説明

金属ナノ粒子、それを含む触媒及びアルキン化合物の水素化方法

【課題】 凝集保護材が金属ナノ粒子に強固に結合することなく、ナノ粒子の活性点が凝集保護材で塞がれない、アルキン化合物またはアルケン化合物を凝集保護材を有する各種金属ナノ粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤と、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が1種の場合はPdを除く)と、還元剤を反応させて金属ナノ粒子を製造する。また、上記方法により製造した金属ナノ粒子を触媒として用い、水素又は水素を供与する化合物の存在下、反応基質であるアルキン化合物を水素化した、アルカン化合物またはアルケン化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化触媒や機能性材料として有用な金属ナノ粒子、それを含む触媒、ならびに、当該触媒を用いたアルキン化合物の水素化方法によるアルケン化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金やパラジウムなどの金属ナノ粒子は、単独または担体などに担持した形態で各種のセンサーやペースト剤等の機能性材料、医療用の免疫反応を利用した検査用試薬の基材、有機合成反応や排ガス処理における触媒として幅広く応用されており、産業上の有用性はますます高まりつつある。特に、金属ナノ粒子の大きな比表面積を生かし、触媒としての応用研究が盛んに行われているが、ナノ粒子の粒径が小さいほど、比表面積が増大し触媒活性は高まるため、粒径が小さく揃った金属ナノ粒子の製造方法が種々検討されている。
【0003】
しかし、金属ナノ粒子は粒径が小さくなるほど高い表面エネルギーを有するため凝集を起こしやすくなり、これを防ぐ目的でその調製時に凝集保護剤(保護剤や、保護コロイドとも呼称される)の添加が必須である。凝集保護剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)など極性基を有するポリマー、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)等のホスフィン類、ドデカンチオール等のチオール類、並びに界面活性剤、有機酸塩、アンモニウム塩、及びイミダゾリウム塩などイオン性液体等のイオン種などが広く用いられており、N、P、及びS原子を有する含ヘテロ化合物が好適に用いられている。これらの凝集保護剤は、金属ナノ粒子の表面に強固に結合することにより、効果的に凝集を防ぐほか、粒径の小さなナノ粒子を調製できるため汎用されている。したがって、一般的には、水溶液中にて前記凝集保護剤の存在下、金属ハロゲン化物と還元剤の反応によってビルドアップ法で金属ナノ粒子を製造する手法が広く行われている(たとえば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、凝集保護剤が金属ナノ粒子と強固に結合することは、金属ナノ粒子を触媒として利用する場合に、活性点が凝集保護剤で塞がれるため、触媒活性が低下する問題を生起させていた。この問題を解決する手段として、保護効果の弱い凝集保護剤であるアスコルビン酸、エリソルビン酸などの有機酸や、テトラブチルアンモニウムなどの塩を用いた金属ナノ粒子が合成されている(たとえば特許文献2、3)。しかしこれらの凝集保護剤の保護効果は極端に低く、短時間のうちにナノ粒子の凝集が一部進行してゆくほか、生成するナノ粒子の粒径が大きめとなる欠点があった。
【0005】
また、N、P、及びS原子を含む凝集保護剤を有する金属ナノ粒子を機能性材料として用いる場合には、ヘテロ原子が含まれることによるデメリットが存在し、例えば金属ナノ粒子をペースト剤として用いる場合には、成膜後に凝集保護剤が難揮発性のため残留する虞があった。
【特許文献1】特開2004−263222号公報
【特許文献2】特開平6−73412号公報
