配線基板
【課題】部品点数を増やすことなく他部材との接続が可能であって、接続先の他部材に対して向きの制約を受けず位置決めを行うことができる配線基板を提供する。
【解決手段】配線パターン13、21と配線パターン13、21が固定される絶縁層11を有する配線基板10であって、配線パターン13は、絶縁層11と接合するパターン接合部14と、パターン接合部14から延設され、絶縁層の端縁からはみ出るパターン延設部15を備え、パターン延設部15を屈曲することでパターン延設部15の先端がパターン接合部14の最外面より突出可能な接続端子Tを設けた。
【解決手段】配線パターン13、21と配線パターン13、21が固定される絶縁層11を有する配線基板10であって、配線パターン13は、絶縁層11と接合するパターン接合部14と、パターン接合部14から延設され、絶縁層の端縁からはみ出るパターン延設部15を備え、パターン延設部15を屈曲することでパターン延設部15の先端がパターン接合部14の最外面より突出可能な接続端子Tを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車の電子機器等に好適に用いることができる配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板に関する技術として、例えば、特許文献1に開示された車両用の電源装置が存在する。この車両用の電源装置では、金属ロッドからなるハードワイヤーを介してパワー基板と制御基板とを電気的接続しつつ一体的に連結している。あるいは、パワー基板にコネクタを設けて制御基板がコネクタに挿入されてパワー基板と制御基板が連結されている。
【0003】
別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示されたプリント基板間の接続構造が知られている。このプリント基板間の接続構造では、第1のプリント基板は、絶縁板と上下一対のランドと、上下一対のランドを貫通する貫通孔を備えており、第2のプリント基板は、絶縁板と絶縁板の一端縁に突設された接栓端子部を有している。この接栓端子部は、第1のプリント基板の貫通孔に嵌合可能な突起と、突起の一面側に設けられた接続電極パターンとから成る。第1のプリント基板の貫通孔に第2のプリント基板の接栓端子部を嵌合してから下面側のランドと接続電極パターンを半田接続することで、第1のプリント基板に対して第2のプリント基板を一定の交差角度を持って電気的機械的に接続される。
【0004】
さらに、別の従来技術としては、例えば、特許文献3に開示された基板の連結構造が存在する。基板の連結構造では、雄と雌のいずれか一方の基板に実装されたコネクタに、他方の基板との連結時の案内となる所定の長さを有するガイド部が備えられ、他方の基板にガイド部と対応する位置にガイド部が貫通する切欠部が備えられる。ガイド部を切欠部に貫通させたときに、雄と雌のコネクタが相対向する位置に定まり、雄と雌のコネクタ接続時の作業性が向上する。
【0005】
さらに、別の従来技術としては、例えば、特許文献4に記載されたプリント基板の保持構造を挙げることができる。このプリント基板の保持構造では、下側基板に実装された雄コネクタの両側部には、それぞれ頭部を有する突起が設けられる。一方、上側基板に実装された雌コネクタの両側方の、各頭部と対向する部位には、それぞれ孔が形成される。各孔の径は、それぞれ頭部の大きさより小さく、頭部が弾性変形することによって、頭部が孔に着脱自在に嵌合可能になっている。このことにより、下側基板と上側基板との着脱作業を、工具を用いずに容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−33882号公報。
【特許文献2】特開2001−57465号公報。
【特許文献3】特開2008−10592号公報。
【特許文献4】特開平5−218669号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、3、4に開示された従来技術では、基板同士の接続や位置決めのためにハードワイヤー、コネクタ、ガイドおよび突起等の別部材をいずれも必要とする問題がある。別部材を用いる場合、例えば、部品点数の増大や組み付け時間が余分に必要となり配線基板の製造コストが増大するほか、別部材を取り付けるスペースが基板等に必要となり、配線基板の小型化が妨げられる。
【0008】
一方、特許文献2では、別部材を必要とせずに基板同士の接続を可能とするが、一方の基板の一端縁に突設された接栓端子部を他方の基板の貫通孔に嵌合するため、基板間において一定の交差角度を必要とし、例えば、夫々の基板面が互いに平行となるような両基板の位置決めは不可能である。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、部品点数を増やすことなく他部材との接続が可能であって、接続先の他部材に対して向きの制約を受けず位置決めを行うことができる配線基板の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金属板により形成された配線パターンと前記配線パターンが固定される絶縁層を有する配線基板であって、前記配線パターンは、前記絶縁層と接合するパターン接合部と、前記パターン接合部から延設され、前記絶縁層の端縁からはみ出るパターン延設部を備え、前記パターン延設部を屈曲することで前記パターン延設部の一部が前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面より突出可能な接続端子を設け、前記配線パターンに凹状の実装パッドが形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、配線パターンと絶縁層との接合後にパターン延設部を屈曲することにより、絶縁層又はパターン接合部の最外面より突出される接続端子を形成することができる。このため、部品点数を増やすことなく配線パターンの一部を接続端子として用いることができる。また、パターン延設部の屈曲により接続端子を形成することから、接続端子は接続先の他部材に対する向きの制約を受けにくい。さらに、配線パターンに実装パッドとしての凹部が形成されていることから、配線パターンに電子部品を表面実装することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の配線基板において、前記パターン延設部の表面には屈曲される部分に凹部が形成されてもよい。この場合、屈曲前のパターン延設部にはスプリングバック防止の凹部が形成されているから、パターン延設部が屈曲されても凹部により接続端子のスプリングバックが防止される。
【0013】
請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の配線基板において、前記凹部は、ストライキングまたは楔溝であってもよい。この場合、ストライキングまたは楔溝は加工により施されるから、部品点数を増やすことなく接続端子のスプリングバック防止を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明のように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の配線基板において、前記接続端子は、前記絶縁層に固定される一つの区画の配線パターンと他の一つの区画の配線パターンとを結ぶジャンパ線を構成してもよい。この場合、接続端子により、絶縁層に固定される一つの区画の配線パターンと他の一つの区画の配線パターンとを結ぶことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明のように、請求項4に記載の配線基板において、前記ジャンパ線を構成する接続端子は、前記一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋している構成とする。この場合、ジャンパ線を構成する接続端子が、一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋しており、ジャンパ線を構成する接続端子と、一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンとを確実に絶縁させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明のように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線基板において、前記接続端子は、半田により他部材と接続されてもよい。この場合、接続端子と他部材は半田により接続される。このため、接続端子と他部材との導通を図ることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載の配線基板において、前記パターン延設部の側部は前記接続端子の先端に向かって前記パターン延設部の幅が狭くなるテーパー部を有してもよい。この場合、パターン延設部が有するテーパー部は、接続先となる他部材に対して接続端子を案内するガイド機能を果す。テーパー部が接続端子を案内することにより、接続端子は他部材と接続しやすくなる。なお、テーパー部による接続端子の案内は、他部材の被接続部を案内するような接続端子の相対的な案内も含まれる。
【0018】
請求項8に記載の発明のように、請求項6又は7に記載の配線基板において、前記パターン延設部には、前記接続端子の先端部よりも幅が広くなる幅広部を有してもよい。この場合、パターン延設部が有する幅広部は、接続端子が他部材と接続された状態で他部材を支持することができる。このため、他部材を支持するための部材を別に設ける必要がない。
【0019】
請求項9に記載の発明のように、請求項1〜8のいずれか一項に記載の配線基板において、前記絶縁層は、前記絶縁層を貫通する開口部を備え、前記パターン延設部は前記開口部に位置してもよい。この場合、開口部の周囲にパターン接合部が位置するため、接続端子が他部材と干渉しにくく、接続端子を保護し易い。屈曲前のパターン延設部は開口部内に位置するから、屈曲前の配線基板を搬送させ易くなる等、製作時における配線基板の取り扱いが容易となる。
【0020】
請求項10に記載の発明のように、請求項1〜9のいずれか一項に記載の配線基板において、前記配線パターンは、プレス加工により形成されるとともに、前記絶縁層に接着剤により接合されており、前記接続端子は、前記配線パターンを前記絶縁層に接合した後に前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面と直角方向へ屈曲形成されたものであってもよい。この場合、接続端子を形成するパターン延設部の先端は絶縁層又はパターン接合部の最外面と直角方向へ向くため、基板面と平行な面を有する他部材(例えば、配線基板)と接続端子を接続しやすくなる。また、配線パターンは絶縁層に接着剤により接合される。このため、配線パターンを絶縁層に確実に接合して固定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、部品点数を増やすことなく他部材との接続が可能であって、接続先の他部材に対して向きの制約を受けず位置決めを行うことができる配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る配線基板と別基板との接続構造を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る配線基板の平面図である。
【図3】図2のA−A線矢視図である。
【図4】(a)〜(c)は第1実施形態の係る配線基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図5】(a)、(b)は第1実施形態に係る配線基板の製造工程を示す縦断面図であり、(c)は配線基板と別基板との接続工程を示す縦断面図である。
【図6】(a)、(b)は第2実施形態に係る配線基板を示す縦断面図である。
【図7】(a)、(b)は第3実施形態に係る配線基板を示す縦断面図である。
【図8】(a)は別例における配線基板の平面図、(b)は配線基板の側面図、(c)は配線基板の正面図である。
【図9】(a)は別例における配線基板の平面図、(b)は配線基板の側面図である。
【図10】別例における配線基板の正面図である。
【図11】別例における配線基板の一部正面部である。
【図12】別例における配線基板の一部正面部である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る配線基板について、図面を参照して説明する。図1に示す本実施形態に係る配線基板10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車の高出力モータの制御基板等により制御されるパワー基板である。配線基板10は、筐体(図示せず)上に絶縁性の放熱シート等を介して固定されている。この配線基板10では、図1に示すように、絶縁層11の表面側に対して板状の表面側配線パターン13が接着シート(図示せず)により固定されている。また、絶縁層11の裏面側に対して裏面側配線パターン21が接着シート(図示せず)により固定されている。つまり、配線基板10は絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化により形成されている。図1に示す配線基板10は、接続端子Tを介して他部材としての基板25と接続されている。
