説明

金属コーティング

【課題】基材に完全に被覆し、製品の型形成後の分離が容易なコーティング形成方法の提供。
【解決手段】金属コーティングを形成する方法であって:(a)真空状態にあるかあるいは不活性雰囲気を有するチャンバー内において金属イオンを生成するための金属ターゲットにおいてアークを発生させる段階;(b)その上に金属層を形成するための基材上へ金属イオンを被着させる段階;及び(c)前記金属層上に一次金属−気体化合物層および前記一次金属−気体化合物層上に二次金属−気体化合物層を形成するためのチャンバー内の気体の量の調節であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層が異なる気体原子含有量を有する調節の段階を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に金属コーティング(被膜)の作製方法に関する。具体的には、本発明は薄膜金属コーティング、薄膜金属コーティングの作製方法及びコーティングの使用及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱したポリマーあるいはプラスチック液相材料を型の中で冷却して成形し製品が型の形状となることによりポリマー及び他のプラスチック製品を製造することは周知である。非常に一般的に、プラスチック製品用の型は典型的に熱処理鋼で製造される。型の表面を多様なコーティングで処理し、製品が型で形成された後成功裏に分離できることを保証する。周知のコーティングの1つは窒化チタンである。
【0003】
エポキシをベースとしたポリマーの成形においては、このようなポリマーは他のポリマーよりも型の表面に密接に接着する傾向があることが知られている。この接着を軽減するために、型の表面をクロム薄膜層で被覆することが知られている。この層は典型的には電気メッキ技術を用いて被着させ、時には「硬質クロム」層とも呼ばれる。
【0004】
理想的には、硬質クロム層は基材表面に薄くかつ均等に付着しなければならない。しかし、既存の硬質クロムコーティング技術に伴う既知の問題は、コーティングが不均一であり、かつ基材側面の突起、平面及び陥凹の全てを完全に被覆しないことである。これは、基材が型として用いられる場合特に問題となる。
【0005】
不均一なコーティングはかど及び基材面の接合部で発生する電界効果によって発生する。これらの電界効果によって、コーティングが基材の平坦な面よりも基材のかど及び接合部により多く被着すると考えられる。この問題を軽減するための1つの方法は、不均一な被着によって例えばオーバーハングなどによる成形の問題が発生しないように、型の形状を再デザインすることである。しかし、電気メッキの問題を考慮に入れた何らかの具体的な型の再デザインは、時間がかかり困難であるため望ましくない。
【0006】
硬質クロム層に関するもう1つの既知の問題は、他のコーティングよりも接着性が低いにもかかわらず、成形されるポリマーに対するコーティングの粘着性がさらに低いことが望まれることであろう。さらに、電気メッキ法は微小空洞を含んだクロム層を生成する傾向がある。生成した層の密度は、一般的にバルククロムの密度の約70〜80%である。この密度が上昇し、無傷のより平滑なコーティングをもたらすことが望ましいであろう。
【0007】
電気メッキされた硬質クロム層の硬度は、典型的には8から10GPaである。多くの用途にとって高度の上昇が望まれる。
【0008】
型へのクロムコーティングの被着にはスパッタコーティング法も使用することができるが、やはりこれらも開始時あるいは時間の経過と共に許容しがたく粘着性となり、製品を型から抜き出すのに困難を来す不均一で低密度のコーティングをもたらす傾向にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態が1つあるいはそれ以上の上記の問題を克服するか、あるいは少なくとも改善するならば、1つの利点となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様は金属コーティングを形成する方法であって:
(a)実質的に真空状態にあるかあるいは実質的に不活性の雰囲気を有するチャンバー内において金属イオンを生成するための金属ターゲットにおいてアークを発生させる段階;
(b)その上に金属層を形成するための基材(サブストレート)上へ金属イオンを被着(デポジット)させる段階;及び
(c)前記金属層上に一次金属−気体化合物層及び前記一次金属−気体化合物層上に二次金属−気体化合物層を形成するためのチャンバー内の気体の量の調節であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層が異なる気体原子含有量を有する調節の段階を含む方法を提供する。
【0011】
1つの態様において、窒化クロムコーティングを形成する方法であって:
(a)実質的に真空状態にあるかあるいは実質的に不活性の雰囲気を有するチャンバー内にクロムイオンを生成するためのクロム金属ターゲットにおいてアークを発生させる段階;
(b)その上にクロム金属層を形成するための基材上へクロムイオンを被着させる段階;及び
(c) 前記金属クロム層上に一次窒化クロム層及び前記一次窒化クロム層上に二次窒化クロム層を形成するための気体窒素の量の調節であって、前記一次及び二次窒化クロム層が異なる窒素含有量を有する調節の段階を含む方法が提供される。
【0012】
第2の態様は被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供される金属層;及び
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属−気体化合物層と比較して異なる気体原子含有量を有する二次金属−気体化合物層を含む被覆された基材を提供する。
【0013】
1つの実施形態において、被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供されるクロム層;及び
前記クロム層上の一次窒化クロム層;
前記一次窒化クロム層上の二次窒化クロム層であって、前記二次窒化クロム層が前記一次窒化クロム層と比較して異なる窒素含有量を有する二次窒化クロム層を含む被覆された基材が提供される。1つの実施形態において、一次クロム層の窒素含有量は二次窒化クロム層の窒素含有量よりも低い。
【0014】
第3の態様は多重被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供される金属層;及び
