説明

酸素吸収プラスチック構造

複数層酸素捕捉構造は、少なくとも2つの反応性酸素捕捉層を有している。酸素透過性の基材ポリマーと酸素捕捉剤とを含む高速吸収高反応性酸素捕捉システムと、高受動酸素バリアの基材ポリマーと酸素捕捉剤とを含む長寿命層と、が順番に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸素に敏感に反応してしまう製品をパッケージするのに適し、さらに、水分拡散および遷移金属系触媒とは関係なく、シール後のパッケージ中に捕獲された残留酸素を吸収し、かつ酸素透過に対して非常に敏感に反応するバリア(障壁)を提供する能力を有し、熱シール可能なプラスチックフィルムおよびシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの医薬品は水分に敏感であり、その機能(効能)を保持するために乾燥した保存環境を必要とする。いくつかのより新しい薬剤も酸素雰囲気に敏感であり、そのパッケージ中の酸素の存在により必須の製品成分が急速に酸化されてしまう結果、その機能(効能)が失われて製品寿命が短くなってしまう。一般の医薬品は、錠剤、カプセル、ジェルキャップおよび他の固形の1回分の製剤を含み、これらは通常“錠剤”と呼ばれている。多くの医薬品のパッケージに対する保存要求は、少なくとも2年の有効期間の要求を含む。図1に示されるようなブリスターパックは、金属ホイル(箔)と熱シール可能なプラスチックシートの間に個々の錠剤を封入するために便利な方法を提供する。そのブリスターパックにおいては、個々の空洞に1つづつ錠剤が封入されるように熱成形によって空洞のセット(組)が作られる。そのようなブリスターパックは、個々の錠剤を、パッケージ内の他の錠剤を外気にさらすことなくパッケージから取り出すことを可能にする。
【0003】
パッケージのシール後の製品内の酸素、すなわちパッケージの上部空間および壁の中に存在する酸素が、残留酸素と称される。高い“受動”バリアを持つパッケージ用の材料および構造を用いることで、あるいはそれらを、真空パッケージ法や上部空間へ不活性ガスを充填させる方法と組み合わせることで、パッケージされた製品の酸化による変質を緩く(小さく)及び/又は遅くすることができる。酸素透過に対する受動バリアは、容器の壁を通り抜けてしまう酸素の拡散輸送を減少あるいは除去し、その際に酸素と化学的に相互作用することのない物理的なバリアとして機能する。これらの保護方法は、要求される保存期間を提供しかつ製品機能(効能)の低下を防ぐには往々にして不十分である。
【0004】
酸素に敏感な製品の寿命を延ばすための初期の“能動”パッケージ方法は、パッケージ内部を低酸素雰囲気に維持するために、パッケージ内部に化学反応型の酸素吸収剤を配置していた。保存条件での不可逆的な化学反応過程において酸素を吸収可能な材料は、一般に酸素補足剤(スカベンジャー)と呼ばれる。酸素補足剤は、分離されたポーチあるいは小袋の形態でパッケージ内部に収納されて、残留酸素量を減少させかつ透過してくる酸素と反応する。しかしながら、酸素補足剤は、通常の拡散によって容器壁を通る酸素の侵入を防ぐことはできない。それゆえに、低い酸素透過性を持つ高“受動”バリア材料の形態での追加のバリア保護が求められる。パッケージを通して透過してくる酸素は、捕捉剤と、酸素に敏感な製品によって、競合的に消費される。不安定性の高い製品にとって、パッケージされた製品の優先的な酸化を防ぐために、収納された捕捉剤と酸素との過度に高い反応がしばしば要求される。ペット、子供および大人の消費者が小袋あるいはその中身を飲み込む可能性が小袋利用の問題として存在する。
【0005】
酸素捕捉剤の収納を制限する観点から、酸素捕捉剤を容器の壁を構成するパッケージ材料中に混合することが提案されている。そのような構造は、酸素透過に対する“能動バリア”と呼ばれる。その理由は、その構造がバリアを通過する酸素拡散率を物理的に制限するのみならず透過酸素と化学的に反応して、実効酸素透過率を減少させるからである。そのような能動バリアは、収納された吸収体(捕捉剤)と同様にパッケージ内部に捕捉された酸素を潜在的に吸収することができることからも有効である。Solovyov とGoldmanによる文献、Int. J. Polym. Mater. 2005, vol. 54, pp. 71−91 に記載されているように、最小の酸素透過率および最大のバリアの改善は、高速に反応する酸素捕捉種が、最高のバリアマトリックス材料(基材)、特に内部での酸素拡散係数が最小であるバリア基材中に配される場合に得られる。
バリア改善ファクターは、受動バリア層を通る実効酸素流束(フラックス)に対する、本質的に同じ基材で作られた能動バリア層を通る実効酸素流束の比として定義される。このように、バリア改善要素は、構造自体のバリア機能よりもむしろ化学反応に起因する相対的な透過率の低減を特徴づける。実効流束の概念は、バリアの下流境界(例えば、パッケージ内容に対面する境界)を横切るネット拡散質量移動率に関係する。PVOH(ポリビニルアルコールポリマー)、EVOH(エチレンービニルアルコールコポリマー)および特定のポリアミド樹脂は、そのような酸素捕捉種を取り込んで高効率な反応性バリアを形成するポリマー基材に適した、高受動バリアのポリマー材料である。しかしながら、PVOHおよびEVOH材料の酸素バリア機能は、その環境下での相対湿度が増加するにつれて急速に低下することが知られている。したがって、そのような材料は酸素バリア構造を形成するために単独で使用されることはなく、しばしば例えばポリオレフィンで作られる追加の水蒸気バリア層によって水分拡散から保護されるようにしなければならない。
【0006】
バリアの両面に酸素が存在する場合、反応性バリアは潜在的にその両面から酸素を吸収することができ、その結果シール後のパッケージ内に補足された残留酸素量を減らすことができる。この効果が生じるための条件は、既出のSolovyovとGoldmanによる文献によって均一反応性単層バリア層として紹介されている。酸素透過に対する最も効果的な反応性バリアを形成するのに適したPVOHおよびEVOHのようなポリマー材料は、充填された捕捉剤によってパッケージ内の上部空間の酸素を急速に吸収するための基材としては不適である。その理由は、そのような材料の低い酸素溶解性と低い酸素拡散率が基材内の捕捉反応領域への効率的な酸素輸送を妨げてしまうからである。基材内での酸素吸着率の計算結果は、上部空間の残留酸素を効果的に除去するには余りにも低い。さらに、これらの吸着率は、酸素捕捉剤が反応壁の厚さ方向を横切ってパッケージ内から伝搬する局在した反応拡散波(固体燃料棒を消費する反応拡散燃焼波に類似する)によって消費されあるいは非活性化されるのでさらに減少する。この問題を克服し、外部環境から透過してくる酸素およびシール後のパッケージ内の残留酸素の双方の効率的な捕捉を達成することが求められている。
【0007】
薬剤パッケージのデザインにおいて、最高のガスバリアを達成する一般的な方法は、金属製のロールストック・ホイルをもう一つのロールストック・ホイルに密封させることによって個々の空洞を作ることである。そのホイルパッケージを密封するために、通常、上側、下側のロールストック・ホイルの一方または両方に、接着性のシール剤が塗布される。そのようなパッケージは、ブリスターパックとして一般的に理解されているものではなく、それらは封入された錠剤の周りでの透明性および実質的に各錠剤のためのポーチを形成する明確な幾何学的形状に欠けている。結果として、消費者は個々のポーチがまだ錠剤を含んでいるか否かを直ちに把握することができない。一方、図1のようなブリスターパックを形成するためにロールストック・ホイルに加熱シールされた熱成形の硬質または半硬質な透明プラスチックシートは、取り出す際の利便性や製品の見やすさの点から消費者には好まれているが、そのプラスチックを透過する水蒸気および酸素の高い透過率を許容するブリスターパックを形成してしまう。製品寿命を伸ばせるブリスターパックを生産するのに適するように、プラスチックシート材料の高い酸素透過性を低減することが求められている。
【0008】
薬剤のブリスターパックを作る際に、公知の熱成形技術の一つを用いて、複数の空洞が熱可塑性ポリマーシート中に形成される。多層シート構造がガスバリア特性を改善するために使用される場合、多層構造設計、各層の材料選択、さらにはシート予備加熱時間、成形温度、成形速度、および成形技術のような熱成形工程のパラメータを、その構造の設計された形への変形を容易にするため、生産性を向上させるため、フィルム縮小を減少させるため、および過熱を防いで結果としてポリマー層材料の劣化および熱分解を防ぐために、調整しなければならない。これらの目標は、積層して熱処理するのに適したプラスチック層材料を選別して使うことを要求する。すなわち全てのポリマー材料ペアをブリスターパック用の熱成形可能基材として使うことができない。
【0009】
多くの有機または無機の酸素捕捉組成物およびそれらの組み合わせが提案されている。これらの組成物は、透過酸素によって酸化される組成部分を形成する物質が有機または無機かで区別される。
無機の酸素捕捉剤は、還元遷移金属の酸化、亜硫酸塩から硫酸塩への酸化、および米国特許5,262,375、5,744,056、2,825,651、3,169,068、4,041,209に開示されるような他の類似の化学物質の酸化を利用する。
