説明

酒酔い防止剤

【課題】
酔いざまし効果を有し、副作用なしに悪酔、二日酔いなどのアルコールによる副作用を予防または処置改善するための薬剤を提供すること。
【解決手段】
本発明は、ホウトウクウが予想外にアルコールによる作用(例えば、悪酔、二日酔いなど)を予防または軽減することができる作用を有することを見出したことによって、上記課題を解決した。従って、本発明は、ホウトウクウ(ヤマブシタケ)由来の成分を含む、飲酒による作用を予防または処置するための組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール酔いを予防または軽減するための薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒によって現れる肉体の疲労、頭痛、精神的な脱力感は、総称して、その症状により悪酔または二日酔いと呼ばれている。このような悪酔および二日酔いは、アルコール中毒の端緒となる状態であり、アルコールによる付き合いが多い現代人にとって、アルコールに弱い人に特に問題である。
【0003】
アルコール中毒は、エタノールが引き起こすものであるが、このエタノールは、胃で20%、小腸で80%が吸収されるとされている。この吸収されたエタノールは肝臓に運搬される。
【0004】
アルコールは、アルコール脱水素酵素(ADHとも呼ばれる)の作用を受け、アセトアルデヒドに分解される。この経路とは別に、ミクロソーム−エタノール酸化系(MEOS)により代謝を受けてアセトアルデヒドになる経路も存在する。この系は、アルコールを経験することによって活性化されるとされている。
【0005】
このように生成されるアセトアルデヒドは、エタノール自体よりも毒性が一般的に高く、これが身体を駆け巡ることによって種々の不快感が現れることになる。
【0006】
アセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素1型および2型の作用で酢酸に分解され、その後、最終的には二酸化炭素および水になる。
【0007】
悪酔しやすい性質、またはお酒に強いかもしくは弱いかという区別は、多くの場合、アセトアルデヒド脱水素酵素2型(以降ALDH2と表記する)に依存する。ALDH2が少なかったり欠損しているとアセトアルデヒドをすばやく分解することができず、その結果、アセトアルデヒドが蓄積しやすくなることになる。黄色人種はALDH2が欠損している人が多いとされており、日本人は44%が欠損していると言われている。
【0008】
ここで、「悪酔」とは、飲酒時またはその直後に酔いが廻ることをいい、これはエタノールまたはアセトアルデヒドによるとされる。「二日酔い」とは、飲酒の翌日に酔いが廻ることをいい、代謝できなかったアセトアルデヒドが体内に残っていること、およびそれにより、血中カテコールアミン(例えば、ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなどの副腎髄質ホルモン)量が上昇することによって起こるとされる。
【0009】
従来、漢方薬などの種々の薬剤が悪酔防止剤または二日酔防止剤としての効果を期待して使用が試みられ、開発されているが、酔いざまし感に優れた薬剤は報告されていない。
【0010】
ホウトウクウ(Hericium erinaceum)は、北半球温帯以北に広く分布している薬用キノコである。日本では山伏が着る篠懸衣(すずかけころも)の胸に付ける飾りに似ていることからヤマブシタケの名があり、中国では子実体が猴(猿)の子供の頭に似ているのでホウトウクウと呼ばれている。
【0011】
ホウトウクウ が種々の薬効を有することは中国では古くから知られ、漢方薬として珍重されている。ホウトウクウのエキス製剤もまた、中国では慢性胃病の治療薬として市販されている。
【0012】
近年、日本ではキノコの榾木栽培とともにビンや袋を用いる菌床栽培法が確立され、ホウトウクウもこのような技術により栽培可能となっている。ホウトウクウ が有する薬理成分についてもまた種々の研究機関で種々の物質が見出されている。ホウトウクウ の既知の薬理成分としては、HeLa細胞増殖阻害物質、神経成長因子(NGF)合成誘導促進物質、花粉管発芽生長阻害物質、免疫機能調節成分、抗腫瘍多糖類、およびレクチンが挙げられる(「キノコの化学・生化学」、水野卓および川合正允、編著(学会出版センター、(1992))および「キノコの薬効と食効」、水野卓、編(THECHEMICAL TIMES No.1(1992)))。その効果として、アルツハイマー、免疫疾患、胃潰瘍、消化不良、およびガンに対する改善作用が挙げられている。
【0013】
ホウトウクウ は、別名漏斗茸または上戸茸(ジョウゴダケ)という別名もある。この別名は、きのこの形がジョウゴ(漏斗)に似ていることから名づけられたという説(水野、川合編著、「キノコの化学・生化学」、学会出版センター、p309、1992)、または懐にキノコを忍ばせて、酒を飲まずにそのキノコにアルコールを吸収させて場をしのぐことができるということから命名されているようである(非特許文献2=伊沢・川嶋共著、「キノコ狩りガイドブック」永岡書店、p116、2002)。
【0014】
しかし、ホウトウクウが飲酒後の悪酔、二日酔いなどのアルコールによる副作用を抑えるという作用を期待して使用されているのではない。
【非特許文献1】水野、川合編著、「キノコの化学・生化学」、学会出版センター、p309、1992
【非特許文献2】伊沢・川嶋共著、「キノコ狩りガイドブック」永岡書店、p116、2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、酔いざまし効果を有し、副作用なしに悪酔、二日酔いなどのアルコールによる副作用を予防または処置改善するための薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ホウトウクウが予想外にアルコールによる作用(例えば、悪酔、二日酔いなど)を予防または軽減することができる作用を有することを見出したことによって、上記課題を解決した。従って、本発明は以下を提供する。
【0017】
一つの局面において、本発明は、ホウトウクウ(ヤマブシタケ)由来の成分を含む、飲酒による作用を予防または処置するための組成物を提供する。
【0018】
一つの実施形態において、上記成分は、生鮮ホウトウクウ、乾燥ホウトウクウまたはホウトウクウ抽出物を含む。
【0019】
一つの実施形態において、上記成分は、ホウトウクウの抽出成分を含む。
【0020】
一つの実施形態において、上記成分は、アルコールまたは水抽出物を含む。
【0021】
一つの実施形態において、上記成分は乾燥ホウトウクウを含む。
【0022】
一つの実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、冷風乾燥法によって調製される。
【0023】
