説明

金型保持具および該金型保持具を備えた金型洗浄装置

【課題】小型且つ軽量な金型の洗浄時に用いる金型保持具を提供する。
【解決手段】複数の金型を位置決め保持して、金型洗浄槽内に配置する金型保持具であって、各金型の一部が挿入される嵌合用の開口を備えた保持材と、前記保持材に金型を嵌合保持した状態で前記開口内へと挿入あるいは移動させて金型を位置決め固定する固定材とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型保持具および該金型保持具を備えた金型洗浄装置に関し、詳しくは、小型且つ軽量の多数の金型を確実に保持して、金型洗浄槽内に垂直姿勢あるいは斜め姿勢で配置可能とする金型保持具と、該金型保持具で金型を保持して洗浄槽内に浸漬し、電解洗浄で金型を洗浄する金型洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂やゴムの成形用材料の改質および成形技術の進歩に伴い、従来プレス、鍛造、鋳造等により形成されていた金属製やガラス製等の部品も、大量生産が可能な金型で成形される樹脂製部品へと移行しつつある。
例えば、樹脂製品やゴム製品は金属製品やガラス製品と比較すると、強度、耐熱性、耐油性、耐摩耗性が乏しいとされてきたが、エンジニアリングプラスチックは耐熱性、耐衝撃性、耐油性に優れているため、レンズ等の超小型の精密部品からフラットパネルディスプレイ等の大型部品まで成形材となっている。
【0003】
前記樹脂、ゴム等の成形に用いる金型は、成形量に伴ってその内面に樹脂カス、ゴムカスが付着すると共に、樹脂が溶解された時に発生するガスや樹脂カスが付着する。これらの付着物は、成形ショットを重ねると、ショット回数の増加に伴い金型表面に堆積し、簡単には除去することができない。
特に、前記エンジニアリングプラスチックは、前記した優れた性能を有する故に、樹脂カスやデポジットが金型に付着すると除去することが非常に困難となっている。
しかしながら、これらを確実に除去しないと、製品が規定の精度に達しない等の成形不良につながる等の不都合が生じる。よって、成形用金型は定期的に製造装置から取り外して洗浄し、上記付着物を除去しなければならない。
【0004】
従来の金型洗浄装置においては、例えば、本出願人の出願に係わる特開平11−138559号公報では、図23(A)(B)に示す多孔性金属板、金属メッシュより形成した金型保持カゴ200を用い、該金型保持カゴ200に金型Wを搭載して、金型洗浄槽内に電解用洗浄液中に浸漬し、電解洗浄を行っている。
【0005】
前記金型保持カゴ200では底面上に金型Wを載置しているだけであるため、超小型で軽量の金型は安定保持されず、洗浄時に移動、転倒、ガタツキが発生しやすく、金型に損傷が発生する危険性がある。また、保持カゴ200の底面が多孔性金属板やメッシュであるため、超微細な金型は孔から落下する恐れもある。
図23(B)に示す蓋201を設けた場合においても、洗浄液中に金型がカゴから脱落するのを防止する機能を有するが、保持カゴ200内で金型の位置決め保持はできない。
また、洗浄槽内に底面を水平状態として浸漬させる保持カゴ200では、底面に金型を載置しているため、1度に洗浄できる金型の個数が制限され、洗浄効率が悪くなり、多数の金型を1度に洗浄するには洗浄槽を大型化する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−138559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明を前記問題に鑑みてなされたもので、特に、多数の小型の金型を1度に洗浄できるように、洗浄槽内に傾斜姿勢で配置あるいは垂直姿勢で配置しても、金型を確実に位置決め保持できる金型保持具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、
複数の金型を位置決め保持して、金型洗浄槽内に配置する金型保持具であって、
各金型の一部が挿入される嵌合用の開口を備えた保持材と、
前記保持材に金型を嵌合保持した状態で前記開口内へと挿入あるいは移動させて、金型を位置決め固定する固定材とを備えていることを特徴とする金型洗浄用の金型保持具を提供している。
【0009】
前記のように、本発明の金型保持具では、挿入する金型を嵌合して保持する開口を有する保持材と、該保持材で保持した金型を確実に固定する固定材とから構成しているため、金型がレンズ用金型等の小型且つ軽量であっても確実に位置決め固定できる。その結果、該金型保持具を洗浄槽内に傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で配置しても金型の脱落を防止でき、よって、洗浄槽の断面積が比較的狭くても、一度に多数の金型の洗浄を行うことができる。
【0010】
前記保持材と固定材とを重ね合わせて組みつけていると共に、該組みつけ状態で連結するフレームを備え、前記金型洗浄槽内において、フレームを介して傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で支持される構成としている。
このように、金型保持具が傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で自立できる構成としておくと、洗浄槽内に金型保持具の支持手段を設けていない場合にも、本発明の金型保持具を所要の姿勢で洗浄槽内に配置することができる。なお、金型洗浄装置側において、金型保持具を傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で保持できる手段があれば、該手段に前記フレームを沿わせて配置する。
なお、本発明の金型保持具は従来と同様に洗浄槽内に水平姿勢で配置しても良いことは言うまでもない。
【0011】
本発明の金型保持具は、電解洗浄を行う金型洗浄槽内に配置し、保持した金型を電解洗浄することが好ましい。
よって、本発明の金型保持具では、前記フレームおよび前記金型と接触する前記保持材および固定材の一部もしくは全部を導電材で形成して互いに連結し、前記フレームに給電部を設けて、フレームおよび前記導電材を介して前記金型に通電している。即ち、金型に通電できる構成であれば限定されない。
また、金型保持具で保持する金型は露出させる状態で、保持材および固定材の導電材は絶縁材で被覆してことが好ましい。該構成とすると、電解洗浄液は露出した金型とのみ通電させることができ、電解洗浄作用を高めることができる。
なお、電解洗浄用としない場合には、必ずしも金型との接触部を導電材で形成する必要はない。
【0012】
本発明の金型保持具の詳細な構造例の一つは、
前記保持材の開口は複数の小型金型を連続して挿入する長尺溝とし、複数の長尺溝を間隔をあけて備え、これら長尺溝の軸線方向と直交する一端側に前記長尺溝の開口端を並列に設けていると共に他端側は閉鎖連続部とし、かつ、前記開口端側の背面に前記固定材の取付枠を設けている一方、