記述される有機の酸素捕捉剤は、ポリマーチェイン構造およびペンダント基(自動酸化しやすいエチレン不飽和)中の炭素2重結合の酸化、特定のポリアミドの遷移金属触媒による酸化、特定の光還元キノンの酸化、アルコルビン酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、酵素、特定の有機金属配位子、および国際公開WO 02/076,91 6、米国特許6,517,728、6,123,901、6,601,732、国際公開WO 04/055,1 31、WO 02/051,825に開示されるような他の有機物の酸化を利用する。
遷移金属ベースの無機捕捉剤は、しばしば組成物の単位重量当たりの酸素を吸収する大きな反応能力を持つが、有機酸素捕捉剤は、多くの例では、バリアポリマー構造における望ましくない色(color)、透明性の喪失、さらには機械的特性およびまたは消費性能の低下を導いてしまうことなく、受動バリアポリマーに混合あるいは共有結合される能力から、より好ましいとされている。
米国特許5,627,239、 5,736,61 6、 6,057,01 3、 国際公開WO 99/48963に記述されるように、酸素捕捉種は、有機捕捉剤の化学構造および基材ポリマーに応じて、合成の最中に基材中に分散されたり、あるいは基材ポリマーと共有結合される。後者の配置はより好ましい。何故ならば、捕捉反応終了後のバリア中に存在する低分子量の酸化副産物は、しばしばパッケージ中に移動して製品に好ましくない汚染を発生させ、あるいはその特性を別のマイナス方向へ作用させてしまうからである。酸化反応副産物の移動を防ぐために、捕捉種および反応成果物の双方が基材ポリマーに共有結合されることが好都合であり好ましい。基材ポリマーに結合されない酸素捕捉種は、上述した理由によりあるいは国特有の規制認可の不足により、人による消費を意図した製品に接触するには適切ではない。副産物の移動を減少させあるいは防ぐために、そのような捕捉種は、バリア構造において、受動バリア層によって製品から隔離される独立層中に配置されなければならない。
【0010】
米国特許6,646,175 、5,350,622、6,569,506、国際公開WO 98/12127には、1つ以上の酸素捕捉層と共に開示された材料が記載されている。米国特許6,682,791には、少なくとも2つの酸素捕捉材料を伴うパッケージおよびパッケージ構造が開示されている。これら酸素捕捉材料は、異なる酸素捕捉性能を有し、パッケージ構造内の層として配置されている。層間において、酸素捕捉剤およびまたは触媒濃度の違いが想定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ブリスターパックのようなパッケージ中において、上部空間に残留する酸素の早い(例えば数時間以内)吸収に適し、効率的な酸素吸収と長期保存(例えば多数年)のための高い酸素透過バリアとを提供するに適した酸素吸収構造が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、連続して配置される少なくとも2つの反応性酸素捕捉層を含む酸素吸収構造を提供する。その酸素吸収構造は、酸素透過性の基材ポリマーおよび酸素捕捉剤を含む高速吸収高反応性酸素捕捉システムと、高受動酸素バリアの基材ポリマーおよび酸素捕捉剤を含む長寿命層とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】典型的なブリスターパック構造の断面である。
【図2】2層の酸素吸収プラスチック構造である。
【図3】反応性―反応性―受動性の3層の酸素吸収プラスチック構造である。
【図4】接着結合層とコーティングと表面処理を含む、反応性―受動性の3層の酸素吸収プラスチック構造である。
【図5】単一の反応性フィルムでの初期酸素透過率および初期吸着率と、フィルムの反応性(反応層の初期チーレ数φ)との関係を示す。2つの率は、同一の基材およびフィルム厚を有し、同一の酸素輸送特性を持つ受動フィルム中の安定状態での酸素透過率にノーマライズされている。
【図6】(a)単一反応層構造および(b)2層反応性酸素吸収層構造での酸素分圧プロファイルである。2層フィルムは、パッケージ内部からの高い酸素吸収率を持ち、反応性バリア層での低い透過率を持ち、これらの率は、パッケージ内容物と層との界面での酸素圧力曲線の傾きと、酸素吸収層と酸素バリア層との界面での酸素圧力曲線の傾きとからそれぞれ決定される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、パッケージ上部空間での早い酸素吸収機能と酸素透過に対する長期間でのバリア機能という2重の機能を備えるパッケージ構造を設計し製造する方法を提供する。
【0015】
本発明は従来技術に対して多くの利点を有する。本発明は、上部空間の酸素に対して高吸収率を持つ材料構造を提供する。本発明の反応性バリア材は、本発明の構造を通ってパッケージ内に透過してくる酸素に対する長期持続的なバリアも提供する。さらに、本発明は、酸素および水蒸気の両方をほとんど透過しないポリマーパッケージを提供する。パッケージ材料は、さらに典型的な医薬、食料および電子部品用のカプセル封入技術によって作ることができる。本発明のこれらの利点及び他の利点は、下記の詳細な記述により明らかになるであろう。
【0016】
本発明は、複数層の酸素吸収プラスチックシートまたはフィルム構造を提供する。そのプラスチックシートまたはフィルム構造は、フィルム面に平行になるように次の順序で配置された少なくとも第1の高速吸収層と第2の長寿命層の、2つの反応性酸素捕捉層を備える。第1の高速吸収層は、高反応性酸素捕捉システムに結合された高酸素透過性の基材ポリマーを含み、パッケージ製品のより近くに置かれる。第2の長寿命層は、高反応性酸素捕捉システムに結合された高酸素バリアの基材ポリマーを含み、外部環境のより近くに置かれ、酸素に対する高反応性を持つ長期持続的な反応性バリア層を形成する。
高速吸収層と酸素バリア層の受動ポリマー基材は、化学的に異なり、酸素透過性がケタ違いに異なることによって特徴付けられる。2つの層における酸素捕捉システムと捕捉剤濃度とを、同じにすることができ、あるいは各層のポリマー基材の選択に応じて異ならせることができる。特に、金属ベースの触媒を用いない有機UV活性化酸素捕捉システムは、本発明を実施する上で好都合で採用される。反応層の厚さ、層基材の材料、および酸素捕捉システムの選定が以下に記述される。
【0017】
図1に従来のカプセル封入技術が示されている。図1は、錠剤12を収容する1つのパッケージを示している。パッケージの底部はアルミニウムシート14からなる。使用する錠剤は、シート14側から押すことによってパッケージから取り出される。パッケージ10は、熱成形構造のポリマーシート16と接着シール層18とを含む。
典型的な透明ポリマーシート16は、ポリエステル、PVC(ポリ塩化ビニル)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)や各種ポリアミドのようなポリマーから作られる。ポリエステルには、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PETG(ポリエチレンテレフタレート共重合体)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、およびこれらの混合体が含まれる。上記シート16は、水蒸気バリアコーティング(例えば、アモルファス酸化シリコン、PVDC(ポリ塩化ビニリデン))またはLDPE(低密度ポリエチレン)ポリマーのような層を伴っていてもよい。好ましいPETGポリマーは、結晶化度を減少させ溶融温度を下げて熱成形を容易にするために、いくつかのエチレングリコールに代えてポリマー連鎖に追加されたシクロヘキサンジメタノールを有している。
シール層18は、典型的にはエチレン酢酸ビニル共重合体、熱シール可能なアクリル樹脂、およびヒドロキシプロポルセルロースのような接着層からなる。シール層と構造層は一般に可視光の波長範囲で透明である。このパッケージは、不正開封しにくく安く製造できるが、錠剤を酸素透過から十分に保護するものではない。
【0018】
図2には、2つの酸素捕捉層を有する、本発明に従うパッケージの壁構造が示されている。本発明の壁構造は、図1の従来パッケージのようなパッケージにおいて、層16と層18の代わりに使われる。その構造は、パッケージ内側により近く置かれ、層中に高速に酸素を吸収する特徴を持つ高速吸収の酸素捕捉反応層22と、パッケージ外側により近く置かれ、酸素透過に対する高反応性バリアを提供する長寿命の酸素捕捉反応層24とを含む。層22は、典型的にはブリスターパック使用においてシール層にもなり、そのシートはカプセル封入された薬や食物をパッケージするのに利用される。長寿命層24は、主たる受動バリア層として働くが、層を通過する有効酸素透過率をより減少させる高い酸素反応性をも有する。高酸素吸収層および高反応性バリア層の概念および定義は、下記の背景理論において説明される。
【0019】
図3には、本発明に従う反応―反応―受動の3層の構造30が示されている。構造30は、パッケージ容器の壁としても適しており、特にブリスターパックにおいて、一回分の薬剤をカプセル封入するのに適している。構造30は、高い酸素吸収率で高速に酸素を吸収する層22と、長寿命受動酸素バリア材料から作られ酸素に対する高い反応率を持つ層24と、パッケージに強さと堅さを与え、2つの酸素捕捉層22、24を支持する3番目の受動構造支持層32とを含む。