【特許文献3】特開2002−1095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、凝集保護剤が金属ナノ粒子に強固に結合することなく、ナノ粒子の活性点が凝集保護剤で塞がれない、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を有する各種金属ナノ粒子を提供することを目的の一つとする。また、これらのナノ粒子を含む触媒を提供することを目的の一つとする。また、この触媒を用いたアルケン化合物またはアルカン化合物の製法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは新規なナノ粒子の開発を目的として鋭意検討を行ったところ、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を有する、新規なRu、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属ナノ粒子(ただし、Pdナノ粒子の場合を除く。)を見出すとともに、これらを含む触媒がアルキン化合物またはアルケン化合物の生成を高速度で進め、安価で優れた触媒となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤と、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が一種類の場合はPdを除く。)と、還元剤を反応させる、金属ナノ粒子の製造方法を提供し、
【0009】
さらに、還元性基を有するアルキン化合物または還元性基を有するアルケニル化合物を含む凝集保護剤と、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が一種類の場合はPdを除く。)を反応させる、金属ナノ粒子の製造方法を提供し、
【0010】
さらに、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を有する、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属ナノ粒子(ただし、Pdナノ粒子の場合を除く。)を提供し、
さらに、上記記載の金属ナノ粒子を含む、触媒を提供し、
【0011】
さらに、上記記載の金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤とを含む、触媒を提供し、
さらに、上記記載の触媒を用いて、水素又は水素を供与する化合物の存在下、反応基質であるアルキン化合物またはアルケン化合物を水素化する、アルケン化合物またはアルカン化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属ナノ粒子は、各ナノ粒子が凝集するのを防止するため、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を有していることが特徴であり、これまで全く知られていなかった。本発明の金属ナノ粒子は、凝集保護剤と金属原子の結合が強くないため、ナノ粒子の活性点が塞がれず、触媒として高い活性を発現することができるなど、優れた性能を有している。そのため、本発明の金属ナノ粒子を含む触媒は、少量で高速な触媒反応を進めることができる。特に、アルキン化合物またはアルケン化合物の水素化においては、アルケン化合物および/またはアルカン化合物を得ることができ、選択的にシスアルケン化合物を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の金属ナノ粒子の製造方法は、典型的には、不活性ガス雰囲気下、反応容器にRu、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が一種類の場合はPdを除く。)を加え、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を添加した後に、攪拌しながら反応溶媒を加え、還元剤を徐々に加えて更に攪拌することにより行う。金属ナノ粒子が生成すれば、上記化合物の添加順序は問わない。反応が進むにつれて反応液の色調は徐々に濃茶褐色〜濃赤褐色を呈してくるので、この色の変化により金属ナノ粒子の生成を確認することができる。
【0014】
本発明における凝集保護剤は、アルキン化合物またはアルケン化合物を含む保護剤である。本発明の効果を奏する限り、PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、TOPO、トリオクチルホスフィン(TOP)、ドデカンチオール、クエン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩、イミダゾリウム塩などの公知の凝集保護剤等、他の物質を含んでいてもよい。
