説明

金型の製造方法および当該方法によって得られた金型を用いた防眩フィルムの製造方法

【課題】高い防眩機能を示す防眩フィルムの製作に有用な、表面に微細な凹凸形状を有する金型の製造方法、ならびに、その金型を用いた防眩フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施す工程と、第1めっき工程によってめっきが施された表面を研磨する工程と、研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成する工程と、感光性樹脂膜上にパターンを露光する工程と、パターンが露光された感光性樹脂膜を現像する工程と、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いて、金型用基材全面にエッチング処理を施し、研磨されためっき面に凹凸を形成する工程と、形成された凹凸面にクロムめっきを施す工程とを含む金型の製造方法、ならびに、当該金型を用いた防眩フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な凹凸形状を有する金型の製造方法、ならびに、当該方法によって得られた金型を用いて、低ヘイズでありながら防眩特性に優れた防眩(アンチグレア)フィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話などにおいては、従来から画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられている。このフィルム層は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理が施されたフィルムからなるものと、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理が施されたフィルムからなるものとに大別される。このうち、前者の無反射フィルムは、均一な光学膜厚の多層膜を形成する必要があるため、コスト高になる。これに対して後者の防眩フィルムは、比較的安価に製造することができるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタなどの用途に広く用いられている。
【0003】
このような防眩フィルムは従来から、たとえばフィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法などによって製造されている。しかしながら、このようなフィラーを分散させることにより製造された防眩フィルムは、樹脂溶液中のフィラーの分散状態や塗布状態などによって凹凸の配置や形状が左右されてしまうため、意図したとおりの凹凸を得ることが困難であり、ヘイズが低いものでは十分な防眩効果が得られないという問題があった。さらに、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる「白ちゃけ」が発生しやすいという問題があった。また、最近の画像表示装置の高精細化に伴って、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状とが干渉し、結果として輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」現象が発生しやすいという問題もあった。
【0004】
また、フィラーを分散させることにより製造された防眩フィルムにおいて、フィラーの屈折率とフィラーを分散させるバインダー樹脂の屈折率が異なる場合には、そのような防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した際に、フィラーとバインダー樹脂界面における光の散乱によって、コントラストが低下しやすいという問題もあった。
【0005】
一方、フィラーを含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。たとえば、特開2002−189106号公報(特許文献1)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、三次元10点平均粗さおよび三次元粗さ基準面上における隣接する凸部どうしの平均距離が、それぞれ所定値を満足する微細な凹凸を形成させ、その凹凸が形成された電離放射線硬化性樹脂層を前記透明樹脂フィルム上に設けたかたちの防眩フィルムが開示されている。
【0006】
また、表示装置の表示面に配置される防眩フィルムではなく、液晶表示装置の背面側に配置される光拡散層として、表面に微細な凹凸が形成されたフィルムを用いることも、たとえば特開平6−34961号公報(特許文献2)、特開2004−45471号公報(特許文献3)、特開2004−45472号公報(特許文献4)などに開示されている。
このうち特許文献3、4には、フィルムの表面に凹凸を形成する手法として、凹凸を反転させた形状を有するエンボスロールに電離放射線硬化性樹脂液を充填し、充填された樹脂にロール凹版の回転方向に同期して走行する透明基材を接触させ、透明基材がロール凹版に接触しているときに、ロール凹版と透明基材との間にある樹脂を硬化させ、硬化と同時に硬化樹脂と透明基材とを密着させた後、硬化後の樹脂と透明基材との積層体をロール凹版から剥離する方法が開示されている。
【0007】
しかしながらこのような特許文献3、4に開示された方法では、用いることのできる電離放射線硬化性樹脂液の組成が限られ、また溶媒で希釈して塗布したときのようなレベリングが期待できないことから、膜厚の均一性に課題があることが予想される。さらに、特許文献3、4に開示された方法では、エンボスロール凹版に直接樹脂液を充填する必要があることから、凹凸面の均一性を確保するためには、エンボスロール凹版に高い機械精度が要求され、エンボスロールの作製が難しいという課題があった。
【0008】
次に、表面に凹凸を有するフィルムの作製に用いられるロールの作製方法としては、たとえば、上述した特許文献2には、金属などを用いて円筒体を作り、その表面に電子彫刻、エッチング、サンドブラストなどの手法により凹凸を形成する方法が開示されている。
また、特開2004−29240号公報(特許文献5)には、ビーズショット法によってエンボスロールを作製する方法が開示されており、特開2004−90187号公報(特許文献6)には、エンボスロールの表面に金属めっき層を形成する工程、金属めっき層の表面を鏡面研磨する工程、さらに必要に応じてピーニング処理をする工程を経て、エンボスロールを作製する方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、このようにエンボスロールの表面にブラスト処理を施したままの状態では、ブラスト粒子の粒径分布に起因する凹凸径の分布が生じるとともに、ブラストにより得られるくぼみの深さを制御することが困難であり、防眩機能に優れた凹凸の形状を再現性よく得ることに課題があった。
【0010】
