説明

金属によるガラス等のシーリング方法。

【課題】ガラスの接着が可能な鉛を含まないコーティング材を提供する。
【解決手段】一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラス12〜28質量%にアルミニュームの含有量が52〜60質量%、銀の含有量が16〜22質量%であるコーティング材。シーリングの際は、該コーティング材(3、3)が塗布乾燥された素地面に、アルミニューム(4,4)を盛りつけたものを重ね合わせて400〜450℃まで加熱、または、銀−錫ハンダ(4,4)を盛りつけたものを重ね合わせて220〜300℃まで加熱することにより、シーリングを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスのシーリング部にアルミニューム主体の金属で処理を行い、さらにその皮膜上に、鉛を含まない銀−錫ハンダ又はアルミニュームを用いて、接着及びシーリングする、ブラウン管、ペアーガラス、真空容器又はガス封印容器を製作する技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、300℃付近での接着及びシーリングは、鉛を使用したハンダ又は鉛・ガラスフリットが主流であったが環境問題により鉛の使用ができなくなってきている。
【0003】
最近では金属材料として金属シール材にインジウムが使用されるようになった。しかし資源が乏しく高価なために使用が限られている。
【0004】
金属材料に変わるものとして樹脂を使用して接着やシールをする方法が開発されつつあるが、シールに用いると過熱によりガスが発生し,信頼性の高い金属によるシールに代わるには至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
a.環境問題になっている鉛を含んだハンダ及び鉛フリットの使用が困難になってきているがガラス等の接着に無鉛金属を使用する有効な接着方法が開発されていない。
b.有機系接着剤を用いた接着では水分などの発生により電子部品に不具合が発生する。
c.スクリーン印刷による銀コーティングを利用しハンダ付けする方法もあるがハンダの前処理材によりコーティングが破壊されハンダができない。
d.ガラスにスクリーン印刷により作成した銀コーティング材は15μの厚さを超えるとガラスが破損し枠等に採用できない。
e.鍍金によるシールを行う場合、電解槽を使用した電気鍍金を行うため容器内部に水が混入し容器内部に部品を組み込んだ状態でシールできない。
以上のような欠点を解決するために本発明をした。
【問題を解決するための手段】
【0006】
ガラスのシーリング部に一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラス12〜28質量%にアルミニュームの含有量が52〜60質量%、銀の含有量が16〜22質量%であることを特徴としたコーティング材を用いることによりコーティング素地に直接銀−錫ハンダ又はアルミニュームをロウ付けあるいは鍍金できる素材を発明した。
【0007】
ガラス等の両シーリング部にハンダの下地処理として0006に記載したコーティング材を用い、ハンダ作業に用いるフラックスを用いず、その両素地面に2〜5μ程度の厚さに銀−錫ハンダを盛りつけたものを重ね合わせ、250〜300℃まで加熱、金属を溶融させシーリングする。
【0008】
ガラス等の両シーリング部にアルミニュームのロウ付けの下地処理として0006に記載したコーティング材を用い、ロウ付け作業に用いるフラックスを用いず、その両素地面に2〜5μ程度の厚さにアルミニュームを盛りつけたものを重ね合わせ、400〜450℃まで加熱、金属を溶融させシーリングする。
【0009】
ハンダ付けでフラックスを用いる場合、一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラスの硬化によって生じたNaClが酸により分解されポーラス状に腐食されるのを防止するため、その素地面にニッケル・ストライク鍍金を1〜3μ、銀鍍金又は銅鍍金を厚さ10μ以上行う。
【0010】
鍍金した二枚のガラスを重ね合わせ、250〜300℃まで加熱、銀−錫ハンダを用い接着及び密閉する。
【0011】
接合部の材料の機械的強度の補強又は防食を行う場合、ハンダ付けしたガラスのシーリング面に電解槽を使用せずに電気鍍金を行う。鍍金する金属は、電極に脱脂綿等の吸水性の布を巻き、布に高濃度の電解液を含ませ、電極から布を通して電導性の下地表面に電流を流し、下地表面に金属を析出させる。使用する電流は直流、電圧は7〜16ボルト、電流は0.5〜3.0Aである。この鍍金方法を採用することにより容器内部に鍍金液を入れることなく鍍金できる。熱膨張の影響及び下地処理に影響を与えない材質として銀、銅、亜鉛を鍍金材として選定した。
【発明の効果】
【0012】
a.約250℃以下で銀−錫ハンダによる無鉛金属で、ガラスの接着ができるようになったので環境問題が解決した。
b.アルミニュームのロウ付け作業により製品の使用温度範囲が約400℃近辺となりさらにアルミニュームのシーリングにより重量が軽減し、無鉛金属でガラスの接着ができるようになったので環境問題が解決した。
c.樹脂等による有機系接着剤やシリコン系接着剤を使用する必要が無くなったので水分や気泡による不具合が解決した。
d.電解槽を使用しない電気鍍金が行えるため、容器内部に部品を組み込んだ状態で鍍金シール出来るようになった。又、鍍金の材料として銀、銅を使用することで熱膨張係数の違いによるガラスの破損を防止することができる。
e.厚さ0.5mm以上の金属枠の形成が可能になり構造部材の一部として使えるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は発明を実施するための最良の形態を示す断面図である。
ガラス(1,2)のシーリング部に一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラス12〜28質量%にアルミニュームの含有量が52〜60質量%、銀の含有量が16〜22質量%のコーティング材(3、3)を塗布し、220℃で乾燥する。
