説明

金型冷却配管を備えた発泡成形装置及びこれを用いた発泡成形方法

【課題】 金型交換時に金型の形状に応じた専用の冷却配管を採用することなく、金型取付フレーム内での金型冷却配管を金型支柱等の配置箇所を避けながら簡単に配管することができると共に、金型全体の均一な冷却を可能にした金型冷却配管を備えた発泡成形装置を提供する。
【解決手段】 金型取付フレーム1Aの上側枠部の下面に沿って主管7を配設すると共にこの主管7に、長さ方向に小間隔毎に冷却水噴出孔9を設けている可撓性を有する複数本の枝管8を、その上端開口部を主管7に連通させた状態で一定間隔毎に垂設してあり、冷却水噴出孔9から冷却水を噴出させて金型を冷却する際に、その噴出圧の反力等によって可撓性を有する枝管8を左右に振動させて金型全面に均一に噴射させ、また、金型交換時には金型支柱6を迂回するように枝管8を湾曲させて該支柱6の先端面をバックプレート4の内面に受止させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型内に充填した予備発泡粒子等の材料を加熱発泡させて成形品を得るための発泡成形装置において、成形品の取り出しに先立って金型を冷却するための金型冷却配管を備えた発泡成形装置及びこの発泡成形装置を用いた発泡成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形装置は、固定ダイプレートと移動ダイプレートにそれぞれ装着された金型取付フレーム内の蒸気室に蒸気を送り込んで型内に充填している熱可塑性樹脂ビーズ等の材料を加熱発泡させることにより成形し、成形後に蒸気室内に配設している冷却管から冷却水を金型に噴射して冷却し、しかるのち、型開きして成形品を取り出すように構成され、また、異なった製品を成形する場合には、ダイプレートから金型取付フレームを取り外したのち、上記金型取付フレーム内に設けている金型を撤去してその製品の形状に応じた金型と交換する、所謂、外段取り作業を行うように構成されている。
【0003】
この外段取り作業は、単に金型取付フレームに対して金型を脱着するだけでなく、金型取付フレームに付帯するパッキン類等の部品の点検交換や、金型の清掃、金型取付フレーム内に配設されている一般に銅管製の冷却管の配設状態の調整作業、不良箇所の修理作業等の多くの工数が行われ、この作業の質が製品の質に大きく影響を与えている。
【0004】
また、金型は、加熱成形時における内圧による変形を防ぐために、その背面に支柱を突設して該支柱を金型取付フレームの背面開口端に固定しているバックプレートに受止させているため、金型取付フレーム内に冷却管を配置する場合には、上記支柱の配設位置を避けながら配置する必要があり、その上、この冷却管の配置後においても、金型取付フレームにバックプレートを取付ける際に、該バックプレートと支柱によって冷却管を挟み込まないように支柱の位置を確認しながらバックプレートの取付作業を行わなければならず、外段取り作業に対してこのバックプレートの脱着作業に要する時間の占める割合が多くなって、金型交換の作業能率が著しく低下する。
【0005】
さらに、金型冷却装置を構成している上記冷却管の主な目的は、金型全面を均一に水冷することにあるが、この目的を達成するために、例えば、金型取付フレーム内に固定されて各種の金型に共用して使用される屈曲自在な冷却管の場合においては、バックプレートを外した時点で、金型取付フレーム内に装着される金型の大きさや形状等に応じて、作業者が経験と勘とで冷却管の曲げ調整を行っているのが現状である。
【0006】
一方、交換される金型に応じて常に均一な冷却が可能となるように、金型毎に専用の冷却管を採用した発泡成形装置における金型冷却装置も知られている。例えば、特許文献1に記載した金型冷却装置においては、金型取付フレーム内に装着した金型の背面形状に沿うように、蒸気室内に冷却管と送気管とを配設して冷却管からの水冷と送気管からの風冷とを交互に行うように構成した冷却手段が記載され、特許文献2に記載の発泡成形装置においては、蒸気室内に金型の背面を冷却する冷却管と金型の周壁を冷却する冷却管とを備えた冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−78819号公報