前記固定材は、前記各長尺溝に開口端側から挿入する金型押さえ部と前記連結枠への取付部とを設けたL形状とし、
洗浄される金型の一部を前記長尺溝内に連続して挿入し、挿入された開口端側に位置する金型を前記長尺溝の開口端側より挿入する前記固定材の押さえ部を当接させ、該押さえ部と前記閉鎖連結部との間で長尺溝内に連続挿入された金型を狭持する構成としている。
【0013】
前記構成では、保持材は言わばクシ歯形状とし、並列した長尺溝に複数の金型を連続して挿入し、これら金型を長尺溝の閉鎖連結部と開口端から挿入する固定材の押さえ部との間で固定している。
なお、各長尺溝には、複数の金型を連続して挿入する代わりに、1個の長尺な金型を挿入して保持してもよい。
【0014】
前記固定材は、前記のようにL型金具とし、一側部を取付部とし、前記保持材側の固定材の取付枠に重ねてネジ止めし、他側部の前記押さえ部を長尺溝に挿入している。
該固定材は押さえ部の長さが一定である場合、長尺溝に挿入される金型と当接しない場合がある。そのような場合には、固定具の押さえ部と金型との間にスペーサを介在させてもよい。あるいは、押さえ部の長さを変えた固定具を複数種類用意しておいてもよい。
【0015】
前記金型の外周面に凹凸部が設けてられているものであれば、該凹凸部と嵌合する凹凸部を前記保持材の長尺溝の少なくとも1側縁に沿って設けている。
これにより、長尺溝に挿入する金型の左右両側を嵌合保持でき、前記固定材の押さえ部と長尺溝の閉鎖連結部とによる上下方向の狭持とにより各金型を確実の保持できる。
このように、長尺溝内で金型を移動不可の状態で確実に保持できる結果、該金型保持具を洗浄槽内に傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で配置しても金型の脱落を防止でき、よって、洗浄槽の断面積が比較的狭くても、一度に多数の金型の洗浄を行うことができる。
【0016】
一方、前記洗浄される金型の外周面に凹凸部が無い場合には、長尺溝に挿入する金型の両側面を前記長尺溝の両側縁で当接すると共に、該金型の外周面に嵌合する形状を有するスペーサを金型間に長尺溝に挿入している。
これにより、長尺溝内において、金型を1個づつ確実に保持できる。
特に、前記スペーサの両面を隣接する金型の外周面に当接させた状態で、スペーサを保持材にボルトやビスで固定すると、より確実に金型を位置決め固定できる。
【0017】
前記保持材に設ける長尺溝は、長尺溝の両側部材と、その一端側を連結する閉鎖連結材とで囲んで、背面側が開口した長尺溝を形成している。長尺溝がスリット状の細幅の場合は、平板状の保持材に表面側に溝加工してスリット状の長尺溝を設け、背面側が閉鎖された長尺溝としている。
この保持材に設ける複数の長尺溝の幅は一定としても良いし、幅を変えてもよい。幅を変えると、多数種類の金型を1個の金型保持具で同時に保持することができる。
【0018】
本発明の金型保持具の詳細な構造例の他の一つは、
前記保持材の開口を1個の金型の一部が挿入される嵌合穴とし、複数の嵌合穴を縦横方向に所要のピッチをあけて設けている一方、
前記固定材は、前記保持材に移動自在に重ねると共に所要位置で前記保持材に固定し、かつ、前記保持材の同一列の複数の嵌合穴と連通する長尺溝を並設しており、
連通させた前記嵌合穴と長尺溝に金型を挿入し、該各金型の一側外周面を前記嵌合穴に当接させると共に、他方外周面を前記移動させる長尺溝の側面と当接させて各金型を狭持固定する構成としている。
【0019】
前記保持材と固定材とを設けると、保持材の嵌合穴および固定材の名長尺溝の幅が金型に対して若干大きくすることができ、金型を挿入しやすくすることができると共に、洗浄後に金型を金型保持具から取り外しやくすることができる。即ち、円柱形の金型の一端側を連通させた嵌合穴と長尺溝に遊挿し、その後、固定材を移動させることで金型1個ずつ狭持できる。また、固定材を保持材に対して移動させることで、一度の操作で多数の金型を同時に位置決め固定することができる。
また、金型のサイズが若干相違しても、保持材の嵌合穴と固定材の長尺溝に金型の一部を挿入することができれば、金型を位置決め保持することができる。
【0020】
具体的には、前記保持材は矩形状の平板からなり、嵌合穴を縦横に所要ピッチをあけて設けている一方、前記固定材はクシ歯形状とし、一側部は連続部とする一方、他側から前記長尺溝を並設している。また、前記保持材の外周縁に沿って長穴を設け、該長穴に前記固定材からボルトを位置調整して通し、該ボルトにナットを締結して保持材と固定材とを固定している。
【0021】
前記保持材に設ける嵌合穴は同一列毎に穴径を変えても良いし、嵌合穴の形状を変えてもよい。
該構成とすると、金型保持具で保持する金型と同一種類の金型だけとせずに、多種類の金型も同時に位置決め保持できる。
【0022】
前記固定材の長尺溝の金型当接側の側縁に沿って弾性材を取り付けていることが好ましい。このように移動する固定材の弾性材を金型に対して当接させて位置決め固定すると、金型を弾性保持することができ、金型サイズが若干相違しても確実に保持できるとともに、位置決め時に金型に損傷が発生することも防止できる。
【0023】
さらに、本発明の金型保持具の詳細な構造例の他の一つは、
前記保持材は円板形状とすると共に周方向に間隔をあけて設けた1個の金型の一部を嵌合する嵌合穴を前記開口としていると共に、外周面に環状凹部を設け、該環状凹部に前記各嵌合穴の一側部を連通させて、環状凹部に嵌合穴に挿入する金型の外周面の一部を露出させる一方、
前記固定材は、前記各嵌合穴に金型の一部を嵌合した状態で前記嵌合凹部に取り付けて金型を押さえるリング材から形成している。
前記リンク材はOリンクから形成してもよいし、締結バンド材で形成してもよい。
また、円板形状とした保持材を嵌合する円形穴を複数あけた保持基板を設け、複数の円形の保持材を保持基板に嵌合保持してもよい。
【0024】
さらに、本発明の金型保持具の詳細な構造例の他の一つは、
前記保持具は間隔をあけて配置した複数段の保持板を備え、各保持板の上面に前記各1個の金型の一側部を嵌合する溝を前記開口として、所定ピッチで設け、
前記固定材は、前記各保持板の上方に夫々配置した複数段の押さえ板を備え、これら押さえ板を一体的に連結して連結具にバネを取り付けて、押さえ板を保持板側にバネで移動し、前記溝内に保持した金型に押さえ板で当接させて固定している。
【0025】
前記した本発明の金型保持具は、電解洗浄を行う場合に限らず、洗浄槽内に金型を配置して、水洗、エアーブロー等を行う場合にも好適に用いることができる。
【0026】
第2の発明として、前記した金型保持具を金型洗浄槽内に取り出し自在に配置する金型洗浄装置として、
