説明

重量センサ

【課題】絶縁性および密着性を考慮し重量センサとしての特性を損なうことなく生産性を向上した重量センサの製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】荷重により歪を生じる金属板(ステンレス板)からなる起歪体12上に絶縁ガラスからなる絶縁層20を形成する工程と、歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子14およびこの抵抗素子14に接続した導体からなる電極16およびこの電極16と信号処理回路18を結線する導体からなる配線パターン17とを絶縁層20上に形成する工程とを備え、絶縁層20および電極16は、起歪体12上に低融点ガラスを含有したAgペースト32を塗布するとともにこのAgペースト32を焼成して、Agペースト32の下層側34を絶縁層20に形成し、Agペースト32の上層側36を電極16に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート等の荷重を測定するための重量センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の重量センサについて説明する。
【0003】
図6は従来の重量センサの平面図、図7は図6におけるA部の拡大断面図である。
【0004】
図6、図7において、従来の重量センサは、複数の貫通孔1を有し荷重により歪を生じる金属板からなる起歪体2と、この起歪体2の貫通孔1の間に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子3と、抵抗素子3の両端部に接続した電極4と、この電極4に結線された信号処理回路とを備えている。抵抗素子3および電極4は起歪体2上に配置した絶縁ガラスからなる絶縁層5上に設けている。
【0005】
その製造方法は、荷重により歪を生じる金属板からなる起歪体2に、絶縁ガラスからなる絶縁層5を形成する工程と、歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子3および抵抗素子3に接続した電極4とを絶縁層5上に形成する工程とを備えている。また、電極4および絶縁層5は、起歪体2上にガラス粒子を含有した絶縁ペーストを塗布するとともに、この絶縁ペースト上にAg粒子を含有したAgペーストを塗布して、これら絶縁ペーストおよびAgペーストを同時焼成して形成する。
【0006】
この重量センサを、例えば、車両用シートと床面部との間に取り付ければ、車両用シートに座る人員の荷重を測定することができる。起歪体2に設けた複数の貫通孔1の内、内側の貫通孔1に車両用シートの一部を挿入して起歪体2と車両用シートとを連結し、外側の貫通孔1に床面部の一部を挿入して起歪体2と床面部とを連結して取り付ける。そうすると、車両用シートに荷重が加わった際、起歪体2が歪んで抵抗素子3の抵抗値が変化するので、これを信号処理回路(図示せず)で処理することによって荷重を測定することができる。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−240633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記構成において、電極4および絶縁層5は、起歪体2上にガラス粒子を含有した絶縁ペーストを塗布するとともに、この絶縁ペースト上にAg粒子を含有したAgペーストを塗布して、これら絶縁ペーストおよびAgペーストを同時焼成して形成している。この電極4および絶縁層5は、起歪体2の歪に起因して起歪体2とともに歪むため、起歪体2と絶縁層5との密着性、絶縁層5と電極4との密着性を考慮する必要があるとともに、電極4と起歪体2との絶縁性を考慮する必要がある。そのため、一般的には、これら密着性および絶縁性を考慮して、起歪体2上には絶縁ペーストおよびAgペーストの2つのペーストを塗布し同時焼成することにより電極4および絶縁層5を形成している。その反面、2つのペーストを塗布するために生産性に劣るという問題点を有していた。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するもので、絶縁性および密着性を考慮し重量センサとしての特性を損なうことなく生産性の向上した重量センサの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、荷重により歪を生じる金属板からなる起歪体に、絶縁ガラスからなる絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子と、前記抵抗素子に接続した導体とを形成する工程とを備え、前記絶縁層および前記導体は、前記起歪体上に低融点ガラスを含有したAgペーストを塗布するとともに前記Agペーストを焼成して、前記Agペーストの下層側を前記絶縁層に形成し、前記Agペーストの上層側を前記導体に形成する構成である。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、起歪体には1つのペーストを塗布し焼成するだけで起歪体上に絶縁層および電極を形成できるので生産性の向上を図れる。特に、低融点ガラスを含有したAgペーストを焼成するので、焼成時の温度上昇に伴ってAgペースト中では、低融点ガラスの粘度が低下するとともにAgが焼結してAg焼成膜が形成される。そして、Ag焼成膜の空隙部分(境界部分)に沿って、粘度の低下した低融点ガラスが下方の起歪体2に向かって流動していくので、Agペーストの下層側には低融点ガラスが集中して低融点ガラスからなる絶縁層を形成できる。一方、Agペーストの上層側には焼結されたAgが集中するので、導体を形成できる。したがって、起歪体上には絶縁層および電極を形成でき、絶縁性および密着性を損なうことがなく生産性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態における重量センサの平面図、図2は図1におけるA部の拡大断面図、図3は図1におけるA部の拡大斜視図、図4は同重量センサに用いる信号処理回路図である。
【0014】
