説明

重合性化合物、重合性液晶組成物並びにそれらの重合体及びフィルム

【課題】
液晶表示装置等の表示装置に用いられる、偏光板や位相差板等の光学補償フィルムやマルチドメインフィルム等の光学異方性フィルム用材料として有用な、重合性化合物、それを用いる重合性液晶組成物並びにそれらの重合体及びフィルムを提供する。
【解決手段】
重合可能部位であるエキソメチレン構造部位を有する重合性化合物(例えば、下記式[9]で表される重合性化合物)、これらと重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物並びにそれらの重合体及びフィルムにより達成される。
【化1】


(式中、nは8〜10の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性部位と液晶構造部位を有する重合性化合物及びそれを含有する重合性液晶組成物並びにそれらを用いて得られる重合体及びフィルムに関する。そして、その用途は、表示装置や記録材料等の光学特性を有する材料、特に液晶ディスプレイ用の偏光板及び位相差板等の光学補償フィルムである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示品位の向上や軽量化等の要求から、偏光板や位相差板等の光学補償フィルムとして、内部の分子配向構造が制御された高分子フィルムの要求が高まっている。そのため、重合性液晶化合物が有する光学異方性を利用したフィルムの開発がなされている。ここで用いられる重合性液晶化合物は、一般に、重合性基と液晶構造部位(スペーサー部とメソゲン部を有する構造部位)を有する液晶化合物であり、重合性基としてアクリル基が広く用いられている。このような重合性液晶化合物を用いて得られる重合体は、液晶状態で紫外線等の放射線を照射して重合する方法により得られる。例えば、アクリル基を有する特定の重合性液晶性化合物を支持体間に担持し、該化合物を液晶状態に保持しつつ放射線を照射して重合する方法(例えば、特許文献1参照。)や、アクリル基を有する2種類の重合性液晶化合物の混合物、又は該混合物にカイラル液晶を混合した組成物に光重合開始剤を添加し、紫外線を照射することで重合体が得られることが知られている。(例えば、特許文献2参照。)
【0003】
また、重合性液晶組成物を用い、一方の領域を液晶状態で硬化し、もう一方の領域を等方性液体状態で硬化して得られるマルチドメインフィルムを、位相差フィルムに用いる提案がなされており、半透過型液晶ディスプレイの視認性が向上したことが報告されている。(例えば、非特許文献1参照。)
上述したような、重合性液晶化合物を用いる光学異方性フィルムの製造プロセスにおいては、ハンドリング性の良好な重合性液晶組成物を用いることが工業的に有利であり、この点において、通常の製造プロセス環境下で安定な液晶状態を示す、結晶化温度の低い重合性液晶組成物が求められている。そして、マルチドメインフィルムにおいては、等方性液体状態で重合する領域の透明性も非常に重要である。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−70407号公報
【特許文献2】特開平9−208957号公報
【非特許文献1】ドルカンプ等(C.Doornkamp et al.)「2004年 エス・アイ・ディ 国際シンポジウム技術論文ダイジェスト(2004 SID International Symposium Digest of Technical Papers, volume XXXV, book I)」,米国,(2004年),35巻,p.670
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一の目的は、重合体を製造することのできる新規な重合化合物を提供することである。さらには重合性液晶組成物の結晶化温度(Tc)を低下できる重合性化合物を提供することである。第二の目的は、結晶化温度が低く通常の環境下で安定な液晶性を示す、前記の重合性化合物を含有する重合性液晶組成物を提供することである。第三の目的は、前記の重合性液晶組成物を用いて得られるフィルムを提供することであり、そして、第四の目的は、重合性液晶組成物を等方性液体状態で重合し、透明性の高いフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の状況に鑑み鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。本発明は、エキソメチレン構造部位と液晶構造部位を有する重合性化合物及びそれを含有する重合性液晶組成物並びにそれを用いた重合体及びフィルムに関するものである。即ち、
1.下記式[1]で表される重合性化合物、
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、nは1〜12の整数を表し、Xは2価のベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシルを表し、Xは2価のベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシル、COO、OCO、HC=N、N=CHを表し、XはCN、CF、ハロゲン原子、水素原子、炭素数が1〜6のアルコキシ基又は炭素数が1〜10のアルキル基を表す。)
【0009】
2.Xが2価のベンゼン、Xが2価のベンゼン、XがCN基、且つnが8〜10の整数である上記1に記載の重合性化合物、
3.上記1に記載の重合性化合物のうちの少なくとも1種と、1種以上の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物、
4.上記2に記載の重合性化合物を含有する上記3に記載の重合性液晶組成物。
5.上記1又は2に記載の少なくとも1種の重合性化合物を用いて得られる重合体、
6.上記1又2に記載の少なくとも1種の重合性化合物を用いて得られるフィルム、
7.上記3又は4に記載の重合性液晶組成物を用いて得られる重合体、
8.上記3又は4に記載の重合性液晶組成物を用いて得られるフィルム、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合性化合物は、重合性液晶組成物とした際に相溶性が良好であり、そして、重合性液晶化合物に添加することで、結晶化温度を低下することができる。そのため、本発明の重合性液晶組成物は、通常環境下で安定な液晶状態を示し、ハンドリング性が良好である。
また、本発明の重合性化合物のうち液晶性を呈するものからなる重合性液晶組成物は、等方性液体状態で重合した場合に、透明性が高いフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この明細書における用語の使い方は次の通りである。用語「重合性化合物」とは、例えばアクリル基のような重合可能部位を有する化合物を意味する。用語「重合性液晶化合物」は、分子中にアクリル基やラクトン環のような重合可能部位と液晶構造部位を有し、かつ液晶相を呈する化合物を意味する。用語「液晶構造」とは、一般に液晶分子を表す場合に用いられるスペーサー部とメソゲン部を有する構造、を意味する。用語「重合性液晶組成物」は、主成分として、重合性液晶化合物の混合物又は重合性液晶化合物と重合性化合物の混合物を含有する組成物を意味し、且つ液晶相を呈する特性を有する組成物を意味する。また、用語「液晶性」は、液晶相を呈することを意味する。
本発明について以下に説明する。
【0012】
<重合性化合物>
本発明の重合性化合物は、重合可能部位であるエキソメチレン構造部位と液晶構造部位を有する化合物であって、式[1]で表される。
【0013】
【化2】

