説明

金型内成形品被覆用金型及び金型内成形品被覆成形方法

【課題】金型外部への被覆剤の漏れを防止するシール性能を向上させることができる金型内成形品被覆用金型及び金型内成形品被覆成形方法を提供する。
【解決手段】金型キャビティ40のパーティング面46から固定金型20と可動金型30との型合せ方向に延設されて固定金型もしくは可動金型のいずれか一方の金型に形成される第1の成形面32と、パーティング面から金型キャビティ40の型開閉方向に延設されて一方の金型とは異なる他方の金型に形成される第2の成形面28と、第1の成形面と第2の成形面とをつなぐ第3の成形面22Cと、を有して金型キャビティと離間して外側に位置すると共に、樹脂Jと同一もしくは異なる樹脂が充填されて第1及び第2の成形面をシールするシール部を形成するシール部成形キャビティ45と、第1及び第2の成形面に対してシール部をそれぞれ圧接させるために、第3の成形面によって形成されたシール部の押圧面を所定の圧力によって押圧する押圧部23、24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金型内で成型した樹脂成型品の表面を溶融樹脂の粘度よりも低粘度の流体である被覆剤を注入、硬化させることにより被覆する金型内成形品被覆用金型及び金型内成形品被覆成形方法に関する。
【0002】
例えば、特許文献1には、金型内で成形した樹脂成形品の表面と金型キャビティ面との間に被覆剤を注入した後、被覆剤を金型内で硬化させて、樹脂成形品の表面に被覆剤が密着一体化した成形品を得るための型内塗装用金型が開示されている。
【0003】
特許文献1の型内塗装用金型は、主キャビティの外側全周に該主キャビティの背面の一部を構成する副キャビティと、該副キャビティの反塗装面側外周部内側において該副キャビティ内に進退する可動中子と、該可動中子に対向する位置に高温部と、を備えている。
【0004】
特許文献1の型内塗装用金型によれば、可動中子により、金型副キャビティ面に、樹脂成形品の副キャビティ部分の外周部付近がしっかりと押し付けられる。このため、特許文献1の型内塗装用金型によれば、樹脂成形品の副キャビティ部分の外周部付近が金型副キャビティ面に押し付けられた部分より外側には、被覆剤(塗料)が漏れ出すことがない。
【0005】
さらに、特許文献1の型内塗装用金型によれば、副キャビティの可動中子に対向する位置に高温部を設けることにより、瞬間的に被覆剤(塗料)を硬化させることができる。これにより、特許文献1の型内塗装用金型では、金型外部への被覆剤(塗料)の漏れを確実に防止することができる。
【0006】
なお、下記の特許文献2ないし特許文献5には、樹脂成形品の表面に被覆剤が密着一体化した成形品を得る方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−172657号公報
【特許文献2】特許第3843833号明細書
【特許文献3】特許第3820332号明細書
【特許文献4】特許第3617807号明細書
【特許文献5】特開2006−256088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、副キャビティの反塗装面側外周部内側にある可動中子により樹脂成形品の副キャビティ部分の塗装面側外周部内側付近が金型副キャビティ面に押し付けられることにより、被覆剤(塗料)がこの部分より外側に漏れ出すことを防止している。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、樹脂成型品の主キャビティ部の外周全周において副キャビティ部と主キャビティ部の背面の一部とは一体となって成型されており、金型を微少開いて被覆剤を注入する際には、樹脂成型品の主キャビティ部は被覆剤注入圧やその後の再型締め動作による金型キャビティ内圧により反塗装面側の金型キャビティ面に押し付けられるのに反して、副キャビティ部分は可動中子により塗装面側の金型副キャビティ面へ押し付けられる。
【0009】
そこで、特許文献1の技術では、一体の樹脂成型品である主キャビティ部と副キャビティ部との間で変形を伴って、それぞれが反対方向に押し付けられる事となる。これにより、製品となる主キャビティ部へ無理な力(ストレス)が加わり、製品の変形等をまねく懸念があると共に、副キャビティ部に対しても、本来の目的である被覆剤の外部への漏れを防ぐシール性能(押圧力)に関して、主キャビティ部から及ぶ変形や、被覆剤の注入、再型締め時の内圧の影響を受けるために不確実なものとなる懸念がある。
【0010】
これらの懸念を小さくするために副キャビティ内に薄肉部を設けることも記載されているが、この薄肉部は前記変形や圧力を受けても破損しない強度を備えていなければならず、効果は限定的なものである。
【0011】
加えて、特許文献1の技術では、当然の事ながら、副キャビティ部と一体となっている主キャビティ部の背面側(反被覆面側金型キャビティ面)へ前記被覆剤を回すことはできないし、製品形状に沿って副キャビティ部をカットする後工程も複雑で高い精度を要求される。
【0012】
例えば、最終製品を別部品の上に重ねて取付ける場合、被覆された製品面と前記別部品とのわずかな取付け隙間から後工程でカットされた非被覆面が見えてしまうと外部から見た意匠性において問題となるため、取付け方法自体が制約を受ける。上記反被覆面側へいくらかでも被覆剤を回せると、この制約を解消できるとして、従来から問題提起が為されていた。
【0013】
特許文献2、3、5等に代表される特許文献1以外の従来の技術は押圧部を持たず、シール性能が副キャビティの形状によってのみ決定されるものがほとんどで、樹脂の種類や被覆剤の種類が変わって、それぞれの粘度が変わるとその度に形状の寸法検討、試行錯誤をしなければならない懸念がある。又形状によるシール性能は部分的に均一でない可能性や量産において形状が経時的に変化する可能性等も含め確実なシール性能とは言えない。