前記金型保持具を金型洗浄槽内に、傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で配置し、
前記金型洗浄槽内で前記金型保持具で保持された金型を電解洗浄、水洗あるいは/および水洗後の金型にエアーを吹き付けて乾燥を行うことを特徴とする金型洗浄装置を提供している。
【0027】
金型洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄を併用すると、最も効率よく金型に付着した樹脂カス等を除去することができる。
該金型洗浄装置では、金型洗浄槽内には電解洗浄液が充填されると共に、前記保持材は電源マイナス側と接続される一方、電源プラス側と接続される電極が前記金型保持具と間隔をあけた側方の電解洗浄液中に浸漬され、
かつ、前記電解洗浄液に超音波振動を発生させる超音波発生装置を備えた構成としている。
【0028】
前記金型洗浄装置内に配置する金型保持具は、小型の金型を一度に多量に洗浄できるように、垂直姿勢あるいは10度以上90度未満の傾斜姿勢、好ましくは、45度〜90度の範囲で洗浄槽内に配置することで、洗浄槽の断面積を比較的小さくしても、洗浄槽の深さを比較的大きくすれば、金型保持具を洗浄槽内の電解洗浄液中に浸漬させることができる。
【0029】
前記電解洗浄を行う金型洗浄装置では、金型保持具により金型を垂直あるいは傾斜させて配置し、その一側方に電極を配置し、金型と電極との間に空間をあけるため、電極表面および金型表面から上向きに発生するガスにより金型と電極と対向間にガスが溜まることが抑制できる。その結果、電極と金型の間への電解洗浄液の流入が阻害されず、電極と金型間の洗浄液の量が希薄になることもなく、電極と金型との間に電解洗浄液を介して電流が十分に流れ、金型表面に付着する樹脂カス等を電解洗浄で除去することができる。かつ、電極と金型間の液抵抗も高くならず、電極および電極間の洗浄液に高熱が発生することが抑制でき、金型のガス焼け発生も防止できる。
【0030】
さらに、前記電極対向側と反対側の金型の背面側の洗浄槽側壁の外部に超音波発生装置を設置すると、超音波振動を垂直あるいは傾斜配置している金型に効率的に付与できる。その結果、電解洗浄と超音波洗浄との両方式を併用して金型の洗浄作用を高めることができ、微小な凹部にこびりついた樹脂カスまでも金型表面から剥離除去することができる。 さらにまた、金型の上方に電極を吊り下げるのではなく、対向する側方に配置するため、電極が溶けて、その構成材が落下して金型表面に付着することも防止できる。
【0031】
前記電極は、前記金型保持具の他面側に上方より吊り下げて電解液中に浸漬し、前記金型保持具の上下長さ方向に対向して配置する板状電極、あるいは、上下間隔をあけて配置する複数の電極からなり、これら電極は前記給電手段の電源プラス側に接続している。
電極を板状とすると、上下に細長い板状の複数の電極板を金型の幅方向に並設して連結し、言わば簀の子板状とすることが好ましいが、一枚の大面積の平板状とすることも可能である。
【0032】
前記板状とした電極が、電解洗浄液中に直接浸漬した場合に少しでも溶ける可能性があれば、溶けた金属イオンが電解洗浄液中に流失しないようにイオン交換膜あるいは多孔質中性隔膜からなる被覆膜で覆い、該被覆膜内部に前記電解洗浄液あるいは苛性ソーダ等のアルカリ性液を充填している事が好ましい。なお、電解洗浄液中にキレート剤を含有させている場合にはキレート剤を除いた電解洗浄液を用いることが好ましいが、キレート剤を含有させてもよい。
前記イオン交換膜で覆った電極は、電解洗浄液が充填される前記洗浄槽内に常時浸漬させている。
【0033】
また、前記電極を上下方向の板状とせずに、対向する金型の上下両端間にかけて、所要ピッチで配置する複数の電極を用いる場合には、垂直或いは傾斜配置する給電棒の主軸から上下方向に間隔をあけて前記金型側へと突出させた複数の分岐軸の先端に夫々取り付けられる円盤型或いは非円盤型としている。
このように電極を小さい単体として、金型保持具の対向面に多数配置する場合は、前記イオン交換膜や多孔質中性隔膜で被覆しにくいため、電解洗浄液中に溶けにくい材質から電極を形成することが好ましい。具体的には、鉄製の電極とする場合には前記被覆膜で被覆せずに電解液中に直接浸漬させている。
前記鉄製の電極とする場合、洗浄液中より取り出して放置すると、錆等の腐食が発生しやすいため、洗浄槽と隔壁を隔てて水酸化ナトリウムを主成分とする防錆目的のアルカリ性液を充填した電極保管槽を設け、該電極保管槽内に前記鉄製電極を非洗浄時に浸漬して保管することが好ましい。
【0034】
なお、前記電極は、鉄、ニッケル、金、銀、パナジウム、ロジウム、チタン、鉛、プラチナ、ジルコニウム、ニオブ、ゲルマニウム、テクネチウム、イリジウム、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、グラファイト、ルテニウムの単体あるいは合金から選択されるもので形成することが好ましい。
【0035】
前記垂直あるいは傾斜保持される金型保持具の背面側の洗浄槽の側壁外部に超音波発生装置を設置する場合は、超音波振動子を2種類以上の周波数に切り替えて超音波を発生させることが好ましい。このように、超音波振動を一定の周波数とせずに、異なる周波数を発生させると、電解洗浄液に適宜な撹拌作用を発生させて、洗浄力を高めることができる。
【0036】
本発明の金型洗浄装置では、金型の電解洗浄後に洗浄槽内から電解洗浄液を排出する手段と、前記洗浄槽内の洗浄後の金型の水洗用として水洗水を給排する手段と、前記洗浄槽内の水洗後の金型の乾燥用として清浄空気、真空あるいは不活性ガスからなる気体を給排する手段とを設け、洗浄、水洗、乾燥を連続して行える構成としてもよい。
このように一槽式の金型洗浄装置とし、1つの洗浄槽内で電解洗浄による本洗浄、水洗、乾燥を順次連続的に行える構成とすると、該洗浄槽から大型の金型保持具を別の槽に移送する必要はなく、移送中に金型保持具で保持された金型の表面の水滴に空気中の塵埃が付着してウオターマークとなる恐れがない。また、移送過程で金型に傷等が生じることを確実に防止でき、よって、特に微細な小型のレンズ用金型の洗浄には適したものとなる。
また、1つの槽内で本洗浄、水洗、乾燥を行うと、洗浄時間の短縮が図れると共に洗浄装置の設置スペースを大きくとらない。
さらに、洗浄槽の上面開口を密閉する蓋を着脱自在に取り付けてもよい。洗浄槽の上面開口を蓋で覆った状態で洗浄を行う密閉式とすると、洗浄時に空気中の塵埃が微細な金型表面に付着するのを防止でき、かつ、蓋で密閉していることから作業員の安全性を高めることができる。
前記電解洗浄時、水洗時および乾燥時のいずれも洗浄液、水洗水、乾燥用ガスを常温以上100℃以下として洗浄能力、乾燥能力を高めることが好ましいため、蓋で密閉することで温度制御ができ、洗浄、水洗、乾燥を行うことができる。
