説明

配線形成方法及び電子デバイス

【課題】 コストを抑えつつ、簡易な工程で微細な配線を形成することが可能な配線形成技術を提供する。
【解決手段】 基板210の上に第1絶縁膜220を形成した後(図3(a)参照)、該基板210の全面に、絶縁性材料を塗布し、ベーク・アニール処理を施すことにより、第2絶縁膜240を形成する。ここで、第1絶縁膜220の端部eを覆う第2絶縁膜240の膜厚D2は、他の部分の膜厚D3に較べて薄い。かかる膜厚差(D3−D2)によって生じる膜の収縮度合いの違いにより、第1絶縁膜220の端部eの直上に位置する第2絶縁膜240にスリットST1が形成される(図3(b)参照)。このように形成したスリットST1に配線材料を適当量塗布し、乾燥・焼成等することにより、スリットST1に配線250を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な配線の形成方法、及び該配線を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、微細な配線加工が半導体製造プロセスにおける新たな技術課題となっている。このような微細な配線を形成する方法として、薄膜の形成にはスパッタ法やCVD法、薄膜の加工にはフォトリソグラフィーを利用した方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる方法について説明すると、まず、基板全面にスパッタ法などにより金属などを含む配線膜を形成する。次いで、形成した配線膜の上にフォトレジストを塗布し、プリベーク→露光→現像→ポストベークといった工程を経てレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとして配線膜をエッチングし、最後にレジストを剥離して微細な配線を形成する。特許文献1は通常のフォトリソグラフィー法を用いて、薄膜上の絶縁膜に溝を形成し、次に溝の側壁に更に絶縁膜を形成して溝幅を狭め、得られた溝構造を利用して下層の薄膜で微細配線を形成しようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−3191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法においては、配線膜を形成するために真空装置やプラズマ発生装置といった高価な装置が必要であり、また、高精度なフォトエッチングを行うためには高価な露光装置やエッチング装置などが必要である。また、上記方法を実現するためには多くの工程が必要であり、さらに、断線の発生などにより歩留まりが低くなるという問題もある。
【0006】
本発明は以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、従来よりもコストを抑えつつ、簡易な工程で微細な配線を形成することが可能な配線形成技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る配線形成方法は、端部を有する段差パターンを基板上に形成する工程と、少なくとも前記段差パターンの端部を覆うように、塗布膜形成用の液体材料を前記基板上に塗布する工程と、塗布した液体材料を乾燥させることによって塗布膜を形成するとともに、当該塗布膜における前記段差パターンの端部に対応する位置にスリットを形成する工程と、前記スリット内に配線膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、段差パターンの端部に対応する位置に形成されるスリットを利用して配線を形成する。このため、配線を形成するために露光装置等の高価な装置は不要であり、またフォトエッチング等を行う必要がないため、簡易な工程で微細な配線を形成することができる。
【0009】
ここで、上記製造方法にあっては、前記配線膜を形成する工程では、配線形成用の液体材料を前記スリット内に塗布し、これを乾燥させることによって前記配線膜を形成する態様が好ましく、前記液体材料を前記スリット内に塗布する方法としてインクジェット法を用いる態様がさらに好ましい。
【0010】
また、上記方法によって製造された配線を電子デバイスに適用しても良い。ここで、電子デバイスとは、本発明に係る電子放出素子を備えた一定の機能を奏する機器一般をいい、例えば電気光学装置やメモリを備えて構成される。その構成に特に限定は無いが、例えば画像形成装置、ICカード、携帯電話、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、リア型またはフロント型のプロジェクター、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイ等が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を説明する前に、本発明の基本原理について説明する。
【0012】
