説明

酸化物半導体、これを含む薄膜トランジスタ、及び薄膜トランジスタ表示板

【課題】理論的根拠に基づいて酸化物半導体の母材料に添加される物質を使用することによって、優れた特性を有する酸化物半導体、これを含む薄膜トランジスタ、及び薄膜トランジスタ表示板を提供する。
【解決手段】 本発明の一実施形態に係る酸化物半導体は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び前記第1物質に添加される第2物質を含み、前記第1物質と酸素(O)との電気陰性度差値から前記第2物質と酸素(O)との電気陰性度差値を引いた値が1.3以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体、これを含む薄膜トランジスタ、及び薄膜トランジスタ表示板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)、有機発光表示装置(organic light emitting diode display、OLED)、電気泳動表示装置(electrophoretic display)、及びプラズマ表示装置(plasma display)などのフラットパネル表示装置は、複数対の電界生成電極と、その間に挿入されている電気光学(electro−optical)活性層とを含む。液晶表示装置は電気光学活性層として液晶層を含み、有機発光表示装置は電気光学活性層として有機発光層を含む。一対を構成する電界生成電極のうちの一つは、通常、スイッチング素子に接続されて電気信号の印加を受け、電気光学活性層はこのような電気信号を光学信号に変換することによって映像を表示する。
【0003】
フラットパネル表示装置は、例えば、TFTアレイ基板(thin film transistor array panel)といった、薄膜トランジスタが形成された表示板を含むことがある。薄膜トランジスタ表示板には、複数層の電極、半導体などがパターニングされ、一般的に、パターニング工程にマスク(mask)を用いて形成する。
【0004】
薄膜トランジスタ表示板において、半導体は薄膜トランジスタの特性を決定する重要な要素である。このような半導体には、非晶質シリコン(amorphous silicon)が多く使用されているが、電荷移動度が低いため、高性能の薄膜トランジスタを製造することにおいて限界がある。また、多結晶シリコン(polysilicon)を使用する場合、電荷移動度が高いため、高性能の薄膜トランジスタの製造が容易であるが、原価が高く、かつ均一度が低いため、大型の薄膜トランジスタ表示板を製造することに限界がある。
【0005】
このため、非晶質シリコンより電子移動度が高くて、且つ電流のON/OFF率が高く、多結晶シリコンより原価が安価で、且つ均一度が高い、酸化物半導体(oxide semiconductor)を利用する薄膜トランジスタに対する研究が進められている。
【0006】
酸化物半導体として、亜鉛酸化物(ZnO)、錫酸化物(SnO)、及び亜鉛−錫酸化物(ZnSnO)などを使用することに関する研究が進められている。さらに、酸化物半導体の特性を改良するために、母材料に新たな物質を添加する研究が進められているが、周期律表で特別な理論的根拠なしに添加される物質を選定して薄膜トランジスタのサンプルを作成した後、その特性を検証する方法であるため、非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、理論的根拠に基づいて酸化物半導体の母材料に添加される物質を使用することによって、優れた特性を有する酸化物半導体、これを含む薄膜トランジスタ、及び薄膜トランジスタ表示板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る酸化物半導体は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び前記第1物質に添加される第2物質を含み、前記第1物質と酸素(O)との電気陰性度差(Electronegativity difference)値から前記第2物質と酸素(O)との電気陰性度差値を引いた値が1.3以下であることを特徴とする。
【0009】
前記第1物質を構成する元素のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差を0.35オングストローム(angstrom)以下としてもよい。
【0010】
前記第1物質の結晶構造は、正方晶(tetragonal)構造及び八角形(octagonal)構造のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0011】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0012】
前記第1物質は、インジウム(In)及びガリウム(Ga)のうちの少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0013】
前記第1物質は亜鉛酸化物(ZnO)であり、前記第1物質に含まれている亜鉛と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値を0.8以下としてもよい。
【0014】
前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差を0.35オングストローム以下としてもよい。
【0015】
前記第1物質の結晶構造は、正方晶構造及び八角形構造のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0016】
