説明

配線装置

【課題】 電磁油圧制御弁への配線を行う配線装置において、ハウジングに対する電磁油圧制御弁の固定を簡易な構造で実現する。
【解決手段】 ハウジング10の特定面Tにおいてピン穴の周辺部に、ボスを形成する。これらのボスに対応する位置に配線カバー20は締結部22を有しており、さらに、配線カバー20は、締結部22からピン穴に対応するように延びる腕部23を有している。そして、この腕部23により、締結部22を介して配線カバー20が螺着されると、ピン穴の上方が覆われ、ピン穴に挿入されたピンが支持される。つまり、レール状の収容部21を有する配線カバー20にはハウジング10への固定のための締結部22が設けられるのであるが、この締結部22から延びる腕部23によって、リニアソレノイド弁を固定するためのピンを支持するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に用いられる電磁油圧制御弁への配線の接続技術及び当該電磁油圧制御弁のハウジングに対する固定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動変速機は、クラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素を選択的に係合または開放して変速を行う。このような摩擦要素は、電磁油圧制御弁の出力ポートから供給される作動油によって動作する。
【0003】
電磁油圧制御弁は、バルブボディなどと呼ばれる金属製のハウジングに、例えば並列に配設される。これら電磁油圧制御弁は電子制御ユニットによって制御されるため、各電磁油圧制御弁には、電子制御ユニットからの配線が接続される。
【0004】
従来、電磁油圧制御弁への配線を収容し、その配線をハウジングに対して固定するレール状の配線カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、特許文献1に開示される構成では、固定用の専用部品などが用いられているため、部品点数が多くなる。
【0005】
そこで、電磁油圧制御弁の円筒面の一部を切り欠き、ハウジングに挿入した状態で、当該切り欠きにピンを嵌合させて、電磁油圧制御弁の抜け及び回転を規制する構造が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、電子制御ユニットが搭載されたユニット台にて、ハウジングに挿入されたピンを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−163748号公報
【特許文献2】特開2010−78133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2では、比較的大きなユニット台を成形する必要がある。このとき、ピンを支持するためにユニット台に平面度が要求されるが、大型の樹脂成形では、精度を確保しにくい。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電磁油圧制御弁への配線を行う配線装置において、ハウジングに対する電磁油圧制御弁の固定を簡易な構造で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するためになされた請求項1に記載の配線装置は、ハウジングを備えている。このハウジングの特定面には、当該特定面に沿った方向へ延びる円筒穴部及び、円筒穴部に対応するピン穴が形成されている。
【0010】
一例として、図2に、ハウジング10を示した。ハウジング10の特定面Tには、円筒穴部11が面に沿って形成されている。また、この円筒穴部11に対応するピン穴12が形成されている。
【0011】
また、配線装置は、自動変速機が具備する摩擦要素に対して作動油を供給する複数の電磁油圧制御弁を備えている。電磁油圧制御弁は、ピンが嵌合する溝条を側部円筒面に有しており、円筒穴部に収容された状態で、ピン穴に挿入されるピンにて固定される。
【0012】
上述の例では、「電磁油圧制御弁」は、図2中のA〜Fの6つのリニアソレノイド弁30となっている。図3に示すようにリニアソレノイド弁30が円筒穴部11に収容された状態で、ピン穴12に挿入されるピン13が、溝条31に嵌合する。これにより、リニアソレノイド弁30の抜け及び回転が規制される。
【0013】
さらにまた、配線装置は配線カバーを備えており、配線カバーは、レール状の収容部及び、締結部を有している。収容部は、電子制御ユニットから電磁油圧制御弁への特定面における配線を収容する部分である。電子制御ユニットは、電磁油圧制御弁を制御する。一方、締結部は、配線カバーを特定面に締結するため前記ハウジングの締結部位へ締結される部分である。