A.基本原理
図1は、TFT(Thin Film Transistor)を構成するゲート電極と層間絶縁膜の関係を示す図であり、図2は、図1に示すゲート電極近傍の部分拡大図である。
【0013】
層間絶縁膜110は、導電性材料によって形成されたゲート電極(段差パターン)120を含む基板全面を覆う絶縁膜であり、ポリシラザンを含む液体材料(絶縁性膜形成用の液体材料)を塗布し、乾燥等することによって形成する。
【0014】
図1に示すように、塗布法によって層間絶縁膜110を形成すると、ゲート電極(段差パターン)120の端部を覆う部分と他の部分との間で段差130が形成される。この段差部分について断面TEM(Transmission Electron Microscope)やAFM(Atomic Force Microscope)などの方法によって調査すると、当該段差部分にスリットSTが形成されることが判明した(図2参照)。さらに調査を進めたところ、このスリットSTの幅や深さは段差の高さや形状及び層間絶縁膜110の形成条件(材料や乾燥条件など)に起因し、また、他の部分の膜厚d1とゲート電極120を覆う部分の膜厚d0の膜厚差(d1−d0)は、ゲート電極120のパターンサイズに起因することが判明した。
【0015】
なお、スリットSTが形成されるメカニズムについては未だ明らかではないが、ゲート電極120を覆う部分の膜厚d0と他の部分の膜厚d1の膜厚差(d1−d0)によって生じる膜の収縮度合いの違いがスリットSTの形成に起因したものと推測される。かかる現象を利用した実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
B.第1実施形態
図3は、スリットを利用した配線の形成プロセスを示す図であり、図4は、第1絶縁膜220とスリットSTの位置関係を示す図である。
【0017】
まず、基板210の上に、形成すべきスリットSTの形状(例えば矩形など;図4参照)に応じた第1絶縁膜(段差パターン)220を形成する。具体的には、スリットSTの形状にあわせて基板210の上にポリシラザンなどの液体材料(以下、「絶縁性材料」と総称)を塗布し、ベーク・アニール処理(100℃で5分程度、さらに350℃で60分程度)等を施すことにより、第1絶縁膜220を形成する(図3(a)参照)。
【0018】
そして、第1絶縁膜220が形成された基板210の全面に、絶縁性材料を塗布し、上記と同様のベーク・アニール処理を施すことにより、第2絶縁膜240を形成する。ここで、第1絶縁膜220の端部eを覆う第2絶縁膜240の膜厚D2は、他の部分の膜厚D3に較べて薄い。かかる膜厚差(D3−D2)によって生じる膜の収縮度合いの違いにより、第1絶縁膜220の端部eの直上に位置する第2絶縁膜240(段差パターンの端部に対応する位置)にスリットSTが形成される(図3(b)参照)。前述したように、このスリットSTの幅や深さは、段差の高さや形状、絶縁膜の形成条件(材料や乾燥条件など)に応じて決定される。これらパラメータを適宜設定することで、幅1μm以下、深さ10乃至数100nm程度の微細なスリットSTを形成することができる。
【0019】
このように形成したスリットSTに、金属などを含む配線形成用の液体材料(以下、「配線材料」と総称)を適当量塗布し、乾燥・焼成等することにより、スリットSTに配線(配線膜)250を形成する(図3(c)参照)。配線材料を塗布する方法としては、インクジェット装置などを用いてスリットSTに金属材料を滴下する方法(インクジェット法)が好ましい。スリットSTに滴下された液滴は、毛細管現象によってスリットSTの内部に流動し、これにより、確実にスリットSTに配線250を形成することができる。なお、インクジェット法以外の他の塗布法(例えばスピンコート法)を用いても良く、さらには塗布法以外の他の方法(例えばスパッタ法など)を用いても良い。例えば、スパッタ法を用いた場合には、スリットSTが形成された基板210の全面に配線形成用の膜255を形成し(図5(a)参照)、その後、全面エッチングを施すことにより、スリットSTに配線250を形成しても良い(図5(b)参照)。
【0020】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1絶縁膜220の端部eの直上に位置する第2絶縁膜240に形成されるスリットSTを利用して配線を形成する。このスリットSTの幅や深さは、段差の高さや形状、絶縁膜の形成条件(材料や乾燥条件など)等によって幅1μm以下、深さ10乃至数100nm程度に制御することができるため、最終的にはスリットSTの幅、深さに応じた微細な配線を形成することが可能となる。また、基本工程により形成されたスリットST(図3(c))に対して、全面エッチングを行うことにより、スリットSTの幅や深さを調整し、所望の配線を形成することも出来る。
【0021】
C.第2実施形態
図6は、第2実施形態に係る電子デバイスを例示した図である。
