説明

酸化物被膜の製造方法

【課題】 簡便な方法によって、酸化物被膜の成膜と同時に、当該被膜の表面に制御性良く凸部を形成できる、新規な製造方法を提供する。
【解決手段】 質量平均分子量が200以上の水溶性有機化合物が添加された、金属原子またはケイ素原子を含むフルオロ錯体と、当該フルオロ錯体からフッ素イオンを化学的に捕捉する捕捉剤とを含む処理液1に、基体2を浸漬する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物被膜の製造方法に関し、さらに詳しくは、液相析出法を用いて酸化物被膜を形成するとともに、当該被膜の表面に凸部を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料や光学材料などの分野において、酸化物被膜の比表面積を増加させる目的から、酸化物被膜の表面に凸部構造を形成する技術が盛んに研究されている。比表面積を大きくすると、表面の活性化、表面の濡れ性の向上、光学特性の制御などが可能となる。これまでに、サンドブラスト法や粗研磨法などの機械的手法やエッチング法などの化学的手法による、成膜後に表面を研削する技術や、化学気相成長法(CVD法)などの気相法やゾルゲル法などの液相法による、被膜の成膜と凸部構造の形成とを一括して行う技術(例えば、特許文献1〜3参照)が提案されている。
【0003】
液相析出法(Liquid Phase Deposition Method:LPD法)は、液相から酸化物被膜を合成する技術の一つであり、大型の設備や複雑な作業工程を必要としないため、酸化物被膜の成膜作業を省エネルギー化させ得るものとして注目されている。例えば特許文献4は、フルオロ錯体のアンモニウム塩を用いることにより、厚さが均一な酸化物被膜を形成するLPD法を開示している。
【特許文献1】特開2001−17907号公報
【特許文献2】特開2002−105642号公報
【特許文献3】特開平9−178903号公報
【特許文献4】特開平4−338136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献4に代表される従来のLPD法では、基体上に被膜を形成するのと同時に、当該被膜の表面に制御性良く凸部を形成できない。
【0005】
そこで、本発明は、LPD法を用いつつも、酸化物被膜の表面に制御性良く凸部を形成できる、新規な方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の酸化物被膜の製造方法は、金属原子またはケイ素原子を含むフルオロ錯体と、当該フルオロ錯体からフッ素イオンを化学的に捕捉する捕捉剤と、を含む処理液に基体を浸漬し、前記金属原子またはケイ素原子を含む酸化物を前記基体上に析出させる酸化物被膜の製造方法において、前記処理液に質量平均分子量が200以上の水溶性有機化合物を添加することにより、前記処理液中に析出する前記酸化物の粒子の成長を促進し、前記粒子に由来する凸部を前記被膜の表面に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便な方法によって、制御された凸部を有する酸化物被膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記処理液は、LPD法にかかる酸化物被膜形成用の処理溶液、例えば水溶液であり、金属原子またはケイ素原子を中心原子として含み、この中心原子に配位する配位子としてフッ素原子を含むフルオロ錯体と、当該フルオロ錯体からフッ素イオンを化学的に捕捉する捕捉剤とを含んでいる。本明細書では、配位子としてフッ素を含む錯体を、その錯体が他の配位子を含むか否かにかかわらず、フルオロ錯体と呼ぶ。
【0009】
この処理液中では、以下の化学式(1)で表されるフルオロ錯体の加水分解平衡反応系が成立している。
(化1)
[MF6-x(OH)x]2-+(6−x)H2O⇔[M(OH)6]2-+(6−x)HF ・・・(1)
ただし、式中のMは金属原子またはケイ素原子であり、また、xは通常0〜5の整数であるが化学量論比から外れる場合も含む。
【0010】
ここで、フッ素イオンとの反応性が高く、より安定したフルオロ錯体やフッ化物を生成しうる捕捉剤を加えることで、上記化学式(1)で表される平衡反応系中のフッ化水素が消費されると、当該平衡反応系が[M(OH)6]2-が生成する方向へシフトする。そして、以下の化学式(2)のように、この[M(OH)6]2-が脱水縮合反応を起こして、MO2で示される酸化物が析出する。なお、この酸化物は、2種以上の金属原子または金属原子およびケイ素原子を含んだ複合酸化物であってもよい。
【0011】
(化2)