また、上述した特許文献1には、好ましくは鉄の表面にクロムめっきしたローラを用い、サンドブラスト法やビーズショット法により凹凸型面を形成することが記載されている。さらに、このように凹凸が形成された型面には、使用時の耐久性を向上させる目的で、クロムめっきなどを施してから使用することが好ましく、それにより硬膜化および腐食防止を図ることができる旨の記載もある。一方、上述した特許文献3、4のそれぞれの実施例には、鉄芯表面にクロムめっきし、#250の液体サンドブラスト処理をした後に、再度クロムめっき処理して、表面に微細な凹凸形状を形成することが記載されている。
【0011】
しかしながら、このようなエンボスロールの作製法では、硬度の高いクロムめっきの上にブラストやショットを行うため、凹凸が形成されにくく、しかも形成された凹凸の形状を精密に制御することが困難であった。また、特開2004−29672号公報(特許文献7)にも記載されるとおり、クロムめっきは、下地となる材質およびその形状に依存して表面が荒れることが多く、ブラストにより形成された凹凸上にクロムめっきで生じた細かいクラックが形成されるため、どのような凹凸ができるかの設計が難しいという課題があった。さらに、クロムめっきで生じる細かいクラックがあるため、最終的に得られる防眩フィルムの散乱特性が好ましくない方向に変化するという課題もあった。さらには、エンボスロール母材表面の材質とめっき種の組み合わせにより、仕上がりのロール表面が多種多様に変化するため、必要とする表面凹凸形状を精度よく得るためには、適切なロール表面の材質と適切なめっき種を選択しなければならないという課題もあった。さらにまた、望む表面凹凸形状が得られたとしても、めっき種によっては使用時の耐久性が不十分となることもあった。
【0012】
特開2000−284106号公報(特許文献8)には、基材にサンドブラスト加工を施した後、エッチング工程および/または薄膜の積層工程を施すことが記載されているが、サンドブラスト工程前に金属めっき層を設けることについては記載も示唆もされていない。また、特開2006−53371号公報(特許文献9)には基材を研磨し、サンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施すことが記載されている。また、特開2007−187952(特許文献10)には基材に銅めっき又はニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、クロムめっきを施してエンボス版を作製することが記載されており、さらに、特開2007−237541号公報(特許文献11)には銅めっき又はニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、エッチング工程又は銅めっき工程を施した後にクロムめっきを施してエンボス版を作製することが記載されている。これらのサンドブラスト加工を用いる製法では表面凹凸形状を精密に制御された状態で形成することが難しいため、表面凹凸形状に50μm以上の周期を持つ比較的大きい凹凸形状も作製されてしまう。結果として、それらの大きい凹凸形状と画像表示装置の画素が干渉し、輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキが発生しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2002−189106号公報
【特許文献2】特開平6−34961号公報
【特許文献3】特開2004−45471号公報
【特許文献4】特開2004−45472号公報
【特許文献5】特開2004−29240号公報
【特許文献6】特開2004−90187号公報
【特許文献7】特開2004−29672号公報
【特許文献8】特開2000−284106号公報
【特許文献9】特開2006−53371号公報
【特許文献10】特開2007−187952号公報
【特許文献11】特開2007−237541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、高い防眩機能を示す防眩フィルムの製作に有用な、表面に微細な凹凸形状を有する金型の製造方法を提供し、さらに、その金型を用いて、優れた防眩機能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が十分に防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときにギラツキが発生せず、コントラストの低下しない防眩フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明はまた、金型表面へのめっきとして、硬度や表面光沢などに優れるクロムめっきを採用しながら、そのクロムめっき面に荒れを生じさせずに、防眩フィルムの製作に好適な金型を製造し、それを用いて優れた防眩機能を示す防眩フィルムを製造することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金型となる基材表面に下地めっきとして銅めっきまたはニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に感光性樹脂膜を塗布し、該感光性樹脂膜上にパターンを露光した後、露光された感光性樹脂膜を現像し、エッチングが基材表面の全面に施されるようにエッチング処理をした後、クロムめっきを施して金型とすれば、表面に所望の微細な凹凸形状を有する金型が再現性よく得られることを見出した。また、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写して得られる凹凸面付き防眩フィルムは、低ヘイズでありながら十分な防眩性能を有し、画像表示装置に適用したときにも、白ちゃけやギラツキなどが発生せず、また、コントラストも低下せずに良好な視認性を示すという、従来品では兼備していなかった性能が発現されることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0016】
本発明の金型の製造方法は、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施す第1めっき工程と、第1めっき工程によってめっきが施された表面を研磨する研磨工程と、研磨された面に感光性樹脂膜を塗布する感光性樹脂膜塗布工程と、感光性樹脂膜上に所定のパターンを露光する露光工程と、パターンが露光された感光性樹脂膜を現像する現像工程と、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いて、金型用基材全面にエッチング処理を施し、研磨されためっき面に凹凸を形成するエッチング工程と、クロムめっきを施す第2めっき工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の金型の製造方法において、露光工程における感光性樹脂膜上へのパターンの露光は、コンピュータ上で作成されたパターンデータを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することによって行われることが好ましい。
【0018】
本発明の金型の製造方法において、現像後に溶解されずに残る感光性樹脂膜(以下では、現像後に溶解されずに残る感光性樹脂膜を「マスク」と呼ぶ)の金型用基材表面への投影面積は、金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対して1〜70%であることが好ましい。