【0020】
図4には、薬剤または食物をパッケージしカプセル封入するためのシートとして用いられる壁40の断面である。壁40は、高透過性であり高い酸素吸収率を持つ高速吸収反応層22と、高受動酸素バリアのポリマーおよび高活性酸素捕捉材料を含む長寿命酸素バリア層24とを含む。受動構造支持層32は、接着接合層46により長寿命酸素バリア層24に接着される。層22と層24は接着接合層44により接合される。図4の壁構造には、構造における酸素透過およびまたは水分透過に対するさらなる受動バリアを提供するバリアコーティング42がある。結合層44、46は、選択的なものであり、層22、24、32の材料が互いにうまく結合しない、あるいは別々に形成された後に結合されるときに限って必要とされる。接着接合層は、典型的には適切なホットメルト接着剤で形成される。
【0021】
高受動酸素バリアの基材ポリマーと高反応性酸素捕捉材料とを含む長寿命酸素バリア層において、その受動酸素バリアの基材ポリマー材料の酸素透過率は、典型的な使用条件(周囲温度が約20℃で相対湿度が40〜60%)で、0.001〜10 cc mm/(m2 ・day・atm)である。好ましい酸素透過率は、2.5 ccmm/(m2 ・day・atm)未満である。最も好ましい透過率は、0.01〜2.5 cc mm/(m2 ・day・atm)の範囲である。
高速吸収の酸素吸収層の基材を形成する受動材料において、酸素透過率は、上記使用条件において250 cc mm/(m2 ・day・atm)を越える。酸素吸収層基材の材料の好ましい酸素透過率は、500〜10,000 cc mm/(m2 ・day・atm)の範囲である。
【0022】
本発明は、複数層の構造設計を開示する。その構造は、パッケージから残留酸素を効率的に除去するのに適したポリマーパッケージ容器を形成する、少なくとも1つの高速吸収反応層と少なくとも1つの長寿命酸素吸収層とを有し、配置、基材材料、反応性酸素捕捉層の反応性とその対応する構造組成、およびその多層構造の製造方法の選択により、パッケージ内への酸素侵入を減少させあるいは防ぐ。
特に、本発明は、熱成形可能なブリスターパックにおいて 薬剤および栄養補助食品の1回分の服用量をパッケージするのに適した熱シール可能なポリマー構造を第一に開示する。当業者は、本発明が薬剤のブリスターパックに限定されず、パッケージ内への酸素侵入を同時に削減することを目的とする、クレームされた構造設計の他のバリアパッケージへの適用が本発明の趣旨から逸脱することなく可能であることを理解するであろう。そのような方法は、パッケージされる製品を本発明の材料からなる2つのシートの間にカプセル封入することを含む。他のパッケージされる可能な物質は、食物、化学品、電子部品および生物学的物質である。
【0023】
本発明は、酸素透過に対する長寿命反応性バリアを提供し、同時にパッケージから残留酸素を高速に除去する手段を提供するという、パッケージ構造設計の見かけ上は相反する目標を達成する。この目標は、少なくとも2つの反応性酸素捕捉ポリマー層を、本質的に異なる受動酸素輸送特性を持つ異なるポリマー材料により形成し、特定の順番で組み込むように、パッケージ構造あるいはその一部の最適な複数層を設計することにより、達成される。周囲の酸素侵入に対するバリア保護の要求期間、パッケージの表面積、パッケージ構造の最大厚さ、パッケージ上部空間のガスの体積分率、およびシール後のパッケージ内に存在する残留酸素量のような特定のパッケージ保護要求に応じて、上記反応層中の酸素捕捉システムと捕捉剤濃度を同じにすることができるし、異ならせることもできる。
【0024】
パッケージ内容物により近くあるいは露出されて配置される高速吸収反応層は、好ましくは、高酸素透過性を持つ熱シール可能なポリマー(熱シール可能なアクリル系接着剤、修飾セルロース系熱可塑性物質(modified cellulose-based thermoplastic)またはエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体のホットメルト接着剤等)から作られ、酸素捕捉種を含んでいる。この酸素捕捉種は基材ポリマー中に分散され、あるいはより好ましくは基材ポリマーと共有結合している。あるいは、酸素捕捉反応種を、単独では熱シールとして働かない他のポリマーと共有結合させて、熱シール可能なポリマーのベースと混合させることより、ベース材料のシール性と、(移動を減じるか移動を無視できる特徴を有する)共有結合された酸素捕捉機能とを、合わせ持つことができる。特定のアントラキノン系(anthraquinone-based)酸素捕捉種を、エチレン酢酸ビニル共重合体を含むシーリング層基材ポリマーに結合ないしは分散させた例では、上記基材は、光還元メカニズムによってアントラキノンの捕捉反応性を活性化する手段を持たなければならない。それを達成するために、基材ポリマーは、アントラキノン中でのヒドロキシル基からケトン酸素への高速なプロトン移動のために利用される第2級のヒドロキシル基を、大きなモル分率で含むように選択される。同時に、熱シーリング基材は、効率的な捕捉剤の活性化に必要な紫外光の波長範囲において、高い紫外光透過率を持たなければならない。
【0025】
高速に酸素を吸収する酸素吸収シーリング層は、ポリマー基材中の高速な酸素消滅(dissolution)と埋め込まれた酸素捕捉剤への酸素の高速拡散とによって残留酸素を除去する手段として働く。この層は、中実または多孔質であり、封入された酸素吸収剤および内部に付着された酸素捕捉剤充填接着ラベル(oxygen-scavenger-filled adhesive labels)と区別される。その理由は、(1)その層が、熱シーリングポリマー基材に永久的に結合した酸素捕捉機能、あるいは(熱シーリングポリマーに混合された)熱シールできないポリマー部分に結合した酸素捕捉機能を含み、それ故、反応副産物の移動および放出が止められるからであり、(2)その層が、パッケージのシールに適した接着性で熱シール可能な層として働くからである。好ましい酸素吸収層は、熱シール可能なアクリルポリマー、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ヒドロキシプロピルセルロース、他の修飾セルロース系プラスチック、あるいはこれらに、0〜50重量%でポリオール、ポリビニルアルコール(PVC)またはエチレンビニルアルコールコポリマー(PVOH)を混合したものを含む。
【0026】
パッケージの外側により近く配置される長寿命酸素バリア反応層は、外部環境にさらされることもあるし、受動ポリマー構造層によって外部環境から保護されることもある。この反応層は、高受動酸素バリアのポリマー(PVOHやEVOH等)から作られる。この基材ポリマーには、反応性酸素捕捉種が拡散あるいは共有結合的に組み込まれている。長寿命酸素捕捉層は、バリアを通る酸素に対して高い反応性を持ち、かつ酸素透過に対して長期持続的に活性のバリアを提供し、その結果、捕捉剤の反応容量が反応によって使い果たされるまでパッケージ内への酸素侵入をほとんどゼロにする。そのような反応層を通る酸素拡散率が低いほど、捕捉剤の反応容量が完全に使い果たされてその反応層が受動バリア層に戻るまでの時間が長くなるであろう。PVOHまたはEVOHの基材に分散されたアントラキノン系酸素捕捉剤の例では、その基材は第2級のヒドロキシル基中で水素原子ソースを即座に提供する。第2級のヒドロキシル基は、紫外光で効率的に誘導されてアントラキノンの酸素捕捉能力を活性化させる働きをするアントラキノンのケトエノール互変異性(keto-enol tautomerization)にとって好ましい。アントラキノン系酸素捕捉剤を取り込む基材として、第1の好ましくは第2級のヒドロキシル機能のポリマー(セルロース系プラスチックおよびポリオール等)の利用を排除するものではない。
好ましくは、構造支持層によって長寿命酸素バリア層を保護することが好ましい。この構造支持層の一つは、好ましくは水蒸気バリア特性を持つ。これにより、薄いバリア層を可能にし、かつ水蒸気吸収による酸素バリア特性の劣化からPVOHまたはEVOH層を保護する。好ましいバリア層は、紫外光で活性化される有機酸素捕捉種が拡散されるとともに、全部または一部が加水分解されたPVOH基材を含む。有機酸素捕捉種には、アントラキノン、その2スルホン酸塩、またはPVOH基材中での溶解度およびPVOH基材との親和性を改善するよう設計された誘導体等がある。選択的に付加される第3層(図3、図4)は、材料が例えば、透明で紫外光を透過するPET、PETGあるいはポリオレフィンのシートであり、外部環境にさらされる。第3層は、好ましくは剛性または半剛性があり、金属フォイルおよび通常柔軟な膜からなる2つの反応層のための支持構造として働き、水分に敏感なPVOHまたはEVOH層を、水蒸気拡散およびそれに続く酸素バリア特性の劣化から保護し、酸素透過に対する追加の受動バリアを提供する(これにより捕捉剤の反応能力が完全に不活性化するまでの時間が長くなる)。第3層は、通常の技術で熱成形可能である。追加の第3層は均質である必要な無く、それ自身が水蒸気バリア、酸素および水分のバリアコーティング、表面処理、色および印刷可能表面層等、追加の望ましい特徴を持つ複数層の受動バリア構造であってもよい。
【0027】