前記第1物質は、錫酸化物(SnO)であり、前記第1物質に含まれている錫と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値を0.5以下としてもよい。
【0017】
前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差を0.8オングストローム以下としてもよい。
【0018】
前記第1物質の結晶構造は、正方晶構造及び八角形構造のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0019】
本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスタは、ゲート電極、ソース電極、前記ソース電極と対向するドレイン電極、前記ゲート電極と前記ソース電極または前記ドレイン電極との間に位置する酸化物半導体、及び前記ゲート電極と前記ソース電極または前記ドレイン電極との間に位置するゲート絶縁膜を含み、前記酸化物半導体は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び前記第1物質に添加される第2物質を含み、前記第1物質と酸素(O)との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素(O)との電気陰性度差値を引いた値が1.3以下であることを特徴とする。
【0020】
前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差を0.35オングストローム以下としてもよい。
【0021】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0022】
前記第1物質は、インジウム(In)またはガリウム(Ga)をさらに含んでもよい。
【0023】
前記ゲート電極は前記酸化物半導体の下に配置し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極は前記酸化物半導体の上に配置してもよい。
【0024】
前記ゲート電極は前記酸化物半導体の上に配置し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極は前記酸化物半導体の下に配置してもよい。
【0025】
本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスタ表示板は、基板、前記基板上に配置して、ゲート電極を含むゲート線、前記ゲート線の上に配置するゲート絶縁膜、前記ゲート絶縁膜の上に配置する酸化物半導体、前記酸化物半導体の上に配置して、ソース電極と接続されるデータ線、前記酸化物半導体の上で前記ソース電極と対向するドレイン電極、及び前記データ線の上に配置する保護膜を含み、前記酸化物半導体は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び前記第1物質に添加される第2物質を含み、前記第1物質と酸素(O)との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素(O)との電気陰性度差値を引いた値が1.3以下であることを特徴とする。
【0026】
前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差を0.35オングストローム以下としてもよい。
【0027】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0028】
前記第1物質は、インジウム(In)またはガリウム(Ga)をさらに含んでもよい。
【0029】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記酸化物半導体と接触させてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態によれば、電気陰性度差とイオン半径差を考慮して、酸化物半導体の母材料に添加される元素を選択して用いることによって、薄膜トランジスタの特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る酸化物半導体を構成する物質の電気陰性度差を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係る酸化物半導体を構成する物質のイオン半径差を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態に係る酸化物半導体を構成する物質のイオン半径差を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る酸化物半導体を構成する物質のイオン半径差を示すグラフである。
【図5】電荷の移動度と電気陰性度差の関係を示すグラフである。
【図6】しきい電圧とイオン半径差の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ表示板の平面図である。
【図10】図9の薄膜トランジスタ表示板をX−X’線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明はここで説明される実施形態に限定されず、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介される実施形態は、開示された内容を徹底で、かつ完全なものとなるようにし、そして当業者に本発明の思想を十分に伝えるために提供するものである。
【0033】
