説明

配線基板及び製造方法

【課題】電子部品と基板との応力発生を抑制し、接続信頼性を維持・向上した配線基板及び製造方法を提供する。
【解決手段】1層以上の絶縁層を有する配線基板において、配線基板の少なくとも1層の絶縁層が、同一平面内において剛性分布を有し、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板及びプリプレグを用いて作製した単層及び多層の配線基板及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末の他にノート型パーソナルコンピュータ、映像や音楽の再生機器、ゲーム機器などの電子機器についても携行する状況が増えている。これらの電子機器は様々な使用環境下での信頼性確保が必須であり、携行時の振動や落下衝撃時の荷重などに対して強度の高い部品実装技術が要求される。
一方では、機能増強により機器内に実装する部品が増えるため、高密度実装技術および薄型実装技術の開発に対する要求が強い。高密度化及び薄型化と、高強度化という、相反する課題を解決するため、多岐に亘り高密度化及び薄型化に関する提案がなされている。
【0003】
一方、近年、携帯電子機器はその高機能化、高性能化とともに機器のデザイン性が重要視されてきており、使い勝手や見栄えを向上させる目的で、筐体形状に曲面が多用されつつある。筐体内空間を効率的に利用するためには、曲面形状に基板を筐体に組みこむ必要がある。
【0004】
この中で、曲面形状を有する筐体に電子部品が実装された基板を組み込む場合、電子部品の接続信頼性を確保するため、特許文献1のように、例えばフレキシブル基板において多層配線基板の表面に弾性率の高い補強層を形成し、選択的にエッチングした実装構造が提案されている。
【0005】
また、実装構造に関連する技術として、特許文献2〜4が挙げられる。
特許文献2に記載の発明は、フリップチップ実装半導体装置に関する発明であり、配線基板にICチップをフェイスダウンで実装したフリップチップ実装半導体装置に於いて、ICチップ回路面と配線基板が、金属バンプを介して形成された間隙にフィラが混在されている封止樹脂が封入されており、且つ封止樹脂に混在されているフィラの混在密度が、ICチップ回路面と配線基板との間隙方向で異なる様に構成されている。
【0006】
このフリップチップ実装半導体装置によれば、封止樹脂中のフィラ成分を予め定められた所定の部位に集中分布させることにより、単一樹脂において、シリコンにより近い熱膨張係数を有する樹脂層を形成することが可能になる。これによりフリップチップ実装において、接合強度の弱いICチップのアルミパッド電極と金属バンプの接合部は、母材であるシリコンにより近い熱膨張係数を有する樹脂層で保持されることになり、耐熱ストレス信頼性を向上することができる。
【0007】
特許文献3に記載の発明は、回路基板に関する発明であり、平面方向に密度分布のある補強材シートを含む電気絶縁体層と、電気絶縁体層の厚さ方向に空けられた複数のインナービアホールに導電体が充填され、かつ導電体に接続されている配線層を具備する回路基板であって、補強材シートの密度の大きな部分に設けられたインナービアホールの断面積を、前記補強材シートの密度の小さな部分に設けられた前記インナービアホールの断面積よりも小さく形成するものである。
【0008】
この回路基板によれば、ガラスエポキシ基材をはじめとする平面方向に密度分布のある補強材シートを含有する基材を絶縁体層に用いた場合にでも、高密度配線でしかも、ばらつきの少ないインナービア接続抵抗を実現する回路基板とその製造方法を提供できるとしている。
【0009】
特許文献4に記載の発明は、半導体装置の製造方法に関する発明であり、回路基板に半導体素子をフリップチップ実装する半導体装置の製造方法であって、半導体素子を基板上に搭載する工程と、液状の封止樹脂を大気圧中で半導体素子の辺全周に沿って塗布し、その後真空状態にし、再び大気圧に戻すことで、封止樹脂を回路基板と半導体素子の間隙に注入し、封止樹脂中のフィラ濃度の低い部分を半導体素子中心部から放射状に分布させる工程と、封止樹脂を加熱し硬化させて、半導体素子と前記基板とを機械的に接合する工程と、を備えたものである。
【0010】
この半導体装置の製造方法によれば、封止樹脂中のフィラ分布が、半導体素子の中心部から放射状に分布している半導体装置の構成となり、フィラ分布が半導体装置平面内で対称な形をとることができる。これにより、熱履歴を加えた場合半導体装置が均等に変形することができ、良好な信頼性を得ることが可能となるとしている。
【特許文献1】特開2003−62945号公報
【特許文献2】特開平11−54662号公報
