説明

野菜類の乾燥方法

【課題】野菜の持つ新鮮味や栄養、風味を損なわず、乾燥後の野菜を容易に粉砕できるような高度の乾燥状態になるまで乾燥出来る方法を確立する。
【解決手段】初期の乾燥温度を適正乾燥温度より低く設定し、乾燥が進むに応じて乾燥温度を上げ、最終的に適正な乾燥温度に上げて乾燥する。 乾燥が進む度合いを測定する為の湿度測定は、所要間隔をあけて複数回測定して判断する。蒸発器の手前と蒸発器の出口に乾燥用空気と熱交換をする熱交換器を設け、この両者の間を循環するブライン回路を設け、乾燥用空気が蒸発器へ入る手前で予令し、乾燥用空気が蒸発器を出たところで予熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜類の乾燥方法及び野菜類の乾燥装置に関する。なお、ハ−ブ、香辛料、薬草、果皮など野菜類の乾燥方法に類似するものを含む。
【背景技術】
【0002】
野菜類の乾燥は、一般的には熱風乾燥、高級品については真空乾燥または凍結真空乾燥によっている。
しかし、熱風乾燥は、低コストであるが野菜類の品質がいちぢるしく低下し、真空乾燥または凍結真空乾燥は、その品質の低下は少ないといわれているが、揮発性成分の損失が大きく、また、コストが甚だしく高くつく。
また、野菜類は、凍結すると、細胞が破壊されるので、戻してももとのように戻らない欠点がある。
【0003】
冷却除湿式乾燥と言う乾燥方法は、冷凍機で乾燥用空気を冷却除湿し、凝縮器で適温に加温し、被乾燥物を20〜40℃という比較的低温で乾燥する乾燥方法であって、主に魚類の乾燥方法として普及している。
冷却除湿式乾燥という乾燥方法を野菜類の乾燥に適用すると、比較的低コストで高品質な乾燥品が出来るが、その普及度は低く、野菜類の加工業者でも冷却除湿式乾燥で乾燥した野菜類を見て驚いている現状である。したがって、野菜類一般についての本発明に関連する冷却除湿式乾燥方法の分野の技術文献は見当たらなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、野菜類に対する消費者の品質向上や多様化への要望は厳しく、更に一段と高品質低価格で多様な用途のニ−ズに応え得る乾燥技術の開発が期待されている。
消費者が、野菜類の乾燥品に求める品質の内、もっとも高いのは新鮮さが保たれていることである。野菜類は乾燥するとしなびて古臭くなった感じがするのはやむをえないとする認識が改められ、乾燥品といえども水に浸けて戻せば、吸水して新鮮さを取り戻すことが求められてきている。
また、野菜類のように水分率の高いものは、乾燥して粉末化するのは困難で高価につくという常識も改められ、粉末化のニ−ズも高まっている。
本発明は、これらのニ−ズに答えようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
冷却除湿式乾燥機の乾燥初期の乾燥温度を被乾燥物の適正乾燥温度より低く設定し、乾燥が進んで被乾燥物の水分蒸発量が減少するのに応じ、順次乾燥温度を上げてゆき、最終的に適正乾燥温度で乾燥する。
被乾燥物の水分蒸発量を推定する為の乾燥室内の湿度測定にあたって適当時間をあけて複数回湿度測定を行う。
蒸発器の風上側と風下側に熱交換器を置き、両熱交換器の間をブラインを循環させて、乾燥室から返ってきた乾燥用空気を風上側の熱交換器で予冷し、蒸発器を出た乾燥用空気を風下側の熱交換器で予熱する。
【0006】
冷却除湿式乾燥機に乾燥室内の湿度を測定し、必要な機器を制御する湿度スイッチ、湿度スイッチが機器を制御するのを遅延させる遅延タイマ−、乾燥温度を被乾燥物の乾燥状態に応じて所定の温度に切り替える温度スイッチを装備する。
蒸発器の風上側と風下側に熱交換器を置き、両熱交換器の間にブラインを循環させる装置を装備する。
冷却除湿式乾燥機による野菜類の乾燥は、品質の低下が少ないといっても、やはり品質の低下は起こっている。それは乾燥初期に高温・高湿で蒸れて、褐変、異臭を発生することによる部分が多い。しかし、品質低下を防ぐため低温で乾燥すると、乾燥に時間がかかりそのための品質低下が大きくなる。
【0007】
そこで、高温と多湿の弊害を分析してゆくと、高温と多湿の両者の相乗効果(弊害)が大きいので、比較的低温高湿度でスタ−トさせ、乾燥が進んで湿度が低下した段階で温度を順次最適温度に上昇させると、湿度はそのたび上昇し、低下してゆくので、始めから最適温度で乾燥するより最高湿度も低く、高温高湿による弊害は僅少に留まり、高品質な乾燥品が出来ることがわかった。
又乾燥室内の湿度は変動幅が大きいので、1回の湿度測定で判断すると失敗することが多いので一定時間を置いて複数回測定してから判断することが好ましい。
【0008】
次に、野菜など水分率の高いものを、粉末化できるまで高度に乾燥する為には低湿度の乾燥用空気を作る必要がある。
低湿度の乾燥用空気を作る為には、冷却除湿式乾燥機で低湿度の空気を作って、更に除湿剤を使って一層低湿度の乾燥用空気にする方法が使われている。しかし、この方法は、コスト的にも好ましくない。そこで、本発明においては、図1のように、乾燥機の蒸発器の手前と後側を循環するブライン回路を設け、乾燥室から返ってきた乾燥用空気を蒸発器の手前で予冷し、乾燥用空気が蒸発器を出たところで予熱することにより、蒸発器の除湿力を強化する方法を考えついた。
【0009】
除湿剤を使用する方法は、最終段階の低湿度の乾燥用空気を作るのには好適であるが、本方法は、全工程において蒸発器の除湿力を効率化することが出来る。
特に本発明は、高品質な乾燥品を作ることが目的であり、そのためには、初期の高湿度状態から早く脱出する必要があり、そのためにも本方法は優れている。
この蒸発器の前後を循環するブライン回路を設ける方法は、省エネルギ−的方法として考え出されたものであって、省エネルギ−的効果だけでは、採算がとりがたいため、普及率は低かった。
しかし、低湿度の乾燥用空気を得るためには、上記除湿材を併用する方法や、同じ冷却除湿方法であっても、ただ冷凍機を大きくして除湿力を増大させる方法よりも経済性が高くなることがわかった。
したがって、本発明は、低湿度の乾燥用空気を低コストで作ることが出来るだけでなく、省エネルギ−的でもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、野菜や果物の乾燥にあまり普及していない冷却除湿式乾燥方法を採用しているだけでなく、更に乾燥中の野菜類の品質劣化の状況を調査し、湿度調整と、除湿能力の強化のかみ合わせを実現し、低コストで高品質の乾燥品を作ることが出来るようになった。
【実施例】
【0011】
本発明の具体的実施例を乾燥工程フロ−チャ−ト(表1)によって説明する。
【表1】