【0037】
さらに、洗浄槽内の投入する電解洗浄液の給排管には循環用ポンプを介設すると共に、前記水洗水、乾燥気体供給用の配管にも開閉弁を介設し、前記循環用ポンプ、開閉弁、さらに、電極と保持手段への給電、さらに前記超音波発生手段の動作を自動制御するコントローラを付設していることが好ましい。
【0038】
また、前記電解洗浄液は加熱手段を付設して、洗浄能力を高めることができる点から好ましい。
さらに、電解洗浄液には水を配合しているが、該水としては、水道水を精製手段を通して不純物を除去した水を配合していることが好ましい。
前記精製手段として、蒸留、イオン交換あるいは/および濾過法を採用した精製手段を用いられる。
【0039】
さらに、本発明の金型洗浄装置においては、電解洗浄中に発生する金属イオンの回収機構を付設してもよい。例えば、洗浄槽からオーバーフローする電解洗浄液の回収槽を付設し、該回収槽にオーバーフロー液中の金属イオン吸着用の電極板を配置し、あるいは、洗浄槽内または電解洗浄液用タンク内に、電解洗浄液中の金属イオンを吸着する電極板を配置してもよい。
【発明の効果】
【0040】
前述したように、本発明に係わる金型保持具を用いると、多数の小型且つ軽量の金型を確実に位置決め保持することができる。その結果、金型洗浄装置内に垂直姿勢や傾斜姿勢で金型保持具を配置することができ、一度に多数の金型の洗浄を行うことができる。
【0041】
また、前記金型保持具で金型を保持して洗浄槽内に配置した電解洗浄を行う金型洗浄装置では、電極表面および金型表面から通電時に発生するガスが上向くことで電極と金型間にガスが溜まることが防止できる。このように、電極と金型間にガスを溜めないことにより、その間の電解洗浄液の抵抗を増大させず通電性能を確保できることで、金型保持具で保持した多数の金型の洗浄作用を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態の金型洗浄装置を図面を参照して詳述する。
図1乃至図9に示す実施形態の金型洗浄装置1は、直径約2cmの小型且つ軽量の略円柱状のレンズ用の金型10を、金型保持具6で位置決め保持して洗浄槽2内に傾斜姿勢で配置し、電解洗浄と超音波洗浄とを併用して洗浄するものである。
【0043】
金型洗浄装置1は図1に示すように、上面開口のボックス形状の洗浄槽2を備え、該洗浄槽2内を一側部に底面より傾斜壁3を立設して仕切り、洗浄槽2の一側に超音波発生装置40を収容する収容槽4を付設すると共に、他側壁に垂直壁5を立設して仕切り、オーバフロー槽20を付設している。
前記洗浄槽2内には、多数の金型10を保持した金型保持具6を挿入し、前記傾斜壁3に沿わせて配置している。
【0044】
前記金型保持具6は図3〜図8に示す構成としている。
該金型保持具6は、導電性金属板で形成した保持材7と固定材8と、絶縁材からなる被覆板9とで構成している。
前記保持材7は図3、4に示すように長方形の外周枠11を備え、該外周枠11の内部に、対向する一対の枠材12aと12bとからなる長尺溝形成枠12を配置し、前記外周枠11の上下辺11a、11bに連結している。
この長尺溝形成枠12の一対の枠材12aと12bとは金型10の幅と対応する間隔をあけている。また、一対の枠材12aと12bとからなる長尺溝形成枠12は間隔をあけて複数組設けている。なお、図面上では2組としているが、多数組設けてもよい。
【0045】
前記長尺溝形成枠12の一対の枠材12aと12bの表面に断面L形状としたガイド枠13A,13Bを固定して、図5および図7に示すように断面コ字状の凹部14A、14Bを対向して設けている。また、前記外周枠11の下辺11bにはガイド枠13Aと13Bの間に下端保持枠13Cを固定している。
このように、ガイド枠13A、13B、下端保持枠13CをU形状に取り付けることにより、上面開口15aを有すると共に下端が閉鎖連結部15bとなる長尺溝15を設け、該長尺溝15の両側縁15c、15dに沿って、前記断面コ字状の凹部14A、14Bを設けている。
【0046】
前記長尺溝15には、図5(B)に示す一端面にフランジ部10aを設けた金型10を、図6に示すように、上端開口15aより連続的に挿入し、該金型10の挿入時にフランジ部10aを前記凹部14A、14Bに嵌合して挿入している。即ち、図5(A)に示すように、凹部14A、14Bはフランジ部10aが丁度嵌合できる形状としている。
【0047】
前記保持材7の外周枠11の上辺11aは、固定材8の取付枠としている。
固定材8は前記各長尺溝15の上端開口15aから挿入して、長尺溝15内に挿入した金型10を押さえるもので、L字状金具からなる。該固定材8の水平片は固定片8aとし、外周枠11の上辺11aの上面に重ね、該上辺11aより突設しているボルト軸16に蝶ネジ17を締め付けて固定している。
固定材8の垂直片は押さえ片8bとし、長尺溝15内に上端開口15aから挿入し、その両側を前記凹部14A、14Bに挿入している。該押さえ片8bの下端面8cは長尺溝15に連続的に挿入した金型10のうち最上段の金型10−1の上面に当接させている。これらにより、長尺溝15内に直列状態で挿入する複数の金型10は、長尺溝15の下端閉鎖連結部15bと押さえ片8bの下端面8cとの間で上下方向に狭持されるようにしている。
【0048】
前記保持材7の各長尺溝形成枠12の間、外周枠11の表面および、ガイド枠13A、13B、下端保持枠13Cの表面に前記絶縁樹脂製の被覆板9を固定している。該被覆板9で被覆していない箇所は、前記長尺溝15に嵌合保持される金型10および固定材8としている。
【0049】
前記保持材7の外周枠11の四隅には、図4に示す導電性金属材からなるフレーム取付台18を固定し、これらフレーム取付台18に、図8に示すように、門型状のフレーム19の両側枠19a、19bをボルトと蝶ネジで着脱自在に固定している。該フレーム19の両側枠19a、19bを連結する上枠19cを備え、該上枠19cに水平方向へ突出する給電枠部19dを設けている。
【0050】
前記構成からなる金型保持具6に対して、洗浄する金型10を、順次各長尺溝15内に挿入し、挿入後に固定材8の押さえ部8bを長尺溝15内に挿入し、蝶ネジ17で固定する。この状態で、各金型10はフランジ部10aの対向する両側部が凹部14A、14Bに嵌合して位置決めされ、かつ、上下方向は長尺溝15の下端の閉鎖連結部15bと押さえ部8bの下端面8cの間で狭持される。
その際、押さえ辺8bの下端面8cが最上段の金型10の上面に当接しない場合には、スペーサ21を介在させて金型10を位置決め保持している。
これにより、小型且つ軽量の多数の金型10は金型保持具6に対して位置決め固定することができる。
