説明

酸化物粒子分散液

【課題】容易に成膜でき、かつ低温焼成で半導体デバイスに好適な半導体薄膜が得られる分散液を提供する。
【解決手段】酸化物粒子、金属塩及び分散媒を含む分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液、それを用いた半導体薄膜及び半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(FET)は、半導体メモリ集積回路の単位電子素子、高周波信号増幅素子、液晶駆動用素子等として広く用いられており、現在最も多く実用化されている半導体デバイスである。
【0003】
その中でも、近年における表示装置のめざましい発展に伴い、液晶表示装置(LCD)のみならず、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置や、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の各種の表示装置において、表示素子に駆動電圧を印加して表示装置を駆動させるスイッチング素子として、電界効果型トランジスタ(FET)の1種である薄膜トランジスタ(TFT)が多用されている。
【0004】
その材料としては、シリコン半導体化合物が最も広く用いられている。一般に、高速動作が必要な高周波増幅素子、集積回路用素子等にはシリコン単結晶が用いられ、液晶駆動用素子等には、大面積化の要求からアモルファスシリコンが用いられている。
アモルファスシリコンは、比較的低温で形成できる利点を有するが、結晶性シリコンと比較してスイッチング速度が遅い。このため、表示装置を駆動するスイッチング素子として使用したときに、高速な動画の表示に追従できない場合がある。
【0005】
上記問題を解決する材料として酸化物半導体が提案されている。近年、室温プロセスで作製したアモルファス酸化物半導体を用いたフレキシブル薄膜トランジスタが報告されている。これによれば、プラスチック基板上に気相法によりアモルファスZnGaInO層が形成され、高い整流特性が得られている。
しかしながら、気相法は真空設備が必要であり、大面積の表示装置に適用するためには、真空設備が大掛かりかつ複雑となる。
【0006】
このため、塗布等の湿式プロセスによる半導体デバイスの製造が検討されている(特許文献1)。しかしながら、半導体微粒子を塗布して製造したTFTは、粒子間抵抗のために一般的に移動度、オン/オフ比等のTFT性能が悪く、TFT性能を向上するためには、微粒子を焼結して粒子間のキャリア移動度を向上させる必要がある。
【0007】
半導体微粒子の焼結は高温で行う必要がある。例えば、非特許文献2では、InとGaの原子比が1:1のクラスターを塗布して製造した薄膜を600℃で焼成している。
しかしながら、このような高温工程を設けると、高温に耐えうる基板を選定しなければならず、また、製造装置を高性能化する必要が生じる。これらは半導体デバイスの製造において大きな制約となる。
尚、非特許文献2に開示された方法は、我々の検討により、成膜性にも課題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−42690号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed.2008,47,9484‐9486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、容易に成膜でき、かつ低温焼成で半導体デバイスに好適な半導体薄膜が得られる分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下の分散液、半導体薄膜及び半導体デバイスが提供される。
1.酸化物粒子、金属塩及び分散媒を含む分散液。
2.前記酸化物粒子のBET粒子径が100nm以下である1に記載の分散液。
3.前記酸化物粒子がSn,Zn,In及びGaから選ばれる1以上の金属の酸化物である1又は2に記載の分散液。
4.前記酸化物粒子がコアシェル型粒子であり、Sn,Zn及びInから選ばれる1以上の金属の酸化物をコアとし、かつSn,Zn,In,Ga,Al,Ti,Zr,Hf及びCuから選ばれる1以上の金属の酸化物をシェルとする1〜3のいずれかに記載の分散液。