【0024】
配線基板10における絶縁層11は、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させて構成されている。絶縁層11の厚さは例えば0.4〜4.0mm、より好ましくは0.5〜0.8mmに設定されている。絶縁層11は、絶縁層11の一方の層面(表面)から他方の層面(裏面)へ開口する方形状の開口部12を備えており、開口部12は絶縁層11のプレスによる打ち抜きにより形成されている。
【0025】
配線基板10に用いる接着シートとしては、エポキシ系接着剤を主成分とする接着シートが採用されており、エポキシ系接着剤は他の接着剤と比較して接着性、熱伝導性、絶縁性に優れる。接着シートの厚さは100μm以下、より好ましくは40〜50μmに設定されている。なお、接着シートの接着剤としては、上述のようにエポキシ系接着剤を採用することに限らず、例えば、他の接着剤としてシリコーン系接着剤を採用してもよいし、ガラス繊維が入っていないプリプレグを接着剤として採用してもよい。また、接着シートだけでなく塗布タイプの接着剤を用いて絶縁層11に対して表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を固定することも妨げない。
【0026】
配線パターンとしての表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21は、素材となる銅板の打ち抜きプレス加工により形成されている導体板である。各配線パターン13、21の厚さは、例えば、0.4〜2.0mm、より好ましくは0.5mmの銅板に所定のパターンを打ち抜きプレス加工して構成されている。本実施形態では、大電流(例えば50〜180A)に対応可能な板状の回路パターンとして所定の板厚の金属板が採用されている。ここで、本実施形態で定義する金属板とは、打ち抜き加工が可能で、外力を加えることなく形状の維持可能な厚みの板状体を意味する。さらに言うと、本実施形態で定義する金属板の概念は、エッチング加工を必要とする自ら形状を維持し得ないものを除く概念である。なお、各配線パターン13、21は、銅板により構成されることに限らず、例えば、アルミニウム板等の導電性の材料により構成されてもよい。また、配線基板10は、大電流用に使用することに限らず、微弱電流用(数mA)に使用してもよい。
【0027】
図1および図2に示すように、表面側配線パターン13は、絶縁層11と重畳するパターン接合部14と、パターン接合部14から絶縁層11の開口部12側へ延設されるパターン延設部15を備えている。パターン接合部14は絶縁層11に対して接着シートにより固定されている部位である。パターン延設部15は、絶縁層11に接合されない非重畳となる部位であり、屈曲により表面側配線パターン13における接続端子Tを形成する。
【0028】
図3に示すように、パターン延設部15は、パターン接合部14側に連通する基部16と基部16よりも幅小の先端部17を有しており、基部16と先端部17との間には段差18が形成されており、段差18は基板25を支持し、配線基板10と基板25との所定距離を維持する。基部16は先端部17よりも幅が広くなる幅広部に相当する。また、基部16において屈曲される部分である屈曲予定箇所には、スプリングバック防止の形状補正のための凹部としてのストライキング20が形成されており、凹部としてのストライキング20は表面側配線パターン13の打ち抜きプレス加工時に形成される。パターン延設部15における先端部17の側部は、隅部を面取りしたテーパー部19を有する。テーパー部19は、先端へ向かうにつれて先端部17の幅が狭くなるように形成され、接続先となる基板25の接続先に対して接続端子Tを相対的に案内するガイド機能を有する。
【0029】
パターン延設部15における基部16の長手方向の途中から直角に屈曲されることにより、パターン延設部15の先端が上方へ向かい、配線基板10の基板面であって表面側配線パターン13の最外面である表面より突出される。パターン延設部15の屈曲は、絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化の後に行われる。パターン延設部15の屈曲箇所を屈曲位置Pすると、パターン延設部15は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備える。無変位部分は基部16の一部から形成され、屈曲変位部分は基部16の残り部分と先端部17から形成される。本実施形態では、パターン延設部15における屈曲変位部分の長さ(高さ)を2.0mmとしているが、屈曲変位部分の長さは配線基板10や基板25の条件に応じて自由に設定することができ、特に制限されない。なお、配線基板の基板面をパターン接合部ではなく絶縁層が形成する場合、パターン延設部の先端は絶縁層の最外面としての表面より突出される。
【0030】
次に、裏面側配線パターン21について説明する。本実施形態の裏面側配線パターン21は、接着シートにより絶縁層11の下面側に固定されている。裏面側配線パターン21は、表面側配線パターン13のようにパターン延設部を備えることはなく、絶縁層11の開口部12とほぼ同一形状の開口部22を備えている。絶縁層11は開口部12に面した端縁を有する。また、表面側配線パターン13と裏面側配線パターン21との層間導通を図ることがある。
【0031】
本実施形態に係る配線基板10は、他部材である基板25と接続端子Tを介して接続されている。基板25は、絶縁層26、表面側配線パターン27および裏面側配線パターン28の一体化により形成されている。基板25には、配線基板10の接続端子Tを挿入可能な挿入孔29を備えており、挿入孔29は接続端子Tを形成するパターン延設部15の先端部17のみを挿入可能としている。挿入孔29に挿入された先端部17と基板25との隙間には半田Sが充填されており、半田Sにより接続端子Tと基板25が互いに電気的に導通されている。半田Sを用いた接続端子Tと基板25との固定により配線基板10と基板25との導通および基板25における表面側配線パターン27と裏面側配線パターン28との層間導通が図られている。
【0032】
次に、本実施形態に係る配線基板10の製造工程について説明する。配線基板10の製造工程には、パターン成形工程、絶縁層成形工程、接合工程およびパターン屈曲工程が含まれている。パターン成形工程は、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を素材となる銅板からプレス打ち抜きにより成形する工程である。絶縁層成形工程は、プリプレグを熱硬化させて絶縁層11を形成する工程である。接合工程は、絶縁層11に接着シートを介して表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を固定し、絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化を図る工程である。パターン屈曲工程は、接合工程後において、表面側配線パターン13におけるパターン延設部15を屈曲して接続端子Tを形成する工程である。
【0033】
図4(a)に示すように、接合工程に先立って予め形成された絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を用意する。絶縁層11については、絶縁層成形工程において、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させることにより形成する。本実施形態では、形成された絶縁層11を打ち抜きプレス加工することにより開口部12を形成する。
【0034】
表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の素材となる所定の形状の銅板を用意する。表面側配線パターン13を成形するパターン成形工程では、素材となる銅板をプレス加工により、パターン接合部14およびパターン延設部15を有する表面側配線パターン13が成形される。また、プレス加工では、表面側配線パターン13において、スプリングバック防止の形状補正のためのストライキング加工に係るストライキング20と、パターン延設部15における基部16と先端部17との間の段差18と、ガイド部としての隅部を面取りしたテーパー部19と、実装パッドである凹部(図示略)と、が成形される。裏面側配線パターン21を成形するパターン成形工程では、素材となる銅板をプレス加工により成形することにより、開口部22を有する裏面側配線パターン21が形成される。
【0035】
接合工程では、絶縁層11の表面および裏面に接着シートを貼着した後、裏面側配線パターン21上に絶縁層11を重ね、表面側の接着シート上に表面側配線パターン13を重ね、表面側および裏面側から真空プレスにより加圧する。加圧により、絶縁層11の裏面側に裏面側配線パターン21が固定され、絶縁層11の表面側に表面側配線パターン13が固定され、絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化が図られた積層体10Aを得る。図4(b)に示すように、接合工程により得られた積層体10Aは表面および裏面は突起物のない平坦面により形成されている。表面側配線パターン13のパターン延設部15が絶縁層11の開口部22側へ真っ直ぐ延設された状態にあり、ストライキング20の一部は開口部22側に位置する。パターン延設部15は、開口部12に面した絶縁層11の端縁からはみ出ている状態にある。実装パッドを用いて電子部品の表面実装を行う場合、この状態でマウンタにより電子部品が積層体10Aに実装され、リフローによる半田付けが行われる。この状態でのパターン延設部15は基板面より突出していないため、上記の電子部品の表面実装工程の邪魔になることはない。積層体10Aに電子部品が実装された後、次に、パターン屈曲工程に移る。パターン屈曲工程では、パターン延設部15を屈曲させて接続端子Tを形成する。
【0036】
図4(c)に示すように、パターン屈曲工程では、まず、表面押さえ治具31によりストライキング20を含む積層体10Aの表面を押さえるとともに、裏面押さえ治具32により絶縁層11の開口部12の除く積層体10Aの裏面を押さえる。次に、昇降可能なパンチ33を積層体10Aの裏面側からパターン延設部15に対向させ、パンチ33を上昇させる。上昇するパンチ33はパターン延設部15の下面と当接するが、その後のパンチ33の上昇により、パターン延設部15は屈曲される。
【0037】
図5(a)に示すように、パターン延設部15は、パンチ33の上昇により表面押さえ治具31の端部に沿うように基部16の途中から屈曲される。パターン延設部15は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備え、屈曲変位部分は無変位部分に対して垂直に屈曲された部位となっている。従って、屈曲変位部分の先端は、表面側配線パターン13の最外面である表面よりも突出している。パターン延設部15の屈曲変位部分の先端は、基板25と接続の際に挿入孔29に挿入される。このように、パターン屈曲工程では、パターン延設部15が屈曲されることにより接続端子Tが形成され、接続端子Tを備えた配線基板10が得られる。
【0038】
次に、配線基板10に基板25を接続する工程について説明する。屈曲されたパターン延設部15は接続端子Tを構成している。基板25の挿入孔29がパターン延設部15の先端の上方に位置するように、基板25を配線基板10に対して位置決めする。基板25を配線基板10に対して位置決めした後、基板25を配線基板10へ向けて下降させる。図5(b)に示すように、基板25を下降させることによりパターン延設部15の先端は基板25の挿入孔29に挿入される。因みに、パターン延設部15の先端と基板25の挿入孔29が所定の位置から僅かに外れている場合がある。この場合、パターン延設部15の先端が基板25の挿入孔29に挿入される際、テーパー部19が基板25に対して接続端子Tを相対的に案内するから、パターン延設部15の先端は基板25の挿入孔29に挿入される。なお、本実施形態では、基板25を配線基板10に対して下降させるようにしたが、基板25に対して配線基板10を上昇させて配線基板10の接続端子Tを基板25の挿入孔29へ挿入するようにしてもよい。
【0039】