また、金型保持具6の保持材7の外周枠11、金型10と接触する長尺溝形成枠12、ガイド枠13A、13Bを導電性金属材で形成し、かつ、固定材8も導電材で形成し、前記外周枠11に連結するフレーム19も導電材で形成していることで、フレーム19を給電枠部19dを洗浄槽2の周壁上面に設けた給電材22と当接することにより、金型10には通電がなされることとなる。
【0051】
前記金型保持具6は、金型10を取り付けた状態で、洗浄槽2内に挿入し、フレーム19の両側枠19a、19bを傾斜壁3に沿って配置し、その下端面を洗浄槽2の底面に載置する。この状態で金型保持具6は洗浄槽2内に傾斜姿勢で配置される。
フレーム19の上端の給電枠部19dは、洗浄槽2の周壁の上面に載置し、電源のマイナス側で接続した給電材22を配置している。これにより、給電材22、フレーム19の給電枠部19dを介して、金型保持具6で保持された各金型10は電源のマイナス側と接続されることとなる。
【0052】
図1に示すように、洗浄槽2内には、電解洗浄液Q1を充填すると共に、金型保持具6および金型10の配置側と対向する側方にプラス側の電極ユニット30を配置している。該電極ユニット30は複数の長さを相違させた給電棒31の下端に鉄製の板状電極32を連結して板状電極32を前記傾斜保持される金型保持具6と平行となるように傾斜支持している。板状電極32は図9に示すように、複数枚の上下方向の板状電極32を複数枚並列させて連結材32aで連結した簀の子状とし、これら複数枚の板状電極32により対向する金型10の全面をカバーできるようにしている。
【0053】
該給電棒31と前記板状電極32とは、ユニットの上部枠33内に収容し、該上部枠33にイオン交換膜34の上端を連結し、該イオン交換膜34で板状電極32および給電棒31を囲んでいる。このイオン交換膜34の内部には苛性ソーダを主成分とするアルカリ溶液Q2を充填した構成とし、イオン交換膜付き電極としている。
【0054】
前記複数の給電棒31の上端は連結棒35で連結すると共に前記上部枠33の上端とも連結し、このように一体化した電極ユニット30を洗浄槽2の周壁上面にスライド自在に搭載し、金型10側へ近接離反できる構成としている。前記連結棒35はプラス側の給電部(図示せず)と接続している。
なお、電極ユニット30のスライドは作業員が手動で行うようにしているが、電極ユニットにワイヤ等を取り付け、該ワイヤを電動駆動させる構成としてもよい。
【0055】
なお、前記金型10と対向配置してプラス電源に接続する電極は、前記イオン交換膜付き電極とせずに、かつ、板状電極を用いる代わりに、円盤状電極を用いてもよい。
【0056】
前記傾斜壁を介して収容槽4に設置する超音波発生装置40は縦型に配置していると共に、金型保持具6の背面側の全域と対向するように設置している。よって、電解洗浄時において、各金型10の背面側には超音波振動を発生させるようにしている。
【0057】
前記洗浄槽2の底壁には、図示していないが、電解洗浄液Q1の給液口および排液口を設け、給液口より洗浄槽2中に電解洗浄液Q1を供給し、洗浄後に排液口より排出している。また、超音波発生装置40を収容した収容槽4の底壁にも給液口および排液口を設け、温水を収容槽4内に供給している。さらに、オーバーフロー槽20は洗浄槽2からオーバーフローした電解洗浄液Q1を収容する槽であり、底壁に排出口を設けている。
【0058】
前記電解洗浄液Q1の給排管路にポンプ、開閉弁、流路切替弁、フィルター等を介設して自動制御すると共に、超音波発生装置4の振動子も自動制御するコントローラを付設し、該コントローラに設けた操作スイッチで作動を行うようにしている。
【0059】
次ぎに、前記金型洗浄装置1における小型且つ軽量なレンズ用の金型10の洗浄作用を説明する。
まず、金型保持具6に多数の金型10を各長尺溝15内に挿入し固定材8で位置決め固定する。その後、該金型保持具6を洗浄槽2中に挿入し、傾斜姿勢で配置する。この金型10を保持した金型保持具6の洗浄槽2への挿入作業時、電極ユニット30は図1中で左側の離反位置に離しておく。
金型10が所定位置に傾斜状態でセットした後に、電極ユニット30を図1中で右側へと移動させて、ガイドレールの最下端で停止させる。この位置で電極ユニット30と金型10との距離は30mmである。
【0060】
洗浄槽2内には金型保持具6で金型10を保持した状態で挿入する前に電解洗浄液を供給しておいてもよいし、金型10を洗浄槽2中に挿入してから電解洗浄液を供給してもよい。このように、洗浄槽2中の電解洗浄液に金型10を浸漬した状態で、電解洗浄と超音波洗浄を開始する。
即ち、電極ユニット30内の給電棒31を介して板状電極32をプラス側電源に接続すると共に金型保持具6を介して金型10をマイナス側電源に接続し、電解洗浄液を介して板状電極32と金型10とを通電し、電解洗浄を行う。
同時に、超音波発生装置4を駆動し、振動子を作動して電解洗浄液に超音波振動を発生させる。
このように、電解方式と超音波方式の洗浄方法を併用しているため、超音波方式の洗浄で金型10の外部より樹脂カス等の付着物に振動を与えて付着物を破壊すると共に、電解洗浄で金型10表面より発生する水素ガスにより金型10から付着物を浮き上がらせ、付着物を金型10より剥離して除去する。かつ、其の際、洗浄液を所要加熱しているため、強い洗浄力を発揮させることができる。
【0061】
また、電極ユニット30では、鉄製の板状電極32をイオン交換膜34で電解洗浄液と隔離しているため、鉄製の板状電極32の鉄イオンがイオン交換膜34内のアルカリ性液Q2内に溶け出すだけで、電解洗浄液Q1中まで流出せず、よって、鉄イオンが金型10の表面に付着せず、金型10に悪影響を与えることを防止できる。また、鉄製の板状電極から剥離が生じて異物として落下しても、イオン交換膜34内に保持されるため、電解洗浄液Q1中に流出して金型10に付着することも防止できる。
【0062】
前記洗浄が終了すると、電極ユニット30を図1中で左側へと移動して、金型保持具6を上昇させて洗浄槽2より取り出す。その後、図示していない水洗乾燥槽へと金型保持具6を移動させている。
なお、洗浄槽2から電解洗浄液を全て排出し、ついで、水を充填して水洗槽とする場合には、金型保持具6が洗浄槽2内に配置したままとしておく。
【0063】
図10および図11に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、金型保持具6で保持する金型10−1は、図10(A)に示すように、更に超小型の円筒状の金型で、該金型10−1の一側外面に凹部10bが設けられたものを対象としている。
このように超小型の金型10を保持する場合、図11に示すように、保持材7に設ける長尺溝50はスリット状としており、長方形状の導電性金属板からなる長尺溝形成板52に表面からスリット加工を施して長尺溝50を形成している。よって、前記第1実施形態の長尺溝15の背面は開口となっているが、第2実施形態の長尺溝50の背面は閉鎖面となっている。