【0014】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、樹脂成型品に変形を生じさせることを防止しつつ、金型外部への被覆剤の漏れを防止するシール性能を確実なものに向上させることができる金型内成形品被覆用金型及び金型内成形品被覆成形方法を提供することを目的とする。加えて、この発明は、樹脂成形品の被覆面に連なった反被覆面側金型によって形成された部分にも被覆を可能とすると共に樹脂成型品の不要部をカットする後工程を容易にすることができる金型内成形品被覆用金型及び金型内成形品被覆成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明に係る金型内成形品被覆用金型は、固定金型と可動金型とによって形成される金型キャビティに樹脂を充填することにより樹脂成形品を成形し、前記樹脂成形品の表面を被覆する被覆剤を前記金型キャビティに注入する金型内成形品被覆用金型において、前記金型キャビティのパーティング面から前記固定金型と前記可動金型との型合せ方向に延設されて前記固定金型もしくは前記可動金型のいずれか一方の金型に形成される第1の成形面と、前記パーティング面から前記金型キャビティの型開閉方向に延設されて前記一方の金型とは異なる他方の金型に形成される第2の成形面と、前記第1の成形面と前記第2の成形面とをつなぐ第3の成形面と、を有して前記金型キャビティと離間して外側に位置すると共に、前記樹脂と同一もしくは異なる樹脂が充填されて前記第1の成形面及び前記第2の成形面をシールするシール部を形成するシール部成形キャビティと、前記第1の成形面及び前記第2の成形面に対して前記シール部をそれぞれ圧接させるために、前記第3の成形面によって形成された前記シール部の押圧面を所定の圧力によって押圧する押圧部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項1の発明に係る金型内成形品被覆用金型及び請求項6の発明に係る金型内成形品被覆成形方法によれば、シール部成形キャビティに前記樹脂と同一もしくは異なる樹脂を充填して、シール部成形キャビティが有する第1、第2及び第3の成型面を持つシール部を樹脂成形品と離間させて外側全周のパーティング面に形成することができる。加えて、第3の成形面によって形成された前記シール部の押圧面を所定の圧力によって押圧することによって、シール部成形キャビティの第1の成形面及び第2の成形面に対してシール部をそれぞれ圧接させることができる。
【0017】
ここで、シール部の断面形状を最も簡単な形で表現すれば、第1の成型面(型合せ方向面)と第2の成型面(型開閉方向面)は互いに直角方向である場合が多く、それぞれの断面が直線とすれば押圧面を斜辺とする直角3角形である。理解を容易にする為に記述したが、各面はそれぞれ折れ曲がりや凹部を設けて結果的に多面となっても、3つの面を有するという請求項1に記載の内容と異なるものではない。
【0018】
付記すれば、本発明はパーティング面(固定金型と可動金型のそれぞれの分割面であって、金型キャビティから樹脂が漏出することを防ぐ面)が型合わせ方向にある金型だけに限定したものではなく、パーティング面は型合せ方向面、型開閉方向面のいずれであっても構わない。いわゆるくいきり構造(シェアーエッジ構造)を持つ金型においても、パーティングラインから外側に金型開閉方向のパーティング面を持つ金型として取り扱えば矛盾は無く、金型の種類はいずれであっても構わない。
【0019】
尚、シール部成形キャビティの第1の成型面は固定金型もしくは可動金型のいずれか一方の金型の型合わせ方向にあって、第2の成型面は他方の金型の型開閉方向にある。
(それぞれが前記被覆面側金型もしくは反被覆面側金型のいずれか一方の金型とも表現できる。)
【0020】
従って、被覆剤注入前に金型を微小開く操作が行われても、第2の成型面が金型微開量以上の断面長さを有していれば、シール部を第1の成型面と共に、第2の成型面に圧接させることができる。
【0021】
そこで、請求項1の発明に係る金型内成形品被覆用金型及び請求項6の発明に係る金型内成形品被覆成形方法によれば、金型キャビティに樹脂を充填して形成した樹脂成型品と、シール部成型キャビティに前記樹脂と同一もしくは異なる樹脂を充填して形成したシール部と、が離間しているため、シール部の押圧面を押圧する力が樹脂成型品に作用せず、従って、樹脂成型品に変形を与えることはない。さらに、被覆剤の注入圧、再型締め時の金型キャビティ内圧が樹脂成型品を介して押圧力に影響を与えることもない。
【0022】
それにより、確実な押圧力で第1の成形面及び第2の成形面に対してシール部をそれぞれ圧接させることができる。そこで金型キャビティに注入された被覆剤がシール部より外側のパーティング面と、押圧面のそれぞれに漏出することを確実に防ぐことができる。押圧面への漏出を防ぐことにより、押圧面を経由してシール部外側のパーティング面へ漏出する事を防ぐと共に、低粘度の被覆剤が押圧面から押圧部側へ漏出し、押圧部が作動不良等を引き起こすことを防ぐことができる。
【0023】
加えて、樹脂成型品とシール部は離間しているので、樹脂成形品の被覆面側から注入された被覆剤は金型キャビティの中で、被覆面に連なった反被覆面側金型キャビティ面にも回り込むことができる。よって、樹脂成型品の反被覆面側金型によって形成された部分へも被覆を施す事が可能であると共に、被覆後の樹脂成型品とシール部はそれぞれを離間させるパーティング面において、溶融樹脂と異なり、低粘度であるために前記パーティング面上に漏出し、硬化した極めて薄い被覆剤のみで繋がっているため、被覆剤硬化後の脱型時に簡単に分離される。樹脂成型品の後工程も樹脂を製品形状に沿ってカットする必要がなく容易にすることができる。
【0024】
離間距離を極めて小さくすれば、この極めて小巾のパーティング面に残る硬化した被覆材は樹脂成型品とシール部のどちらかに全て付着し、金型に残ることは無い。シール部は樹脂成型毎に廃棄、成型されるので、金型清掃等の必要が無く、効率的な生産を行うことができる。
【0025】
尚、シール部を形成する樹脂は樹脂成型品と同一の樹脂を別々に2箇所から注入してもよいし、樹脂成型品にランナーゲート部がある場合はそこから分岐してもよい。さらに前記樹脂成型品とは異なる、シール部に適した樹脂を別々に2箇所から注入してもよい。
【0026】
次に請求項2に記載の金型内成形品被覆用金型及び請求項7に記載の金型内成形品被覆成形方法によれば、前記金型キャビティと前記シール部成型キャビティとの間のパーティング面に前記いずれか一方の金型に形成されてそれぞれを連通する連通部が任意の場所に備えられ、前記連通部は、前記樹脂が流通し前記シール部成形キャビティに充填可能な必要最小限の断面積にまで絞られている、又は前記連通部は、前期樹脂成型品の被覆面側金型に前記第3の成形面を持つシール部成形キャビティと、前記金型キャビティと、の間に備えられている、ことを特徴とする。
【0027】
これにより外部から見えない場所に連通部の場所を定め、尚且つ前記樹脂が流通可能な最小の断面積にすれば、前述した全ての効果をほとんど損なうことなく、容易に樹脂成型品と同一の樹脂でシール部を作成することができる。
【0028】
樹脂成型品とシール部が完全に分離している場合と比べて、金型微開時に破断することもできる小さな連通部はシール部の押圧力にほとんど影響を与えず、確実なシール性能を得ることができる。さらに樹脂成型品の反被覆面側金型によって形成された部分への被覆も可能であり、後工程の樹脂のカットは全周のうちのほんの一部である連通部(外から見えない部分)のみである。
【0029】
ここまで樹脂成型品の反被覆面側金型によって形成された部分への被覆と、後工程を容易にする事を効果として述べてきたが、後工程が複雑になっても、反被覆面側に被覆剤を回すことが望ましくない樹脂成型品もある。このような場合においても本発明は有効である。