前記金属層上に提供される複数の金属−気体化合物層であって、前記複数の金属−気体化合物層のうち少なくとも2つが異なる気体原子含有量を有する金属−気体化合物層を含む多重被覆された基材を提供する。
【0015】
第4の態様はフィルタード・カソーディック・バキューム・アーク(Filtered Cathode Vacuum Arc)法において形成された多重被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供される金属層;及び
前記金属層上に提供される複数の金属−気体化合物層であって、前記複数の金属−気体化合物層のうち少なくとも2つが異なる気体原子含有量を有する金属−気体化合物層を含む多重被覆された基材を提供する。
【0016】
第5の態様は基材のための多重コーティングであって:
金属層;及び
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;及び
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属−気体化合物層と比較して異なる金属原子含有量を有する二次金属−気体化合物層を含む多重コーティングを提供する。
【0017】
第6の態様は基材のためのコーティングであって:
金属層;
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;及び
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属気体化合物層に対して異なる気体原子含有量を有する金属−気体化合物層を含むコーティングを提供する。
【0018】
第7の態様は、第1の態様に従った方法で製造されたコーティングにより被覆された基材を提供する。
【0019】
第8の態様はコーティングで被覆された型であって、前記コーティングが
金属層;
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;及び
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属−気体化合物層に対して異なる気体原子含有量を有する二次金属−気体化合物層を含む型を提供する。
【0020】
第9の態様は多重コーティングで被覆された型であって、前記多重コーティングが
金属層;
前記金属層上に提供される複数の金属−気体化合物層であって、前記複数の金属−気体化合物層のうち少なくとも2つが互いに異なる気体原子含有量を有する金属−気体化合物層を含む型を提供する。
【0021】
(定義)
本明細書で使用する以下の単語及び用語は指示された意味を有する:
【0022】
本明細書で使用する「金属−気体化合物」及びその文法的派生語は、金属原子及び気体原子を含む化合物を指すことを意図している。金属原子は気体原子と直接的に結合することもあれば、他の原子を介して間接的に結合することもある。金属−気体化合物は2つ以上の金属原子及び1つ以上の気体原子を含むこともある。
【0023】
本明細書で使用する用語「気体原子」及びその文法的派生語は、25℃かつ101.3kPaにおける原子あるいは分子の形態において気相となる原子を指すことを意図する。例示的気体原子はその分子形態(N)が25℃かつ101kPaにおいて気相にある窒素(N)を含む。
【0024】
本明細書で使用する用語「気体原子含有量」及びその文法的派生語は、金属−気体化合物における全原子数に対する気体原子の数を指すことを意図している。
【0025】
本明細書で使用する用語「化学量論的金属−気体化合物」及びその文法的派生語は、使用される所与の量の金属原子と理論的に反応する可能性のある気体原子の最大量である気体原子含有量を有する金属−気体化合物を指すことを意図している。例えば、クロム(Cr)と気体窒素(N)との反応が以下の通りである場合:
Cr(s)+1/2N→CrN(s)(1)
(1)において形成された化合物CrNは、Cr1原子に対する化学量論的窒素原子含有量が1である熱力学的平衡にある化学量論的金属化合物である。
【0026】
特に明記しない限り、用語「含むこと」及び「含む」及びその文法的派生語は、列挙された要素を含むが、列挙されていない追加的な要素も含むことをも可能とするような、「オープン」あるいは「包括的」な用語を表すことを意図している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
例示的に、金属コーティング法及び金属コーティング基材の非限定的実施形態をこれより開示する。開示された実施形態は、金属と金属−気体化合物層の交互配置構造に基づいて、コーティング、コーティングを被着させるための方法、及びその使用に関する。開示された実施形態は、フィルタード・カソーディック・バキューム・アーク(FOVA)技術を用いた金属−気体化合物の被着及びその組合せに関する。
【0028】
気体は窒素(N)、酸素(O)、水素(H)、イオウ(S)及びその混合物からなる群よりなる1つあるいはそれ以上の原子を含むことがある。気体は純粋な窒素(N)、水素(H)あるいは酸素(O)などの純粋気体の形態にあることもあれば、その替わりに複数の気体原子を含むこともある。これらの気体原子の例示的分子はアンモニア、窒素酸化物、イオウ酸化物、亜酸化窒素、及び硫化水素を含む。
【0029】
好ましくは、金属−気体化合物は金属と1つあるいはそれ以上の気体原子の化合物である。1つの実施形態においては、気体は窒素でありかつ金属化合物は窒化金属である。他の実施形態においては、金属化合物は金属酸化物、金属硫化物及び水素化金属からなる群から選択される。
【0030】
有利なことに、二次金属−気体化合物層の気体原子含有量と異なる一次金属−気体化合物層の気体原子含有量により2層間のストレスが減少する。有利なことに、一次及び二次金属−気体化合物層は好ましくは化学量論的金属−気体化合物の層よりも低い気体原子含有量を有するため、前記一次及び二次層が化学量論的金属−気体化合物の層に対して厚さの減少、硬度の改善のうち少なくとも一方を有する。一次及び二次金属−気体化合物層は、化学量論的窒化クロムなど他の金属あるいは金属化合物コーティングとの優れた結合を可能とすることもある。
【0031】
1つの実施形態において、この方法は実質的に化学量論的な気体原子と金属原子との比率を有する金属化合物を金属−気体化合物層上に被着させる段階をさらに含むことがある。
【0032】
