説明

配線材の製造方法、配線材の接続構造の製造方法および配線材の接続構造

【課題】配線材の導体を、回路基板等の被接続部材に形成された接続端子に接続する際に、導体と接続端子との接続信頼性を向上できる配線材の製造方法、配線材の接続構造の製造方法および配線材の接続構造を提供することを目的とする。
【解決手段】極細同軸ケーブル2は、導電性物質を含有する接着剤11を介して、回路基板9の接続端子22に電気的に接続される中心導体3を有している。そして、中心導体3は、中心導体3と接続端子22を接続する前に、中心導体3と接続端子22の接続時の屈曲形状に、予め変形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板等の被接続部材の接続端子に接続される導体を有する配線材の製造方法、導体が接続端子に接続された、配線材の接続構造の製造方法、および配線材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、例えば、ノートパソコン、携帯電話等の普及で、電子機器の小型化、軽量化が求められている。そのため、例えば、機器本体と液晶表示部の接続や機器内の配線等に、極めて細い同軸ケーブルが用いられ、また、この極細同軸ケーブルを集合一体化させた多心ケーブルの形態で配線が行なわれるようになっている。
【0003】
また、例えば、極細同軸ケーブルを回路基板等の被接続部材に接続する際には、当該極細同軸ケーブルの中心導体を被接続部材に形成された接続端子に接続する必要がある。ここで、従来、導体の接続を導電性接着剤で行う技術が開示されている。より具体的には、例えば、中心導体と、当該中心導体の外周を被覆する絶縁体と、当該絶縁体の外周を被覆する外部導体と、当該外部導体の外周を被覆するジャケット層とを有する極細同軸ケーブルを複数本備える多心ケーブルにおいて、まず、露出させた中心導体を扁平に圧潰して、断面形状で平型に形成し、加熱加圧処理を行うことにより、導電性接着剤を介して、当該中心導体を、回路基板に形成された所定のピッチを有する接続端子である信号用電極に接続する導体接続構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−63878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1においては、加熱加圧処理を行う際に使用される圧着部材の下面が、グランドバーに接触する第1の接触面と、中心導体に接触する第2の接触面とを有している。そして、当該圧着部材を使用して、中心導体を接続端子の方へ加圧し、導電性接着剤を介して、中心導体と接続端子を接続する際に、中心導体が、上述の第1の接触面と第2の接触面との段差によって変形される構成となっている。しかし、中心導体を接続端子に接続する際に、加熱加圧処理により、中心導体の変形(即ち、曲げ加工)を同時に行う方法では、当該中心導体に弾性ひずみが蓄積され、中心導体−接続端子間の接続後、中心導体と導電性接着剤の境界において、上述の弾性ひずみ分に相当する残留応力が発生する。従って、当該残留応力に起因して、導電性接着剤が剥離する方向に力が作用するため、中心導体−接着剤間の接着強度が低下してしまい、結果として、中心導体と接続端子の接続信頼性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、配線材の導体を、回路基板等の被接続部材に形成された接続端子に接続する際に、導体と接続端子との接続信頼性を向上できる配線材の製造方法、配線材の接続構造の製造方法および配線材の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被接続部材の接続端子に接続される導体を有する配線材の製造方法において、導体と接続端子を接続する前に、導体を、導体と接続端子の接続時の屈曲形状に変形しておくことを特徴とする。
【0007】
同構成によれば、例えば、導電性接着剤を介して、導体を接続端子に接続する際に、導体に蓄積される弾性ひずみを効果的に低減することが可能になり、導体−接続端子間の接続後において、導体と接着剤の境界における、導体の残留応力を効果的に低減することができる。従って、残留応力に起因し、接着剤が剥離する方向に作用する力が低減されるため、導体−接着剤間の接着強度が向上し、導体と接着剤の境界における接着剤の剥離を効果的に防止できる。その結果、導体と接続端子の接続信頼性を向上することができる。また、弾性ひずみに起因する、導体の破損を効果的に防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、導体を有する配線材の、導体が被接続部材の接続端子に接続された配線材の接続構造の製造方法であって、導体を、予め、導体と接続端子の接続時の屈曲形状に変形する工程と、接続端子上に、導電性物質を含有する導電性接着剤を載置する工程と、変形された導体と接続端子との位置合わせをしながら、変形された導体と接続端子との間に導電性接着剤を介在させる工程と、加熱加圧処理を行うことにより、導電性接着剤を介して、変形された導体と接続端子を電気的に接続する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、導電性接着剤を介して、導体を接続端子に接続する際の、導体に蓄積される弾性ひずみを効果的に低減することが可能になり、導体−接続端子間の接続後において、導体と接着剤の境界における、導体の残留応力を効果的に低減することができる。