【0030】
すなわち、被覆面側金型にシール部押圧面を持ち、反被覆面側金型面に対して前記シール部を圧接させるように配置を限定し、反被覆面側金型キャビティに被覆剤を回さないように、前記連通部を全周に設ければよい。
【0031】
こうすると、樹脂成型品、シール部及び連通部は全て一体となるが、金型微開後の被覆剤注入、最型締め動作による金型キャビティ内圧が樹脂成型品を押し付ける面と、シール部を圧接させる面が同一方向の反被覆面側金型面であるため、樹脂成型品を変形させる力は働かず、シール部押圧力に対しても、むしろ前記金型キャビティ内圧が押圧力を補助、軽減することはあっても、損なうことは全くなく、確実なシール性能を得られる。
【0032】
連通部自体も反被覆面側金型面に押し付けられるので、樹脂成型品の変形や連通部の内圧破壊に対する強度を考慮する必要が無く、全周に存在できる必要最小限の厚さにすることは可能で、後工程を比較的容易にすることができる。
【0033】
さらに、シール部が第1、及び第2の成型面で形成された2つのシール面をもっているので、この連通部に金型キャビティ内のガス抜き用に小切欠き部を設け、連通部の反被覆面側へガスと共に被覆剤を少量流出させても外部へ漏出することは無い。
【0034】
したがって、請求項2に記載の金型内成形品被覆用金型及び請求項7に記載の金型内成形品被覆成形方法によれば、金型キャビティとシール部成型キャビティとの間に樹脂の連通部を備えることにより、請求項1及び請求項6による本発明の効果をほとんど損なう事無く、樹脂成型品と共に同一の樹脂でシール部を容易に形成できる。
【0035】
加えて、必要に応じて、反被覆面側金型キャビティ面に被覆剤を回さないようにする事もできる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の金型内成形品被覆用金型及び金型内成形品被覆成形方法によれば、樹脂成型品に変形を与えることなく、金型キャビティに注入された被覆剤がシール部より外側のパーティング面へ漏出することを防止するシール性能を確実なものに向上させることができる。加えて、樹脂成形品の被覆面に連なった反被覆面側金型によって形成された部分にも被覆剤を回すことを可能とすると共に樹脂成型品の不要部をカットする後工程を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1ないし図8を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1の金型内被覆成形装置1の可動金型の概略平面図であるが、仮想線で固定金型にある押圧部の概略位置も図示されている。図2は、図1における金型内被覆成形装置1のA−A断面の主要構成図である。図3は、図1における金型内被覆成形装置1のB−B断面の主要構成図である。尚、図1は図2で示す25Bの内側端面までしか描かれていない。
図示の金型内被覆成形装置1は、固定盤10と、固定金型20と、可動金型30とを備えている。
【0038】
固定金型20は、固定盤10に取り付けられている。固定金型20は、可動プレート22と、コイルばね23と、ピストン24と、サポートピン21とを備えている。平面図において、可動プレート22はキャビティ40の外側全周を囲む環状の部材であるが、コイルばね23とピストン24からなる押圧部は図1に仮想線で示したように複数個所に点在している。又サポートピンも複数個所に点在して備えられている。
尚、コイルばね23は請求項3に記載の押圧機構の一例であり、可動プレート22は請求項4に記載のシール部成型キャビティ形成部材の一例である。
【0039】
サポートピン21の一端は、固定金型20に固定されている。サポートピン21の他端は、可動プレート収容孔25に収容される。可動プレート収容孔25は、固定金型20と可動金型30とが型合せされたときに、固定金型20に形成された第1凹部25Aと可動金型30に形成された第2凹部25Bによって形成される空間である。
第1凹部25Aの端面25Dは第2の成型面を含む型開閉方向面の一例である。
【0040】
第1凹部25Aには、可動プレート移動規制部材25Cが固定されている。可動プレート移動規制部材25Cは、型締め方向Xに可動プレート22がスライドすることを停止させるものである。可動プレート移動規制部材25Cは、ストッパー(規制部)の一例である。
【0041】
可動プレート22は、可動プレート収容孔25に配置される。可動プレート22は、プレート本体部22Aと、アーム部22Bとを備えている。プレート本体部22Aは、サポートピン21によって、型締め方向X及び型開き方向Yにそれぞれスライド可能に保持されている。サポートピン21の先端部には可動プレート22の脱落を防止するストッパーボルトが設けられている。
【0042】
アーム部22Bは、可動金型側のパーティング面46Aに当接できるように、型合わせ方向に、プレート本体部22Aから突設されている。アーム部22Bの先端には、傾斜面22Cが形成されている。図中の符号22Dはヒータである。
可動金型側のパーティング面46Aは請求項4に記載の第1の成型面を含む型合わせ方向面の一例である。傾斜面22Cは第3の成型面の全面を形成した一例である。
【0043】
固定金型20には、可動プレート傾斜面22Cの反対側にコイルばね収容孔26が形成されている。コイルばね収容孔26は、可動プレート収容孔25に連通している。コイルばね23は、該コイルばね23の下端がピストン24に当接し、圧縮させた状態で、コイルばね収容孔26に装着されている。ピストン24の先端面は、コイルばね23の力により可動プレート22のアーム部22Bに当接している。複数個のコイルばね23の力が可動プレートの22の押圧力として作用している。図中の符号27はスプルーである。スプルー27は、キャビティ40と連通している。
【0044】
可動金型30は、塗料注入口31と、補助キャビティ形成溝32とを備えている。塗料注入口31は、キャビティ40と連通している。塗料注入口31には、塗料注入機(図示せず。)が接続されている。
【0045】
補助キャビティ形成溝32は、キャビティ40の全周を囲んで、パーティング面46(離間距離巾)を挟んで可動金型パーティング面46A上に形成されている。
補助キャビティ形成溝32は、第1の成形面となる凹部の一例である。
【0046】
金型内被覆成形装置1の図1におけるB−B断面では、図1及び図3に図示するように、キャビティ40と所定の距離を確保した上で、該キャビティ40の周囲に、固定金型20と可動金型30が型合わせされてできる補助キャビティ45が形成されている。
補助キャビティ45は補助キャビティ形成溝32と第1凹部25Aの端面25Dの一部である補助キャビティ形成面28と傾斜面22Cとによって形成されるシール部成型キャビティの一例である。尚補助キャビティ形成面28がパーティング面46から型締め方向Xに延設された第2の成型面の一例である。補助キャビティ形成面28は金型微開量以上の断面長さを有している。