1つの実施形態において、基材上のコーティングは(a)基材上に形成された金属層、(b)金属層上に形成された一次金属−気体化合物層、及び(c)一次金属−気体化合物層上に形成された二次金属−気体化合物層であって、一次及び二次層の気体原子含有量が異なる交互に並んだ4つの層を含む。1つの実施形態においては、二次層の金属−気体化合物が化学量論的金属−気体化合物である一方で、一次金属−気体化合物層は二次金属−気体化合物よりも低い気体含有量を有してもよい。1つの実施形態においては、当該方法はその上に(b)とは異なる金属−気体化合物のさらなる層を被着させることをさらに含むことがある。第1の金属化合物が、例えば窒化金属であれば第2の化合物は例えば金属酸化物である。
【0033】
他の実施形態においては、基材上にコーティングを提供する方法であって、1つあるいはそれ以上の金属−気体化合物の層が交互配置された複数の金属層を被着させることを含む方法が提供される。この場合も、さらなる化合物の層を金属及び金属−気体化合物と交互配置してもよい。
【0034】
具体的な実施形態におけるコーティングは、FCVAを用いて被着させてもよいので、金属はFCVAにおけるターゲットであるあらゆる金属とすることができる。1つの実施形態においては、金属は元素周期表のIIIB属、IVA属及びVA属及びその合金からなる群から選択してもよい。例示的な金属はクロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)及びジルコニウム(Zr)である。
【0035】
FCVAコーティングは真空チャンバー内で被着されるので、気体を導入して金属化合物層を形成した後例えばチャンバーの連続排気などにより除去する。その結果、被着中のチャンバー内に残留気体が残っているため金属層は全般的に純粋とならならず、金属層の気体含有量は原子数で3%あるいはそれ以下となる。好ましくは、気体含有量は2%あるいはそれ以下である。金属層は少なくとも純度97%、好ましくは純度98%、より好ましくは99%あるいはそれ以上である。
【0036】
金属−気体化合物における気体原子の欠乏は、真空チャンバー内の気体の量を調整することにより発生する。
【0037】
一般的に、金属−気体化合物層の全般的組成は一般式:

で表すことができる(式中、Mは金属化合物層中の1つあるいはそれ以上の金属原子を表し、Gは金属化合物層中の1つあるいはそれ以上の気体原子を表し、xは金属化合物層中の金属原子の分数を表し、yは金属化合物層中の気体原子の分数を表し、かつx+y=1である)。
【0038】
1つの実施形態において、yは0.08から0.35、0.08から0.30、0.08から0.25、0.08から0.2、0.08から0.18、0.08から0.16、0.08から0.15、0.08から0.14、0.08から0.13、0.08から0.12、及び0.08から0.11からなる群から選択される値を有する。1つの実施形態において、xは0.92から0.65、0.92から0.7、0.92から0.75、0.92から0.8、0.92から0.82、0.92から0.84、0.92から0.85、0.92から0.86、0.92から0.87、0.92から0.88及び0.92から0.89からなる群から選択される値である。
【0039】
1つの実施形態において、金属気体化合物中の気体原子の重量百分率は2%から13%、2%から12%、2%から10%、2%から8%、2%から6%、2%から4%、4%から13%、6%から13%、8%から13%、10%から13%、及び12%から13%からなる群から選択され、残りはほとんど金属原子である。
【0040】
1つの実施形態において、以下のCrのようにMはクロム(Cr)、Gは窒素(N)である。化学量論的熱力学的平衡化合物CrNについては、0についてのxとyの化学量論的熱力学的平衡量がx=0.5かつy=0.5であるため、上に開示された全ての範囲は窒素欠乏であることが認識されている。他の実施形態においては、化学量論的熱力学的平衡化合物CrNであり、上に開示された範囲はxが2/3未満でありかつyが1/3であるため窒素欠乏となるであろう。他の例示的金属−気体化合物は:(a)TiNに対して気体原子欠乏であるTi;(b)(TiAl)Nに対して気体原子欠乏である(TiAl);(c)TaNに対して気体原子欠乏であるTa;(d)TiOに対して気体原子欠乏であるTiを含む。
【0041】
開示された実施形態のコーティングは、例えばディスクの型に用いる硬鋼などの鉄基材上に被着させ、さらに電気メッキしたクロムコーティングと比較するとき硬度の改善及び接着度の改善(すなわち接着度の減少)を示すことが確認されている。金属と金属−気体化合物層の組合せによりこれらの性質を得ることができる。理論的には結合を望んでいない一方で、金属及び金属−気体化合物層はそれぞれ充分に薄いので、コーティングが金属層の格子及び金属−気体化合物の格子を効果的に含み、生成する格子の組合せが本明細書に記載の改善された性質をもたらすと考えられる。硬度及び高接着試験において、以下の実施例において作成されたクロム/窒化クロムコーティングは既知の電気メッキ硬質クロム型のコーティングに好ましく匹敵した。
【0042】
既知の硬質クロムコーティングは通常厚さ3ミクロンであるが、本発明のコーティングは密度が高く均一であることが有益に確認され、かつこれよりも薄くすることができ、厚さが1ミクロンに過ぎない場合でも硬度の改善及び抗接着をもたらす。本発明のコーティングの層は、典型的には独立に範囲0.3〜6nm(3〜60オングストローム)、特に0.5〜4nm(5〜40オングストローム)、より好ましくは0.8〜25nm(8〜25オングストローム)の厚さを有する。1つの実施例のクロム/窒化クロムコーティングは、約1nm(10オングストローム)のクロム層及び約2nm(20オングストローム)の窒化クロム層を有する。
【0043】
実施例の方法において用いられている製造法は、典型的には例えば8nm:20nm、8nm:18nm,8nm:15nm、8nm:14nm、8nm:12nm、8nm:11nm、8nm:10nm、20nm:8nm、18nm:8nm、16nm:8nm、14nm:8nm、12nm:8nmのなどの金属:金属−気体化合物厚さ比率0.8:2、0.8:1.8、0.8:1.5、0.8:1.4、0.8:1.2、0.8:1.1、0.8:1、1:1、2:0.8、1.8:0.8、1.6:0.8、1.4:0.8及び1.2:0.8をもたらすが、製品が異なるとこれらの比率は変化することがある。
【0044】