【0014】
配線カバーの一例を、図1に示した。配線カバー20は、ハウジング10の特定面における配線を収容する収容部21と、締結ための締結部22とを有している。電子制御ユニットは、上下方向へ延びる保護チューブ24内の配線を介し、コネクタ部25にて接続される。
【0015】
ここで特に、配線カバーは、締結部から延びる腕部を有している。この腕部は、ピンが挿入された状態を維持するようピンの端部を支持する。上述した図1の例で言えば、腕部23が締結部22から延びるように形成されている。
【0016】
つまり、レール状の収容部を有する配線カバーにはハウジングの締結部位への固定のための締結部が設けられるのであるが、この締結部から延びる腕部によって、電磁油圧制御弁を固定するためのピンを支持するようにしたのである。
【0017】
このようにすれば、例えば特許文献2のようにユニット台でピンを支持する構成と異なり、大型の樹脂成形が必要なくなる。特にピン穴の位置とハウジングの締結部位とをなるべく近づけるようにして腕部の長さを短くするようにすれば、効果が際立つ。
【0018】
上記腕部を短くするという観点からは、ハウジングの締結部位とピン穴とを近づけることが考えられる。このピン穴は、電磁油圧制御弁の溝条の位置に対応させて設けられる。そこで請求項2に示すように、特定の隣り合う電磁油圧制御弁は、空洞部に収容された状態で、溝条が両制御弁の内側に位置するように形成されていることとしてもよい。溝条を両制御弁の内側に位置するようにするため、例えば両制御弁において、弁軸に対し反対側に溝条を形成することが考えられる。
【0019】
ここでの理解を容易にするため図を用いて一例を挙げれば、図2中のA及びBのリニアソレノイド弁30、並びに、D及びEのリニアソレノイド弁30が「特定の隣り合う電磁油圧制御弁」に相当する。このとき、ピン穴12が両制御弁30の間に位置することから分かるように、対となるリニアソレノイド弁30において、溝条が内側に位置するように形成されている。
【0020】
このようにすれば、隣り合う電磁油圧制御弁に対応する2つのピン穴の位置を近くすることができ、例えば締結部から延びる腕部の一部を共通化することにより、より小型の配線カバーを構成することができ、より一層効果が際立つ。
【0021】
また、2つのピン穴の位置を近くすることに加え、ピン穴の近くに締結部位を形成することが好ましい。例えば請求項3に示すように、両制御弁の溝条に合わせて形成された2つのピン穴に対応する位置に締結部位が形成されていることとしてもよい。例えば2つのピン穴の間に締結部位を形成するという具合である。このようにすれば、締結部から延びる腕部を短くすることができ、ピンを確実に支持することができる。ここで「ピン穴に対応する位置に」としたのは、2つのピン穴に対応させて1つの締結部位が形成されることを意味する。したがって、ピン穴の間に締結部位が形成される場合だけでなく、腕部の長さを短くするような種々の態様を含む。一例として、2つのピン穴から同様の距離にある位置に締結部位が形成されるような場合が挙げられる。
【0022】
ところで、電磁油圧制御弁には、作動油の出力圧が非通電時に低圧となるものと、作動油の出力圧が非通電時に高圧となるものとがある。そこで請求項4に示すように、特定の隣り合う電磁油圧制御弁は、一方が非通電時に作動油の出力圧が通電時に比べ低圧となるものであり、他方が非通電時に作動油の出力圧が通電時に比べ高圧となるものであることとしてもよい。
【0023】
隣り合う特定の電磁油圧制御弁においては溝条が弁軸に対し反対側に形成されるため、仕様の異なる2種類の電磁油圧制御弁を「隣り合う特定の電磁油圧制御弁」とすることで、溝条によって電磁油圧制御弁を区別することができる。
【0024】
なお、配線カバーの腕部がピンを支持するため、請求項5に示すように、配線カバーを金属材料で成形することが好ましい。このようにすれば、配線カバーの剛性が高くなり、その腕部により確実にピンを支持することができる。
【0025】
また、特定面における配線は配線カバーの収容部に収容されるため、請求項6に示すように、ハウジング側が開口する横断面コ字状となるように収容部を形成することが考えられる。このようにすれば、収容部によって3方向から配線が覆われるため、配線を十分に保護することができる。
【0026】
配線カバーを金属部材で構成する場合は特に、配線カバー自体で配線が損傷しないようにすることが重要となる。そこで、請求項7に示すように、収容部の横断面における端部が丸みを帯びるよう形成することが望ましい。このようにすれば、配線が損傷することを極力防止することができる。
【0027】