キャビティ40と補助キャビティ45との間には、貫通部47が形成されている。
【0047】
図3に図示するように、金型内被覆成形装置1のB−B断面では、貫通部47により、補助キャビティ45がキャビティ40に連通するが、図2に図示するA−A断面では、補助キャビティ45がキャビティ40に連通していない。本実施形態では、可動金型30のパーティング面46の2箇所に貫通部47が形成されている。貫通部47の断面積は2箇所合計で5〜7mmとした。この連通部により、キャビティ40から補助キャビティ45に向けて溶融樹脂を流通させ、補助キャビティ45によって形成されるシール部を全周に形成できる。
【0048】
本実施形態では、樹脂成形品の被覆面に連なって、反被覆面側金型キャビティ面によって形成される樹脂成形品の端面部分にも被覆を施すことを目的としたため、このように連通部は場所を限定し、必要最小限の断面積とした。
【0049】
次に、金型内被覆成形装置1の動作を説明する。金型内被覆成形装置1では、型締めシリンダ(図示せず。)によって、固定金型20に向けて可動金型30を前進させる。図2に図示するように、可動金型30は固定金型20に型合せされる。
【0050】
可動金型30が固定金型20に型合せされると、キャビティ40及び補助キャビティ45が形成される。型締めシリンダによって、可動金型30及び固定金型20には、所定の型締力を作用させる。
【0051】
可動金型30が固定金型20に型合せされたときには、図2及び図3に図示するように、可動プレートアーム部22Bはコイルばね23と、ピストン24により押圧され、パーティング面46Aに当接している。この状態で可動プレート本体部22Aの上面と可動プレート移動規制部材25Cとの間に、間隙Aを設けている。(間隙Aの寸法は、本実施例では約0.1mmであるが、樹脂の種類、溶融粘度により変更されてよい。)
【0052】
図4に図示するように、金型内被覆成形装置1のB−B断面では、スクリュ(図示せず。)により、スプルー27を通じ、キャビティ40内及び補助キャビティ45内に熱可塑性の溶融樹脂Jが射出される。
【0053】
溶融樹脂Jを補助キャビティ45内に行き渡らせる際には、ヒータ22Dによって、アーム部22Bの温度が、所定温度に保持される。
【0054】
ここで、スクリュ(図示せず。)により、射出された溶融樹脂Jはスプルー27を通じ、キャビティ40内に充填され、同時に貫通部47を流通し、補助キャビティ45内へも流入する。溶融樹脂Jを完全に金型キャビティに充填する圧力は通常30Mpa以上である。
【0055】
請求項8に記載したように、可動プレート22の押圧力が傾斜面22Cに作用する圧力を溶融樹脂Jの注入圧よりも低く設定されているため、図4に図示するように、補助キャビティ45内の溶融樹脂Jは、型締め方向Xに、傾斜面22Cを押し上げる。型締め方向Xに傾斜面22Cが押し上げられることに伴って、アーム部22Bと一体に形成されたプレート本体部22Aが、可動プレート移動規制部材25Cに当接する間隙Aの距離だけ、型締め方向Xに移動する。このとき、ピストン24も押し上げられ、コイルばね23は収縮する。
【0056】
プレート本体部22Aが可動プレート移動規制部材25Cに当接すると、アーム部22Bと可動金型のパーティング面46Aとの間に間隙Aが形成される。間隙Aの寸法を約0.1mmに設定したため、アーム部22Bと可動金型のパーティング面46Aとの間に、補助キャビティ45内の溶融樹脂Jが外側に流出することを防止できた。本実施形態では、間隙Aの寸法は、請求項4に記載の所定寸法の一例である。
【0057】
キャビティ40内の高温の溶融樹脂Jは充填完了後、金型温度により冷却されて硬化する。それにより図5に図示する樹脂成形品50とパーティング面シール部材55が貫通部47で形成される部分を除いてほとんどの部分はパーティング面46により分離して成形される。
【0058】
ところで、この冷却、硬化の過程において、ほとんどの熱可塑性樹脂は成型収縮を起こす。樹脂成型品の形状によっては、金型を微量開くことなく、この成型収縮によってできた金型キャビティ内の隙間に被覆剤を注入することもある。当然パーティング面シール部材55も成型収縮を起こす。しかしながらアーム部22Bは、コイルばね23の力により、パーティング面シール部材55を型開き方向Yに常に押圧しているので、樹脂の充填、保圧が完了して、樹脂注入圧が無くなると、傾斜面22Cとパーティング面シール部材55は密着したまま、コイルばね23が伸びて、パーティング面シール部材55の成型収縮に追随してアーム部22Bを、型開き方向Yに移動する。これらのステップは樹脂の充填、保圧が完了するまでが請求項6に記載のシール部成形ステップであり、その後のステップが請求項8に記載の成形収縮追従押圧ステップの一例である。
【0059】
又、この成形収縮追従押圧ステップは型締めされた状態において実施されるため、型開き方向Yに移動できる距離は間隙Aにより規制を受ける。そうであってもパーティング面シール部材55の成型収縮量が規制量以下となるようにパーティング面シール部材55の大きさ自体を小さく作成すればよい。成型収縮量は一般に1%以下と言われている。この値は樹脂の注入圧を高くしたり、保圧時間を長くすることにより、さらに小さくすることもできる。
【0060】
請求項3に記載したように、シール部の押圧面の一部を押圧可能で、向かい合う金型との合わせ面をもたないシール部成型キャビティ形成部材であれば、間隙Aによって、外部への流出を懸念する必要は無いが、製作上の制約が増える場合が多い。
【0061】
本実施例においてアーム部22Bは請求項4に記載してあるように、型合わせ方向面及び型開閉方向面に対してそれぞれ合せ面となる二面を有する部材の角部に加工を施した面が第3の成形面の全面(傾斜面22C)を形成している構造のため、シール部を任意に小さく作成できる。そのことによりパーティング面シール部材55の成型収縮量を小さくできるばかりでなく、圧力を受ける面積も小さくなる。そうすると押圧機構が持つ力も小さくできるのでコイルばねの23の大きさ、個数を減ずることができる。
【0062】
他にもこの可動プレート22は形状的に押圧部の位置、プレート部材の強度、傾斜面形状等、設計の自由度が大きく、設計、製作が容易になる。
【0063】
図5に図示する間隙Bは間隙Aが成形収縮追従押圧ステップと共に変化したものである。溶融樹脂Jが硬化した後に、可動金型30と固定金型20とを所定の間隔だけ開く。このとき、コイルばね23及びピストン24により、成形収縮追従押圧ステップと同様に、傾斜面22Cとパーティング面シール部材55は密着したまま、アーム部22Bが、型開き方向Yに、押し下げられる。これは請求項8に記載の金型微開追従押圧ステップの一例である。その後、上記の塗料注入機により、図5に図示する塗料注入口31を通じ、キャビティ40に所定量の熱硬化性の塗料を注入する。本実施形態では、熱硬化性の塗料は、被覆剤の一例である。