気体は、金属ターゲット上への金属イオンの被着時にチャンバー内に間欠的に導入されることもあれば、あるいは一定して導入されることもある。チャンバー内に導入される気体の量は真空チャンバー内の気体の分圧を変えることにより調節することができる。金属ターゲット上への金属イオン被着時の真空チャンバーにおける気体の分圧は、0.5〜5×10−4torr(約0.0067〜0.067Pa)、0.8〜2×10−4torr(約0.01〜0.027Pa)、1〜2×10−4torr(約0.013〜0.027Pa)、1.1〜1.8×10−torr(約0.0146〜0.024Pa)、1.2〜1.6×10−4torr(約0.016〜0.02Pa)からなる群より選択される範囲とすることができる。
【0045】
さらにより具体的に開示された実施形態は、基材上に窒化金属コーティングを被着させる方法であって、真空チャンバー内で金属ターゲットにアークを発生させること、これにより金属イオンを生成すること、及び窒素の存在下で金属ターゲット上に金属イオンを被着させることを含み、窒化金属コーティングが原子数で8〜35%の窒素を含むようチャンバー内の窒素分圧が調節されている方法である。
【0046】
これらの実施形態は、全てのコーティングで好まれるFCVA法を使用し、かつ好ましいコーティングはクロムターゲットを用いて作成したクロムを含む。
【0047】
ストレスによってこの種のコーティングが蓄積することがあり、基材をバイアスしてコーティングにおけるストレスを軽減してもよい。この方法は、−600Vから−4,000Vからなる群から選択される範囲内の電圧で基材をバイアスすることを含むことが適切である。
【0048】
組成物及びコーティングした基材もそれ自体で本発明の態様を形成する。従って、本発明は本発明のいずれかの方法により得られたコーティングした基材にも存在する。
【0049】
本発明の具体的な組成物は、複数の窒素−欠乏窒化クロム層と交互に配列あるいは交互配置している複数のクロム層を含み、各層の厚さは独立に0.3〜5nm(3〜50オングストローム)の範囲内である。
【0050】
例えば硬鋼基材上にコーティングした場合などの組成物の試験より、コーティングは少なくとも1.5GPaの硬度及び0.4あるいはそれ以下の摩擦係数を有することが証明される。具体的なクロムベースコーティングについては最高20GPaの硬度も記録されている。本発明のさらなる実施形態は、交互に配列したあるいは交互配置した複数の(a)金属及び(b)異なる気体原子含有量を有する少なくとも2つの金属−気体化合物層を含む。
【0051】
組成物は層化、全般的には多層化することができ、かつ層の厚さは独立に0.3〜5nm(3〜50オングストローム)の範囲とすることができる。
【0052】
FCVA被着法を用いて、クロム/窒素欠乏窒化クロムの高密度コーティングを生成する。従って、さらに開示された実施形態は窒化金属コーティングを含む基材であって、コーティングの密度が窒化金属バルクの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%である基材である。被着及び試験されたコーティングはバルク材料の理論密度の実質的に100%を有することが確認されている。この高い密度はコーティング中の微小空洞が少ないかあるいはさらにほとんどないことを示すので、平坦で接着性のないコーティングが被着されていることを示す。具体的なコーティングは、窒化クロムコーティングを含む基材であって、コーティングが15GPa又はそれ以上の硬度、0.40あるいはそれ以下の摩擦係数及び90度あるいはそれ以上の水接触角を有する基材をもたらす。
【0053】
これらのコーティングの具体的な用途は半導体機器の成形であるため、本発明で製造される具体的な製品は、本発明のいずれかの組成物により被覆されたポリマー成型用の型である。
【0054】
開示されたコーティングを被着するために用いられるFCVA装置は被着チャンバー中のヒーターを含むことがある。ヒーターは型から水分を除去するために使用することがある。被着前に基材表面を清浄及び活性化するためにイオンビーム源も使用することがある。
【0055】
コーティングを被着させる前に、基材上にシード層を被着させることもある。典型的には、シード層はコーティングに用いるものと同じ金属であるため、クロム/窒素−欠乏窒化クロムコーティング向けには、シード層はクロムでありかつ厚さ10〜200nm(100〜2,000オングストローム)、しばしば約100nm(1,000オングストローム)を有することができる。このシード層の上部では、合計の深さが5ミクロンあるいはそれ以下、好ましくは2ミクロンあるいはそれ以下となるようコーティングが被着される。
【0056】
1つの実施形態において、開示されたコーティングは10〜200nmのシード層、200nm〜2,000nmのコーティング、かつその後任意に100nm〜1,000nmの最上層を有することがある。この最上層は典型的には化学量論的窒化クロム層である。
【0057】
1つの実施形態において、コーティングは:(a)クロム金属基盤層;(b)原子数で約5%〜約15%の低い窒素含有量を有する一次窒化クロム層及び前記一次層上に原子数で約15%から約25%の高い窒素含有量を有する二次窒化クロム層を含む中間層、及び任意に(c)化学量論的CrN層を有する。
【0058】
(特性)
開示されたコーティングは約95°の水接触角(具体的に1サンプルより94.82℃と測定される)を有することが確認され、コーティングが比較的疎水性で非接着的特性を有することが示されている。これと比較して、テフロン(登録商標)の水接触角は約120°であるのに対し、既知の硬質クロムコーティングの水接触角は約75°(典型的には70〜80の範囲)である。
【0059】
一般的に、コーティングは当技術分野のそれよりも低い摩耗率を有し、スクラッチ試験により測定した通りの硬さであることを示す。開示されたコーティングは約10−7mm/Nmの摩耗率を示し、これは既知の硬質クロムコーティングについての典型的な値10−5mm/Nmに好ましく匹敵する。
【0060】
抗付着試験においては、硬質クロムを1とする値に正規化するとコーティングは約0.3の値を有することが確認されている。このことは既存のコーティングに比較して接着性が低下していることを示している。1つの適切な抗付着性試験は被験コーティングでコーティングした型表面でのポリマーの成形を含む。次にエジェクタピンを用いて型から製品を取り出し、製品を取り出すのに要した力を測定しベンチマーク面(例:硬鋼)に対して正規化する。従って、開示された実施形態のコーティングについての1未満の値は改善された抗付着性を示す。