【0019】
本発明の金型の製造方法において、金型用基材表面の100μm×100μmの領域におけるマスクの金型用基材表面への投影面積の標準偏差は、1000μm2以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の金型の製造方法において、エッチング工程と第2めっき工程の間に、該感光性樹脂膜を剥離する感光性樹脂膜剥離工程を含むことが、好ましい。
【0021】
本発明の金型の製造方法におけるエッチング工程におけるエッチング量が2〜100μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の金型の製造方法において、クロムめっきを施した後、表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いることが好ましい。
【0023】
本発明の金型の製造方法において、クロムめっきにより形成されたクロムめっき層が1〜10μmの厚みを有することが好ましい。
【0024】
本発明はまた、上述した本発明の金型の製造方法によって製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する工程と、金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす工程とを含む防眩フィルムの製造方法についても提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の金型の製造方法によれば、表面に微細な凹凸形状が精度良く形成されていることから、高い防眩機能を示す防眩フィルムの製造に有用なものとなる金型を再現性よく、殆ど欠陥が存在しない状態で製造できる。さらに、本発明の防眩フィルムの製造方法によれば、ヘイズが低く、表示画像の明るさを保ちながら、映り込み防止や反射防止、白ちゃけの抑制、ギラツキ発生防止、コントラスト低下防止など、防眩性能に優れた防眩フィルムを工業的有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<金型の製造方法>
図1は、本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図1には各工程での金型の断面を模式的に示している。本発明の金型の製造方法は、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜塗布工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕エッチング工程と、〔7〕第2めっき工程を基本的に含む。以下、図1を参照しながら、本発明の金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0027】
〔1〕第1めっき工程
本発明の金型の製造方法ではまず、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を上げることができる。すなわち、背景技術として上述したように、鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、あるいはクロムめっき表面にサンドブラスト法やビーズショット法などで凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合には、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、金型の表面の凹凸形状が制御しにくくなる。これに対して、まず、基材表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施しておくことにより、このような不都合をなくすことができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や巣などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や巣に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
【0028】
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよく、したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0029】
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどとのからみから、一般的には500μm程度までで十分である。
【0030】
なお、本発明の金型の製造方法において、基材の形成に好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
【0031】
また、基材の形状は、当分野において従来より採用されている適宜の形状であれば特に制限されず、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
【0032】
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。
すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。図1(a)には、平板状の金型用基材1が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(当該工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面2を有するようにされた状態を模式的に示している。
【0033】
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
【0034】
〔3〕感光性樹脂膜塗布工程
続く感光性樹脂膜塗布工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した基材1の表面2に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図1(b)には、基材1の表面2に感光性樹脂膜3が形成された状態を模式的に示している。
【0035】
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。例えば、感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としてはフェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0036】
これらの感光性樹脂を基材1の表面2に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
【0037】
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
【0038】
〔4〕露光工程