外部ソースによる要求に応じて反応性が活性化されまたは誘発される酸素捕捉ポリマー材料を有することは好都合である。捕捉剤の酸素を消費する全反応能力(キャパシティ)は、保存場所に置かれたパッケージにおいて実際に使われるまで、保持される。遷移金属系酸素捕捉剤の活動は、しばしば水分拡散によって誘発される。一方、多くの有機酸素捕捉の化学作用は、紫外光波長範囲の化学作用光に曝されることによって誘発される。そのような捕捉剤の高度の活性化を達成するために、構造は特定の捕捉化学物質の光還元を誘発する紫外光に対して高い透明性を持つことが好ましい。捕捉剤の活性が低いと、大部分の反応性官能基を酸素捕捉目的に利用できないものとして残してしまう。これは、利用できる活性化能力を減少させ、パッケージ毎の捕捉組成物の全体コストを増加させる。好ましい酸素捕捉材料は、アントラキノン系酸素捕捉組成物である。アントラキノン系酸素捕捉組成物は、遷移金属系触媒の存在無しに、好ましくは基材ポリマー中の第2級のヒドロキシル基の存在下で、380nm以下の紫外光に曝されることによって、効率的に光還元される。光還元の際に観測されるアントラキノンの60〜80%効率のケトエノール互変異性は、透過酸素分子を高速で効率的に捕捉するのに適した多様な反応サイトの構成を生じさせる。1つの特定の例では、誘導型のアントラキニン系官能基は、熱シーリング材料として利用可能なアクリルポリマーと都合良く共有結合することができる。
【0028】
本発明は、酸素捕捉バリアのパッケージの構造設計を具体化する。そのパッケージは、(1)相当期間(例えば、数か月から2〜3年)において容器壁を通って侵入する酸素を減少させまたは除去することと、シール後(例えば数時間以内)のパーケージ内に残った残留酸素を高速に捕捉することの2つの目的をかなえ、(2)紫外線露光によって捕捉剤の反応を効率的に活性化できるようにし、(3)水分拡散および遷移金属触媒の双方と無関係に酸素捕捉能力を持ち、(4)他の基板に対して熱シールして、より複雑なパッケージ構造を形成するができ、(5)通常の技術で熱成形できる。
【0029】
記述した高速吸収と長寿命のために、異なる2つの酸素吸収層が、(他の工学的バリア構造の一部として後に用いられる)構造支持層またはリムーバルなロールストック基板上に、溶液コーティング、ラミネート加工、鋳造または同時押出しされる。両方の酸素吸収層の酸素捕捉能力は、組み込まれた酸素捕捉組成物がその反応能力を活性化させることができるならば、外部ソースによる要求に応じて活性化される。酸素捕捉物質の化学的性質に応じて、酸素捕捉機能は酸素吸収構造の各層中での異なるメカニズムによって活性化され得る。紫外光波長範囲(200〜400nm)の化学作用光を用いることは、両方の反応層中に分散された酸素捕捉種を同時に厚さ方向で高速に活性化させることができる好ましい活性化方法である。近紫外波長光(350〜400nm)による活性化は、広い商業利用および紫外光源のコスト低減にとって好ましい。好ましい酸素捕捉剤は、アントラキノン、アントラキノン―2―スルホン酸ナトリウム塩、およびまたはアントラキノン基をアクリルポリマー基材に共有結合させる機能を持った他のアントラキノン誘導体である。この好ましい酸素捕捉剤は、好ましい近紫外範囲の光で好都合に活性化される。アントラキノン酸素捕捉剤は、容易に活性化されかつ基材ポリマーへの結合能力があるので好ましい。
【0030】
記述した反応―反応の2層のプラスチック構造と、反応―反応―受動の3層のプラスチックの構造は、アントラキノン系酸素捕捉種が分散したPVOHポリマーの水溶液を構造支持層(透明なPETシート等)上にウエットコーティングし、続いて対流式オーブンまたは加熱炉で乾燥させることによって、好ましくは製造される。乾燥されたPVOH層は、スロットダイ、カーテンコーター、押し出しコーティングあるいは類似する技術を用いて、(溶液状態または溶融状態の)酸素捕捉アクリル層で好ましくはオーバーコーティングされる。シーリング酸素吸収層は、シールされたパッケージ内への酸素副産物の拡散を防ぐために、基材ポリマーに共有結合したアントラキノン系酸素捕捉官能基を好ましくは含む。本発明の趣旨から逸脱することなく、構造における層間接着力および受動バリア特性を改善するために、熱成形可能な基材の表面処理、バリアコーティング、接着結合層、接着下塗りコーティング等が構造の層間に使われる。本発明の酸素吸収構造は、上述した利点に加えて、同一のパッケージ生産ライン上においてインラインで活性化され、熱成形され、充填され、かつシールされるのに適しており、その結果ブリスターパックの生産コストを低減することができる。
【0031】
本発明の材料層を形成するポリマー層は、酸素バリア特性および捕捉特性に重大な影響を与えることのない既知のポリマー添加剤を含んでもよい。そのような既知の添加剤および残留物には、相溶化剤、加工助剤、着色剤、殺生物剤、殺菌剤、残留溶媒、可塑剤、粘着性付与剤、スリップ剤、残留硬化剤、および架橋剤が典型例として含まれる。
【0032】
理論的背景
酸素ガスのような特定の透過物に対する等方性受動バリア材料の透過性(透過係数)Pは、材料中における酸素の拡散係数Dと酸素の溶解係数Sの積として通常定義される。
P=DS ・・・(1)
【0033】
特定の温度および相対湿度(RH)において、バリア前後での酸素分圧差をΔPとする。このとき、安定状態で測定される、均一な厚さLのバリアを通過する酸素の透過率TRは、次のように予測される。
TR=P/L ・・・(2)
【0034】
酸素フラックスJ(flux:受動バリアの単位表面積を通過する酸素の質量流量(mass flow rate))は次のように定義される。
J=TR・ΔP=(P/L)ΔP ・・・(3)
【0035】
ここで、ΔP=Pout−Pinは、壁の両側、パッケージ内外での酸素分圧差である。上流および下流での酸素圧の両方が一定に維持されるとき、安定状態での透過パターンがラグタイムと呼ばれる遅延後に受動層に生ずる。安定状態において、時間に依存しない酸素濃度プロファイルが、一様で均質な受動層を横切って存在する。そのような安定状態において、層中での酸素吸着率は層を通過する酸素透過率に等しく、各率は下流側の環境中への酸素侵入率に等しい。受動材料層中の反応性酸素捕捉種は、その定状態での透過パターンを遷移(時間依存)作用(behavior)に変化させる。この遷移作用は、反応層において透過酸素との反応によって反応能力が使い果たされるまで持続する。酸素に対する層の反応性が高いほど、層中への酸素吸収速度が速くなり、層を通過する酸素透過率が低くなることが受動層において観測されるであろう。
【0036】
厚さLの一様で均質な反応性酸素捕捉バリアの瞬間的な反応性は、反応層の無次元の初期チーレ数(Thiele modulus)φ(文献:Solovyov S.E. J. Phys. Chem. B2004, vol. 108, pp. 1 5618-15630)によって次のように表される。
【数1】

・・・(4)
【0037】
ここで、kは、十分に活性化した反応層での初期の疑似1次反応速度係数(pseudo first order reaction rate constant)である。この係数は、(捕捉組成物の1モルまたは単位質量によって消費される酸素モル量中での)捕捉反応の全化学量論係数(overall stoichiometry)μ、バルク反応速度上での拡散制限がない状態における酸素と捕捉種の間の実際の全体正反応速度係数(overall forward reaction rate constant)K、および基材中の捕捉種の初期濃度Rに依存する。一般に観測される2次反応全体での酸素捕捉の2分子反応(bimolecular oxygen scavenging reactions)において、この初期の速度係数は次のように表される。
=μKR ・・・(5)
【0038】
無次元のチーレ数は、層内の酸素の反応性吸収速度を、層を通る酸素の拡散速度に関連付ける。反応層の大きいチーレ数φ(>>1)は、バリアを通過する酸素を効率的に除去(遮断)する高速の拡散制御反応のケースに対応している。酸素透過に対するそのような反応性バリアの遂行能力は、バリア改善因子(barrier improvement factor)によって特徴付けられる。パッケージ内部の酸素圧力がゼロ、すなわちpin=0のケースにおいて、初期のバリア改善因子γは、受動バリアを通る安定状態酸素フラックス(oxygen flux)Jss(P)を、同一の受動輸送特性を持つ活性化された反応性バリアの下流側境界x=0を通過する初期有効酸素フラックスJ(R)に、次式のように関連付ける。
【数2】

・・・(6)
【0039】
反応で消費されない触媒作用の酸素吸収材の場合には、同じ条件において、反応層の上流側境界x=Lでの酸素吸着のための初期吸収速度改善因子γは、次のように表される。
【数3】

・・・(7)
【0040】
大きいφを持ちtanh(φ)が1近くになるような反応層を形成する高反応性捕捉システムにおいて、したがって反応層中で低酸素溶解度を持つ高バリア材料において、捕捉剤が過剰の反応能力を持つ場合、すなわち捕捉剤が触媒として働く場合には、安定状態の吸着速度はφに比例して増加する。その吸着速度は、相当期間において反応層中での効率的な酸素吸着を提供するにはしばしば不十分である。なぜなら、除去されるべき上部空間の酸素量に比べて余りに過剰な反応能力を持続する必要があるからである。多くのアプリケーションにおいて、そのような過剰反応性能力を備えることは不経済である。