【0061】
(バイアス)
以下により詳細に記載する具体的な実施形態において、金属層の被着は−1500ボルト前後、2kHzで20マイクロ秒/パルスでパルス化した基材のバイアスを用いて遂行する。しかしこのバイアスは変動することがある。基材のバイアスを適用することの利点は、バイアスを用いずに作成したコーティングと比較して外力を与えられた場合の生成したコーティングのストレスが低下することが確認されていることである。
【0062】
バイアスは必ずしもコーティングの被着に必要ではないが、好ましい方法は−300V〜−4000V、−300V〜−3000V、−300V〜−2500V、−300V〜−2000V、−300V〜−1500V、−300V〜−1000V、−500V〜−4000V、−1000V〜−4000V、−1500V〜−4000V、−2000V〜−4000V、−2500V〜−4000V及び−3000V〜−4000Vからなる群から選択される範囲における値のバイアスパルスを採用する。1つの具体的な態様においては、バイアスパルスは−800V〜−3000Vである。
【0063】
また以下により詳細に記載する具体的な実施形態において、窒化金属コーティング層の被着は約−2400V、2kHzで20マイクロ秒/パルスでパルス化した基材のバイアスを用いて遂行する。このバイアスも変動することがある。バイアスは好ましくは約−500〜−5000V,好ましくは−1000〜−4000Vでパルス化される。
【0064】
パルス化バイアスの周波数及びパルス持続弛緩も変動することがある。周波数は典型的には0.5〜10kHzでありかつパルス持続時間は典型的には2〜50マイクロ秒である。
【実施例1】
【0065】
(コーティング)
米国特許第6031239号及び欧州特許第0811237号に開示されたFCVA装置であって、その完全な開示が本明細書に組み入れられる開示を、被着(デポジション)チャンバー内の回転式コンベアーに載せた基材上へのクロム/窒素欠乏窒化クロムコーティングの被着に用いた。
【0066】
図1を参照すると、本発明の作成に用いた装置が1として模式的に示されかつ被着チャンバー4において回転式基材ホルダー3上の基材にイオンを被着されるよう配置されたフィルタード・カソーディック・バキューム・アーク2を含み、当該チャンバーはFOVA真空チャンバー2と連続している。基材ホルダー3はモーター3aによって駆動されている。ヒーター5は、例えば被着前に水分を除去するためなどに基材を加熱するために被着チャンバー4内に配置される。窒素供給ライン8は窒素タンク8bよりコントロールバルブ8aを経てチャンバーに窒素を供給する。システムコントローラ6は(i)FCVA2(点線6aで示す);コントロールバルブ8a(点線6bで示す);基材ホルダーを回転させるためのモーター3a及びバイアスユニット7(点線6cで示す)の操作を調節する。導管12a上に提供された放出モニター9は、チャンバー4からの気体アウトプットをモニタリングしてその中の気体窒素のレベルを決定することにより、コントローラ6がコントロールバルブ8aを調節することを可能にする。導管12a上に提供されたポンプ12はチャンバー4内の真空を提供し、かつコントローラによる調節も受ける。
【0067】
この構成においては、基材ホルダーが一定の速度で回転するので金属及び金属化合物層の厚さの比率はそれぞれ整数となる。試験したコーティングにおいては、クロム:窒化クロム化合物層は比率1:2で被着されるが、この比率は変動することがある。
【0068】
被着中、FCVA及び被着チャンバーは連続的に排気されたため、チャンバー内への窒素の導入により窒素分圧及び生成する窒素化物層の窒素含有量が調節された。コントローラ6は標準的立方センチメートル/分、SCCM単位で校正されたマスフローコントローラとして作動した。使用時には、気体窒素を6SCCMで導入したため分圧は約1×10−4torr(−1.33×10−2Pa)となり、同時にこれは理論的に過量の窒素であり、金属イオン反応するのはごく一部の窒素のみであるので、化学量論的窒素よりも低い窒化クロム層の窒素含有量が生成された。
【0069】
FCVAは100A〜180A、好ましくは140A〜180Aの範囲の高電流直流でクロムターゲットを用いて操作した。ターゲットは直径70mmでありかつFCVAのターゲットと被着チャンバー間の導管の直径は200mmであった。回転式ベルトコンベアの直径は700mmであり、0.83rpm(50秒/回転)で回転していた。FCVAはクロム含有層(厚さ約1nm)が被着される50秒間と窒化クロムを含有する層(厚さ約2nm)が被着される100秒間の交互に操作した。金属層の被着中、2kHz、20マイクロ秒/パルスでパルス化して−1500ボルトで基材をバイアスした。
【0070】
最初のクロムシード層は約100nm(1,000オングストローム)の厚さを有して被着された。このあと、真空チャンバーに流量を調節して窒素を導入し、同時に化学量論的CrNよりも低い窒素含有量を有する一次窒化クロム層が被着される。真空ポンプを操作して約10−6torrの真空(約1.33×10−4Pa)を生成し、連続的に作動させて約1%と見積もられる非常に少量の窒素をクロム層に取り込む。一次窒化クロム層は約12%の窒素含有量(すなわちCr0.880.12)を有する。
【0071】
窒化クロム一次層の形成後、真空を低下させて約1.5%と見積もられるより多くの窒素をチャンバーに入れ、これにより窒素をクロム層に取り込んだ。二次窒化クロム層は約17%の窒素含有量(すなわちCr0.830.17)を有した。従って、二次クロム層の窒素含有量は一次クロム層のそれよりも高く、かつ形成された一次及び二次クロム層はいずれも化学量論的CrNに対して窒素欠乏であった。
【0072】
クロム層を交互に被着させるために、気体窒素の導入を停止し、窒素分圧を0.01mtorr(約1.33mPa)あるいはそれ以下まで急速に降下させる。
【0073】
FCVAの導管中に存在するプラズマを約10cmの半径まで30Hzでスキャンし、被着を3時間継続すると、コーティングの厚さは約1オングストローム/秒の被着速度に相当する0.8ミクロンとなる。その後、窒素欠乏窒化クロムの最上層300nmが多重コーティングの上に被着された。
【0074】
コーティングは以下の特性を有することが確認された:
厚さ 1ミクロン
水接触角 94.82°
摩耗率 10−mm/Nm
摩擦係数 0.20
硬度 20GPa
抗接着試験 0.3(当該試験における硬質クロムについての値を1として正規化)