【0015】
凝集保護剤に含まれるアルキン化合物としては、内部アルキン及び末端アルキンの何れも用いることができるが、より凝集保護効果がある内部アルキン化合物が好ましい。アルキン化合物としては、炭素数2から25のアルキン化合物が挙げられる。取扱いの観点からは、炭素数4から20のアルキン化合物が好ましく、室温付近(20℃)で液体であるアルキン化合物がより好ましい。かかるアルキン化合物は、生成したナノ粒子が本発明の効果を奏すれば、化合物中に種々の官能基、たとえば、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセテート基、ニトロ基などを有していてもよい。
【0016】
具体的な化合物としては、2−ブチン、2−ペンチン、2−ヘキシン、3−ヘキシン、2−ヘプチン、3−ヘプチン、2−オクチン、3−オクチン、4−オクチン、ジイソプロピルアセチレン、2−ノニン、3−ノニン、4−ノニン、5−ノニン、2−デシン、3−デシン、4−デシン、5−デシン、ジ−tert−ブチルアセチレン、ジフェニルアセチレン、ジベンジルアセチレン、メチル−iso−プロピルアセチレン、メチル−tert−ブチルアセチレン、エチル−iso−プロピルアセチレン、エチル−tert−ブチルアセチレン、n−プロピル−iso−プロピルアセチレン、n−プロピル−tert−ブチルアセチレン、フェニルメチルアセチレン、フェニルエチルアセチレン、フェニル−n−プロピルアセチレン、フェニル−iso−プロピルアセチレン、フェニル−n−ブチルアセチレン、フェニル−tert−ブチルアセチレンなどの炭化水素系アルキンが挙げられる。
【0017】
また、アセチレンジオール、1−プロピン−1−オール、1−プロピン−1,3−ジオール、2−ブチン−1−オール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−ペンチン−1−オール、2−ペンチン−4−オール、2−ペンチン−5−オール、2−ペンチン−1,4−ジオール、2−ペンチン−1,5−ジオール、2−ヘキシン−1−オール、2−ヘキシン−4−オール、2−ヘキシン−5−オール、2−ヘキシン−6−オール、2−ヘキシン−1,4−ジオール、2−ヘキシン−1,5−ジオール、2−ヘキシン−1,6−ジオール、3−ヘキシン−1−オール、3−ヘキシン−2−オール、3−ヘキシン−1,5−ジオール、3−ヘキシン−1,6−ジオール、3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−ヘキシン−2,6−ジオール、2−ヘプチン−1−オール、2−ヘプチン−4−オール、2−ヘプチン−5−オール、2−ヘプチン−6−オール、2−ヘプチン−7−オール、3−ヘプチン−1−オール、3−ヘプチン−2−オール、3−ヘプチン−5−オール、3−ヘプチン−6−オール、3−ヘプチン−7−オール、2−ヘプチン−1,2−ジオール、2−ヘプチン−1,5−ジオール、2−ヘプチン−1,6−ジオール、2−ヘプチン−1,7−ジオール、2−ヘプチン−4,5−ジオール、2−ヘプチン−4,6−ジオール、2−ヘプチン−4,7−ジオール、3−ヘプチン−1,2−ジオール、3−ヘプチン−1,5−ジオール、3−ヘプチン−1,6−ジオール、3−ヘプチン−1,7−ジオール、3−ヘプチン−2,5−ジオール、3−ヘプチン−2,6−ジオール、3−ヘプチン−2,7−ジオール、3−ヘプチン−5,6−ジオール、3−ヘプチン−5,7−ジオール、3−ヘプチン−6,7−ジオール、2−オクチン−1−オール、2−オクチン−4−オール、2−オクチン−5−オール、2−オクチン−6−オール、2−オクチン−7−オール、2−オクチン−8−オール、3−オクチン−1−オール、3−オクチン−2−オール、3−オクチン−5−オール、3−オクチン−6−オール、3−オクチン−7−オール、3−オクチン−8−オール、4−オクチン−1−オール、4−オクチン−2−オール、4−オクチン−3−オール、2−オクチン−1,4−ジオール、2−オクチン−1,5−ジオール、2−オクチン−1,6−ジオール、2−オクチン−1,7−ジオール、2−オクチン−1,8−ジオール、2−オクチン−2,5−ジオール、2−オクチン−2