続く露光工程では、所定のパターンを上述した感光性樹脂膜塗布工程で形成された感光性樹脂膜3上に露光する。露光工程に用いる光源は塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、例えば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)等を用いることができる。
【0039】
本発明の金型の製造方法において表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましい。本発明の金型の製造方法においては、所定のパターンを感光性樹脂膜上に精度良く露光するために、コンピュータ上でパターンデータを作成し、そのパターンデータに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することが好ましい。このようなレーザー描画を行うに際しては印刷版作成用のレーザー描画装置を使用することができる。係るレーザー描画装置としては、例えばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
【0040】
図1(c)には、感光性樹脂膜3にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域4は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域5が現像液によって溶解され、露光された領域4のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域4は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域4が現像液によって溶解され、露光されていない領域5のみ基材表面上に残りマスクとなる。
【0041】
ここで感光性樹脂膜の露光される領域の金型用基材表面への投影面積をMとし、金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積をTとする。感光性樹脂膜にネガ型の感光性樹脂を用いる場合には、比M/Tが0.01〜0.7となるようにパターンを作成し、露光することが好ましい。また、感光性樹脂膜にポジ型の感光性樹脂を用いる場合には、比(1−M)/Tが0.01〜0.7となるようにパターンを作成し、露光することが好ましい。このような比率でパターンを作成し露光することによって、マスクの金型用基材表面への投影面積を、金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対して1〜70%とすることができる。図2には金型用基材表面の上面から観察した感光性樹脂膜にパターンが露光された状態を模式的に示している。露光された領域4の面積の総和がMであり、露光された領域4および露光されていない領域5の面積の総和がTである。
【0042】
また、金型用基材表面の100μm×100μmの領域における感光性樹脂膜の露光される領域の金型用基材表面への投影面積をM100としたとき、M100の標準偏差は1000μm2以下であることが好ましい。このようにパターンを作成して露光することによって、金型用基材表面の100μm×100μmの領域におけるマスクの金型用基材表面への投影面積の標準偏差を1000μm2以下とすることができる。ここで、M100の標準偏差は、3点以上の異なる箇所におけるパターンについて100μm×100μmの領域中の露光される面積M100を求めることによって計算することができる。M100の標準偏差を計算するに際して、誤差を減少させるためには、5点以上の異なる箇所におけるパターンについて100μm×100μmの領域中の露光される面積M100を求めることが好ましい。
【0043】
露光によって描画されるパターンの形状については特に制限されず、円形、四角形、六角形等のパターンを配列させたものを描画してもよいし、連続的なパターンを描画してもよいし、これらを組み合わせたものを描画してもよい。また、異なる大きさの円形、四角形、六角形等のパターンを配列したものを描画してもよい。また、描画するパターンは規則的に配置されていても構わないし、不規則に配置されていても構わない。図2、3、4には円形のパターンを配列させたものを模式的に示している。このうち、図3には3種類の異なる大きさの円形パターンを配列させたものを模式的に示しており、図4には円形パターンを不規則に配置したものを模式的に示している。また、図5には四角形パターンを配置したもの、図6には六角形パターンを配置したもの、図7には円形パターンを重ねあうように配置することによって、連続的なパターンを描画したものを模式的に示した。
【0044】
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜3にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域5は現像液によって溶解され、露光された領域4のみ金型用基材上に残存し、続くエッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜3にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域4のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域5が金型用基材上に残存して、続くエッチング工程におけるマスクとして作用する。
【0045】
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
【0046】
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
【0047】
本発明の金型の製造方法においては、マスクの金型用基材表面への投影面積を、金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対して1〜70%とすることが好ましい。この要件を満たすために、上述したような比率のパターンを露光すればよい。すなわち、ネガ型の感光性樹脂を用いる場合には比M/Tが0.01〜0.7となるようにパターンを作成し、露光すればよい。また、ポジ型の感光性樹脂を用いる場合には、比(1−M)/Tが0.01〜0.7となるようにパターンを作成し、露光すればよい。マスクの投影面積の基材表面に対する比率が1%未満となる場合には、後述する第1エッチング工程において、金型用基材表面の略全面が均一にエッチングされることとなり、基材表面に十分な凹凸を形成することが困難となり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムにおいて十分な防眩性能が得られにくくなる傾向にある。また、マスクの投影面積の基材表面に対する比率が70%を超える場合には、第1エッチング工程後に残る平坦面すなわちエッチングされない面が大きくなり、第2エッチング工程後にも平坦面が残ることとなる。この場合においても得られた金型を用いて製造された防眩フィルムにおいて十分な防眩性能が得られにくくなる傾向にある。金型用基材の表面にマスクのパターンを反映した凹凸を精度よく形成するため、ならびに、後述するエッチング工程において金型用基材全面にエッチング処理を施すために、金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対するマスクの金型用基材表面への投影面積は、5〜55%の範囲内であることがより好ましい。