【特許文献3】特許第3587457号公報
【特許文献4】特許第3804586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、配線基板の補強板側の面であって補強板を貼り付ける領域には、部品の実装ができないという問題がある。また、特許文献2〜4に記載の技術では、補強板による基板総厚への影響も大きい。
【0012】
そこで、本発明の目的は、電子部品と基板との応力発生を抑制し、接続信頼性を維持・向上した配線基板及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の配線基板は、1層以上の絶縁層を有する配線基板において、配線基板の少なくとも1層の絶縁層が、同一平面内において剛性分布を有し、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の配線基板の製造方法は、1層以上の絶縁層を有する配線基板の製造方法において、配線基板の少なくとも1層の絶縁層に、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域の剛性が相対的に高い剛性分布を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されているので、電子部品と基板との応力発生を抑制し、接続信頼性を維持・向上でした配線基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、織布基材を有するプリプレグ及び銅張積層板を用いて作製した配線基板において、織布繊維の密度に疎密を設けることにより、同一面内の剛性に分布を発生させることを特徴とする。
【0017】
織布繊維の密度に疎密を設ける手段として、同一面内において剛性を増大させたい箇所は相対的に密に、柔軟性を持たせたい箇所は相対的に疎に繊維を織りこむ方法がある。
【0018】
あるいは、同一面内に等方的な機械特性を有する織布に、同一面内において剛性を増大させたい箇所に、さらに部分的に織布あるいは不織布を重ね合わせる方法がある。
【0019】
あるいは、同一面内において剛性を増大させたい箇所に部分的に織布を配置した状態で樹脂に含浸させ、プリプレグとする方法がある。
【0020】
これらの方法を用いて、電子部品搭載部を剛直に、非搭載部を柔軟にさせた配線基板を作製する。
【0021】
また、多層配線基板においては、電子部品直下の接続信頼性、基板全体の柔軟性どちらを重視するかにより、それぞれに適した配線基板構造が考えられる。
【0022】
電子部品直下の接続信頼性を重視する場合、片面実装の際は表面に搭載する部品配置に応じて全ての絶縁層に含有される剛性分布を同一に、両面実装の際は各々の表面に搭載する部品配置に応じて、コア層を中心に各々の表面の方向に構築された絶縁層に含有される織布の疎密分布を同一にする。
【0023】
基板全体の柔軟性を重視する場合、前記特徴を有する織布を含む絶縁層は電子部品を搭載する最表層のみとし、コア層を除くその他の層は剛性の小さな材料で構成する。剛性の小さな材料とは、繊維を含まない樹脂などが挙げられる。さらに柔軟性を重視する場合は、最表層、あるいはコア層を除く全ての層において、電子部品を搭載する箇所と基板の厚さ方向に対して重なる位置にのみ、織布を部分的に配置する。
【0024】
すなわち、本発明に係る配線基板の一実施の形態は、1層以上の絶縁層を有する配線基板において、配線基板の少なくとも1層の絶縁層が、同一平面内において剛性分布を有し、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されていることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されているので、電子部品と基板との応力発生を抑制し、接続信頼性を維持・向上できる。
【0026】
本発明に係る配線基板の他の実施の形態は、上記構成に加え、剛性分布は、絶縁層に含まれる繊維の密度に疎密を設けた構成により得られたものであることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る配線基板の他の実施の形態は、上記構成に加え、剛性分布は、絶縁層に含まれる織布の織り密度に疎密を設けた構成により得られたものであることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る配線基板の他の実施の形態は、上記構成に加え、剛性分布は、絶縁層に含まれる織布あるいは不織布に、部分的にさらに織布あるいは不織布を重ねた構成により得られたものであることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る配線基板の他の実施の形態は、上記構成に加え、剛性分布は、絶縁層が部分的に織布あるいは不織布を配置した構成により得られたものであることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る配線基板の他の実施の形態は、上記構成に加え、少なくとも最表層となる絶縁層は、上記いずれかに記載の構成を備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る配線基板の他の実施の形態は、上記構成に加え、コア層である絶縁層を除く全ての絶縁層は、上記いずれかに記載の構成を備えたことを特徴とする。
【0032】
本発明に係る配線基板の製造方法の一実施の形態は、1層以上の絶縁層を有する配線基板の製造方法において、配線基板の少なくとも1層の絶縁層に、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域の剛性が相対的に高い剛性分布を形成することを特徴とする。
【0033】
上記構成によれば、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されているので、電子部品と基板との応力発生を抑制し、接続信頼性を維持・向上できる。
【0034】
本発明に係る配線基板の製造方法の他の実施の形態は、上記構成に加え、絶縁層に含まれる繊維の密度に疎密を設けることにより剛性分布を形成することを特徴とする。
【0035】
本発明に係る配線基板の製造方法の他の実施の形態は、上記構成に加え、絶縁層に含まれる織布の織り密度に疎密を設けることにより剛性分布を形成することを特徴とする。
【0036】
本発明に係る配線基板の製造方法の他の実施の形態は、上記構成に加え、絶縁層に含まれる織布あるいは不織布に、部分的にさらに織布あるいは不織布を重ねた構成により剛性分布を形成することを特徴とする。
【0037】
本発明に係る配線基板の製造方法の他の実施の形態は、上記構成に加え、絶縁層が部分的に織布あるいは不織布を配置した構成により剛性分布を形成することを特徴とする。
【0038】
本発明に係る配線基板の製造方法の他の実施の形態は、上記構成に加え、少なくとも最表層となる絶縁層を、上記いずれかに記載の構成とすることを特徴とする。
【0039】
本発明に係る配線基板の製造方法の他の実施の形態は、上記構成に加え、コア層である絶縁層を除く全ての絶縁層を、上記いずれかに記載の構成とすることを特徴とする。
【0040】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【実施例1】
【0041】
図1は、本発明に係る配線基板の一実施例の構成および特性を説明するための断面図である。また、図2(a)は、図1における配線基板1の絶縁層に含まれるガラス織布の構成を示した上面図であり、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb線の剛性に係る特性図である。
【0042】
図1を参照すると、配線基板1はガラス織布を基材に用いた両面銅張樹脂基板であり、この配線基板1上に電子部品2を実装したものである。
【0043】
ここで、電子部品2は、格子状に配列された外部端子上にはんだボールを介して配線基板1と電気的かつ機械的に接続されている。
図1において、電子部品2は、一般的な半導体パッケージを例としているが、モールド封止等でパッケージングされた半導体パッケージに限るものではなく、パッケージングされていない半導体チップや、外部端子としてガルウイングリードを備えたQFP(Quad Flat Package)、コネクタ、チップ部品、異方性導電フィルム(ACF;Anisotropic Conductive Film)などのように、これまで一般的な平面状の基板に実装されている全ての電子部品に適用することが可能である。
【0044】
配線基板1に含まれるガラス織布は、織り密度が疎の領域3と、織り密度が密な領域4とで構成される。すなわち、図2(a)に示すように、電子部品2が搭載される電極部を含む領域においては、織り密度を相対的に密にすることにより、図2(b)に示すように、電子部品2搭載部の基板剛性を局所的に増大させている。
【0045】
織り密度に疎密を設ける方法としては、等方的に織りこんだガラス織布に、局所的にさらにガラス繊維を織りこんでいく方法がある。作製する配線基板全体としては柔軟性を求めるため、礎となるガラス織布は織り密度が疎なものを用いる。