【0014】
式[1]において、Xは2価のベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシルを表し、好ましくは、2価のベンゼンである。Xは2価のベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシル、COO、OCO、HC=N、N=CHを表し、好ましくは、2価のベンゼン又はシクロヘキシルである。XはCN基、CF基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数が1〜6のアルコキシ基又は炭素数が1〜10のアルキル基を表し、好ましくは、CN基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数が1〜10のアルキル基又はハロゲン原子である。そして、nは、1〜12の整数を表し、好ましくは5〜12の整数であり、より好ましくは8〜10の整数である。
本発明の式[1]で表される重合性化合物の好ましい形態は、Xが2価のベンゼン、Xが2価のベンゼン又はシクロヘキシル、XがCN基、炭素数が1〜6のアルコキシ基、炭素数が1〜10のアルキル基又はハロゲン原子、且つ、nが5〜12の整数である。
このような重合性化合物の例として以下の化合物が挙げられる。
【0015】
【化3】

【0016】
上記の式[1]で表される重合性化合物の中でも、下記式[9]で表されるように、Xが2価のベンゼン、Xが2価のベンゼン、XがCN基、且つnが8〜10の整数の場合、液晶性を呈する重合性液晶化合物である。
【0017】
【化4】


(式中、nは8〜10の整数を表す。)
【0018】
上記の式[1]で表される重合性化合物は、重合性液晶化合物と良好に混合することができ、重合性液晶組成物としての結晶化温度を低下することができる。
このような、重合性液晶組成物の結晶化温度が低下する作用効果は定かではないが、本発明の重合性化合物のエキソメチレン構造部位が、結晶化を阻害することで、結晶化温度を低くすることに作用しているものと推察される。
なお、式[9]で表される重合性化合物は液晶性を呈する重合性液晶化合物であり、後述するように重合性液晶組成物の式[1]で表される重合性化合物として用いることもできるし、重合性液晶化合物としても用いることもできる。
【0019】
<重合性化合物の合成>
本発明の重合性化合物の合成方法は、有機合成化学における手法を組み合わせることによって合成することができ、特に限定されない。例えば以下の方法で合成することができる。
本発明の一般式[1]で表される重合性化合物は、下記の合成スキーム(A)で示されるように、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステルと化合物(i)で表されるアルコールを反応させることにより合成することができる。
【0020】
【化5】


合成スキーム(A)中の、式(i)で表されるアルコールは、下記の合成スキーム(B)のように、式(ii)で表されるアルコールと1−ブロモー1−ヘキサノールなどの末端ブロモアルコールと反応させることにより合成することができる。
【0021】
【化6】

【0022】
上記の合成スキーム(A)及び(B)の合成スキームで用いる原料は、必要に応じて市販の化合物を用いても良いし、別途合成して用いても良い。
【0023】
<重合性液晶組成物>
本発明の重合性液晶組成物における一つの態様は、式[1]で表される重合性化合物のうちの少なくとも1種と、1種以上の重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物である。
この重合性液晶組成物に用いる重合性液晶化合物は、上記式[1]で表される重合性化合物との相溶性を損なわず、上記式[1]で表される重合性化合物が共存する重合性液晶組成物が液晶性を呈する限りにおいて特に限定されない。一般には、重合可能な基としてのアクリル基と、所謂スペーサー部位とメソゲン部位を有する構造を持つ化合物が挙げられる。その際、重合性液晶化合物は、単官能性であっても多官能性であっても良い。その具体例として、式[10]〜式[15]の化合物等が挙げられる。
【0024】
【化7】

