説明

配線回路基板及びその製造方法

【課題】半田喰われ現象を可及的に防止する機能を有する導電性中間層を、環境負荷が低く、かつ生産性良く形成することを目的とする。
【解決手段】絶縁基材2と、絶縁基材2の少なくとも一方の面に形成された配線回路パターン3と、配線回路パターン3の一部に形成された、電子部品7を実装するための電子部品実装ランド部31と、電子部品実装ランド部31上に、導電性インク膜の焼成体から構成される導電性中間層5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板及びその製造方法に関し、より詳しくは、種々の電子部品が実装されるランド部上に導電性中間層を有する配線回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路パターンが形成された配線回路基板に電子部品を実装する際、一般的には、配線回路パターンの一部に設けられた電子部品実装ランド部と、電子部品の端子電極とが半田材料を介して電気的に接続される。
【0003】
配線回路基板の電子部品実装ランド部の表面には、「半田喰われ」と呼ばれる現象を防止することを目的の一つとして、電解めっき手法又は無電解めっき手法等により導電性中間層が形成される。ここで、「半田喰われ」とは、配線回路基板上に形成された配線回路パターンが、半田材料中に溶出する現象のことである。この「半田喰われ」を防止するために、電子部品を半田接合するに際し、バリア層としての導電性中間層を形成する手法が多く採用されている。
【0004】
なお、この導電性中間層は、「半田喰われ」現象を抑制する機能に加えて、半田材料と導電性中間層との「半田濡れ性」を向上させる機能も考慮して形成される場合がある。
【0005】
従来、このような導電性中間層として、例えば特許文献1には、めっき法により導電回路層2の上に形成されたバルクメタル層3が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、回路導体層4上に、例えば銅などの金属を真空蒸着することで、導電性中間層に相当する導電金属層6を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−120643号公報
【特許文献2】特開昭61−58289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、特許文献1及び特許文献2には、従来の導電性中間層に相当するバルクメタル層3及び導電金属層6がそれぞれ記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているように導電性中間層(バルクメタル層3)を電解めっき手法により形成する場合には、通電の為のめっきリードを、最終的に製品となる配線回路の内部に予め形成する場合が多い。このめっきリードは製品の配線回路としては不要となるため、めっきリードの面積分だけ、配線回路基板が大型化してしまうのが避けられない。その結果、近年ますます高まっている高密度回路形成に対する要求に対応することが実際上困難になるという問題がある。
【0010】
一方、無電解めっき手法を用いて導電性中間層(バルクメタル層3)を形成する場合は、上述のめっきリードの形成は不要である。しかし、めっき工程中、高温、強酸浴等といった過酷な環境に配線回路基板を長時間浸漬しなければならない。このため、配線回路基板へ大きなダメージを与える虞がある。さらに、めっき条件によっては、配線回路以外の部分、例えば絶縁基材や絶縁カバー(カバーコート)にもめっき層が生成される場合もある。このため、所望の部位のみに導電性中間層を形成することができないという問題が生じる場合がある。
【0011】
また、特許文献2に開示されるように導電性中間層(導電金属層6)を真空蒸着手法によって形成する場合、配線回路基板をマスキングした上で真空チャンバーに投入する必要がある。このため、製造工程が煩雑になるとともに、連続的な加工が困難である。さらに、導電性中間層として十分な機能を発現させるのに必要な膜厚まで層形成を行うためには、蒸着時間を長くしたり、電力消費を大きくする必要がある。よって、真空蒸着法を用いて導電性中間層を形成する方法は、大量生産に向かず、この点で実用性は低い。
【0012】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであって、配線回路基板上に半田材料を用いて種々の電子部品を実装する際に必要となる導電性中間層を、環境負荷が低い手法でかつ生産性良く形成することを目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本願では、次の各発明を提供する。
【0014】
まず、本願の配線回路基板の発明では、
絶縁基材と、前記絶縁基材の少なくとも一方の面に形成された配線回路パターンと、前記配線回路パターンの一部に形成された、半田材料により電子部品が接合される、電子部品実装ランド部と、前記電子部品実装ランド部上に、導電性インク膜の焼成体から構成される、導電性中間層とを備える配線回路基板を提供する。
【0015】
また、本願の配線回路基板の製造方法の発明では、
絶縁基材を準備し、半田材料により電子部品が接合される電子部品実装ランド部を有する配線回路パターンを、前記絶縁基材の少なくとも一方の面に形成し、液滴吐出手法を用いて、導電性材料を含有する導電性インクの複数の吐出液滴を互いに部分的に重なり合う状態に積層することで、前記電子部品実装ランド部の上に液滴膜を形成し、前記液滴膜を焼成することにより、導電性中間層を形成することを特徴とする配線回路基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0017】
本発明に係る配線回路基板は、電子部品実装ランド部上に導電性中間層を形成するようにしたので、前述の「半田喰われ」現象を可及的に防止することができ、電子部品を信頼性高く接合することができる。
【0018】
さらに、めっき手法によらずに導電性中間層を形成するようにしたので、従来技術の課題が解消される。即ち、本発明によれば、電解めっき手法による場合において必要とされるめっきリードの形成を不要とすることができる。これにより、高密度実装に対応可能な配線回路基板を得ることができる。また、本発明によれば、無電解めっき手法において回避できなかった、めっきの強条件による配線回路基板へのダメージを、解消することができる。また、本発明によれば、多量の薬液を用いる必要がないので、環境に与える負荷が極めて小さい。
【0019】