従って、残留応力に起因し、接着剤が剥離する方向に作用する力が低減されるため、導体−接着剤間の接着強度が向上し、導体と接着剤の境界における接着剤の剥離を効果的に防止できる。その結果、導体と接続端子の接続信頼性を向上することができる。また、弾性ひずみに起因する、導体の破損を効果的に防止することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の配線材の接続構造の製造方法であって、導体を変形する際に、複数の配線材を平行に並べた状態で、複数の配線材の各々の導体の、接続端子に接続される部分の高さを略同一にすることを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、加熱加圧処理により、導電性接着剤を介して、導体を接続端子に接続する際の、導体に蓄積される弾性ひずみをより一層効果的に低減することができるとともに、導体−接続端子間の接続後において、導体と接着剤の境界における、導体の残留応力をより一層効果的に低減することができる。従って、導体と接続端子の接続信頼性をより一層向上することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の配線材の接続構造の製造方法であって、導体の、接続端子に接続される部分を、平面形状にする工程を更に含むことを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、導電性微粒子を含有する導電性接着剤を介して、導体を接続端子に接続する場合に、導体と接着剤の表面との接触面積を増大させることができるため、導体−接着剤間の接着強度をより一層向上させることができる。また、導体と接続端子を接続する際に、導体と接続端子の間において、導電性接着剤に含有される導電性物質を噛み込みやすくすることが可能になるため、導体と接続端子の接続信頼性を一層向上させることが可能になる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の配線材の接続構造の製造方法であって、導体を、導体と接続端子の接続時の屈曲形状に変形する際に、導体の、接続端子に接続される部分を平面形状にすることを特徴とする。同構成によれば、導体の変形加工と平面化を同時に行うことができるため、配線材の接続構造の製造工程が簡素化される。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする配線材の接続構造である。同構成によれば、請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の配線材の接続構造の製造方法による効果と同じ効果を有する配線材の接続構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線材の導体を被接続部材の接続端子に接続する際に、導体と接続端子の接続信頼性を向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る配線材の製造方法により製造された配線材の接続構造を説明するための上面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、本発明の第1の実施形態における極細同軸ケーブルを説明するための断面図である。なお、本実施形態においては、配線材の接続構造として、配線材である極細同軸ケーブルの中心導体を回路基板に形成された接続端子に接続する際の、配線材の接続構造を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、多心ケーブル1は、極細同軸ケーブル2を複数本(本実施形態においては、4本)備えており、当該極細同軸ケーブル2を、所定のピッチ(例えば、0.3mmの狭ピッチ)で平行に並べて束ねることにより構成されている。また、この極細同軸ケーブル2は、図1〜図3に示すように、外径0.060mmの中心導体3と、当該中心導体3の外周を被覆する、外径0.16mmの絶縁体4と、当該絶縁体4の外周を被覆する、外径0.20mmの外部導体(または、横巻きシールド)5と、当該外部導体5の外周を被覆する、外径0.26mmのジャケット層6とから構成されている。また、中心導体3は、図3に示すように、複数本(本実施形態においては、7本)の細い素線40を撚り合わせた撚り線により形成されている。なお、中心導体3は、単線(即ち、1本の導線)により形成しても良い。また、中心導体3の外径は、0.01mm〜2mmが好ましい。
【0019】