【0064】
続いて、上記の型締めシリンダにより、所定の型締力を作用させ、再度の型締めを行う。再度の型締めを行うことにより、樹脂成形品50の表面に塗料を均一に行き渡らせる。この間に塗料は樹脂成型品とシール部は離間しているので、樹脂成形品の被覆面側から注入された塗料は金型キャビティの中で、被覆面に連なった反被覆面側金型キャビティ面にも回り込むことができる。塗料は所定の型締力と金型温度で定着、硬化する。
【0065】
塗料注入から塗料定着、硬化のための型締圧力保持までの間、樹脂成形品50の塗装面側から受ける塗料注入圧や、その後の再型締め動作による、金型キャビティ内圧により、パーティング面シール部材55と、補助キャビティ形成溝32の各面と、の隙間、及び、パーティング面シール部材55と、補助キャビティ形成面28と、の隙間の両方の隙間から塗料は漏出しようとする。このときパーティング面シール部材55は塗料を介して補助キャビティ形成溝32の各面と、補助キャビティ形成面28と、の両面から上記の金型キャビティ内圧を受ける。この圧力は合成されてパーティング面シール部材55の押圧面に作用するが、この圧力より高い押圧力をアーム部22Bの傾斜面22Cに作用させるように可動プレート22の押圧力が設定されているため、上記補助キャビティ形成溝32のいずれかの面と、補助キャビティ形成面28と、の両面に対してパーティング面シール部材55をそれぞれ圧接させることができる。もちろん樹脂成型品50とパーティング面シール部材55が貫通部47で形成される部分を除いてほとんど分離しているため、パーティング面シール部材55の押圧力に影響を与える外的要因がないことが重要な前提である。従って、補助キャビティ形成溝32と補助キャビティ形成面28の両面から外部、及び押圧部への塗料の漏出を確実な押圧力で防止することができる。
【0066】
この間に発生する金型キャビティ内圧は1〜10Mpa程度で、通常は樹脂注入圧よりも低いため、所定の押圧力を金型キャビティ内圧以上、且つ樹脂注入圧以下の範囲にすれば、全てのステップに対して押圧力を変更する必要がない。従って、本実施例では押圧機構として安価なコイルバネ23を使用し、押圧力を最型締めによるキャビティ内圧以上、且つ樹脂注入圧以下とした。もちろん押圧機構として、油圧を使うことも好ましい。ステップ毎に圧力を最適値に変更できる上、最適条件を見つけ出す時間短縮効果がある。ちなみに本実施例におけるピストン24は押圧機構がコイルばねの場合、必ずしも必要ない部品であるが、油圧ピストンへの変更も可能な構造としたものである。
【0067】
図6は、金型内被覆成形装置1のA−A断面における補助キャビティ45付近の拡大図である。図6には、キャビティ40内に、熱硬化性の塗料57が注入された状態を示した。樹脂成型品50とパーティング面シール部材55はパーティング面46を挟んで離間して成型されている。樹脂成型品50は成型収縮により、固定金型20に抱き付くように貼り付いている。可動金型30側から金型を微量開いて注入された塗料57は再型締め動作により、樹脂成型品50の塗装面と可動金型30側のキャビティ面の隙間に均一に行き渡り、樹脂成型品50の塗装面に連なって、固定金型20側のキャビティ面により形成された樹脂成型品50の端面51にも、塗料57が行き渡る。
【0068】
塗料57は、溶融樹脂Jに比べて粘度が低い。このため、塗料57は、パーティング面46同士の間に生じるわずかな隙間を通じ、補助キャビティ45に向けて流れるが、補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28には、パーティング面シール部材55がそれぞれ押し付けられており、塗料57は、補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28の途中でそれぞれ流出を止められる。
【0069】
本実施形態では、上述したように、ヒータ22Dによって、アーム部22Bの温度が、所定温度の高温に保持される。これにより、補助キャビティ45に射出された溶融樹脂Jの温度が降下することを抑制することができる。これにより、補助キャビティ45の全体に亘って溶融樹脂Jが充満することを促進させることができる。熱硬化性の塗料57の硬化についても、促進することはあっても、遅らせることはない。又ヒーター22Dは温水通路であってもよい。
【0070】
図中の符号56は、シール部成形ステップにおいて溶融樹脂Jが補助キャビティ45から間隙A(B)に向けて流出したわずかのバリを示す。最終的に不要となるパーティング面シール部材55にわずかのバリがあっても、何ら問題とはならない。
【0071】
本実施形態では、キャビティ40とパーティング面シール部材55との離間距離寸法D(図6参照。)を、約0.5mmとした。塗料57は溶融樹脂Jと比べれば、金型との離型性が劣るのであるが、わずか0.5mmのパーティング面46同士の間に残る硬化した塗料57は樹脂成形品50とパーティング面シール部材55とのどちらかに全て接着して、金型に接着して残ることはない。従って、金型清掃等の必要が無く、効率的な生産を行うことができる。
【0072】
又この金型との離型性は金型表面処理や塗料の離型性能によってもかなり改善できるものである。さらにこの離間距離は0で無い、0以上の任意の数値にすることが可能である。
【0073】
図7には製品取出しの型開きが行われた状態を示す。図7に図示するように、エジェクトピンPにより、塗膜が端面まで形成された樹脂成形品50が脱型される。樹脂成形品50を脱型する際には、該樹脂成形品50に貫通部47で繋がっているパーティング面シール部材55も取り除かれる。小さな2箇所の貫通部47は取出し後、容易にカッターで破断できる。複雑な樹脂カット工程は必要ない。
【0074】
<実施形態1の効果>
本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、キャビティ40と離間して外側全周に位置する補助キャビティ45にキャビティ40から必要最小限の断面積を持つ貫通部47に溶融樹脂Jを流通させることによって、パーティング面シール部材55を成形する。加えて、補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28に対してパーティング面シール部材55を圧接させるために、アーム部22の傾斜面22Cが、該傾斜面22Cに密着したパーティング面シール部材55の押圧面を押圧する。
【0075】
そこで、本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、
