、配線具10に適用可能な他の実施例に係るコネクタ支持部17について説明する。図11は、コネクタ支持部17及びコネクタ91の斜視図である。
【0109】
図11に示されるように、コネクタ支持部17は、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921の隙間に嵌り込む嵌入片171を有する。嵌入片171は、第一枠部13の縁部に形成された一対の切り込みの間の部分である。また、嵌入片171には、嵌入片171が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔172が形成されている。
【0110】
嵌入片171が連結部92における一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられることにより、コネクタ91は、コネクタ支持部17に固定される。即ち、コネクタ支持部17は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。図11に示されるようなコネクタ支持部17が、配線具10に適用されてもよい。
【0111】
<効果>
ワイヤハーネス100において、電線9は、配線具10を構成するベース部1及びカバー部2の間に挟み込まれる。さらに、板状のベース部1において内側の配線部11から外側の第一枠部13に亘って配置された電線9は、第一枠部13における予め定められた位置に設けられた電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定される。
【0112】
従って、配線具10が取り付けられた電線9において、電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線結束部14又はコネクタ支持部15で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線9の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線9の形状が配線具10によって保持される。また、電線9は、ベース部1及びカバー部2によって保護される。
【0113】
また、配線具10において、カバー部2は、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26との嵌め合い構造によってベース部1に対して留められる。そのため、電線9が配線部11から浮き上がっていても、仮留め用凸部26を仮留め用凹部16の窪みに嵌め入れるというごく簡易な作業により、電線9の中間部分が配線部11と対向壁部21との間の配線空間90に収容される状態で、カバー部2がベース部1に固定される。また、ベース部1及びカバー部2は、仮留め機構により、電線9を挟み込んで組み合わされた一定の形状で保持されるので、ベース部1とカバー部2とを超音波溶接などにより安定した品質で接合することも容易である。
【0114】
以上に示したことから、電線9を予め定められた形状で保持し、また、保護する配線具10を備えるワイヤハーネス100が採用されることにより、配線具10を電線9に取り付けるための工数を簡素化できる。
【0115】
また、配線具10において、仮留め機構、即ち仮留め用凹部16及びこれに嵌り込む仮留め用凸部26のペアが、ベース部1の配線部11からベース部1の外側へ亘って配置される電線9が通過する部分である電線結束部14の側方の位置に設けられている。ベース部1の外縁部における電線9が通過する部分は、電線9が変位することによって電線9から力が加わりやすい。仮留め機構が、電線が通過する電線結束部14の側方(近傍)に設けられていることにより、電線9から加わる力によってカバー部2がベース部1から外れるという不具合が生じにくい。
【0116】
また、配線具10において、ベース部1及びカバー部2が、曲げ変形可能な接続部3と連なって一体に形成されている。そのため、部品点数が少なくなり、配線具10を電線9に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0117】
また、ベース部1及びカバー部2が接続部3を介して一体に形成されている場合、接続部3の弾性によってベース部1とカバー部2とを引き離す力が、接続部3に近い部分に加わりやすい。配線具10においては、仮留め機構が、接続部3と配線空間90との間の位置にも設けられているため、接続部3の弾性力によってカバー部2がベース部1から外れるという不具合が生じにくい。
【0118】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られた部材であるため、製造工数及び製造コストが低減される。
【0119】
また、ワイヤハーネス100において、仮留め機構における仮留め用凹部16と仮留め用凸部26との接触部が溶着されている。そのため、ベース部1及びカバー部2は、組み合わされた状態で強固に接合される。また、仮留め機構の部分の溶着は、超音波溶接機などの小型のスポット加熱装置を用いた簡易な工程で実現できる。
【0120】
<その他>
以上に示された実施形態においては、ベース部1とカバー部2とは、接続部3を介して繋がって一体に形成されている。しかしながら、ベース部1とカバー部2とが別部材で構成されることも考えられる。
【0121】
また、配線具10のベース部1において、凸部111が形成されていない平坦な配線部11が採用されることも考えられる。また、ベース部1の配線部11に、格子状又は網目状に連なる凸部又は溝が形成されることも考えられる。そのような凸部又は溝も、配線部11の剛性を高める効果を奏する。