さらに、本発明によれば、配線回路パターン上の所望の電子部品実装ランド部のみに対し、高速で導電性中間層を塗膜形成することができる。このため、生産性に極めて優れるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明に係る配線回路基板の全体を概略的に示す斜視図である。
【図1B】図1AのうちA部を拡大した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る配線回路基板を、図1BのX−X’線に沿って電子部品7を除いて切断した断面説明図である。
【図3】カバーコートの一部を剥離して、絶縁基材及び配線回路パターンを平面的に示す配線回路基板の平面説明図である。
【図4】インクジェットプリント手法による導電性インク膜の形成工程を説明するための、工程途中の配線回路基板の平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る配線回路基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図6】電子部品を本発明の第1の実施形態に係る配線回路基板に接合する方法を説明するための工程断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の変形例を説明するための、図2に対応する配線回路基板の断面説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る配線回路基板を、図1BのX−X’線に沿って電子部品7を除いて切断した断面説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る配線回路基板を、図1BのX−X’線に沿って電子部品7を除いて切断した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る3つの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る配線回路基板について、図1A乃至図4を用いて説明する。
【0023】
図1Aは、本発明に係る配線回路基板の全体を概略的に示す斜視図を示している。図1Bは、図1AにおけるA部の拡大した斜視図を示している。図2は、本発明の第1の実施形態に係る配線回路基板を、図1BのX−X’線に沿って切断した断面説明図を示す。図3は、カバーコート4の一部を剥離して、絶縁基材2及び配線回路パターン3(電子部品実装ランド部31)を平面的に示す配線回路基板の平面説明図である。
【0024】
図1A、図1B及び図2からわかるように、本実施形態に係る配線回路基板1は、絶縁基材2(図1A、図2)と、絶縁基材2上に所望のパターンとして形成された配線回路パターン3(図1B、図2)と、配線回路パターン3の一部に設けられた電子部品実装ランド部31(図1B、図2)と、配線回路パターン3の所望の部位を被覆するカバーコート4(図1A、図1B、図2)と、電子部品実装ランド部31上に塗膜形成された導電性中間層5(図2)と、配線回路基板1の側方へ延伸する可撓性ケーブル部8(図1A)と、を有する。
【0025】
次に、配線回路基板1を構成する上記各部材について詳細に説明する。
【0026】
絶縁基材2は、主たる材質としてポリイミド樹脂を有する。これによって、電子部品実装ランド部31(図2)上に、半田材料6によって電子部品7を実装する際に必要となる耐熱性を確保している。この絶縁基材2は、12.5μm乃至125μmの範囲において所望の厚みのものを使用することができる。また、この絶縁基材2には、電子部品7を実装する際に基板の平坦性を確保するために、例えば、裏面(図2中下面)に補強板等を貼り付けることもできる。また、絶縁基材2は互いに上下に向かい合う2つの面を有し、そのうち、少なくとも配線回路パターン3が形成される面(図2中の上面)には、配線回路パターン3を形成する前にプラズマ処理、コロナ処理、UVオゾン処理又はアルカリエッチング処理等が施されていることが望ましい。このような処理を施すことで、絶縁基材2と配線回路パターン3との密着強度を高めることができる。
【0027】
なお、配線回路基板1が可撓性ケーブル部8を有さない構成の場合、絶縁基材2として、上述のポリイミド樹脂を主たる材質とする基板のみならず、ガラスエポキシ基板またはフェノール基板を採用することが可能である。
【0028】
配線回路パターン3は、絶縁基材2上に、導電性粉末とバインダとが混合された導電性ペーストを所望のパターンに従って印刷し、その後、導電性ペーストを熱硬化させることにより形成されている。ここで、導電性粉末としては、フレーク状、球状又は針状等といった所望の形状を有し、粉末粒径が数nm乃至50μmの範囲とされた銅(Cu)粉末、銀(Ag)粉末、または銅(Cu)−銀(Ag)の合金粉末等を使用することができる。配線回路パターン3の回路抵抗を低減させる場合には、この配線回路パターン3の材料としてAgを選択することが望ましい。また、配線回路基板1が可撓性回路基板としての用途を有する場合には、配線回路基板1が屈曲した状態においても抵抗値の増加を抑制するため、フレーク状の導電性粉末を多く含有した導電性ペーストを用いることが望ましい。勿論、要求される特性に応じて、種々の材料、形状および粉末粒径を任意に組み合わせた導電性粉末を用いることができる。
【0029】
導電性ペーストの樹脂成分としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いることが望ましい。このような導電性ペーストを用いて形成された配線回路パターン3は、絶縁基材2と同様、電子部品7を半田材料6により実装する際に必要となる耐熱性を備える。
【0030】
このような材料で形成される配線回路パターン3は、スクリーン印刷手法によって、所望の回路構成となるように形成されている。なお、導電性ペーストの樹脂成分(ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂)の前駆体は、該前駆体を可溶とするDMF、NMP、γ−ブチロラクトン等の溶剤によって希釈されることが望ましい。これにより、導電性ペーストの流動性をスクリーン印刷手法に適合させ、スクリーン印刷手法を用いることが可能となる。
【0031】
なお、上述のポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂の他に、導電性ペーストの樹脂成分に採用し得る樹脂としては、半田耐熱性を有するエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、またはそれらの混合物等が挙げられる。このような樹脂を用いた場合には、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂と比較して、印刷性の良好なペーストを得ることができるといった利点がある。