樹脂成型品50に変形を与えることなく、補助キャビティ形成溝32と補助キャビティ形成面28の両面から外部、及び押圧部への塗料の漏出を確実な押圧力で防止することができる。シール性能を確実なものに向上させることができる。加えて、樹脂成型品50の塗装面に連なって、固定金型20側のキャビティ面により形成された樹脂成型品50の端面51にも、塗料57を行き渡らせることができると共に、成型品脱型後の複雑な樹脂カットの必要は無く、後工程を容易にできる。又キャビティ40に充填する樹脂と同一の樹脂でパーティング面シール部材55を容易に成型することができる。
【0076】
本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、アーム部22Bは、シール部成型ステップにおいて、可動プレート移動規制部材25Cによって、型締め方向Xへのスライド量が制限される。またアーム部22Bは、型開き方向Yにはコイルばね23のスプリング力によって、成形収縮追従押圧ステップと、金型微開追従押圧ステップと、にそれぞれ追随してスライドし、アーム部22Bの傾斜面22Cがパーティング面シール部材55を押圧する。コイルばね23によるスプリング力は、傾斜面22Cが受ける最型締めによるキャビティ内圧以上、且つ樹脂注入圧以下に設定されている。
【0077】
そこで、本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、シール部成型ステップにおいて、樹脂注入圧により、アーム部22Bが可動プレート移動規制部材25Cによって規制された位置までスライドし、パーティング面シール部材55の初期形状を確定できる。
【0078】
さらに、コイルばね23のスプリング力によって、成形収縮追従押圧ステップと、金型微開追従押圧ステップと、にそれぞれ追随して、アーム部22Bの傾斜面22Cが補助キャビティ45によって成形されたパーティング面シール部材55を、該補助キャビティ45の補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28にそれぞれ圧接させることができる。
【0079】
本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、可動金型側のパーティング面46A、及び第1凹部25Aの端面25Dに対してそれぞれ合わせ面となる二面を有する可動プレート22のアーム部22Bの角部を加工して傾斜面22Cが形成されており、傾斜面22Cはパーティング面シール部材55の押圧面全面と当接可能である。シール部成型ステップにおいて、型締め方向Xへのスライド量規制値はアーム部22Bと、パーティング面46Aとの離間距離が溶融樹脂Jを補助キャビティ45から外側に流出させることを防止する間隙Aに設定されている
【0080】
そこで、本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、可動プレート22の傾斜面22Cは、アーム部22Bの2方向面の角部に加工を施して、任意に小さく作成できる。さらに、パーティング面シール部材55の押圧面全面と当接するため、受圧面積に対する押圧面積も大きくとれる。したがって、押圧機構が持つ力も小さくできるのでコイルばね23の大きさ、個数を減ずることができる。同時にパーティング面シール部材55の型開閉方向への成形収縮量が間隙A以下の量となるようにできる。したがって、型開き方向Yへの規制値があっても、成形収縮追従押圧ステップを可能にできる。
【0081】
他にも、この可動プレート22は形状的に押圧部の位置、プレート部材の強度、傾斜面形状等、設計上の自由度も大きく、設計、製作が容易である。
【0082】
本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、可動プレート22のアーム部22Bが備えるヒータ22Dによって、該アーム部22Bの温度を調整する。このため、ヒータ22Dによって、アーム部22Bの温度を、所定温度の高温に保持することが可能となる。
【0083】
そこで、本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、アーム部22Bの温度を、所定温度の高温に保持すると、アーム部22Bの傾斜面22Cを介し、補助キャビティ45に射出された溶融樹脂Jの温度が降下することを抑制することができる。
【0084】
したがって、本実施形態の金型内被覆成形装置1及び金型内被覆成形方法によれば、補助キャビティ45に射出された溶融樹脂Jの温度が降下することを抑制すると、該溶融樹脂Jの流動性を好適に保つことが可能となる。これにより、補助キャビティ45の全体に亘って溶融樹脂Jが充満することを促進させることができる。
【0085】
<補足説明>
本発明の請求項1ないし3の補足説明を概念図8ないし図10を参照しつつ行う。
ここでは、実施形態1と同一の構成は同一の符号を付し、その説明を省略する。ただし、説明用に請求項に記載の重要名称は併記することとした。図8ないし10は、請求項1ないし3に記載の金型内被覆成形装置1Aの第2断面の概略構成図である。第2断面は、実施形態1のB−B断面に対応する。図9はシール部成型ステップにおける第2断面、図10は金型微開時の第2断面である。
【0086】
図8に図示するように、請求項1に記載に金型はキャビティ40の外側にパーティング面46から固定金型20と可動金型30との型合せ方向に延設されて固定金型に形成される第1補助キャビティ形成面29(第1の成形面)と、パーティング面46からキャビティ40の型開閉方向に延設されて可動金型30に形成される第2補助キャビティ形成面38(第2の成形面)と、第1補助キャビティ形成面29と第2補助キャビティ形成面38とをつなぐ第3補助キャビティ形成面32C(第3の成形面)と、を有してキャビティ40と離間して外側に位置すると共に、溶融樹脂Jが充填されて第1補助キャビティ形成面29及び第2補助キャビティ形成面38をシールするパーティング面シール部材55(シール部)を形成する補助キャビティ45A(シール部成形キャビティ)と、第1補助キャビティ形成面29及び第2補助キャビティ形成面38に対してパーティング面シール部材55をそれぞれ圧接させるために、第3補助キャビティ形成面32Cによって形成されたパーティング面シール部材55の押圧面を所定の圧力によって押圧する可動プレート22とピストン24と押圧部とコイルばね23A、からなる押圧部を備えている。
【0087】
ここで第1補助キャビティ形成面29(第1の成形面)はパーティング面の一部である。補助キャビティ45Aを構成する他の第2補助キャビティ形成面38及び第3補助キャビティ形成面32Cにより、図示される補助キャビティ45A(シール部成形キャビティ)の断面形状の概念は、前述したように直角三角形である(図9)。可動金型30には、コイルばね収容孔36と可動プレート収容孔25が形成されている。可動プレート収容孔25は、補助キャビティ45Aに連通している。コイルばね23Aは、該コイルばね23Aの一端がピストン24に当接した状態で、コイルばね収容孔36に装着されている。可動プレート22の先端面22Cは、補助キャビティ45A内に突出している。可動プレート22及び先端面22Cは、請求項3に記載の第3の成型面の少なくとも一部を形成するシール部成型キャビティ形成部材の一例である。この形状の場合は、シール部成型ステップにおける反押圧方向への後退量に関係なく溶融樹脂Jが補助キャビティ45Aから外側に流出することはない。