【特許文献2】特開2003−71845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記いずれの装置においても金型を略均一に冷却することができる効果を有するが、前者の冷却手段によれば、蒸気室内に冷却管と共に送気管を配設しているために上記外段取り作業が一層煩雑化し、後者の冷却手段によれば、金型を交換する毎に該金型の形状に応じて専用の冷却管を蒸気室内に立体的に配設しなければならず、冷却管の交換や調整作業に著しい手間を要するといった問題点がある。
【0009】
さらに、いずれの装置においても、金型の交換時にはバックプレートを取り外して金型取付フレーム内に金型の支柱取付位置等を避けながら金型の形状等に応じて冷却管を配設しなければならず、上述したように、外段取り作業に対してこのバックプレートの脱着作業に要する時間の占める割合が多くなって、金型交換の作業能率が低下するといった問題点がある。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、金型交換時に、金型の形状に応じた専用の冷却配管を採用することなく、且つ、金型取付フレーム内での冷却配管の配置調整が金型の支柱等の配置箇所を避けながら何等の熟練を要することなく簡単且つ正確に行えると共に、金型全体の均一な冷却を可能にして外段取り作業の工数削減と成形品の品質安定化を図ることができる金型冷却配管を備えた発泡成形装置及びこの発泡成形装置を用いた発泡成形方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の金型冷却配管を備えた発泡成形装置は、金型取付フレーム内に脱着自在に組み込まれた金型と、金型取付フレームの背面側の開口端に取付けられて上記金型の背面に突設している支柱を受止するバックプレートと、このバックプレートと金型背面との間の空間部によって形成している蒸気室と、金型背面に対向したバックプレート側に配設されている金型冷却配管とを備えた発泡成形装置において、上記金型冷却配管は冷却水を導入する主管と、この主管から垂下し、且つ、金型背面に向かって開口した多数の冷却水噴出孔を設けている複数本の枝管とからなると共に、この枝管は可撓性を有するチューブから形成されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成した金型冷却配管を備えた発泡成形装置において、上端開口部を主管に連結、連通させている複数本の枝管において、少なくと2本以上の枝管の下端を互いに連結、連通させていることを特徴とする。
【0013】
さらに、上記発泡成形装置において、一本の長尺な可撓性チューブにおける長さ方向の中央部をU字状に湾曲させることによって下端がこのU字状湾曲部を介して互いに連通した2本の枝管に形成し、この2本の枝管を一組として複数組、それぞれの枝管の上端開口部を主管に連結、連通させた構造としている。
【0014】
上記発泡成形装置において、上記U字状湾曲部に剛性を有するU字状の被覆管を被嵌させた構造を有している。
【0015】
上記発泡成形装置において、主管から垂下している複数本の枝管における隣接する2本の枝管を一組とし各組の枝管の開口下端間をU字状に湾曲した剛性を有する継手管によって接続してなる構造としている。
【0016】
また、上記発泡成形装置において、複数本の枝管の上端開口部を主管に連結、連通させた状態で全ての枝管をこの主管の長さ方向に一定間隔毎に並設していると共に、各枝管の下端開口部を主管と平行に配設した中空の接続管に連結、連通させてなる構造を有している。
【0017】
上記発泡成形装置において、上記枝管を構成している可撓性を有するチューブとしてフッ素樹脂製チューブを使用している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金型冷却配管は冷却水を導入する主管と、この主管から垂下し、且つ、金型背面に向かって開口した多数の冷却水噴出孔を設けている複数本の枝管とからなると共に、この枝管は可撓性を有するチューブから形成されているので、金型の交換時には、金型支柱やエジェクトピンなどの配設箇所を迂回するようにして該枝管を湾曲させることができ、従って、何等の熟練を要することなく冷却配管の配置調整が行うことができると共に、金型の形状に応じた専用の冷却配管を必要とすることなく交換される金型に応じた冷却配管が可能となって、金型交換作業を含む外段取り作業の工数を大幅に削減することができる。
【0019】
さらに、主管に供給される冷却水を、この主管からすだれ状に垂下している上記複数本の枝管に均等に分流させて、これらの枝管に金型背面に向かって穿設している多数の冷却水噴出孔から効率よく金型に噴射させることができるばかりでなく、枝管は可撓性を有しているので、これらの枝管に設けている多数の噴出孔からの冷却水の噴出方向の相違等によって、その冷却水噴出時における反力で主管を支点として枝管をバックプレートの面方向、即ち、左右方向に微振動させることができ、従って、各枝管の多数の噴出孔から噴射する冷却水を金型背面の所定部分に集中させることなく分散させて、金型全面を均等に冷却させることができ、成形品の品質安定化を図ることができる。
【0020】
さらに、上記発泡成形装置において、上端開口部を主管に連結、連通させている複数本の枝管における少なくとも2本以上の枝管の下端を互いに連結、連通させている場合、これらの枝管のうち、一本の枝管における1乃至数個の冷却水噴出孔が詰まっても、他の枝管を通じてこの枝管内に冷却水を供給することができて、上記詰まった冷却水噴出孔以外の冷却水噴出孔から冷却水を金型に向かって確実に噴出させることができる。
【0021】
上記発泡成形装置において、上記枝管は、一本の長尺な可撓性チューブにおける長さ方向の中央部をU字状に湾曲させることによって下端がこのU字状湾曲部を介して互いに連通した2本の枝管に形成されてあり、この2本の枝管を一組として複数組、それぞれの枝管の上端開口部を主管に連結、連通させている場合、構造が簡単で製作が容易であり、金型冷却配管を備えた発泡成形装置を安価に提供できると共に金型取付フレーム内への配管作業が容易に行えるものであり、その上、各組の枝管において、一方の枝管における1乃至数個の冷却水噴出孔が詰まっても、主管と他の枝管を通じてこの枝管内に冷却水を供給して上記詰まった冷却水噴出孔以外の冷却水噴出孔から冷却水を金型に向かって均一な噴出圧でもって噴出させることができる。さらに、枝管が損傷したり冷却水噴出孔が詰まったりして使用できなくなった場合には、他の組の枝管をそのまま使用してその枝管のみを取り替えればよく、簡素にして経済的な金型冷却配管を備えた発泡成形装置を提供することができる。
【0022】
上記発泡成形装置において、U字状湾曲部に剛性を有するU字状の被覆管を被嵌させている場合、このU字状の被覆管によって2本の枝管を互いに安定した並行状態に保持することができ、従って、金型取付フレーム内への配管作業が円滑に行えると共に、これらの枝管に設けている複数個の噴出孔から冷却水が噴出する際に発生する反力等によって、各枝管はその上下端を主管とこのU字状被覆管を支点としてあたかも弦のように左右方向に微振動させることができ、従って、各枝管の多数の噴出孔から噴射する冷却水を金型背面全面に分散させるように流突させて金型を効率よく均等に冷却させることができる。
【0023】
上記発泡成形装置において、各冷却管は一定長さを有する1本の可撓性チューブからなり、隣接する2本の枝管を一組とし各組の枝管の開口下端間をU字状に湾曲した剛性を有する継手管によって接続している場合、主管に上端部を連結、連通させている隣接する枝管の間隔に応じた湾曲度を有するU字状継手管を使用することによって、複数本の枝管を主管の長さ方向に一定間隔毎にすだれ状に並設、保持してなる金型冷却配管を容易に且つ正確に製作することができ、金型取付フレーム内への配管作業も能率よく行えると共に、金型を効率よく均等に冷却させることができて外段取り作業の工数削減と成形品の品質安定化を図ることができる。
【0024】
