説明

金型装置及びこの金型装置を備えた成型装置

【課題】小型化を図ることができる金型装置及び成型装置を提供する。
【解決手段】 射出成型機1は金型装置7と該金型装置7のキャビティ28内に合成樹脂を充填する射出機8を備えている。金型装置7は固定下型10と移動下型11とスライド型12と移動上型14と型移動部16を備えている。固定下型10と移動下型11とスライド型12と移動上型14とは互いに接離自在で互いの間にキャビティ28が形成されている。型10,11,12,14はキャビティ28を密閉する密閉位置とキャビティ28を開放する開放位置とに亘って移動自在である。型移動部16は密閉位置から開放位置に4向かって移動する際に移動下型11をキャビティ28の中央に向かって移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コネクタハウジングなどの成型品を成型するための金型装置及びこの金型装置を備えた成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタハウジング、ハーネス用プロテクタ及び配線用クリップなどの成型品を成型する際には、従来から種々の成型装置が用いられてきた。この種の成型装置は、金型装置と、該金型装置のキャビティ内に加熱流動化(可塑化)された成型材料を高圧により充填する充填部を備えている。
【0003】
金型装置は、互いに接離自在に設けられ、かつ互いの間にキャビティが形成される複数の型と、成型後のキャビティ内から成型品を押し出すための押し出しピンなどを備えている。押し出しピンは、一つの型にスライド自在に設けられ、この一つの型に対してスライドすることで、成型後の成型品を押圧する構成となっている。
【0004】
前述した従来の成型装置は、金型装置の複数の型を互いに近づけて、前述したキャビティを密閉し、かつ押し出しピンをキャビティから後退させた状態で、充填部から加熱流動化(可塑化)された成型材料をキャビティ内に充填する。そして、成型装置は、キャビティ内で、成型材料を冷却固化または硬化させる、次いで、成型装置は、金型装置の型を互いに離間させて、押し出しピンが成型品をキャビティ内から押し出して、成型品を取り出す。こうして、従来の成型装置は、成型品を成型してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の成型装置の金型装置は、押し出しピンを備えているので、部品点数が増加するとともに押し出しピンの移動ストロークを確保する必要が生じて、大型化する傾向であった。また、前述した従来の成型装置は、金型装置が大型化する傾向であったため、勿論成型装置自体も大型化する傾向であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、小型化を図ることができる金型装置及び成型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の金型装置は、互いの間に成型品を成型するためのキャビティが設けられた少なくとも三つの型を備えた金型装置において、前記型は、前記キャビティを密閉する密閉位置と、前記キャビティを開放する開放位置とに亘って、互いに接離自在に設けられているとともに、前記開放位置に位置付けられると、一つの型を前記密閉位置よりも前記キャビティの中央に向かって移動された位置に位置付ける型移動部を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の本発明の金型装置は、請求項1に記載の金型装置において、前記型移動部は、前記密閉位置から前記開放位置に向かうにしたがって、前記一つの型を前記密閉位置から前記キャビティの中央に向かって徐々に移動させる構成となっていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の本発明の金型装置は、請求項2に記載の金型装置において、前記一つの型を前記密閉位置から前記キャビティの中央に向かう方向に移動自在に設け、前記型移動部は、前記一つの型と他の型とのうち一方に設けられた干渉部と、前記一つの型と前記他の型とのうち他方に設けられかつ干渉部と干渉するとともに前記他の型が前記密閉位置から前記開放位置に向かうにしたがって前記一つの型を前記キャビティの中央に徐々に向かって移動させる方向に傾斜した傾斜部と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の本発明の成型装置は、金型装置と、該金型装置のキャビティ内に成型材料を充填する充填部と、を備えた成型装置において、前記金型装置として、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の金型装置を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項1に記載の本発明の金型装置によれば、型移動部によって型を開放位置に位置付けることで、一つの型がキャビティの中央に向かって移動された位置に成型品を位置付ける。即ち、一つの型が、キャビティ内の成型品を押し出す。