パターン延設部15の先端は基板25の挿入孔29に挿入されても、基板25を下降させるとパターン延設部15における段差18が基板25と当接し、基板25の下降が規制される。段差18が基板25と当接することにより配線基板10と基板25との距離が設定されるとともに、基板25はパターン延設部15により支持される。配線基板10と基板25との距離は、パターン延設部15において屈曲位置Pから段差18までの距離に相当する。
【0040】
次に、図5(c)に示すように、配線基板10の接続端子Tを形成するパターン延設部15と基板25の挿入孔29との隙間に半田Sを充填する。半田Sの充填により接続端子Tと基板25が物理的に固定されるとともに、配線基板10と基板25は電気的に接続される。なお、半田Sは環境面から鉛フリー半田を使用することが好ましい。
【0041】
第1の実施形態では以下の作用効果を奏する。
(1)各配線パターン13、21と絶縁層11との積層後にパターン延設部15を屈曲することにより、基板面より突出される接続端子Tを形成することができる。このため、部品点数を増やすことなく配線パターンの一部を接続端子Tとして用いることができる。また、パターン延設部15の屈曲により接続端子Tを形成することから、接続端子Tは接続先の基板25に対する向きの制約を受けにくい。曲げ加工した接続端子Tを接続することにより別部品は不要であり、また、実装面積の増大により電子部品の高密度実装が可能である。
(2)接続端子Tは、基板面であるパターン延設部15の最外面と直角方向へ屈曲形成され、接続端子Tを形成するパターン延設部15の先端は基板面と直角方向へ向くため、パターン延設部15における先端位置を設定する自由度が高くなり、この基板面と平行な面を有する基板25とパターン延設部15を接続しやすくなる。
(3)パターン延設部15は、接続先となる基板25の挿入孔29に対して接続端子Tを案内するテーパー部19を有しており、テーパー部19は基板25の挿入孔29に対して接続端子Tを相対的に案内するガイド機能を果す。配線基板10と基板25が僅かに位置ずれしている状態であっても、テーパー部19がパターン延設部15を相対的に案内することにより、配線基板10は基板25と接続しやすくなる。
(4)パターン延設部15は、接続先となる基板25を支持する支持部としての段差18を有しており、段差18はパターン延設部15が基板25と接続された状態では基板25の裏面と当接して基板25を支持することができる。このため、基板25を支持するための部材を配線基板10において別に設ける必要がない。
(5)パターン延設部15は半田Sにより基板25と接続されるため、配線基板10と基板25は電気的に接続される。パターン延設部15と基板25の被接続部である挿入孔29との間には隙間が形成されても、隙間に半田Sが充填され、配線基板10と基板25とを接続することができる。
(6)屈曲前のパターン延設部15にはスプリングバック防止の凹部が形成されているから、パターン延設部15が屈曲されても接続端子Tのスプリングバックが防止される。そして、凹部は、パターン延設部15における屈曲予定箇所のストライキング加工に係るストライキング20であり、部品点数を増やすことなく接続端子Tのスプリングバック防止を図ることができる。
(7)配線パターン13、21と絶縁層11との積層後にパターン延設部15を屈曲して接続端子Tを形成するから、接続端子Tが形成される前の積層体10Aは、表裏面とも突起物のない平坦面から構成され、基板製造時における積層体10Aの操作や取り扱いに都合が良く、配線基板10の生産性向上に寄与する。
(8)配線パターン13、21が銅板により形成され、配線パターン13に実装パッドが形成されていることから、配線パターン13に電子部品を表面実装することができる。また、電子部品の表面実装後の配線パターン13を屈曲することで、電子部品を備えた接続端子として用いることができる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る配線基板について説明する。第2の実施形態の配線基板では、裏面側配線パターンがパターン延設部を備えており、パターン延設部が屈曲されて接続端子が形成されている。第1の実施形態と同一の要素については、第1の実施形態の説明を援用して説明を省略し、共通の符号を用いる。
【0043】
図6(a)に示されるように、本実施形態の表面側配線パターン41は絶縁層11の上面側に固定されている。表面側配線パターン41は絶縁層11と重畳し、絶縁層11の開口部12とほぼ同一形状の開口部42を備えている。表面側配線パターン41と裏面側配線パターン43との層間導通を図ることがある。
【0044】
裏面側配線パターン43は、絶縁層11と重畳するパターン接合部44と、パターン接合部44から開口部12へ延設されるパターン延設部45を備えている。パターン接合部44は、裏面側配線パターン43において絶縁層11と接着シートにより固定されている部位である。パターン延設部45は、絶縁層11に接合されない非重畳の部位であり、屈曲により裏面側配線パターン28における接続端子Tを形成する。
【0045】
本実施形態のパターン延設部45は、基端から先端まで一定の幅寸法にて設定されている。パターン延設部45において屈曲が予定される箇所である屈曲予定箇所には、スプリングバック防止の形状補正のための凹部としての楔溝46が形成されており、楔溝46は裏面側配線パターン43の打ち抜きプレス加工時に形成される。形成直後の楔溝46の溝開き角度は約100度である。
【0046】
パターン延設部45の長手方向の途中から直角に屈曲されることにより、パターン延設部45の先端が上方へ向かい、配線基板40の基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面より突出される。パターン延設部45の屈曲は、絶縁層11、裏面側配線パターン43および表面側配線パターン41の一体化の後に行われる。パターン延設部45の屈曲箇所を屈曲位置Pすると、パターン延設部45は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備える。
【0047】
本実施形態に係る配線基板40は、他部材である基板47と接続端子Tを介して接続されている。基板47は、絶縁層48、表面側配線パターン49および裏面側配線パターン50の一体化により形成されている。基板47には、配線基板10の接続端子Tを嵌合可能な嵌合孔52を備えた嵌合部材51が設けられており、嵌合部材51の嵌合孔52は接続端子Tを形成するパターン延設部45の先端部を嵌合可能としている。パターン延設部45の先端部と嵌合部材51の嵌合孔52との嵌合により接続端子Tと基板47が互いに電気的に導通され、基板47は接続端子Tにより支持されている。嵌合による接続端子Tと基板47との固定により配線基板40と基板47との導通が図られている。
【0048】
本実施形態の配線基板40の製造工程には、パターン成形工程、絶縁層成形工程、接合工程およびパターン屈曲工程が含まれているが、各工程は基本的に第1の実施形態とほぼ同じである。本実施形態では、裏面側配線パターン43におけるパターン延設部45の屈曲によりパターン延設部45の先端側が上方へ向かう接続端子Tを形成する。パターン屈曲工程では、図6(b)に示す表面押さえ治具53、裏面押さえ治具54およびパンチ55を用いる。表面押さえ治具53および裏面押さえ治具54の一部は、パターン延設部45の基部付近を押さえる構造である。
【0049】
パターン屈曲工程では、表面押さえ治具53により積層体40Aの表面とパターン延設部45の基端付近を押さえるとともに、裏面押さえ治具54により積層体40Aの表面とパターン延設部45の基端付近を押さえる。これにより、パターン延設部45が屈曲されても、屈曲後のパターン延設部45と表面側配線パターン49との間に間隙が形成され、パターン延設部45と表面側配線パターン49との短絡が防止される。昇降可能なパンチ55を上昇させてパターン延設部45を屈曲する。パターン延設部45は表面押さえ治具53の端部に沿うように長手方向の途中から屈曲されており、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備え、屈曲変位部分は無変位部分に対して垂直に屈曲された部位となっている。屈曲変位部分の先端は、基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面よりも突出している。このように、パターン延設部45が屈曲されることにより接続端子Tが形成され、接続端子Tを備えた配線基板40が得られる。
【0050】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(2)、(6)、(7)と実質的に同一の作用効果を奏する。また、第2の実施形態によれば、裏面側配線パターン43において表面側配線パターン41の表面から突出する接続端子Tを形成することができる。さらに、基板47の被接続部が嵌合孔52を備えた嵌合部材51であり、接続端子Tと嵌合孔52との嵌合により配線基板40が基板47と接続されるから、半田を用いずに接続端子Tと基板47を接続することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る配線基板について説明する。第3の実施形態の配線基板では、複数の絶縁層の間に設けられた内側配線パターンにおいて接続端子を形成するパターン延設部が形成されている。第1、2の実施形態と同一の要素については、第1、2の実施形態の説明を援用して説明を省略し、共通の符号を用いる。
【0051】
図7(a)に示すように、本実施形態の配線基板60は、表面側配線パターン41と、裏面側配線パターン21と、内側配線パターン65と、第1絶縁層61と、第2絶縁層63と、を備えている。表面側配線パターン41は、第1絶縁層61と重畳し、第1絶縁層61の開口部62とほぼ同一の開口部42を備えている。裏面側配線パターン21は第2絶縁層63と重畳し、第2絶縁層63の開口部64とほぼ同一の開口部22を備えている。
【0052】
内側配線パターン65は、第2の実施形態の裏面側配線パターン43と実質的に同一構成である。内側配線パターン65は、第1絶縁層61および第2絶縁層63と重畳するパターン接合部66と、パターン接合部66から開口部62、64側へ延設されるパターン延設部67を備えている。パターン接合部66は、第1絶縁層61と第2絶縁層63との間に挟まれて接着シートにより固定されている。パターン延設部67は、第1絶縁層61および第2絶縁層63と非重畳の部位であり、屈曲により内側配線パターン65における接続端子Tを形成する。
【0053】
本実施形態のパターン延設部67は、基端から先端まで一定の幅寸法にて設定されている。パターン延設部67において屈曲が予定される箇所である屈曲予定箇所には、スプリングバック防止の形状補正のための楔溝加工による楔溝68が形成されており、楔溝68は内側配線パターン65の打ち抜きプレス加工時に形成される。楔溝68は第2の実施形態の楔溝46と同一構成である。
【0054】
パターン延設部67の途中から直角に屈曲されることにより、パターン延設部67の先端が上方へ向かい、配線基板60の基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面より突出される。パターン延設部67の屈曲は、第1絶縁層61、第2絶縁層63、裏面側配線パターン21、表面側配線パターン41および内側配線パターン65の一体化の後に行われる。パターン延設部67の屈曲箇所を屈曲位置Pすると、パターン延設部67は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備える。
【0055】
本実施形態に係る配線基板60は、他部材である基板47と接続端子Tを介して接続されているが、本実施形態の基板47は第2の実施形態の基板47と同一構成である。基板47には、被接続部としての嵌合孔52を備えた嵌合部材51が設けられており、パターン延設部67の先端側と嵌合部材51の嵌合孔52との嵌合により接続端子Tと基板47が互いに固定されている。
【0056】
本実施形態の配線基板60の製造工程には、パターン成形工程、絶縁層成形工程、接合工程およびパターン屈曲工程が含まれているが、接合工程を除く各工程は基本的に第1の実施形態とほぼ同じである。因みに、接合工程では、裏面側から順番に、裏面側配線パターン21、第2絶縁層63、内側配線パターン65、第1絶縁層61、表面側配線パターン41と積み重ねた後、表面側および裏面側からの加圧により積層体60Aを得る。
【0057】
本実施形態では、内側配線パターン65におけるパターン延設部67の屈曲によりパターン延設部67の先端側が上方へ向かう接続端子Tを形成する。パターン屈曲工程では、図7(b)に示す表面押さえ治具69、裏面押さえ治具70およびパンチ71を用いる。表面押さえ治具69および裏面押さえ治具70の一部は、パターン延設部67の基端付近を押さえる構造である。これにより、パターン延設部67が屈曲されても、屈曲後のパターン延設部67と表面側配線パターン41との間に間隙が形成され、パターン延設部67と表面側配線パターン41との短絡が防止される。