【0025】
この重合性液晶組成物において、1種以上の重合性液晶化合物は、本発明の重合性化合物が100質量部に対し、300〜1800質量部が好ましく、より好ましくは、500〜900質量部である。
なお、式[9]で表される重合性化合物は、重合性液晶化合物であり、重合性液晶化合物として用いることもできる。その際、複数種を組み合わせて用いることもできる。
本発明の重合性液晶組成物におけるもう一つの態様は、上記式[9]で表される重合性化合物のうち少なくとも1種を含有する重合性液晶組成物であり、式[9]で表される化合物のうちから1種又は複数種用いることができる。この場合、式[9]で表される重合性化合物は、液晶性を呈する重合性液晶化合物なので、式[9]で表される重合性化合物以外の重合性液晶化合物を併用してもしなくても良い。式[9]で表される重合性化合物以外の重合性液晶化合物を併用する場合は、式[9]で表される重合性化合物が100質量部に対し、1800質量部以下が好ましく、より好ましくは、900質量部以下である。
この重合性液晶組成物の例としては、上記式[9]で表される重合性化合物のうちの2種類を含有するものが挙げられる。具体的には、上記式[9]において、nが8の化合物とnが10の化合物を含有する組成等である。
【0026】
このように、本発明の重合性液晶組成物においては、2つの態様があるが、いずれも、本発明の重合性化合物を含有していない組成物と比較して、結晶化温度が低下する。そのため、通常の環境下で安定な液晶性を呈する。更には、この液晶相が、室温でエナンチオトロピックな液晶相である場合は、液晶状態がより安定化し、取り扱いが容易になるため好ましい。
【0027】
本発明の重合性液晶組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、本発明以外の重合性化合物や、重合性基を有しない液晶化合物(以下、その他の混合物と称す。)を混合することもできる。前記のその他の混合物は、複数種を組み合わせて用いることもできる。その際、本発明以外の重合性化合物は単官能性であっても多官能性であっても良い。
このような化合物の例として、ネマチック液晶、強誘電性液晶、及び市販の液晶組成物等が挙げられる。
【0028】
上記のその他の混合物は、上記式[1]で表される重合性化合物と重合性液晶化合物(式[9]で表される重合性液晶化合物を含む)を含有する重合性液晶組成物の場合、及び上記式[9]で表される重合性化合物を2種以上含有する重合性液晶組成物の場合、それぞれの組成物中の化合物の合計量(以下、合計重合性液晶化合物と称す。)の100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
なお、重合性化合物が[9]の重合性液晶化合物を単独に用いた場合も上記の合計重合性液晶化合物として扱うこととする。
【0029】
また、本発明の重合性液晶組成物には、その重合反応性を向上させる目的として、光重合開始剤及び熱重合開始剤を添加することもできる。
光重合開始剤としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製の(以下、商品名)イルガキュア(登録商標)184、イルガキュア(登録商標)651、イルガキュア(登録商標)500、イルガキュア(登録商標)2959、イルガキュア(登録商標)369、イルガキュア(登録商標)907、イルガキュア(登録商標)1300、イルガキュア(登録商標)819、イルガキュア(登録商標)1700、イルガキュア(登録商標)1800、イルガキュア(登録商標)1850、イルガキュア(登録商標)784等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような光重合開始剤は複数種を組み合わせて用いることもできる。
このような光重合開始剤を添加する場合、その添加量は、合計重合性液晶化合物が100質量部に対して5質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下である。
【0030】
熱重合開始剤としては、例えば、AIBN等が挙げられる。このような熱重合開始剤は複数種を組み合わせて用いることもでき、その添加量は、合計重合性液晶化合物が100質量部に対して5質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下である。
そして、本発明の重合性液晶組成物は、その保存安定性を向上させるために、ヒドロキノン類やヒドロキノンモノアルキルエーテル類等の安定剤を添加しても良い。
例えば、メチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどが挙げられる。これら安定剤は複数種を組み合わせて用いることもでき、その添加量は、合計重合性液晶化合物の100質量部に対して0.1質量部以下が好ましい。
【0031】
また、本発明の重合性液晶組成物は、基板との密着性を向上させる目的で、密着促進剤を含んでいてもよい。その際、複数種の密着促進剤を組み合わせて用いても良い。
このような密着促進剤の具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、ビニルトリクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環状化合物や、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物等を挙げることができる。
【0032】
そして、本発明の重合性液晶組成物は、有機溶媒を添加することもできる。その際、有機溶媒を含有した状態で、液晶性を呈さなくてもかまわない。
用いる有機溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の窒素含有溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル類、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等のアルコキシエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジグリコールジアルキルエステル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のジグリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルエステル類、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類を挙げることができる。
【0033】
これらの有機溶媒は単独でも2種類以上を組み合わせても用いることもできる。この中でも地球環境、作業環境への安全性観点からプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルが好ましい。
【0034】
更に、本発明の重合性液晶組成物は、基板との親和性を向上させる目的で、界面活性剤を含んでいてもよい。このような界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など特に限定されないが、基板との親和性改善効果の高いフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0035】
フッ素系界面活性剤の具体例としては(以下、商品名)、エフトツプEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、メガフアツクF171、F173、R−30(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、界面活性剤は、複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
かくして、好ましい重合性液晶組成物の例としては、式[1]で表される重合性化合物が100質量部、1種以上の重合性液晶化合物が、300〜900質量部、光開始剤が5質量部以下の重合性液晶組成物や、式[9]で表される重合性化合物が100質量部、重合性液晶性化合物が900質量部以下の液晶組成物が挙げられる。
本発明の重合性液晶組成物を得る方法は特に限定されない。重合性液晶組成物の構成要素を一度に混合しても良いし、順次混合しても良い。その際、一つの構成要素が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で混合しても良く、個別に順次添加しても良い。
【0037】
本発明の重合性液晶組成物は、光学異方体を製造する際に、液晶状態で光重合において意図しない熱重合の誘起を避け、分子の均一な配向状態の固定を容易にする為に、室温においてエナンチオトロピックな液晶相を示すことが好ましい。また、重合性液晶組成物が有機溶媒を含有する場合は、溶媒を除去した際に室温において、エナンチオトロピックな液晶相を示すことが好ましい。
【0038】
<重合体及びフィルム>