あるいは、一方向に配向したガラス繊維にこれと直交した方向に、局所的にさらにガラス繊維を織りこむことにより疎密を設ける方法がある。このガラス織布を樹脂に含浸、両面に銅箔を張り合わせ選択的にエッチングすることによりパターンを形成し、配線基板1を作製する。
【0046】
なお、絶縁層に用いる樹脂材料には熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のどちらでも可能である。熱硬化性樹脂としてはポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などがあるが、比較的安価な配線基板を製造するにはエポキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や液晶ポリマーなどが挙げられる。
【0047】
この方法により作製した前述の特徴を有する配線基板1は、曲げた状態で筐体に組みこんだ際、基板全体としてはその形状に倣うものの、剛性を相対的に増大させた箇所は、ほぼ平面を維持することが可能である。
すなわち、剛性が相対的に大きい箇所に予め電子部品2を搭載した配線基板1は、図1に示すXの方向に曲げた場合も、図3(a)に示すように電子部品直下は平面を維持することができ、平面時と同等の接続信頼性が期待できる。
一方、本発明に関連する構造では図3(b)に示すように電子部品直下も基板が曲がるため、はんだ接続不良が発生する。あるいは、接続が維持されたとしても、はんだ接合部に応力が蓄積され、接続信頼性の低下を引き起こす。
図3(a)は、本発明に係る配線基板の実施例1を用いた配線基板を曲げた場合の、電子部品搭載部近傍の模式図であり、図3(b)は、本発明に係る配線基板の実施例1を用いない配線基板を曲げた場合の電子部品搭載部近傍の模式図である。
【0048】
なお、接続信頼性の観点から、織り密度が密な領域は電子部品の面積よりも広く設けることが好ましい。また、電子部品ガラス繊維の織り密度を段階的に変化させていくことにより、応力緩和領域を設けることも可能である。応力緩和領域を設けることにより、疎密領域界面の急激な形状変化を抑制することができ、曲げによる導体配線の断線発生を抑えることができる。
【0049】
また、本実施例においては、配線基板の片面のみに電子部品を搭載した場合を考えているが、両面に電子部品を搭載する場合にも対応できる。この場合は、少なくとも一方の面に電子部品が搭載される箇所のガラス繊維の織り密度を相対的に密にすればよい。
【0050】
以上の説明では、絶縁層に含まれる繊維はガラス繊維として記しているが、繊維はガラス繊維に限ったものではなく、アラミド繊維などの絶縁性を有する有機樹脂であってもよい。このような繊維を使用した絶縁層は層間絶縁性の確保が容易で、薄型化に対応できる。また、説明では繊維を織布として用いているが、繊維密度分布を持たせた不織布であってもよい。
【実施例2】
【0051】
次に、同一面内に剛性分布を発生させるその他の方法について説明する。
図4は、本発明に係る配線基板の他の実施例を示す概念図である。
同図に示す配線基板は、剛性分布を発生させる織布構造を示している。一般的な同一面内に等方的な剛性を示す繊維織布7に、等方的な剛性を示す繊維織布8を部分的に重ねることにより、剛性分布を発生させる。同一箇所に重ねる織布は要求する剛直度により複数枚であってもよいが、厚さ方向へのインパクトが大きくなるため、絶縁層一層につき一枚までが好ましい。また、礎となる織布と重ねる織布の材質は異なっていてもよい。織布を重ねたのち樹脂に含浸させプリプレグとし、実施の形態1と同様の工法により配線基板を作製する。
【0052】
本実施例は実施例1と比較し、工法的に簡便に剛性分布を発生させることができる。また、実施例1とは異なり、礎となる織布の織り密度は密であってもよい。このため、曲げを想定しない平面基板にこの方法を適用することで、基板全体も剛直でありながら電子部品直下はさらに剛直な配線基板を作製することができ、基板全体として薄くても、はんだリフローなどの熱負荷時においての反りを抑制することが可能である。
【0053】
ただし、剛性を大きくさせる箇所は織布を重ねるため、その箇所は若干ながら厚さが増してしまう。この構成を有する絶縁層数が多いほど厚さ方向のインパクトが大きくなるため、この方法は層数の少ない配線基板や、後に述べる実施例5のように最表層の絶縁層のみへの適用が有効といえる。
【実施例3】
【0054】
さらに、同一面内に剛性分布を発生させるその他の方法について説明する。
図5は、本発明に係る配線基板の他の実施例を示す概念図である。