前記長尺溝50の両側面には、一方側面にのみ突片51を長さ方向全長に設け、前記金型10の凹部10bに嵌合させるようにしている。
前記長尺溝形成板52の上下端縁を外周枠11の上下辺11a、11bに間隔をあけて固定し、これら長尺溝形成板52の間は第1実施形態と同様に絶縁樹脂性の被覆板9を配置して外周枠11に固定している。
【0064】
固定材8は第1実施形態の固定材8と同様でL字状金具からなるが、押さえ部8bはスリット状の長尺溝50に挿入できるように薄幅としている。該押さえ部8bの側面には前記突片51の背面に形成される凹部53に摺動自在に挿入する突起8dを設けている。
固定材8は第1実施形態と同様に、長尺溝50内に金型10を挿入した後、押さえ部8bを長尺溝50内に挿入して、外周枠11に蝶ネジ17で固定している。
他の構成および作用は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
図12乃至図14に第3実施形態を示す。
第3実施形態では、金型保持具で保持する金型10−2は図12に示すように円柱形状で外周面に凹凸がないものを対象としている。この場合、長尺溝の側面で金型10−2の凹凸部を嵌合保持することはできない。
よって、長尺溝55内に挿入する金型10−2の間に、図13(A)に示すように、金型外周面に沿った円弧部53a,53bを両面に設けたスペーサ53を介在させると共に、該スペーサ53を位置決めした後にビス54を用いて固定するようにしている。
【0066】
即ち、導電性金属板からなる長方形状の長尺溝形成板56の両側に第1実施形態と同様な断面L形状のガイド枠57A、57Bを金型10−2の直径幅と同一間隔をあけて固定し、かつ、ガイド枠57Aと57Bの下端間の下端保持枠58を固定し、U字形状の長尺溝55を形成している。該長尺溝55の背面は第2実施形態と同様に長尺溝形成板56により閉鎖している。
前記長尺溝形成板56とガイド板57A、57Bとの間に断面コ字状のスペーサ用ガイド凹部58A、58Bを設けている。
【0067】
前記スペーサ53は、前記したように、上下両側に前記円弧部53a、53bを有すると共に、左右両側部53c、53dが前記スペーサ用ガイド凹部58A、58Bに摺動自在に嵌合する厚さとしている。該スペーサ53も導電性金属板で形成しており、複数個数を予め長尺溝55内にスライド自在に嵌合している。
【0068】
金型10−2は前記長尺溝55内に上端開口からではなく、図14に示すように、長尺溝55の表面側から挿入する。挿入姿勢は金型10−2の軸線を背面の長尺溝形成板56と直交方向とする。挿入した金型10−2の底面は背面の長尺溝形成板56と当接し、左右両側外周面を前記ガイド枠57A、58Bの先端面と接触する。金型10−2を長尺溝55内に挿入した状態で前記スペーサ53の下辺の円弧部53aを金型10−2の上側周面に当接させる。
ついで、次ぎの金型10−2を長尺溝55内に挿入し、その下側外周面を前記スペーサ53の上辺の円弧部53bと当接させる。
この状態でスペーサ53は両側の金型10−2を位置決め保持できる位置に配置され、スペーサ53を背面側の長尺溝形成板53にビス54で固定している。
このスペーサ53による位置決めを長尺溝55内に挿入する金型10−2の間で順次行うことで、外周面に凹凸部の無い金型10−2を位置決め保持している。
他の構成および作用は第1実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0069】
図15乃至図17に第4実施形態を示す。
第4実施形態では、保持材70は矩形状の導電性金属板で形成し、保持材70に縦横方向に所要のピッチをあけて円柱形状の金型10−3を夫々挿入する円形の嵌合穴71を開口として設けている。これら嵌合穴71は金型10−3の直径より若干大きく形成し、金型10−3がスムーズに挿入できる設定としている。
また、左右両側縁に沿って、横列の嵌合穴71の横列L1、L2,…Lnと対応する位置に長穴72を設けている。
【0070】
前記保持材70の背面側に重ねるクシ歯形状の導電性金属板を固定材75としている。該固定材75は左右方向の一側部を連続部75aとする一方、他側から長尺溝76を一定ピッチで設け、これら隣接する長尺溝76の間にクシとなる金型固定片75bを設けている。各長尺溝76は保持材70の各横列L1、L2…Nnの嵌合穴71と連通させる形状とし、かつ、各長尺溝76の一側縁に沿ってゴムシート78を貼り付けている。
また、前記金型固定片75bの突出端と前記連続部75aとには、対向位置にボルト79を突設している。これらボルト79は保持材70の長穴72に挿入するものである。
さらに、前記連続部75aの一端から給電用および移動操作用の突出部75cを突設している。
【0071】
前記固定材75の背面には保持材70と同形状の支持板80を固定している。
該支持板80には穴を設けていないが、固定材75の長尺溝76と連通する長穴を設けてもよい。
さらに、保持材70の表面側に複数枚の短冊状の補助保持板81を固定している。これら補助保持板81には、保持材70と同一のピッチをあけて嵌合穴71と同一形状の嵌合穴81aをあけている。
各補助保持板81は保持材70の各列L1、L2…Lnに被せて、嵌合穴71と81aとを連通させるようにしている。また、両側には長穴81bを設けている。
【0072】
前記のように、金型保持具6は、図16に示すように、支持板80を背面側に固定した固定材75を保持材70の背面側に重ねると共に、保持材70の表面側に補助保持板81を重ねた4層構造としている。
該金型保持具6は、固定材75から突設したボルト79を保持材70と補助保持板81の長穴72、81bに通して位置調節した後にワッシャWsとナットNとを用いて締結して、これらを一体に組み立てている。
【0073】
前記金型保持具6に金型10−3を保持させる操作は、ナットNを緩めて、保持材70に対して、背面側の固定材75と表面側の補助保持板81を移動可能とした状態で、連通させた前記嵌合穴81a、71、長尺溝76に夫々金型10−3を挿入する。
【0074】
図16(A)に示すように、嵌合穴81a、71、長尺溝76の幅は金型10−3の直径よりも若干大きな穴としているため、金型10−3と嵌合穴81a、71、長尺溝76の間には隙間がある。
この状態で、固定材75を裏面側の支持板80と共に移動させ、図16(B)に示すように、金型10−3の一側外周面10−3aを嵌合穴71の内周面に当接させ、他側外周面10−3bを長尺溝76の側面に当接させて、金型10−3を狭持固定する。其の際、長尺溝76のゴムシート78を金型10−3bの外周面に弾性接触させている。
同様に、保持材70の表面側の補助支持板81も固定材75と同一方向に移動させ、補助支持板81の嵌合穴81aの内周面を金型10の他側外周面10−3bに当接させる。
【0075】