【0088】
図10には金型微開時の状態が図示されている。実施形態1とは異なり、被覆面側(可動金型側)に第3補助キャビティ形成面32Cを持つ補助キャビティ45Aと、キャビティ40と、の間に連通部47が備えられている。ここでは連通部が全周にある場合を、概念として理解しやすい。この状態で樹脂成形品50の被覆面側から内圧を受けても、押し付けられる方向がパーティング面シール部材55と同じであるため、樹脂成型品50に変形を与えず、パーティング面シール部材55を押圧する力を損なうことは全くなく、むしろキャビティ内圧が押圧力を補助、軽減する方向に作用し、確実なシール性能を得られる。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施することができる。例えば、補助キャビティ45を形成するために、実施形態1とは異なり、可動金型30に代えて可動プレート22に、補助キャビティ形成溝を設けてもよい。
【0090】
実施形態1とは異なり、補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28に対してパーティング面シール部材55を押し付けるために、コイルばね23に代えて、油圧シリンダや電磁シリンダ等の適宜の機構を設けてもよい。
【0091】
コイルばね23については、各コイルばね毎に、スプリング荷重が固定されている。そこで、補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28に対してパーティング面シール部材55を押し付ける状態を変化させるためには、コイルばねを交換しなければならない。これに対し、例えば、油圧シリンダでは、油圧の設定値を変化させることにより、補助キャビティ形成溝32及び補助キャビティ形成面28に対してパーティング面シール部材55を押し付けるための状態を最適なものに調整することができる。
【0092】
実施形態1のアーム部22Bの温度を調整するために、ヒータ22Dに代えて、アーム部22Bに温水を流通させてもよい。
【0093】
上述した実施形態とは異なり、貫通部47を持たず、キャビティ40に連通するスプルー27とは別に、補助キャビティ45(45A)に連通するスプルーを設けてもよい。これにより、各キャビティ40、45(45A)に対し、キャビティ40とは別々に、該キャビティ40に射出する溶融樹脂とは異なる溶融樹脂を射出してもよい。
【0094】
上述した実施形態とは異なり、熱硬化性の塗料57に代えて、プライマ処理剤、紫外線防止剤、ハードコート皮膜剤等をそれぞれ用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施形態1の金型内被覆成形装置1の可動金型概略平面図である。
【図2】図1における金型内被覆成形装置のA−A断面の主要構成図である。
【図3】図1における金型内被覆成形装置のB−B断面の主要構成図である。
【図4】射出成形時の金型内被覆成形装置の主要断面図である。
【図5】キャビィに塗料を注入の際の金型内被覆成形装置の主要断面図である。
【図6】金型内被覆成形装置のA−A断面における補助キャビティ45付近の拡大図である。
【図7】脱型時の金型内被覆成形装置の主要断面図である。
【図8】請求項1〜3に記載の概念の金型内被覆成形装置の第2断面の概略構成図である。
【図9】図8における装置のキャビティ及び補助キャビティに熱可塑性の溶融樹脂が射出された状態を示す図である。
【図10】図8における装置の可動金型と固定金型とを所定の間隔だけ開いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1、1A 金型内被覆成形装置
20 固定金型
22 可動プレート
22C 傾斜面
22D ヒータ
23、23A コイルばね
24 ピストン
28 補助キャビティ形成面
29 第1補助キャビティ形成面
30 可動金型
32 補助キャビティ形成溝
32C 第3補助キャビティ形成面
38 第2補助キャビティ形成面
40 キャビティ
45、45A 補助キャビティ
46 パーティング面
47 貫通部
50 樹脂成形品
55 パーティング面シール部材
57 塗料



【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とによって形成される金型キャビティに樹脂を充填することにより樹脂成形品を成形し、前記樹脂成形品の表面を被覆する被覆剤を前記金型キャビティに注入する金型内成形品被覆用金型において、
前記金型キャビティのパーティング面から前記固定金型と前記可動金型との型合せ方向に延設されて前記固定金型もしくは前記可動金型のいずれか一方の金型に形成される第1の成形面と、前記パーティング面から前記金型キャビティの型開閉方向に延設されて前記一方の金型とは異なる他方の金型に形成される第2の成形面と、前記第1の成形面と前記第2の成形面とをつなぐ第3の成形面と、を有して前記金型キャビティと離間して外側に位置すると共に、前記樹脂と同一もしくは異なる樹脂が充填されて前記第1の成形面及び前記第2の成形面をシールするシール部を形成するシール部成形キャビティと、
前記第1の成形面及び前記第2の成形面に対して前記シール部をそれぞれ圧接させるために、前記第3の成形面によって形成された前記シール部の押圧面を所定の圧力によって押圧する押圧部と、
を備えることを特徴とする金型内成形品被覆用金型。
【請求項2】
前記金型キャビティの全周に前記シール部成形キャビティが位置し、前記金型キャビティと前記シール部成形キャビティとの間の前記パーティング面には、前記いずれか一方の金型に形成されて前記金型キャビティと前記シール部成形キャビティとの間を連通する連通部が任意の場所に備えられ、
前記連通部は、前記樹脂が流通し前記シール部成形キャビティに充填可能な必要最小限の断面積にまで絞られている、又は
前記連通部は、前期樹脂成型品の被覆面側金型に前記第3の成形面を持つシール部成形キャビティと、前記金型キャビティと、の間に備えられている、ことを特徴とする請求項1に記載の金型内成形品被覆用金型。
【請求項3】
前記押圧部は、
前記固定金型と前記可動金型とが型締めされた状態において前記第3の成形面の少なくとも一部を形成し前記シール部の押圧面を押圧可能であって前記型開閉方向に進退可能でその反押圧方向への後退量はストッパーで規制され、押圧方向に対しては、前記シール部の硬化過程で起こる成形収縮と、シール部成型後に実施される被覆剤注入前の金型微開動作と、にそれぞれ追随して進行可能なシール部成形キャビティ形成部材と、