【0075】
(抗接着試験)
図2及び図3を参照すると、エポキシコーティングポリマー20を(1)上述の実施例に従って作成したコーティング、あるいは(2)当技術分野の硬質クロム23でコーティングした鋼の表面22に対して型21で成形した。鋼の表面は中央部のエジェクタピン24を伴うディスクの形態にあり、ピンの末端はコーティングの上面25と実質的に同じ高さであった。整形後、上の型部材を取り外し(図3参照)、成形した製品をコーティングしたスチールディスク上に載せるかあるいは付着させておく。成形した製品を面から取り外すためにエジェクタピンに加える必要のある力を測定し、硬質スチールの表面から取り外すために要する力を1として正規化した。この試験を用いると、本発明のコーティングは1/3の値を有し、当該コーティングが硬質クロムコーティングと比較して接着性が低下したことを示した。
【実施例2】
【0076】
実施例1の装置、かつこの実施例では窒素含有量が化学量論的CrNよりも低い複数の窒化クロム化合物層をCr金属上に連続して重ねる以外は同じ条件下で他のコーティングを形成した。図4を参照すると、当該コーティングは(a)クロム(Cr)金属の底層(q);(b)化学量論的窒化クロム(CrN)よりも窒素含有量が低い複数の窒化クロム層を含む中間層;及び(c)化学量論的窒化クロム(CrN)最上層より構成される。
【0077】
Cr底層qは真空下で金属基材(Substrate)上に被着されて0.1μmの層を形成した。
【0078】
中間層Pは原子数で約5%から約15%の窒素含有量を由有する複数のn枚の窒化クロム層からなる低窒素副層(L)を含んだ。副層Lを連続的に形成すると同時に、チャンバー4内の窒素含有量を0.8×10−4torrから1×10−4torr(1.066×10−2Paから1.33×10−2Pa)まで連続的に増加させて副層(L)内の各層の窒素含有量を連続的に高めた。副層(L)の形成された層1,2,3,4...nは実質的に以下の通りであった:Cr(1−X1)X1=Cr0.950.5;Cr(l−X2)X2=Cr0.970.03;Cr(1−X3)X3=Cr0.90.1;Cr(1−X4)X4=Cr0.890.11;...Cr(1−Xn)Xn=Cr0.850.15。 中間層Pは原子数で約15%から約25%の窒素含有量を由有する複数のm枚の窒化クロム層からなる高窒素副層(H)も含んだ。副層Hを連続的に形成すると同時に、チャンバー4内の窒素含有量を1×10−4torrから1.3×10−4torr(1.33×10−2Paから1.73×10−2Pa)まで連続的に増加させて副層(H)内の各層の窒素含有量を連続的に高めた。副層(H)の形成された層1,2,3.4...mは実質的に以下の通りであった:Cr(1−Y1)YlCr0.840.16;Cr(1−Y2)Y2=Cr0.820.18;Cr(1−Y3)Y3=Cr0.80.2;Cr(1−Y4)Y4=Cr0.770.23;...Cr(1−Ym)NYm=Cr0.750.25
【0079】
副層H及び副層Lの各層は約0.1nmの厚さを有し、最終的には合計の厚さ0.9ミクロンを有する中間層Pを形成する。
【0080】
化学量論的窒化クロムCrNの最上層Z(Z)は厚さ0.5μmを有し、窒素分圧を1.4×10−4torr(1.866×10.2Pa)まで高めることにより形成した。従ってコーティングの合計の厚さは1.5μmであった。
【0081】
生成した薄膜コーティングはコーティング層におけるストレスの低下を伴う接着性の低下、良好な高度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
開示された実施形態のコーティングはプラスチック材料、特にエポキシを含むプラスチックの成型に使用される金型に硬く、非接着性のコーティングを提供する上で特に有用である。しかし、コーティングはゴム及び幅広い他のポリマーの成型用の型を含む幅広い数の用途に使用することができる。コーティングはソースパンや他の調理器具などの家庭用品に適用することができ、かつやかんや他の水加熱器具などの発熱体に適用することができる。被着は必ずしも基材のバイアスの使用を必要としないので、コーティングをガラス及びプラスチック上にも被着させることができる。
【0083】
窒化金属多層コーティングは化学量論的窒化金属と比較して低い窒素含有量を有し、良好な硬度を有すると同時に化学量論的窒化金属のコーティングと比較してストレスの低いコーティングを生成する。
【0084】
開示された方法は、硬質クロム層を生成するための既知の電気メッキ技術の有用な選択肢を提供することが認められるであろう。さらに、開示された方法は基材表面に薄くかつ均等に被着されることのできる硬質クロム層を提供する。従って、開示された方法は不均一なコーティング及び基質側面にへこみをもたらす既存の硬質クロムコーティング技術に関連する問題を克服する。
【0085】
開示された方法は既知の電気メッキ技術よりも高い硬度を有する薄膜コーティングをもたらすことが認識されるであろう。
【0086】
前述の開示を読んだ後で本発明の趣旨及び範囲を離れることなく本発明の多様な他の変法及び変更が当業者に明らかになり、かつこのような変法及び変更は全て付属の請求項の範囲内で発生することが明らかになるであろう。付属の図面は開示された実施形態を例示し、かつ開示された実施形態の原理を説明する役割を果たす。しかし、図面は例示の目的のためにのみ意図され、本発明の限度の定義としてではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】開示された実施形態に従って基材をコーティングするために用いるFCVA装置のスキーム図である。
【図2】抗付着試験装置において型に形成されたポリマー基材に接着している開示された方法で型に形成された窒化クロムコーティングあるいは先行技術の硬質クロムコーティングを示す。
【図3】抗付着試験装置において図4の型より取り出されたポリマー基材に接着している開示された方法で形成された窒化クロムコーティングあるいは先行技術の硬質クロムコーティングを示す。
【図4】他の開示された実施形態で形成された多重コーティングの例示的実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コーティングを形成する方法であって:
(a)実質的に真空状態にあるかあるいは実質的に不活性の雰囲気を有するチャンバー内において金属イオンを生成するための金属ターゲットにおいてアークを発生させる段階;