また、上記発泡成形装置において、複数本の枝管が、その上端開口部を主管に連結、連通させた状態でこの主管の長さ方向に一定間隔毎に並設されていると共に、各枝管の下端開口部を主管と平行に配設した中空の接続管に連結、連通させている場合、接続管の重量によって全ての枝管に均一な緊張力を付与することができて主管の長さ方向に一定間隔毎に正確に並設させることができると共に、全ての枝管の上下端がこれらの主管と接続管に連結、連通させているので、一部の枝管が主管を支点として揺動する虞れは全くなく、そのため、金型取付けフレーム内への施工作業が円滑に且つ正確に行えて金型交換の作業能率を著しく向上させることができる。
【0025】
その上、例えば、隣接する2本の枝管の冷却水噴出孔が詰まっても、主管側からこれらの枝管の上端開口部に冷却水を供給して、詰まっている噴出孔以外の上方側の噴出孔から冷却水を噴出させることができる一方、他の枝管から接続管を通じて詰まっている噴出孔以外の上方側の噴出孔に冷却水を供給することができて、効率よく金型の冷却を行うことができる。さらに、主管と接続管間に複数本の枝管をすだれ状に配設してなるものであるから、構造が簡単で安価に提供できるのは勿論、金型取付フレーム内への施工も能率よく行えると共に、外段取り作業の工数削減と成形品の品質安定化を図ることができる等の作用効果を奏する。
【0026】
上記発泡成形装置において、上記枝管がフッ素樹脂製チューブから形成されている場合、長期の使用に耐えることができると共に配管作業時や施工時等において不測に他物に衝突しても、その衝撃力を撓みと弾性変形とによって効果的に吸収して破損するのを防止することができ、その上、金型支柱の配設箇所を迂回するようにして該枝管を湾曲させながら配管した際に、金型支柱に弾性的に当接、受止させることができて、別に固定部品を使用することなく安定した金型冷却配管を備えた発泡成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】発泡成形装置の要部の縦断側面図。
【図2】その一方の金型側の分解斜視図。
【図3】金型冷却配管の正面図。
【図4】一組の枝管の下端部の拡大正面図。
【図5】U字状湾曲部に被覆管を設けていない金型冷却配管の正面図。
【図6】金型支柱を迂回するように配管した枝管の配管状態を示す斜視図。
【図7】金型冷却配管の変形例を示す要部の一部縦断正面図。
【図8】金型冷却配管の別な実施の形態を示す正面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は水平方向に型開きを行うように構成している発泡成形装置の要部の縦断側面図であって、正面矩形枠状に形成されている一対の金型取付フレーム1A、1Bを備えてあり、これらの金型取付フレーム1A、1Bの対向する開口端部には雌雄の金型2A、2B(以下、単に金型2A、2Bとする)がそれぞれ脱着自在に組み込まれていて、これらの金型2A、2Bの凸部2aと凹部2bとの間にキャビティ(成形空間)3が形成されるように構成している。
【0029】
更に、上記金型取付フレーム1A、1Bにおける背面側の開口端には、該開口端を密閉した矩形状のバックプレート4、4がそれぞれ開口端に対して脱着自在に取付けられてあり、金型取付フレーム1A、1B内におけるこれらのバックプレート4、4の内面と金型2A、2Bの背面との間の密閉空間部によって形成された蒸気室5に外部から蒸気管(図示せず)を通じて加熱成形用の蒸気を供給するように構成していると共に、金型2A、2Bの背面にそれぞれバックプレート4、4に向かって複数本の支柱6を突設していて、これらの支柱6の突出端面6aを金型2A、2Bの背面に対向しているバックプレート4、4の上記内面に受止させている。
【0030】
また、バックプレート4、4の内面に沿って、金型2A、2Bの金型冷却配管A、Aをそれぞれ付設している。この金型冷却配管Aの構造を図2、図3に基づいて詳述すると、図2は金型取付フレーム1Aと一方の金型2A(図においては雄型)と金型冷却配管Aとバックプレート4とを分解した状態の斜視図、図3は金型冷却配管Aの正面図であって、金型冷却配管Aは、長さがバックプレート4の横幅よりも僅かに短く形成されている剛直性を有する主管7と、この主管7の長さ方向に一定間隔毎に、その上端開口部を主管7に連結、連通させた状態で主管7からすだれ状に垂下させている複数本の枝管8、8・・・8とから構成されてあり、これらの枝管8は可撓性と弾性復元力、及び耐熱性を有する合成樹脂製チューブからなり、金型2Aの背面に向けている管壁部分に、長さ方向、即ち、上下方向に小間隔毎に管壁を貫通した多数の冷却水噴出孔9、9・・・9を穿設している。