本発明の重合性液晶化合物(式[9]で表される重合性液晶化合物を使用する場合)又は重合性液晶組成物は、光を照射することや加熱によって重合体を得ることができる。なお、本発明の重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物から重合体を得る場合は、上記の重合性液晶組成物で述べた光開始剤、熱重合開始剤、増感剤等をそれぞれ記載の量で用いることができる。また、重合性液晶化合物の場合は、合計重合性液晶性化合物100質量部を重合性液晶化合物100質量部と置き換えた量に対応する量で用いることができる。なお、重合性化合物から重合体を得る場合も同一量を用いることができる。
また、フィルムを得る方法としては、2枚の基板間に重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を狭持し、光を照射して重合する方法や、スピンコートする方法やキャスト等の方法により基板に重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を塗布し、光を照射する方法等が挙げられる。
【0039】
基板には、ガラス、石英、プラスチックシート、カラーフィルター、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックフィルム等を用いることができる。そして、これらの基板の一方に、ITO等の機能性薄膜が形成されたガラス、プラスチックシートやプラスチックフィルムや、ステンレススチールや、クロムやアルミ等の金属をメッキ或いは蒸着したベルトやドラムを使用することも可能である。また、フィルムの配向性を向上する目的で、基板に配向処理を施すことが好ましい。配向処理の方法としては、一般的に知られている、ポリイミド前駆体、ポリイミドや、ポリビニルシンナメート等を含有する配向材を塗布し、ラビング又は偏光紫外線を照射して配向処理する方法、二酸化ケイ素の斜法蒸着膜を形成する方法や、ラングミュアー膜を形成する方法などを挙げることができる。
2枚の基板間に重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を狭持する方法では、スペーサー等によって2枚の基板間に空隙を形成したセルを作成し、毛細管現象やセルの空隙を減圧する等の方法で重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物をセルに注入した後、光を照射して重合する。
また、より簡便な方法としては、スペーサー等を設けた基板上に、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物をのせてから、もう一方の基板を重ね合わせてセルを作成し、光を照射して重合する方法もある。その際、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物は、流動化したものを用いても良いし、基板に載せてから加熱等により流動化させても良い。但し、もう一方の基板を重ね合わせる前に、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を流動化させる必要がある。
【0040】
重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を塗布する方法では、これら化合物または液晶組成物を塗布する工程と光や熱によって重合する工程の途中に、必要に応じてホットプレート等で加熱する工程を加えても良い。この工程は、特に、有機溶媒を含有する重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物を用いる場合は、有機溶媒を除去できるので有効である。
上記のいずれの方法においても、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物が液晶相を呈する状態で重合することで、配向した光学異方性を有するフィルムを得ることができる。
また、隣り合うドメイン毎に異なる配向を有するマルチドメイン状態のフィルムを得るためには、重合の工程でマルチドメイン化する方法や基板の配向処理をマルチドメイン化することでフィルムをマルチドメイン化する方法が用いられる。
【0041】
重合の工程でマルチドメイン化する方法は、液晶状態の重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物に、マスクを介して紫外線を露光して重合したドメインを形成し、残りのドメインは、等方性液体状態で重合する方法等が挙げられる。
また、基板の配向処理をマルチドメイン化する方法は、基板に形成した配向材にマスクを介してラビングする方法やマスクを介して紫外線を照射する方法等が挙げられる。このような方法により、ラビングされたドメイン及び紫外線を照射したドメインは、配向処理された部分であり、その他は未処理部分であるマルチドメイン化された基板が得られる。このマルチドメイン化された基板上に形成された重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物は、配向材層の影響を受けて、マルチドメイン化する。このような配向処理方法の他に、電場、磁場を利用する方法も使用することができる。
【0042】
本発明の重合性化合物は、重合性液晶組成物と相溶性が良好であり、そして、その重合性液晶組成物に添加することで、結晶化温度を低下することができる。そのため、本発明の重合性液晶組成物は、通常環境下でのハンドリング性が良好であり、光学異方性を有する重合体を提供でき、偏光板や位相差板等に好適に用いることができる。
また、本発明の重合性化合物のうち液晶性を呈するものを用いる重合性液晶組成物は、等方性液体状態で重合した場合に、透明性が高い重合体を得ることができる。そのため、マルチドメインフィルムに好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、これに限定されるものではない。尚、実施例で用いた各測定方法は以下の通りである。
【0044】
<NMRの測定>
化合物を重水素化クロロホルムに溶解し、300MHzのH−NMR(日本電子(株)製)を用いて測定した。
【0045】
<液晶相の観察>
液晶相の同定は、ホットステージ(MATS−2002S、東海ヒット社製)上で、試料を加熱し、偏光顕微鏡((株)ニコン製)を用いて観察して行った。相転移温度はマックサイエンス製示差走査熱分析装置(DSC3100SR)(以下、DSCと称す。)を用いて測定した。
【0046】
<分子量測定>
試料を、0.5質量%となるように高速クロマトグラフィー用テトラヒドロフランに溶解し、JSACO製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと称す。)装置を用いて測定した。この測定により、ポリスチレン換算した数平均分子量及び重量平均分子量を得た。その際、カラムは、昭和電工(株)製カラム(Shodex GPC KF−803L)を用いた。
【0047】
<ガラス転移温度測定>
ガラス転移温度は、マックサイエンス製示差走査熱分析装置(DSC3100SR)を用いて測定した。
【0048】
<透過率測定>
透過率は、(UV3100PC、SHIMADZU製)を用いて、波長600nmの透過率で測定した。
【0049】
<フィルムのリタデーション値>
フィルムのリタデーション値はリタデーション測定装置(RETS−100、大塚電子(株)製)を用いて測定した。
【0050】
<実施例1>
<重合性化合物(Q1)の合成>
50ml二口ナスフラスコに、p−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール2.0g(8.2mmol)、6−ブロモ−1−ヘキサノール1.6g(8.6mmol)、炭酸カリウム2.3g(16.4mmol)、アセトン25mlを仕込み、還流管と玉栓を取り付け、温度63°Cで還流下48時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液をろ過し、減圧下で溶媒を留去した。残渣に酢酸エチル(50ml)と1N塩酸(50ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(50ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(3/1)で溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により精製した後に、減圧下で溶媒を留去し、更に減圧乾燥して、白色固体を2.4g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P1)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率83%)
【0051】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.14-7.06 (m, 2H), 6.85-6.77 (m, 2H), 3.93 (t, 2H), 3.64 (t, 2H), 2.39 (tt, 1H), 1.93-1.15 (m, 23H), 1.15-0.95 (m, 2H), 0.89 (t, 3H)
【0052】
【化8】