この状態で、金型10−3の一側外周面10−3aは保持材70の嵌合穴71の内周面に当接され、他側外周面10−3bは保持材70を挟む固定材75の長尺溝76の側面のゴムシート78と補助支持板81の嵌合穴81aの内周面に当接され、両側より狭持された状態となる。この状態とした後、前記ナットNをボルト79に締結していき表面側より補助支持板81、保持材70、固定材75、支持板80を強固に固定する。
これにより、金型10−3が金型保持具6により強固に位置決め保持されることとなる。
【0076】
他の構成は第1実施形態と略同様であり、前記補助支持板81、保持材70の表面を絶縁樹脂材からなる被覆板(図示せず)で被覆し、金型10−3と接触する保持材70、固定材75、補助支持板81を導電材で形成し、図17に示すように、保持板70を導電材で形成したフレーム19と連結している。
【0077】
第4実施形態においては、第1〜第3実施形態と相違して、金型10−3を1個づつ嵌合穴に挿入保持しており、各金型10−3を確実に位置決め保持できる。
この金型保持具6で保持した多数の金型は第1実施形態と同様に洗浄槽内に傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で挿入しており、作用効果は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
図18(A)〜(D)は保持材70に設ける嵌合穴71の大きさを変えた変形例を示す。
図18(A)の嵌合穴71−1は中径穴、(B)の嵌合穴71−2は小径穴、(C)の嵌合穴71−3は大径穴としている。(D)は一枚の保持材70に小径穴、中径穴、大径穴からなる嵌合穴71−1、71−2、71−3を設け、同一列は同一径の穴とし、異なる列に径の相違する開口を設けている。
図示していないが、固定材に設ける長尺溝の幅は保持材70に設ける前記嵌合穴71の径に対応させている。
【0079】
図19乃至図21に、第5実施形態を示す。
第5実施形態では、保持材90は円板形状とすると共に周方向に間隔をあけて1個の金型10−3の一部を嵌合する円形有底の嵌合穴91を図中上下方向に貫通して設けている。また、保持材90の外周面には断面円弧状とした環状凹部92を設け、該環状凹部92の底面側に前記嵌合穴91の一側部との連通部92aを設けている。よって、嵌合穴91に挿入した金型10−3の外周面の一部が連通部92aを通して環状凹部92に露出するようにしている。
さらに、保持材90の表面側に絶縁性樹脂からなる被覆板96を設け、該被覆板96に前記嵌合穴91と同形状の貫通穴96aを同一位置に設けている。
【0080】
前記環状凹部92には、嵌合穴91に金型10−3を挿入した状態で弾性を有するOリング94をはめ込み、該Oリング94により金型10−3を嵌合穴91の内周面に押し付けて位置決め固定している。
この状態で金型10−3の上端面10dは保持材90の上面より突出する。
【0081】
前記保持材90を単体として用いてフレームを取り付け、洗浄槽内に図19および図20中で上面側となる被覆板96を電極と対向する側面として垂直姿勢で配置してもよい。
さらに、図21に示すように、前記保持材90を複数の円形穴95aを設けた保持基板95内の各円形穴95aに嵌合固定する構成としてもよい。この場合、図21では1個の保持材90に6個の金型10−3を保持しているため、複数の保持材90を用いることで、より多数の金型10−3を一度に保持することができる。
【0082】
図22に第6実施形態を示す。第6実施形態の金型保持具6では、保持材100は矩形状の外周枠101に上下方向に摺動自在に取り付けた導電板109に保持板102の左右両端をビス112で固定している。該保持板102の上面には、各1個の金型10−4の一側部を嵌合する嵌合溝103を開口として所定ピッチで設けている。また、保持板102の側面に沿って取り付けた導電板109を嵌合溝103に連続して露出させ、嵌合溝103に嵌合する金型10−4と接触させるようにしている。
【0083】
一方、固定材110として、バネ受け材106、コイルバネ107および押さえ材108を設けている。バネ受け材106は保持板102の上方に配置して、外周枠101にビス113で固定している。該バネ受け材106の下方よりコイルバネ107を突設し、該コイルバネ107の下端に押さえ材108を連結し、押さえ材108を保持板102に向けて付勢している。
【0084】
上記保持板102の各嵌合溝103に金型10−4の一部を嵌合保持した状態で、導電板109及び保持板102を上方へ移動させると、コイルバネ107で保持板102側へ付勢された押さえ材108と嵌合溝103の底面との間で各金型10−4が狭持固定される。
【0085】
なお、図22では、保持板102とバネ受け材106と押さえ材108とを1組だけ図示しているが、保持板102とバネ受け材106および押さえ板108からなる組を複数組設けて、保持材100の外周枠101に取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係わる金型保持具は、実施形態に記載で記載した金型に限定されず、ゴム成形用、ガラス成形用等の小型且つ軽量な金型の洗浄にも好適に用いることができる。
よって、高度化する精密品、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、スパーマルチドライブRAM、HDDVDピックアップレンズ、ブルーレイディスクピックアップレンズ、液状デイスプレイホログラム・プリズム、デジタルカメラ、液状ホログラム・プリズム、携帯電話CCDカメラレンズ等の金型の洗浄に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の金型洗浄装置の第1実施形態の断面図である。
【図2】図1の装置の概略平面図である。
【図3】図1の金型保持具の正面図である。
【図4】図3の背面図である。
【図5】(A)は金型保持状態を示す断面図、(B)は金型の斜視図である。
【図6】金型保持具で金型を保持している状態を示す概略正面図である。
【図7】保持材への固定材の取り付け状態を示す斜視図である。
【図8】(A)はフレームとの連結状態を示す概略正面図、(B)はフレームの一部側面図である。
【図9】(A)(B)は電極ユニットの断面図である。
【図10】第2実施形態を示し、(A)は金型の斜視図、(B)は金型の保持状態を示す概略図である。
【図11】(A)は第2実施形態の金型保持具の要部正面図、(B)は固定材の正面図である。
【図12】第3実施形態の金型の斜視図である。
【図13】(A)は第3実施形態の金型保持具の要部正面図、(B)はスペーサの正面図である。
【図14】金型の保持状態を示す断面図である。
【図15】第4実施形態の金型保持具の分解斜視図である。
【図16】(A)(B)は金型の保持作用を示す断面図である。
【図17】フレームに連結した状態での正面図である。