【0058】
パターン屈曲工程では、表面押さえ治具69により積層体60Aの表面とパターン延設部67の基端付近を押さえるとともに、裏面押さえ治具70により積層体60Aの表面とパターン延設部67の基端付近を押さえる。昇降可能なパンチ71を上昇させることによりパターン延設部67が屈曲される。パターン延設部67は表面押さえ治具69の端部に沿うように長手方向の途中から屈曲されており、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備え、屈曲変位部分は無変位部分に対して垂直に屈曲された部位となっている。屈曲変位部分の先端は、基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面よりも突出している。このように、パターン延設部67が屈曲されることにより接続端子Tが形成され、接続端子Tを備えた配線基板60が得られる。
【0059】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(2)、(6)、(7)と実質的に同一の作用効果を奏する。また、第3の実施形態によれば、内側配線パターン65において表面側配線パターン41の表面から突出する接続端子Tを形成することができる。さらに、接続端子Tと嵌合孔52との嵌合により配線基板60が基板47と接続されるから、半田を用いずに接続端子Tと基板47を接続することができる。
【0060】
なお、上記の各実施形態に係る配線基板は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 第1〜第3の実施形態では、開口部側に延設されるパターン延設部を単一としたが、開口部側に延設されるパターン延設部は複数であってもよい。また、第1〜3の実施形態では、開口部側におけるパターン延設部が配線基板の長手方向へ延設されるとしたが、パターン延設部の開口部に対する延設方向は自由であり、例えば、配線基板の幅方向であってもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、絶縁層の開口部を方形状としたが絶縁層の開口部の形状は特に限定されず、絶縁層の開口部は円形や不定形であってもよいし、平面視において一方が開放されたコ字状の開口部であってもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、特定の配線パターンから形成された接続端子の先端が、表面側の基板面(表面側配線パターンの最外面)から突出するようにしたが、各接続端子の先端を裏面側の基板面(裏面側配線パターンの最外面)から突出するようにしてもよい。また、配線基板においては配線パターンが第3の実施形態よりも多層に形成されてもよく、一つの開口部において複数の配線パターンからそれぞれ接続端子を形成するようにしてもよい。なお、配線基板の基板面がパターン接合部ではなく絶縁層により形成される場合、パターン延設部の先端は絶縁層の最外面としての表面より突出されてもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、特定の配線パターンから形成された接続端子は先端側部位(屈曲変位部分)が基端側部位(無変位部分)に対して直角となるように屈曲されているが、必ずしも直角の屈曲に限定する趣旨ではない。例えば、接続端子は先端側が基板面よりも突出すれば、先端側部位が傾斜してもよく、また、パターン延設部が湾曲的に屈曲され、接続端子が形成されてもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、配線基板が他部材としての基板と接続されるとしたが、他部材は基板に限らず、電子部品の他、ジャンパ等の部品であってもよく、接続端子との接続が可能な部材であればよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、絶縁層が開口部を備え、パターン延設部が絶縁層の開口部へ延設されるとしたが、絶縁層の開口部を必須とする意味ではなく、例えば、パターン延設部が絶縁層の端縁からはみ出る場合であってもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、絶縁層の開口部へ先端を有する「片持ち」のパターン延設部が延設されるとしたが、例えば、開口部を横架する「両持ち」のパターン延設部であってもよい。この場合、パターン延設部の中心付近を押圧することで、パターン延設部の折り曲げと変形により、中心に先端を有する接続端子が形成される。接続端子の先端は絶縁層又はパターン接合部の最外面より突出する。
○ 第1〜第3の実施形態では、配線パターンの開口部は、絶縁層の開口部とほぼ同一形状としたが、配線パターンの開口部が絶縁層の開口部とほぼ同一形状であることを限定する趣旨ではない。例えば、配線パターンの開口部の形状が、絶縁層の開口部の形状と異なってもよい。
○ 図8に示すように、接続端子T1は、絶縁層81に固定される一つの区画の配線パターン83aと他の一つの区画の配線パターン83bとを跳び越して結ぶジャンパ線を構成してもよい。接続端子T1により、絶縁層81に固定される一つの区画の配線パターン83aと他の一つの区画の配線パターン83bとを跳び越して結ぶことができる。
【0061】
詳しくは、接続端子T1は、図8(c)に示すごとく、左右一対の立設部86と、左右一対の立設部86の上端を結ぶ水平部87と、水平部87の上面から上方に延びる左右一対の連結部88を有している。水平部87の上面に他部材としての基板90が載置される。
【0062】
配線基板80は、配線パターン83a,83b,83cと、この配線パターン83a,83b,83cが固定される絶縁層81を有している。配線パターン83a,83b,83cは、プレス加工された銅板(広義には導体板)であり、絶縁層81に接着剤により接合されている。配線パターン83a,83bは、絶縁層81と接合するパターン接合部84と、パターン接合部84から延設され、絶縁層81の端縁からはみ出るパターン延設部85を備え、パターン延設部85を屈曲することでパターン延設部85の一部がパターン接合部84の最外面より突出可能な接続端子T1を設けている。
【0063】
絶縁層81は、絶縁層81を貫通する四角形状の開口部82a,82bを備えている。つまり、四角板状をなす絶縁層81における一つの辺において開口部(四角形の切り欠き部)82a,82bが離間した位置に形成されている。開口部82a,82bにパターン延設部85の根元部(基部)が位置し、接続端子T1は、絶縁層81(又はパターン接合部の最外面)と直角方向へ屈曲形成されている。つまり、ジャンパ線を構成する接続端子Tは、図9に示す折り曲げ加工前の状態からパンチ等により平面の銅パターンを折り曲げ加工することにより図8に示すように立設され、銅パターン(配線パターン83c)を跨ぐジャンパ線を形成することができる。
【0064】
図8の連結部88は、他部材としての基板90における絶縁層91を貫通して半田により絶縁層91の上面に形成された配線パターン92と半田付けにて接続される。ここで、連結部88は接続端子T1の先端に向かってパターン延設部85の幅が狭くなるテーパー部を有する(先端が尖った形状をなしている)。
【0065】
また、ジャンパ線を構成する接続端子T1は、一つの区画の配線パターン83aおよび他の一つの区画の配線パターン83bとは異なる配線パターン83cに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋している。特に図8においては接続端子T1の水平部87は絶縁層81の表面から直交する方向において絶縁層81に固定された配線パターン83cとは一定の距離H1だけ離れた状態で架橋しており、距離H1は例えば2mmである。これにより、ジャンパ線(水平部87)と配線パターン83cとの間の絶縁距離(空間距離)をかせいで安全な電気絶縁を確保している。このようにして、ジャンパ線を構成する接続端子T1と配線パターン83cとを確実に絶縁させることができる。
【0066】
なお、図8では接続端子T1を用いて配線基板80を他部材としての基板90に半田付けにて電気的かつ機械的に接続したが、これに代わり、図10に示すようにしてもよい。つまり、接続端子T1の連結部88を基板90に形成した貫通孔に挿入して水平部87の上面に基板90を位置決めした状態で載置し、配線基板80に基板90を機械的に接続してもよい(位置決めされた状態で接続してもよい)。
【0067】
また、図8では水平部87の上面に他部材としての基板90を載置したが、基板90の下面において水平部87の配置領域に配線パターンが存在する場合(水平部87と基板90の下面の配線パターンがショートする虞がある場合)においては、図11に示すようにしてもよい。つまり、連結部88には先端部101よりも幅が広くなる幅広部100を形成し、この幅広部100に他部材としての基板90を載置してもよい。このとき、連結部88をテーパー形状の先端部101にしても、図12に示すように円弧形状の先端部102にしてもよい。
【0068】
また、図8においてジャンパ線(水平部87)の真下に配線パターン83cが位置しない配線基板であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10,40,60…配線基板、10A,40A,60A…積層体、11,26,48…絶縁層、12,62,64…開口部、13,41…表面側配線パターン(配線パターンとしての)、14,44,66…パターン接合部、15,45,67…パターン延設部、16…基部(幅広部としての)、18…段差、19…テーパー部、20…ストライキング(凹部としての)、21,43…裏面側配線パターン(配線パターンとしての)、25,47…基板(他部材としての)、29…挿入孔、31,53,69…表面押さえ治具、32,54,70…裏面押さえ治具、33,55,71…パンチ、46,68…楔溝(凹部としての)、51…嵌合部材(被接続部としての)、52…嵌合孔、61…第1絶縁層、63…第2絶縁層、65…内側配線パターン、80…配線基板、81…絶縁層、83a,83b,83c…配線パターン、P…屈曲位置、S…半田、T…接続端子、T1…接続端子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド自動車の電子機器等に好適に用いることができる配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板に関する技術として、例えば、特許文献1に開示された車両用の電源装置が存在する。この車両用の電源装置では、金属ロッドからなるハードワイヤーを介してパワー基板と制御基板とを電気的接続しつつ一体的に連結している。あるいは、パワー基板にコネクタを設けて制御基板がコネクタに挿入されてパワー基板と制御基板が連結されている。
【0003】
別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示されたプリント基板間の接続構造が知られている。このプリント基板間の接続構造では、第1のプリント基板は、絶縁板と上下一対のランドと、上下一対のランドを貫通する貫通孔を備えており、第2のプリント基板は、絶縁板と絶縁板の一端縁に突設された接栓端子部を有している。この接栓端子部は、第1のプリント基板の貫通孔に嵌合可能な突起と、突起の一面側に設けられた接続電極パターンとから成る。第1のプリント基板の貫通孔に第2のプリント基板の接栓端子部を嵌合してから下面側のランドと接続電極パターンを半田接続することで、第1のプリント基板に対して第2のプリント基板を一定の交差角度を持って電気的機械的に接続される。
【0004】
さらに、別の従来技術としては、例えば、特許文献3に開示された基板の連結構造が存在する。基板の連結構造では、雄と雌のいずれか一方の基板に実装されたコネクタに、他方の基板との連結時の案内となる所定の長さを有するガイド部が備えられ、他方の基板にガイド部と対応する位置にガイド部が貫通する切欠部が備えられる。ガイド部を切欠部に貫通させたときに、雄と雌のコネクタが相対向する位置に定まり、雄と雌のコネクタ接続時の作業性が向上する。
【0005】
さらに、別の従来技術としては、例えば、特許文献4に記載されたプリント基板の保持構造を挙げることができる。このプリント基板の保持構造では、下側基板に実装された雄コネクタの両側部には、それぞれ頭部を有する突起が設けられる。一方、上側基板に実装された雌コネクタの両側方の、各頭部と対向する部位には、それぞれ孔が形成される。各孔の径は、それぞれ頭部の大きさより小さく、頭部が弾性変形することによって、頭部が孔に着脱自在に嵌合可能になっている。このことにより、下側基板と上側基板との着脱作業を、工具を用いずに容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−33882号公報。
【特許文献2】特開2001−57465号公報。