【0032】
さらに、配線回路パターン3のパターンの厚みは、要求される回路抵抗等を考慮して任意の値とすることができる。例えば、低抵抗の配線回路基板が要求される場合には、配線回路パターン3のパターン幅を広くし、又はパターンの厚みを大きくすればよい。
【0033】
パターン幅を広くすることで回路抵抗を低減させようとする場合には、スクリーン印刷の他、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の印刷手法を採用することが可能である。
【0034】
一方、パターンの厚みを大きくすることで回路抵抗を低減させようとする場合には、一度の印刷工程で20μm程に達するパターン厚みが得られるスクリーン印刷手法を用いることが、生産効率の点において極めて優れている。
【0035】
スクリーン印刷手法を用いて配線回路パターン3を形成する場合、後述する導電性中間層5の形成工程も含め、配線回路基板1の製造工程全体がドライプロセスで処理されることとなり、環境負荷をよりいっそう低減することができるという利点がある。
【0036】
なお、本発明の目的および本質を考慮すれば、配線回路パターン3の材料及び製造方法は、例えば、銅箔をエッチングすることでパターン形成されたものであっても、めっき手法によってパターン形成されたものであってもよいのは明白である。
【0037】
図1B及び図2に示すように、電子部品実装ランド部31は、後述の電子部品7の外部端子電極71と電気的に接続可能に構成されている。即ち、図2からわかるように、電子部品7が半田材料6により、この電子部品実装ランド部31上に導電性中間層5を介して実装される。この電子部品実装ランド部31,31の形状及び大きさは、実装される電子部品7の外部端子電極71,71の形状及び大きさに合わせられている。
【0038】
また、平面パターンを説明する図3からわかるように、この電子部品実装ランド部31,31の表面周辺部31A,31Aは、追って詳述する開口部41,41を有するカバーコート4によって押さえられるように被覆されており、電子部品実装ランド部31,31の表面中央部31B,31Bは露出された状態となっている。つまり、電子部品実装ランド部31の表面周辺部31Aはカバーコート4によって押さえつけられるように被覆されている。これによって、電子部品7が電子部品実装ランド部31に実装された後、せん断応力が加わるような場合においても、電子部品実装ランド部31が絶縁基材2から剥離してしまうという虞を可及的に回避することができる。
【0039】
図3からわかるように、カバーコート4には、前述した開口部41が設けられている。このカバーコート4は、配線回路パターン3を被覆することによって、前述のように配線回路パターン3の剥離を抑制する機能の他、外的要因により配線回路パターン3が劣化、損傷することを防止する機能を有するものである。なお、配線回路基板1が可撓性回路基板としての機能を有する場合には、配線回路基板1の屈曲する部分(例えば、後述する可撓性ケーブル部8)をカバーコート4で被覆しておくことが望ましい。これにより、屈曲部分が屈曲する際に、配線回路パターン3が断線する虞を低減することができる。
【0040】
また、カバーコート4の主たる材質としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が用いられている。これにより、カバーコート4は、電子部品7を半田材料6で実装する際に必要となる耐熱性を備えることとなる。さらに、前述の配線回路パターン3の形成に用いられる導電性ペーストと同様に、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂の前駆体を、DMF、NMP、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤によって希釈することで、ペーストとしての流動性が確保される。これにより、スクリーン印刷手法によってカバーコート4を形成することが実現可能となる。
【0041】
なお、上述のポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂の他に、カバーコート4の主たる材質に採用し得る樹脂成分としては、半田耐熱性を有するエポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、変性ウレタン系樹脂、またはそれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
また、カバーコート4の他の形成方法としては、カバーフィルムの所望の部位を打ち抜き加工により除去しておき、その後、絶縁基材2及び配線回路パターン3を覆うように接着するという手法も挙げられる。
【0043】
カバーコート4の厚みは、配線回路基板1の要求仕様に合わせて適宜選定すればよい。本発明の実施形態においては、カバーコート4の厚みを20μm以上としている。これにより、配線回路基板1を可撓性回路基板として用いる場合における、配線回路パターン3の断線の抑制、及びエレクトロマイグレーションの抑制ないし低減を図ることができる。さらに、追って詳しく述べる導電性中間層5を形成する際、すなわち導電性インクをインクジェットプリント手法で成膜して導電性中間層5を形成する際に、流動性のある導電性インクが周囲に流れ出すのを防止して導電性インクを開口部41内に貯めるという、いわばダムの役割をカバーコート4の開口部41に持たせることができる。その結果、導電性中間層5を容易に形成できるという効果が得られる。
【0044】
図1Aに示す可撓性ケーブル部8は、配線回路基板1のケーブル部として機能し、配線回路基板1を外部の電子機器または他の配線回路基板等と接続させるためのものである。図1Aからわかるように、この可撓性ケーブル部8は、絶縁基材2から一体的に延伸した絶縁基材延伸部21上に配線パターン(図示せず)を形成し、この配線パターン上にカバーコート4の一部を形成したものである。可撓性ケーブル部8には補強板が貼り付けられないため、可撓性ケーブル部8は自由に屈曲を行うことができる。また、カバーコート4が配線パターンを被覆しているため、可撓性ケーブル部8が屈曲をした際にも配線パターンの断線を抑制することが可能である。
【0045】