すなわち、本実施例は、同一面内において部分的に補強となる織布を配置した状態で樹脂に含浸させプリプレグとする。このプリプレグは、全体としては繊維を含まない樹脂9の剛性を有するが、織布の存在する箇所はより剛性が高くなっている。同一箇所に重ねる織布は要求する剛直度により複数枚であってもよいが、厚さ方向へのインパクトが大きくなるため、絶縁層一層につき一枚までが好ましい。プリプレグとした後は、実施例1と同様の方法により配線基板を作製する。
【0055】
絶縁層の樹脂材料としては、例えば樹脂付き銅箔に用いられるようなエポキシ樹脂があるが、その他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂も利用可能である。
【0056】
本実施例は、繊維を含まない絶縁層を設けるため、実施例1及び実施例2よりも配線基板全体の剛性が小さくなり、曲げ半径が小さな筐体に組みこんだ場合も、配線基板全体に発生する応力は小さくなる。しかし、曲げた状態での電子部品搭載部の平坦性は、実施例1及び実施例2と比較して低下するため、要求される平坦面積の小さい小型電子部品を搭載する場合に有効といえる。
【実施例4】
【0057】
次に、上述の絶縁層構造を多層配線基板に適用する場合の構造について説明する。
なお、以下の説明では実施例1を適用した多層配線基板構造を考えているが、実施例2及び実施例3を適用した場合も同様である。
【0058】
図6(a)、(b)は、本発明に係る配線基板の他の実施例の概念図である。
すなわち、実施例4に係る、実施例1の配線基板を多層配線基板に適用した場合の基板構成を示す図面であり、(a)片面実装を考えた場合の多層配線基板の断面図、(b)は両面実装を考えた場合の多層配線基板の断面図である。
【0059】
本実施例は、配線層数が6層の多層配線基板である。すなわち、配線が形成された第1導体層10、第2導体層11、第3導体層12、第4導体層13、第5導体層14及び第6導体層15を有し、隣り合う導体層の間に絶縁層が介在する。介在する絶縁層は、合計5層である。この基板における第3導体層12と第4導体層13の間の絶縁層(以下、3−4層絶縁層18)が、基板中心のコア層である。
【0060】
3−4層絶縁層18と第3導体層12と第4導体層13からなる積層板は、ガラス織布に樹脂を含浸させてなるプリプレグの両面に銅箔を張り合わせた両面銅張樹脂板が使用されている。この銅張樹脂板の両面の銅箔が、第3導体層12及び第4導体層13になる。
【0061】
第1導体層10と第2導体層11との間の絶縁層(以下、1−2層絶縁層16)、第2導体層11と第3導体層12との間の絶縁層(以下、2−3層絶縁層17)、第4導体層13と第5導体層14との間の絶縁層(以下、4−5層絶縁層19)、第5導体層14と第6導体層15との間の絶縁層(以下、5−6層絶縁層20)は、同一面内で織り密度に疎密を設けたガラス織布に樹脂を含浸させて作成したプリプレグが使用されている。
【0062】
すなわち、図6(a)に示す片面実装の多層配線基板21の場合は、コア層である3−4層絶縁層18を除く全ての絶縁層が、最表層において電子部品が搭載される箇所を、同一面内で織り密度が密になるようにガラス繊維が織りこまれた織布を用いている。
【0063】
また、図6(b)に示す両面実装の多層配線基板22の場合は、コア層である3−4絶縁層18を除く全ての絶縁層が、コア層を中心により近い最表層において電子部品が搭載される箇所を、同一面内で織り密度が密になるようにガラス繊維が織りこまれた織布を用いている。
【0064】
本実施例の多層配線基板21、22を作製する際は、公知のビルドアップ工法をそのまま用いることが可能である。
【0065】
すなわち、ガラス織布に樹脂を含浸させた基材の両面に銅箔を張り合わせた両面銅張樹脂板を用意し、この両面の銅箔をエッチングして、ビアで接続された配線を形成する。これにより、第3導体層12と3−4層絶縁層18と第4導体層13からなる2層配線板が形成される。
【0066】
さらに、この2層配線板の表面と裏面に、ビアが形成された上述の特徴を有するプリプレグと銅箔とを重ねて熱プレスにより接着した後、各銅箔をエッチングして配線を形成する。これにより、第2導体層11、2−3層絶縁層17、第3導体層12、3−4層絶縁層18、第4導体層13、および4−5層絶縁層19からなる4層配線基板が形成される。
【0067】
そして、この4層配線板の表面と裏面に、ビアが形成された上述の特徴を有するプリプレグと銅箔とを重ねて熱プレスにより接着した後、各銅箔をエッチングして配線を形成する。これにより、本実施例の6層からなる多層配線基板21、22が完成する。
【0068】