【0122】
また、ベース部1及びカバー部2が、樹脂の射出成形により得られる部材であることも考えられる。但し、配線具10は、上下方向(一次元方向)においてのみ凹凸をなす板状に成形された部材であり、板状の樹脂部材に対する真空成形によって容易に得られる部材である。従って、製造工数及び製造コストの面において、配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られる部材であることが望ましい。
【符号の説明】
【0123】
1 ベース部(基体)
2 カバー部(被覆体)
3 接続部
6 溶着部
8 結束ベルト
9 電線
10 配線具
11 配線部
12 第一段差部
13 第一枠部
14 電線結束部
15,17 コネクタ支持部
16 仮留め用凹部
21 対向壁部
22 第二段差部
23 第二枠部
26 仮留め用凸部
81 ベルト部
90 配線空間
91 コネクタ
92 コネクタの連結部
100 ワイヤハーネス
111 配線部の凸部
121 背高段差部
141 電線通過部
142 貫通孔
143 切れ込み部
151 平行凹部
152 中間板部
153 中間板部の孔
154 切れ込み部
155 内側凹部
161,261 溝
171 嵌入片
172 嵌入片の孔
921 ガイドレール部(平行凸部)
922 架設部(梁部)
923 突起部
924 隙間
1420 第一ベルト通過部
1430 第二ベルト通過部
1431 外側孔部
1432 内側孔部
1433 段差
1511 底板部
1512 側壁部
1521 庇部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を予め定められた形状で保持する配線具であって、
凹凸をなす板状に成形された部材からなり、電線が配置される配線空間に面した配線部及び当該部材の外縁部において前記電線が固定される電線固定部が形成された基体と、
凹凸をなす板状に成形された部材からなり、前記基体の前記配線部に対して前記配線空間を隔てて対向する対向壁部が形成され、前記基体との間に前記電線を挟み込む状態で前記基体に対して組み合わされる被覆体と、
前記基体の一部と前記被覆体の一部とにより構成され、前記被覆体を前記基体に対して留める仮留め機構と、を備え、
前記仮留め機構は、
前記基体における前記配線部以外の部分及び前記被覆体における前記対向壁部以外の部分のうちの一方又は両方に形成され、組み合わされる相手側に開口する窪みを形成する部分である仮留め用凹部と、
前記被覆体における前記対向壁部以外の部分及び前記基体における前記配線部以外の部分のうちの一方又は両方における前記仮留め用凹部に対向する位置に突起して形成され、前記仮留め用凹部の窪みに嵌り込むことにより前記被覆体を前記基体に対して留める仮留め用凸部と、からなることを特徴とする配線具。
【請求項2】
前記仮留め用凹部及びこれに嵌り込む前記仮留め用凸部のペアは、前記基体の外縁部における、前記配線部から前記基体の外側へ亘って配置される前記電線が通過する部分の側方の位置に設けられている、請求項1に記載の配線具。
【請求項3】
前記基体及び前記被覆体は、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の配線具。
【請求項4】
前記仮留め用凹部及びこれに嵌り込む前記仮留め用凸部のペアは、前記接続部と前記配線空間との間の位置に設けられている、請求項3に記載の配線具。
【請求項5】
前記基体及び前記被覆体は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られた部材である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の配線具。
【請求項6】
電線と、
前記電線を予め定められた形状で保持する配線具と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記配線具は、
凹凸をなす板状に成形された部材からなり、電線が配置された配線空間に面した配線部が形成された基体と、
凹凸をなす板状に成形された部材からなり、前記基体の前記配線部に対して前記配線空間を隔てて対向する対向壁部が形成され、前記基体との間に前記電線を挟み込む状態で前記基体に対して組み合わされた被覆体と、
前記基体の一部と前記被覆体の一部とにより構成され、前記被覆体を前記基体に対して留める仮留め機構と、を備え、
前記仮留め機構は、
前記基体における前記配線部以外の部分及び前記被覆体における前記対向壁部以外の部分のうちの一方又は両方に形成され、組み合わされる相手側に開口する窪みを形成する部分である仮留め用凹部と、
前記被覆体における前記対向壁部以外の部分及び前記基体における前記配線部以外の部分のうちの一方又は両方における前記仮留め用凹部に対向する位置に突起して形成され、前記仮留め用凹部の窪みに嵌り込むことにより前記被覆体を前記基体に対して留める仮留め用凸部と、からなることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項7】
前記仮留め機構における前記仮留め用凹部と前記仮留め用凸部との接触部が溶着されている、請求項6に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−13226(P2013−13226A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144117(P2011−144117)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】