一つの実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、水分が約10%未満、より好ましくは約8%にまで乾燥されたものである。
【0024】
一つの実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、26℃〜30℃で約12〜48時間乾燥したものである。
【0025】
一つの実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、100mg以上含まれる。
【0026】
一つの実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、1.8g以上で含まれる。
【0027】
好ましい実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、5.4g以下で含まれる。
【0028】
好ましい実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、1.8〜5.4g含まれる。
【0029】
より好ましい実施形態において、上記乾燥ホウトウクウは、1.8〜3.6g含まれる。
【0030】
一つの実施形態において、本発明は、さらに、胚芽発酵抽出物を含む。
【0031】
一つの実施形態において、上記ホウトウクウは乾燥ホウトウクウであり、上記胚芽発酵抽出物と10:1〜1:10の比率で混合される。
【0032】
好ましい実施形態において、上記ホウトウクウは乾燥ホウトウクウであり、上記胚芽発酵抽出物と2:1〜1:2の比率で混合される。
【0033】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、米胚芽発酵エキス末、秋ウコン末、ヨーグルトパウダー、牡蠣エキス末、亜鉛酵母、ビタミンCおよびクエン酸からなる群より選択されるさらなる成分を含む。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、米胚芽発酵エキス末、秋ウコン末、ヨーグルトパウダー、牡蠣エキス末、亜鉛酵母、ビタミンCおよびクエン酸からなる群より選択されるさらなる成分をすべてさらに含む。
【0035】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、さらに賦形剤を含む。
【0036】
一つの実施形態において、上記賦形剤は、乳糖、ショ糖エステルおよびデンプンからなる群より選択される。
【0037】
より好ましい実施形態において、本発明は、
以下の組成:
6粒(1800mg)あたり
ホウトウクウ(ヤマブシタケ)末 100〜1000mg 5.6〜55.6%
秋ウコン末 100〜1000mg 5.6〜55.6%
米胚芽発酵エキス末 200〜 500mg 11.1〜27.8%
ヨーグルトパウダー 100〜 500mg 5.6〜27.8%
牡蠣エキス末 100〜 500mg 5.6〜27.8%
亜鉛酵母(亜鉛10%含有) 50〜 300mg 2.8〜16.7%
ビタミンC 20〜 100mg 1.1〜 5.6%
クエン酸 50〜 500mg 2.8〜27.8%
適量の賦形剤等を加えて 合計1800mgとする、
組成比率で有効成分を含む。ここで、賦形剤は、乳糖、ショ糖エステル、デンプンなどを挙げることができる。代表的な処方比率は以下の通りである。
【0038】
6粒(1800mg)あたりで
ホウトウクウ(ヤマブシタケ)末 252mg 14%
秋ウコン末 324mg 18%
米胚芽発酵エキス末 324mg 18%
ヨーグルトパウダー 180mg 10%
牡蠣エキス末 144mg 8%
亜鉛酵母(亜鉛10%含有) 108mg 6%
ビタミンC 36mg 2%
クエン酸 270mg 15%
その他賦形剤等 162mg 9%。
【0039】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、さらに、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0040】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、食品または医薬品として提供される。
【0041】
一つの実施形態において、本発明の組成物は、飲酒前、飲酒中または飲酒後に摂取される。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、飲酒前に摂取される。
【0043】
一つの局面において、本発明は、飲酒による作用を予防または処置するための方法を提供する。この方法は、A)ホウトウクウに由来する成分を飲酒前、飲酒中または飲酒後に被験者に摂取させる工程、を包含する。ホウトウクウに由来する成分は、上記実施形態の任意の形態を採り得る。
【0044】
好ましい実施形態において、上記摂取は、飲酒前に行われる。
【0045】
一つの局面において、本発明は、飲酒による作用を予防または処置するための組成物を製造する方法を提供する。この方法は、A)ホウトウクウを提供する工程;およびB)該ホウトウクウに由来する成分と必要な他の成分とを混合して組成物とする工程を包含する。
【0046】
一つの実施形態において、本発明の方法は、さらに、ホウトウクウを乾燥させる工程を包含する。
【0047】
一つの実施形態において、上記乾燥は、冷風乾燥法による。
【0048】
別の局面において、本発明は、飲酒による作用を予防または処置するための組成物を製造するための、ホウトウクウの使用を提供する。
【0049】
本発明において使用されるホウトウクウ 組成物は、ホウトウクウ乾燥物と、ハトムギ(ヨクイニン)、ハブ茶(決明子)、ウコン、玄米、大麦、昆布、クコの実、クコの葉、カキの葉、茶葉、イチョウの葉、ミカンの皮、杜仲、シイタケ、霊芝、アガリクス(姫マツタケ)、およびマイタケからなる群から選択される、少なくとも1種の植物成分および/または菌茸成分(以下、本明細書中において植物成分および/または菌茸成分を「植物成分」という)乾燥物とを含有していてもよい。
【0050】
本発明のある実施態様では、上記植物成分乾燥物は、ハトムギ、ハブ茶、およびウコンの混合物である。
【0051】
本発明の他の実施態様では、前記ホウトウクウ 乾燥物および植物成分乾燥物は細片状の形態であり、内容物が抽出可能な袋に包装されている。
【0052】
本発明のさらに他の実施態様では、前記ホウトウクウ 乾燥物は、未乾燥のホウトウクウを25℃〜30℃の範囲で乾燥させることにより得られる。
【0053】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、従来に比して効果が増強され、副作用が減少した酔いざまし剤が提供される。
【0055】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明に用いられる
【0057】
【数1】