【0012】
温度レベル第1ステップの条件下(例えば25℃)で乾燥を開始する。
乾燥室の湿度が所定湿度まで下がると、遅延タイマ−がスタ−トする。遅延タイマ−の時間は15分から30分で行っている。
遅延タイマ−が終了すると、湿度スイッチは乾燥室の湿度が所定湿度以下(yes)か、以上(no)かを判定する。
noであれば、遅延タイマ−が再びスタ−トする。Yesであれば、温度スイッチは第2ステップの高い温度(例えば32℃)に切り替えられる。その後の湿度スイッチの判定は、第2ステップの判定基準に切り替えられる。
以下同様な工程で、第2ステップから第3ステップ(例えば乾燥温度40℃)へ、更に乾燥工程終了へと進む。
上記工程によっても、乾燥物の種類、前処理の仕方などで、湿度のレベルは各種各様であり、その適用に当っては細心の注意や工夫が必要となるが、風量を加減するなどの対応により、従来に無い良質の乾燥品、乾燥粉末が作れるようになった。
最高湿度も、乾燥初期の低温度で70%台が多く、従来のようにはじめから適正温度で乾燥した場合に、最高湿度90%台の高温高湿の状態で推移するのに比べ、品質の劣化は著しく改善された。
ケ−ル、柚子の皮、生姜、かぼちゃ、パセリ、月桃、ハ−ブなど葉菜、根菜、香辛料、薬草などに適用して、いずれもユ−ザ−から好評を得ている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】冷凍機の蒸発器の前後に熱交換器を置き、これをブラインの回路で結び、乾燥用空気の予冷、予熱を行う装置の図面である。
【符号の説明】
【0014】
2圧縮機
3再熱コイル
4蒸発器
8ブライン循環ポンプ
9熱交換器(予冷コイル)
10熱交換器(予熱コイル)
12凝縮コイル
13膨張弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷風乾燥機の乾燥初期の乾燥温度を被乾燥物の適正乾燥温度より低く設定し、乾燥が進んで被乾燥物の水分蒸発量が減少するのに応じ、順次乾燥温度を上げてゆき、最終的に適正乾燥温度で乾燥する野菜類の乾燥方法。
【請求項2】
被乾燥物の水分蒸発量を推定する為の乾燥室内の湿度測定にあたって適当時間をあけて複数回湿度測定を行う請求項1の水分蒸発量推定方法。
【請求項3】
蒸発器の風上側と風下側に熱交換器を置き、両熱交換器の間をブラインを循環させて、乾燥室から返ってきた乾燥用空気を風上側の熱交換器で予冷し、蒸発器を出た乾燥用空気を風下側の熱交換器で予熱する請求項1の野菜類の乾燥方法。
【請求項4】
乾燥室内の湿度を測定し、必要な機器を制御する湿度スイッチ、湿度スイッチが機器を制御するのを遅延させる遅延タイマ-、乾燥温度を被乾燥物の乾燥状態に応じて所定の温度に切り替える温度スイッチを装備する冷風乾燥機。
【請求項5】
蒸発器の風上側と風下側に熱交換器を置き、両熱交換器の間をブラインを循環させる装置を保有する請求項4の冷風乾燥機。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−107072(P2008−107072A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121609(P2007−121609)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(592211471)株式会社ユニマック (2)
【Fターム(参考)】