【特許文献3】特開2008−10592号公報。
【特許文献4】特開平5−218669号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、3、4に開示された従来技術では、基板同士の接続や位置決めのためにハードワイヤー、コネクタ、ガイドおよび突起等の別部材をいずれも必要とする問題がある。別部材を用いる場合、例えば、部品点数の増大や組み付け時間が余分に必要となり配線基板の製造コストが増大するほか、別部材を取り付けるスペースが基板等に必要となり、配線基板の小型化が妨げられる。
【0008】
一方、特許文献2では、別部材を必要とせずに基板同士の接続を可能とするが、一方の基板の一端縁に突設された接栓端子部を他方の基板の貫通孔に嵌合するため、基板間において一定の交差角度を必要とし、例えば、夫々の基板面が互いに平行となるような両基板の位置決めは不可能である。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、部品点数を増やすことなく他部材との接続が可能であって、接続先の他部材に対して向きの制約を受けず位置決めを行うことができる配線基板の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金属板により形成された配線パターンと前記配線パターンが固定される絶縁層を有する配線基板であって、前記配線パターンは、前記絶縁層と接合するパターン接合部と、前記パターン接合部から延設され、前記絶縁層の端縁からはみ出るパターン延設部を備え、前記パターン延設部を屈曲することで前記パターン延設部の一部が前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面より突出可能な接続端子を設け、前記配線パターンに凹状の実装パッドが形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、配線パターンと絶縁層との接合後にパターン延設部を屈曲することにより、絶縁層又はパターン接合部の最外面より突出される接続端子を形成することができる。このため、部品点数を増やすことなく配線パターンの一部を接続端子として用いることができる。また、パターン延設部の屈曲により接続端子を形成することから、接続端子は接続先の他部材に対する向きの制約を受けにくい。さらに、配線パターンに実装パッドとしての凹部が形成されていることから、配線パターンに電子部品を表面実装することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の配線基板において、前記パターン延設部の表面には屈曲される部分に凹部が形成されてもよい。この場合、屈曲前のパターン延設部にはスプリングバック防止の凹部が形成されているから、パターン延設部が屈曲されても凹部により接続端子のスプリングバックが防止される。
【0013】
請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載の配線基板において、前記凹部は、ストライキングまたは楔溝であってもよい。この場合、ストライキングまたは楔溝は加工により施されるから、部品点数を増やすことなく接続端子のスプリングバック防止を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明のように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の配線基板において、前記接続端子は、前記絶縁層に固定される一つの区画の配線パターンと他の一つの区画の配線パターンとを結ぶジャンパ線を構成してもよい。この場合、接続端子により、絶縁層に固定される一つの区画の配線パターンと他の一つの区画の配線パターンとを結ぶことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明のように、請求項4に記載の配線基板において、前記ジャンパ線を構成する接続端子は、前記一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋している構成とする。この場合、ジャンパ線を構成する接続端子が、一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋しており、ジャンパ線を構成する接続端子と、一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンとを確実に絶縁させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明のように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線基板において、前記接続端子は、半田により他部材と接続されてもよい。この場合、接続端子と他部材は半田により接続される。このため、接続端子と他部材との導通を図ることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載の配線基板において、前記パターン延設部の側部は前記接続端子の先端に向かって前記パターン延設部の幅が狭くなるテーパー部を有してもよい。この場合、パターン延設部が有するテーパー部は、接続先となる他部材に対して接続端子を案内するガイド機能を果す。テーパー部が接続端子を案内することにより、接続端子は他部材と接続しやすくなる。なお、テーパー部による接続端子の案内は、他部材の被接続部を案内するような接続端子の相対的な案内も含まれる。
【0018】
請求項8に記載の発明のように、請求項6又は7に記載の配線基板において、前記パターン延設部には、前記接続端子の先端部よりも幅が広くなる幅広部を有してもよい。この場合、パターン延設部が有する幅広部は、接続端子が他部材と接続された状態で他部材を支持することができる。このため、他部材を支持するための部材を別に設ける必要がない。
【0019】
請求項9に記載の発明のように、請求項1〜8のいずれか一項に記載の配線基板において、前記絶縁層は、前記絶縁層を貫通する開口部を備え、前記パターン延設部は前記開口部に位置してもよい。この場合、開口部の周囲にパターン接合部が位置するため、接続端子が他部材と干渉しにくく、接続端子を保護し易い。屈曲前のパターン延設部は開口部内に位置するから、屈曲前の配線基板を搬送させ易くなる等、製作時における配線基板の取り扱いが容易となる。
【0020】
請求項10に記載の発明のように、請求項1〜9のいずれか一項に記載の配線基板において、前記配線パターンは、プレス加工により形成されるとともに、前記絶縁層に接着剤により接合されており、前記接続端子は、前記配線パターンを前記絶縁層に接合した後に前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面と直角方向へ屈曲形成されたものであってもよい。この場合、接続端子を形成するパターン延設部の先端は絶縁層又はパターン接合部の最外面と直角方向へ向くため、基板面と平行な面を有する他部材(例えば、配線基板)と接続端子を接続しやすくなる。また、配線パターンは絶縁層に接着剤により接合される。このため、配線パターンを絶縁層に確実に接合して固定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、部品点数を増やすことなく他部材との接続が可能であって、接続先の他部材に対して向きの制約を受けず位置決めを行うことができる配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る配線基板と別基板との接続構造を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る配線基板の平面図である。
【図3】図2のA−A線矢視図である。
【図4】(a)〜(c)は第1実施形態の係る配線基板の製造工程を示す縦断面図である。
【図5】(a)、(b)は第1実施形態に係る配線基板の製造工程を示す縦断面図であり、(c)は配線基板と別基板との接続工程を示す縦断面図である。
【図6】(a)、(b)は第2実施形態に係る配線基板を示す縦断面図である。
【図7】(a)、(b)は第3実施形態に係る配線基板を示す縦断面図である。
【図8】(a)は別例における配線基板の平面図、(b)は配線基板の側面図、(c)は配線基板の正面図である。
【図9】(a)は別例における配線基板の平面図、(b)は配線基板の側面図である。
【図10】別例における配線基板の正面図である。
【図11】別例における配線基板の一部正面部である。
【図12】別例における配線基板の一部正面部である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る配線基板について、図面を参照して説明する。図1に示す本実施形態に係る配線基板10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車の高出力モータの制御基板等により制御されるパワー基板である。配線基板10は、筐体(図示せず)上に絶縁性の放熱シート等を介して固定されている。この配線基板10では、図1に示すように、絶縁層11の表面側に対して板状の表面側配線パターン13が接着シート(図示せず)により固定されている。また、絶縁層11の裏面側に対して裏面側配線パターン21が接着シート(図示せず)により固定されている。つまり、配線基板10は絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化により形成されている。図1に示す配線基板10は、接続端子Tを介して他部材としての基板25と接続されている。
【0024】
配線基板10における絶縁層11は、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させて構成されている。絶縁層11の厚さは例えば0.4〜4.0mm、より好ましくは0.5〜0.8mmに設定されている。絶縁層11は、絶縁層11の一方の層面(表面)から他方の層面(裏面)へ開口する方形状の開口部12を備えており、開口部12は絶縁層11のプレスによる打ち抜きにより形成されている。
【0025】
配線基板10に用いる接着シートとしては、エポキシ系接着剤を主成分とする接着シートが採用されており、エポキシ系接着剤は他の接着剤と比較して接着性、熱伝導性、絶縁性に優れる。接着シートの厚さは100μm以下、より好ましくは40〜50μmに設定されている。なお、接着シートの接着剤としては、上述のようにエポキシ系接着剤を採用することに限らず、例えば、他の接着剤としてシリコーン系接着剤を採用してもよいし、ガラス繊維が入っていないプリプレグを接着剤として採用してもよい。また、接着シートだけでなく塗布タイプの接着剤を用いて絶縁層11に対して表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を固定することも妨げない。
【0026】
配線パターンとしての表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21は、素材となる銅板の打ち抜きプレス加工により形成されている導体板である。各配線パターン13、21の厚さは、例えば、0.4〜2.0mm、より好ましくは0.5mmの銅板に所定のパターンを打ち抜きプレス加工して構成されている。本実施形態では、大電流(例えば50〜180A)に対応可能な板状の回路パターンとして所定の板厚の金属板が採用されている。ここで、本実施形態で定義する金属板とは、打ち抜き加工が可能で、外力を加えることなく形状の維持可能な厚みの板状体を意味する。さらに言うと、本実施形態で定義する金属板の概念は、エッチング加工を必要とする自ら形状を維持し得ないものを除く概念である。なお、各配線パターン13、21は、銅板により構成されることに限らず、例えば、アルミニウム板等の導電性の材料により構成されてもよい。また、配線基板10は、大電流用に使用することに限らず、微弱電流用(数mA)に使用してもよい。
【0027】
図1および図2に示すように、表面側配線パターン13は、絶縁層11と重畳するパターン接合部14と、パターン接合部14から絶縁層11の開口部12側へ延設されるパターン延設部15を備えている。パターン接合部14は絶縁層11に対して接着シートにより固定されている部位である。パターン延設部15は、絶縁層11に接合されない非重畳となる部位であり、屈曲により表面側配線パターン13における接続端子Tを形成する。
【0028】
図3に示すように、パターン延設部15は、パターン接合部14側に連通する基部16と基部16よりも幅小の先端部17を有しており、基部16と先端部17との間には段差18が形成されており、段差18は基板25を支持し、配線基板10と基板25との所定距離を維持する。基部16は先端部17よりも幅が広くなる幅広部に相当する。また、基部16において屈曲される部分である屈曲予定箇所には、スプリングバック防止の形状補正のための凹部としてのストライキング20が形成されており、凹部としてのストライキング20は表面側配線パターン13の打ち抜きプレス加工時に形成される。パターン延設部15における先端部17の側部は、隅部を面取りしたテーパー部19を有する。テーパー部19は、先端へ向かうにつれて先端部17の幅が狭くなるように形成され、接続先となる基板25の接続先に対して接続端子Tを相対的に案内するガイド機能を有する。