(b)その上に金属層を形成するための基材上へ金属イオンを被着させる段階;及び
(c)前記金属層上に一次金属−気体化合物層及び前記一次金属−気体化合物層上に二次金属−気体化合物を形成するためのチャンバー内の気体の量の調節であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層が異なる気体原子含有量を有する調節の段階を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって:
(d)前記二次金属−気体化合物層の上に1つあるいはそれ以上の追加的金属−気体化合物層を被着させる段階を含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記1つあるいはそれ以上の追加的金属−気体化合物層の気体原子含有量が前記第1及び第2の金属−気体化合物層の少なくとも一方と異なる方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記一次層の気体原子含有量が前記二次層の気体原子含有量よりも低い方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって:
(e)窒素(N)、酸素(O)、水素(H)、イオウ(S)及びその混合物からなる群から選択される原子を含む前記気体を選択する段階を含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって:
(f)窒素(N)、酸素(O)、水素(H)、窒素酸化物、酸化イオウ、硫化水素、アンモニア(NH)及びその混合物からなる群から気体を選択する段階を含む方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって:
(g)窒化金属、金属イミド、金属アミド、金属酸化物、水素化金属及び金属硫化物からなる群から金属−気体化合物を選択する段階を含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって:
(h)元素周期表のIIIB属、IVA属及びVA属からなる群から金属を選択する段階を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって:
(h1)クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)、及びジルコニウム(Zr)からなる群から金属を選択する段階を含む方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層の少なくとも一方の全般的な組成が一般式:

によって表される方法(式中、
Mは金属化合物層の1つあるいはそれ以上の金属原子を表し;
Gは金属化合物層の1つあるいはそれ以上の気体原子を表し;
xは金属化合物層中の金属原子の分数を表し;
yは金属化合物層中の気体原子の分数を表し;かつ
x+y=1)。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって:
(i)前記yの値を0.08から0.35、0.08から0.30、0.08から0.25、0.08から0.2、0.08から0.18、0.08から0.16、0.08から0.15、0.08から0.14、0.08から0.13、0.08から0.12、及び0.08から0.11からなる群から選択する段階を含む方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって:
(j)前記xの値を0.92から0.65、0.92から0.7、0.92から0.75、0.92から0.8、0.92から0.82、0.92から0.84、0.92から0.85、0.92から0.86、0.92から0.87、0.92から0.88及び0.92から0.89からなる群から選択する段階を含む方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって:
(k)Cr;Ti;(TiAl);Ta;及びTiからなる群からMを選択する段階を含む方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層の少なくとも一方が0.3nmから6nm(3〜60オングストローム)の厚さを有する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、前記の調節の段階(c)が:
(c1)真空チャンバー内の気体分圧を調節する段階を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記の調節の段階が:
(c2)真空チャンバー内の気体分圧を0.5×10−4torrから5×10−4torr(約0.0067Paから0.067Pa)の範囲内に設定する段階を含む方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって:
(l)基材をバイアスする段階を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記のバイアスの段階(l)が:
(l1)基材を300Vから−4000Vの範囲でバイアスする段階を含む方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって:
(m)金属としてクロムを選択する段階;および
(n)金属−気体化合物として窒化クロムを選択する段階を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって:
(o)原子数による前記一次窒化クロム層の気体窒素原子含有量を8%から35%、8%から30%、9%から20%及び8%から16%からなる群から選択する段階を含む方法。
【請求項21】
被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供される金属層;
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;及び
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属−気体化合物層と比較して異なる気体原子含有量を有する二次金属−気体化合物層を含む基材。
【請求項22】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記二次金属−気体化合物層の上に1つあるいはそれ以上の追加的金属−気体化合物層をさらに含む基材。