次に、図2を参照して前述の導電性中間層5について詳しく説明する。図2からわかるように、導電性中間層5は、電子部品実装ランド部31上に形成されている。この導電性中間層5は次のようにして形成される。まず、ニッケル(Ni)を主たる導電性材料としそれに分散剤を添加してなる導電性インク(以下、Niインクとも称す。)を電子部品実装ランド部31上に塗布(滴下)して、導電性インク膜(Niインク膜)を形成する。ここで、導電性インクは、ナノインクとも呼ばれ、より詳細には、ナノオーダの金属粒子を分散剤で覆い、有機溶剤の中に均一に分散させたものである。この導電性インクからなる膜を加熱することにより、分散剤及び有機溶剤が蒸発し、金属粒子同士が焼結することで、導電性の薄膜が得られる。金属粒子がナノオーダの微小なサイズであるため、焼結温度が低いことが特徴の一つとして挙げられる。
【0046】
ここで、前述の導電性インク膜(Niインク膜)の形成について、図4を用いて詳細に説明する。図4は、インクジェットプリント手法による導電性インク膜の形成工程を説明するための、工程途中の配線回路基板の平面図である。この図4に示すように、インクジェットプリンタのノズルから吐出された導電性インクの吐出液滴ID(Ink Drop)は、電子部品実装ランド部31上に重複して積層される。即ち、吐出液滴IDは、互いに部分的に重なり合う状態に積層される。これにより、Niインク膜は、隙間のない液滴膜として、電子部品実装ランド部31の表面中央部31Bに成膜される。なお、カバーコート4の開口部41の底面に露出している電子部品実装ランド部31をNiインク膜で完全に覆うべく、図4に示すように、導電性インクの吐出液滴IDの一部がカバーコート4上に着弾するようにしてもよい。
【0047】
Niインク膜を形成した後、Niインク膜の酸化を抑制するために窒素等の不活性ガス雰囲気中で、Niインク膜を焼成する。これにより、Niインク膜内のニッケル粒子が結合して、低抵抗塗膜である導電性中間層5が形成される。なお、配線回路基板1への熱的ダメージを低減するために、プラズマ焼成技術、加圧焼成技術等を用いて、絶縁基材2、配線回路パターン3及びカバーコート4の耐熱温度以下、好ましくは260℃以下の温度で、Niインク膜を焼成することにより導電性中間層5を形成することが好ましい。
【0048】
上記の方法によって、導電性中間層5は微細孔を有さない金属薄層として形成される。このため、配線回路パターン3が半田材料6によって「半田喰われ」するのを確実に抑制することができる。
【0049】
なお、インクジェットプリント手法による導電性インクの吐出を確実に行うためには、導電性インクに含まれる導電性材料の粒径を500nm以下とすることが好ましい。さらに、より良好な電気的特性や低い焼成温度等を望む場合、300nm以下に調整することが望ましい。
【0050】
導電性中間層5の厚みの下限値は約200nmである。これ以上の厚みであれば、電子部品7を半田材料6によって配線回路基板1に実装する際における、配線回路パターン3の「半田喰われ」を防止することができる。より確実に「半田喰われ」の防止を期する場合には、導電性中間層5の厚みを約400nm以上とすることが好ましい。一方、インクジェットプリント手法を用いた成膜の実現性(量産性など)を考慮すれば、導電性中間層5の厚みの上限値は約5μmとすることが望ましい。
【0051】
次に、配線回路基板1上に実装される電子部品7について説明する。図2に示すように、電子部品7は、電子部品実装ランド部31上に、導電性中間層5を介して実装されている。図1B及び図2からわかるように、電子部品7は、その両端部に外部端子電極71,71を備えている。この電子部品7は、例えば、セラミックチップコンデンサやLED等に代表される面実装タイプの電子部品である。電子部品7の外部端子電極71は、例えば、Agペースト(導電性粉末として銀(Ag)を含む導電性ペーストをいう。)を硬化または焼成したものから構成されている。半田材料6による接合性を向上させるために、外部端子電極71の表面は、例えばニッケル−錫(Ni−Sn)からなるめっき層(図示せず)で覆われている。
【0052】
次に、本実施形態に係る配線回路基板1の製造方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、配線回路基板1の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0053】
(1)まず、図5(a)からわかるように、前述の絶縁基材2を準備し、この絶縁基材2の表面(上面)に、例えばスクリーン印刷手法を用いて、電子部品実装ランド部31を有する配線回路パターン3を形成する。
【0054】
(2)次に、図5(b)からわかるように、例えばスクリーン印刷手法を用いて、配線回路パターン3(電子部品実装ランド部31の表面中央部31Bを除く。)及び絶縁基材2の上にカバーコート4を形成する。前述のように、カバーコート4には開口部41が設けられ、この開口部41の底面に電子部品実装ランド部31の表面中央部31Bが露出する。
【0055】
(3)次に、図5(c)からわかるように、電子部品実装ランド部31の表面中央部31B上に、導電性中間層5を形成する。より詳しくは、前述のように、まず、インクジェットプリント手法を用いて導電性材料(Ni)を含有する導電性インクの吐出液滴を、互いに部分的に重なり合う状態に積層することで(図4参照)、電子部品実装ランド部31の上に導電性インク膜(液滴膜)を形成する。その後、この導電性インク膜を焼成することにより、導電性中間層5が形成される。
【0056】
上記の工程により、本実施形態に係る配線回路基板1が完成する。
【0057】
次に、図6及び図2を用いて、配線回路基板1の上に電子部品7を実装する工程を説明する。
【0058】
(1)図6(a)からわかるように、導電性中間層5及びその周辺部分のカバーコート4上にクリーム半田6Aを塗布する。クリーム半田とは、はんだ粉末と液状フラックスとを混合したものである。
【0059】
本実施形態において、クリーム半田6Aのフラックスに含まれる活性剤としては、例えば、エチレンアミン類及び/又はアミンハロゲン化水素酸塩等を用いることができる。なお、耐環境性を考慮する場合には、エチレンアミン類からなる活性剤を用いることが望ましい。これにより、Niインク膜を焼成して得られる導電性中間層5と半田材料6との濡れ性、接合性をより確実なものとすることができる。
【0060】
(2)次に、図6(b)からわかるように、電子部品7の外部端子電極71,71がクリーム半田6A,6Aに接触するように、電子部品7を配線回路基板1の上に載置する。
【0061】