【0053】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P1)1.79g(5.2mmol)、水素化ナトリウム0.24g(5.5mmol)、テトラヒドロフラン(以下、THFと称す。)15mlを仕込み、ゴム栓と窒素風船を取り付けた。前記溶液を撹拌しながら、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.0g(5.4mmol)を加え、室温で24時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液に1N塩酸(50ml)と酢酸エチル(50ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(50ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(3/1)で溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を1.7g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q1)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率72%)
【0054】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.14-7.06 (m, 2H), 6.85-6.77 (m, 2H), 6.28 (dd, 1H), 5.85 (dd, 1H), 4.28-4.15 (m, 4H), 3.93 (t, 2H), 3.49 (t, 2H), 2.40 (tt, 1H), 1.93-1.15 (m, 26H), 1.15-0.95 (m, 2H), 0.89 (t, 3H)
【0055】
【化9】

【0056】
<実施例2>
<重合性化合物(Q2)の合成>
200mlナスフラスコに、6−ブロモ−1−ヘキサノール11.3g(62.5mmol)、4’−フルオロ−4−ヒドロキシビフェニル10.7g(56.9mmol)、炭酸カリウム15.8g(113.7mmol)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称す。)100mlを量り取り、冷却管を取り付け、温度70°Cで9時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応溶液を3N塩酸(500ml)中に注ぎ、析出した白色固体をろ過した後、純水500mlで3回洗浄し、白色固体を15.8g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P2)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率96%)
【0057】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.54-7.44 (m, 4H), 7.12-7.05 (m, 2H), 6.95 (d, 2H), 4.00 (t, 2H), 3.67 (t, 2H), 1.89-1.77 (m, 2H), 1.68-1.37 (m, 6H)
【0058】
【化10】