【0058】
(Hericiumerinaceum)(以下「ホウトウクウ 」とする)は、自然界において広葉樹の枯木や生木に発生するため、これらを採取することが可能である。あるいは人工栽培が可能であるため、このように人工栽培されたホウトウクウを利用することも可能である。人工栽培は公知の榾木栽培、ビンや袋を用いる菌床栽培などにより行われる。採取された生のホウトウクウ は、生鮮ホウトウクウとして生で食用んされるか、あるいは必要に応じて切断され、乾燥に供される。あるいは乾燥した後、適当な大きさに切断あるいは細片化される。通常乾燥後のサイズが、3.5cm× 3.5cm×1.5cm以下、好ましくは0.5cm×0.5cm×0.2cm〜3.5cm×3.5cm×1.5cm、さらに好ましくは0.7cm× 0.7cm×0.3cm〜1.5cm×1.5cm×0.7cmとなるように細断される。例えば、生のホウトウクウを1.5cm×1.5cm×0.5cmのサイズに切断して乾燥に供する。上記サイズ以外にも、例えば、乾燥ホウトウクウを粉砕して粉末状とすることも可能である。このように粉末状とすることにより、抽出時間が短縮され得る。乾燥方法としては、通常の乾燥方法のいずれもが採用され得る。好ましい乾燥条件は40℃以下の低温、さらに好ましくは20℃〜35℃、最も好ましくは25℃〜30℃または26℃〜30℃の温度範囲の常圧乾燥である。このような乾燥条件を選択することにより、揮発性の有効成分を逃すことなく乾燥し得る。凍結乾燥は有効成分を変化させないという利点はあるが、有効成分が揮発して失われるおそれがある。乾燥後のホウトウクウの水分は、通常5重量%〜15重量%、より好ましくは8重量%〜12重量%、最も好ましくは約8重量%〜10重量%である。
【0059】
本明細書において「ホウトウクウ由来の成分」とは、ホウトウクウから直接または間接的に得られる成分をいう。ホウトウクウ由来の成分としては、ホウトウクウに由来する酔いざましの効果を有する成分が提供される限り、本発明では、生鮮ホウトウクウ、乾燥ホウトウクウ、ホウトウクウ抽出物(水またはアルコール(エタノール)抽出物など)などを使用することができることが理解される。
【0060】
本明細書において、「生鮮ホウトウクウ」は、栽培状態から得られる任意のホウトウクウをいう。生鮮食品として市販されるホウトウクウであれば、どのようなホウトウクウでも使用され得る。
【0061】
本明細書において「乾燥ホウトウクウ」とは、水分が減少した任意のホウトウクウをいう。乾燥ホウトウクウは、どのような乾燥方法を用いても調製され得、乾燥方法としては、通常の乾燥方法のいずれもが採用され得る。好ましい乾燥条件は40℃以下の低温、さらに好ましくは20℃〜35℃、最も好ましくは25℃〜30℃または26℃〜30℃の温度範囲の常圧乾燥であるが、これらに限定されない。乾燥ホウトウクウを本発明において用いる場合、この乾燥ホウトウクウは、組成物において、通常、少なくとも100mg、代表的には少なくとも300mg、好ましくは少なくとも0.6g、少なくとも0.9g、少なくとも1.0g、少なくとも1.2g、少なくとも1.5g、少なくとも1.8g、より好ましくは、少なくとも2.0g、少なくとも2.1g、少なくとも2.4g、少なくとも2.7g、少なくとも3.0g、少なくとも2.2g、少なくとも3.6g含むことが有利である。酔いざましの効果がより発揮されるからである。乾燥ホウトウクウを本発明において用いる場合、この乾燥ホウトウクウは、組成物において、受容され得ない副作用が出ない限り、どれだけ多くの量を用いてもよいが、好ましくは、9.0g以下、より好ましくは、7.2g以下、さらに好ましくは、5.4g以下で用いることが有利であるが、それに限定されない。多く摂取すると、下痢、不快感、軟便、などの副作用が出る可能性があるからである。
【0062】
本明細書において「ホウトウクウ抽出物」とは、任意の溶媒(例えば、水、エタノールなど)を用いてホウトウクウから抽出された成分をいう。ホウトウクウ抽出物は、ホウトウクウを、通常熱湯で5〜20分間、またはアルコールで数時間抽出することにより抽出液が得られる。
【0063】
本明細書において「冷風乾燥法」とは、被乾燥物に自然または空調機の除湿空気をさらして乾燥させる方法であり、通常20〜40℃までの空気が使用される。
【0064】
本明細書において「米胚芽発酵エキス末」とは、米胚芽を発酵させたものから抽出される任意の抽出物をいう。そのような米胚芽発酵エキス末としては、例えば、東洋酵素から販売されるもの、ヤヱガキフード&システム株式会社の「穀物麹BR」・「多穀麹」、勇心酒造株式会社の「米発酵エキス」などを使用することができ、あるいは、特許1885507号に記載される方法によって調製され得る。米胚芽発酵エキスは、体内のアルコール分解の2つの経路のうち、MEOS経路を活性化し、肝臓機能を高めて悪酔を防ぐとされている。ただし、他の成分との相乗効果は今まで知られていなかった。米胚芽発酵エキスには、プロリルエンドペプチダーゼを抑制する効果があることも知られている。
【0065】
本明細書において「秋ウコン」は、「秋ウコン」は、学名をウコン(クルクマ・ロンガ/Curcuma longa)といい、クルクミンを含み、根の部分を用いる。クルクミンを含めば、市販品を含めどのようなものでも使用することができる。
【0066】
本明細書において「ヨーグルトパウダー」とは、牛乳、羊乳、脱脂粉乳を乳酸菌によって乳酸発酵させたものを乾燥粉末にしたものをいう。ヨーグルトの乾燥はフリーズドライ、スプレードライによって行われる。乳酸菌としては、乳を乳酸発酵させるものであれば一般に知られている、乳酸桿菌、乳酸球菌のいずれでも利用可能である。ヨーグルトとしては、市販品を含めどのようなものでも使用することができる。
【0067】
本明細書において「牡蠣エキス末」とは、イワガキ(Crassostrea nippona)、マガキ(Crassostrea gigas)、オハグロガキ(Saccostrea cucullata)など日本近海で生息している牡蠣およびアメリカ ガキ(Crassostrea virginica)、ヨーロッパヒラガキ(Ostrea edulis )などの肉部分からエキス抽出し、乾燥末にしたものをいう。利用できる牡蠣は食用に供せられるすべての種類である。アミノ酸の一種、タウリンや微量必須ミネラル、亜鉛を多く含む。牡蠣製品であれば、市販品を含めどのようなものでも使用することができる。
【0068】
本明細書において「亜鉛酵母」とは、亜鉛を(代表的には、10%)含む任意の酵母をいう。亜鉛酵母は、代表的には、米国Kelatron Corporation 社製の亜鉛酵母を用いることができるがそれに限定されない。酵母としては、ビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いることができるがそれに限定されない。亜鉛Zn分子量65.4として例えば、10%以上10.50%以下、粒度は80メッシュ90%通過を用いることができる。
【0069】
本発明の組成物は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
【0070】
本発明が医薬として使用される場合は、そのような医薬は経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、そのような医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
【0071】