[M(OH)6]2-⇒MO2 ・・・(2)
【0012】
本発明によれば、その詳細は後述するが、処理液中に添加した水溶性有機化合物の作用により、被膜を形成しつつ、その表面形状を制御することができる。当該水溶性有機化合物の添加量などを調整すると、凸部構造の粗密性やサイズなどを制御することができる。
【0013】
上記金属原子としては、例えばTi、Fe、Sn、Zn、V、Zr、WおよびInからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。なかでも、金属原子をSnとする場合には、他の金属原子を用いた場合に比して、酸化物膜の成膜レートを高めることができる。Snを利用すると成膜レートが高まる理由は定かではないが、Snは様々な水和物の形態をとり得るため、溶液中での安定性が高いことに起因するのではないかと考えられる。溶液中での安定性が高いと、成膜温度条件の揺らぎに対しての安定性も高くなるからである。
【0014】
上記フルオロ錯体の供給源としては、例えば、チタンフッ化水素酸(H2TiF6)やジルコニウムフッ化水素酸(H2ZrF6)などの金属フッ化水素酸、ケイフッ化水素酸(H2SiF6)、チタンフッ化アンモニウム((NH42TiF6)やジルコニウムフッ化アンモニウム((NH42ZrF6)などの金属フッ化アンモニウム、および、ケイフッ化アンモニウム((NH42SiF6)などを、単独でまたは混合して使用することができる。
【0015】
上記捕捉剤としては、例えば、ホウ酸(H3BO3)、FeCl2、FeCl3、NaOH、NH3、Al、Ti、Fe、Ni、Mg、Cu、Zn、Si、SiO2、CaO、B23、Al23、MgOなどを用いることができる。ホウ酸(H3BO3)を用いると、目的とする酸化物粒子以外の不純物が処理液中で析出しにくくなるため好ましい。
【0016】
上記水溶性有機化合物としては、微粒子表面に吸着して当該微粒子の分散性を向上させるもの、特に微粒子表面への吸着性に優れる化合物が好ましく、例えば、セルロース誘導体または繰り返し単位に窒素原子もしくは酸素原子を含む重合体、具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)およびポリエチレンオキシド(PEO)からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0017】
水溶性有機化合物の質量平均分子量は200以上であり、500以上100000以下の範囲にあることが好ましい。一般に、微粒子の凝集はファンデルワールス力によって引き起こされる。質量平均分子量を上記範囲とすると、微粒子表面に吸着した水溶性有機化合物の厚みがファンデルワールス力の及ぶ距離(約1nm〜5nm)を上回るようになり、粒子の成長が不十分な段階で凝集して被膜の一部となることを抑制できる。さらに上記好ましい範囲とすると、当該抑制作用が一層発揮させることができる。この結果、処理液中での粒成長を促進でき、個々の凸部構造を肥大化させることができる。なお、質量平均分子量が100000を超えると、沈殿物の量が多量になり成膜が阻害される場合がある。
【0018】
また、処理液におけるフルオロ錯体に対する水溶性有機化合物のモル比を、以下のa)またはb)の関係を満たす範囲とすると、被膜の表面に積極的に凸部構造を形成することができるため好ましい
a)前記水溶性有機化合物の質量平均分子量が500以上1000未満の範囲にあり、前記モル比が1以上10以下の範囲にある。
b)前記水溶性有機化合物の質量平均分子量が1000以上100000以下の範囲にあり、前記モル比が0.01以上1以下の範囲にある。
【0019】
処理液への水溶性有機化合物の添加は、例えばチュービングポンプなどを使用して連続的に行ってもよいし、チュービングポンプとタイマーなどを組み合わせて、一定時間毎に間欠的に添加してもよい。また、間欠的な添加と連続的な添加を交互に行ってもよい。さらに、基体を処理液に浸漬する前に添加しておいてもよいし、浸漬中に添加してもよい。
【0020】
上記基体の材料としては、LPD法を適用可能な材料の中から用途に応じて適宜選択すればよい。例えばシリコン(Si)、ガラス、セラミックス、樹脂などを用いることができる。
【0021】
処理液に基体を浸漬する際は、処理液に対して耐久性のある治具を用いて、基体を反応容器内に直接固定したり、上部から吊り下げたりしてもよい。なお、このような耐久性を有する治具の材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、メチルペンテン樹脂などが挙げられる。
【0022】