【0059】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P2)3.2g(11.0mmol)、水素化ナトリウム0.53g(12.1mmol)、THF20mlを加え、ゴム栓、窒素風船を取り付け、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.9g(10.5mmol)を量り取り、室温で23時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液に1N塩酸(50ml)と酢酸エチル(50ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(50ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣をヘキサン/クロロホルム/酢酸エチル(15/2/3)で溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/クロロホルム/酢酸エチル=15/2/3)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を2.0g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q2)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率47%)
【0060】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.54-7.43 (m, 4H), 7.15-7.04 (m, 2H), 6.95 (d, 2H), 6.29 (d, 1H), 5.86 (d, 1H), 4.28-4.16 (m, 4H), 3.99 (t, 2H), 3.51 (t, 2H), 1.87-1.75 (m, 2H), 1.71-1.59 (m, 2H), 1.58-1.41 (m, 4H), 1.30 (t, 3H)
【0061】
【化11】

【0062】
<実施例3>
<重合性化合物(Q3)の合成>
50ml二口ナスフラスコに、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボニトリル2.0g(10.2mol)、6−ブロモ−1−ヘキサノール2.0g(10.7mmol)、炭酸カリウム2.9g(20.5mmol)、アセトン30mlを仕込み、還流管と玉栓を取り付け、温度63°Cで還流下48時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液をろ過し、減圧下で溶媒を留去した。残渣に酢酸エチル(50ml)と1N塩酸(50ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(50ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルで溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により精製した後に、減圧下で溶媒を留去し、更に減圧乾燥して、白色固体を2.1g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P3)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率68%)
【0063】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.70-7.60 (m, 4H), 7.55-7.48 (m, 2H), 7.02-6.94 (m, 2H), 4.01 (t, 2H), 3.67 (t, 2H), 1.89-1.76 (m, 2H), 1.68-1.35 (m, 6H)
【0064】
【化12】

【0065】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P3)1.5g(5.2mmol)、水素化ナトリウム0.24g(5.4mmol)、THF20mlを仕込み、ゴム栓と窒素風船を取り付けた。前記溶液を撹拌しながら、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.2g(6.1mmol)を加え、室温で19時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液を濾過し、ろ液にシリカゲルを3g加えた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を1.0g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q3)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率48%)
【0066】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.72-7.61 (m, 4H), 7.56-7.48 (m, 2H), 7.03-6.95 (m, 2H), 6.29 (d, 1H), 5.86 (d, 1H), 4.27-4.16 (m, 4H), 4.01 (t, 2H), 3.51 (t, 2H), 1.88-1.76 (m, 2H), 1.71-1.59 (m, 2H), 1.58-1.41 (m, 4H), 1.30 (t, 3H)
【0067】
【化13】

【0068】
また、得られた重合性化合物(Q3)の融点をマックサイエンス製示差走査熱分析装置(DSC3100SR)にて測定した結果、温度24°Cであった。
【0069】
<実施例4>
<重合性化合物(Q4)の合成>
100mlナスフラスコに、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボニトリル4.2g(21.6mmol)、8−ブロモ−1−オクタノール5.0g(23.8mmol)、炭酸カリウム6.0g(43.2mmol)、DMF50mlを仕込み、冷却管を取り付け温度70°Cで8時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応溶液を3N塩酸400ml中に滴下し、析出した白色固体をろ過した後、純水400mlで3回洗浄して、白色固体を6.5g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P4)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率93%)
【0070】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.71-7.62 (m, 4H), 7.52 (d, 2H), 6.99 (d, 2H), 4.00 (t, 2H), 3.65 (t, 2H), 1.88-1.73 (m, 2H), 1.64-1.30 (m, 10H)
【0071】
【化14】

【0072】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P4)2.1g(6.4mmol)、水素化ナトリウム0.31g(7.0mmol)、THF20mlを加え、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.1g(6.1mmol)を加え、室温で15時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液を濾過し、ろ液にシリカゲルを3g加えた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/クロロホルム/酢酸エチル=15/2/3)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を2.0g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q4)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率48%)
【0073】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.73-7.62 (m, 4H), 7.53 (d, 2H), 6.99 (d, 2H), 6.28 (d, 1H), 5.86 (d, 1H), 4.28-4.15 (m, 4H), 4.00 (t, 2H), 3.49 (t, 2H), 1.87-1.74 (m, 2H), 1.69-1.29 (m, 13H)
【0074】
【化15】

【0075】
得られた重合性化合物(Q4)の液晶相を観察した結果、温度58°Cで等方性液体となり、降温時に温度40°Cでネマチック相を形成した。
【0076】
<実施例5>
<重合性化合物(Q5)の合成>
200mlナスフラスコに、p−(トランス−4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノール10.1g(36.9mmol)、10−ブロモ−1−デカノール8.3g(35.2mmol)、炭酸カリウム10.6g(73.8mmol)、DMF85mlを仕込み、冷却管を取り付け、温度70°Cで22時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応溶液を3N塩酸500ml中に注ぎ、析出した白色固体をろ過した後、純水500mlで3回洗浄して、白色固体を11.7g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P5)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率77%)
【0077】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.11 (d, 2H), 6.82 (d, 2H), 3.92 (t, 2H), 3.64 (t, 2H), 2.40 (tt, 1H), 1.92-1.70 (m, 6H), 1.60-1.15 (m, 29H), 0.89 (t, 3H)
【0078】
【化16】

【0079】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P5)2.7g(6.4mmol)、水素化ナトリウム0.31g(7.0mmol)、THF20mlを仕込み、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.2g(6.4mmol)を加え、室温で23時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液を濾過し、ろ液にシリカゲルを3g加えた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/クロロホルム/酢酸エチル=3/2/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を1.5g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q5)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率44%)
【0080】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.11 (d, 2H), 6.82 (d, 2H), 6.28 (d, 1H), 5.86 (d, 1H), 4.29−4.16 (m, 4H), 3.92 (t, 2H), 3.48 (t, 2H), 2.40 (tt, 1H), 1.93−0.95 (m, 40H), 0.89 (t, 3H)
【0081】
【化17】