【0012】
請求項2に記載の本発明の金型装置によれば、型移動部が、型が密閉位置から開放位置に向かうにしたがって、一つの型をキャビティの中央に向かって徐々に移動させるので、型を開放位置に移動させるのに連動して、一つの型が成型品を徐々に押し出すこととなる。
【0013】
請求項3に記載の本発明の金型装置によれば、型移動部が、一つの型と他の型とのうちの一方に設けられた干渉部と、他方に設けられた傾斜部とを備えている。このため、型移動部に型やベース部に対して移動自在な部品を設ける必要がない。
【0014】
請求項4に記載の本発明の成型装置によれば、金型装置が前述した型移動部を備えているので、型を開放位置に位置付けることで、一つの型が、キャビティ内の成型品を押し出す。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように請求項1に記載の本発明は、型移動部によって型を開放位置に位置付けることで、一つの型が、キャビティ内の成型品を押し出すので、キャビティ内から成型品を押し出すために、押し出しピンなどの専用の部品を設ける必要が生じない。このため、キャビティ内から成型品を押し出す押し出しピンなどの専用の部品の移動ストロークを確保する必要が生じないので、金型装置全体の小型化を図ることができる。
【0016】
請求項2に記載の本発明は、型を開放位置に移動させるのに連動して、一つの型が成型品を徐々に押し出すので、キャビティ内から成型品を押し出すために、押し出しピンなどの専用の部品を設ける必要が確実に生じない。したがって、キャビティ内から成型品を押し出す押し出しピンなどの専用の部品の移動ストロークを確保する必要が確実に生じないので、金型装置全体の小型化を確実に図ることができる。
【0017】
請求項3に記載の本発明は、型移動部に型やベース部に対して移動自在な部品を設ける必要がないので、キャビティ内から成型品を押し出す部品の移動ストロークを考慮する必要がより一層確実に生じない。したがって、金型装置全体の小型化をより一層確実に図ることができる。
【0018】
請求項4に記載の本発明は、金型装置が前述した型移動部を備えて、型を開放位置に位置付けることで、一つの型がキャビティ内の成型品を押し出すので、キャビティ内から成型品を押し出すために、押し出しピンなどの専用の部品を設ける必要が生じない。したがって、金型装置即ち成型装置全体の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかる成型装置としての射出成型機1を、図1ないし図7に基づいて説明する。本発明の一実施形態にかかる射出成型機1(図1に示す)は、例えば、図7に示すコネクタハウジング3(成型品に相当)を成型する装置である。
【0020】
コネクタハウジング3は、成型材料としての絶縁性の合成樹脂で構成され、かつ箱状に形成されている。コネクタハウジング3は、図7に示すように、複数の端子収容室4を備えている。端子収容室4は、直線状に延びかつコネクタハウジング3を貫通した孔(空間)であるとともに、互いに平行に配置されている。端子収容室4は、電線が取り付けられた端子金具を収容する。
【0021】
コネクタハウジング3は、所定の端子収容室4に電線が取り付けられた端子金具を収容して、コネクタを構成する。コネクタは、相手側のコネクタなどと嵌合して、自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。
【0022】
射出成型機1は、図2に示すように、金型装置7と、充填部としての射出機8と、制御手段としての制御装置などを備えている。
【0023】
金型装置7は、図1乃至図3に示すように、ベース部9と、型としての一対の固定下型10と、型としての移動下型11と、型としての一対のスライド型12と、一対のスライドシリンダ13と、型としての移動上型14と、昇降シリンダ15と、型移動部16と、を備えている。
【0024】
ベース部9は、工場のフロア上などに設置される。ベース部9は、図2及び図3に示すように、本体部17と、支持型18と、一対のフランジ19と、を備えている。本体部17は、その上面が略平坦に形成されている。支持型18は、本体部17の上面から凸に形成され、平面形状が矩形状に形成されている。支持型18は、その上面及び全ての側面が平坦に形成され、これらの面が互いに直交している。
【0025】
一対のフランジ19は、厚手の平板状に形成されて、支持型18の長手方向の両端に位置する側面に重ねられて取り付けられている。即ち、一対のフランジ19は、互いに間隔をあけて平行に配置されている。
【0026】