【請求項23】
請求項22に記載の被覆された基材であって、前記1つあるいはそれ以上の追加的金属−気体化合物層の気体原子含有量が、前記第1及び第2の金属−気体化合物層の少なくとも一方と異なる基材。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、前記一次層の気体原子含有量が前記二次層の気体原子含有量よりも低い方法。
【請求項25】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記金属−気体化合物が窒素(N)、酸素(O)、水素(H)およびイオウ(S)からなる群から選択される気体原子を含む基材。
【請求項26】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記金属−気体化合物が窒化金属、金属イミド、金属アミド、金属酸化物、水素化金属及び金属硫化物からなる群から選択される基材。
【請求項27】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記金属が元素周期表のIIIB属、IVA属及びVA属からなる群から選択される基材。
【請求項28】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記金属がクロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びタンタル(Ta)からなる群から選択される気体原子を含む基材。
【請求項29】
請求項21に記載の方法であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層の少なくとも一方の全般的な組成が一般式:

によって表される方法(式中、
Mは金属化合物層の1つあるいはそれ以上の金属原子を表し;
Gは金属化合物層の1つあるいはそれ以上の気体原子を表し;
xは金属化合物層中の金属原子の分数を表し;
yは金属化合物層中の気体原子の分数を表し;かつ
x+y=1)。
【請求項30】
請求項29に記載の被覆された基材であって、前記yの値が0.08から0.35、0.08から0.30、0.08から0.25、0.08から0.2、0.08から0.18、0.08から0.16、0.08から0.15、0.08から0.14、0.08から0.13、0.08から0.12、及び0.08から0.11からなる群から選択される基材。
【請求項31】
請求項29に記載の被覆された基材であって、前記xの値が0.92から0.65、0.92から0.7、0.92から0.75、0.92から0.8、0.92から0.82、0.92から0.84、0.92から0.85、0.92から0.86、0.92から0.87、0.92から0.88及び0.92から0.89からなる群から選択される方法。
【請求項32】
請求項29に記載の被覆された基材であって、前記金属−気体化合物がCr;Ti;(TiAl);Ta;及びTi及びその混合物を含む基材。
【請求項33】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層の少なくとも一方が0.3nmから6nm(3〜60オングストローム)の範囲の厚さを有する方法。
【請求項34】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記金属−気体化合物が窒化クロムである基材。
【請求項35】
請求項34に記載の被覆された基材であって、一次窒化クロム層の原子数による気体窒素原子含有量が8%から35%、8%から30%、9%から20%及び8%から16%からなる群から選択される基材。
【請求項36】
請求項21に記載の被覆された基材であって、前記一次及び二次金属−気体化合物層がフィルタード・カソーディック・バキューム・アーク法によって形成される基材。
【請求項37】
多重被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供される金属層;及び
前記金属層上に提供される複数の金属−気体化合物層であって、前記複数の金属−気体化合物層のうち少なくとも2つが異なる気体原子含有量を有する多重被覆された基材。
【請求項38】
フィルタード・カソーディック・バキューム・アーク法で形成された多重被覆された基材であって:
基材;
基材上に提供される金属層;及び
前記金属層上に提供される複数の金属−気体化合物層であって、前記複数の金属−気体化合物層のうち少なくとも2つが異なる気体原子含有量を有する多重被覆された基材。
【請求項39】
多重被覆された基材であって:
金属層;
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;及び
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属−気体化合物層と比較して異なる気体原子含有量を有する二次金属−気体化合物層を含む多重被覆された基材。
【請求項40】
基材のためのコーティングであって:
金属層;
前記金属層上の一次金属−気体化合物層;及び
前記一次金属−気体化合物層上の二次金属−気体化合物層であって、前記二次金属−気体化合物層が前記第1の金属−気体化合物層と比較して異なる気体原子含有量を有する二次金属−気体化合物層を含む基材のためのコーティング。
【請求項41】
請求項40に記載のコーティングであって、前記金属−気体化合物層と交互に重なったあるいは交互に配置された複数の金属層を含むコーティング。
【請求項42】
請求項40に記載のコーティングで被覆された基材。
【請求項43】
請求項40に記載のコーティングで被覆された型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−77494(P2007−77494A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−215033(P2006−215033)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(504013214)ナノフィルム テクノロジーズ インターナショナル ピーティーイー リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NANOFILM TECHNOLOGIES INTERNATIONAL PTE LTD
【Fターム(参考)】