【0031】
これらの冷却水噴出孔9の径は、小さいと、冷却水中に含まれる不純分が詰まる虞れがあり、このような小径孔は穿設が困難である一方、大きいと、枝管8内の上端部と下端部との圧力が等しくなるように維持することが困難となるので、0.5 〜1.5mm が好ましい。さらに、全ての枝管8に穿設されている冷却水噴出孔9の総開孔面積を主管7内の管路の断面積の0.9 〜1.1 にして必要な水量を確保すると共に元圧を確実に維持することが好ましい。
【0032】
さらに、各枝管8においては、穿設されている冷却水噴出孔9、9間の間隔を、枝管8の上端から該枝管8の長さの1/3に相当する長さ部分においては20mm間隔にして冷却水噴出孔9の配設密度を密にし、この部分から下方の1/3に相当する長さ部分、即ち、中央部分においては50mm間隔毎に穿設し、さらに、この部分よりも下方の1/3に相当する長さ部分においては100mm 間隔毎に穿設して冷却水噴出孔9の配設密度を疎にしてあり、このように構成したことによって、雌雄金型2A、2Bの上部に噴射した冷却水の流下によって金型下部が過冷却にならないようにしている。なお、全ての冷却水噴出孔9は冷却水をやや斜め上方に向けた状態で噴出するように穿設されている。
【0033】
なお、枝管8を形成している上記可撓性と弾性復元力、及び耐熱性を有する合成樹脂製チューブとしては具体的には外径が8mmで、成形時における蒸気室5内の最高温度(約120 ℃)に耐えることができる耐熱温度200 ℃のフッ素樹脂からなるチューブを採用しているが、フッ素樹脂以外にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂等の合成樹脂製チューブを採用することができる。一方、上記主管7は、具体的には外径が22mmの銅管を採用している。
【0034】
上記主管7には冷却水噴出孔は設けられてなく、その内部を流通する冷却水を全ての枝管8に均等に分流させるように構成していると共に、この主管7の管壁上周部に所定間隔を存して下端が管内に連通した2本(3本以上であってもよい)のホース接続用短管10、10を上方に向かって突設してあり、これらのホース接続用短管10、10を上記金型取付フレーム1Aの上側枠部に左右方向にこれらのホース接続用短管10、10と同一間隔を存して貫設している挿通孔11、11にそれぞれシールパッキン(図示せず)を介して水密的に挿通して金型取付フレーム1Aから突出した上端部に冷却水供給ホース12、12を接続させている。
【0035】
主管7は、金型取付フレーム1Aの開口端部における上側枠部の下面に沿ってバックプレート4の上端部内面に近接させた状態で水平状に装着されてあり、主管7からすだれ状に垂下している上記複数本の枝管8は、バックプレート4の内面に沿ってその下端がバックプレート4の下端近傍部に達する位置まで配設されている。
【0036】
これらの枝管8は、一定長さの一本の合成樹脂製チューブからなる枝管の上端開口部を上記主管7に連結、連通させると共に下端開口部を栓部材等によって閉塞しておいてもよいが、図5に示すように、可撓性、耐熱性、弾性復元性を有する一本の長尺な合成樹脂製チューブを、その長さ方向の中央部をU字状に湾曲させることによって下端がこのU字状湾曲部8aを介して互いに連通した2本の互いに平行な枝管に形成してあり、この2本の枝管8、8を一組として複数組、それぞれの枝管8、8の上端開口部を主管7に連結、連通させている。
【0037】
さらに、各組の枝管8、8のU字状湾曲部8aを図2〜図4に示すように、曲率半径が枝管8、8間の間隔の1/2の寸法でもってU字状に湾曲している銅製の被覆管13に挿通してこの被覆管13によりU字状湾曲部8aを被覆した構造としておくことが好ましく、このように構成したことによって、各組の枝管8、8同士を連通させている上記U字状湾曲部8aがこの被覆管13によってその湾曲形態を保持すると共に、被覆管13の重量によって枝管8、8が互いに平行に並列した安定した形態を維持して、主管7にこれらの複数組の枝管8、8を垂設してなる金型冷却配管Aの取扱性が向上すると共に、金型取付フレーム1A内への組み込み作業が円滑に行え、且つ、枝管8の配設状態の調整作業等の外段取り作業を能率よく行うことができる。