一対の固定下型10は、それぞれ、四角柱状に形成され、支持型18の中央部から立設した状態で当該支持型18に取り付けられている。固定下型10は、支持型18の長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、互いに平行に配置されている。固定下型10は、その長手方向が支持型18の上面に対して直交している(即ち、鉛直方向と平行である)。
【0027】
移動下型11は、四角柱状に形成されている。移動下型11は、一対の固定下型10間に配置され、その長手方向が支持型18の上面に対して直交する方向(即ち、鉛直方向)と平行である。移動下型11は、支持型18の上面に対して直交する方向(即ち、鉛直方向)に沿って移動自在に、固定下型10及び支持型18に支持されている。移動下型11は、特許請求の範囲に記載された一つの型をなしている。
【0028】
一対のスライド型12は、支持型18の長手方向に沿って互いに間隔をあけて配置され、当該支持型18の上面上にこの支持型18の長手方向に沿ってスライド自在に設けられている。一対のスライド型12は、それぞれ、方体状の本体部20を備えている。図1中左側に位置する一方のスライド型12は、本体部20に加えて支持板21を備えている。支持板21は、厚手の平板状に形成され本体部20と一体に形成されている。支持板21は、一方のスライド型12の本体部20から他方のスライド型12に向かって延在している。なお、一方のスライド型12は、特許請求の範囲に記載された他の型をなしている。
【0029】
一対のスライドシリンダ13は、それぞれ、フランジ19に取り付けられたシリンダ本体22と、このシリンダ本体22から伸縮自在に設けられたロッド23とを備えている。ロッド23の長手方向は、支持型18の長手方向と平行である。ロッド23には、スライド型12が取り付けられている。一対のスライドシリンダ13は、ロッド23を伸縮することで、スライド型12を支持型18の上面上でスライドさせて、これら一対のスライド型12同士を接離させる。勿論、一対のスライドシリンダ13は、ロッド23を伸張することで、一対のスライド型12同士を近づけ、ロッド23を縮小することで、一対のスライド型12同士を離す。
【0030】
移動上型14は、支持型18の上方に設置され、昇降自在即ち支持型18に接離自在に設けられている。移動上型14は、厚手の平板状の本体部24と、一対の位置決め部25と、成型部26とを備えている。本体部24は、平面形状が支持型18と同様の矩形状に形成されている。本体部24の長手方向は、支持型18の長手方向と平行である。
【0031】
位置決め部25は、本体部24の長手方向の両端部から支持型18に向かって凸に形成されている。位置決め部25は、移動上型14が支持型18に近づいて、一対のスライド型12同士が近づくと、フランジ19とスライド型12との間に侵入して、スライド型12と移動上型14とを互いに位置決めする。成型部26は、本体部24の中央部から支持型18に向かって凸に形成されている。成型部26は、一対の固定下型10及び移動下型11と、鉛直方向に沿って相対する。
【0032】
昇降シリンダ15は、シリンダ本体と、このシリンダ本体から伸縮自在なロッド27とを備えている。ロッド27は、移動上型14に取り付けられている。昇降シリンダ15は、ロッド27が伸張することで、移動上型14を支持型18即ち固定下型10及び移動下型11に対して接離させる。勿論、昇降シリンダ15は、ロッド27を伸張させると、移動上型14を支持型18即ち固定下型10及び移動下型11に近づけ、ロッド27を縮小させると、移動上型14を支持型18即ち固定下型10及び移動下型11から離す。
【0033】
前述した一対の固定下型10と、移動下型11と、一対のスライド型12と、移動上型14とは、一対のスライドシリンダ13及び昇降シリンダ15のロッド23,27が伸縮することで、互いに接離自在に設けられている。なお、勿論、ロッド23,27が伸張すると、前述した型10,11,12,14が互いに近づき、ロッド23,27が縮小すると、前述した型10,11,12,14が互いに離れる。
【0034】
又、前述した型10,11,12,14間には、キャビティ28が設けられている。キャビティ28は、前述した型10,11,12,14が互いに近づいた際に、これらの型10,11,12,14間に設けられる空間である。キャビティ28の形状は、前述したコネクタハウジング3の外形に沿っている。キャビティ28は、成型材料としての合成樹脂G(図2に示す)が充填されることで、コネクタハウジング3を成型するために用いられる。
【0035】
前述した型10,11,12,14は、勿論、前述したシリンダ13,15のロッド23,27が伸縮することで、図2に示す前記キャビティ28を密閉する密閉位置と、図3に示すキャビティ28を開放する開放位置とに亘って、互いに接離自在に設けられている。
【0036】