過剰な反応性能力なしに、酸素吸収層によって早期に残留酸素を除去するために、高い酸素溶解性および拡散性を持つ基材の層材料が好ましい。ポリマー基材での高い酸素拡散性が層の初期の反応性φを減少させるとしても、そのようなポリマー基材中での高い酸素移動性は、層内に分散した全ての酸素捕捉種を拡散した残留酸素に接近しやすくする。結果として、そのような高透過性基材の層は、シーリング層の厚さ全体にわたって活性化された捕捉剤による早い吸収及び反応を通じて、残留酸素を効果的に除去するであろう。
【0041】
図5に示されているように、触媒作用のある反応性バリア中の酸素透過性は、層の反応性φに応じて指数関数的に減少するが、層中への酸素の吸着性はその反応性に比例してリニアに増加する(式(6)と(7)を比較せよ)。したがって、大きい初期チーレ数φ(実用目的でφ>3〜5)によって特徴付けられる高い反応性を持つ反応層は、酸素バリア層として特に良く適している。層の高い反応性は、受動または非活性な基材層上で大きなバリア改善をもたらす。φ=10の反応層は、有効透過率を、単に受動ポリマー基材を持つ層に比べて1000倍小さくさせ、それ故に反応層は酸素をほとんど透過しなくなる。バリア改善は、層の受動輸送率に関連して測られ、それ故に、基材ポリマーの選択あるいは変更によって反応層の受動バリアを改善することは、増大した受動バリア性能に加えて反応性バリア性能の改善をもたらす。
酸素捕捉剤を加えるために基材層としてより高い受動バリアポリマーを使用する結果、そのような層の全バリア性能が改善する。本発明の対応する教示によれば、最良の反応性バリア層を創出するために、その層のために最も可能性の高い受動酸素バリア基材材料を選択し、それに最高の反応性(酸素に対するバルク反応速度係数)を持った酸素捕捉剤を加える必要がある。低い酸素捕捉濃度あるいは低活性な捕捉システムを利用して、反応性バリア層を創出する(米国特許6,682,791においてクレームされるような)デザインは、有効ではない。そのようなバリア層中の捕捉濃度あるいは捕捉剤の活性率の減少に伴い、その層の初期チーレ数が比例して小さくなり、結果としてバリア改善が指数関数的に減少する。
式(4)に従えば、層中での低い酸素拡散性を持つバリア層のために使われる基材材料は、その層の初期の反応性を増加させることに貢献する。バリア層のためにそのような材料を選択することは、そのような高バリア受動基材を通るより低い酸素透過率に加えて、反応性酸素バリアの改善を劇的に促進する。本開示は、高度に効率的な反応性バリア層のしっかりとした設計基礎となる。
【0042】
図6は、単層の反応性フィルム(a)と、酸素吸収層および酸素バリア層を有する開示された2層の反応性―反応性フィルム(b)とにおける安定状態での酸素圧力プロファイルを示す。(基材層中の低い酸素の拡散性および可溶性によって)受動バリア特性を改善させると同時に、(例えば、層の厚さ、層中の酸素捕捉剤濃度、あるいは捕捉剤の活性度の増加によって)酸素バリア層の反応性を増加させることで、そのような層中での酸素吸収率を減少させる代価として最高のバリア機能という目的を達成することができる。
反応性酸素捕捉層の酸素吸着特性を実際に改善するために、消費可能な酸素捕捉剤の限られた反応能力(容量)と、限られた厚さを持つ反応層にそのような能力を追加するコストとに、焦点が当てられなければならない。そのような消費システムにおいて、捕捉剤の反応能力が減少している期間中はいつでも安定状態での酸素吸着は存在しない。以下の開示では、パッケージ内から残留酸素を高速に除去するために、いかにして反応層の遷移(時間依存の)酸素吸着特性を改善するかを示す。
【0043】
初期の大きな反応性φを持つ層に取り込まれ、酸素との化学量論的な反応の間に消費される非触媒作用の酸素捕捉剤において、捕捉反応は、(層の境界からの厚さ方向に伝搬し、その軌跡において全ての捕捉反応能力を消費する)局在化した反応拡散波の形で進行することが知られている。現在知られている全ての酸素捕捉剤は消耗品であり、すなわち酸素捕捉剤は、第3の種によって触媒作用を施されたとしても全体としては非触媒性である。
【0044】
狭い反応拡散波面は、パッケージ内から非触媒性の反応性バリアを横切って上流に伝搬して、捕捉剤を消費する。この反応拡散波面の時間依存位置L(t)は、次の式で表わされる。
【数4】

・・・(8)
【0045】
ここで、Pinは固定されたあるいはゆっくり変化するパッケージ内の酸素分圧である。反応拡散波が時間t後に位置L(t)に到達する時、その時間の間に層の表面領域Aで消費される酸素の全体量QNC(t)は、次式で与えられる。
【数5】

・・・(9a)
【0046】
一方、式(7)を利用し、高反応性φ>>1、あるいは比較的過剰能力の触媒を想定することにより、層の表面領域Aにおいて触媒作用によって除去される酸素の全体量QNC(t)は、次式で与えられる。
【数6】

・・・(9b)
【0047】
非触媒性、触媒性両方の反応性酸素吸収層(それぞれ式(9a)と(9b)の結果)において、反応性基材層中の大きな酸素拡散係数Dおよび溶解性Sは共に、(非触媒性層中での)反応波面のより早い伝搬のために有効であり、拡散制御された高速捕捉反応過程における各層での残留酸素のより早い吸収のためにも有効である。したがって、残留酸素を除去するための効率的な酸素吸収層を作るために本発明が実際に教示することは、高反応性酸素捕捉システムを取り込むための基材として、その層の中で最高の酸素透過性P=DSを持つポリマーを使うことである。酸素吸収層の高い初期反応性φ(φ>3〜5)は、発明を実施するためになおいっそう必要とされる。さもなければ、触媒性あるいは非触媒性の捕捉反応による酸素除去は、効果的ではなくその除去率は受け入れ難いほど低くなる(吸着率について図5に示す)であろう。特定の酸素捕捉システムでのバルク反応性(バルク速度係数K)が与えられれば、層のデザイン要求(φ>3〜5)を満たすような、捕捉剤を導入するためのポリマー基材材料およびその厚さの選択は、式(4)、(5)にしたがって、容易に決定することができる。
【0048】
同時に、バリアを通る透過率は、式(6)のように、φが増加するにつれて指数関数的に減少する。したがって、酸素捕捉剤を取り込む材料として、最も低い可能性のある酸素の溶解性および拡散性を持つ材料が、酸素透過に対する効率的なバリアを創出するために、優先的に選択される。ポリマー基材中の低い酸素移動性(より低い拡散係数による)は、バリア層中の酸素分子の残留時間を増加させ、それ故に、分散された反応性酸素捕捉種との酸素の反応確率を増加させると信じられている。基材中の低い酸素溶解性は、基材中の溶解した酸素の濃度を減少させ、それ故に、捕捉反応能力が化学量論的な(化学式に従う)量の酸素と反応することにより使い果たされるまでの時間を延長させる。
【0049】
構造設計
ポリマー中の酸素捕捉剤は、通常、酸素吸収のための複雑な化学システム(系)である。酸素捕捉剤としてふるまう単一の材料を想像することは可能だが、ほとんどの捕捉剤は多くの異なる構成要素を含む複雑なシステムである。いくつかの捕捉剤はポリマー中で溶解しない。すなわち、それらはポリマー基材から分離して存在し、基材からの何らの助け無しに活性化される(無機の鉄系粉末のように)。そのようなシステムは、自給系(self-contained)と言うことができる。有機捕捉システムは、酸化可能な基体に加えて、触媒、開始剤、プロトンドナー(水素提供不純物)、および反応抑制剤を必要とするかもしれない。そのようなシステムが自給的であるとしたならば、それらの“純粋な”形態での酸素とのバルク反応性は、ポリマー層に埋め込まれている状態での反応性とはほとんど無関係である。純粋な自給的システムのバルク反応性は、正確に定量化することは通常不可能である。何故ならば、そのバルク反応性は、自給的捕捉システムの物理的な形態(液体、樹脂、粉末、粒子サイズ、形状、組織、構造、ガス状の酸素に対する露出条件等)に依存するからである。使用の際に重要なことは、ポリマー中でのシステム反応性であり、この反応性とは、複雑な捕捉システムと、(ガス状態の酸素でなく)ポリマー基材中の溶解された酸素との間の反応性である。そのような状況下で、ポリマーでの定数Kはガス相でのKとは大きく異なる(したがって、後者(ガス相のK)は無関係である)。それ故に、たとえ“純粋な”捕捉システムであっても、固定されたK値を定めることができない。それらのK値は、特定のポリマー基材に埋め込まれた捕捉剤の透過率データから、後で計算することができる。このように、ポリマー基材の役割は、捕捉剤の反応性を説明する上で重要である。別言すれば、特定のポリマー基材および特定の捕捉システムの物理的形態の知識なしに、捕捉剤自体の高いあるいは低い反応性を定義することはできない。定義できかつ測定できることは、捕捉剤を含む反応層の反応性(例えば、初期のチーレ数)である。すなわち、有効反応率は、周囲の基材の受動酸素輸送特性と関係付けることができる。
【0050】
高速吸収で低バリア(高透過性)の基材では酸素拡散が早く、それ故に、捕捉システムが“高反応性”であるためには、基材を通しての酸素拡散よりも早く酸素と反応しなければならない。高バリア長寿命の基材では酸素拡散が遅く、それ故に、低バリア基材中では受け入れ難い程に遅いであろう捕捉システムが、遅い拡散速度よりも十分に早く反応することができる。このことは、低バリア基材中では高反応性であるとしては説明されない捕捉剤が、特別な高バリア基材では“高反応性”となる。高反応性捕捉剤への全ての言及は、上記観点を考慮して理解されなければならない(例えば、基材中の受動酸素輸送特性とは切り離せないものとして)。
【0051】