【0048】
また、金型用基材表面の100μm×100μmの領域におけるマスクの金型用基材表面への投影面積の標準偏差を1000μm2以下とすることが好ましい。この要件を満たすためには、上述したようにM100の標準偏差が1000μm2以下となるパターンで露光すればよい。金型用基材表面の100μm×100μmの領域における現像後に溶解されずに残る感光性樹脂膜の金型用基材表面への投影面積の標準偏差が1000μm2を超える場合には、得られた金型の表面凹凸形状に50μm以上の周期を持つ表面凹凸形状の不均一性が発生することとなり、結果として、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムは高精細の画像表示装置に配置した際にギラツキを発生させる傾向にある。得られた金型の表面凹凸形状をより均一にする観点からは、金型用基材表面の100μm×100μmの領域におけるマスクの金型用基材表面への投影面積の標準偏差は、500μm2以下であることがより好ましい。
【0049】
図1(d)には、感光性樹脂膜3にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図1(c)において露光されていない領域5が現像液によって溶解され、露光された領域4のみ基材表面上に残りマスク6となる。図1(e)には、感光性樹脂膜3にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行った状態を模式的に示している。図1(c)において露光された領域4が現像液によって溶解され、露光されていない領域5のみ基材表面上に残りマスク6となる。また、図2の露光された領域4は現像工程後には、ネガ型の感光性樹脂の場合には基材表面上に残り、続くエッチング工程でマスクとして作用する。一方、ポジ型の感光性樹脂の場合には、図2の露光されていない領域5が基材表面上に残り、続くエッチング工程でマスクとして作用する。
【0050】
〔6〕エッチング工程
続くエッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングする。図8は、本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図8(a)にはエッチング工程によって、主にマスクの無い箇所7の金型用基材1がエッチングされる状態を模式的に示している。マスク6の下部の金型用基材1は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い領域7からのエッチングが進行する。よって、マスク6とマスクの無い領域7の境界付近では、マスク6の下部の金型用基材1もエッチングされる。このようなマスク6とマスクの無い領域7の境界付近において、マスク6の下部の金型用基材1もエッチングされることを、以下ではサイドエッチングと呼ぶ。図9にはサイドエッチングの進行を模式的に示した。図9の点線8はエッチングの進行とともに変化する金型用基材の表面を段階に示している。
【0051】
本発明の製造方法においてはサイドエッチングを進行させ、金型用基材表面の全面にエッチング処理を施すことを特徴とする。すなわち、隣り合うマスクの無い箇所7から進行するサイドエッチングが金型用基材表面の全面に渡って連結するまでエッチング処理を行い、マスク6の下部の金型用基材1もエッチングされることを特徴とする。図9にはサイドエッチングが進行し、マスク6の下部の金型用基材1も全てエッチングされる状態を模式的に示している。
【0052】
エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH34Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
【0053】
エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは2〜100μmである。エッチング量が2μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、サイドエッチングを進行させて、金型用基材表面の全面にエッチング処理を施すことが難しくなる。また、エッチング量が100μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の曲率が大きくなり、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。サイドエッチングを進行させ、金型用基材表面の全面にエッチング処理を施すためには、エッチング量が重要な因子であり、少なくともエッチング量はマスクの幅より大きい必要がある。
【0054】
なお、このように金型用基材表面の全面にエッチング処理を施さない場合には、エッチングされた箇所とエッチングされていない箇所によって形成された表面凹凸形状9の急峻な表面傾斜を十分に鈍らせるために、後述する第2めっき工程におけるクロムめっきを厚くしなくてはならない。しかしながら、クロムめっきの厚みを厚くしすぎると、ノジュールが発生しやすくなるので、好ましくない。また、クロムめっきの厚みを薄くした場合には、エッチングされた箇所とエッチングされていない箇所によって形成された表面凹凸形状9の急峻な表面傾斜を十分に鈍らせることができず、望む表面形状の金型が得られないことから、その金型を用いて作製した防眩フィルムも優れた防眩性能を示さない。図10には金型用基材表面の全面にエッチング処理を施さずに、エッチングされていない箇所を残した金型用基材表面の模式図を示した。エッチングされた箇所とエッチングされていない箇所によって形成された表面凹凸形状9は急峻な表面傾斜を持つこととなる。
【0055】
〔7〕第2めっき工程
続いて、クロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状をさらに鈍らせる。図8(d)には、上述したようにエッチング処理によって形成された表面凹凸形状10の上にクロムめっき層11を形成し、さらに表面12を鈍らせた状態が示されている。
【0056】
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0057】
上述した特開2002−189106号公報、特開2004−45472号公報、特開2004−90187号公報などには、クロムめっきを採用することが開示されているが、金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生したりすることが多く、その結果、作製される防眩フィルムの光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態の金型は、防眩フィルムの製造用に適していない。何故ならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行われているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じ易いこのような不都合を解消している。