端部が丸みを帯びるように形成する場合、例えば端部のコーナー部分をR形状とすることが考えられる。例えば図8(c)に示すごとくである。また、請求項8に示すように、収容部は、配線が配線カバーから引き出される部位の配線カバーの端縁部が、コ字状の外側方向へ折り曲げられ、その屈曲部に丸みを帯びるよう
形成されていることとしてもよい。例えば図8(a)及び(b)に示すごとくである。
【0028】
また、請求項9に示すように、少なくとも収容部の表面を絶縁膜で覆うことが好ましい。配線カバーを介した配線の短絡を防止するためである。具体的には、請求項10に示すように、絶縁膜を化成被膜で構成することが考えられる。また、請求項11に示すように、絶縁膜を、内層のメッキ膜及び外層のクロム系コーティング材で構成することが考えられる。この場合、メッキ膜が導電性を有するため、クロム系コーティング材で覆う。さらにまた、請求項12に示すように、絶縁膜を、電着塗装被膜で構成することが考えられる。電着塗装被膜を用いると、丈夫になる点で有利である。
【0029】
なお、請求項13に示すように、配線カバーは、特定面からハウジングの傍らを経由する特定面の反対側の面への配線を収容する保護チューブを有していることとしてもよい。例えば図1中の保護チューブ24として具現化される。このようにすれば、ハウジングの傍らを経由する配線が例えばATケースに接触して損傷することを防止できる。
【0030】
また、保護チューブの端部で配線がATケース等に接触する虞があるため、請求項14に示すように、配線カバーは、保護チューブの端部に、配線を外側から覆う保護部を有していることとしてもよい。例えば図1中の配線保護部26及びコネクタ保護部27として具現化される。このようにすれば、保護チューブの端部においても配線を保護することができる。
【0031】
なお、特許文献2では、ピンを支持するためのユニット台がオイルパン側、すなわち車両の下方側に搭載される。つまり、この構成では、電子制御ユニットが車両の下方側に搭載されるのである。そのため、石跳ねや縁石接触により電子制御ユニットが損傷する虞がある。そこで、「前記ハウジングの前記特定面は、車両の下方側の面であり、前記電子制御ユニットは、前記特定面の反対側に配置されること」としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態の配線装置を示す斜視図である。
【図2】ハウジングの特定面の構成を示す斜視図である。
【図3】図2のG−G線断面図である。
【図4】表側から視た配線カバーの斜視図である。
【図5】裏側から視た配線カバーの斜視図である。
【図6】保護チューブを拡大して示す斜視図である。
【図7】配線カバーの表側を、配線を省略して示す斜視図である。
【図8】配線カバーの裏側を、配線を省略して示す斜視図である。
【図9】図7の記号H,I部分の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態の配線装置を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、配線装置1は、ハウジング10、及び、配線カバー20を備えている。ハウジング10には、図2に示すように、6つのリニアソレノイド弁30が固定される。なお、これらのリニアソレノイド弁30を区別する場合、図2中の記号A〜Fを用いて記述する。
【0034】
ハウジング10は、図2に示すように、特定面Tに、その面に沿って延びる6つの円筒穴部11を有している。円筒穴部11は円柱状の空間11aを有しており、詳しくはこの空間11aに、A〜Fの6つのリニアソレノイド弁30が収容されて固定される。
【0035】
円筒穴部11は、相互に平行に形成されており、特定面Tに、横一列に並ぶようにして形成されている。したがって、リニアソレノイド弁30も、相互に平行に横一列に並ぶようにして配置される。
【0036】
リニアソレノイド弁30は、その側面に、円筒穴部11に収容された状態で、ピン13が嵌合する溝条31(図3参照)を有している。溝条31は、リニアソレノイド弁30の弁軸Oに垂直な方向に形成されている。これにより、図3に示すように、ピン穴12にピン13が挿入されると、ピン13は、リニアソレノイド弁30の溝条31に嵌合し、リニアソレノイド弁30の抜け(紙面奥側への移動)及び弁軸O周りの回転を規制する。
【0037】
本実施形態において、Aリニアソレノイド弁30では、図3からも分かるように、先端側から視て、弁軸Oの右側に、溝条31が形成されている。一方、Aリニアソレノイド弁30に隣り合うBリニアソレノイド弁30では、図2から分かるように、ピン穴12が先端側から視て弁軸Oの左側に形成されている。すなわち、Bリニアソレノイド弁30では、溝条31は、先端側から視て弁軸Oの左側に形成されている。
【0038】