図面において、層及び領域の厚さは明確性を期するために誇張して示した。また、層が他の層または基板「上」にあると言及される場合に、それは他の層または基板上に直接形成されるか、またはそれらの間に第3の層が介してもよい。明細書の全体にわたって同一の参照番号と表示された部分は同一の構成要素を意味する。
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る酸化物半導体について詳細に説明する。
【0035】
本実施形態に係る酸化物半導体は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質を含む。ここで、前記第1物質は、亜鉛酸化物、錫酸化物、亜鉛−錫酸化物を含む。
【0036】
本実施形態に係る酸化物半導体は、前記第1物質に添加される第2物質を含む。前記第2物質は下記のような条件を考慮して選ばれる。
【0037】
第一条件は、第1物質を構成する元素と酸素との電気陰性度(Electronegativity)差から、第2物質を構成する元素と酸素との電気陰性度差を引いた値が、予め設定された値以下である。例えば、第1物質を構成する元素が亜鉛(Zn)または錫(Sn)であり、第2物質を構成する元素を元素X(element X)とする場合、電気陰性度差は下記式(1)の通りに表わされる。
【数1】

【0038】
ここで、式|E|は、元素Xの電気陰性度の絶対値を示す。例えば、Eは、酸素の電気陰性度を示し、EZnは、亜鉛の電気陰性度を示し、ESnは、錫の電気陰性度を示す。
【0039】
第二条件は、第1物質を構成する元素のイオン半径と第2物質を構成する元素のイオン半径との差が、予め設定された値以下である。
【0040】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうち少なくとも一つを含む。
【0041】
前記第1物質には、インジウムまたはガリウムがさらに含まれてもよい。しかし、インジウム及びガリウムは、原価が非常に高いため、代替的な実施形態に係る酸化物半導体においてはインジウム及びガリウムを含まないことがある。
【0042】
前記第一条件において、予め設定された値は母材料の第1物質によって変更されてもよい。以下、母材料が亜鉛−錫酸化物である場合について説明する。
【0043】
図1は、本発明の実施形態に係る酸化物半導体を構成する物質の電気陰性度差を示すグラフである。下記表1及び表2は、図1のグラフを示すためのデータ値を示す。亜鉛(Zn)の電気陰性度値は1.65であり、錫(Sn)の電気陰性度値は1.96であり、酸素(O)の電気陰性度値は3.44である。
【表1】


【表2】

【0044】
図1、表1及び表2を参照すれば、ガリウム、アルミニウム、ニオビウム、チタニウム、タンタルなどの元素と酸素との電気陰性度差が、母材料である亜鉛及び錫それぞれと酸素との電気陰性度差と比較すると、相対的にその差が少なく現れることが確認できる。
【0045】
図2乃至図4は、本発明の実施形態に係る酸化物半導体を構成する物質のイオン半径差を示すグラフである。
【0046】
図2は、本実施形態による酸化物半導体の母材料に該当する亜鉛及び錫の結晶構造が正方晶(tetragonal)構造である場合、第1物質を構成する亜鉛及び錫それぞれと第2物質を構成する元素とのイオン半径差を示し、図3は、亜鉛及び錫の結晶構造が八角形(octagonal)構造である場合、第1物質を構成する亜鉛及び錫それぞれと第2物質を構成する元素とのイオン半径差を示す。
【0047】
図4は、図2に示した正方晶構造の亜鉛と代表的ないくつかの第2物質を構成する元素とのイオン半径差(ionic radius difference)を示す。下記表3及び表4は、図2乃至図4のグラフを示すためのデータ値を表わす。
【表3】


【表4】

【0048】
図2乃至4、表3及び表4を参照すれば、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ニオビウム(Nb)、スカンジウム(Sc)、及びガリウム(Ga)などの元素は、母材料である亜鉛及び錫それぞれとのイオン半径差が、相対的に少なく現れることがわかる。
【0049】
本実施形態に係る酸化物半導体において、母材料が亜鉛−錫酸化物である場合、下記式(2)で求められる電気陰性度差は約1.3以下である。
【数2】

【0050】
また、第1物質を構成する元素である亜鉛及び錫それぞれのイオン半径と、前記第2物質のイオン半径との差の合計が、1.6オングストローム以下でありうる。
【0051】
しかし、1.3以下の電気陰性度差値と、1.6オングストローム以下のイオン半径差は、酸化物半導体の母材料が変更されることによって変化し得る。例えば、前記第1物質が亜鉛酸化物(ZnO)である場合に、亜鉛と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値は0.8以下でありうる。また、前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差は0.35オングストローム以下でありうる。
【0052】
前記第1物質が錫酸化物(SnO)である場合に、錫と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値は0.5以下でありうる。また、前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差は0.35オングストローム以下でありうる。
【0053】
以下、上述した酸化物半導体を含む薄膜トランジスタの特性について説明する。
【0054】
酸化物半導体を構成する母材料と、これに添加される物質それぞれの電気陰性度と酸素の電気陰性度との差及びイオン半径差が、薄膜トランジスタの特性に及ぼす影響について調べるために行った実験例であって、電気陰性度差による電荷移動度を測定してみた。