(3)次に、電子部品7がクリーム半田6A上に載置された状態で、加熱処理(リフロー)を行い、クリーム半田6Aを溶融させる。これにより、図2に示すように、電子部品7は半田材料6(溶融したクリーム半田6A)によって、導電性中間層5を介して電子部品実装ランド部31と電気的及び機械的に接続される。
【0062】
上述したように、配線回路基板1は、電子部品実装ランド部31上に形成されたNiインク膜を焼成してなる導電性中間層5を有する。これにより、本実施形態によれば、電子部品7を配線回路基板1に実装する際における、半田材料6中への配線回路パターン3の「半田喰われ」を確実に防止するとともに、電子部品7を信頼性高く接合することができる。
【0063】
さらに、本実施形態によれば、所望の領域にのみ選択的に液滴を吐出することが可能なインクジェットプリント手法を用いてNiインク膜を形成するようにしたので、生産性に極めて優れているとともに、従来のめっき手法のように多量の薬液を用いる必要がなく、このため、環境に与える負荷が極めて小さいという効果が得られる。また、前述のめっきリードを形成する必要がないため、高密度回路を形成可能な配線回路基板が得られる。
【0064】
さらに、本実施形態によれば、導電性中間層5をNiインク膜の1層のみで構成しつつも、「半田喰われ」を可及的に防止しながら電子部品7を接合可能である。このことは、生産性及びコストの点において極めて有利である。
【0065】
次に、本実施形態の変形例に係る配線回路基板1’について、図7を用いて説明する。この配線回路基板1’は、Niインク膜を焼成した導電性中間層5に代えて、図7からわかるように、Cuインク膜を焼成した導電性中間層5’を有する。ここで、Cuインク膜は、銅(Cu)を主たる導電性材料としそれに分散剤を添加してなる導電性インク(Cuインク)を、前述のNiインク膜の場合と同様の方法で電子部品実装ランド部31上に塗布することにより形成したものである。導電性中間層5’は、このCuインク膜を不活性ガス雰囲気中において例えば260℃以下で焼成することにより、微細孔を有さない金属薄層として形成される。なお、Cuインク膜の還元作用を高めることを目的として、焼成する際の不活性ガス雰囲気に水素ガスを添加してもよい。
【0066】
Cuインク膜を焼成した導電性中間層5’の「半田喰われ」を抑制する機能は、Niインク膜を焼成した導電性中間層5よりも劣る。しかし、導電性中間層5’の厚みを500nm以上とNiインク膜の場合と比べて大きくすることで、電子部品7を実装する際、半田材料6と導電性中間層5’の界面付近に合金層を形成し、この合金層によって、半田材料6による導電性中間層5’の「半田喰われ」が過度に進行しないようにすることができる。このように導電性中間層5’は、厚みを比較的大きくすることで、導電性中間層5と同様の効果を奏する実用的なものとすることができる。
【0067】
変形例の利点の一つとして、導電性中間層5’は半田材料6との「濡れ性」に優れていることが挙げられる。このため、変形例によれば、前述のクリーム半田6Aとして一般的なフラックスを含有したクリーム半田を採用することができ、より汎用性に優れたプロセスが可能になる。
【0068】
なお、本実施形態のさらなる変形例として、Niインク、Cuインクに代えて、銀−パラジウム合金(Ag−Pd合金)を主たる導電性材料として有する導電性インクを用いてもよい。この場合でも前述の効果を奏することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る第2の実施形態について図8を用いて説明する。図8は、第2の実施形態に係る配線回路基板10の断面説明図を示している。第2の実施形態と第1の実施形態との相違は、導電性中間層の構成にある。第1の実施形態に係る配線回路基板は、焼成された1層の導電性インク膜からなる導電性中間層を有するものであったのに対し、第2の実施形態に係る配線回路基板は、焼成された2層の導電性インク膜からなる導電性中間層を有する。
【0070】
即ち、図8からわかるように、本実施形態に係る配線回路基板10が有する導電性中間層50は、電子部品実装ランド部31上に、第1の導電性中間層50a及び第2の導電性中間層50bが順次積層されたものとして構成されている。ここで、第1の導電中間層50aは、第1の実施形態の導電性中間層5と同じく、Niインクを塗布して形成されたNiインク膜を焼成したものである。第2の導電性中間層50bは、金(Au)を主たる導電性材料としそれに分散剤を添加してなる導電性インク(以下、Auインクとも称す。)を第1の導電性中間層50a上に塗布してAuインク膜を形成し、その後、このAuインク膜を焼成したものである。
【0071】
つまり、導電性中間層50は、第1の導電性中間層50aと第2の導電性中間層50bの2種の導電性中間層が積層されたものであるとともに、最上層にはAuインク膜を焼成した第2の導電性中間層50bが配置された構成を有する。これにより、Ni薄膜である第1の導電性中間層50aによって、配線回路パターン3が半田材料6によって「半田喰われ」するのを可及的に防止することができるとともに、Au薄膜である第2の導電性中間層50bによって、半田材料6に対する「半田濡れ性」を十分に確保することが可能となる。
【0072】
ここで、本実施形態に係る導電性中間層50の形成は、以下の手順で行うことが望ましい。
【0073】
(1)配線回路パターン3の電子部品実装ランド部31上に、インクジェットプリント手法によってNiインクの吐出液滴IDを重複して積層させ、Niインク膜を形成する。その後、絶縁基材2、配線回路パターン3及びカバーコート4の耐熱温度以下、好ましくは260℃以下の温度でNiインク膜の焼成を行う。これにより、微細孔を有さない金属薄層としての第1の導電性中間層50aが得られる。
【0074】
(2)次いで、第1の導電性中間層50aの上に、インクジェットプリント手法によってAuインクの吐出液滴IDを重複して積層させ、Auインク膜を形成する。このとき、十分な半田濡れ性を得るために、第1の導電性中間層50aの上面を完全に覆うようにAuインク膜を形成することが望ましい。その後、絶縁基材2、配線回路パターン3及びカバーコート4の耐熱温度以下、好ましくは260℃以下の温度でAuインク膜の焼成を行う。これにより、微細孔を有さない金属薄層としての第2の導電性中間層50bが得られる。
【0075】
上述の手順で第1の導電性中間層50a及び第2の導電性中間層50bを積層形成することにより、これらの導電性中間層(第1の導電性中間層50a、第2の導電性中間層50b)が損壊、拡散する等の問題を防止しつつ、第1の導電性中間層50aと第2の導電性中間層50bとの密着性を確保することができる。
【0076】