図1〜図4において、本発明の一実施の形態における重量センサは、複数の貫通孔10を有し荷重により歪を生じる金属板(ステンレス板)からなる起歪体12と、この起歪体12の貫通孔10の間に配置され歪量に応じて抵抗値が変化する4つの抵抗素子14と、抵抗素子14の両端部に接続した電極16と、配線パターン17を介して電極16と結線された信号処理回路18とを備えている。抵抗素子14および電極16は起歪体12上に配置した絶縁ガラスからなる絶縁層20上に同時焼成して形成されている。
【0015】
また、その製造方法においては、荷重により歪を生じる金属板(ステンレス板)からなる起歪体12上に絶縁ガラスからなる絶縁層20を形成する工程と、歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子14およびこの抵抗素子14に接続した導体からなる電極16およびこの電極16と信号処理回路18を結線する導体からなる配線パターン17とを絶縁層20上に形成する工程とを備えている。図5(a)〜(d)に示すように、絶縁層20および電極16は、起歪体12上に低融点ガラスを含有したAgペースト32を塗布するとともにこのAgペースト32を焼成して、Agペースト32の下層側34を絶縁層20として形成し、Agペースト32の上層側36を電極16として形成している。電極16と同様に上述の方法で配線パターン17を形成している。上記のペーストとは金属粉末やガラス粉末や無機酸化物等を有機溶媒中に混練、分散させて液状にしたものであり、Agペースト32は、金属粉末の一つであるAg粉末38を含有し、さらに低融点ガラスを含有したものである。図5(a)、図5(b)に示すように、焼成時の温度上昇に伴ってAgペースト32からは有機分(H2O、CO2)が燃焼して矢印のごとく蒸発し、Agペースト32中では、低融点ガラスの粘度が低下するとともにAg粉末38が焼結してAg焼成膜が形成される。そして、図5(c)に示すように、Ag焼成膜の空隙部分(境界部分)に沿って矢印のごとく、粘度の低下した低融点ガラスが下方の起歪体12に向かって流動していくので、図5(d)に示すように、Agペースト32の下層側34には低融点ガラスが集中して低融点ガラスからなる絶縁層20が形成される。一方、Agペースト32の上層側36には焼結されたAg粉末38が集中するので、導体である電極16や配線パターン17が形成される。さらに、低融点ガラスには、無機酸化物として、酸化ビスマスを含有させ低融点化を図っている。
【0016】
この重量センサを、例えば、車両用シートと床面部との間に取り付ければ、車両用シートに座る人員の荷重を測定することができる。起歪体12に設けた複数の貫通孔10の内、内側の貫通孔10に車両用シートの一部を挿入して起歪体12と車両用シートとを連結し、外側の貫通孔10に床面部の一部を挿入して起歪体12と床面部とを連結して取り付ける。そうすると、車両用シートに荷重が加わった際、起歪体12が歪んで抵抗素子14の抵抗値が変化するので、これを信号処理回路18で処理することによって荷重を測定することができる。信号処理回路18としては、例えば、図4に示すように、4つの抵抗素子14をホーイストンブリッジ回路28で形成し、この出力信号を処理すればよい。
【0017】
上記構成により、起歪体12には1つのペーストを塗布し焼成するだけで起歪体12上に絶縁層20および電極16を形成できるので生産性の向上を図れる。特に、低融点ガラスを含有したAgペースト32を焼成するので、焼成時の温度上昇に伴ってAgペースト32中では、低融点ガラスの粘度が低下するとともにAg粉末38が焼結してAg焼成膜が形成される。そして、Ag焼成膜の空隙部分(境界部分)に沿って、粘度の低下した低融点ガラスが下方の起歪体12に向かって流動していくので、Agペースト32の下層膜34には低融点ガラスが集中して低融点ガラスからなる絶縁層20を形成できる。一方。Agペースト32の上層側36には焼結されたAg粉末38が集中するので、導体である電極16や配線パターン17を形成できる。したがって、起歪体12上には絶縁層20および導体である電極16や配線パターン17を形成でき、絶縁性および密着性を損なうことがなく生産性を向上できる。さらに、低融点ガラスには、無機酸化物として酸化ビスマスを含有させて低融点化を図っている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように本発明にかかる重量センサは、絶縁性および密着性を考慮し重量センサとしての特性を損なうことなく生産性を向上でき各種の機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態における重量センサの平面図
【図2】図1におけるA部の拡大断面図
【図3】図1におけるA部の拡大斜視図
【図4】同重量センサに用いる信号処理回路図
【図5】同重量センサの絶縁層および電極の形成状態を示す工程図
【図6】従来の重量センサの平面図
【図7】図6におけるA部の拡大断面図
【符号の説明】
【0020】
10 貫通孔
12 起歪体
14 抵抗素子
16 電極
18 信号処理回路
20 絶縁層
28 ホーイストンブリッジ回路
32 Agペースト
34 下層側
36 上層側
38 Ag粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重により歪を生じる金属板からなる起歪体に、絶縁ガラスからなる絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層上に歪量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子と、前記抵抗素子に接続した導体とを形成する工程とを備え、前記絶縁層および前記導体は、前記起歪体上に低融点ガラスを含有したAgペーストを塗布するとともに前記Agペーストを焼成して、前記Agペーストの下層側を前記絶縁層として形成し、前記Agペーストの上層側を前記導体として形成する重量センサの製造方法。
【請求項2】
前記低融点ガラスは酸化ビスマスを含有する請求項1記載の重量センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−218602(P2007−218602A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36292(P2006−36292)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】