【0058】
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0059】
また、上述した特開2004−90187号公報などに開示されているようにめっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
【0060】
このように本発明では、上述したエッチング工程により形成された表面凹凸形状にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状がより一層鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合も、下地金属の種類、エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御するうえで最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
【0061】
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
【0062】
このようにして、実質的に平坦部がない金型を得ることができる。このように実質的に平坦部がない金型は、好ましい光学特性を示す防眩フィルムを得るのに好適に用いられる。なお、本発明の製造方法で得られた金型は、凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPaが0.01〜0.2μmであり、その断面曲線における平均長さPSmが8〜50μmであり、かつ、その断面曲線における最大断面高さPtが0.1〜1.0μmであることがことが好ましい。金型の上記算術平均高さPaが0.01μmより小さいか、または、最大断面高さPtが0.1μmより小さい場合には、この金型を使用して作製した防眩フィルムの表面形状がほぼ平坦なものとなり、十分な防眩性能を示さなくなる傾向にある。また、上記算術平均高さPaが0.2μmより大きいか、または、最大断面高さPtが1.0μmより大きい場合には、この金型を使用して作製した防眩フィルムが白ちゃけたり、ギラツキが発生したり、質感が低下したりする傾向にある。また、金型の上記平均長さPSmが8μmより小さい場合には、この金型を使用して作製した防眩フィルムが十分な防眩性能を示さなくなる傾向にある。一方、金型の上記平均長さPSmが50μmより大きい場合には、この金型を使用して作製した防眩フィルムを高精細な画像表示装置に配置した際にギラツキが発生する傾向にある。
【0063】
また、本発明の金型の製造方法においては、エッチング工程と第2めっき工程の間に、感光性樹脂膜剥離工程を含むことが好ましい。エッチング工程においてサイドエッチングを進行させて金型用基材表面の全面にエッチング処理を施すことによって、マスクは金型用基材表面より剥離されるが、剥離されたマスクが金型用基材表面上に付着し、第2めっき工程における欠陥の原因となる可能性がある。このような付着したマスクを感光性樹脂膜剥離工程において完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることが出来て、pH、温度、濃度、及び浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることが出来る。
【0064】
<防眩フィルムの製造方法>
本発明はまた、上述した本発明の金型の製造方法で得られた金型を用いた防眩フィルムの製造方法についても提供する。すなわち、本発明の防眩フィルムの製造方法は、本発明の金型の製造方法で製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する工程と、金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす工程とを含む。このような本発明の防眩フィルムの製造方法によって、好ましい光学特性を示す防眩フィルムが好適に製造される。
【0065】
金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0066】
UVエンボス法は、透明樹脂フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される方法である。具体的には、透明樹脂フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で透明樹脂フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明樹脂フィルムを剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。
【0067】
UVエンボス法を用いる場合、透明樹脂フィルムとしては、実質的に光学的に透明なフィルムであればよく、たとえばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0068】
またUVエンボス法を用いる場合における紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されないが、市販の適宜のものを用いることができる。また、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合したものを好適に用いることができる。
【0069】
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明樹脂フィルムを加熱状態で金型に押し付け、金型の表面形状を透明樹脂フィルムに転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法における紫外線硬化型樹脂を塗工するための基材フィルムとしても好適に用いることができる。
【0070】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図11(a)に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光、および現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行った。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用し、図11(a)に示すパターンを露光することによって、マスクの金型用基材表面への投影面積の金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対する比率は9.3%であった。また、図11(a)に示すパターンを繰り返し並べたパターンをレーザ光によって露光するため、金型用基材表面の100μm×100μmの領域におけるマスクの金型用基材表面への投影面積の標準偏差は1000μm2以下であった。
【0072】