本発明の組成物の量は、使用目的、対象疾患または状態(種類、重篤度など)、被験者の年齢、体重、性別、既往歴などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験者に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患または状態(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0072】
本明細書において、農学的もしくは薬学的に「受容可能なキャリア」は、食品、医薬または動物薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバントなどが挙げられるがそれらに限定されない。
【0073】
本発明が食品、農薬など別の用途で使用されるときもまた、当局の規定する規制を遵守しながら食品、農薬などを調製することができる。
【0074】
受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。本発明において使用され得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の組成物は、支持体およびペプチドまたはその改変体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。
【0075】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、そして乳糖、ショ糖エステルおよびデンプン、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0076】
本明細書において使用される賦形剤としては、乳糖、ショ糖エステルおよびデンプンなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0077】
本発明のホウトウクウ 組成物には、ホウトウクウ以外の植物成分乾燥物が含有される。この植物成分は、ハトムギ(ヨクイニン)、ハブ茶(決明子)、ウコン、玄米、大麦、昆布、クコの実、クコの葉、カキの葉、茶葉、イチョウの葉、ミカンの皮、杜仲、シイタケ、霊芝、アガリクス(姫マツタケ)およびマイタケからなる群から選択される少なくとも1種である。これらは本発明の組成物からの抽出液を飲用する際に、主に味を改善するという役割を果たす。さらに、これらの植物成分の有効成分をあわせて摂取するという目的で配合させる。これらの植物成分は常温に放置したときにカビなどを生じたり、腐敗することのない程度の乾燥状態であれば良い。水分含有量は通常2%〜15%、好ましくは4%〜12%、最も好ましくは約7%である。これらの植物成分は栽培品あるいは市販品が入手可能であり、必要に応じて焙煎、乾燥が行われる。水分含有量が低い状態にある材料(例えば、市販のハトムギ、ハブ茶、玄米、大麦、クコの実など)は特に乾燥の必要はない。この乾燥においても、好ましくは上記ホウトウクウの乾燥工程に用いられる条件が採用され得る。植物成分は、必要に応じて適切な大きさに切断される。乾燥はこの切断の前および後に行われ得る。ハトムギ、ハブ茶、玄米、大麦、クコの実などの比較的小さなサイズの材料は、切断せずにそのまま使用され得る。茶葉は、市販の緑茶、ウーロン茶などを使用し得る。植物成分は単独で、もしくは組み合わせて組成物中に含有され得る。植物成分の組み合わせには、ハトムギ、ハブ茶、およびウコン;オオムギ、茶葉、クコの葉、およびイチョウの葉;シイタケ、霊芝、アガリクス、およびマイタケ;などが挙げられ、本発明の組成物において、上記植物成分の乾燥物は、ホウトウクウ乾燥物100重量部に対してそれぞれ200重量部以下、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは2〜100重量部の割合で含有される。例えば、植物成分としてハトムギ、ハブ茶、およびウコンの混合物を用いる場合には、ホウトウクウ乾燥物100重量部に対して、ハトムギ10〜50重量部、ハブ茶10〜50重量部、およびウコン1〜10重量部が適切である。植物成分乾燥物として、特に好ましい組み合わせは、ハトムギ、ハブ茶、およびウコンである。
【0078】
通常上記ホウトウクウ および植物成分乾燥物は、取扱いが容易であるように、その内容物が抽出可能な袋に包装される。そのような袋は紙、合成樹脂、天然繊維などでなるメッシュ素材、フィルター素材のような通液可能な袋である。通常の漢方薬を煎じるために用いられる紙製もしくは樹脂製のメッシュ素材の袋またはティーバッグに用いられる紙製の袋が好適に用いられ得る。本発明の組成物を、通常熱湯で5〜20分間抽出することにより抽出液が得られる。これを飲料用に提供することにより、ホウトウクウ および他の植物成分が摂取され、それらの薬効が期待され得る。抽出および飲用の際には、本発明の組成物は、通常、ホウトウクウ乾燥物が1日あたり3〜10gとなるように使用される。ホウトウクウ および他の植物成分を細片化し、ティーバッグ用のフィルター素材でなる紙袋に1回服用分の量を充填すると、抽出が簡便でありかつ抽出時間が短くてすむという利点が得られる。
【0079】
植物成分を使用した場合、本発明の組成物から得られるホウトウクウ抽出液は、ホウトウクウが有する独特の生臭さおよび苦みが解消され、飲用が容易となる。このようなホウトウクウ組成物から得られる抽出液を飲用することにより、ホウトウクウが有する各種薬効が得られることが期待され得る。
【0080】
本発明のホウトウクウ組成物は、その保存性の向上を目的として、通常アルミパックなどに個別包装され得る。例えば、上記抽出可能な袋にホウトウクウ組成物を充填した後、アルミパックに個別包装される。必要に応じて、酸化防止あるいは吸湿防止を目的として、酸素吸収剤、乾燥剤などが封入され得る。
【0081】
この個別包装物には、必要に応じて指示書が添付される。
【0082】
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法または摂取する方法などに関し、医師、被検体など摂取する本人に対する説明を記載したものである。指示書は、食品、医薬などがキット(例えば、個別包装物など)として提供される場合、その使用方法を指示するために添付され得る。この指示書は、本発明の食品または医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省または農林水産省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インタ−ネットで提供されるホ−ムペ−ジ(ウェブサイト)、電子メ−ル、SMS、PDF文書など)のような形態でも提供され得る。
【0083】
本発明の組成物は、飲酒前に摂取しても、飲酒中に摂取しても、飲酒後に摂取してもその効果が発揮される。好ましくは、飲酒直前(例えば、1時間〜1分前)などに服用しておくことが有利であり得る。
【0084】
本明細書において「酔いざまし」とは、エタノール(アルコール)の作用を抑制、軽減または消長させることをいう。酔いざましの効果は、呼気中アルコールを測定することによって判定することができる。呼気中アルコールの量は、血中アルコール濃度に相関することから、酔いざましの効果は、血中アルコールを測定することによっても測定することができる。あるいは、酔いざましの効果は、摂取者の頭痛、吐き気、不快感などの有無を用いることによって測定することができる。
【0085】
血中アルコール濃度と、酩酊度の効果は以下の通りである。
【表A】