なお、例えば、吐出液滴の飛距離や吐出液滴の溶剤を調整することで、導電性インク(Niインク、Auインク)がインクジェットプリンタのノズルから吐出されてから、配線回路パターン3または塗布された導電性インクの液滴膜に着弾するまでの間における導電性インクの吐出液滴IDの乾燥度合いを制御することができる。これにより、Niインク膜とAuインク膜の成膜を、焼成工程を挟まずに連続的に行うことができる。即ち、吐出液滴の乾燥度合いを制御することにより、Niインク膜を形成した後、Niインク膜の焼成工程を省略してAuインク膜を形成し、その後、Niインク膜及びAuインク膜をまとめて焼成することが可能となる。これにより、導電性中間層50の形成工程を簡略化することができる。
【0077】
次に、第1の導電性中間層50aと第2の導電性中間層50bの厚みについて説明する。第1の導電性中間層50aの厚みについては、第1の実施形態の場合と同様、下限値は約200nmである。これ以上の厚みがあれば、電子部品7を半田材料6によって配線回路基板10に実装する際の配線回路パターン3の「半田喰われ」を可及的に防止することができる。なお、より確実に「半田喰われ」の防止を期する場合には、第1の導電性中間層50aの厚みを約400nm以上とすることが好ましい。一方、インクジェットプリント手法を用いた成膜の実現性(量産性など)を考慮すれば、第1の導電性中間層50aの厚みの上限値は約5μmとすることが望ましい。
【0078】
第2の導電性中間層50bの厚みについては、約50nm乃至1μmの範囲とすることが望ましい。これにより、半田材料6に対する「半田濡れ性」を十分に確保することができる。なお、第2の導電性中間層50bの厚みが第1の導電性中間層50aと比較して十分に薄くても「半田濡れ性」を確保することができる。よって、導電性中間層50のコストの増大を抑えることができる。
【0079】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、電子部品実装ランド部31上に形成されたNiインク膜を焼成してなる第1の導電性中間層50aにより、半田材料6に対する配線回路パターン3の「半田喰われ」を可及的に防止することができる。さらに、本実施形態によれば、導電性中間層50の最上層に形成されたAuインク膜を焼成してなる第2の導電性中間層50bによって、半田材料6に対する「半田濡れ性」を十分に確保することができる。
【0080】
上述したところからわかるように、本実施形態では、導電性中間層50を、配線回路パターン3の「半田喰われ」を防止する機能を備えた第1の導電性中間層50aと、「半田濡れ性」を向上させる機能を備えた第2の導電性中間層50bとが積層されたものとして構成することによって、導電性中間層の多機能化が図られている。
【0081】
さらに、第1の実施形態と同様に、所望の領域にのみ選択的に液滴を吐出することが可能なインクジェットプリント手法を用いて導電性インク膜を形成するようにしたので、本実施形態によれば、生産性に極めて優れているとともに、従来のめっき手法のように多量の薬液を用いる必要がないことから、環境に与える負荷が極めて小さいという効果が得られる。
【0082】
なお、第2の導電性中間層50bは、Auインクの代わりに、Agインク(銀を主たる導電性材料としそれに分散剤を添加してなる導電性インク)を用いて形成してもよい。この場合においても、「半田濡れ性」を改善することができる。
【0083】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る第3の実施形態について図9を用いて説明する。図9は、第3の実施形態に係る配線回路基板100の断面説明図を示している。第3の実施形態と第2の実施形態との相違は、導電性中間層の構成にある。第2の実施形態に係る配線回路基板は、焼成された2層の導電性インク膜からなる導電性中間層を有するのに対し、本実施形態に係る配線回路基板は焼成された3層の導電性インク膜からなる導電性中間層を有する。
【0084】
即ち、図9からわかるように、本実施形態に係る配線回路基板100が有する導電性中間層500は、電子部品実装ランド部31上に、第1の導電性中間層500a、第2の導電性中間層500b及び第3の導電性中間層500cが順次積層されたものとして構成されている。ここで、第1の導電性中間層500aは、Cuインクを電子部品実装ランド部31上に塗布して形成されたCuインク膜を焼成したものである。第2の導電性中間層500bは、第1の導電性中間層500aの上にNiインクを塗布して形成されたNiインク膜を焼成したものである。最上層の第3の導電性中間層500cは、第2の導電性中間層500bの上にAuインクを塗布して形成されたAuインク膜を焼成したものである。
【0085】
なお、本実施形態に係る配線回路基板100の配線回路パターン3は、Agペーストを絶縁基材2上に所望のパターンに従って印刷し、その後、印刷されたパターンを熱硬化させたものである。
【0086】
本実施形態の導電性中間層500は、第2の実施形態において説明した導電性中間層50と同様にして形成される。即ち、各層毎に、インクジェットプリント手法によって導電性インクの吐出液滴IDを重複して積層させることで導電性インク膜を形成し、その後、絶縁基材2、配線回路パターン3及びカバーコート4の耐熱温度以下、好ましくは260℃以下の温度で導電性インク膜を焼成すればよい。なお、焼成工程は、各層毎に行ってもよいし、第2の実施形態で説明したように導電性インクの乾燥度合いを制御することで、最上層のAuインク膜を形成した後に一括して行ってもよい。
【0087】
次に、本実施形態に係る配線回路基板100が有する導電性中間層500の効果について説明する。
【0088】
上述した通り、本実施形態に係る配線回路基板100の配線回路パターン3は、導電性ペーストの樹脂成分であるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂を含む。このポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂は、耐熱性の面では非常に優れている反面、吸水しやすい性質を有することが知られている。よって、例えば、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る配線回路基板(配線回路基板1,10)が低湿度環境で使用される場合は問題ないが、高湿度環境で使用される場合には、配線回路パターン3に含まれるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が水分を浸透する。このため、配線回路パターン3中のAg、及び導電性中間層(第1の実施形態の導電性中間層5、第2の実施形態の導電性中間層50a)中のNiが、イオン化し、導電性中間層および配線回路パターン3中にそれぞれ拡散する。その結果、配線回路パターンと導電性中間層の界面が腐食し、界面抵抗が経時的に増加する場合がある。