【0029】
パターン延設部15における基部16の長手方向の途中から直角に屈曲されることにより、パターン延設部15の先端が上方へ向かい、配線基板10の基板面であって表面側配線パターン13の最外面である表面より突出される。パターン延設部15の屈曲は、絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化の後に行われる。パターン延設部15の屈曲箇所を屈曲位置Pすると、パターン延設部15は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備える。無変位部分は基部16の一部から形成され、屈曲変位部分は基部16の残り部分と先端部17から形成される。本実施形態では、パターン延設部15における屈曲変位部分の長さ(高さ)を2.0mmとしているが、屈曲変位部分の長さは配線基板10や基板25の条件に応じて自由に設定することができ、特に制限されない。なお、配線基板の基板面をパターン接合部ではなく絶縁層が形成する場合、パターン延設部の先端は絶縁層の最外面としての表面より突出される。
【0030】
次に、裏面側配線パターン21について説明する。本実施形態の裏面側配線パターン21は、接着シートにより絶縁層11の下面側に固定されている。裏面側配線パターン21は、表面側配線パターン13のようにパターン延設部を備えることはなく、絶縁層11の開口部12とほぼ同一形状の開口部22を備えている。絶縁層11は開口部12に面した端縁を有する。また、表面側配線パターン13と裏面側配線パターン21との層間導通を図ることがある。
【0031】
本実施形態に係る配線基板10は、他部材である基板25と接続端子Tを介して接続されている。基板25は、絶縁層26、表面側配線パターン27および裏面側配線パターン28の一体化により形成されている。基板25には、配線基板10の接続端子Tを挿入可能な挿入孔29を備えており、挿入孔29は接続端子Tを形成するパターン延設部15の先端部17のみを挿入可能としている。挿入孔29に挿入された先端部17と基板25との隙間には半田Sが充填されており、半田Sにより接続端子Tと基板25が互いに電気的に導通されている。半田Sを用いた接続端子Tと基板25との固定により配線基板10と基板25との導通および基板25における表面側配線パターン27と裏面側配線パターン28との層間導通が図られている。
【0032】
次に、本実施形態に係る配線基板10の製造工程について説明する。配線基板10の製造工程には、パターン成形工程、絶縁層成形工程、接合工程およびパターン屈曲工程が含まれている。パターン成形工程は、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を素材となる銅板からプレス打ち抜きにより成形する工程である。絶縁層成形工程は、プリプレグを熱硬化させて絶縁層11を形成する工程である。接合工程は、絶縁層11に接着シートを介して表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を固定し、絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化を図る工程である。パターン屈曲工程は、接合工程後において、表面側配線パターン13におけるパターン延設部15を屈曲して接続端子Tを形成する工程である。
【0033】
図4(a)に示すように、接合工程に先立って予め形成された絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21を用意する。絶縁層11については、絶縁層成形工程において、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させることにより形成する。本実施形態では、形成された絶縁層11を打ち抜きプレス加工することにより開口部12を形成する。
【0034】
表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の素材となる所定の形状の銅板を用意する。表面側配線パターン13を成形するパターン成形工程では、素材となる銅板をプレス加工により、パターン接合部14およびパターン延設部15を有する表面側配線パターン13が成形される。また、プレス加工では、表面側配線パターン13において、スプリングバック防止の形状補正のためのストライキング加工に係るストライキング20と、パターン延設部15における基部16と先端部17との間の段差18と、ガイド部としての隅部を面取りしたテーパー部19と、実装パッドである凹部(図示略)と、が成形される。裏面側配線パターン21を成形するパターン成形工程では、素材となる銅板をプレス加工により成形することにより、開口部22を有する裏面側配線パターン21が形成される。
【0035】
接合工程では、絶縁層11の表面および裏面に接着シートを貼着した後、裏面側配線パターン21上に絶縁層11を重ね、表面側の接着シート上に表面側配線パターン13を重ね、表面側および裏面側から真空プレスにより加圧する。加圧により、絶縁層11の裏面側に裏面側配線パターン21が固定され、絶縁層11の表面側に表面側配線パターン13が固定され、絶縁層11、表面側配線パターン13および裏面側配線パターン21の一体化が図られた積層体10Aを得る。図4(b)に示すように、接合工程により得られた積層体10Aは表面および裏面は突起物のない平坦面により形成されている。表面側配線パターン13のパターン延設部15が絶縁層11の開口部22側へ真っ直ぐ延設された状態にあり、ストライキング20の一部は開口部22側に位置する。パターン延設部15は、開口部12に面した絶縁層11の端縁からはみ出ている状態にある。実装パッドを用いて電子部品の表面実装を行う場合、この状態でマウンタにより電子部品が積層体10Aに実装され、リフローによる半田付けが行われる。この状態でのパターン延設部15は基板面より突出していないため、上記の電子部品の表面実装工程の邪魔になることはない。積層体10Aに電子部品が実装された後、次に、パターン屈曲工程に移る。パターン屈曲工程では、パターン延設部15を屈曲させて接続端子Tを形成する。
【0036】
図4(c)に示すように、パターン屈曲工程では、まず、表面押さえ治具31によりストライキング20を含む積層体10Aの表面を押さえるとともに、裏面押さえ治具32により絶縁層11の開口部12の除く積層体10Aの裏面を押さえる。次に、昇降可能なパンチ33を積層体10Aの裏面側からパターン延設部15に対向させ、パンチ33を上昇させる。上昇するパンチ33はパターン延設部15の下面と当接するが、その後のパンチ33の上昇により、パターン延設部15は屈曲される。
【0037】
図5(a)に示すように、パターン延設部15は、パンチ33の上昇により表面押さえ治具31の端部に沿うように基部16の途中から屈曲される。パターン延設部15は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備え、屈曲変位部分は無変位部分に対して垂直に屈曲された部位となっている。従って、屈曲変位部分の先端は、表面側配線パターン13の最外面である表面よりも突出している。パターン延設部15の屈曲変位部分の先端は、基板25と接続の際に挿入孔29に挿入される。このように、パターン屈曲工程では、パターン延設部15が屈曲されることにより接続端子Tが形成され、接続端子Tを備えた配線基板10が得られる。
【0038】
次に、配線基板10に基板25を接続する工程について説明する。屈曲されたパターン延設部15は接続端子Tを構成している。基板25の挿入孔29がパターン延設部15の先端の上方に位置するように、基板25を配線基板10に対して位置決めする。基板25を配線基板10に対して位置決めした後、基板25を配線基板10へ向けて下降させる。図5(b)に示すように、基板25を下降させることによりパターン延設部15の先端は基板25の挿入孔29に挿入される。因みに、パターン延設部15の先端と基板25の挿入孔29が所定の位置から僅かに外れている場合がある。この場合、パターン延設部15の先端が基板25の挿入孔29に挿入される際、テーパー部19が基板25に対して接続端子Tを相対的に案内するから、パターン延設部15の先端は基板25の挿入孔29に挿入される。なお、本実施形態では、基板25を配線基板10に対して下降させるようにしたが、基板25に対して配線基板10を上昇させて配線基板10の接続端子Tを基板25の挿入孔29へ挿入するようにしてもよい。
【0039】
パターン延設部15の先端は基板25の挿入孔29に挿入されても、基板25を下降させるとパターン延設部15における段差18が基板25と当接し、基板25の下降が規制される。段差18が基板25と当接することにより配線基板10と基板25との距離が設定されるとともに、基板25はパターン延設部15により支持される。配線基板10と基板25との距離は、パターン延設部15において屈曲位置Pから段差18までの距離に相当する。
【0040】
次に、図5(c)に示すように、配線基板10の接続端子Tを形成するパターン延設部15と基板25の挿入孔29との隙間に半田Sを充填する。半田Sの充填により接続端子Tと基板25が物理的に固定されるとともに、配線基板10と基板25は電気的に接続される。なお、半田Sは環境面から鉛フリー半田を使用することが好ましい。
【0041】
第1の実施形態では以下の作用効果を奏する。
(1)各配線パターン13、21と絶縁層11との積層後にパターン延設部15を屈曲することにより、基板面より突出される接続端子Tを形成することができる。このため、部品点数を増やすことなく配線パターンの一部を接続端子Tとして用いることができる。また、パターン延設部15の屈曲により接続端子Tを形成することから、接続端子Tは接続先の基板25に対する向きの制約を受けにくい。曲げ加工した接続端子Tを接続することにより別部品は不要であり、また、実装面積の増大により電子部品の高密度実装が可能である。
(2)接続端子Tは、基板面であるパターン延設部15の最外面と直角方向へ屈曲形成され、接続端子Tを形成するパターン延設部15の先端は基板面と直角方向へ向くため、パターン延設部15における先端位置を設定する自由度が高くなり、この基板面と平行な面を有する基板25とパターン延設部15を接続しやすくなる。
(3)パターン延設部15は、接続先となる基板25の挿入孔29に対して接続端子Tを案内するテーパー部19を有しており、テーパー部19は基板25の挿入孔29に対して接続端子Tを相対的に案内するガイド機能を果す。配線基板10と基板25が僅かに位置ずれしている状態であっても、テーパー部19がパターン延設部15を相対的に案内することにより、配線基板10は基板25と接続しやすくなる。
(4)パターン延設部15は、接続先となる基板25を支持する支持部としての段差18を有しており、段差18はパターン延設部15が基板25と接続された状態では基板25の裏面と当接して基板25を支持することができる。このため、基板25を支持するための部材を配線基板10において別に設ける必要がない。
(5)パターン延設部15は半田Sにより基板25と接続されるため、配線基板10と基板25は電気的に接続される。パターン延設部15と基板25の被接続部である挿入孔29との間には隙間が形成されても、隙間に半田Sが充填され、配線基板10と基板25とを接続することができる。
(6)屈曲前のパターン延設部15にはスプリングバック防止の凹部が形成されているから、パターン延設部15が屈曲されても接続端子Tのスプリングバックが防止される。そして、凹部は、パターン延設部15における屈曲予定箇所のストライキング加工に係るストライキング20であり、部品点数を増やすことなく接続端子Tのスプリングバック防止を図ることができる。
(7)配線パターン13、21と絶縁層11との積層後にパターン延設部15を屈曲して接続端子Tを形成するから、接続端子Tが形成される前の積層体10Aは、表裏面とも突起物のない平坦面から構成され、基板製造時における積層体10Aの操作や取り扱いに都合が良く、配線基板10の生産性向上に寄与する。
(8)配線パターン13、21が銅板により形成され、配線パターン13に実装パッドが形成されていることから、配線パターン13に電子部品を表面実装することができる。また、電子部品の表面実装後の配線パターン13を屈曲することで、電子部品を備えた接続端子として用いることができる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る配線基板について説明する。第2の実施形態の配線基板では、裏面側配線パターンがパターン延設部を備えており、パターン延設部が屈曲されて接続端子が形成されている。第1の実施形態と同一の要素については、第1の実施形態の説明を援用して説明を省略し、共通の符号を用いる。