つまり、A及びBの隣り合うリニアソレノイド弁30は、円筒穴部11に収容された状態で、溝条31が両制御弁30の内側に位置するよう当該溝条31が弁軸Oに対し反対側に形成されている。これにより、A及びBのリニアソレノイド弁30に対応するピン穴12は、近接する位置に配置されることになる。なお、この構成は、D及びEの隣り合うリニアソレノイド弁30でも、同様になっている。
【0039】
図1に示すように、配線カバー20は、ハウジング10の特定面Tに締結される。配線カバー20は、金属材料で成形されている。また、その表面には、電着塗装皮膜の絶縁膜が形成されている。
【0040】
配線カバー20は、レール状の収容部21を有している。収容部21は、特定面Tにおけるリニアソレノイド弁30への配線を収容する。したがって、収容部21は、横一列に並ぶリニアソレノイド弁30に跨るようにして、リニアソレノイド弁30の並び方向へ延びる。収容部21は、所定部分でハウジング10側が開口する横断面コ字状となっており、その内部に、配線41を収容している(図5等参照)。
【0041】
収容部21は、A〜Dのリニアソレノイド弁30の後端付近を通り、E及びFのリニアソレノイド弁30の中央部付近へ延びている。この収容部21からは、図4及び図5などに示すように、リニアソレノイド弁30に対応して配線41が引き出されており、この配線41は、リニアソレノイド弁30の円筒面に設けられた接続部32(図2参照)に対し、専用コネクタ42にて接続される。
【0042】
配線カバー20がハウジング10の特定面Tに締結されることはすでに述べたが、図1等に示すように、そのための複数の締結部22を有している。締結部22の一部は、レール状に延びる収容部21の両側に配置されている。締結部22に対応して、ハウジング10には、ボス14が形成されている。これにより、配線カバー20は、締結部22の穴を挿通するネジによって螺着される。
【0043】
また、ハウジング10の特定面Tにおいてピン穴12の周辺部にもボス14が形成されており(図2参照)、これらのボス14に対応する位置に、配線カバー20は、締結部22を有している。ここで、配線カバー20は、締結部22からピン穴12に対応するように延びる腕部23を有している。これにより、締結部22を介して配線カバー20が螺着されると、腕部23が、ピン穴12の上方を覆い、ピン穴12に挿入されたピン13を支持する。
【0044】
また、配線カバー20は、図1等の左側に示すように、特定面Tの反対側に配置される電子制御ユニットへの配線を案内する保護チューブ24を有している。保護チューブ24は、ハウジング10の傍らを経由して上下方向に延びる。図6に拡大して示すように、保護チューブ24の端部には、内側(図中では右方向)へ突出するコネクタ部25が接続されている。このコネクタ部25により、電子制御ユニットが接続される。
【0045】
ハウジング10はATケース(不図示)内に配設されるため、保護チューブ24の外側(図中では左側)には、ATケースの壁が位置する。したがって、保護チューブ24は、配線41がATケースに接触して損傷することを防止する。
【0046】
配線41がATケースと接触しないようにするため、図6等に示すように、保護チューブ24の端部には、配線保護部26及びコネクタ保護部27が設けられている。配線保護部26は、保護チューブ24から収容部21までの間の配線が外側のATケースに接触しないように保護する。一方、コネクタ保護部27は、コネクタ部25から保護チューブ24までの間の配線が外側のATケースに接触しないように保護する。
【0047】
また、図7及び図8では、配線カバー20のみを示した。図7は配線カバー20の表側から視た斜視図であり、図8は配線カバー20の裏側から視た斜視図である。配線カバー20の収容部21からは配線41が取り出されることは上述したが、この取り出し部位において、配線41が損傷しないように、図7中に記号Hで示す部位などでは、端縁部21aが折り返されている(図9(a)及び(b)参照)。また、記号Iで示すコ字状部位においても、断面の端部がR形状となっている(図9(c)参照)。
【0048】
以上詳述したように、本実施形態では、ハウジング10の特定面Tにおいてピン穴12の周辺部に、ボス14が形成されている(図2参照)。これらのボス14に対応する位置に配線カバー20は締結部22を有しており、さらに、配線カバー20は、締結部22からピン穴12に対応するように延びる腕部23を有している。この腕部23により、締結部22を介して配線カバー20が螺着されると、ピン穴12の上方が覆われ、ピン穴12に挿入されたピン13が支持される。
【0049】
つまり、レール状の収容部21を有する配線カバー20にはハウジング10への固定のための締結部22が設けられるのであるが、この締結部22から延びる腕部23によって、リニアソレノイド弁30を固定するためのピン13を支持するようにしたのである。これにより、大型の樹脂成形が必要なくなる。特にピン穴12の位置に近い部位にボス14が形成されているため、効果が際立つ。