【0089】
そこで、本実施形態では、配線回路パターン3と、Niインク膜を焼成してなる第2の導電性中間層500bとの間に、Cuインク膜を焼成してなる第1の導電性中間層500aを介在させている。これにより、本実施形態に係る配線回路基板100は高湿度環境で使用された場合においても、上述の経時的な界面抵抗の増加を可及的に回避することができる。なお、この界面抵抗の抑制効果を得るために、第1の導電性中間層500aの厚さは約200nm以上とすることが望ましい。
【0090】
さらに、本実施形態では、第1の導電性中間層500aの上には、前述の第2の導電性中間層500b及び第3の導電性中間層500cが積層的に形成されている。これにより、第2の導電性中間層500bの効果として、電子部品7を配線回路基板100に実装する際において、第1の導電性中間層500aの半田材料6に対する「半田喰われ」を防止することができる。さらに、第3の導電性中間層500cの効果として、第2の実施形態で説明した第2の導電性中間層50bと同様に、半田材料6との「半田濡れ性」を向上させることができる。なお、第3の導電性中間層500cは、Auインクの代わりに、Agインクを用いて形成してもよい。この場合においても、「半田濡れ性」を改善することができる。
【0091】
また、上述のように、導電性中間層500は焼成された導電性インク膜を3層積層した、比較的複雑な構成を有する。しかし、これらの導電性インク膜はいずれも、所望の領域(電子部品実装ランド部31)のみに対して導電性インク膜を高速に形成可能なインクジェットプリント手法を用いて形成されるため、めっき法や真空蒸着等を用いた従来の手法に比べて、生産性に極めて優れる。さらに、本実施形態によれば、従来のめっき手法のように多量の薬液を用いる必要がないことから、環境に与える負荷が極めて小さいという利点が得られる。
【0092】
以上、本発明に係る3つの実施形態について説明した。上述のように、本発明の各実施形態では、「半田喰われ」現象を防止する機能を有する導電性中間層の形成工程において、従来のめっき法や真空蒸着法に比べて極めて生産性に優れたインクジェットプリント手法を用いる。これにより、所望の領域(例えば電子部品実装ランド部31)にのみ導電性インク膜を、低い環境負荷で、且つ生産性良く形成することができる。さらに本発明の各実施形態では、導電性インクの吐出液滴を重複して積層することにより導電性インク膜を形成し、その後、この導電性インク膜を焼成することにより導電性中間層を形成する。これにより、微細孔を有さない高品質の導電性中間層を形成することができる。
【0093】
さらに、第2の実施形態及び第3の実施形態では、導電性中間層は、焼成された2種以上の導電性インク膜を有するものとして構成される。これにより、半田濡れ性の向上や界面抵抗の増大防止といった導電性中間層の多機能化を図っている。なお、各導電性中間層の厚みは、要求される性能やコスト等に応じて適宜調整される。
【0094】
本発明は、上述の第1の実施形態乃至第3の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。以下にいくつかの具体例について説明する。
【0095】
配線回路パターン3の電子部品実装ランド部31上に、導電性インクをインクジェットプリント手法によって印刷する前工程として、配線回路パターン3(電子部品実装ランド部31)の表面に対し、この表面に残存する樹脂成分を除去するための処理を施してもよい。このような処理として、四フッ化炭素ガスによるエッチング、溶剤によるエッチング、炭酸ガスプラズマ処理、酸素プラズマ処理等が挙げられる。これにより、導電性中間層5,5’,50,500と電子部品実装ランド部31との層間密着性を向上させることができる。その結果、例えば導電性中間層5,5’,50,500上に電子部品7を接合する際、導電性中間層5,5’,50,500の上に塗布されたクリーム半田6Aが溶融、凝固して半田材料6になるときに応力が発生した場合においても、導電性中間層5,5’,50,500と電子部品実装ランド部31とが層間剥離する虞を可及的に回避することができる。
【0096】
また、第1の実施形態において、配線回路パターン3の一部に形成された電子部品実装ランド部31の表面周辺部31Aは、カバーコート4によって押さえられるように被覆されていることを、図3を用いて説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。
【0097】
例えば、配線回路基板に実装される電子部品7が0603サイズ(0.6mm×0.3mm)、0402サイズ(0.4mm×0.2mm)のチップ部品等のように極めて小さい部品である場合、電子部品実装ランド部31の形状及び大きさを、そのチップ部品の外部端子電極71に合わせようとすると、電子部品実装ランド部31の一辺は少なくとも0.3mm以下の寸法となる。このため、電子部品実装ランド部31の表面周辺部31Aをカバーコート4で被覆しようとしても、カバーコート4の形成に用いられるカバーコートペーストの印刷性により、開口印刷が実際上極めて困難となる。
【0098】
このように電子部品実装ランド部31が非常に小さい場合には、電子部品実装ランド部31の表面周辺部31Aはカバーコート4で被覆されていなくともよい。例えば、電子部品実装ランド部31の全てがカバーコート4の開口部41の底面に露出してもよい。但し、そのような場合、導電性中間層5,5’,50,500は、電子部品実装ランド部31の主面(上面)及び側面を全て被覆するように形成することが望ましい。これにより、配線回路パターン3の半田材料6に対する「半田喰われ」を確実に防止することが可能となる。
【0099】
また、導電性中間層5,5’,50,500は、カバーコート4を形成する前に形成してもよい。即ち、絶縁基材2及び配線回路パターン3をカバーコート4で覆う前に、電子部品実装ランド部31上に導電性中間層5,5’,50,500を形成しておき、その後、カバーコート4を形成するようにしてもよい。この場合であっても工程時間を増大させることなく、上述の本発明による効果を得ることが可能である。
【0100】