また、本実施形態では、移動上型14に、キャビティ28に連なるスプルーランナー29と、スプルーランナー29に連通した注入孔30とが設けられている。スプルーランナー29は、一端がキャビティ28に連なる移動上型14を貫通した孔である。注入孔30は、前述した移動上型14の上面に開口し、スプルーランナー29に連なった孔である。
【0037】
型移動部16は、図4乃至図6に示すように、移動下型11に設けられた干渉部としての干渉突起31と、傾斜部としての傾斜凸部32とを備えている。干渉突起31は、移動下型11から一方のスライド型12の支持板21に向かって凸に形成されている。
【0038】
傾斜凸部32は、支持板21から移動下型11に向かって凸に形成され、かつ干渉突起31と干渉(接触)する位置に設けられている。傾斜凸部32は、干渉突起31よりも下方即ち移動上型14から離れた側に設けられ、表面上に前述した干渉突起31が位置付けられる。傾斜凸部32は、直線状に延在し、かつ移動下型11から離れるのにしたがって徐々に下方に向かうように、移動下型11の移動方向及びスライド型12のスライド方向に対して傾斜している。
【0039】
前述した型移動部16は、前述した型10,11,12,14が密閉位置に位置付けられると、図4に示すように、干渉突起31が傾斜凸部32の一方のスライド型12寄りの端部上に設けられて、二つの固定下型10と略面一となる位置に移動下型11を位置付ける(即ち、キャビティ28の形状をコネクタハウジング3の外形と略同等にする)。そして、型移動部16は、前述した型10,11,12,14が密閉位置から開放位置に向かって移動すると、干渉突起31が傾斜凸部32の一方のスライド型12寄りの端部上から他方のスライド型12寄りの端部上に向かって徐々に移動して、移動下型11を徐々に上方に向かって移動させる。
【0040】
即ち、移動下型11の上方にキャビティ28が設けられているので、型移動部16は、型10,11,12,14が密閉位置から開放位置に向かうにしたがって、移動下型11をキャビティ28の中央に向かって徐々に移動させる構成となっている。このように、傾斜凸部32は、型10,11,12,14が密閉位置から開放位置に向かうにしたがって、移動下型11をキャビティ28の中央に向かって徐々に移動させる方向に傾斜している。
【0041】
また、型移動部16は、前述した型10,11,12,14が開放位置に位置付けられると、干渉突起31が傾斜凸部32の移動下型11寄りの端部上に位置付けられて、移動下型11を前述した密閉位置よりも上方に位置付ける。このように、型移動部16は、前述した型10,11,12,14が開放位置に位置付けられると、移動下型11を密閉位置よりもキャビティ28の中央に向かって移動された位置に位置付ける構成となっている。
【0042】
射出機8は、シリンダとしての加熱シリンダ33と、押圧部材としてのスクリュー34と、押圧シリンダなどを備えている。加熱シリンダ33は、筒状に形成されている。加熱シリンダ33は、その長手方向(軸芯方向)が、移動上型14が支持型18に接離する方向と平行に配されている。加熱シリンダ33の一端部33aは、該加熱シリンダ33の先端に向かうにしたがって徐々に細くなるようにテーパ状に形成されている。加熱シリンダ33の一端部33aの開口35が、移動上型14の注入孔30内に侵入した状態で、加熱シリンダ33は、移動上型14に取り付けられている。なお、注入孔30の内面と加熱シリンダ33の一端部33aは、互いに密着している。
【0043】
加熱シリンダ33は、内側にスクリュー34を収容する。加熱シリンダ33の外表面には、加熱用ヒータが複数取り付けられている。また、加熱シリンダ33には、筒状のホッパ36が取り付けられている。加熱シリンダ33は、ホッパ36を介して、成型材料としてのチップ状の合成樹脂Gが充填される。加熱シリンダ33は、充填されたチップ状の合成樹脂Gを加熱流動化(可塑化)する。このように、加熱シリンダ33は、可塑化された合成樹脂Gが充填される。また、加熱シリンダ33は、開口35を通して可塑化された合成樹脂を注入孔30、スプルーランナー29を介して、キャビティ28内に射出可能になっている。
【0044】
スクリュー34は、棒状に形成されており、加熱シリンダ33内に収容されている。スクリュー34は、加熱シリンダ33内に収容されると、その長手方向(軸芯方向)が加熱シリンダ33の長手方向(軸芯方向)と平行になる。また、スクリュー34は、加熱シリンダ33の長手方向に沿って移動自在に設けられている。スクリュー34の外周面には、螺旋状に突起37が設けられている。
【0045】
スクリュー34は、加熱シリンダ33の長手方向に沿って移動することで、加熱シリンダ33内の合成樹脂Gを前記開口35即ち加熱シリンダ33の一端部33aに向かって移動させて、加熱シリンダ33内の可塑化された合成樹脂Gを注入孔30に向かって押し出す。
【0046】