【0082】
また、得られた重合性化合物(Q5)の融点をマックサイエンス製示差走査熱分析装置(DSC3100SR)にて測定した結果、温度37°Cであった。
【0083】
<実施例6>
<重合性化合物(Q6)の合成>
200mlナスフラスコに、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルカルボニトリル10.0g(51.5mmol)、10−ブロモ−1−デカノール13.5g(56.6mmol)、炭酸カリウム14.3g(102.9mmol)、DMF100mlを仕込み、冷却管を取り付け、温度70°Cで17時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応溶液を3N塩酸500ml中に滴下し、析出した白色固体をろ過した後、純水500mlで3回洗浄し、白色固体を14.5g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P6)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率80%)
【0084】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.71-7.62 (m, 4H), 7.53 (d, 2H), 7.04 (d, 2H), 4.01 (t, 2H), 3.64 (t, 2H), 1.88-1.73 (m, 2H), 1.68-1.33 (m, 14H)
【0085】
【化18】

【0086】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P6)2.1g(7.3mmol)、水素化ナトリウム0.25g(8.1mmol)、THF20mlを仕込み、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.5g(7.7mmol)を加え、室温で18時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液を濾過し、ろ液にシリカゲルを3g加えた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/クロロホルム/酢酸エチル=5/2/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を2.8g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q6)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率48%)
【0087】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.73-7.62 (m, 4H), 7.53 (d, 2H), 6.99 (d, 2H), 6.28 (d, 1H), 5.86 (d, 1H), 4.29-4.16 (m, 4H), 4.01 (t, 2H), 3.48 (t, 2H), 1.88-1.73 (m, 2H), 1.70-1.24 (m, 14H)
【0088】
【化19】

【0089】
得られた重合性化合物(Q6)の液晶相を観察した結果、温度45°Cで等方性液体となり、降温時に温度37°Cでスメクチック相を形成した。
【0090】
<実施例7>
<重合性化合物(Q7)の合成>
100mlナスフラスコに、4−ヒドロキシ−4’−メトキシビフェニル5.1g(25.3mmol)、10−ブロモ−1−デカノール7.2g(27.9mmol)、炭酸カリウム6.7g(48.3mmol)、DMF50mlを仕込み、冷却管を取り付け、温度70°Cで17時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応溶液を3N塩酸400ml中に滴下し、析出した白色固体をろ過した後、純水400mlで3回洗浄し、白色固体を8.5g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(P7)で表される中間体化合物であることを確認した。(収率95%)
【0091】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.50-7.42 (m, 4H), 6.98-6.91 (m, 4H), 3.98 (t, 2H), 3.84 (s, 3H), 3.64 (t, 2H), 1.88-1.73 (m, 2H), 1.68-1.33 (m, 14H)
【0092】
【化20】

【0093】
次に、50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P7)3.4g(9.5mmol)、水素化ナトリウム0.50g(11.4mmol)、THF20mlを仕込み、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、2−(ブロモメチル)アクリル酸エステル1.8g(9.2mmol)を加え、室温で13時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液を濾過し、ろ液にシリカゲルを3g加えた後、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/クロロホルム/酢酸エチル=2/2/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を1.0g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Q7)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率23%)
【0094】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.49-7.43 (m, 4H), 6.98-6.91 (m, 4H), 6.29 (d, 1H), 5.86 (d, 1H), 4.29-4.16 (m, 4H), 3.98 (t, 2H), 3.84 (s, 3H), 3.48 (t, 2H), 1.86-1.73 (m, 2H), 1.70-1.24 (m, 14H)
【0095】
【化21】

【0096】
また、得られた重合性化合物(Q7)の融点をマックサイエンス製示差走査熱分析装置(DSC3100SR)にて測定した結果、温度84°Cであった。
【0097】
<参考合成例1>
50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P4)3.0g(9.4mmol)、トリエチルアミン1.4mL(10.3mmol)、THF20mlを加え、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、アクリル酸クロリド0.8mL(10.3mmol)を加え、室温で15時間攪拌しながら反応した。反応終了後、残渣を酢酸エチルに溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル(4/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を1.8g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Z1)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率50%)
【0098】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.73-7.62 (m, 4H), 7.60-7.50 (m, 2H), 7.02-6.94 (m, 2H), 6.40 (dd, 1H), 6.12 (dd, 1H), 5.81 (dd, 1H), 4.15 (t, 2H), 4.01 (t, 2H), 1.87-1.74 (m, 2H), 1.74-1.62 (m, 2H), 1.55-1.29 (m, 8H)
【0099】
【化22】

【0100】
<参考合成例2>
50ml二口ナスフラスコに、上記で得られた中間体化合物(P6)3.0g(8.5mmol)、トリエチルアミン1.3mL(9.4mmol)、THF20mlを加え、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、アクリル酸クロリド0.8mL(9.4mmol)を加え、室温で5時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液に1N塩酸(100ml)と酢酸エチル(100ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(70ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を2.0g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(Z2)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率57%)
【0101】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.73-7.62 (m, 4H), 7.60-7.50 (m, 2H), 7.02-6.94 (m, 2H), 6.40 (dd, 1H), 6.12 (dd, 1H), 5.81 (dd, 1H), 4.15 (t, 2H), 4.00 (t, 2H), 1.87-1.74 (m, 2H), 1.74-1.62 (m, 2H), 1.55-1.29 (m, 12H)
【0102】
【化23】

【0103】
<参考合成例3>
100ml二口ナスフラスコに、p−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)フェノール8.0g(32.5mmol)、トリエチルアミン5.0mL(35.8mmol)、THF70mlを加え、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、アクリル酸クロリド2.9mL(35.7mmol)を加え、室温で3時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液に1N塩酸(100ml)と酢酸エチル(100ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(70ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(4/1)に溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を9.3g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(K1)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率96%)
【0104】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.25-7.17 (m, 2H), 7.06-7.00 (m, 2H), 6.59 (dd, 1H), 6.32 (dd, 1H), 5.99 (dd, 1H), 2.47 (tt, 1H), 1.97-1.85 (m, 4H), 1.52-0.96 (m, 13H), 0.90 (t, 3H)
【0105】
【化24】