【0043】
図6(a)に示されるように、本実施形態の表面側配線パターン41は絶縁層11の上面側に固定されている。表面側配線パターン41は絶縁層11と重畳し、絶縁層11の開口部12とほぼ同一形状の開口部42を備えている。表面側配線パターン41と裏面側配線パターン43との層間導通を図ることがある。
【0044】
裏面側配線パターン43は、絶縁層11と重畳するパターン接合部44と、パターン接合部44から開口部12へ延設されるパターン延設部45を備えている。パターン接合部44は、裏面側配線パターン43において絶縁層11と接着シートにより固定されている部位である。パターン延設部45は、絶縁層11に接合されない非重畳の部位であり、屈曲により裏面側配線パターン28における接続端子Tを形成する。
【0045】
本実施形態のパターン延設部45は、基端から先端まで一定の幅寸法にて設定されている。パターン延設部45において屈曲が予定される箇所である屈曲予定箇所には、スプリングバック防止の形状補正のための凹部としての楔溝46が形成されており、楔溝46は裏面側配線パターン43の打ち抜きプレス加工時に形成される。形成直後の楔溝46の溝開き角度は約100度である。
【0046】
パターン延設部45の長手方向の途中から直角に屈曲されることにより、パターン延設部45の先端が上方へ向かい、配線基板40の基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面より突出される。パターン延設部45の屈曲は、絶縁層11、裏面側配線パターン43および表面側配線パターン41の一体化の後に行われる。パターン延設部45の屈曲箇所を屈曲位置Pすると、パターン延設部45は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備える。
【0047】
本実施形態に係る配線基板40は、他部材である基板47と接続端子Tを介して接続されている。基板47は、絶縁層48、表面側配線パターン49および裏面側配線パターン50の一体化により形成されている。基板47には、配線基板10の接続端子Tを嵌合可能な嵌合孔52を備えた嵌合部材51が設けられており、嵌合部材51の嵌合孔52は接続端子Tを形成するパターン延設部45の先端部を嵌合可能としている。パターン延設部45の先端部と嵌合部材51の嵌合孔52との嵌合により接続端子Tと基板47が互いに電気的に導通され、基板47は接続端子Tにより支持されている。嵌合による接続端子Tと基板47との固定により配線基板40と基板47との導通が図られている。
【0048】
本実施形態の配線基板40の製造工程には、パターン成形工程、絶縁層成形工程、接合工程およびパターン屈曲工程が含まれているが、各工程は基本的に第1の実施形態とほぼ同じである。本実施形態では、裏面側配線パターン43におけるパターン延設部45の屈曲によりパターン延設部45の先端側が上方へ向かう接続端子Tを形成する。パターン屈曲工程では、図6(b)に示す表面押さえ治具53、裏面押さえ治具54およびパンチ55を用いる。表面押さえ治具53および裏面押さえ治具54の一部は、パターン延設部45の基部付近を押さえる構造である。
【0049】
パターン屈曲工程では、表面押さえ治具53により積層体40Aの表面とパターン延設部45の基端付近を押さえるとともに、裏面押さえ治具54により積層体40Aの表面とパターン延設部45の基端付近を押さえる。これにより、パターン延設部45が屈曲されても、屈曲後のパターン延設部45と表面側配線パターン49との間に間隙が形成され、パターン延設部45と表面側配線パターン49との短絡が防止される。昇降可能なパンチ55を上昇させてパターン延設部45を屈曲する。パターン延設部45は表面押さえ治具53の端部に沿うように長手方向の途中から屈曲されており、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備え、屈曲変位部分は無変位部分に対して垂直に屈曲された部位となっている。屈曲変位部分の先端は、基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面よりも突出している。このように、パターン延設部45が屈曲されることにより接続端子Tが形成され、接続端子Tを備えた配線基板40が得られる。
【0050】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(2)、(6)、(7)と実質的に同一の作用効果を奏する。また、第2の実施形態によれば、裏面側配線パターン43において表面側配線パターン41の表面から突出する接続端子Tを形成することができる。さらに、基板47の被接続部が嵌合孔52を備えた嵌合部材51であり、接続端子Tと嵌合孔52との嵌合により配線基板40が基板47と接続されるから、半田を用いずに接続端子Tと基板47を接続することができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る配線基板について説明する。第3の実施形態の配線基板では、複数の絶縁層の間に設けられた内側配線パターンにおいて接続端子を形成するパターン延設部が形成されている。第1、2の実施形態と同一の要素については、第1、2の実施形態の説明を援用して説明を省略し、共通の符号を用いる。
【0051】
図7(a)に示すように、本実施形態の配線基板60は、表面側配線パターン41と、裏面側配線パターン21と、内側配線パターン65と、第1絶縁層61と、第2絶縁層63と、を備えている。表面側配線パターン41は、第1絶縁層61と重畳し、第1絶縁層61の開口部62とほぼ同一の開口部42を備えている。裏面側配線パターン21は第2絶縁層63と重畳し、第2絶縁層63の開口部64とほぼ同一の開口部22を備えている。
【0052】
内側配線パターン65は、第2の実施形態の裏面側配線パターン43と実質的に同一構成である。内側配線パターン65は、第1絶縁層61および第2絶縁層63と重畳するパターン接合部66と、パターン接合部66から開口部62、64側へ延設されるパターン延設部67を備えている。パターン接合部66は、第1絶縁層61と第2絶縁層63との間に挟まれて接着シートにより固定されている。パターン延設部67は、第1絶縁層61および第2絶縁層63と非重畳の部位であり、屈曲により内側配線パターン65における接続端子Tを形成する。
【0053】
本実施形態のパターン延設部67は、基端から先端まで一定の幅寸法にて設定されている。パターン延設部67において屈曲が予定される箇所である屈曲予定箇所には、スプリングバック防止の形状補正のための楔溝加工による楔溝68が形成されており、楔溝68は内側配線パターン65の打ち抜きプレス加工時に形成される。楔溝68は第2の実施形態の楔溝46と同一構成である。
【0054】
パターン延設部67の途中から直角に屈曲されることにより、パターン延設部67の先端が上方へ向かい、配線基板60の基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面より突出される。パターン延設部67の屈曲は、第1絶縁層61、第2絶縁層63、裏面側配線パターン21、表面側配線パターン41および内側配線パターン65の一体化の後に行われる。パターン延設部67の屈曲箇所を屈曲位置Pすると、パターン延設部67は、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備える。
【0055】
本実施形態に係る配線基板60は、他部材である基板47と接続端子Tを介して接続されているが、本実施形態の基板47は第2の実施形態の基板47と同一構成である。基板47には、被接続部としての嵌合孔52を備えた嵌合部材51が設けられており、パターン延設部67の先端側と嵌合部材51の嵌合孔52との嵌合により接続端子Tと基板47が互いに固定されている。
【0056】
本実施形態の配線基板60の製造工程には、パターン成形工程、絶縁層成形工程、接合工程およびパターン屈曲工程が含まれているが、接合工程を除く各工程は基本的に第1の実施形態とほぼ同じである。因みに、接合工程では、裏面側から順番に、裏面側配線パターン21、第2絶縁層63、内側配線パターン65、第1絶縁層61、表面側配線パターン41と積み重ねた後、表面側および裏面側からの加圧により積層体60Aを得る。
【0057】
本実施形態では、内側配線パターン65におけるパターン延設部67の屈曲によりパターン延設部67の先端側が上方へ向かう接続端子Tを形成する。パターン屈曲工程では、図7(b)に示す表面押さえ治具69、裏面押さえ治具70およびパンチ71を用いる。表面押さえ治具69および裏面押さえ治具70の一部は、パターン延設部67の基端付近を押さえる構造である。これにより、パターン延設部67が屈曲されても、屈曲後のパターン延設部67と表面側配線パターン41との間に間隙が形成され、パターン延設部67と表面側配線パターン41との短絡が防止される。
【0058】
パターン屈曲工程では、表面押さえ治具69により積層体60Aの表面とパターン延設部67の基端付近を押さえるとともに、裏面押さえ治具70により積層体60Aの表面とパターン延設部67の基端付近を押さえる。昇降可能なパンチ71を上昇させることによりパターン延設部67が屈曲される。パターン延設部67は表面押さえ治具69の端部に沿うように長手方向の途中から屈曲されており、基端から屈曲位置Pまでの無変位部分と、屈曲位置Pから先端までの屈曲変位部分を備え、屈曲変位部分は無変位部分に対して垂直に屈曲された部位となっている。屈曲変位部分の先端は、基板面であって表面側配線パターン41の最外面である表面よりも突出している。このように、パターン延設部67が屈曲されることにより接続端子Tが形成され、接続端子Tを備えた配線基板60が得られる。
【0059】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(2)、(6)、(7)と実質的に同一の作用効果を奏する。また、第3の実施形態によれば、内側配線パターン65において表面側配線パターン41の表面から突出する接続端子Tを形成することができる。さらに、接続端子Tと嵌合孔52との嵌合により配線基板60が基板47と接続されるから、半田を用いずに接続端子Tと基板47を接続することができる。
【0060】
なお、上記の各実施形態に係る配線基板は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 第1〜第3の実施形態では、開口部側に延設されるパターン延設部を単一としたが、開口部側に延設されるパターン延設部は複数であってもよい。また、第1〜3の実施形態では、開口部側におけるパターン延設部が配線基板の長手方向へ延設されるとしたが、パターン延設部の開口部に対する延設方向は自由であり、例えば、配線基板の幅方向であってもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、絶縁層の開口部を方形状としたが絶縁層の開口部の形状は特に限定されず、絶縁層の開口部は円形や不定形であってもよいし、平面視において一方が開放されたコ字状の開口部であってもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、特定の配線パターンから形成された接続端子の先端が、表面側の基板面(表面側配線パターンの最外面)から突出するようにしたが、各接続端子の先端を裏面側の基板面(裏面側配線パターンの最外面)から突出するようにしてもよい。また、配線基板においては配線パターンが第3の実施形態よりも多層に形成されてもよく、一つの開口部において複数の配線パターンからそれぞれ接続端子を形成するようにしてもよい。なお、配線基板の基板面がパターン接合部ではなく絶縁層により形成される場合、パターン延設部の先端は絶縁層の最外面としての表面より突出されてもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、特定の配線パターンから形成された接続端子は先端側部位(屈曲変位部分)が基端側部位(無変位部分)に対して直角となるように屈曲されているが、必ずしも直角の屈曲に限定する趣旨ではない。例えば、接続端子は先端側が基板面よりも突出すれば、先端側部位が傾斜してもよく、また、パターン延設部が湾曲的に屈曲され、接続端子が形成されてもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、配線基板が他部材としての基板と接続されるとしたが、他部材は基板に限らず、電子部品の他、ジャンパ等の部品であってもよく、接続端子との接続が可能な部材であればよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、絶縁層が開口部を備え、パターン延設部が絶縁層の開口部へ延設されるとしたが、絶縁層の開口部を必須とする意味ではなく、例えば、パターン延設部が絶縁層の端縁からはみ出る場合であってもよい。