,6−ジオール、2−オクチン−2,7−ジオール、2−オクチン−2,8−ジオール、2−オクチン−4,5−ジオール、2−オクチン−4,6−ジオール、2−オクチン−4,7−ジオール、2−オクチン−4,8−ジオール、2−オクチン−5,6−ジオール、2−オクチン−5,7−ジオール、2−オクチン−5,8−ジオール、2−オクチン−6,7−ジオール、2−オクチン−6,8−ジオール、2−オクチン−7,8−ジオール、3−オクチン−1,2−ジオール、3−オクチン−1,5−ジオール、3−オクチン−1,6−ジオール、3−オクチン−1,7−ジオール、3−オクチン−1,8−ジオール、3−オクチン−2,5−ジオール、3−オクチン−2,6−ジオール、3−オクチン−2,7−ジオール、3−オクチン−2,8−ジオール、3−オクチン−5,6−ジオール、3−オクチン−5,7−ジオール、3−オクチン−5,8−ジオール、3−オクチン−6,7−ジオール、3−オクチン−6,8−ジオール、3−オクチン−7,8−ジオール、4−オクチン−1,2−ジオール、4−オクチン−1,3−ジオール、4−オクチン−1,6−ジオール、4−オクチン−1,7−ジオール、4−オクチン−1,8−ジオール、4−オクチン−2,3−ジオール、4−オクチン−2,6−ジオール、4−オクチン−2,7−ジオール、4−オクチン−2,8−ジオール、4−オクチン−3,6−ジオール、4−オクチン−3,7−ジオール、4−オクチン−3,8−ジオール等のアルキニルアルコールが挙げられる。
【0018】
さらに、上記アルキニルアルコールの一部又は全部のOH基がNH基に置換されたアルキニルアミンなどが挙げられる。
アルキン化合物は、金属1モル当たり0.1〜100当量用いることが好ましいが、0.5〜50当量がより好ましく、1〜10当量が最も好ましい。
【0019】
また、凝集保護剤に含まれるアルケン化合物としては、内部アルケン及び末端アルケンの何れも用いることができるが、内部アルケン化合物がより好ましい。アルケン化合物としては、炭素数2から25のアルケン化合物が挙げられる。取扱いの観点からは、炭素数4から20のアルケン化合物が好ましく、室温付近(20℃)で液体であるアルケン化合物がより好ましい。かかるアルケン化合物は、生成したナノ粒子が本発明の効果を奏すれば、化合物中に種々の官能基、たとえば、水酸基、アミノ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセテート基、ニトロ基などを有していてもよい。
【0020】
具体的な化合物としては、2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、2−オクテン、3−オクテン、4−オクテン、ジイソプロピルエチレン、2−ノネン、3−ノネン、4−ノネン、5−ノネン、2−デセン、3−デセン、4−デセン、5−デセン、ジ−tert−ブチルエチレン、ジフェニルエチレン、ジベンジルエチレン、メチル−iso−プロピルエチレン、メチル−tert−ブチルエチレン、エチル−iso−プロピルエチレン、エチル−tert−ブチルエチレン、n−プロピル−iso−プロピルエチレン、n−プロピル−tert−ブチルエチレン、フェニルメチルエチレン、フェニルエチルエチレン、フェニル−n−プロピルエチレン、フェニル−iso−プロピルエチレン、フェニル−n−ブチルエチレン、フェニル−tert−ブチルエチレンなどの炭化水素系アルケンが挙げられる。
【0021】
また、エチレンジオール、1−プロペン−1−オール、1−プロペン−1,3−ジオール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ペンテン−1−オール、2−ペンテン−4−オール、2−ペンテン−5−オール、2−ペンテン−1,4−ジオール、2−ペンテン−1,5−ジオール、2−ヘキセン−1−オール、2−ヘキセン−4−オール、2−ヘキセン−5−オール、2−ヘキセン−6−オール、2−ヘキセン−1,4−ジオール、2−ヘキセン−1,5−ジオール、2−ヘキセン−1,6−ジオール、3−ヘキセン−1−オール、3−ヘキセン−2−オール、3−ヘキセン−1,5−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、3−ヘキセン−2,6−ジオール、2−ヘプテン−1−オール、2−ヘプテン−4−オール、2−ヘプテン−5−オール、2−ヘプテン−6−オール、2−ヘプテン−7−オール、3−ヘプテン−1−オール、3−ヘプテン−2−オール、3−ヘプテン−5−オール、3−ヘプテン−6−オール、3−ヘプテン−7−オール、2−ヘプテン−1,2−ジオール、2−ヘプテン−1,5−ジオール、2−ヘプテン−1,6−ジオール、2−ヘプテン−1,7−ジオール、2−ヘプテン−4,5−ジオール、2−ヘプテン−4,6−ジオール、2−ヘプテン−4,7−ジオール、3−ヘプテン−1,2−ジオール、3−ヘプテン−1,5−ジオール、3−ヘプテン−1,6−ジオール、3−ヘプテン−1,7−ジオール、3−ヘプテン−2,5−ジオール、3−ヘプテン−2,6−ジオール、3−ヘプテン−2,7−ジオール、3−ヘプテン−5,6−ジオール、3−ヘプテン−5,7−ジオール、3−ヘプテン−6,7−ジオール、2−オクテン−1−オール、2−オクテン−4−オール、2−オクテン−5−オール、2−オクテン−6−オール、2−オクテン−7−オール、2−オクテン−8−オール、3−オクテン−1−オール、3−オクテン−2−オール、3−オクテン−5−オール、3−オクテン−6−オール、3−オクテン−7−オール、3−オクテン−8−オール、4−オクテン−1−オール、4−オクテン−2−オール、4−オクテン−3−オール、2−オクテン−1,4−ジオール、2−オクテン−1,5−ジオール、2−オクテン−1,6−ジオール、2−オクテン−1,7−ジオール、2−オクテン−1,8−ジオール、2−オクテン−2,5−ジオール、2−オクテン−2,6−ジオール、2−オクテン−2,7−ジオール、2−オクテン−2,8−ジオール、2−オクテン−4,5−ジオール、2−オクテン−4,6−ジオール、2−オクテン−4,7−ジオール、2−オクテン−4,8−ジオール、2−オクテン−5,6−ジオール、2−オクテン−5,7−ジオール、2−オクテン−5,8−ジオール、2−オクテン−6,7−ジオール、2−オクテン−6,8−ジオール、2−オクテン−7,8−ジオール、3−オクテン−1,2−ジオール、3−オクテン−1,5−ジオール、3−オクテン−1,6−ジオール、3−オクテン−1,7−ジオール、3−オクテン−1,8−ジオール、3−オクテン−2,5−ジオール、3−オクテン−2,6−ジオール、3−オクテン−2,7−ジオール、3−オクテン−2,8−ジオール、3−オクテン−5,6−ジオール、3−オクテン−5,7−ジオール、3−オクテン−5,8−ジオール、3−オクテン−6,7−ジオール、3−オクテン−6,8−ジオール、3−オクテン−7,8−ジオール、4−オクテン−1,2−ジオール、4−オクテン−1,3−ジオール、4−オクテン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,7−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール、4−オクテン−2,3−ジオール、4−オクテン−2,6−ジオール、4−オクテン−2,7−ジオール、4−オクテン−2,8−ジオール、4−オクテン−3,6−ジオール、4−オクテン−3,7−ジオール、4−オクテン−3,8−ジオール等のアルケニルアルコールが挙げられる。
【0022】
さらに、上記アルケニルアルコールの一部又は全部のOH基がNH基に置換されたアルケニルアミンなどが挙げられる。
アルケン化合物は、金属1モル当たり0.1〜100当量用いることが好ましいが、0.5〜50当量がより好ましく、1〜10当量が最も好ましい。
【0023】
本発明のRu、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が一種類の場合はPdを除く。)は、特に限定されないが、下記一般式(1)〜(3)の何れかで表される1種または2種以上の金属化合物又はその多量体が例示される。なお、一般式(1)から(3)の化合物は、1種単独で用いても2種以上組合せて用いることもできるが、1種単独で用いる場合にはPd化合物は除かれる。
【0024】
MX …(1)
(MX−p(Y+P …(2)
(MX+p(Z―P …(3)
(一般式(1)〜(3)中、MはRu、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上を示し(ただし、用いる金属化合物が一種類の場合にはPdを除く。)、Xは各々独立して同じでも異なってもよいアニオン性基、Lは各々独立して同じでも異なってもよい、単座若しくは多座配位子、又は水、Yはカチオン性基、Zはアニオン性基、mは0〜6のいずれかの整数、nは0〜6のいずれかの整数、kは1〜4の何れかの整数、pは1または2の整数を表す。)