好ましいアントラキノン系捕捉システムにおいて、そのシステムは完全ではなく、基材中に存在するヒドロキシル基なしに活性化することはできない。このように、捕捉システムは“純粋な”状態では存在せず、そのシステムの反応性は、アントラキノン酸素捕捉サイト周辺の利用可能なヒドロキシル基の近さおよび濃度によって影響を受ける。この事実は、多数のヒドロキシル基を持つPVOHおよびEVOHポリマーを、アントラキノン系酸素捕捉剤のための基材として特に適したものにする。
【0052】
バリアおよび酸素吸収層中での反応性―拡散性の質量輸送に関する上記原理の観点から、本発明は反応層―反応層の組み合わせによる2層のバリア構造またはサブ構造を開示する。各反応層は異なる目的(図2)を果たす。パッケージの内容物に対して露出する第1の高速吸収層は、高反応性酸素捕捉剤を混ぜた、高酸素透過率P=DSのポリマー基材を備えている。その捕捉種は、好ましくは基材ポリマーに共有結合され、基材がポリマー・ブレンドを含むならば基材ポリマーの構成要素の1つに共有結合される。捕捉種および好ましくは酸素反応副産物が基材に結合されて残るこの方法は、それらがバリア外に出て製品またはその環境に悪い影響を与えことがないようにできる。代わりに、捕捉種及び/又は酸素反応副産物の放出量の測定レベルが国特有の規制指針を超えないならば、捕捉種は溶融混合段階中に基材中に分散させてもよい。
【0053】
シーリング層として働かせるために、第1の反応層は、好都合に熱シール可能な樹脂または熱シール可能な樹脂を混合したポリマーを含む。中間から高い酢酸ビニル含有量を持つEVA共重合体樹脂のような既知のホットメルト接着材は、熱シールの基材または基材構成要素として使うことができる。ポリHEMA(ポリ(2−メタクリル酸ヒドロキシエチル))およびポリHPA(ポリ(2−ヒドロキシプロピルアクリル酸塩))のような熱シール可能なアクリル樹脂も、アントラキノン誘導体(anthraquinone derivatives)の共有結合を好都合に可能にする。このアントラキノン誘導体は、上述したアクリル樹脂中で利用できる第1級および第2級のヒドロキシル基の存在下で、光還元酸素捕捉剤として働くことができる。
【0054】
第2の長寿命反応性酸素バリア層は、第1の高酸素吸収率の反応層に直接に接続されるか、2層間の接着力を高めるために薄い接着結合層により結合される。第2の長寿命の反応性酸素バリア層は、低酸素透過性(使用条件においてシーリング層基材の酸素透過性よりも少なくとも2〜3桁小さい)を持つポリマー基材を含む。このポリマー基材には、分散された酸素捕捉種あるいは共有結合された酸素捕捉機能が取り込まれる。好ましい実施例では、酸素吸収層を形成するポリマー基材の酸素透過性は、長期間にわたって有効な酸素バリア保護のための酸素バリア層の酸素透過性よりも、少なくとも100倍高い。第1の反応層が光還元可能なアントラキノン系酸素捕捉化学反応に基づいているとき、長寿命の第2の層中で類似する酸素捕捉化学反応を持つことは、同一の外部活性源を使うことによって両層の反応を活性化するためには好都合である。同一の活性源によって活性化する考えは、両方の反応層中で使うことができる他の酸素捕捉化学反応にも当てはまる。したがって、第2の反応層のための好ましい実施例は、紫外または近紫外の波長範囲の化学作用光によって活性化される、分散されたアントラキノン系酸素捕捉機能を持つ高酸素バリアPVOHまたはEVOH樹脂から作ることである。好ましい構造では、EVAポリマーは、実質的な接着特性を与えるために8〜35重量%のビニルアセテートを含む
【0055】
上述した高速吸収および長寿命の2つの反応層は、非常に薄くすることができ(これは酸素捕捉要素が比較的高価であることを考慮すれば、コスト上の利点である)、保存延長要求および残留酸素除去要求にも合致する。良好な酸素バリア性能のための高速吸収層と長寿命層のそれぞれの好ましい厚さは、0.1〜2ミル(2.5〜50マイクロメータ)と1〜5ミル(25〜125ミクロメータ)である。そのようなケースにおいて、その2層構造は、寸法的に安定な熱成形された空洞のために必要とされる堅さを、持たないこともあるだろう。空洞の所望の寸法安定性を備える熱成形可能な構造を作るために、その構造の一部として周囲の大気環境に曝される第3の受動ポリマー層(図3)を持つことは好都合である。この第3の層は、酸素と水分の浸透性に対する追加の受動的バリアとしてだけでなく、反応層のための熱成形可能な支持構造として働く。好ましい実施例では、第3の層の厚さは、成形前で1〜20ミル(25〜500マイクロメータ)であり、この層は構造支持層となる。この受動構造層中での酸素分圧の低下は、第2の反応層の上流側境界が大気中にある時と比較して、当該境界での酸素圧Poutの低下をもたらす。その結果、反応性バリア相の持続期間は有利に延長される。この持続時間の延長は、ガス透過に対する化学量論的な反応性バリアにおける、遅延時間tLRの延長のためのSiegelとCusslerの結果による。バリアには厚さにわたって捕捉剤が均一に分布しているものとする。(J. Membr. Sci. 2004, vol. 229, p. 33)
【数7】

・・・(10)
【0056】
反応層基材中のより低い酸素拡散係数Dおよび溶解係数S、より大きい反応能力μR(活性化された反応性種のより高い濃度)、より低い外部の酸素分圧Pout、およびより大きな反応層の厚さLは、反応性バリアでの遅延時間を延ばすのを助ける。
【0057】
透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、およびPET―PEN(ポリエチレンテレフタレートーポリエチレンナフタレート)の混合材は、受動構造支持層用のポリマー層として使うことができる。このポリマー層は、反応性バリア側において、接着性を高めるためにコロナ放電処理されたり接着性促進プライマーがコーティングされ、周囲空気に曝される側において、水分バリアのための処理、コーティング、あるいはラミネーションが施される。
【0058】
追加の第3の受動層は、選択された捕捉剤の活性化メカニズムによる、両反応層中での効率的な酸素捕捉剤の活性化を許容しなければならない。紫外線露光によって活性化される両反応層中のアントラキノン系酸素捕捉剤において、第3の受動層は活性化紫外線の波長範囲で好都合に透明に作られる。そのような紫外線透過材料の例は、PETおよびPENのホモポリマーとそれらの共重合体である。第3の受動バリア中でのより低い酸素透過率は、本構造の反応性バリア層の上流側境界での酸素分圧を減少させ、それ故にこのバリア層中での反応による遅延時間を延ばす。製薬のブリスターパッケージにおいて、多くの薬の期待される有効期間は少なくとも2年である。本発明の実施例は、典型的な保存条件で少なくとも2年間、各ブリスター空洞での酸素フリーな雰囲気を提供するのに適した特有なデザインを開示する。
【0059】
上部空間の残留酸素除去を目標とする第1の高速吸収反応層に詰められる酸素捕捉種の効果的な量は、シールされた空洞での残留酸素量(これは空洞容積での酸素分圧によって求められる)、バリアの露出した表面積、反応層の厚さ、酸素を吸収する反応性種の能力(容量)、および残留酸素除去のために要求される時間によって決定される。
酸素透過の妨害を目標とする第2の長寿命反応層中へ詰められる捕捉剤の効果的な量は、捕捉反応能力(容量)、ポリマー基材の酸素透過性、層の厚さ、外部の環境での酸素分圧、第2の層を通しての酸素透過を防ぐことを求められる時間により、式(10)にしたがって決定される。
【0060】
開示された構造を製造するための製造方法は、層材料の選択に大きく依存する。支持構造および更なる酸素バリアとして、追加の第3の受動層を使う場合には、酸素捕捉剤を持つ2つの反応層は、発明の精神からそれることなく、支持構造層に、溶融被覆、押し出し被覆、鋳造(cast)あるいはラミネートすることができる。
好ましい実施例において、長寿命酸素バリア層は次のようにして作られる。10〜20重量%のPVOHと1〜2重量%の適切なアントラキノン塩(以降、「AQ」として示される)を、順番に水または水―アルコール混合液に溶かすことによって、その水溶液を準備する。その際、湿式コーティングプロセスおよびコーティングの乾燥時間を制御するために、その溶液中のAQ/PVOH重量比率と溶液の粘性とを同時に制御する。
2段階コーティング工程として製造工程を容易にするために、高速吸収層を水溶液から作ることは、要求されないが好ましいことである。酸素バリア層への酸素吸収シーリング層のコーティング、鋳造、およびラミネーションは、発明の枠内で実行できる。
【0061】
酸素吸収構造の特定の構成要素およびそれらの製造方法の好ましい実施例は、以下の例で記述される。
【0062】
例1
現在利用できる酸素透過分析器は、搬送ガス方法(ASTM Dl 434-82)を使用するために一般に設計される。酸素透過率測定の搬送ガス方法では、密封チャンバー内にフィルムサンプルを配置し、フィルムの一方側(上流側)に沿って純粋な酸素を流し、フィルムの反対側(下流)に沿って搬送ガス流(通常超高純度の窒素ガス)を流す。
搬送ガスは、下流に浸透する酸素を集め、それを酸素検知器へ運ぶので、瞬間的な浸透率を測ることを可能にする。この方法は、バリアを通しての酸素透過とパッケージ上部空間からの残留酸素吸収の同時測定を可能にしない。本発明の二重機能を証明するために、各層の異なる機能を評価するために、2つの別々のテストがサンプル構造で実行された。米国で一般に使われる「ミル」での報告された層の厚さは、1/1000インチ(1ミル=25.4ミクロン)に相当する。