5.前記金属塩がSn,Zn,In及びGaから選ばれる1以上の金属の塩である1〜4のいずれかに記載の分散液。
6.前記金属塩がInの硝酸塩とGaの硝酸塩の混合物である1〜5のいずれかに記載の分散液。
7.1〜6のいずれかに記載の分散液から得られる半導体薄膜。
8.7に記載の半導体薄膜を半導体層として用いる半導体デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易に成膜でき、かつ低温焼成で半導体デバイスに好適な半導体薄膜が得られる分散液を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態である薄膜トランジスタの概略断面図である。
【図2】実施例1で作製した薄膜トランジスタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の分散液は、酸化物粒子、金属塩及び分散媒の混合物からなる。酸化物粒子を含むことにより成膜性が向上する。また、分散液から得られる半導体膜を使用して製造した半導体デバイスの動作特性、特にTFTの性能(移動度、オン/オフ比等)が向上する。
【0015】
酸化物粒子は好ましくは半導体粒子であり、半導体粒子は、バンドギャップが3.0eV以上、好ましくは3.1eV以上の金属酸化物の1種又は2種以上からなることが好ましい。これにより、透明な酸化物半導体膜が形成できる。
【0016】
バンドギャップが3.0eV以上である金属酸化物としては、SiO(8.95eV)、SnO(3.8〜4.0eV)、ZnO(3.3〜3.6eV)、In(3.6〜4.2eV)、Ga(4.8〜5.0eV)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
中でも、製造コストの観点からSnO及びZnOが好ましく、化学的な安定性の観点からSnOが好ましい。
また、高移動度の観点からSnO,ZnO及びInが好ましい。さらに、SnO又はZnOを用いると、稀少元素の使用を低減できるため好ましい。
【0017】
酸化物粒子は、BET法を用いて求めた粒子径(BET粒子径)が100nm以下(超微粒子)であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。粒子径が100nmを超えると、塗布膜が白濁し膜性が悪くなる可能性が生じる。100nm以下であれば、透明な塗布膜が得られ、これを半導体層に用いたTFTは、安定したTFT動作(移動度、オン/オフ比)が得られる。
【0018】
また、これらの酸化物粒子(コア粒子)の表面に、金属酸化物(シェル)を付着加熱処理して、コア粒子表面の少なくとも一部を被覆したコアシェル型微粒子を用いることによって、分散媒への分散性が向上し、形成される薄膜の膜質が均一で良好になるために、結果としてTFT動作にばらつきが少なくなる。
【0019】
被覆に用いる金属酸化物としてはSn,Zn,In,Ga,Al,Ti,Zr,Hf及びCuから選ばれる1以上の金属の酸化物が挙げられ、Zn,In,Gaが好ましい。
【0020】
被覆に用いる金属酸化物としてSn,Zn,In,Ga又はAlを用いると、その酸化物粒子を用いたFETは電界効果移動度が向上し、Ti,Zr又はHfを用いた場合、酸素を取り込みやすいためコアシェル型粒子の酸素欠損が低減され、キヤリア濃度を低減し良好なTFT性能とすることができる。
また、コアシェル型粒子を構成する他の金属元素に対して価数の低いCu等の元素を用いることによっても、キヤリア濃度を低減することができる。
【0021】
コアとシェルを形成する金属酸化物に透明のものを選択すれば、透明な酸化物粒子を形成できる。例えば、コアとして酸化錫又は酸化インジウム、シェルとしてインジウム−ガリウムアモルファス酸化物又はインジウム−ガリウム−亜鉛アモルファス酸化物を選択する。
【0022】
コアシェル型微粒子は、コア粒子に、少なくとも1種の金属化合物を溶解又は分散させた溶液を混合し、上記混合物を200〜800℃で反応させることにより製造できる。
【0023】
上記金属化合物は、上記シェルの金属酸化物に対応する金属化合物であり、好ましくは硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、水酸化物又はハロゲン化物であり、水和物であってもよい。コア粒子に上記の溶液を混合すると、コア粒子の表面に溶液が含浸する。混合は例えばボールミルにより1〜20時間行う。