【0050】
また、本実施形態では、電子制御ユニットが車両の下方側の特定面Tとは反対側に配設される。これにより、石跳ねや縁石接触により電子制御ユニットの損傷を防止することができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態では、A及びB、D及びEの隣り合うリニアソレノイド弁30は、円筒穴部11に収容された状態で、溝条31が両制御弁30の内側に位置するよう当該溝条31が弁軸Oに対し反対側に形成されている。これにより、A及びB、D及びEのリニアソレノイド弁30に対応するピン穴12は、近接する位置に配置されることになる。これにより、腕部23の一部を共通化することにより、より小型の配線カバー20を構成することができ、より一層効果が際立つ。
【0052】
また、本実施形態によれば、配線カバー20が金属材料で成形されているため、配線カバー20の剛性が高くなり、その腕部23によって、確実にピン13を支持することができる。
【0053】
さらにまた、本実施形態では、所定部分で収容部21がハウジング10側に開口する横断面コ字状となっている。これにより、収容部21によって3方向から配線41が覆われるため、配線41を十分に保護することができる。
【0054】
また、本実施形態では、配線41の取り出し部位において、配線41が損傷しないように、図7中に記号Hで示す部分では、端縁部21aが折り返されている(図9(a)及び(b)参照)。また、記号Iで示すコ字状部位においても、断面の端部がR形状となっている(図9(c)参照)。これにより、配線41が損傷することを極力防止することができる。
【0055】
さらにまた、本実施形態によれば、配線カバー20の表面に絶縁膜が形成されているため、配線カバー20を介した配線の短絡を防止することができる。また、絶縁膜に電着塗装皮膜を用いたため、配線41との接触が繰り返されても絶縁膜が剥がれ落ちる虞が少ない。
【0056】
また、本実施形態では、コネクタ部25へ接続される配線41が保護チューブ24内に配置されている。さらに、配線41がATケースと接触しないようにするため、保護チューブ24の端部には、配線保護部26及びコネクタ保護部27が設けられている(図6等参照)。これにより、ハウジング10の傍らを経由する配線41がATケースに接触して損傷することを防止できる。
【0057】
以上、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限度において種々なる形態で実施できる。
(イ)上記実施形態では、配線カバー20の表面に電着塗装皮膜の絶縁膜を形成していたが、必ずしも絶縁膜が必要なわけではない。また、電着塗装皮膜の絶縁膜以外に、化成皮膜の絶縁膜を形成したり、メッキ膜を下層としクロム系コーティング剤を上層とする絶縁膜を形成したりしてもよい。
【0058】
(ロ)上記実施形態では、リニアソレノイド弁30の仕様については特に言及していないが、リニアソレノイド弁30には、作動油の出力圧が非通電時に低圧となるものと、作動油の出力圧が非通電時に高圧となるものとがある。そこで、A及びBのリニアソレノイド弁30のうち一方を「非通電時に低圧となるもの」とし、他方を「非通電時に高圧となるもの」とすることが考えられる。隣り合うA及びBのリニアソレノイド弁30では溝条31が弁軸Oに対し反対側に形成されるため、溝条31の位置によって、仕様の異なる2種類のリニアソレノイド弁30を区別することができる。これは、隣り合うD及びEのリニアソレノイド弁30でも同様である。
【0059】
(ハ)上記実施形態では接続部32がリニアソレノイド弁30の円筒面に設けられるとしか言及していないが、円筒面の水平方向にオフセットした位置に、接続部32を設けるようにしてもよい。このようにすれば、接続部32からオイルパンまでの距離を確保することができる。また、接続部32を水平方向にオフセットした位置に設ける場合、2つのリニアソレノイド弁30において弁軸Oに対し反対側に接続部32を形成すれば、上記(ロ)で示したような異なる種類のリニアソレノイド弁30を接続部32の位置によって区別することができる。その結果、専用コネクタ42の誤組み付けを防止することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・配線装置
10・・・ハウジング
11・・・円筒穴部
11a・・・空間
12・・・ピン穴
13・・・ピン
14・・・ボス
20・・・配線カバー
21・・・収容部
21a・・・端縁部
22・・・締結部
23・・・腕部
24・・・保護チューブ