また、配線回路パターン3の硬化と導電性インク膜の焼成は、同一の加熱工程の中で行ってもよい。即ち、配線回路パターン3は、前述のように、例えば、スクリーン印刷手法を用いて導電性ペーストを所望のパターンに従って絶縁基材2上に印刷し、その後印刷された導電性ペーストを硬化させることにより形成される。この場合において、配線回路パターン3の電子部品実装ランド部31上に導電性インク膜を、インクジェットプリント手法により導電性インクを塗布して形成するとき、以下のようにしてもよい。
【0101】
まず、スクリーン印刷手法によって導電性ペーストを所望のパターンに従って絶縁基材2上に塗布する。次に、パターン形成された導電性ペーストを予備乾燥する。次いで、電子部品実装ランド部31上に導電性インク膜を形成する。その後、例えば260℃以下の温度にて加熱処理し、パターン形成された導電性ペーストの硬化及び導電性インク膜の焼成を同時に行う。これにより、配線回路パターン3および導電性中間層5,5’,50,500が一括的に形成される。この方法による場合、予備乾燥された導電性ペーストが導電性インクの受容層として作用し、電子部品実装ランド部31上に着弾した導電性インクの吐出液滴IDに含まれる溶剤成分が上記導電性ペーストの内部に吸収される。これにより、この方法によれば、導電性インクの滲み、はじきを抑制することができるとともに、電子部品実装ランド部31と導電性中間層5,5’,50,500との密着性を向上させることができる。
【0102】
また、第1の実施形態の変形例における導電性中間層5’や第3の実施形態における導電性中間層500aのように、電子部品実装ランド部31上にCuインクを用いて導電性中間層を形成する場合には、配線回路パターン3を形成するための導電性ペーストに、Cuインク中に含まれるCu粉末の酸化に対し還元作用を有する還元剤を添加してもよい。これにより、Cuインク膜を焼成する際、水素ガス等の還元雰囲気中で焼成をしなくとも、導電性ペーストに含まれる還元剤によってCuインク膜中のCuが還元される。この方法によれば、水素ガスを使用しないことから、工程の安全性が向上するとともに、焼成設備を簡略化することができるという効果が得られる。
【0103】
また、上記実施形態の説明では、インクジェット印刷手法を用いて導電性インクを電子部品実装ランド部31上に塗布したが、本発明はこれに限らず、他の液滴吐出手法を用いてもよい。例えば、電子部品実装ランド部31の面積が大きい場合には、ディスペンサー手法を用いることで、より効率的に導電性インク膜を形成できる。
【0104】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。上述の異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1,1’,10,100 配線回路基板
2 絶縁基材
3 配線回路パターン
4 カバーコート
5,5’,50,500 導電性中間層
6 半田材料
6A クリーム半田
7 電子部品
8 可撓性ケーブル部
21 絶縁基材延伸部
31 電子部品実装ランド部
31A 表面周辺部
31B 表面中央部
41 開口部
50a 第1の導電性中間層
50b 第2の導電性中間層
71 外部端子電極
500a 第1の導電性中間層
500b 第2の導電性中間層
500c 第3の導電性中間層
ID 導電性インクの吐出液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材と、
前記絶縁基材の少なくとも一方の面に形成された配線回路パターンと、
前記配線回路パターンの一部に形成された、半田材料により電子部品が接合される、電子部品実装ランド部と、
前記電子部品実装ランド部上に、導電性インク膜の焼成体から構成される、導電性中間層と、
を備えることを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記導電性インク膜は、互いに部分的に重なり合う導電性インクの複数の吐出液滴により構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記導電性中間層は、導電性材料として、Ni、CuまたはAg−Pd合金を含む前記導電性インク膜の焼成体から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記導電性中間層は、2種以上の導電性インク膜の焼成体が複数積層されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記導電性中間層のうち、最上層は、導電性材料として、Au又はAgを含む前記導電性インク膜の焼成体から構成されることを特徴とする請求項4に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記配線回路パターンはAgを含み、
前記導電性中間層のうち、最下層は、導電性材料として、Cuを含む前記導電性インク膜の焼成体から構成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の配線回路基板。
【請求項7】
前記配線回路パターンは、導電性粉末とバインダとが混合された導電性ペーストを硬化させたものとして構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項8】
絶縁基材を準備し、
半田材料により電子部品が接合される電子部品実装ランド部を有する配線回路パターンを、前記絶縁基材の少なくとも一方の面に形成し、
液滴吐出手法を用いて、導電性材料を含有する導電性インクの複数の吐出液滴を互いに部分的に重なり合う状態に積層することで、前記電子部品実装ランド部の上に液滴膜を形成し、
前記液滴膜を焼成することにより、導電性中間層を形成する、
ことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記液滴吐出手法としてインクジェットプリント手法を用いることを特徴とする請求項8に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記配線回路パターンは、導電性粉末とバインダとが混合された導電性ペーストを、所望のパターンに従って前記絶縁基材の前記少なくとも一方の面上に印刷し、その後、前記導電性ペーストを硬化させることにより形成することを特徴とする請求項8又は9に記載の配線回路基板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159922(P2011−159922A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22430(P2010−22430)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】