図6(a)は、本発明の製造方法によって製造される携帯電話であり、当該携帯電話430は、電気光学装置(表示パネル)400、アンテナ部431、音声出力部432、音声入力部433及び操作部434を備えている。本発明は、例えば表示パネル400を構成する金属配線の製造に適用される。図6(b)は、本発明の製造方法によって製造されるビデオカメラであり、当該ビデオカメラ440は、電気光学装置(表示パネル)400、受像部441、操作部442及び音声入力部443を備えている。本発明は、例えば表示パネル400を構成する配線の製造に適用される。
【0022】
図6(c)は、本発明の製造方法によって製造される携帯型パーソナルコンピュータの例であり、当該コンピュータ450は、電気光学装置(表示パネル)400、カメラ部451及び操作部452を備えている。本発明は、例えば表示パネル400を構成する配線の製造に適用される。
【0023】
図6(d)は、本発明の製造方法によって製造されるヘッドマウントディスプレイの例であり、当該ヘッドマウントディスプレイ460は、電気光学装置(表示パネル)400、バンド部461及び光学系収納部462を備えている。本発明は、例えば表示パネル400を構成する配線の製造に適用される。図6(e)は、本発明の製造方法によって製造されるリア型プロジェクターの例であり、当該プロジェクター470は、電気光学装置(光変調器)400、光源472、合成光学系473、ミラー374、375を筐体371内に備えている。本発明は、例えば光変調器400を構成する配線の製造に適用される。図6(f)は本発明の製造方法によって製造されるフロント型プロジェクターの例であり、当該プロジェクター480は、電気光学装置(画像表示源)400及び光学系481を筐体482内に備え、画像をスクリーン483に表示可能になっている。本発明は、例えば画像表示源400を構成する配線の製造に適用される。
【0024】
上記例に限らず本発明は、あらゆる電子デバイスの製造等に適用可能である。例えば、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ、ICカードなどにも適用することができる。なお、本発明は上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨の範囲内で種々に変形、変更実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の基本原理を説明するための図である。
【図2】本発明の基本原理を説明するための図で有る。
【図3】第1実施形態に係る配線の形成プロセスを示す図である。
【図4】同実施形態に係る配線の形成プロセスを示す図である。
【図5】同実施形態に係る配線の形成プロセスを示す図である。
【図6】第2実施形態に係る電子デバイスを例示した図である。
【符号の説明】
【0026】
110・・・層間絶縁膜、120・・・ゲート電極、130・・・段差、ST・・・スリット、210・・・基板、220・・・第1絶縁膜、230・・・導電膜、240・・・第2絶縁膜、231、232・・・素子電極、260・・・電子放出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を有する段差パターンを基板上に形成する工程と、
少なくとも前記段差パターンの端部を覆うように、塗布膜形成用の液体材料を前記基板上に塗布する工程と、
塗布した液体材料を乾燥させることによって塗布膜を形成するとともに、当該塗布膜における前記段差パターンの端部に対応する位置にスリットを形成する工程と、
前記スリット内に配線膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする配線形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線形成方法において、
前記配線膜を形成する工程では、配線形成用の液体材料を前記スリット内に塗布し、これを乾燥させることによって前記配線膜を形成することを特徴とする配線形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の配線形成方法において、
前記液体材料を前記スリット内に塗布する方法としてインクジェット法を用いることを特徴とする配線形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の製造方法によって製造された配線を有することを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−253255(P2006−253255A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64972(P2005−64972)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】