その後、塩化第二銅液でエッチング処理を行った。その際のエッチング量は8μmとなるように設定した。エッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、クロムめっき加工を行い、金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0073】
<比較例1>
図11(b)に示すパターンを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は実施例1と同様にして金型を作製した。図11(b)に示すパターンを露光することによって、マスクの金型用基材表面への投影面積の金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対する比率は67.4%であった。
【0074】
<評価試験1>
実施例1および比較例1で得られた各金型についての表面形状について評価した。各表面形状を直接測定することは困難であるため、後述する実施例2および比較例2に記載の方法で防眩フィルムのサンプルを作製し、このサンプルの表面形状を測定して金型の表面形状として評価した。なお、防眩フィルム上の断面曲線は、金型上の断面曲線の上下が反転したものになるが、算術平均高さPa、平均長さPSmおよび最大断面高さPtは両者で同じになる。表面形状の測定にあたっては、共焦点顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)を用い、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。測定データをもとに、JIS B 0601に準拠した方法で計算することにより、算術平均高さPa、平均長さPSmおよび最大断面高さPtを算出した。結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2>
光硬化性樹脂組成物GRANDIC 806T(大日本インキ化学工業(株)製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシフェリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、実施例1でそれぞれ得られた金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる、実施例2の透明な防眩フィルムをそれぞれ得た。
【0076】
<比較例2>
金型として、比較例1で得られた金型を用いたこと以外は実施例2と同様にして透明な防眩フィルムを得た。
【0077】
<評価試験2>
得られた実施例2および比較例2の各防眩フィルムについて、以下のような光学特性および防眩性能の評価を行った。
【0078】
(1)光学特性の評価1:ヘイズの測定
防眩フィルムのヘイズは、JIS K 7136に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠したヘイズメータHM−150型(村上色彩技術研究所製)を用いてヘイズを測定した。防眩フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。一般的にヘイズが大きくなると、画像表示装置に適用したときに画像が暗くなり、その結果、正面コントラストが低下しやすくなる。それ故に、ヘイズは低い方が好ましい。
【0079】
(2)光学特性の評価2:反射鮮明度の測定
反射鮮明度は、JIS K 7105に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠した写像性測定器ICM−IDP(スガ試験機(株)製)を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この規格では、像鮮明度測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類が規定されている。このうち、幅0.125mmの光学くしを用いた場合、本発明で規定する防眩フィルムにおいては、その測定値の誤差が大きくなることから、幅0.125mmの光学くしを用いた場合の測定値は和に加えないこととし、幅が0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである3種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって反射鮮明度と呼ぶことにした。この定義による場合の反射鮮明度の最大値は300%である。この定義による反射鮮明度があまり大きくなると、光源などの像が映り込んで、防眩性が低下する傾向になりやすいため、100%以下であることが好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。評価の際には、防眩フィルムの反りを防止するため、および裏面からの反射を防止するために、光学的に透明な粘着剤を用いて、防眩フィルムの凹凸面が表面となるように2mm厚みの黒色アクリル樹脂板に貼合してから、測定に供した。この状態で防眩フィルム側から光を入射させ、測定を行った。
【0080】
(3)光学特性の評価3:60度光沢度の測定
60度光沢度は、JIS Z 8741に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠した光沢計PG−1M(日本電色工業(株)製)を用いて、防眩フィルムの光沢度を測定した。この場合も、防眩フィルムの反りを防止するため、および裏面からの反射を防止するために、光学的に透明な粘着剤を用いて、防眩フィルムを凹凸面が表面となるように2mm厚みの黒色アクリル樹脂板に貼合してから、測定に供した。この状態で防眩フィルム側から光を入射させ、測定を行った。一般的に60度光沢度が小さいことは、サンプル表面が曇っていることを意味し、その結果、白ちゃけが発生しやすくなる。それ故に、光沢度は高い方が好ましいが、光沢度が高すぎると映り込みが生じ、防眩性が低下するため、30〜90%程度の値が好ましい。
【0081】
(4)防眩性能の評価1:映り込みの目視評価
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無を、目視にて次の基準で3段階に評価した。
【0082】
1:映り込みが観察されない
2:映り込みが少し観察される
3:映り込みが明瞭に観察される
(5)防眩性能の評価2:白ちゃけの目視評価
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、白ちゃけの程度を、目視にて次の基準で3段階に評価した。
【0083】
1:白ちゃけが観察されない
2:白ちゃけが少し観察される
3:白ちゃけが明瞭に観察される
(6)防眩性能の評価3:ギラツキの評価