基体を処理液に浸漬する前には、基体を洗浄して有機物などの不純物を除去しておくことが好ましい。例えば基体の材料をガラスとする場合には、アルカリ洗浄した後に、純水洗浄することが好ましい。
【0023】
被膜に形成する凸部構造の配列、形状およびサイズを均質化するには、処理液中のフルオロ錯体、捕捉剤および水溶性有機化合物の分布が一定となるように調整することが好ましい。例えば処理液中で基体を搖動させるとよい。なお、処理液の対流が過剰になると均質な凸部構造が形成されにくくなるので、基板の設計に応じて搖動の速度、加速度、搖動幅などの条件を適宜選択して、過剰な対流の発生を避けることが好ましい。また、上記処理液中の濃度分布の調整は、処理液を撹拌したり、超音波を照射したりして行ってもよい。処理液を撹拌する場合には、水溶性有機化合物が吸着する前に析出物が基体に近づいてしまわないように、析出物を堆積させる対象領域を避けて撹拌作業を行うことが好ましい。例えば、基体を反応容器の底部に固定しつつ、プロペラを用いて処理液の上側領域を撹拌したり、基体を浸漬する容器に連通管でサブタンクを繋げ、当該サブタンク内で撹拌させた処理液を浸漬用の容器中へと自然拡散させたりしてもよい。
【0024】
また、得られた被膜を焼成し、水溶性有機化合物に由来する有機成分を除去してもよい。ここで、急激な加熱や冷却を行うと被膜にクラックが発生してしまう場合があるため、焼成条件としては、これを避けるようにしつつ、水溶性有機化合物に由来する有機成分を除去可能な温度および時間を適宜設定することが好ましい。具体的には、焼成時の温度の昇降速度を制御して、一定時間毎に昇温させたり、降温させたりすればよい。なお、設定する温度や時間については、被膜の設計条件に応じて適宜選択すればよい。焼成温度は、例えば200℃以上、さらには300℃以上、場合によっては500℃以上としてもよい。
【0025】
本発明によれば、比表面積が大きく、また、表面に設けられた凸部構造の配列、形状およびサイズが制御された酸化物被膜を製造できる。この酸化物被膜では、被膜表面の電気的または光学的な活性や、表面の濡れ性を向上させたりできるため、例えば各種電子材料や光学材料、化学分析などの分野における半導体式センサや触媒材料として有用である。
【0026】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
まず、フッ化スズ粉末を、Snの濃度が1.5mol/Lとなるようにフッ化水素水に溶解させた主溶液を用意した。また、フッ素イオンの捕捉剤として、0.5mol/Lの濃度のホウ酸水溶液を用意した。さらに、水溶性有機化合物の溶液として、0.05mol/Lの濃度のポリビニルピロリドン(PVP)水溶液を用意した。なお、用いたPVPの質量平均分子量は10000である。
【0028】
上記主溶液とホウ酸水溶液とPVP水溶液とを混合しつつ、適当量の純水で希釈して、Snの濃度が0.03mol/L、ホウ酸濃度が0.45mol/L、PVP濃度が0.001mol/Lである処理液1を調製した。
【0029】
これと並行して、シリコン(Si)基板2を用意した。なお、このSi基板のサイズは30mm×30mmである。
【0030】
次に、図1で示すように、容器3に収容した処理液1にSi基板2を2時間浸漬し、基板の表面にSnO2の被膜を成長させた。その後、基板を処理液から引き上げ、基板および被膜の表面を純水で洗浄し、室温で24時間以上静置して被膜を乾燥させ、被膜の表面および表面付近の吸着水を除去した。
【0031】
乾燥後の基板を被膜とともに劈開して、基板を複数の基板片に分割した。
【0032】
一部の基板片を800℃の熱風循環炉中に2時間放置して被膜を焼成し、被膜中から水溶性有機化合物(PVP)に由来する有機成分を除去した。
【0033】
[実施例2]
水溶性有機化合物としてポリエチレングリコール(PEG)を用い、処理液中のPEG濃度を0.1mol/Lとしたこと以外は、実施例1と同様にしてSnO2の被膜を作製した。なお、用いたPEGの質量平均分子量は600である。
【0034】
[実施例3]
処理液中のPVP濃度を0.01mol/L(実施例1の10倍の濃度)としたこと以外は、実施例1と同様にしてSnO2の被膜を作製した。
【0035】
[実施例4]
基板を搖動させながら処理液中に浸漬したこと以外は、実施例1と同様にしてSnO2の被膜を作製した。図7で示すように、上下動機構4のシャフト41に接続されたクランプ42でSi基板2を保持し、処理液1中で上下方向に、平均速度20mm/秒以下で基板を搖動させた。なお、この上下動機構4としては、例えば、ギヤ・クランク機構やリニアモータなどによって上下動するものを用いてよい。
【0036】
[比較例1]