また、図2に示すように、多心ケーブル1を構成する複数本の極細同軸ケーブル2の各々の端部において、所定の長さのジャケット層6を除去することにより、外部導体5の一部が露出する構成となっている。また、複数本の極細同軸ケーブル2の各々の端部において露出された外部導体5に、例えば、回転ブラシ等を接触させて、外部導体5の巻きを緩めてほぐし、ほぐされた外部導体5を引っ張って、その一部を除去することにより、絶縁体4が露出する構成となっている。さらに、当該露出された絶縁体4の一部を除去することにより、中心導体3の一部が露出する構成となっている。
【0020】
また、図1、図2に示すように、各極細同軸ケーブル2の端部20において露出した外部導体5には、当該外部導体5をアース接続するためのグランドバー7が接続されている。より具体的には、図2に示すように、外部導体5を、接着剤8を介して、上下方向からグランドバー7で挟み込むことにより、外部導体5とグランドバー7が接続される構成となっている。
【0021】
このグランドバー7は、金属性のプレート(例えば、金属箔)を加工したものからなり、各極細同軸ケーブル2の機械的な固定を行うとともに、外部導体5との導通を得ている。また、図1に示すように、グランドバー7は、複数本の極細同軸ケーブル2の配列方向(図中の矢印Xの方向)に沿って一体的に形成されており、当該グランドバー7に複数本の極細同軸ケーブル2を接続することにより、極細同軸ケーブル2の外部導体5をまとめてアースする構成となっている。
【0022】
なお、外部導体5とグランドバー7を接続する接着剤8に、導電性接着剤を使用することが好ましい。この導電性接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に導電性物質が分散されたものが使用できる。例えば、エポキシ樹脂に、銅、銀あるいは黒鉛等の導電性物質の粉末が分散されたものが挙げられる。このような導電性接着剤を使用することにより、各極細同軸ケーブル2の外部導体5とグランドバー7の間を一度に導電接続することが可能になる。従って、各極細同軸ケーブル2とグランドバー7の接続構造が簡素化されるとともに接続作業が容易になる。
【0023】
また、図1に示すように、極細同軸ケーブル2が接続される被接続部材である回路基板9には、上述の露出された中心導体3との接続部である接続端子22を有する導体パターン部(または、回路パターン部)10が形成されている。この接続端子22は、例えば、銅等の導電性の金属により形成されており、上述の極細同軸ケーブル2の狭ピッチに対応して、例えば、0.3mmの間隔で設けられている。
【0024】
そして、図2に示すように、中心導体3と接続端子22は、接着剤11を介して電気的に接続される構成となっている。中心導体3と接続端子22を接続する接着剤11としては、例えば、絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に銅、銀あるいは黒鉛等の導電性物質の粉末が分散された導電性接着剤を使用することができる。このような導電性接着剤を使用することにより、中心導体3−接続端子22間を低い導電抵抗によって接続することが可能になるため、中心導体3−接続端子22間の導電性を向上することができる。
【0025】
この接着剤11に使用される熱硬化性樹脂は、特に制限はないが、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用することにより、耐熱性、および接着力に優れた接着剤11を作製することが可能になる。このエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、またはAD型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0026】
また、接着剤11に、導電性物質を含む異方導電性接着剤を使用こともできる。より具体的には、当該異方導電性接着剤として、例えば、上述のエポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に、微細な粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する導電性物質が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、導電性物質の短径(導電性物質の断面の長さ)と長径(導電性物質の長さ)の比のことを言う。
【0027】
また、本発明に使用される金属微粒子は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性物質を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらのうち2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0028】
また、導電性物質のアスペクト比が10以上であることが好ましい。このような導電性物質を使用することにより、接着剤11として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性物質間の接触確率が高くなる。従って、導電性物質の配合量を増やすことなく、中心導体3と接続端子22を接続することが可能になる。