前記シール部成形キャビティ形成部材が前記シール部の押圧面を押圧する側とは反対側に配置され、前記シール部成形キャビティ形成部材を介して前記所定の圧力によって前記シール部の押圧面を押圧する押圧機構と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型内成形品被覆用金型。
【請求項4】
前記シール部成形キャビティ形成部材は、前記第1の成形面を含む型合せ方向面及び前記第2の成形面を含む型開閉方向面に対してそれぞれ合せ面となる二面を有する部材であって、前記二面で構成される角部に加工を施して形成した前記第3の成形面の全面を有し、前記シール部の押圧面全面に当接可能であると共に、前記反押圧方向へ後退可能な規制値が、前記シール部成形キャビティ形成部材と前記型合せ方向面との離間距離が前記樹脂を前記シール部成形キャビティから外側に流出させることを防止する所定寸法に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の金型内成形品被覆用金型。
【請求項5】
前記シール部成形キャビティ形成部材は、該シール部成形キャビティ形成部材の温度を調整する温度調整部を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の金型内成形品被覆用金型。
【請求項6】
固定金型と可動金型とによって形成される金型キャビティに樹脂を充填することにより樹脂成形品を成形し、前記樹脂成形品の表面を被覆する被覆剤を前記金型キャビティに注入する金型内成形品被覆用金型を用いた金型内成形品被覆成形方法において、
前記金型キャビティのパーティング面から前記固定金型と前記可動金型との型合せ方向に延設されて前記固定金型もしくは前記可動金型のいずれか一方の金型に形成される第1の成形面と、前記パーティング面から前記金型キャビティの型開閉方向に延設されて前記一方の金型とは異なる他方の金型に形成される第2の成形面と、前記第1の成形面と前記第2の成型面とをつなぐ第3の成形面と、を有して前記金型キャビティと離間して外側に位置するシール部成形キャビティに、前記樹脂と同一もしくは異なる樹脂が充填されて前記第1の成形面及び前記第2の成形面をシールするシール部を形成するシール部成形ステップと、
前記第1の成形面及び前記第2の成形面に対して前記シール部をそれぞれ圧接させるために、前記第3の成形面によって形成された前記シール部の押圧面を所定の圧力によって押圧する押圧ステップと、
を備えることを特徴とする金型内成形品被覆成形方法。
【請求項7】
前記金型キャビティの全周に前記シール部成形キャビティが位置し、前記金型キャビティと前記シール部成形キャビティとの間の前記パーティング面には、前記いずれか一方の金型に形成されて前記金型キャビティと前記シール部成形キャビティとの間を連通する連通部が任意の場所に備えられ、
前記連通部は、前記樹脂が流通し前記シール部成形キャビティに充填可能な必要最小限の断面積にまで絞られている、又は
前記連通部は、前期樹脂成型品の被覆面側金型に前記第3の成形面を持つシール部成形キャビティと、前記金型キャビティと、の間に備えられている、前記金型内成形品被覆用金型を用い、
前記いずれかの連通部に、前記樹脂を流通させることを特徴とする請求項6に記載の金型内成形品被覆成形方法。
【請求項8】
前記シール部成形ステップは、
前記固定金型と前記可動金型とが型締めされた状態において、前記所定の圧力が、前記樹脂と同一もしくは異なる樹脂の注入圧よりも低い圧力に設定されると共に、前記シール部成形キャビティに前記樹脂が前記注入圧を持って充填され、前記第3の成形面の少なくとも一部を形成し前記シール部の押圧面を押圧可能であって前記型開閉方向に進退可能なシール部成形キャビティ形成部材をストッパーにより規制された位置まで前記反押圧方向へ後退させるステップを備え、
前記押圧ステップは、
前記所定の圧力が、前記シール部を介して、前記第1の成形面及び前記第2の成形面において、前記被覆剤の注入から該被覆材の定着のための型締め圧力保持までの間において、前記金型キャビティ側から受ける圧力よりも高い圧力に設定されると共に、前記シール部の硬化過程で起こる成形収縮に追従して前記シール部成形キャビティ形成部材が前記シール部の押圧面を押圧する成形収縮追従押圧ステップと、
シール部成型後に実施される被覆剤注入前の金型微開動作に追従して前記シール部成形キャビティ形成部材が前記シール部の押圧面を押圧する金型微開追従押圧ステップと、
を備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の金型内成形品被覆成形方法。
【請求項9】
前記シール部成形キャビティ形成部材は、前記第1の成形面を含む型合せ方向面及び前記第2の成形面を含む型開閉方向面に対してそれぞれ合せ面となる二面を有する部材であって、前記二面で構成される角部に加工を施して形成した前記第3の成形面の全面を有し、前記シール部の押圧面全面に当接可能であると共に、前記反押圧方向へ後退可能な規制値が、前記シール部成形キャビティ形成部材と前記型合せ方向面との離間距離が前記樹脂を前記シール部成形キャビティから外側に流出させることを防止する所定寸法に設定されている前記金型内成形品被覆用金型を用い、
前記シール部の前記型開閉方向への成形収縮量が、規定された前記所定寸法以内となるように、前記第3の成形面を小さく作成することによって、前記成形収縮追従押圧ステップを可能としたことを特徴とする請求項8に記載の金型内成形品被覆成形方法。
【請求項10】
前記シール部形成部材の温度を調整するステップを備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の金型内成形品被覆成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−220327(P2009−220327A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65421(P2008−65421)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(508050211)クラウスマッファイ テヒノロギース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】KraussMaffei Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Krauss−Maffei Strasse 2, D−80997 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】