【0024】
コアシェル型微粒子が形成されていることは、電子顕微鏡によって観察することは難しいが、コアシェル型微粒子のXRD分析において、コア粒子に起因する回折ピークのみが見られることや、コアシェル型微粒子の電気伝導性の測定において、電気伝導度にシェル物質の量依存性にピークが観察されること、等から判断することができる。
【0025】
次に、この混合物を200〜800℃、好ましくは300〜600℃で反応させて、上記の金属化合物に対応する金属酸化物を生成する。この金属酸化物は上記コア粒子の表面の少なくとも一部又は全部を覆う。
この反応は、例えば不活性ガス雰囲気(窒素等)又は大気雰囲気下で、例えば0.1〜10時間で行う。
【0026】
酸化物粒子は、後述する金属塩(金属塩溶液である場合は溶質)に対して5wt%以上75wt%以下用いることが好ましい。5wt%未満であると成膜性改良に効果が無い場合がある。一方、75wt%超であると、製造した半導体デバイス(特に、TFT)が安定した動作特性(移動度、オン/オフ比等)を示さない可能性がある。
【0027】
本発明の分散液に用いる金属塩としては、硝酸インジウム、硝酸ガリウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩、又は酢酸塩が挙げられる。金属塩を用いることにより、酸化物粒子のみからなる膜よりも高いTFT性能が得られる半導体膜を得ることができる。
金属塩は、好ましくはSn,Zn,In及びGaから選択される1以上の金属の硝酸塩又は酢酸塩であり、より好ましくはInの硝酸塩とGaの硝酸塩の混合物である。
【0028】
本発明の分散液の分散媒としては、水又は非水系溶媒が使用できる。非水系溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、芳香族系溶媒等が挙げられ、環境性から非芳香族系の溶媒が好ましい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、エタノール等のアルコール類が好ましい。これらは1種で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
本発明の分散液は、上述した酸化物粒子、金属塩及び分散媒の他に、界面活性剤等の市販の分散剤、例えばビッグケミー社のDISPERBYK2000(商品名)等を添加してもよい。
【0030】
尚、本発明の分散液は実質的に酸化物粒子、金属塩及び分散媒からなっていてもよい。
本発明において「実質的」とは、分散液としての効果が上記に起因すること、又は分散液の95重量%以上100重量%以下(好ましくは98重量%以上100重量%以下)が上記成分であることを意味する。
上記のように本発明の分散液は、実質的に酸化物粒子、金属塩及び分散媒からなっており、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0031】
本発明の分散液は、上述した酸化物粒子及び金属塩を分散媒に添加し、混合分散することにより得られる。例えば、酸化物粒子を直接金属塩溶液に添加し、ビーズミル等の分散機器に入れて数時間作動させて製造することができる。また、金属塩を含まない酸化物粒子の分散液を作製し、金属塩溶液と混合してもよい。
【0032】
本発明では、酸化物粒子の分散液と金属塩の溶液とを、それぞれ調製し、これらを混合して分散液とすることが好ましい。この場合、酸化物粒子の分散媒及び金属塩溶液の溶媒が本発明の分散液の分散媒である。
尚、本発明では、これらの成分を予め混合した状態で貯蔵してもよく、また、半導体膜作製の直前に混合してもよい。
【0033】
酸化物粒子の分散液は、上述した酸化物粒子を分散媒に分散したものであり、市販の酸化物粒子分散液を用いてもよい。
金属塩の溶液は、上述した金属塩を分散媒に溶解させたものである。特に、金属塩として、Inの硝酸塩とGaの硝酸塩の混合物であり、Inの硝酸塩1モルに対して、Gaの硝酸塩が0.01〜0.7モルである混合物が好ましい。この金属塩混合物をPGMEに溶解させた溶液は、アミン類を添加しなくとも非常に安定で固形分の沈降もないため好適である。
【0034】