【0038】
なお、主管7に枝管8の上端開口部を連結、連通状態で装着するには、主管7の管壁の下周部にキリ孔を枝管8の配設間隔毎に穿設してこれらのキリ孔に外周面に螺子を刻設している接続金具を固着する一方、この接続金具に突き合わせ状に連通させる金具を各枝管8の上端開口部に固定して該金具を袋ナットによって上記接続金具に着脱自在に連結する構造を採用しているが、その他、ニップルによる接続構造等を採用してもよい。
【0039】
このように構成した金型冷却配管Aは、他方の金型取付フレーム1B側においても、その主管7を図1に示すように、金型取付フレーム1Bの開口端部における上側枠部の下面に沿って他方のバックプレート4の上端部内面に近接させた状態で水平状に装着されてあり、主管7からすだれ状に垂下している上記複数本の枝管8を、バックプレート4の内面に沿ってその下端がバックプレート4の下端近傍部に達する位置まで配設されていると共に、主管7の管壁上周部に所定間隔を存して下端が管内に連通した2本(3本以上であってもよい)のホース接続用短管10、10を上方に向かって突設してあり、このホース接続用短管10、10を上記金型取付フレーム1Bの上側枠部に左右方向にこれらのホース接続用短管10、10と同一間隔を存して貫設している挿通孔11、11にそれぞれシールパッキン(図示せず)を介して水密的に挿通して金型取付フレーム1Bから突出した上端部に冷却水供給ホース12、12を接続させている。
【0040】
なお、バックプレート4、4をそれぞれ金型取付フレーム1A、1Bに着脱自在に装着する手段としては、バックプレート4の外周部複数箇所にボルト取付孔を設けておく一方、金型取付フレーム1A、1Bの背面側の開口端面に螺子孔を設けておき、この螺子孔にボルト取付孔を通じてボルトを螺締させるように構成した手段を採用しているが、その他の手段を採用してもよい。
【0041】
上記左右一対の金型取付フレーム1A、1Bはそれぞれ固定ダイプレートと可動ダイプレートに脱着自在に取付けられ、発泡成形時には公知のように型締めした後、雌雄の金型2A、2Bの凸部2aと凹部2bとによって形成されるキャビティ3内に予備発泡粒子等の発泡性樹脂粒子を充填した後、蒸気室5、5に蒸気を供給して加熱して二次発泡させ、次いで、冷却水供給ホース12を通じて金型冷却配管A、Aの主管7 7に冷却水を供給し、主管7、7からバックプレート4、4の内面に沿って垂下している複数本の枝管8、8・・・8に分流させてこれらの枝管8の冷却水噴出孔9から金型2A、2Bに冷却水を噴射することにより冷却する。
【0042】
この際、複数本の枝管8は水平状に配設している主管7から垂下した状態で配管され、且つ、これらの枝管8は可撓性を有していると共に枝管8に設けている多数の噴出孔9の冷却水噴出方向の偏位によって、噴出孔9からの噴出圧の反力で、枝管8が主管7を支点として、或いは、主管7と下方の被覆管13とを支点として枝管8が左右方向に揺動するように微振動しながら噴出孔9から冷却水を金型背面に向かって噴射し、金型背面に流突させる位置を左右方向に変動させながら金型全面を均等に冷却させて成形品の品質安定化を図ることができるものである。使用した冷却水等は、金型取付フレーム1A、1Bの下側枠部に連結、連通させている排出口14を通じて排出させたのち、型開きして発泡成形品を取り出す。
【0043】
なお、発泡性樹脂粒子は、合成樹脂粒子に物理型発泡剤を含浸させてなり、加熱によって発泡するものであり、予備発泡させてなる予備発泡粒子も含まれる。なお、本願発明では、予備発泡させた、所謂、予備発泡粒子を主に使用する。
【0044】
上記発泡性樹脂粒子を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレンーエチレン共重合体、スチレン改質ポリエチレン系樹脂、スチレンー無水マレイン酸共重合体、スイレンーアクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0045】