【図18】(A)〜(D)は第4実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図19】第5実施形態の金型保持材の平面図である。
【図20】図19の正面図である。
【図21】第5実施形態の変形例を示す正面図である。
【図22】第6実施形態の分解斜視図である。
【図23】(A)(B)は従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1 金型洗浄装置
2 洗浄槽
3 傾斜壁
6 金型保持具
7、70 保持材
8、75 固定材
8b 押さえ部
9 絶縁性の被覆板
10 金型
11 外周枠
14A、14B 嵌合用凹部
15、50、55 長尺溝
19 フレーム
30 電極ユニット
71 嵌合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型を位置決め保持して、金型洗浄槽内に配置する金型保持具であって、
各金型の一部が挿入される嵌合用の開口を備えた保持材と、
前記保持材に金型を嵌合保持した状態で前記開口内へと挿入あるいは移動させて、金型を位置決め固定する固定材とを備えていることを特徴とする金型洗浄用の金型保持具。
【請求項2】
前記保持材と固定材とを重ね合わせて組みつけていると共に、該組みつけ状態で連結するフレームを備え、前記金型洗浄槽内において、フレームを介して傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で支持される構成としている請求項1に記載の金型保持具。
【請求項3】
前記金型洗浄槽は電解洗浄液を充填して金型を電解洗浄するものであって、
前記フレームおよび前記金型と接触する前記保持材および固定材の一部もしくは全部を導電材で形成して互いに連結し、前記フレームに給電部を設けて、フレームおよび前記導電材を介して前記金型に通電している請求項1または請求項2に記載の金型保持具。
【請求項4】
前記保持材の開口は、複数の小型金型を連続して挿入する長尺溝からなり、複数の長尺溝を間隔をあけて備え、これら長尺溝の軸線方向と直交する一端側に前記長尺溝の開口端を並列に設けていると共に他端側は閉鎖連続部とし、かつ、前記開口端側の背面に前記固定材の取付枠を設けている一方、
前記固定材は、前記各長尺溝に開口端側から挿入する金型押さえ部と前記連結枠への取付部とを設けたL形状とし、
洗浄される金型の一部を前記長尺溝内に連続して挿入し、挿入された開口端側に位置する金型を前記長尺溝の開口端側より挿入する前記固定材の押さえ部を当接させ、該押さえ部と前記閉鎖連結部との間で長尺溝内に連続挿入された金型を狭持する構成としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型保持具。
【請求項5】
前記金型の外周面に設けられている凹凸部と嵌合する凹凸部を前記保持材の長尺溝の少なくとも1側縁に沿って設けている請求項4に記載の金型保持具。
【請求項6】
前記洗浄される金型の外周面に凹凸部が無い場合には、長尺溝に挿入する金型の両側面を前記長尺溝の両側縁で当接すると共に、該金型の外周面に嵌合する形状を有するスペーサを金型間に長尺溝に挿入している請求項4に記載の金型保持具。
【請求項7】
前記保持材の開口は1個の金型の一部が挿入される嵌合穴からなり、複数の嵌合穴を縦横方向に所要のピッチをあけて設けている一方、
前記固定材は、前記保持材に移動自在に重ねると共に所要位置で前記保持材に固定し、かつ、前記保持材の同一列の複数の嵌合穴と連通する長尺溝を並設しており、
連通させた前記嵌合穴と長尺溝に金型を挿入し、該各金型の一側外周面を前記嵌合穴に当接させると共に、他方外周面を前記移動させる長尺溝の側面と当接させて各金型を狭持固定する構成としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型保持具。
【請求項8】
前記固定材の長尺溝の金型当接側の側縁に沿って弾性材を取り付けている請求項7に記載の金型保持具。
【請求項9】
前記保持材は円板形状とすると共に周方向に間隔をあけて設けた1個の金型の一部を嵌合する嵌合穴を前記開口としていると共に、外周面に環状凹部を設け、該環状凹部に前記各嵌合穴の一側部を連通させて、環状凹部に嵌合穴に挿入する金型の外周面の一部を露出させる一方、
前記固定材は、前記各嵌合穴に金型の一部を嵌合した状態で前記嵌合凹部に取り付けて金型を押さえるリング材から形成している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型保持具。
【請求項10】
前記保持具は、間隔をあけて配置した複数段の保持板を備え、各保持板の上面に前記各1個の金型の一側部を嵌合する溝を前記開口として、所定ピッチで設け、
前記固定材は、前記各保持板の上方に夫々配置した複数段の押さえ板を備え、これら押さえ板を一体的に連結して連結具にバネを取り付けて、押さえ板を保持板側にバネで移動し、前記溝内に保持した金型に押さえ板を当接させて固定している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型保持具。
【請求項11】
前記保持する金型は露出させる状態で、金型保持具の表面を絶縁材で被覆している請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載の金型保持具。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の金型保持具を金型洗浄槽内に取り出し自在に配置する金型洗浄装置であって、
前記金型保持具を金型洗浄槽内に、傾斜姿勢あるいは垂直姿勢で配置し、
前記金型洗浄槽内で前記金型保持具で保持された金型を電解洗浄、水洗あるいは/および水洗後の金型にエアーを吹き付けて乾燥を行うものである金型洗浄装置。
【請求項13】
金型洗浄槽内には電解洗浄液が充填されると共に、前記保持材は電源マイナス側と通電される一方、電源プラス側と接続される電極が前記金型保持具と間隔をあけた側方の電解洗浄液中に浸漬され、
かつ、前記電解洗浄液に超音波振動を発生させる超音波発生装置を備えている請求項12に記載の金型洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−18656(P2008−18656A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193675(P2006−193675)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(593047415)ソマックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】