【0025】
上記一般式中、アニオン性基Xとしては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン、硫黄、NO、NO、CN、OH、SO、S、アセテート、アセチルアセトン、π−アリル基、プロピオネート基、カルボキシル基、CFCOO基等が挙げられる。
アニオン性基Zとしては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン、硫黄、NO、NO、CN、OH、SO、S、アセテート、アセチルアセトン、π−アリル基、プロピオネート基、カルボキシル基、CFCOO基等が挙げられる。
カチオン性基Yとしては、(NH基、(Li)基、(Na)基、(K)基、[H]基等が挙げられる。
【0026】
上記一般式におけるLとしては、単座配位子、多座配位子、水である。単座および多座配位子の構造は、ヘテロ原子を有する化合物全般のほかアルケンやアルキンなどである。例えばアンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノエタンなどのホスフィン類、前記したアルキン化合物およびアルケン化合物が挙げられる。
【0027】
水以外のこれらの配位子は、金属ナノ粒子が生成した後にアルキン化合物を含む凝集保護剤と共にナノ粒子に一部吸着するものと考えられるため、金属ナノ粒子の用途をよく考慮したうえで、配位子の有無を選択する必要がある。即ち、金属ナノ粒子を水素化触媒として使用する場合には、上記配位子化合物を含まない金属化合物を出発原料として用いたほうが好ましい。
mは0から6、nは0から6、kは1から4、pは1または2を示す。
【0028】
一般式(1)で表される中性金属化合物としては、
RuCl・nHO、RuBr・nHO、[RuCl(p−cymene)]、Ru(methylallyl)(COD)、RuCl(PPh、Co(OAc)・nHO、Co(acac)・nHO、Co(acac)・nHO、CoF、CoF、CoCl・nHO、CoBr・nHO、Co(NO・nHO、Co(ClO・nHO、[RhCl(COD)]、Rh(OAc)、Rh(acac)、RhCl・nHO、RhBr・nHO、Rh(NO・nHO、NiCl・nHO、NiBr・nHO、Ni(OAc)・nHO、NiCl(PPh、NiCl(dppe)、Ni(NO、Ni(ClO・nHO、PdF、PdCl、PdBr、PdI、Pd(OAc)、Pd(NO、Pd(OH)、PdSO、Pd(CN)、PdS、Pd(OCOCF、ビス(アセチルアセトン)パラジウム、アリルパラジウムクロリド、PdCl(NH、PdBr(NH、PdI(NH、Pd(NO(NH、Pd(PhCN)Cl、Pd(CHCN)Cl、(2,2−ビピリジン)パラジウムジクロリド、(1,5−シクロオクタジエン)パラジウムジクロリド、エチレンジアミンパラジウムジクロリド、N,N,N’,N’,−テトラメチルエチレンジアミンパラジウムジクロリド、及び(1,10−フェナントロリン)パラジウムジクロリド、PtCl、PtCl、PtBr、PtI、Pt(CN)、Pt(COD)Br、Pt(PhCN)Cl、Pt(PPhCl、Pt(acac)、Ag(OAc)、AgF、AgF,AgCl、AgBr、AgI、AgCN、AgNO、AgNO、AgClO、AgBF、AuCl・nHO、AuBr・nHO、AuCN、AuI等が挙げられる。
【0029】
一般式(2)で表されるアニオニック化合物としては、 〔PdCl2−(2NH2+、〔Pd(S)4〕2−(2K)2+、〔PdCl2−(2K)2+、〔PdBr2−(2K)2+、〔PdCN2−(2K)2+、〔Pd(NO2−(2K)2+、〔PdCl2−(2Na)2+、〔PdCl2−(2NH2+、〔PdCl2−(2K)2+、〔PdCl2−(2Na)2+、[PtBr2−[2H]2+・nHO、[PtCl2−[2H]2+・nHO、(AuCl(H)・nHO、(AuBr(H)・nHO等が挙げられる。
【0030】