まず、図12に平面図で示すようなユニットセル31のパターンを有するフォトマスクを用意した。図12において、ユニットセル31は、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン32が形成され、そのクロム遮光パターン32の形成されていない部分が開口部33となっている。次に、このフォトマスクを図13に示すように、フォトマスク41のクロム遮光パターン32を上にして、内部に光源43が設けられたライトボックス42に置き、1.1mm厚のガラス板44に20μm厚みの粘着剤で防眩フィルム51を貼合したサンプルをフォトマスク41上に置き、サンプルから約30cm離れた場所から目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した官能評価の7段階のうち、レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。なお、フォトマスクのユニットセルは、図12におけるユニットセル縦×ユニットセル横が282μm×94μm、したがって同図における開口部縦×開口部横が272μm×84μmのものを用いた。このセルは90ppi(pixel per inch)の画素密度に相当する。
【0084】
結果を表2に示す。なお、表2中、たとえば比較例2の反射鮮明度の内訳は次のとおりである。
【0085】
反射鮮明度
0.5mm光学くし: 30.2%
1.0mm光学くし: 39.2%
0.5mm光学くし: 43.2%
合計 112.6%
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
表1、2に示す結果から、本発明の製造方法によって作製された金型においては、表面凹凸形状の傾斜が急峻な部分が鈍らされるため、傾斜の急峻な箇所のない金型が得られた。また、本発明の製造方法から得られる防眩フィルムは優れた防眩性能を示した。一方、全面にエッチング処理を行わない製造方法によって作製された金型は、表面凹凸形状に傾斜が急峻な部分が存在するために、その金型を用いて作製された防眩フィルムにおいては白ちゃけが発生しており、また、傾斜が急峻でない箇所は平坦であるため、映り込みも発生していた。よって、本発明の製造方法から得られる防眩フィルムは、優れた防眩性能を示すこととなる。
【0089】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図2】感光性樹脂膜にパターンが露光された状態を模式的に示す図である。
【図3】感光性樹脂膜上に露光されるパターンを模式的に示す図である。
【図4】感光性樹脂膜上に露光されるパターンを模式的に示す図である。
【図5】感光性樹脂膜上に露光されるパターンを模式的に示す図である。
【図6】感光性樹脂膜上に露光されるパターンを模式的に示す図である。
【図7】感光性樹脂膜上に露光されるパターンを模式的に示す図である。
【図8】本発明の金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。
【図9】エッチング工程においてサイドエッチングが進行する状態を模式的に示す図である。
【図10】エッチングされた箇所とエッチングされていない箇所が存在する金型用基材を模式的に示す図である。
【図11】実施例1の金型作製の際に使用したパターンを示す図である。
【図12】ギラツキ評価試験に用いられるフォトマスクにおけるユニットセル31を模式的に示す平面図である。
【図13】ギラツキ評価試験を行っている様子を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 金型用基材、2 研磨工程によって研磨された基材の表面、3 感光性樹脂膜、4露光工程において露光された感光性樹脂膜、5 露光工程において露光されない感光性樹脂膜、6 マスクとして作用する感光性樹脂膜、7 マスクの無い箇所、8 エッチングによって段階的に形成される表面、9 エッチングされた箇所とエッチングされていない箇所が存在する基材表面、10 エッチング工程後の基材表面(表面凹凸形状)、11 クロムめっき層、12 クロムめっきの表面、31 ユニットセル、32 クロム遮光パターン、33 開口部、41 フォトマスク、42 ライトボックス、43 光源、44 ガラス板、45 観察者、51 防眩フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施す第1めっき工程と、
第1めっき工程によってめっきが施された表面を研磨する研磨工程と、
研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成する感光性樹脂膜塗布工程と、
感光性樹脂膜上にパターンを露光する露光工程と、
パターンが露光された感光性樹脂膜を現像する現像工程と、
現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いて、金型用基材全面にエッチング処理を施し、研磨されためっき面に凹凸を形成するエッチング工程と、
エッチング工程によって形成された凹凸面にクロムめっきを施す第2めっき工程とを含む、金型の製造方法。
【請求項2】
露光工程における感光性樹脂膜上へのパターンの露光が、コンピュータ上で作成されたパターンデータを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することによって行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
現像工程後に溶解されずに残る感光性樹脂膜の金型用基材表面への投影面積が、金型用基材表面において表面凹凸形状が形成される領域の面積に対して1〜70%である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
金型用基材表面の100μm×100μmの領域における現像工程後に溶解されずに残る感光性樹脂膜の金型用基材表面への投影面積の標準偏差が1000μm2以下である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
エッチング工程と第2めっき工程の間に、該感光性樹脂膜を剥離する感光性樹脂膜剥離工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
エッチング工程におけるエッチング量が2〜100μmである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
クロムめっきを施した後、表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いる、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
クロムめっきにより形成されたクロムめっき層が1〜10μmの厚みを有する、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法で製造された金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する工程と、
金型の凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす工程とを含む、防眩フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−76386(P2010−76386A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250614(P2008−250614)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】