【0029】
なお、導電性物質のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性物質の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性物質は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性物質の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0030】
また、導電性物質の短径が1μm以下であることが望ましい。このような導電性物質を使用することにより、接着剤11として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性物質間の接触確率が更に高くなるため、更に少ない導電性物質の配合量で、中心導体3と接続端子22を接続することが可能になる。
【0031】
また、図2に示すように、回路基板9には、接地部12が設けられており、各極細同軸ケーブル2が接続されたグランドバー7が当該接地部12と接触するように構成されている。より具体的には、外部導体5と接続されたグランドバー7を、半田付けにより、回路基板9に設けられた接地部12に接続することにより、各極細同軸ケーブル2の外部導体5を、グランドバー7を介して、回路基板9の接地部12と導通させ、当該外部導体5をアース接続する構成となっている。
【0032】
このように、多心ケーブル1を構成する極細同軸ケーブル2の外部導体5が接続されたグランドバー7を回路基板9の接地部12に接続するとともに、中心導体3を回路基板9の導体パターン部10の接続端子22に接続することにより、図1、図2に示す極細同軸ケーブルの接続構造50が形成される構成となっている。
【0033】
ここで、本実施形態においては、極細同軸ケーブル2の中心導体3を回路基板9の導体パターン部10に接続する前に、中心導体3を、当該中心導体3が接続端子22に接続された状態における屈曲形状に、予め変形させる点に特徴がある。このような構成により、中心導体3を導体パターン部10の接続端子22に接続する際に、加熱加圧処理により、中心導体の曲げ加工を同時に行う上記従来技術とは異なり、中心導体3を回路基板9の接続端子22に接続する際に、中心導体の曲げ加工を行う必要がなくなる。従って、加熱加圧処理により、中心導体3を接続端子22に接続する際に、中心導体3に蓄積される弾性ひずみを効果的に低減することができる。そうすると、中心導体3−接続端子22間を接続後、中心導体3と接着剤11の境界において、接着剤11が剥離する方向に作用する、中心導体3の残留応力(即ち、弾性ひずみに基づく反力)を効果的に低減することができる。
【0034】
なお、上述の屈曲形状を有する中心導体3の加工方法は、特に制限されず、中心導体3を、当該中心導体3が接続端子22に接続された状態における屈曲形状に変形できれば、どのような方法でも良い。例えば、図4に示す様に、ローラー30と、当該ローラー30を搬送するための搬送台31と、極細同軸ケーブル2を載置するための載置台38と、当該載置台38に設けられたローラー32、33とを用意する。そして、まず、中心導体3を有する極細同軸ケーブル2を、載置台38の載置面34上に載置するとともに、搬送台31を、図4に示す、載置台38上に配置する。次いで、図4において、破線にて示した位置にあるローラー30を、搬送台31の搬送面35上において、図中の矢印Yの方向に搬送させる。そうすると、ローラー30が中心導体3と接触して、当該中心導体3がローラー30により加圧されるとともに、中心導体3がローラー30とローラー32、およびローラー30とローラー33の間に挟み込まれて、図4に示すように、中心導体3を、当該中心導体3が接続端子22に接続された状態における屈曲形状に変形することができる。
【0035】
また、この際、図5に示すように、複数の極細同軸ケーブル2を、載置台38の載置面34上に平行に並べて載置した状態で、上述の図4において説明した加工方法を使用することにより、複数の極細同軸ケーブル2の各々の中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aの高さを略同一にすることもできる。
【0036】
次に、本実施形態における配線材の接続構造の製造方法を説明する。まず、多心ケーブル1を構成する複数本の極細同軸ケーブル2の各々を一括して切断して所定の長さに揃える。次いで、複数本の極細同軸ケーブル2の各々の端部20において、所定の長さのジャケット層6を切断する。次いで、所定の長さの外部導体5を切断し、切断したジャケット層6と外部導体5を除去する。次いで、グランドバー7に接着剤8を仮接着し、露出した外部導体5を、当該接着剤8が仮接着されたグランドバー7により、上下方向から挟み込み、外部導体5の露出面に接着剤8を貼り付ける。そして、加熱加圧処理を行うことにより、接着剤8を介して、外部導体5とグランドバー7を接続する。
【0037】