○ 第1〜第3の実施形態では、絶縁層の開口部へ先端を有する「片持ち」のパターン延設部が延設されるとしたが、例えば、開口部を横架する「両持ち」のパターン延設部であってもよい。この場合、パターン延設部の中心付近を押圧することで、パターン延設部の折り曲げと変形により、中心に先端を有する接続端子が形成される。接続端子の先端は絶縁層又はパターン接合部の最外面より突出する。
○ 第1〜第3の実施形態では、配線パターンの開口部は、絶縁層の開口部とほぼ同一形状としたが、配線パターンの開口部が絶縁層の開口部とほぼ同一形状であることを限定する趣旨ではない。例えば、配線パターンの開口部の形状が、絶縁層の開口部の形状と異なってもよい。
○ 図8に示すように、接続端子T1は、絶縁層81に固定される一つの区画の配線パターン83aと他の一つの区画の配線パターン83bとを跳び越して結ぶジャンパ線を構成してもよい。接続端子T1により、絶縁層81に固定される一つの区画の配線パターン83aと他の一つの区画の配線パターン83bとを跳び越して結ぶことができる。
【0061】
詳しくは、接続端子T1は、図8(c)に示すごとく、左右一対の立設部86と、左右一対の立設部86の上端を結ぶ水平部87と、水平部87の上面から上方に延びる左右一対の連結部88を有している。水平部87の上面に他部材としての基板90が載置される。
【0062】
配線基板80は、配線パターン83a,83b,83cと、この配線パターン83a,83b,83cが固定される絶縁層81を有している。配線パターン83a,83b,83cは、プレス加工された銅板(広義には導体板)であり、絶縁層81に接着剤により接合されている。配線パターン83a,83bは、絶縁層81と接合するパターン接合部84と、パターン接合部84から延設され、絶縁層81の端縁からはみ出るパターン延設部85を備え、パターン延設部85を屈曲することでパターン延設部85の一部がパターン接合部84の最外面より突出可能な接続端子T1を設けている。
【0063】
絶縁層81は、絶縁層81を貫通する四角形状の開口部82a,82bを備えている。つまり、四角板状をなす絶縁層81における一つの辺において開口部(四角形の切り欠き部)82a,82bが離間した位置に形成されている。開口部82a,82bにパターン延設部85の根元部(基部)が位置し、接続端子T1は、絶縁層81(又はパターン接合部の最外面)と直角方向へ屈曲形成されている。つまり、ジャンパ線を構成する接続端子Tは、図9に示す折り曲げ加工前の状態からパンチ等により平面の銅パターンを折り曲げ加工することにより図8に示すように立設され、銅パターン(配線パターン83c)を跨ぐジャンパ線を形成することができる。
【0064】
図8の連結部88は、他部材としての基板90における絶縁層91を貫通して半田により絶縁層91の上面に形成された配線パターン92と半田付けにて接続される。ここで、連結部88は接続端子T1の先端に向かってパターン延設部85の幅が狭くなるテーパー部を有する(先端が尖った形状をなしている)。
【0065】
また、ジャンパ線を構成する接続端子T1は、一つの区画の配線パターン83aおよび他の一つの区画の配線パターン83bとは異なる配線パターン83cに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋している。特に図8においては接続端子T1の水平部87は絶縁層81の表面から直交する方向において絶縁層81に固定された配線パターン83cとは一定の距離H1だけ離れた状態で架橋しており、距離H1は例えば2mmである。これにより、ジャンパ線(水平部87)と配線パターン83cとの間の絶縁距離(空間距離)をかせいで安全な電気絶縁を確保している。このようにして、ジャンパ線を構成する接続端子T1と配線パターン83cとを確実に絶縁させることができる。
【0066】
なお、図8では接続端子T1を用いて配線基板80を他部材としての基板90に半田付けにて電気的かつ機械的に接続したが、これに代わり、図10に示すようにしてもよい。つまり、接続端子T1の連結部88を基板90に形成した貫通孔に挿入して水平部87の上面に基板90を位置決めした状態で載置し、配線基板80に基板90を機械的に接続してもよい(位置決めされた状態で接続してもよい)。
【0067】
また、図8では水平部87の上面に他部材としての基板90を載置したが、基板90の下面において水平部87の配置領域に配線パターンが存在する場合(水平部87と基板90の下面の配線パターンがショートする虞がある場合)においては、図11に示すようにしてもよい。つまり、連結部88には先端部101よりも幅が広くなる幅広部100を形成し、この幅広部100に他部材としての基板90を載置してもよい。このとき、連結部88をテーパー形状の先端部101にしても、図12に示すように円弧形状の先端部102にしてもよい。
【0068】
また、図8においてジャンパ線(水平部87)の真下に配線パターン83cが位置しない配線基板であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10,40,60…配線基板、10A,40A,60A…積層体、11,26,48…絶縁層、12,62,64…開口部、13,41…表面側配線パターン(配線パターンとしての)、14,44,66…パターン接合部、15,45,67…パターン延設部、16…基部(幅広部としての)、18…段差、19…テーパー部、20…ストライキング(凹部としての)、21,43…裏面側配線パターン(配線パターンとしての)、25,47…基板(他部材としての)、29…挿入孔、31,53,69…表面押さえ治具、32,54,70…裏面押さえ治具、33,55,71…パンチ、46,68…楔溝(凹部としての)、51…嵌合部材(被接続部としての)、52…嵌合孔、61…第1絶縁層、63…第2絶縁層、65…内側配線パターン、80…配線基板、81…絶縁層、83a,83b,83c…配線パターン、P…屈曲位置、S…半田、T…接続端子、T1…接続端子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板により形成された配線パターンと前記配線パターンが固定される絶縁層を有する配線基板であって、
前記配線パターンは、
前記絶縁層と接合するパターン接合部と、
前記パターン接合部から延設され、前記絶縁層の端縁からはみ出るパターン延設部を備え、
前記パターン延設部を屈曲することで前記パターン延設部の一部が前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面より突出可能な接続端子を設け、
前記配線パターンに凹状の実装パッドが形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記パターン延設部の表面には屈曲される部分に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記凹部は、ストライキングまたは楔溝であることを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記接続端子は、前記絶縁層に固定される一つの区画の配線パターンと他の一つの区画の配線パターンとを結ぶジャンパ線を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記ジャンパ線を構成する接続端子は、前記一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋していることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接続端子は、半田により他部材と接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記パターン延設部の側部は前記接続端子の先端に向かって前記パターン延設部の幅が狭くなるテーパー部を有することを特徴とする請求項6に記載の配線基板。
【請求項8】
前記パターン延設部には、前記接続端子の先端部よりも幅が広くなる幅広部を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の配線基板。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記絶縁層を貫通する開口部を備え、
前記パターン延設部は前記開口部に位置することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記配線パターンは、プレス加工により形成されるとともに、前記絶縁層に接着剤により接合されており、
前記接続端子は、前記配線パターンを前記絶縁層に接合した後に前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面と直角方向へ屈曲形成されたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項1】
金属板により形成された配線パターンと前記配線パターンが固定される絶縁層を有する配線基板であって、
前記配線パターンは、
前記絶縁層と接合するパターン接合部と、
前記パターン接合部から延設され、前記絶縁層の端縁からはみ出るパターン延設部を備え、
前記パターン延設部を屈曲することで前記パターン延設部の一部が前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面より突出可能な接続端子を設け、
前記配線パターンに凹状の実装パッドが形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記パターン延設部の表面には屈曲される部分に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記凹部は、ストライキングまたは楔溝であることを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記接続端子は、前記絶縁層に固定される一つの区画の配線パターンと他の一つの区画の配線パターンとを結ぶジャンパ線を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記ジャンパ線を構成する接続端子は、前記一つの区画の配線パターンおよび他の一つの区画の配線パターンとは異なる配線パターンに対し一定の距離だけ離れた状態で架橋していることを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接続端子は、半田により他部材と接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記パターン延設部の側部は前記接続端子の先端に向かって前記パターン延設部の幅が狭くなるテーパー部を有することを特徴とする請求項6に記載の配線基板。
【請求項8】
前記パターン延設部には、前記接続端子の先端部よりも幅が広くなる幅広部を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の配線基板。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記絶縁層を貫通する開口部を備え、
前記パターン延設部は前記開口部に位置することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記配線パターンは、プレス加工により形成されるとともに、前記絶縁層に接着剤により接合されており、
前記接続端子は、前記配線パターンを前記絶縁層に接合した後に前記絶縁層又は前記パターン接合部の最外面と直角方向へ屈曲形成されたものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の配線基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−142631(P2012−142631A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102674(P2012−102674)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2011−93315(P2011−93315)の分割
【原出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2011−93315(P2011−93315)の分割
【原出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】
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