【0014】
耐熱性が約400℃以下の製品の場合、両素地面(3,3)に1〜3μ程度の厚さにアルミニューム(4、4)を盛りつけたものを重ね合わせ、400〜450℃まで加熱、両材料を熱で溶融させシーリングする。
【0015】
耐熱性が約250℃以下の製品の場合、両素地面(3,3)に1〜3μ程度の厚さに銀−錫ハンダ(4,4)を盛りつけたものを重ね合わせ、250〜300℃まで加熱、両材料を熱で溶融させシーリングする。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0016】
図2は実施例1を示す断面図である。
下地枠の厚さの補正又はハンダ用フラックスを用いる場合、一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラスの硬化によって生じたNaClがフラックスの酸により分解されポーラス状に腐食されるのを防止するため、その素地面(3,3)にニッケル鍍金(5,5)を1〜3μ、銀鍍金又は銅鍍金(6、6)を10μ施した。
【0017】
鍍金した二枚のガラス(1,2)を重ね合わせ、250〜300℃まで加熱、フラックスを用い銀−錫ハンダ(7)でシーリングする。
【0018】
さらに強度的補強又は防食が必要な場合、ハンダ付けしたガラスのシーリング面に電解槽を使用せずに電気鍍金(8)を行う。鍍金する金属は、電極に脱脂綿等の吸水性の布を巻き、布に高濃度の電解液を含ませ、電極から布を通して電導性の下地表面に電流を流し、下地表面に金属を析出させる。使用する電流は直流、電圧は7〜16ボルト、電流は0.5〜3.0Aである。この鍍金方法を採用することにより容器内部に鍍金液を入れることなく鍍金できる。熱膨張の影響及び下地処理に影響を与えない材質として銀、銅、亜鉛を鍍金材として選定した。
【実施例2】
【0019】
図3は実施例2を示す断面図である。
容器(9)の排気用の穴のシーリング部に一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラス12〜28質量%に純アルミニュームの含有量が52〜60質量%、純銀の含有量が16〜22質量%のコーティング材(3)を塗布し、220℃で乾燥する。コーティング厚さについては特に限定はないが厚さが均一であり5〜100μであれば充分である。
穴を塞ぐ事ができる大きさの円盤状ガラス又は金属(10)に必要に応じコーティング材(3)を塗布し、220℃で乾燥する。
容器(9)及び円盤状ガラス又は金属(10)に銀−錫ハンダ(7)を盛り付ける。ハンダ盛りした円盤(10)を重ね、銀−錫ハンダを溶かすため220〜300℃まで加熱、接着を行う。この温度範囲以外でもよいが温度が低すぎるとハンダが溶けにくく、逆に高すぎると材料の酸化や気泡の発生原因となる。
シーリングの方法として銀ロウ付けも行ったが温度が800℃まで上げなければならないためガラスが破損した。
使用したハンダは錫96.5%、銀3.5%から成る組成のものを用いた。配合割合を変えても接着は可能であり銀、錫を主成分とするものなら使用できる。
【実施例3】
【0020】
図4は実施例3を示す断面図である。
ガラス(1)の枠作成部分にコーティング材(3)を塗布し、220℃で乾燥する。電気鍍金(8)を行い最終枠高さが500μになるよう形成させた金属枠付きガラス。コーティング面上に行う鍍金(8)の種類については、ニッケルを下地としてその上に銀又は銅が鍍金材料として使用できることを確認している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 発明を実施するための最良の形態を示す断面図である。
【図2】 実施例1を示す断面図である。
【図3】 実施例2を示す断面図である。
【図4】 実施例3を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1,2 板ガラス
3 コーティング
4 アルミニューム又は銀−錫ハンダ
5 ニッケル鍍金
6 銀又は錫鍍金
7 銀−錫ハンダ
8 電気鍍金
9 容器
10 円盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一液加熱硬化型アルカリ−ケイ酸系ガラスにアルミニューム、及び銀を加えたことを特徴とするコーティング材。
【請求項2】
ガラス等のシーリング部に請求項1に記載したコーティング材を用い、その素地面に銀−錫ハンダ付けしたものを重ね合わせ、加熱し、シーリングしたことを特徴とした容器。
【請求項3】
ガラス等のシーリング部に請求項1に記載したコーティング材を用い、その素地面にアルミニュームでロウ付けしたものを重ね合わせ、加熱し、シーリングしたことを特徴とした容器。
【請求項4】
ガラス等のシーリング部に請求項1に記載したコーティング材を用い、その素地面にニッケル・ストライク鍍金を行い、更にその表面に銀鍍金又は銅鍍金を施したことを特徴とするハンダ用コーティング材又は金属枠材。
【請求項5】
ガラス等のシーリング部に請求項4により下地処理したものを重ね合わせ、銀−錫ハンダにより金属シールしたことを特徴とした容器。
【請求項6】
請求項5により銀−錫ハンダでシーリングした面に鍍金することを特徴とした容器。
【請求項7】
ガラス等のシーリング部に請求項1に記載したコーティング材を用い、請求項2又は請求項3による金属を盛り付けた部分に金属等の枠又は板をハンダ又はロウ付けしたことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−104043(P2006−104043A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318549(P2004−318549)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(502383281)有限会社ソフィアプロダクト (10)
【Fターム(参考)】