次に、複数本の極細同軸ケーブル2の各々の端部20において、グランドバー7が接続された部分より先端側(即ち、図1、図2の矢印W側)の外部導体5に、例えば、回転ブラシ等を接触させて、外部導体5の巻きを緩めてほぐし、ほぐされた外部導体5を引っ張って、その一部を除去し、絶縁体4を露出させる。次いで、端部20において、絶縁体4の一部を除去することにより、中心導体3を露出させる。次いで、上述の方法により、中心導体3を加工し、図4に示すように、中心導体3を、当該中心導体3が導体パターン部10に接続された状態における屈曲形状に、予め変形させる。
【0038】
次いで、外部導体5が接続されたグランドバー7を、半田付け、または導電性接着剤により、回路基板9に設けられた接地部12と接続することにより、多心ケーブル1を構成する各極細同軸ケーブル2について、外部導体5が接地部12にアース接続されることになる。なお、導電性接着剤により接続する場合は、加熱加圧処理を行うことにより、導電性接着剤を介して、グランドバー7と接地部12を接続する。
【0039】
そして、導体パターン部10の接続端子22上に、接着剤11(例えば、上述の導電性物質の粉末が分散された導電性接着剤)を載置し、加工された中心導体3と接続端子22との位置合わせをしながら、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aと接続端子22との間に接着剤11を介在させる。次いで、加熱された圧着部材(不図示)を、中心導体3の上方に設置する。そして、圧着部材を、中心導体3と接触させるとともに、当該圧着部材を移動させて、加熱加圧処理を行う。そうすると、図6に示すように、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aが、接着剤11の表面11aと接触するとともに、接着剤11を介して、中心導体3と接続端子22が電気的に接続され、中心導体3と接続端子22との導通を確保する構成となっている。なお、この場合、接着剤11は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該接着剤11は、熱硬化性樹脂の硬化温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した硬化時間が経過すると、圧着部材による加熱状態を解除して、熱硬化性樹脂の硬化温度の維持状態を開放し、冷却を開始する構成となっている。
【0040】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、極細同軸ケーブル2の中心導体3を回路基板9の接続端子22に接続する前に、中心導体3を、当該中心導体3と接続端子22の接続時の屈曲形状に、予め変形させる構成としている。従って、中心導体3を接続端子22に接続する際に、中心導体3に蓄積される弾性ひずみを効果的に低減することが可能になり、中心導体3−接続端子22間の接続後において、中心導体3と接着剤11の境界における、中心導体3の残留応力を効果的に低減することができる。従って、残留応力に起因し、接着剤11が剥離する方向に作用する力が低減されるため、中心導体3−接着剤11間の接着強度が向上し、中心導体3と接着剤11の境界における接着剤11の剥離を効果的に防止できるため、中心導体3と接続端子22の接続信頼性を向上することができる。また、弾性ひずみに起因する、中心導体3の破損を効果的に防止することができる。
【0041】
(2)本実施形態においては、複数の極細同軸ケーブル2を平行に並べた状態で、複数の極細同軸ケーブル2の各々の中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aの高さを略同一にする構成としている。従って、加熱加圧処理により、中心導体3を接続端子22に接続する際に、中心導体3に蓄積される弾性ひずみをより一層効果的に低減することができるとともに、中心導体3−接続端子22間の接続後において、中心導体3と接着剤11の境界における、中心導体3の残留応力をより一層効果的に低減することができる。従って、中心導体3と接続端子22の接続信頼性をより一層向上することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る配線材の製造方法により製造された配線材の接続構造を説明するための断面図である。なお、上記第1の実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。また、本実施形態においても、配線材の接続構造として、配線材である極細同軸ケーブルの中心導体を回路基板に形成された導体パターン部の接続端子に接続する際の、配線材の接続構造を例に挙げて説明する。また、多心ケーブルの全体構成については、上述の第1の実施形態と同様であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0043】