【0086】
同様に呼気中アルコール濃度については、以下のように説明される。呼気中アルコール濃度と血中アルコール濃度の関係は1:2000である。つまり「酒気帯び運転」と判断されるのは呼気中アルコール濃度0.15mg/l以上また は血中アルコール濃度0.3mg/mlとされている。なお、道路交通法施行令(昭和三五年十月十一日)では、(アルコールの程度)として、第四十四条の三に、法第百十九条第一項第七号の二の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液一ミリリットルにつき〇.三ミリグラム又は呼気一リットルにつき〇.一五ミリグラムとする、とされている。アルコールが自動車の運転に及ぼす影響を・飲酒なし(呼気中アルコール濃度が0.00mg/1)、・低濃度(同0.12mg/1程度)、・中濃度 (同0.20mg/1程度)、・高濃度 (同0.25mg/1程度)の4段階の条件を設け、「やや簡単な判断の反応時間」と「やや複雑な判断の反応時間」について見てみると、それぞれに飲酒の影響が見られるが、やや複雑な判断においてより飲酒の影響が見られる。酒に強い人も、酒に弱い人と同様に、アルコール濃度が高いほど反応時間は遅いということが明らかになっている(科学警察研究所交通安全研究室:「低濃度のアルコールが運転操作等に与える影響に関する調査研究」;アルコールが運転に及ぼす影響http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/insyu/insyu1.htm)。
【0087】
本明細書において、酔いざましの効果があるとは、呼気中アルコールの濃度が通常0.35ppm以下、代表的には0.30ppm以下、好ましくは0.25ppm以下、より好ましくは0.20ppm以下、さらに好ましくは0.15ppm以下、さらにより好ましくは0.10ppm以下、なおさらに好ましくは、0.05ppm以下、最も好ましくは検出限界以下(実質的に0.00ppm)に下がることをいう。呼気中アルコールは、当該分野において公知の任意の方法によって測定することができ、市販の装置(例えば、中央自動車から販売されるソシアックなど)を用いることも可能である。
【0088】
本明細書において「アルコール(エタノール)の作用」とは、アルコール(エタノール)が身体に対して惹起する任意の作用を含む。そのような作用としては、頭痛、吐き気、不快感、倦怠感、ふらつき、動悸、過呼吸なを挙げることができるがそれらに限定されない。アルコールの作用の結果として、例えば、悪酔または二日酔いなどが生じる。
【0089】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0090】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した食品、薬品類は、特に言及した場合を除いて、たとえば健康流通新聞(発行:ニューマガジン社)等に掲載されている、食品業界では周知の原料供給会社なから市販されているものを使用した。
【0092】
(実施例1:ホウトウクウの生食効果)
ビン栽培法により栽培された生のホウトウクウ(水分88%)をそのまま使用した。ホウトウクウとしては、本実施例において、アイ・エム・ビー(株)の保存菌株(Hericium erinaceum IMB−H1を用いたが、他の株も使用できることが理解される。または、IMB−H1は、アイ・エム・ビー(株)から入手可能である、他の代表的な株としては、たとえば株式会社キノックスや有限会社 振興園から市販 されているものあるいは、温暖で多湿な地域の広葉樹において自生しているものを挙げ ることができる。ホウトウクウは世界中において自生しており、そのような自生しているものを使用することができることが理解される。なお、ホウトウクウは、欧州では、lion headとも呼ばれている。
【0093】
生鮮ホウトウクウは、14g(無水物として約1.7g)を被験者(成人男性5名)または28g(無水物として約3.4g)を被験者(成人男性5名)に食させ、10分後にビール(アルコール度5%)500mlを摂取させた。対照として、被験者にホウトウクウの摂食を行わせず馬鈴薯デンプン1.8gを摂食させて同僚のビールを飲んだ場合の実験も行った。
【0094】
酔いざましの効果は、呼気中のアルコール濃度を測定することによって判定した。呼気中のアルコール濃度は、アルコール検知器(ソシアック、中央自動車株式会社、測定範囲0.00−1.00ppm)を用いて測定した。
【0095】
対照区と試験区とは、同一の被験者を用い、試験自体は、それぞれ少なくとも1週間の間隔を空けて行った。
【0096】
試験は、試験評価者および被験者に対して薬剤名を伏せ、被験者が何を飲んでいるのかが分からないように、外観および重量(300mg)を同じような製品形態にさせて、プラセボ効果が出ないように試験を行った。
【0097】
その結果を、摂食なしの結果を表1に28g生食について表2に以下に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