そして、上記物理型発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロブタン等の脂肪族環化水素類;トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、メチルクロライド、メチレンクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0046】
又、金型の交換を行う場合には、金型冷却配管Aを装着している左右一対の金型取付フレーム1A、1Bから金型2A、2Bを取り外した後、新たな金型をこれらの金型取付フレーム1A、1Bに装着すればよい。この際、新たな金型を装着する時に、これらの金型から突設している支柱6やエジェクトピン(図示せず)等が金型取付フレーム1A、1Bに配設している金型冷却配管A、Aの主管7から垂下した枝管8に突き当たる場合には図6に示すように、支柱6等を迂回するように枝管8を人手によって側方に屈曲させてその屈曲部を支柱6等の周面に受止させた状態にし、この状態にしてバックプレート4、4を金型取付フレーム1A、1Bに装着してその内面で上記全ての支柱6の先端面6aを受止させればよく、何等の熟練を要することなく金型交換作業が能率よく行うことができる。
【0047】
なお、上記金型冷却配管Aにおいては、主管7から垂下している複数本の枝管8として、一本の長尺な合成樹脂製チューブを、その長さ方向の中央部をU字状に湾曲させることによって下端がこのU字状湾曲部8aを介して互いに連通した2本の互いに平行な枝管に形成し、この2本の枝管8、8を一組として複数組、それぞれの枝管8、8の上端開口部を主管7に着脱自在に連結、連通させているが、上記長尺の合成樹脂製チューブの約1/2程度の長さを有する一本の合成樹脂製チューブからなる枝管8を複数本、その上端開口部を主管7に長さ方向に一定間隔毎に着脱自在に連結、連通させると共に、隣接する2本の枝管8、8を一組として各組の枝管8、8の下端開口部間を図7に示すように、U字状に湾曲した銅管等の剛性を有する継手管15によって取り外し可能に接続した構造としておいてもよい。なお、2本の枝管を一組とすることなく、2本以上の枝管8の下端を適宜な継手金具を介して互いに連結、連通させた構造としておいてもよい。
【0048】
図8は金型冷却配管の別な実施の形態を示すもので、上記のように2本の枝管8、8を一組とした構造とすることなく、一定長さを有する複数本の枝管8、8・・・8をそれぞれ単独的に主管7に、この主管7の長さ方向に一定間隔毎に着脱自在に連結、連通させていると共に、下端開口部を主管7と略同長で且つ主管7に平行に配設した両端が閉塞している中空の接続管16に、上記主管7に対する連結ピッチと同一ピッチでもって着脱自在に連結、連通させた構造としている。
【0049】
このように構成した金型冷却配管によれば、下端側に設けている接続管16の重量によって全ての枝管8を均一な緊張力でもって主管7から垂下させた状態を保持させて金型取付けフレーム1A、1B内への配管作業が円滑に且つ正確に行えると共に、主管7に導入される冷却水を全ての枝管8を通じて接続管16内に充満させた状態にして枝管8に設けている全ての冷却水噴出孔9から均等な圧力でもって金型2A、2Bに向かって噴出させることができ、また、上記図7で示した枝管8と同様に、一本の枝管8が損傷したり冷却水噴出孔9が詰まったりして使用できなくなった場合には、他の枝管8をそのまま使用してその枝管8のみを取り替えればよく、構造が簡単で安価な金型冷却配管を備えた発泡成形装置を提供することができる。
【0050】
上記発泡成型装置では、金型取付フレーム1A、1Bに脱着自在に取付けられたバックプレート4、4の双方の内面に沿って金型冷却配管A、Aを上述のように付設した場合を説明したが、上述の金型冷却配管Aは、金型取付フレーム1A、1Bに脱着自在に取付けられたバックプレート4、4のうちの何れか一方のバックプレート4の内面に沿って付設されておればよい。
【符号の説明】
【0051】
A 金型冷却配管
1A、1B 金型取付フレーム
2A 2B 雌雄の金型
3 キャビティ
4 バックプレート
5 蒸気室
6 金型支柱
7 主管