本実施形態においては、図7に示すように、導体3の各々が、断面略四角形状を有しており、複数の中心導体3の各々の、導体パターン部10の接続端子22に接続される部分3aを、平面形状とする構成としている。このような平面形状を有する中心導体3を使用することにより、中心導体3と接続端子22の接続構造において、上述の図6に示す、断面略円形状を有する中心導体3を使用する場合に比し、各中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aと接着剤11の表面11aとの接触面積を増大させることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態における中心導体3の加工方法は、例えば、上述の第1の実施形態における図4において説明した方法と同様の方法を使用することができるが、中心導体3を加工する際に、図8に示すように、上述のローラー33に代えて、中心導体3との接触面41が平らな成型用部材36を使用することにより、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aを、平面形状にすることができる。また、このような方法により、中心導体3の変形加工(即ち、曲げ加工)と平面化を同時に行うことができる。
【0045】
なお、上述の図4において説明した方法において、図9に示すように、成型用の溝部37が形成されたローラー33を使用し、中心導体3をローラー30により加圧して、中心導体3をローラー30とローラー33の間に挟み込んで変形させる際に、溝部37により、中心導体3の、導体パターン部10の接続端子22に接続される部分3aを、平面形状にする構成としても良い。なお、図9は、中心導体3をローラー30により加圧して、中心導体3を、ローラー30と溝部37が形成されたローラー33の間に挟み込んで変形させる際の図であって、図4に示す矢印Zの方向から見た図である。
【0046】
また、この場合も、上述の図5において説明した場合と同様に、複数の極細同軸ケーブル2を、載置台38の載置面34上に平行に並べた状態で載置し、複数の極細同軸ケーブル2の各々の中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aの高さを略同一にすることができる。
【0047】
次に、本実施形態おける配線材の接続構造の製造方法を説明する。まず、上述の第1の実施形態と同様に、外部導体5とグランドバー7を接続する。次いで、端部20において、絶縁体4の一部を除去することにより、中心導体3を露出させる。次いで、上述の方法により、中心導体3を加工し、中心導体3を、当該中心導体3が接続端子22に接続された状態における形状に、予め変形させるとともに、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aを平面形状にする。次いで、上述の第1の実施形態と同様に、外部導体5が接続されたグランドバー7を、回路基板9に設けられた接地部12と接続する。
【0048】
そして、導体パターン部10の接続端子22上に、接着剤11(例えば、上述の導電性物質の粉末が分散された導電性接着剤)を載置し、加工された中心導体3と接続端子22との位置合わせをしながら、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aと接続端子22との間に接着剤11を介在させる。次いで、加熱された圧着部材を、中心導体3の上方に設置する。そして、圧着部材を、中心導体3と接触させるとともに、当該圧着部材を移動させて、加熱加圧処理を行う。そうすると、図7に示すように、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aが、接着剤11の表面11aと接触するとともに、接着剤11を介して、中心導体3と接続端子22が電気的に接続され、中心導体3と接続端子22との導通を確保する構成となっている。
【0049】
以上に説明した本実施形態によれば、上述の第1の実施形態において説明した効果(1)〜(2)に加え、以下の効果を得ることができる。
(3)本実施形態においては、極細同軸ケーブル2を製造する際に、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aを、平面形状にする構成としている。従って、中心導体3と接着剤11の表面11aとの接触面積を増大させることができるため、中心導体3−接着剤11間の接着強度をより一層向上させることができる。また、中心導体3と接続端子22を接続する際に、中心導体3と接続端子22の間において、接着剤11として使用される導電性接着剤に含有される導電性物質を噛み込みやすくすることが可能になるため、中心導体3と接続端子22の接続信頼性を一層向上させることが可能になる。
【0050】
(4)本実施形態においては、中心導体3を、当該中心導体3と接続端子22の接続時の屈曲形状に変形する際に、中心導体3の、接続端子22に接続される部分3aを平面形状にする構成としている。従って、中心導体3の変形加工と平面化を同時に行うことができるため、極細同軸ケーブル2、および極細同軸ケーブル2の接続構造50の製造工程が簡素化される。
【0051】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上述の第2の実施形態においては、断面略四角形状を有する中心導体3を例に挙げて説明したが、当該中心導体3の断面形状は、これに限定されず、接続端子22に接続される部分3aが平面形状を有するものであれば、どのような断面形状を有するものであっても良い。例えば、中心導体3を断面略三角形状に加工することができる。