金属塩溶液の金属塩濃度は、半導体デバイスで使用する半導体膜の要求に合わせて適宜調整することができる。例えば、TFTの半導体膜を形成する場合、TFTの半導体膜として機能する膜厚に成膜できる濃度にする。この濃度は通常1wt%以上である。上限としては、金属塩が凝集、沈降しない濃度である20wt%以下が好ましい。
【0035】
本発明の半導体薄膜は、本発明の分散液を用いて基材に塗布、乾燥し、焼成することで、容易に形成することができる。
塗布手段としては、スピンコーター法の他、例えば、印刷法、インクジェット方式、及びディスペンサー方式等の、基板又は基体に向かって分散液を吐出する方法が挙げられる。
半導体薄膜を形成する基材としては、薄膜トランジスタの場合、ゲート絶縁膜が挙げられる。
【0036】
塗布後、塗膜を加熱等により乾燥し、焼成処理して成膜する。
乾燥は通常、分散剤が蒸発して固形分(溶質)の薄膜が形成されるまで行なう。乾燥は、不活性ガス雰囲気中又は大気雰囲気中で行なうことができる。乾燥温度と乾燥時間は、膜の形成状態を考慮して、適宜設定できる。例えば、室温〜100℃程度、5分〜1時間程度である。
乾燥後、焼成処理を行うことで半導体デバイス(TFT)の性能が向上し、高い移動度を得ることができる。
【0037】
焼成の条件は特に限定されないが、焼成温度は50℃〜500℃が好適であり、さらに好ましくは100℃〜300℃であり、特に好適には150℃〜300℃である。これ以下の温度では十分な移動度が得られず、またこれ以上の温度では半導体デバイスの性能が飽和するためエネルギーの無駄となるおそれがある。
【0038】
また、焼成処理を初めに窒素雰囲気で行い、次いで大気雰囲気で行うことも、半導体デバイス(TFT)の性能向上に効果的である。その理由は明確ではないが、大気雰囲気での焼成により酸素欠陥が修復され、過剰なキャリヤー(電荷)が少なくなるためと考えられる。
【0039】
本発明の半導体デバイスは、上述した本発明の半導体薄膜を有していればよく、他については、公知の部材、構成が適用できる。半導体デバイスとしては、電界効果型トランジスタ(FET)、バイポーラトランジスタ、積層型半導体装置、発光素子等を挙げることができる。
以下、本発明の半導体デバイスの一実施形態として、TFTについて説明する。
【0040】
図1は、本発明の半導体デバイスの一実施形態である薄膜トランジスタの概略断面図である。
薄膜トランジスタ1は、基板(ゲート電極)10上に絶縁膜20を有し、絶縁膜20上に所定の間隔をあけて形成された一対のソース電極30及びドレイン電極40を有し、ソース電極30及びドレイン電極40の間の絶縁膜20を覆うようにチャネル層50が設けられている。
チャネル層50が本発明の分散液から形成した薄膜からなる。
本実施形態では、基板10がゲート電極を兼ねており、基板10に印加される電圧によってソース電極30とドレイン電極40の間のチャネル層50に流れる電流が制御されることで、薄膜トランジスタ1がオン/オフ動作する。
【実施例】
【0041】
実施例1
(1)金属塩溶液の調製
硝酸ガリウム・8水和物0.60g(0.0015mol)、硝酸インジウム・3水和物4.79g(0.0135mol)、1−メトキシ−2−プロパノール45.01gを容器にとり、室温で7時間撹拌した。16時間静置後、さらに4時間撹拌した。孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過して金属塩溶液(以下IGOゾル)を得た。
【0042】
(2)金属塩溶液と酸化物微粒子分散液の混合溶液(分散液)の調製
上記IGOゾル1gをサンプル瓶に秤量し、これに市販のシリカゾルであるスノーテックスO(日産化学工業株式会社製、20wt%、BET粒子径20nm)溶液0.045gを添加し、超音波洗浄器にて4時間分散させ、混合溶液を得た。
【0043】
(3)薄膜トランジスタ(TFT)の作製
図2に示すトップコンタクト型のTFT2を作製した。
300nm厚みの熱酸化膜(SiO膜)付きの導電性シリコン基板を使用した。熱酸化膜がゲート絶縁膜20として機能し、導電性シリコン部がゲート電極10として機能する。
【0044】
この基板上に、上記(2)の分散液をスピンコーターで塗布し、大気雰囲気にて100℃30分間乾燥し、その後、窒素雰囲気のグローブボックス内に入れ、ホットプレートにて270℃で1時間焼成し、その後大気中にてさらに300℃で1時間焼成処理を行い、薄膜(チャネル層)50を作製した。