【0063】
製造プロセスは、フィルターを掛けられた光源からの紫外線を用いる施設で実行された。厚さ7〜10ミル(177〜254マイクロメートル)の透明なPETシートは、厚さ10〜20ミル(254〜508マイクロメートル)で10〜20重量%の水性PVOH溶液によってコーティングされた。この溶液は、90%加水分解されたPVOHを80〜85重量%、アントラキノン2―スルホン酸ナトリウム塩(以降、AQと略される)を10〜15重量%含んでいた。
記述されたコーティング組成物は、ドライコーティングの柔軟性を改善するための軟化剤として、(ドライコーティング中の全ての固体をベースにして)0〜5重量%のグリセリンを含んでいた。
ウエットコーティングは、次に対流乾燥オーブンまたは連続乾燥加熱炉中で乾燥されて、1〜2ミル厚さのPVOH−AQドライコーティングとなった。この基礎構造は、その反応性バリア能力を評価するために別々にテストされた。この評価は、基礎構造の両側から商業紫外線源(1.8kWのフルパワーで動作するFusion UV Systems社Gaithersburg MDのF300S)で5〜15秒露光し、続いてそのPET側を1気圧で100%酸素に曝し、AQ酸素捕捉剤の活性状態での酸素透過率を測定することによって、なされた。
測定された初期の酸素透過率は、上流側が1気圧100%酸素、23℃において、0%RHで0.0cc/(m・day)、50%RHで0.0cc/(m・day)であった(実際に測定された透過率は、下流の窒素キャリヤーからの残留酸素のわずかな量の吸収のためにマイナスであり、その結果、窒素キャリヤー単独のために規定される0ベースラインを下回った)。反応性酸素バリア層の推定された活性化酸素捕捉能力は、1ccのコーティングにつき酸素6〜8ccだった。使われたPVOH樹脂とPETシートの酸素輸送特性に基づいて計算すると、その能力(容量)は、2層構造の反応性能力が周囲の雰囲気から透過してくる酸素によって消耗するまでの反応性遅延時間として、2年を提供するのに十分であった。
【0064】
第2のテストでは、厚さ7ミルの透明な受動PET基板が、10〜20重量%のアントラキノン2−スルホン酸塩と共有結合した厚さ1ミルのポリ(HEMA)アクリル樹脂で押し出し被覆された。この基礎構造は、残留酸素の吸収効率を評価するために、被覆側から5〜15秒間の紫外線露出によって活性化された。
10ミリリットル(mL)のパッケージ(パッケージ内側に露出した基礎構造の表面積は100cmである)の上部空間の空気中における初期の20.5体積%の酸素は、12〜48時間内に0.2体積%未満にまで減少された。この測定は、MOCON上部空間酸素プローブ(Modern Controls社、ミネアポリス)により行なった。このテストは、パッケージ内の残留酸素量を、酸素に敏感な製品を長期にわたって保存するのに安全なレベルまで、高速に減らすことができる高速酸素吸収層の能力を示した。
【0065】
反応層―反応層―受動層の全体で3層の構造が、残留酸素を高速で除去することと、2年間実質的に大気環境からの酸素侵入を防止してパッケージ内の酸素フリー環境を維持することを、同時に行う上で適していることが見出された。最終的な3層構造は、PVOH−AQ溶液で被覆されたPET基板に、アントラキノンで誘導体化された(anthraquinone-derivatized)ポリ(HEMA)アクリル樹脂を、溶融押し出しコーティングすることによって製造された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの反応性酸素捕捉層を含む複数層酸素吸収構造であって、
酸素透過性の基材ポリマーと酸素捕捉剤とを含む高速吸収高反応性酸素捕捉システムと、
高受動酸素バリアの基材ポリマーと酸素捕捉剤とを含む長寿命層と、
が順番に設けられた複数層酸素吸収構造。
【請求項2】
各反応層の無次元の反応性が、等価で均一反応性の均質な層の初期チーレ数φで定義して、3よりも大きい、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項3】
各反応層の無次元の反応性が、等価で均一反応性の均質な層の初期チーレ数φで定義して、5よりも大きい、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項4】
前記酸素捕捉システムが光還元アントラキノン系の酸素捕捉材料を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項5】
前記高速吸収層は、熱シール可能な基材ポリマー中に分散された酸素捕捉反応性材料を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項6】
前記高速吸収層は、熱シール可能な酸素透過性の基材ポリマーに共有結合された酸素捕捉反応性材料を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項7】
前記熱シール可能な酸素透過性の基材ポリマーは、大きなモル分率の第2級ヒドロキシル基を含む、請求項5に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項8】
前記熱シール可能な酸素透過性の基材ポリマーは、熱シール可能なアクリル系接着樹脂を含む、請求項7に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項9】
前記熱シール可能な酸素透過性基材ポリマーは、少なくとも50重量%のエチレン酢酸ビニル共重合体のホットメルト接着剤を含む、請求項5に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項10】
熱シール可能なポリマーに熱シール不可能なポリマーが混合されて、前記酸素透過基材ポリマーが形成され、前記酸素透過基材はこの熱シール不可能なポリマーに共有結合した酸素捕捉反応性種を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項11】
前記酸素捕捉剤は、光還元作用により活性化されるアントラキノン系酸素吸収材を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項12】
前記酸素透過性の基材ポリマーは、近紫外波長範囲(200〜400nm)での高い光透過率を有する、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項13】
前記長寿命酸素バリアの基材ポリマーは、50〜100%加水分解のポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項14】
前記長寿命酸素バリアの基材ポリマーは、20〜60モル%のエチレンを有するエチレンビニルアルコール共重合体を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項15】
前記反応性酸素捕捉種が、前記長寿命層の基材ポリマー中に分散されている、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項16】
前記長寿命の酸素捕捉層は、前記基材ポリマー中に分散されたアントラキノン系酸素捕捉剤を備え、この酸素バリアポリマー基材が、アントラキノンのケトエノール互変異性を紫外光で有効に誘起させるために、第1級及び/又は第2級のヒドロキシル基中の水素原子ソースを含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項17】
さらに、前記高速吸収層とは反対側の前記長寿命酸素捕捉層に隣接して配された受動構造支持層を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項18】
前記支持層は、硬質または半硬質な熱可塑性ポリマーである、請求項17に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項19】
前記第3層は均質である、請求項17に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項20】
前記第3層は、水蒸気バリア層を備えるか、または、水バリアのコーティング及び/又は表面処理を含む、請求項17に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項21】
前記高速吸収層は、通常の使用状態(周囲温度と相対湿度)において250cc mm/(m・day・atm)を越える酸素透過性を持つ、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項22】
前記長寿命層は、通常の使用状態(周囲温度と相対湿度)において2.5ccmm/(m・day・atm)を下回る酸素透過性を持つ、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項23】
当該構造が水分拡散と相対湿度と無関係な酸素吸収能力を持つ、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項24】
当該構造が、遷移金属と金属系触媒とを含まない請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項25】