【0055】
図5は、本実験例による電気陰性度差と電荷移動度との関係を示すグラフであり、図6は、本実験例によるしきい電圧とイオン半径差との関係を示すグラフである。
【0056】
図5を参照すれば、酸化物半導体を構成する母材料と、これに添加される第2物質との電気陰性度差が大きくなることによって、電荷移動度が減少することが確認できる。
【0057】
酸化物半導体から酸素が抜け出ることを酸素空孔(oxygen vacancy)といい、酸素空孔が発生するとき、キャリア(carrier)の役割を果たす電子が発生しうる。母材料を構成する元素と酸素との電気陰性度差から、第2物質と酸素との電気陰性度差を引いた値が大きければ、電荷移動度が相対的に低くなる。母材料を構成する元素と酸素との電気陰性度差から、これに添加される物質と酸素との電気陰性度差を引いた値が小さければ、電荷移動度が相対的に大きくなる。これは、母材料を構成する元素と酸素との電気陰性度差から、第2物質と酸素との電気陰性度差を引いた値が相対的に大きいほど、酸素空孔が発生する確率が減り、酸素空孔の増加により発生する電子の濃度が高くなることを防止するためである。
【0058】
図6を参照すれば、母材料を構成する元素のイオン半径と、第2物質のイオン半径との差が大きくなるにつれ、しきい電圧の変化の度合が大きくなることが確認できる。ここで、しきい電圧の変化の度合が大きければ大きいほど、薄膜トランジスタの信頼性が減少することを表わしている。
【0059】
母材料を構成する元素のイオン半径と、第2物質のイオン半径との差が大きいほど、格子歪み(lattice distortion)が生じて、格子間位置(interstitial site)が形成される可能性が高くなる。そのために酸化物半導体に欠陥が発生しうる。
【0060】
したがって、本実施形態による酸化物半導体を含む薄膜トランジスタは、電気陰性度差とイオン半径差を理論的根拠として、母材料に添加される第2物質を選定することによって、試行錯誤(trial and error)を減らし、優れた特性を有する薄膜トランジスタを製造することが可能となる。
【0061】
以下、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタについて、図7を参照して具体的に説明する。
【0062】
図7は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【0063】
第1基板110の上にゲート電極124を配置する。基板110は絶縁基板としてもよく、例えば、プラスチックまたはガラスなどを含む。
【0064】
ゲート電極124は、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金などアルミニウム系金属、銀(Ag)や銀合金など銀系金属、銅(Cu)、銅マンガン(CuMn)のような銅合金など銅系金属、モリブデン(Mo)やモリブデン合金などモリブデン系金属、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、及びチタニウム(Ti)などを含み得る。また、ゲート電極124は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、AZO(aluminium doped ZnO)などの透明性導電物質を含んでもよい。ゲート電極124は、二つ以上の導電膜(図示せず)を含む多重膜構造を有することも可能である。
【0065】
ゲート電極124の上にゲート絶縁膜140を配置する。ゲート絶縁膜140は、窒化ケイ素(SiNx)、酸化ケイ素(SiOx)、SiON(silicon oxynitride)、及び有機絶縁物質などを含み得る。ゲート絶縁膜140は、二つ以上の絶縁膜(図示せず)を含む多重膜構造を有することも可能である。例えば、ゲート絶縁膜140の上層部はSiOx、下層部はSiNxとすることができ、または、上層部はSiOx、下層部はSiONとすることができる。酸化物半導体154と接触するゲート絶縁膜140が酸化物を含むことにより、チャネル層の劣化を防止することができる。
【0066】
薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜140上に配置された酸化物半導体154をさらに含む。
【0067】
酸化物半導体154は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び前記第1物質に添加される第2物質を含む。ここで、酸化物半導体154は、亜鉛酸化物、錫酸化物、亜鉛−錫酸化物を含み得る。前記第2物質は下記のような条件を考慮して選ばれる。
【0068】
第一条件は、第1物質を構成する元素と酸素との電気陰性度差から、第2物質を構成する元素と酸素との電気陰性度差を引いた値が、予め設定された値以下である。例えば、第1物質を構成する元素が亜鉛(Zn)または錫(Sn)であり、第2物質を構成する元素を元素Xとする場合、電気陰性度差は下記式(1)のように表わされる。
【数3】

【0069】
ここで、式|E|は、元素Xの電気陰性度の絶対値を示す。
【0070】
第二条件は、第1物質を構成する元素のイオン半径と、第2物質を構成する元素のイオン半径との差が、予め設定された値以下である。
【0071】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0072】
前記第1物質にインジウムまたはガリウムがさらに含まれても良い。しかし、インジウム及びガリウムは原価が非常に高いため、本実施形態による酸化物半導体はインジウム及びガリウムを含まなくても良い。
【0073】