【0106】
<参考合成例4>
200ml二口ナスフラスコに、p−(トランス−4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノール17.2g(62.6mmol)、トリエチルアミン11.0mL(79.4mmol)、THF100mlを加え、ゴム栓、窒素風船を取り付け、前記溶液を撹拌しながら、アクリル酸クロリド6.0mL(74.2mmol)を加え、室温で22時間攪拌しながら反応した。反応終了後、反応液に1N塩酸(150ml)と酢酸エチル(150ml)を加え、反応生成物を有機層に抽出した。有機層を飽和食塩水(100ml)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥し、濾過した後に、減圧下で溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(4/1)に溶解し、シリカカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:メルク製、シリカゲル60、ヘキサン/酢酸エチル=4/1)により精製した後、減圧下で溶媒を留去して白色固体を19.9g得た。
この白色固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(K2)で表される目的の重合性化合物であることを確認した。(収率97%)
【0107】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.25-7.17 (m, 2H), 7.06-7.00 (m, 2H), 6.59 (dd, 1H), 6.32 (dd, 1H), 5.99 (dd, 1H), 2.47 (tt, 1H), 1.97-1.85 (m, 4H), 1.52-0.96 (m, 17H), 0.90 (t, 3H)
【0108】
【化25】

【0109】
<実施例8>
10mlナスフラスコに、実施例1で得られた重合性化合物(Q1)0.71g、1,4−ジオキサン2.0ml、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す)5.2mgを仕込み、冷却管、窒素風船を取り付け、容器内を窒素雰囲気下にした後に、温度70°Cで24時間攪拌しながら反応した。反応終了後、その反応液をメタノール80ml中に投入し、沈殿した白色固体をろ過した後に減圧乾燥を行い、0.38gの重合体を得た。得られた重合体をNMR測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた重合体が、重合性化合物(Q1)の重合体であることが確認された。そして、この重合体の分子量は、数平均分子量5700、重量平均分子量9200であった。
【0110】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.14-7.00 (br, 2H), 6.85-6.70 (br, 2H), 4.28-3.18 (br, 8H), 2.45-2.30 (br, 1H), 1.92-0.95 (b, 30H), 0.89 (t, 3H)
【0111】
<実施例9>
10mlナスフラスコに、実施例2で得られた重合性化合物(Q2)0.81g、1,4−ジオキサン2.0ml、AIBN6.6mgを仕込み、冷却管、窒素風船を取り付け、容器内を窒素雰囲気下にした後に、温度70°Cで24時間攪拌しながら反応した。反応終了後、その反応液をメタノール80ml中に投入し、沈殿した白色固体をろ過した後に減圧乾燥を行い、0.24gの重合体を得た。得られた重合体をNMR測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた重合体が、重合性化合物(Q2)の重合体であることを確認した。そして、この重合体の分子量は、数平均分子量2800、重量平均分子量3700であった。
【0112】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.54-7.30 (br, 4H), 7.15-6.82 (br, 4H), 4.28-3.28 (br, 8H), 2.24-1.20 (br, 13H)
【0113】
<実施例10>
10mlナスフラスコに、実施例3で得られた重合性化合物(Q3)0.35g、1,4−ジオキサン2.0ml、AIBN2.8mgを仕込み、冷却管、窒素風船を取り付け、容器内を窒素雰囲気下にした後に、温度70°Cで24時間攪拌しながら反応した。反応終了後、その反応液をメタノール80ml中に投入し、沈殿した白色固体をろ過した後に減圧乾燥を行い、0.21gの重合体を得た。得られた重合体をNMR測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた重合体が、重合性化合物(Q3)の重合体であることを確認した。そして、この重合体の分子量は、数平均分子量2800、重量平均分子量7500であった。
【0114】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.71-7.30 (br, 6H), 7.00-6.78 (br, 2H), 4.27-3.16 (br, 8H), 2.22-1.14 (br, 9H)
【0115】
<実施例11>
10mlナスフラスコに、実施例4で得られた重合性化合物(Q4)0.86g、1,4−ジオキサン2.0ml、AIBN6.5mgを仕込み、冷却管、窒素風船を取り付け、容器内を窒素雰囲気下にした後に、温度70°Cで24時間攪拌しながら反応した。反応終了後、その反応液をメタノール80ml中に投入し、沈殿した白色固体をろ過した後に減圧乾燥を行い、0.70gの重合体を得た。得られた重合体をNMR測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた重合体が、重合性化合物(Q4)の重合体であることを確認した。そして、この重合体の分子量は、数平均分子量2500、重量平均分子量3900であった。
【0116】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.73-7.41 (br, 4H), 7.01-6.84 (br, 2H), 4.28-3.24 (br, 8H), 2.20-1.22 (br, 17H)
【0117】
<実施例12>
10mlナスフラスコに、実施例6で得られた重合性化合物(Q6)0.94g、1,4−ジオキサン2.0ml、AIBN6.6mgを仕込み、冷却管、窒素風船を取り付け、容器内を窒素雰囲気下にした後に、温度70°Cで24時間攪拌しながら反応した。反応終了後、その反応液をメタノール80ml中に投入し、沈殿した白色固体をろ過した後に減圧乾燥を行い、0.71gの重合体を得た。得られた重合体をNMR測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた重合体が、重合性化合物(Q6)の重合体であることを確認した。そして、この重合体の分子量は、数平均分子量4400、重量平均分子量9000であった。
【0118】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ7.80-7.42 (br, 6H), 7.00-6.82 (br, 2H), 4.29-3.21 (br, 8H), 2.20-1.23 (br, 21H)
【0119】
<実施例13>
実施例4で得られた重合性化合物(Q4)25.3mgと実施例6で得られた重合性化合物(Q6)25.1mgを混合して液晶組成物とした。この液晶組成物の液晶性を評価したところ、温度54°Cで等方性液体となり、降温時に温度30.6°Cで液晶相を形成した。そして、液晶相から結晶相への転移温度は、−22.7°Cであった。
【0120】
<実施例14>
実施例6で得られた重合性化合物(Q6)10.5mg、参考合成例3で得られた化合物(K1)10.5mg、参考合成例4で得られた化合物(K2)10.5mgを混合して液晶組成物とした。この液晶組成物の液晶性を評価したところ、昇温時に温度45.9°Cで等方性液体となり、降温時に温度43.3°Cで液晶相を形成した。そして、液晶相から結晶相への転移温度は、−6.4°Cであった。
【0121】
<比較例1>
参考合成例1で得られた化合物(Z1)9.9mgと参考合成例2で得られた化合物(Z2)9.9mgを混合した。この混合物の液晶性を評価したところ、温度63.7°Cで等方性液体となり、降温時に温度47.7°Cで液晶相を形成した。そして、液晶相から結晶相への転移温度は、−1.5°Cであり、実施例13の液晶組成物に比べて高い温度であった。
【0122】
<比較例2>
参考合成例3で得られた化合物(K1)100.4mgと参考合成例4で得られた化合物(K2)100.2mgを混合した組成物を調整し、この組成物の液晶性を評価したところ、温度53.7°Cで等方性液体となり、降温時に温度51.8°Cでネマチック相を形成した。そして、液晶相から結晶相への転移温度は、14.0°Cであり、実施例14の液晶組成物に比べて高い温度であった。
【0123】
<実施例15>
実施例6で得られた重合性化合物(Q6)100.0mgと光重合開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア(登録商標)369(商品名)を2.1mg混合し、重合性液晶組成物とした。あらかじめ6マイクロメーターのシリカスペーサー(触媒化成工業(株)製、SW−D1)をITO面に散布したITO付ガラス基板を、温度90°Cのホットプレート上で加熱しておき、前記の重合性液晶組成物をスペーサーが散布された基板面にのせ、等方性液体状態にした。この基板のスペーサーに、別のITO付ガラス基板のITO面が接触するように重ね合わせてセルを作成した。このセルを温度90°Cに保ち、高圧水銀ランプを用いて42J/cmの強さで光照射して重合性液晶組成物を重合してフィルムが2枚の基板に狭持されたセルを得た。このようにして得られたセルを、重合性液晶組成物を入れないで作成した空のセルをブランクとして600nmにおける透過率を測定した。その結果、透過率は90.78%であった。
【0124】
<実施例16>
実施例15において、重合性化合物(Q6)を、実施例4で得られた重合性化合物(Q4)50.1mgと実施例6で得られた重合性化合物(Q6)50.3mgに変え、光重合開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア(登録商標)369(商品名)を2.0mg混合し、同様の操作を行ってセルを作成し、評価を行った。その結果、透過率は88.93%であった。
【0125】
<比較例3>
実施例15において、重合性化合物(Q6)を参考合成例2で得られた化合物(Z2)に変えて同様の操作を行ってセルを作成し、評価を行った。その結果、透過率は1.49%であった。
【0126】
<比較例4>
実施例15において、重合性化合物(Q6)100.0mgを、参考合成例1で得られた化合物(Z1)50.0mgと参考合成例2で得られた化合物(Z2)50.0mgに変えて同様の操作を行ってセルを作成し、評価を行った。その結果、透過率は9.25%であった。
【0127】
<実施例17>
実施例6で得られた重合性化合物(Q6)33.5mg、参考合成例3で得られた重合性化合物(K1)33.5mg、参考合成例4で得られた重合性化合物(K2)33.5mgと光重合開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア(登録商標)369(商品名)を1.0mg混合し、重合性液晶組成物とした。
【0128】
次に、スペーサーを散布した液晶配向膜付基板をホットプレート上で温度30°Cに加熱しておき、基板のスペーサー散布面に上記の重合性液晶組成物をのせた。この重合性液晶組成物に流動性があることを確認し、別の液晶配向膜付基板を、液晶配向膜が重合性液晶組成物に接触するように重ね合わせてセルを作成した。その際、2枚の液晶配向膜付基板は、ラビング方向が角度180度となるように重ね合わせた。また、ここで用いた液晶配向膜付基板は、ITO付ガラス基板のITO面に、日産化学工業社製SE−1411をスピンコート塗布し、温度230°Cで60分間焼成して厚さ100nmの薄膜を形成後、ラビング処理を施した基板を用いた。そして、一方の液晶配向膜付基板には、液晶配向膜上に6マイクロメーターのスペーサー(触媒化成工業(株)製、SW−D1)を散布した。
このようにして作成したセルを温度30°Cに保ち、高圧水銀ランプを用いて42J/cmの強さの光を照射して重合性液晶組成物を重合して、フィルムが2枚の基板に狭持されたセルを得た。
【0129】
このセルを偏光顕微鏡で観察したところ、セル内のフィルムが、ガラス面に水平に配向したプレーナー配列であることを確認した。また、リタデーション値は198.58であった。
【0130】
<比較例5>
実施例17において、重合性化合物(Q6)を、参考合成例2で得られた化合物(Z2)に変えて同様の操作を行ってセルを作成し、評価を行った。その結果、セル内の重合体は配向していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の重合性化合物を含有する重合性液晶組成物は、表示装置用の、偏光板や位相差板等の光学補償フィルムやマルチドメインフィルム等の光学異方性フィルム用材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表される重合性化合物。
【化1】


(式中、nは1〜12の整数を表し、Xは2価のベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシルを表し、Xは2価のベンゼン、ビフェニル、シクロヘキシル、COO、OCO、HC=N、N=CHを表し、XはCN、CF、ハロゲン原子、水素原子、炭素数が1〜6のアルコキシ基又は炭素数が1〜10のアルキル基を表す。)
【請求項2】
が2価のベンゼン、Xが2価のベンゼン、XがCN基、且つnが8〜10の整数である請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の重合性化合物のうちの少なくとも1種と、1種以上の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の重合性化合物を含有する請求項3に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の少なくとも1種の重合性化合物を用いて得られる重合体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の少なくとも1種の重合性化合物を用いて得られるフィルム。
【請求項7】
請求項3又は請求項4に記載の重合性液晶組成物を用いて得られる重合体。
【請求項8】
請求項3又は請求項4に記載の重合性液晶組成物を用いて得られるフィルム。

【公開番号】特開2008−162894(P2008−162894A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121801(P2005−121801)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】