【0052】
・また、接着剤11に、潜在性硬化剤を含有する構成としても良い。この潜在性硬化剤としては、例えば、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤が使用できる。より具体的には、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、および、これらの変性物が挙げられ、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の活用例としては、回路基板等の被接続部材の接続端子に接続される導体を有する配線材の製造方法、導体が接続端子に接続された配線材の接続構造の製造方法、および配線材の接続構造が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る配線材の製造方法により製造された配線材の接続構造を説明するための上面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における配線材である極細同軸ケーブルを説明するための断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る配線材の製造方法を説明するための部分断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る配線材の製造方法を説明するための上面図である。
【図6】図1のB−B断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る配線材の製造方法により製造された配線材の接続構造を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る配線材の製造方法を説明するための部分断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る配線材の製造方法における中心導体の平面加工の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1…多心ケーブル、2…極細同軸ケーブル、3…中心導体、3a…中心導体の、接続端子に接続される部分、4…絶縁体、5…外部導体、6…ジャケット層、9…回路基板、10…導電パターン部、11…接着剤(導電性接着剤)、11a…導体が載置される接着剤の表面、22…接続端子、30…ローラー、31…搬送台、32…ローラー、33…ローラー、36…成型用部材、37…溝部、50…極細同軸ケーブルの接続構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続部材の接続端子に接続される導体を有する配線材の製造方法において、
前記導体と前記接続端子を接続する前に、前記導体を、前記導体と前記接続端子の接続時の屈曲形状に変形しておくことを特徴とする配線材の製造方法。
【請求項2】
導体を有する配線材の、前記導体が被接続部材の接続端子に接続された配線材の接続構造の製造方法であって、
前記導体を、予め、前記導体と前記接続端子の接続時の屈曲形状に変形する工程と、
前記接続端子上に、導電性物質を含有する導電性接着剤を載置する工程と、
変形された前記導体と前記接続端子との位置合わせをしながら、変形された前記導体と前記接続端子との間に前記導電性接着剤を介在させる工程と、
加熱加圧処理を行うことにより、前記導電性接着剤を介して、変形された前記導体と前記接続端子を電気的に接続する工程とを含むことを特徴とする配線材の接続構造の製造方法。
【請求項3】
前記導体を変形する際に、複数の前記配線材を平行に並べた状態で、前記複数の配線材の各々の導体の、前記接続端子に接続される部分の高さを略同一にすることを特徴とする請求項2に記載の配線材の接続構造の製造方法。
【請求項4】
前記導体の、前記接続端子に接続される部分を、平面形状にする工程を更に含むことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の配線材の接続構造の製造方法。
【請求項5】
前記導体を、前記導体と前記接続端子の接続時の屈曲形状に変形する際に、前記導体の、前記接続端子に接続される部分を前記平面形状にすることを特徴とする請求項4に記載の配線材の接続構造の製造方法。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする配線材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−4341(P2008−4341A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171482(P2006−171482)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】