表に示すように、生鮮ホウトウクウを飲酒前に摂取させることによって、呼気中アルコール濃度を減少させることが明らかになった。
【0100】
従来から酔いざまし効果が知られている米胚芽発酵エキス末を対照として実験を行った。上記生鮮ホウトウクウに代えて米胚芽発酵エキス末(東洋酵素などから入手可能)を1.8g5人の被験者に服用させ、その後10分後に上記と同様のビール500mlを摂取させた。その結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

このように、生鮮ホウトウクウは、米胚芽発酵エキス末と同程度の酔いざまし効果を有することが明らかになった。米胚芽発酵エキス末は現状で最も酔いざまし効果が高いとされる成分の一つであることから、ホウトウクウの効果の高さが理解され得る。従来ホウトウクウを摂食させた場合に飲酒による副作用を防ぐまたは減少させる効果は知られておらず、本発明は、予想外の効果を見出したことになる。
【0102】
(実施例2:乾燥ホウトウクウの効果)
上記生鮮ホウトウクウに代えて、乾燥ホウトウクウの効果を本実施例において確認した。ビン栽培法により栽培された生のホウトウクウ を、(例えば、1.5cm×1.5cm×0.5cm)に截断し、乾燥しやすいようにこれらをセイロに並べた。次にこれを乾燥器に入れ、26℃〜30℃において、約12〜36時間かけて通風乾燥を行った(冷風乾燥法)。得られたホウトウクウ乾燥物の水分は約8重量%であった。水分は約6〜15%程度であれば、本実施例において好ましく使用できる。次いで、このホウトウクウ 乾燥物を、微粉砕し粉末状態で試験に用いた。
【0103】
その結果を、乾燥ホウトウクウ1.8gの結果を表4に3.6gについて表5に以下に示す。
【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

表に示すように、乾燥ホウトウクウを飲酒前に摂取させることによって、生鮮ホウトウクウ以上(乾燥重量は同じ)に呼気中アルコール濃度を減少させることが明らかになった。従って、ホウトウクウを乾燥させることによって、酔いざましの効果は予想外に上昇することが明らかになった。また、乾燥させた場合、従来最高の効果を示すとされる米胚芽抽出液よりも高い酔いざまし効果を示すことも示された。
【0106】
ホウトウクウは、食物繊維が多い(乾燥物100gあたり37.0g)こと、および独特な臭気があることから、一度に多量に摂取すると胃腸に違和感が生じることも多い。従って、乾燥させた場合に水分減少以上に効果が上昇することは、乾燥ホウトウクウが酔いざまし剤としてより好ましいことを示している。
【0107】
酔いざまし効果を発揮する量では胃腸部の不快感を与えないかどうかをさらに確認するために、乾燥ホウトウクウを6人の被験者(3名の成人男子a,b,cおよび3名の成人女子d,e,f)に、300mgの粒を1回6粒(1.8g)〜30粒(9.0g)一度に飲用させ、その後、胃部の不快感、軟便または便秘の有無を調査した。飲用は、昼食後20分とし、各試験の実施は、各々少なくとも5日間の間隔を空けた。
【0108】
【表6】

表から示されるように、乾燥ホウトウクウの摂取量が多くなるに従って不快感を感じる被験者が増し、便の軟化または便秘といった腸部の異常も散見されることが判明した。しかし、酔いざまし効果のある1.8g、3.6gといった摂取量において、胃腸部に対してはほとんど副作用がないことが明らかになった。本品は、医薬品としてよりは食品として摂取されることが多いと考えられることから、服用感に優れるという点は注目に値すると考えられる。
【0109】
(実施例3:抽出液での効果)
実施例2で得られた分包されたホウトウクウ組成物1包を、1リットルの熱水で約15分間煎じて抽出液を得た。
これとは別にホウトウクウ乾燥物10gを実施例1と同様に袋に充填し、これを用いて同様に抽出液を得た。これらの抽出液(煎じ液)を、10℃、30℃、または70℃とし、飲酒10分前に飲み、10人の被験者により酔いざまし効果を確認した。その結果を以下の表に示す(男性:A〜E,女性:F〜J)。
【0110】
なお飲用した抽出液の飲用量はいずれの試料においても200ml、温度は30℃であった。10人の被験者により酔いざまし効果を確認した。その結果を以下の表に示す。
【0111】
【表7】

このように、ホウトウクウの抽出液であっても、酔いざまし効果があることが確認される。その効果は、乾燥ホウトウクウに匹敵するようである。
【0112】
(実施例4:他の成分との混合効果)
次に、乾燥ホウトウクウに加えて、他の成分を加えたものの酔いざまし効果を試験した。他の成分としては、秋ウコン末、米胚芽発酵エキス末、ヨーグルトパウダー、牡蠣エキス末、亜鉛酵母(亜鉛10%含有)、ビタミンC、クエン酸などを試験した。これらの材料は、秋ウコン末:(株)永廣堂本店 大阪『ターメリック』;米胚芽発酵エキス末:(株)東洋発酵 東京 『GMT−ALC』;ヨーグルトパウダー:森永乳業(株)東京 ヨーグルトパウダー『YP−A』;牡蠣エキス末:備前化成(株) 岡山『カキエキスパウダー』;亜鉛酵母:製造 Kelatron Corporation USA,発売 研光通商(株)東京『ビール酵母乾燥粉末(亜鉛10%含有)』;ビタミンC:BASF武田ビタミン(株)東京 『ビタミンC』;クエン酸:扶桑化学工業(株)大阪『クエン酸』などから入手することができる。その配合比率は以下の通りである。
【0113】
【表8】