一般式(3)で表されるカチオニック化合物としては[Ni(CHCN)2+(2Cl)2−、 〔Pd(NH2+(2CHCOO)2−、〔Pd(NH2+(2Cl)2−、〔Pd(NH2+(2Br)2−、〔Pd(NH2+(2NO2−、〔Pd(NH2+(PdCl2−、〔Pd(dmf)2+(2Cl)2−、〔Pd(dmf)2+(2BF2−、〔Pd(dmf)2+(2ClO2−、〔Pd(dmf)2+(2PF2−、〔Pd(dmf)2+(2I2−、〔Pd(dmf)2+(2I)2−、〔Pd(dmf)2+(2CFSO2−、〔Pd(dma)2+(2Cl)2−、〔Pd(dma)2+(2BF2−、〔Pd(dma)2+(2ClO2−、〔Pd(dma)2+(2PF2−、〔Pd(dma)2+(2I2−、〔Pd(dma)2+(2I)2−、〔Pd(dma)2+(2CFSO2−、〔Pd(CHCN)2+(2Cl)2−、〔Pd(CHCN)2+(2BF2−、〔Pd(CHCN)2+(2ClO2−、〔Pd(CHCN)2+(2PF2−、〔Pd(CHCN)2+(2I2−、〔Pd(CHCN)2+(2I)2−、〔Pd(CHCN)2+(2CFSO2−、〔Pd(PhCN)2+(2Cl)2−、〔Pd(PhCN)2+(2BF2−、〔Pd(PhCN)2+(2ClO2−、〔Pd(PhCN)2+(2PF2−、〔Pd(PhCN)2+(2I2−、〔Pd(PhCN)2+(2I)2−、及び〔Pd(PhCN)2+(2CFSO2−、[Pt(dmf)Cl2+(2Cl)2−等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる還元剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ボロヒドリド化合物、ボラン化合物、金属水素化物、有機リチウム化合物、アルコール、アルデヒド、ギ酸化合物、水素及びこれらの混合物が挙げられる。具体的には、LiBH、NaBH、KBH、MeNBH、BuNBH、Ca(BH、LiEtBH、ジボラン、LiH、NaH、KH、LiAlH、水素化ジイソブチルアルミニウム、Red−Al、メチルリチウム、ブチルリチウム、ヒドラジン、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ホルムアルデヒド、ギ酸、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0032】
この他、ナノ粒子製造の反応系中で反応溶媒と反応して還元剤を生成させる塩基も用いることができる。かかる塩基は、金属アルコキシド、金属アリールオキシド、水酸化物、アルキル金属化合物、アリール金属化合物、含窒素有機化合物などが挙げられ、具体的には、CHOK、CHCHOK、CHCHCHOK、i−PrOK、t−BuOK、t−AmOK、(CHCHCOK、PhOK、CHONa、CHCHONa、CHCHCHONa、i−PrONa、t−BuONa、t−AmONa、(CHCHCONa、PhONa、CHOLi、CHCHOLi、CHCHCHOLi、i−PrOLi、t−BuOLi、t−AmOLi、(CHCHCOLi、PhOLi、KOH、KCO、NaOH、LiOH、Ca(OH)、Mg(OH)、MeLi、n−BuLi、t−BuLi、PhLi、NH、MeN、MeNH、MeNH、EtN、EtNH、EtNH、(n−Pr)N、(n−Pr)NH、n−PrNH、(i−Pr)NH、i−PrNH、n−ジブチルアミン、n−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、キノリン、ピリジン、ピコリン、DBU(1,8-Diazabicyclo [5,4,0]undec-7-ene)、DABCO(1,4-di-azobicyclo[2,2,2]octane)などが挙げられる。
【0033】
これらのうち、ナノ粒子を効率的に得るためにはボロヒドリド化合物の使用が好ましく、特に、NaBH、KBH、MeNBH、BuNBHが好ましい。塩基を用いる場合には、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のアリールオキシドが好ましく、アルカリ金属として塩基性の高いカリウムを有する化合物がより好ましく、CHOK、t−BuOK、t−AmOK、(CHCHCOK、PhOK等が更に好ましい。
【0034】