前記第一条件において、予め設定された値は母材料である第1物質によって変更できる。本発明の一実施形態として、母材料が亜鉛−錫酸化物の場合、下記式(2)を用いて決定される電気陰性度差が約1.3以下でありうる。
【数4】

【0074】
また、第1物質を構成する元素である亜鉛及び錫それぞれのイオン半径と、前記第2物質のイオン半径との差の合計が約1.6オングストローム以下でありうる。
【0075】
しかし、本発明は、上述した約1.3以下の電気陰性度差値と約1.6オングストローム以下のイオン半径差値に限定されるものではなく、酸化物半導体の母材料が変更されることによって変化され得る。例えば、前記第1物質が亜鉛酸化物(ZnO)である場合に、亜鉛と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値が約0.8以下でありうる。また、前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が約0.35オングストローム以下でありうる。
【0076】
前記第1物質が錫酸化物(SnO)である場合に、錫と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値が約0.5以下でありうる。また、前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が約0.35オングストローム以下でありうる。
【0077】
図8は、本発明の他の実施形態に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【0078】
図8の薄膜トランジスタは、ゲート電極124が酸化物半導体154の上に位置し、ソース電極173とドレイン電極175が酸化物半導体154の下に位置することが、図7の薄膜トランジスタとの差異点である。各構成要素の材料、多重膜構造、酸化物半導体などに対する説明は、図7の薄膜トランジスタの説明が実質的にそのまま適用される。
【0079】
以下、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ表示板について、図9及び図10を参照して詳細に説明する。以下、液晶表示装置に利用される薄膜トランジスタ表示板を例として挙げて説明する。しかし、薄膜トランジスタ表示板は、例えば、有機発光表示装置などの他の形態のフラットパネル表示装置に応用することができる。
【0080】
図9は、本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ表示板の平面図である。図10は、図9に示す薄膜トランジスタ表示板100をX−X’線に沿って切断した断面図である。
【0081】
例えば、ガラス又はプラスチックなどからなる絶縁性基板110の上に、ゲート線121(129)、ゲート電極124、維持電極線(storage electrode line)131、及び維持電極137を配置する。ゲート線121は、ゲート信号を送信し、ほぼ行方向に延びており、上に突出した複数のゲート電極124及びゲート線121の端部129を含む。しかし、ゲート電極の端部129は省略してもよい。
【0082】
維持電極線131は、所定電圧の印加を受け、ゲート線121と実質的に平行に延びており、ほぼ四角形の維持電極137を含む。このとき、維持電極線131と維持電極137の形状と配置は多様に変形され得る。しかし、維持電極線131と維持電極137は省略してもよい。
【0083】
ゲート線121(端部129を含む)及び維持電極線131は、アルミニウムやアルミニウム合金などアルミニウム系金属、銀や銀合金など銀系金属、銅、銅マンガンのような銅合金など銅系金属、モリブデンやモリブデン合金などモリブデン系金属、クロム、タンタル、及びチタニウムなどを含んでもよい。または、ゲート線121(端部129を含む)及び維持電極線131は、ITO、IZO、AZOなどの透明性導電物質で形成してもよい。ゲート線121、129及び維持電極線131は、二つ以上の導電膜(図示せず)を含む多重膜構造を有してもよい。
【0084】
薄膜トランジスタ表示板100は、ゲート線121及び維持電極線131の上に配置されたゲート絶縁膜140を含む。ゲート絶縁膜140は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、SiON、及び有機絶縁物質などを含み得る。ゲート絶縁膜140は、二つ以上の絶縁膜(図示せず)を含む多重膜構造を有することも可能である。例えば、ゲート絶縁膜140の上層部は酸化ケイ素(SiOx)、下層部は窒化ケイ素(SiNx)とすることができ、または、上層部は酸化ケイ素(SiOx)、下層部は酸窒化ケイ素(SiON)とすることができる。酸化物半導体154と接触するゲート絶縁膜140が酸化物を含む場合、チャネル層の劣化を防止することができる。
【0085】
薄膜トランジスタ表示板100は、ゲート絶縁膜140の上に配置された酸化物半導体154を含む。酸化物半導体154は、亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び前記第1物質に添加される第2物質を含む。ここで、酸化物半導体154は、亜鉛酸化物、錫酸化物、及び亜鉛−錫酸化物を含み得る。前記第2物質は下記のような条件を考慮して選ばれる。
【0086】
第一条件は、第1物質を構成する元素と酸素との電気陰性度差から、第2物質を構成する元素と酸素との電気陰性度差を引いた値が、予め設定された値以下である。例えば、第1物質を構成する元素が亜鉛(Zn)または錫(Sn)であり、第2物質を構成する元素を元素Xとする場合、電気陰性度差は下記式(1)のように表わされる。
【数5】

【0087】