前記長寿命捕捉層が、硬質または半硬質な構造支持層として働く、請求項24に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項26】
前記第3受動層が、硬質または半硬質な構造支持層として働く、請求項17に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項27】
前記受動構造支持層は、ポリエステルまたはポリエステル共重合体から作られる、請求項26に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項28】
前記ポリエステルはPETまたはPETGである、請求項27に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項29】
前記ポリエステルはPENである、請求項27に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項30】
前記ポリエステルは、PETとPENの共重合体である、請求項27に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項31】
前記ポリエステルは、ポリエステルの混合体から作られる、請求項27に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項32】
ポリエステル相が連続したポリエステルとポリアミドの混合体である、請求項31に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項33】
前記アクリル系接着樹脂が、アクリルポリマーに共有結合したアントラキノン系酸素捕捉基で誘導化される、請求項8に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項34】
前記酸素捕捉剤が、紫外波長範囲の化学作用光に曝すことによって活性化される材料を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項35】
前記高速吸収層が、アントラキノン系酸素捕捉基で誘導化された少なくとも50重量%のアクリルポリマーを有するポリマー混合体を備えた、請求項8に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項36】
前記高速吸収層は、熱シール可能なエチレンービニルアセテート共重合体(EVA)、または当該共重合体と50重量%以下のポリオールあるいはポリビニルアルコールとの混合体を含む、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項37】
前記EVA共重合体は、5〜35重量%のビニルアセテートを含む、請求項36に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項38】
前記高速吸収層を形成する前記基材ポリマー材料の酸素透過性は、前記長寿命酸素バリア層を形成する前記基材ポリマー材料の酸素透過性よりも少なくとも100倍高い、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項39】
前記高速吸収層の厚さは、2.5〜50マイクロメータである、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項40】
前記長寿命層の厚さは、25〜125マイクロメータである、請求項1に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項41】
前記第3層の厚さは、15〜500マイクロメータである、請求項17に記載の複数層酸素吸収構造。
【請求項42】
水性コーティング溶液を用いて、透明な耐久性ポリマー基材に、長寿命高反応層と高速酸素吸収高反応性酸素捕捉層とを順番にコーティングすることを含む、複数層酸素吸収構造の製造方法。
【請求項43】
溶融共押出しコーティングまたは溶融押し出しコーティングを用いて、透明な耐久性ポリマー基材に、長寿命高反応層と高速酸素吸収高反応性酸素捕捉層とを順番にコーティングすることを含む、多層酸素吸収構造の製造方法。
【請求項44】
前記ポリマー基材は除去可能な基材を含む、請求項42または43に記載の製造方法。
【請求項45】
アントラキノン塩およびPVOHの溶解度、溶液中のAQ/PVOH重量比率および溶液の粘性を同時に制御しながら、アントラキノン塩と、特定の分子量および加水分解度を持つ一つ以上の等級のPVOHとを順番に水に溶解して、10〜20重量%のPVOH―アントラキノン塩の水溶液を準備することにより、前記長寿命層が作られる、請求項42に記載の製造方法。
【請求項46】
少なくとも1つの壁が複数層酸素吸収構造を含むパッケージであって、この複数層酸素吸収構造が、少なくとも2つの反応性酸素捕捉層を含む複数層酸素吸収構造であって、
酸素透過性の基材ポリマーと酸素捕捉剤とを含む高速吸収高反応性酸素捕捉システムと、
高受動酸素バリアの基材ポリマーと酸素捕捉剤とを含む長寿命層と、
が順番に設けられたパッケージ。
【請求項47】
各反応層の無次元の反応性が、等価で均一反応性の均質な層の初期チーレ数φで定義して、3よりも大きい、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項48】
前記酸素捕捉反応性材料は、光還元可能なアントラキノン系酸素捕捉材料を含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項49】
前記高速吸収層は、熱シール可能な基材ポリマー中に分散された酸素捕捉反応性材料を含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項50】
前記長寿命層は、熱シール可能な酸素透過性の基材ポリマーに共有結合された酸素捕捉反応性材料を含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項51】
前記熱シール可能な酸素透過性基材ポリマーは、大きなモル分率の第2級ヒドロキシル基を含む、請求項48に記載のパッケージ。
【請求項52】
前記熱シール可能な酸素透過性の基材ポリマーは、熱シール可能なアクリル系接着樹脂を含む、請求項51に記載のパッケージ。
【請求項53】
熱シール可能なポリマーに熱シール不可能なポリマーが混合されて、前記酸素透過性基材ポリマーが形成され、前記酸素透過性基材はこの熱シール不可能なポリマーに共有結合された酸素捕捉反応性種を含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項54】
前記酸素バリアの基材ポリマーはポリビニルアルコールを含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項55】
前記長寿命の酸素捕捉層は、PVOH,EVOHまたはこれらの混合物を含む基材ポリマー中に分散されたアントラキノン系酸素捕捉剤を備え、この酸素バリアポリマー基材が、アントラキノンのケトエノール互変異性を紫外光で有効に誘起させるために、第2級のヒドロキシル基中の水素原子ソースを含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項56】
さらに、前記高速吸収層とは反対側の前記長寿命酸素捕捉層に隣接して配された受動構造支持層を含む、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項57】
前記構造支持層は、硬質または半硬質な熱可塑性ポリマーである、請求項56に記載のパッケージ。
【請求項58】
前記高速吸収層は、使用状態において250cc mm/(m・day・atm)を越える酸素透過性を持つ、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項59】
前記長寿命層は、使用状態において2.5cc mm/(m・day・atm)を下回る酸素透過性を持つ、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項60】
前記受動構造支持層は、ポリエステルまたはポリエステル共重合体から作られる、請求項56に記載のパッケージ。
【請求項61】
前記長寿命層の厚さは、25〜125マイクロメータである、請求項46に記載のパッケージ。
【請求項62】
前記第3層の厚さは、15〜500マイクロメータであり、この層は構造を支持する働きをする、請求項56に記載のパッケージ。
【請求項63】
さらに、少なくとも1方側に金属フィルムを含む、請求項56に記載のパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【公表番号】特表2011−520640(P2011−520640A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501850(P2011−501850)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/030070
【国際公開番号】WO2009/120393
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(509196903)マルチソーブ テクノロジーズ インク (9)
【Fターム(参考)】