押圧シリンダは、シリンダ本体と、該シリンダ本体から伸縮自在なロッドとを備えている。ロッドは、スクリュー34に取り付けられている。押圧シリンダは、ロッドを伸縮することで、スクリュー34を加熱シリンダ33の長手方向に沿って移動させる。勿論、押圧シリンダは、ロッドを伸張することで、スクリュー34を開口35に近づけ、ロッドを縮小することで、スクリュー34を開口35から離す。
【0047】
前述した構成の射出機8は、押圧シリンダのロッドを伸縮することで、加熱シリンダ33の長手方向に沿って、スクリュー34を移動させて、加熱シリンダ33内の可塑化された合成樹脂Gを注入孔30及びスプルーランナー29を介してキャビティ28内に充填(射出)する。
【0048】
制御装置は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置は、射出成型機1を動作させるためのプログラムを記憶している。制御装置は、金型装置7と、射出機8などと接続しており、前述したプログラムに基づいて、これらを制御して、射出成型機1全体の制御をつかさどる。
【0049】
前述した実施形態の射出成型機1は、成型品としてのコネクタハウジング3を以下に示すように成型する。まず、図4に示すように、スクリュー34を開口35から遠ざけた状態で、加熱シリンダ33内に可塑化された合成樹脂Gを充填して、制御装置がシリンダ13,15のロッド23,27を伸張して、前述した型10,11,12,14を密閉位置に位置付ける。こうして、制御装置は、型10,11,12,14を互いに近づけて密に接触させて、型10,11,12,14即ちキャビティ28を閉じる。
【0050】
そして、制御装置は、押圧シリンダのロッドを伸張して、加熱シリンダ33の可塑化された合成樹脂Gを、図5に示すように、注入孔30とスプルーランナー29を介してキャビティ28内に射出する。すると、キャビティ28内即ち型10,11,12,14内の空間の殆どに可塑化された合成樹脂Gが充填される。
【0051】
そして、制御装置は、キャビティ28内に合成樹脂Gが充填されることを確認すると、所定時間、押圧シリンダのロッドを伸張したままに保つ。そして、この所定時間が経過する間にキャビティ28内の合成樹脂Gが硬化する。所定時間が経過すると、制御装置は、押圧シリンダのロッドを縮小するとともに、シリンダ13,15のロッド23,27を縮小して、型10,11,12,14を開放位置に向かって移動させる。
【0052】
すると、型移動部16によって、型10,11,12,14を開放位置に向かって移動させるのにしたがって、移動下型11が徐々に上方即ちキャビティ28の中央に向かって移動する。そして、図6に示すように、シリンダ13,15のロッド23,27を縮小して、型10,11,12,14が開放位置に位置付けられると、移動下型11によって、コネクタハウジング3が持ち上げられて(即ちキャビティ28内から押し出されて)、密閉位置よりもキャビティ28の中央寄りに位置付けられる。そして、キャビティ28内即ち移動下型11上のコネクタハウジング3が取り出される。こうして、射出成型機1は、前述した構成のコネクタハウジング3を成型する。
【0053】
本実施形態によれば、型移動部16によって型10,11,12,14を開放位置に位置付けることで、移動下型11がキャビティ28の中央に向かって移動された位置にコネクタハウジング3を位置付ける。即ち、移動下型11が、キャビティ28内のコネクタハウジング3を押し出す。
【0054】
このため、キャビティ28内からコネクタハウジング3を押し出すために、押し出しピンなどの専用の部品を設ける必要が生じない。このため、キャビティ28内からコネクタハウジング3を押し出す押し出しピンなどの専用の部品の移動ストロークを確保する必要が生じないので、金型装置7全体の小型化を図ることができる。
【0055】
また、型移動部16が、型10,11,12,14が密閉位置から開放位置に向かうにしたがって、移動下型11をキャビティ28の中央に向かって徐々に移動させるので、型10,11,12,14を開放位置に移動させるのに連動して、移動下型11がコネクタハウジング3を徐々に押し出すこととなる。このために、押し出しピンなどの専用の部品を設ける必要が確実に生じない。したがって、キャビティ28内からコネクタハウジング3を押し出す押し出しピンなどの専用の部品の移動ストロークを確保する必要が確実に生じないので、金型装置7全体の小型化を確実に図ることができる。
【0056】
さらに、型移動部16が、移動下型11とスライド型12とのうちの一方に設けられた干渉突起31と、他方に設けられた傾斜凸部32とを備えている。このため、型移動部16に型10,11,12,14に対して移動自在な部品を設ける必要がない。したがって、キャビティ28内からコネクタハウジング3を押し出す部品の移動ストロークを考慮する必要がより一層確実に生じない。したがって、金型装置7全体の小型化をより一層確実に図ることができる。
【0057】