ここで、式|E|は、元素Xの電気陰性度の絶対値を示す。例えば、Eは酸素の電気陰性度を示し、EZnは、亜鉛の電気陰性度を示し、ESnは、錫の電気陰性度を示す。
【0088】
第二条件は、第1物質を構成する元素のイオン半径と、第2物質を構成する元素のイオン半径との差が、予め設定された値以下である。
【0089】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0090】
前記第1物質にインジウムまたはガリウムがさらに含まれても良い。しかし、インジウム及びガリウムは原価が非常に高いため、他の実施形態に係る酸化物半導体はインジウム及びガリウムを含まなくても良い。
【0091】
前記第一条件において、予め設定された値は母材料である第1物質によって変更され得る。母材料が亜鉛−錫酸化物である場合は、下記式(2)で電気陰性度差が約1.3以下でありうる。
【数6】

【0092】
また、第1物質を構成する元素である亜鉛及び錫それぞれのイオン半径と、前記第2物質のイオン半径との差の合計が、約1.6オングストローム以下でありうる。
【0093】
しかし、約1.3以下の電気陰性度差値と約1.6オングストローム以下のイオン半径差値は、酸化物半導体の母材料が変更されることによって変化し得る。例えば、前記第1物質が亜鉛酸化物(ZnO)である場合に、亜鉛と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値が約0.8以下でありうる。また、前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が約0.35オングストローム以下でありうる。
【0094】
前記第1物質が錫酸化物(SnO)である場合に、錫と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値が約0.5以下でありうる。また、前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が約0.35オングストローム以下でありうる。
【0095】
薄膜トランジスタ表示板100は、酸化物半導体154の上に配置される、データ線171(端部179を含む)、ソース電極173、及びドレイン電極(drain electrode)175を含んでもよい。酸化物半導体154とデータ線171、(端部179を含む)との間には、不純物がドープされたオーミックコンタクト層が配置されてもよい。また、代替的な実施形態としては、酸化物半導体154とデータ線171(端部179を含む)との間には、不純物がドープされたオーミックコンタクト層が配置されなくともよい。データ線171はデータ電圧を送信し、ほぼ列方向に延びてゲート線121と交差する。データ線171はデータ線171の端部179を含み、ゲート電極124の上にU字状に曲がったソース電極173と接続されている。しかし、これに限定されず、ソース電極173の形状は多様に変更可能である。
【0096】
ドレイン電極175は、データ線171から分離されており、狭い部分(narrow portion)と拡張部(wide portion)177を含む。狭い部分はソース電極173によって取り囲まれた端部を含み、拡張部177はほぼ四角形であり、維持電極137と重畳する。ドレイン電極175の拡張部177は維持電極137とほぼ同じ面積を有していてもよい。
【0097】
データ線171(端部179を含む)、ソース電極173、及びドレイン電極175(拡張部177を含む)は、アルミニウムやアルミニウム合金などアルミニウム系金属、銀や銀合金など銀系金属、銅や銅マンガンのような銅合金など銅系金属、モリブデンやモリブデン合金などモリブデン系金属、クロム、タンタル、及びチタニウムなどを含んでもよい。例えば、モリブデン合金としては、Mo−Nb、Mo−Tiがある。また、データ線171(端部179を含む)、ソース電極173、及びドレイン電極175(拡張部177を含む)は、ITO、IZO、AZOなどの透明性導電物質で形成されてもよい。データ線171(端部179を含む)、ソース電極173、及びドレイン電極175(拡張部177を含む)は、二つ以上の導電膜(図示せず)を含む多重膜構造を有することも可能である。例えば、Mo/Al/Mo、Mo/Al、Mo/Cu、CuMn/Cu、Ti/Cuなどがある。
【0098】
一方、ゲート電極124、ソース電極173、及びドレイン電極175は、酸化物半導体154とともに薄膜トランジスタを構成し、薄膜トランジスタのチャネルは、ソース電極173とドレイン電極175の間の半導体154に配置される。ドレイン電極175は画素電極191に接続されて、駆動電圧を印加することができる。
【0099】
酸化物半導体154、データ線171(端部179を含む)、及びドレイン電極175(拡張部177を含む)は、実質的に同一の平面形状を有することができる。ただし、データ線171、179、ソース電極173及びドレイン電極175、177は、薄膜トランジスタのチャネルを覆わない。酸化物半導体154、データ線171、179、及びドレイン電極177をそれぞれ含む3つの層が順次に全面に塗布された後、1枚のマスクを用いてパターニングされて形成されてもよい。しかし、酸化物半導体154とデータ線171、179がそれぞれ1枚のマスクを用いて形成されてもよい。
【0100】