25・・・コネクタ部
26・・・配線保護部
27・・・コネクタ保護部
30・・・リニアソレノイド弁
31・・・溝条
32・・・接続部
41・・・配線
42・・・専用コネクタ
O・・・弁軸
T・・・特定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定面に、当該特定面に沿った方向へ延びる円筒穴部及び、前記円筒穴部に対応するピン穴が形成されたハウジングと、
自動変速機が具備する摩擦要素に対して作動油を供給し、ピンが嵌合する溝条を側部円筒面に有しており、前記円筒穴部に収容された状態で、前記ピン穴に挿入される前記ピンにて固定される複数の電磁油圧制御弁と、
前記電磁油圧制御弁を制御する電子制御ユニットから前記電磁油圧制御弁への前記特定面における配線を収容するレール状の収容部、及び、前記特定面への締結のため前記ハウジングの締結部位へ締結される締結部を有する配線カバーと、を備え、
前記配線カバーは、前記締結部から延び、前記ピンが挿入された状態を維持するよう前記ピンの端部を支持する腕部を有していること
を特徴とする配線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配線装置において、
特定の隣り合う電磁油圧制御弁は、前記円筒穴部に収容された状態で、前記溝条が両制御弁の内側に位置するように形成されていること
を特徴とする配線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の配線装置において、
前記両制御弁の前記溝条に合わせて形成された2つのピン穴に対応する位置に前記締結部位が形成されていること
を特徴とする配線装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の配線装置において、
前記特定の隣り合う電磁油圧制御弁は、一方が非通電時に前記作動油の出力圧が低圧となるものであり、他方が非通電時に前記作動油の出力圧が高圧となるものであること
を特徴とする配線装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の配線装置において、
前記配線カバーは、金属材料で成形されていること
を特徴とする配線装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の配線装置において、
前記収容部は、前記ハウジング側が開口する横断面コ字状に形成されていること
を特徴とする配線装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の配線装置において、
前記収容部は、横断面における端部が丸みを帯びるよう形成されていること
を特徴とする配線装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配線装置において、
前記収容部は、前記配線が前記配線カバーから引き出される部位の前記配線カバーの端縁部が、前記コ字状の外側方向へ折り曲げられ、その屈曲部に丸みを帯びるよう
形成されていること
を特徴とする配線装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の配線装置において、
前記配線カバーは、少なくとも前記収容部の表面が絶縁膜で覆われていること
を特徴とする配線装置。
【請求項10】
請求項9に記載の配線装置において、
前記絶縁膜は、化成被膜であること
を特徴とする配線装置。
【請求項11】
請求項9に記載の配線装置において、
前記絶縁膜は、内層のメッキ膜及び、外層のクロム系コーティング材を有すること
を特徴とする配線装置。
【請求項12】
請求項9に記載の配線装置において、
前記絶縁膜は、電着塗装被膜であること
を特徴とする配線装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の配線装置において、
前記配線カバーは、前記特定面から前記ハウジングの傍らを経由する前記特定面の反対側の面への配線を収容する保護チューブを有していること
を特徴とする配線装置。
【請求項14】
請求項13に記載の配線装置において、
前記配線カバーは、前記保護チューブの端部に、前記配線を外側から覆う保護部を有していること
を特徴とする配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−17828(P2012−17828A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156904(P2010−156904)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】