また、金型装置7が前述した型移動部16を備えているので、射出成型機1は、型10,11,12,14を開放位置に位置付けることで、移動下型11が、キャビティ28内のコネクタハウジング3を押し出す。このために、キャビティ28内からコネクタハウジング3を押し出すために、押し出しピンなどの専用の部品を設ける必要が生じない。したがって、金型装置7即ち射出成型機1全体の小型化を図ることができる。
【0058】
なお、前述した実施形態では、型10,11,12,14を設けたが、本発明では、金型装置7を構成する型を少なくとも三つ設ければ、当該型をいくつ設けても良い。また、前述した実施形態では、密閉位置から開放位置に向かって型10,11,12,14が移動するのにしたがって、移動下型11がコネクタハウジング3を持ち上げて、キャビティ28の中央寄りに位置付けているが、本発明では、密閉位置から開放位置に向かって型10,11,12,14が移動するのにしたがって、いずれか一つの型がコネクタハウジング3を水平に移動させたり下方に移動させて、キャビティ28の中央寄りに位置付けても良い。さらに、本発明では、干渉部としての干渉突起31を如何なる型に設け、傾斜部としての傾斜凸部を他の如何なる型に設けても良い。又、本発明では、コネクタハウジング3に限らず種々の成型品を成型しても良い。
【0059】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成型機の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示された射出成型機の構成を一部断面で示す説明図である。
【図3】図1に示された射出成型機の型が開放位置に位置付けられた状態を一部断面で示す説明図である。
【図4】図1に示された射出成形機の金型装置の型が密閉位置に位置付けられた状態を示す断面図である。
【図5】図4に示された射出成形機の金型装置のキャビティ内に合成樹脂が充填された状態を示す断面図である。
【図6】図5に示された射出成形機の金型装置の型が開放位置に位置付けられた状態を示す断面図である。
【図7】図1に示された射出成形機によって成型される成形品の一例としてのコネクタハウジングを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 射出成型機(成型装置)
3 コネクタハウジング(成型品)
7 金型装置
8 射出機(充填部)
10 固定下型(型)
11 移動下型(型、一つの型)
12 スライド型(型、他の型)
14 移動上型(型)
16 型移動部
28 キャビティ
31 干渉突起(干渉部)
32 傾斜凸部(傾斜部)
G 合成樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの間に成型品を成型するためのキャビティが設けられた少なくとも三つの型を備えた金型装置において、
前記型は、前記キャビティを密閉する密閉位置と、前記キャビティを開放する開放位置とに亘って、互いに接離自在に設けられているとともに、
前記開放位置に位置付けられると、一つの型を前記密閉位置よりも前記キャビティの中央に向かって移動された位置に位置付ける型移動部を備えたことを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記型移動部は、前記密閉位置から前記開放位置に向かうにしたがって、前記一つの型を前記密閉位置から前記キャビティの中央に向かって徐々に移動させる構成となっていることを特徴とする請求項1記載の金型装置。
【請求項3】
前記一つの型を前記密閉位置から前記キャビティの中央に向かう方向に移動自在に設け、
前記型移動部は、
前記一つの型と他の型とのうち一方に設けられた干渉部と、
前記一つの型と前記他の型とのうち他方に設けられかつ干渉部と干渉するとともに前記他の型が前記密閉位置から前記開放位置に向かうにしたがって前記一つの型を前記キャビティの中央に徐々に向かって移動させる方向に傾斜した傾斜部と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の金型装置。
【請求項4】
金型装置と、該金型装置のキャビティ内に成型材料を充填する充填部と、を備えた成型装置において、
前記金型装置として、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の金型装置を備えたことを特徴とする成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−213234(P2008−213234A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51923(P2007−51923)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】