表8には、上記成分全部を入れたもの、米胚芽発酵エキス末のみを入れたもの、対照として、ホウトウクウおよび米胚芽発酵エキス末を除いたもの、米胚芽発酵エキス末を除いたもの、ホウトウクウを除いたものの配合比率を示す。賦形剤としては、例えば、ショ糖、馬鈴薯デンプンなどを用いた。プラセボ対照として、これらの成分の代わりに馬鈴薯デンプンを使用したものなどを使用した。
【0114】
その結果を以下の表に示す。
【0115】
【表9】

【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
【表12】

【0119】
【表13】

【0120】
【表14】

これらの結果から、ホウトウクウ単独または米胚芽発酵エキス末単独よりも、ホウトウクウ単独および米胚芽発酵エキス末を組み合わせた方が呼気中アルコール濃度の減少が促進され、アルコール分解が促進されることが明らかになった。米胚芽発酵エキスおよびホウトウクウは、下痢を催す副作用を有するが、その副作用が減少することが期待される。酔いざましの効果は、さらに、秋ウコン、ヨーグルトパウダー、牡蠣エキス末、亜鉛酵母、ビタミンC、クエン酸をそれぞれ加えることによって、増強効果が見られた。
【0121】
(実施例5:飲酒後の体感)
ホウトウクウを摂取し飲酒した後の体感を確認するために、5人の被験者(F、G、H、I、およびJ)に実施例2〜4で作製した各試験品を飲用させ、その10分後から日本酒3合(アルコール度数約16%、540ml)を約30分かけて飲み、飲み始めてから3時間後の体調(頭痛、吐き気の有無)を調査した。
【0122】
さらに、1週間の期間をおいて、再び同様の試験を開始し、飲み始めてから10時間後の体調(目覚め、頭痛および吐き気)を調査した。その結果を以下の表に示す。評価は5段階の絶対評価で表した。[1=悪い、2=やや悪い、3普通、4=やや良い、5=良い]。
【0123】
【表15】

この結果、ホウトウクウは、概して、体調に変化をきたさずに、目覚めの悪さ、頭痛、吐き気などの二日酔いの効果のない酔いざまし効果が発揮されることが明らかになった。その効果は、すべての成分を組み合わせた方がより好ましいことが分かったが、ホウトウクウ単独でもその効果は十分であることが理解される。
【0124】
(実施例6:飲酒後の効果)
次に、ホウトウクウが、飲酒後に摂取される場合でも、酔いざまし効果があることを実証する。
【0125】
実施例5に記載される配合のものを、5人の被験者がビール(アルコール度5%)500mlを摂取した後10分後に摂取させた。その他の実験条件は、実施例1に記載されるように行った。その結果を以下の表に示す。
【0126】
【表16−1】

【0127】
【表16−2】

このように、ホウトウクウの酔いざまし効果は、飲酒前に摂取しても、飲酒中または飲酒後に摂取しても同様に発揮されることが明らかになった。
【0128】
(実施例7:市販品との比較)
次に、市販されるスーパー酔さめα(有限会社ウェルネス ヒットリサーチ事業部、神戸インターネット販売)およびアノム(株式会社ユニックス インターネット販売)と比較した。
【0129】
実施例5に記載される配合のものと、上記市販品との対照実験を行った。実験は、摂取するものを各々の試験対象とする以外は、実施例1に記載されるように行った。その結果を以下の表に示す。
【0130】
スーパー酔さめαおよび爽快アノムの組成は以下の通りである。
〈商品名〉アノム:焼成カルシウム、調味料(無機塩)、香料、甘味料(アセスルファムK)。焼成カルシウム=貝殻、卵殻や魚の骨を焼成したもの。酸化カルシウムと炭酸カルシウムになる。水分を含ますことにより、水酸化カルシウムになる。アセスルファムK= 組成式CKNOS、分子量201.24、砂糖の200倍の甘さである。
スーパー酔さめα:原材料:秋ウコン、田七人参、梅、レモン、牡蠣、ユッカ、マッシュルーム、大豆、ビタミンC。
【0131】
【表18】

(実施例8:臭いを消した場合の組成物の効果)
次に、ハトムギ、ハブ茶、およびウコンなどの他の成分をホウトウクウに加えて、消臭させた場合の酔いざましの効果を検証した。その処方は、特開平11-075793 に従った。具体的には以下の通りである。
【0132】
ビン栽培法により栽培された生のホウトウクウ を、1.5cm×1.5cm×0.5cmに細断し、これらをセイロに並べた。次にこれを乾燥器に入れ、25℃〜30℃において、約12時間かけて通風乾燥を行った。得られたホウトウクウ 乾燥物の水分は約10重量%であった。次いで、このホウトウクウ 乾燥物10g、ハトムギ2.0g、ハブ茶3.0g、およびウコン0.4gを12cm×15.5cmの紙製フィルター素材でなる袋に充填した。
【0133】
このようにして得られた分包されたホウトウクウ 組成物1包を、1リットルの熱水で約15分間煎じて抽出液を得た。これとは別にホウトウクウ 乾燥物10gを実施例1と同様に袋に充填し、これを用いて同様に抽出液を得た。これらの抽出液(煎じ液)を、10℃、30℃、または70℃とし、5人の被験者により、実施例1のような実験を行った。その結果を以下の表に示す(男性:A,B,C,女性:F,G)。
【0134】
なお飲用した抽出液の飲用量はいずれの試料においても200ml、温度は30℃であった。
【0135】
【表19】