水溶性有機化合物を添加せずに処理液を調製したこと以外は、実施例1と同様にしてSnO2の被膜を作製した。
【0037】
上記実施例1にかかる基板片の焼成前の被膜と、焼成後の被膜とを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。得られたSEM画像を図2と図3にそれぞれ示す。なお、各SEM画像は、被膜の劈開面を観察方向に対して30度傾けて配置し、加速電圧を10kV、照射電流を10μA、倍率を2万倍に設定して撮影したものである。
【0038】
さらに、上記実施例2および実施例3にかかる基板片の焼成後の被膜をSEM観察し、同様の撮影条件でそれぞれのSEM画像を取得した。得られたSEM画像を図4と図6にそれぞれ示す。また、同様にして、上記比較例1についてもSEM画像を取得した。このSEM画像を図5に示す。
【0039】
図2で示すように、実施例1にかかる焼成前の被膜の表面において、約150nmの厚みの酸化物被膜に対して、300nm以上の径と高さとを有する凸部構造が多数形成されていた。また、図3で示すように、実施例1にかかる焼成後の被膜の表面においても、同様に、約150nmの厚みの酸化物被膜に対して、300nm以上の径と高さとを有する凸部構造が多数形成されていた。
【0040】
また、図4で示すように、実施例2にかかる焼成後の被膜の表面において、約150nmの厚みの酸化物被膜に対して、300nm以上の径と高さとを有する凸部構造が形成されていた。また、図6で示すように、実施例3にかかる焼成後の被膜の表面において、約150nmの厚みの酸化物被膜に対して、300nm以上の幅を有し、一方向に伸びた凸形状の構造が多数形成されていた。
【0041】
他方、図5で示すように、比較例1にかかる焼成後の被膜の表面においては、図2〜4、6に見られる凸部構造状のものが若干観察されるものの、それぞれのサイズが小さく、また、その分布もまばらであった。
【0042】
上記実施例1〜2と比較例1との比較により、水溶性有機化合物を処理液中に添加した場合には、被膜の表面に形成する凸部構造を大きく、また、それぞれが密に配列するように制御できることが判った。
【0043】
また、上記実施例1にかかる焼成前と焼成後の被膜のSEM画像の比較により、成膜後の被膜を焼成しても、被膜の表面に形成した凸部構造を維持できることが判った。なお、焼成により被膜中の水溶性有機化合物を除去して当該被膜を無機膜化すると、被膜の熱的安定性および長期耐久性を向上することができる。
【0044】
また、上記実施例1と実施例3との比較により、処理液中に添加する水溶性有機化合物の濃度を調整すると、被膜の表面に形成する凸部構造のサイズや粗密性を制御できることが判った。
【0045】
サイズや粗密性の制御にかかる作用機序については定かではないが、水溶性有機化合物の添加濃度を増やすとサイズが大きくなる理由については次のように考えられる。まず、水溶性有機化合物の添加濃度を増やすと、溶液中で形成される金属酸化物の微粒子に吸着する水溶性有機化合物の量が多くなり、微粒子が分散されやすくなる。金属酸化物の微粒子は、確率的に基板に衝突するまでに、分散状態でもそのサイズを成長させるため、微粒子が分散されている時間が長くなると、微粒子のサイズ成長が溶液中で進行することになる。これにより、基板上に析出する酸化物粒子の凸部構造が、粒子が連なったような、一方向に伸びた凸形状となる。
【0046】
また、図面では示していないが、実施例1と実施例4とにかかる被膜の表面の干渉色を目視によって評価したところ、実施例4の被膜の方では、干渉色の色斑が確認されず、基板面内で均一な干渉色を示していたことから、基板面内における凸部構造の形状および配置の均一性に優れることが判った。すなわち、基板を搖動させながら成膜することにより、凸部構造の均一性をさらに高められることが判った。
【0047】
以上説明したように、水溶性有機化合物が添加された酸化物被膜形成用の処理液を用いることにより、簡便な方法によって、酸化物被膜の成膜と同時に、処理液中に析出する酸化物粒子に由来した凸部構造を、当該被膜の表面に制御性良く形成できることが判った。
【0048】
なお、このように凸部構造を制御性良く形成できる理由としては、以下のように考えられる。水溶性有機化合物が添加された酸化物被膜形成用の処理液を用いると、処理液中に析出してくる酸化物の粒子表面に水溶性有機化合物の膜を所定の厚みで付着させることができ、成長が不十分な段階の微粒子がファンデルワールス力によって凝集されて被膜の一部となることを抑制できる。この結果、それぞれの酸化物粒子の成長を促進させて凸部構造のサイズを増加できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、簡便な方法により酸化物被膜の表面に制御性良く凸部構造を形成することができるため、被膜の比表面積を増加させて、被膜表面の電気的または光学的な活性や、表面の濡れ性を向上させることにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】処理液への基板の浸漬を説明するための図である。