データ線171、179とドレイン電極175の上には窒化ケイ素、酸化ケイ素、及び酸窒化ケイ素(SiON)などを含む保護膜180を配置する。保護膜180は有機絶縁物質を含み得る。保護膜180は多重膜構造を有してもよい。例えば、保護膜180は、上層及び下層を含んでもよい。。例えば、保護膜180の下部は酸化ケイ素(SiOx)、上部は窒化ケイ素(SiNx)とすることができ、または、下部は酸化ケイ素(SiOx)、上部は酸窒化ケイ素(SiON)とすることができる。酸化物半導体154と接触する保護膜180が酸化物を含む場合、チャネル層の劣化を防止することができる。保護膜180は、ドレイン電極177を露出する第1コンタクトホール185と、ゲート線121の端部129を露出する第2コンタクトホール181と、データ線の端部179を露出する第3コンタクトホール182とを含む。第1コンタクトホール185を通じて画素電極191とドレイン電極177が接続されている。第2コンタクトホール181を通じて連結部材81とゲート線121の端部129が接続され、第3コンタクトホール182を通じて連結部材82とデータ線の端部179が接続されている。
【0101】
保護膜180の上に画素電極191を配置する。画素電極191は、ITO、IZO、及びAZOなどを含む透明な導電性酸化物を含み得る。連結部材81、82は、ゲート線の端部129の上、またはデータ線の端部179の上に配置される。連結部材81、82は、実質的に画素電極191と同じ材料で形成することができる。
【0102】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の種々の変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0103】
121、129 ゲート線
124 ゲート電極
154 酸化物半導体
171、179 データ線
173 ソース電極
175 ドレイン電極
191 画素電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛(Zn)及び錫(Sn)のうちの少なくとも一つの元素を含む第1物質、及び
前記第1物質に添加される第2物質を含み、
前記第1物質と酸素(O)との電気陰性度差値から前記第2物質と酸素(O)との電気陰性度差値を引いた値が1.3以下であることを特徴とする酸化物半導体。
【請求項2】
前記第1物質を構成する元素のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が0.35オングストローム(angstrom)以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項3】
前記第1物質の結晶構造は、正方晶(tetragonal)構造及び八角形(octagonal)構造のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2に記載の酸化物半導体。
【請求項4】
前記第2物質は、イットリウム(Y)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ランタン(La)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、チタニウム(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びシリコン(Si)のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の酸化物半導体。
【請求項5】
前記第1物質は、インジウム(In)及びガリウム(Ga)のうちの少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の酸化物半導体。
【請求項6】
前記第1物質は亜鉛酸化物(ZnO)であり、前記第1物質に含まれている亜鉛と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値が0.8以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項7】
前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が0.35オングストローム以下であることを特徴とする請求項6に記載の酸化物半導体。
【請求項8】
前記第1物質の結晶構造は、正方晶構造及び八角形構造のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7に記載の酸化物半導体。
【請求項9】
前記第1物質は錫酸化物(SnO)であり、前記第1物質に含まれている錫と酸素との電気陰性度差値から、前記第2物質と酸素との電気陰性度差値を引いた値が0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物半導体。
【請求項10】
前記第1物質のイオン半径と前記第2物質のイオン半径との差が0.8オングストローム以下であることを特徴とする請求項9に記載の酸化物半導体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−70052(P2013−70052A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201961(P2012−201961)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【出願人】(512187343)三星ディスプレイ株式會社 (73)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】95,Samsung 2 Ro,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do,Korea
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(512238508)
【Fターム(参考)】