尚、上記100℃30分間の乾燥の前に、大気下で1時間静置し、膜の安定性を目視で評価した。膜が吸湿してやせ細る等の変化は見られず、安定性に優れることが明らかになった。
【0045】
その後、金属マスクを用いてチャネル部の両端付近に金を蒸着し、ソース電極30及びドレイン電極40を形成した。ソース・ドレイン電極間の間隙200μm、幅3000μmのチャネル部を有するTFT2を作製した。
【0046】
作製したTFTについて、ソース−ドレイン間電流Idsを測定した。Idsの測定は、半導体パラメータアナライザー(ケースレー4200)を用い、室温、遮光環境下で、ソース−ドレイン間の電圧を30Vに固定して、ゲート電圧を−100Vから+30Vまで変化させて行った。
移動度及びドレイン電流の最大値と最小値の比(オン/オフ比)を算出し、TFT特性の目安とした。TFT特性は良好であった。結果を表1に示す。
【0047】
実施例2
(1)半導体微粒子分散液の調製
酸化錫超微粒子(三菱マテリアル株式会社製、商品名S−1、BET粒子径20nm)0.04gをPGME4gに添加し、市販の分散剤(BYK−2000:ビックケミージャパン株式会社製、高分子量タイプ湿潤分散剤)0.004gをさらに添加して、超音波洗浄機にて4時間分散させて半導体微粒子分散液を調製した。
【0048】
(2)混合溶液(分散液)の調製
実施例1(1)のIGOゾル(金属塩溶液)0.5gをサンプル瓶に秤量し、これに上記の半導体微粒子分散液2.5gを添加し、超音波洗浄器にて4時間分散させて混合溶液を得た。
素子加熱条件を270℃窒素雰囲気1時間、さらに大気中にて250℃1時間とした他は実施例1と同様にTFTを作製し、成膜性、移動度、オン/オフ比を評価した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例3
(1)コアシェル型半導体微粒子の調製
酸化錫超微粒子(三菱マテリアル株式会社製、商品名S−1、BET粒子径20nm)を9.348g秤量し、硝酸インジウム・3水和物0.22g、硝酸ガリウム・8水和物0.248g及び硝酸亜鉛・6水和物0.184gを水2gに混合、溶解した水溶液をこれに加え、遊星ボールミルにて2時間混合した。
水を含む混合物を乾燥機にて90℃で3時間、大気雰囲気下で乾燥した後、500℃で30分間焼成し、淡黄色の微粒子酸化物を得た。この微粒子のBET粒子径は22nmであった。
【0050】
コアシェル型粒子であることは、XRD測定において、コア粒子に由来する回折ピークのみが観察されたことから判断した。
【0051】
(2)分散液の調製、TFT評価
上記半導体微粒子0.04gをPGME4gに添加し、超音波洗浄機にて4時間分散させて半導体微粒子分散液を調製した。
実施例1(1)のIGOゾル(金属塩溶液)1gをサンプル瓶に秤量し、これに上記の半導体微粒子分散液1.0gを添加し、超音波洗浄器にて4時間分散させて混合溶液(分散液)を得た。
素子加熱条件を270℃窒素雰囲気1時間、さらに大気中にて250℃1時間とした他は実施例1と同様にTFTを作製し、成膜性、移動度、オン/オフ比を評価した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例4
(1)コアシェル型半導体微粒子の調製
酸化錫超微粒子(三菱マテリアル株式会社製、商品名S−1、BET粒子径20nm)を9.333g秤量し、硝酸インジウム・3水和物0.593g及び硝酸ガリウム・8水和物0.074gを水2gに混合、溶解した水溶液をこれに加え、遊星ボールミルにて2時間混合した。
水を含む混合物を乾燥機にて90℃で3時間、大気雰囲気下で乾燥した後、500℃で30分間焼成し、淡黄色の微粒子酸化物を得た。この微粒子のBET粒子径は22nmであった。
【0053】
コアシェル型粒子であることは、XRD測定において、コア粒子に由来する回折ピークのみが観察されたことから判断した。
【0054】
(2)分散液の調製、TFT評価
上記半導体微粒子0.04gをPGME4gに添加し、超音波洗浄機にて4時間分散させ、半導体微粒子分散液を調製した。
実施例1(1)のIGOゾル(金属塩溶液)0.5gをサンプル瓶に秤量し、これに上記の半導体微粒子分散液1.0gを添加し、超音波洗浄器にて4時間分散させて混合溶液(分散液)を得た。