この多層配線基板は電子部品直下の剛直性を重視した構造であり、電子部品の接続信頼性に優れている。このため、この構造は要求される平坦面積の大きな大型電子部品搭載時に際して効果的である。しかし、基板全体の剛性も大きいため、比較的曲げ半径の大きな筐体に組みこむ場合に有効といえる。
【0069】
なお、本実施例では、3−4層絶縁層18はコア層であるため、同一面内で等方的な剛性を有するガラス織布を含む絶縁層としているが、他の絶縁層と同様に、ガラス織布の織り密度に疎密を持たせた構造であってもよい。すなわち、片面実装の場合は最表層において電子部品が搭載される箇所を密に、両面実装の場合は少なくとも一方の最表層において電子部品が搭載される箇所を密にする。この場合は、電子部品を搭載する箇所の平坦性をより確保することができる。
【実施例5】
【0070】
次に、上述の絶縁層構造を多層配線基板に適用するその他の場合の構造について説明する。
図7(a)、(b)は、本発明に係る配線基板の他の実施例を示す概念図である。
実施例5に係る、実施例1の配線基板を多層配線基板に適用した場合の基板構成を示す図面であり、(a)片面実装を考えた場合の多層配線基板の断面図、(b)は両面実装を考えた場合の多層配線基板の断面図である。
【0071】
本実施例では、6層の配線層からなる多層配線基板23、24において、(a)では2−3層絶縁層17、4−5層絶縁層19、5−6層絶縁層20が繊維を含まない樹脂層、(b)では2−3層絶縁層17及び4−5層絶縁層19が繊維を含まない樹脂層で構成されている。また、(a)では1−2層絶縁層16、(b)では1−2層絶縁層16及び5−6層絶縁層20が実施の形態1を用いたガラス織布を含む樹脂層となっている。なお、(a)および(b)のコア層、すなわち3−4層絶縁層9は同一面内で等方性を有するガラス織布を含む樹脂で構成される。
【0072】
この多層配線基板は電子部品直下の柔軟性を重視した構造であり、基板全体が曲げ易構造となっている。このため、この構造は曲げ半径の小さい筐体へ組みこむ場合に効果的である。しかし、電子部品直下の平坦性は実施の形態4と比較し劣るため、要求される平坦部面積の小さな小型電子部品を搭載する場合に有効といえる。
【0073】
さらに柔軟性を要求する場合は、コア層である3−4層絶縁層18がガラス織布を含まない構造であってもよいが、平面時の電子部品搭載の際など基板にはある程度の平坦性が要求されるため、ガラス織布を含んだ構造であることが好ましい。
【0074】
なお、実施例4及び実施例5はそれぞれ電子部品直下の剛直性、基板全体の柔軟性を重視した多層配線基板構造であるが、これらの中間の性質を有する構造であってもよい。例えば、図7(a)において、2−3層配線層17を実施の形態1を用いたガラス織布を含む樹脂層とすることで、基板全体の柔軟性は若干犠牲としながらも電子部品の接続信頼性を向上させることができる。
【0075】
以上の各実施例に例示した本発明の配線基板を様々な電子機器に適用することができる。特に、本発明に係る配線基板によると、小型・薄型化および、人との親和性が要求される携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ等の電子機器の更なる外形デザインの向上が可能となる。
【0076】
[作用効果]
本発明によれば、実装可能領域を減少させることなく、曲げた状態で筐体に組みこんだ際に、電子部品搭載部が平面配線基板搭載時と同等の接続信頼性を確保することが可能となる。また、基板総厚へのインパクトも従来技術と比較して大幅に小さくなる。
【0077】
また、曲げた状態で組みこむことを想定しない平面基板においては、電子部品搭載部を選択的に剛直とすることで、はんだリフローなどの熱負荷時における基板の反りを抑制でき、基板の反りが大きな問題となっている薄型基板へ適用した際にも接続信頼性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る配線基板の一実施例の構成および特性を説明するための断面図である。
【図2】(a)は、図1における配線基板1の絶縁層に含まれるガラス織布の構成を示した上面図であり、(b)は、(a)のIIb−IIb線の剛性に係る特性図である。
【図3】(a)は、本発明に係る配線基板の実施例1を用いた配線基板を曲げた場合の、電子部品搭載部近傍の模式図であり、(b)は、本発明に係る配線基板の実施例1を用いない配線基板を曲げた場合の電子部品搭載部近傍の模式図である。
【図4】本発明に係る配線基板の他の実施例を示す概念図である。