※飲料用ホウトウクウ組成物(特開平11-075793,特許第3527625号)
この処方で調製したホウトウクウ含有組成物は、ホウトウクウ以外の他の植物成分を含有し、比較的低温から高温まで、ホウトウクウ 由来の生臭さおよび苦みが消え、さらに「うまみ」が加えられることにより容易に飲用され得ることに加えて、酔いざましの効果も保持されることが明らかになった。
【0136】
(実施例9:反復利用の副作用の有無)
実施例2および5で示した処方を、毎日飲用して1ヶ月間継続した場合にも、副作用がないかどうかを検証した。詳細には、上記組成物をを1日2回2日間かけて飲用するように指示した。1カ月経過後、その効果を問い合わせたところ、次の回答が得られた(重複回答あり)。
【0137】
【表20−1】

【0138】
【表20−2】

※体重の変化:試験開始時の体重(kg)に対して試験終了後に±2%内の変化があったかどうかを調べた。
【0139】
表20−1.は飲酒を伴うグループ(男性5人、女性5人)、表20−2.は飲酒を伴わないグループ(男性5人、女性5人)である。数値は1ヵ月(30日)の間に何回、該当の症状を感じたかを現している。表20−1.のなかで〈不快感〉を感じたという報告があったが、程度はごく軽いものだとのことであった。
【0140】
このように、酔いざましの効果は継続し、健康にはほとんど影響がないことが明らかになった。
【0141】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、医薬品、食品産業、アルコールを提供するサービスなどにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、呼気中のアルコール濃度と反応時間との相関関係を示す。y軸は反応時間(秒)を示し、横軸は、呼気中アルコール濃度の高低を示す。1%水準で統計的に有意(F(3,117)=10.02、p<0.01)である。反応時間とは、画面に刺激が呈示されてから、運転者がアクセルを離すまでの時間をいう。酒に弱い人、強い人とは、自己評価の結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウトウクウ(ヤマブシタケ)由来の成分を含む、飲酒による作用を予防または処置するための組成物。
【請求項2】
前記成分は、生鮮ホウトウクウ、乾燥ホウトウクウまたはホウトウクウ抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分は、ホウトウクウの抽出成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分は、アルコールまたは水抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分は乾燥ホウトウクウを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記乾燥ホウトウクウは、冷風乾燥法によって調製される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記乾燥ホウトウクウは、水分が約10%未満にまで乾燥されたものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記乾燥ホウトウクウは、26℃〜30℃で12〜48時間乾燥したものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記乾燥ホウトウクウは、100mg以上含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記乾燥ホウトウクウは、1.8g以上含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記乾燥ホウトウクウは、5.4g以下含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記乾燥ホウトウクウは、1.8〜5.4g含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記乾燥ホウトウクウは、1.8〜3.6g含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
さらに、胚芽発酵抽出物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ホウトウクウは乾燥ホウトウクウであり、前記胚芽発酵抽出物と10:1〜1:10の比率で混合される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ホウトウクウは乾燥ホウトウクウであり、前記胚芽発酵抽出物と2:1〜1:2の比率で混合される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
米胚芽発酵エキス末、秋ウコン末、ヨーグルトパウダー、牡蠣エキス末、亜鉛酵母、ビタミンCおよびクエン酸からなる群より選択されるさらなる成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
米胚芽発酵エキス末、秋ウコン末、ヨーグルトパウダー、牡蠣エキス末、亜鉛酵母、ビタミンCおよびクエン酸からなる群より選択されるさらなる成分をすべてさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
さらに賦形剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記賦形剤は、乳糖、ショ糖エステルおよびデンプンからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
以下の組成:
6粒(1800mg)あたり
ホウトウクウ(ヤマブシタケ)末 100〜1000mg 5.6〜55.6%
秋ウコン末 100〜1000mg 5.6〜55.6%
米胚芽発酵エキス末 200〜 500mg 11.1〜27.8%
ヨーグルトパウダー 100〜 500mg 5.6〜27.8%
牡蠣エキス末 100〜 500mg 5.6〜27.8%
亜鉛酵母(亜鉛10%含有) 50〜 300mg 2.8〜16.7%
ビタミンC 20〜 100mg 1.1〜 5.6%
クエン酸 50〜 500mg 2.8〜27.8%
適量の賦形剤等を加えて 合計1800mgとする、
組成比率で有効成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
さらに、薬学的に受容可能なキャリアを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
食品として提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
飲酒前、飲酒中または飲酒後に摂取される、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
飲酒前に摂取される、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
さらに、ホウトウクウ以外の植物成分乾燥物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記植物成分乾燥物は、ハトムギ、ハブ茶、およびウコンを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
飲酒による作用を予防または処置するための方法であって、
A)ホウトウクウに由来する成分を飲酒前、飲酒中または飲酒後に被験者に摂取させる工程、
を包含する、方法。
【請求項29】
前記摂取は、飲酒前に行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
飲酒による作用を予防または処置するための組成物を製造する方法であって、
A)ホウトウクウを提供する工程;および
B)該ホウトウクウに由来する成分と必要な他の成分とを混合して組成物とする工程
を包含する、方法。
【請求項31】
さらに、ホウトウクウを乾燥させる工程を包含する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記乾燥は、冷風乾燥法による、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
飲酒による作用を予防または処置するための組成物を製造するための、ホウトウクウの使用。

【図1】
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【公開番号】特開2006−22056(P2006−22056A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202432(P2004−202432)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(597019665)アイ・エム・ビー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】