8 枝管
9 冷却水噴出孔
13 被覆管
15 継手管
16 接続管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型取付フレーム内に脱着自在に組み込まれた金型と、金型取付フレームの背面側の開口端に取付けられて上記金型の背面に突設している支柱を受止するバックプレートと、このバックプレートと金型背面との間の空間部によって形成している蒸気室と、金型背面に対向したバックプレート側に配設されている金型冷却配管とを備えた発泡成形装置において、上記金型冷却配管は冷却水を導入する主管と、この主管から垂下し、且つ、金型背面に向かって開口した多数の冷却水噴出孔を設けている複数本の枝管とからなると共に、この枝管は可撓性を有するチューブから形成されていることを特徴とする金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項2】
少なくとも2本以上の枝管の下端を互いに連結、連通させていることを特徴とする請求項1に記載の金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項3】
枝管は、一本の長尺な可撓性チューブにおける長さ方向の中央部をU字状に湾曲させることによって下端がこのU字状湾曲部を介して互いに連通した2本の枝管に形成されてあり、この2本の枝管を一組として複数組、それぞれの枝管の上端開口部を主管に連結、連通させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項4】
U字状湾曲部に剛性を有するU字状の被覆管を被嵌させていることを特徴とする請求項3に記載の金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項5】
主管から垂下している複数本の枝管は、隣接する2本の枝管を一組とし各組の枝管の開口下端間をU字状に湾曲した剛性を有する継手管によって接続していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項6】
複数本の枝管は、その上端開口部を主管に連結、連通させた状態でこの主管の長さ方向に一定間隔毎に並設されていると共に、各枝管の下端開口部を主管と平行に配設した中空の接続管に連結、連通させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項7】
枝管は、フッ素樹脂製チューブからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3、又は、請求項5、請求項6におけるいずれか1項に記載の金型冷却配管を備えた発泡成形装置。
【請求項8】
一対の金型取付フレーム内のそれぞれに脱着自在に組み込まれた雌雄の金型と、各金型取付フレームの背面側の開口端に取付けられて上記雌雄の金型の背面に突設している支柱を受止するバックプレートと、このバックプレートと上記雌雄の金型背面との間の空間部によって形成している蒸気室と、上記雌雄の金型の何れか一方或いは双方の背面に対向したバックプレート側に配設されており、冷却水を導入する主管と、この主管から垂下し、且つ、金型背面に向かって開口した多数の冷却水噴出孔を設けている複数本の枝管とからなると共に、この枝管は可撓性を有するチューブから形成されている金型冷却配管とを備えた発泡成形装置の上記雌雄の金型を型締めして上記雌雄の金型間に形成されたキャビティ内に発泡性樹脂粒子を充填した後、上記蒸気室内に蒸気を供給して上記発泡性樹脂粒子を加熱して発泡させ、しかる後、上記金型冷却配管の上記冷却水噴出孔から冷却水を上記金型冷却配管に対向する上記金型背面に向かって噴射して上記金型を冷却することを特徴とする発泡成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−52425(P2010−52425A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176885(P2009−176885)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】