【図5】本発明に係る配線基板の他の実施例を示す概念図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明に係る配線基板の他の実施例の概念図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明に係る配線基板の他の実施例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0079】
1、5、6 配線基板
2 電子部品
3 織り密度が疎の領域
4 織り密度が密な領域
7 礎となる繊維織布
8 補強となる繊維織布
9 繊維を含まない樹脂
10 第1導体層
11 第2導体層
12 第3導体層
13 第4導体層
14 第5導体層
15 第6導体層
16 1−2層絶縁層
17 2−3層絶縁層
18 3−4層絶縁層
19 4−5層絶縁層
20 5−6層絶縁層
21、22、23、24 多層配線基板
X 曲げ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層以上の絶縁層を有する配線基板において、該配線基板の少なくとも1層の絶縁層が、同一平面内において剛性分布を有し、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域において相対的に剛性が高く構成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記剛性分布は、前記絶縁層に含まれる繊維の密度に疎密を設けた構成により得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記剛性分布は、前記絶縁層に含まれる織布の織り密度に疎密を設けた構成により得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記剛性分布は、前記絶縁層に含まれる織布あるいは不織布に、部分的にさらに織布あるいは不織布を重ねた構成により得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記剛性分布は、前記絶縁層が部分的に織布あるいは不織布を配置した構成により得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
少なくとも最表層となる絶縁層は、請求項2から5のいずれか1項に記載の構成を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項7】
コア層である絶縁層を除く全ての絶縁層は、請求項2から5のいずれか1項に記載の構成を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項8】
1層以上の絶縁層を有する配線基板の製造方法において、該配線基板の少なくとも1層の絶縁層に、少なくとも電子部品が搭載される電極部を含む領域の剛性が相対的に高い剛性分布を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁層に含まれる繊維の密度に疎密を設けることにより前記剛性分布を形成することを特徴とする、請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁層に含まれる織布の織り密度に疎密を設けることにより前記剛性分布を形成することを特徴とする、請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層に含まれる織布あるいは不織布に、部分的にさらに織布あるいは不織布を重ねた構成により前記剛性分布を形成することを特徴とする、請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁層が部分的に織布あるいは不織布を配置した構成により前記剛性分布を形成することを特徴とする、請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
少なくとも最表層となる絶縁層を、請求項9から12のいずれか1項に記載の構成とすることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項14】
コア層である絶縁層を除く全ての絶縁層を、請求項9から12のいずれか1項に記載の構成とすることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−212224(P2009−212224A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52293(P2008−52293)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】