素子加熱条件を270℃窒素雰囲気1時間、さらに大気中にて250℃1時間とした他は実施例1と同様にTFTを作製し、成膜性、移動度、オン/オフ比を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
実施例5
(1)コアシェル型半導体微粒子の調製
酸化インジウム微粒子(アジア物性株式会社製、BET比表面積27m/g、BET粒子径27nm)を9.279g秤量し、硝酸インジウム・3水和物0.64g及び硝酸ガリウム・8水和物0.08gを水2gに混合、溶解した水溶液をこれに加え、遊星ボールミルにて2時間混合した。
水を含む混合物を乾燥機にて90℃で3時間、大気雰囲気下で乾燥した後、500℃で30分間焼成し、淡黄色の微粒子酸化物を得た。この微粒子のBET粒子径は21nmであった。
【0056】
コアシェル型粒子であることは、XRD測定において、コア粒子に由来する回折ピークのみが観察されたことから判断した。
【0057】
(2)分散液の調製、TFT評価
上記半導体微粒子0.04gをPGME4gに添加し、超音波洗浄機にて4時間分散させて半導体微粒子分散液を調製した。
実施例1(1)のIGOゾル(金属塩溶液)0.75gをサンプル瓶に秤量し、これに上記の半導体微粒子分散液1.0gを添加し、超音波洗浄器にて4時間分散させて混合溶液(分散液)を得た。
素子加熱条件を270℃窒素雰囲気1時間、さらに大気中にて250℃1時間とした他は実施例1と同様にTFTを作製し、成膜性、移動度、オン/オフ比を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
比較例1
実施例1(1)のIGOゾル(金属塩溶液)を用いて、実施例1と同様にしてTFTを作製した。大気中で静置したところ膜が吸湿してやせ細り、膜形状を保つことができず性能評価に至らなかった。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の分散液は、半導体デバイスで使用する半導体薄膜形成液として好適である。本発明の半導体薄膜は、薄膜トランジスタ等、各種半導体デバイスに使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1,2 薄膜トランジスタ
10 基板(ゲート電極)
20 絶縁膜
30 ソース電極
40 ドレイン電極
50 チャネル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物粒子、金属塩及び分散媒を含む分散液。
【請求項2】
前記酸化物粒子のBET粒子径が100nm以下である請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記酸化物粒子がSn,Zn,In及びGaから選ばれる1以上の金属の酸化物である請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
前記酸化物粒子がコアシェル型粒子であり、Sn,Zn及びInから選ばれる1以上の金属の酸化物をコアとし、かつSn,Zn,In,Ga,Al,Ti,Zr,Hf及びCuから選ばれる1以上の金属の酸化物をシェルとする請求項1〜3のいずれかに記載の分散液。
【請求項5】
前記金属塩がSn,Zn,In及びGaから選ばれる1以上の金属の塩である請求項1〜4のいずれかに記載の分散液。
【請求項6】
前記金属塩がInの硝酸塩とGaの硝酸塩の混合物である請求項1〜5のいずれかに記載の分散液。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の分散液から得られる半導体薄膜。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体薄膜を半導体層として用いる半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−42086(P2013−42086A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179739(P2011−179739)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】