【図2】実施例1における焼成前のSnO2膜のSEM写真である。
【図3】実施例1における焼成後のSnO2膜のSEM写真ある。
【図4】実施例2における焼成後のSnO2膜のSEM写真である。
【図5】比較例1における焼成後のSnO2膜のSEM写真である。
【図6】実施例3における焼成後のSnO2膜のSEM写真である。
【図7】処理液に浸漬させつつ、上下方向に基板を搖動させるための装置構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1:処理液
2:基体(Si基板)
3:容器
4:上下動機構
41:シャフト
42:クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原子またはケイ素原子を含むフルオロ錯体と、当該フルオロ錯体からフッ素イオンを化学的に捕捉する捕捉剤と、を含む処理液に基体を浸漬し、前記金属原子またはケイ素原子を含む酸化物を前記基体上に析出させる酸化物被膜の製造方法において、
前記処理液に質量平均分子量が200以上の水溶性有機化合物を添加することにより、前記処理液中に析出する前記酸化物の粒子の成長を促進し、前記粒子に由来する凸部を前記被膜の表面に形成することを特徴とする酸化物被膜の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性有機化合物の質量平均分子量が、500以上100000以下の範囲にある請求項1に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項3】
前記処理液における前記フルオロ錯体に対する前記水溶性有機化合物のモル比が、以下のa)またはb)の関係を満たす請求項1または2に記載の酸化物被膜の製造方法。
a)前記水溶性有機化合物の質量平均分子量が500以上1000未満の範囲にあり、前記モル比が1以上10以下の範囲にある。
b)前記水溶性有機化合物の質量平均分子量が1000以上100000以下の範囲にあり、前記モル比が0.01以上1以下の範囲にある。
【請求項4】
前記水溶性有機化合物が、セルロース誘導体または繰り返し単位に窒素原子もしくは酸素原子を含む重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性有機化合物が、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドおよびポリエチレンオキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項6】
前記金属原子がSnである請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項7】
前記金属原子が、Ti、Fe、Sn、Zn、V、Zr、WおよびInからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項8】
前記凸部を表面に形成した酸化物被膜を焼成する工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項9】
前記基体を搖動させながら前記処理液に浸漬する請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項10】
前記水溶性有機化合物の添加を、前記基体の浸漬前または浸漬中に行う請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。
【請求項11】
前記水溶性有機化合物の添加を、前記基体の浸漬中に間欠的および/または連続的に行う請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸化物被膜の製造方法。

【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−256896(P2006−256896A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75562(P2005−75562)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】