還元剤および塩基の使用量は、特に限定されるものではなく、用いる金属化合物の価数と等しい当量を用いることが目安となる。一例として2価金属化合物を用いる場合には、金属化合物1モル当たり1.5〜10当量用いることが好ましく、1.8〜2.5当量用いることが更に好ましい。かかる範囲内であれば、生成した金属ナノ粒子が凝集せず、好ましい。
【0035】
なお、本発明の金属ナノ粒子の製造方法において、還元性基を有するアルキン化合物または還元性基を有するアルケン化合物を含む凝集保護剤を用いる場合、かかる還元性基が還元剤の役割も果たすため、別個に塩基や還元剤を用いなくても金属ナノ粒子を得ることができる。かかる還元性基としては、水酸基、ホルミル基、アミノ基、SH基などが挙げられる。
還元性基を有するアルキン化合物または還元性基を有するアルケン化合物としては、具体的に、アルキニルアルコール、アルケニルアルコール、アルキニルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアルデヒド、アルケニルアルデヒドなどであり、さらに具体的には、前記したアルキニルアルコールやアルケニルアルコールなどである。これら化合物の使用量は、前記アルキン化合物およびアルケン化合物と同様である。
【0036】
本発明の金属ナノ粒子の製造方法に使用可能な溶媒は、水、有機溶媒の何れも用いることができるが、有機溶媒が好ましい。使用する有機溶媒としては極性溶媒及び非極性溶媒の何れも使用可能であるが、極性溶媒が好ましい。極性溶媒としては、例えばアミド系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、含硫黄系溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。また、前記の塩基を用いる場合には、塩基と溶媒が反応して還元剤を反応系中で発生させることのできる構造が好ましい。
【0037】
使用される溶媒としては、アミド系溶媒としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルアセトアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。含硫黄系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。混合溶媒としては、例えばアミド系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
このうち、好ましい溶媒としてはアミド系溶媒であり、DMF及びDMAがナノ粒子を安定化させるため特に好ましい。使用する溶媒の量には特に制限はなく、金属1モル当たり、1〜1000リットル程度を目安とするが、好ましくは10〜100リットルである。
【0038】
金属ナノ粒子の製造方法は、酸素を含まないアルゴン又は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。反応温度は、特に制限はないが、還元剤としてボロヒドリド化合物、ボラン化合物、金属水素化物、有機リチウム化合物を用いる場合には、10〜100℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。アルコール化合物を用いる場合には、適切に反応を進行させるため100℃程度まで加熱してもよい。また、反応時間も、特に制限はないが、0.1〜72時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。
【0039】
かくして得られたアルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を有する、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属ナノ粒子(ただし、Pdナノ粒子の場合を除く。)としては、単元金属ナノ粒子、二元金属ナノ粒子または三元金属ナノ粒子などの多元金属ナノ粒子などが挙げられる。
【0040】
具体的には、単元金属ナノ粒子としては、Ruナノ粒子、Coナノ粒子、Rhナノ粒子、Niナノ粒子、Ptナノ粒子、Osナノ粒子、Agナノ粒子及びAuナノ粒子が挙げられ、二元金属ナノ粒子としては、Ru−Coナノ粒子、Ru−Rhナノ粒子、Ru−Niナノ粒子、Ru−Pdナノ粒子、Ru−Ptナノ粒子、Ru−Agナノ粒子、Ru−Auナノ粒子、Co−Rhナノ粒子、Co−Niナノ粒子、Co−Pdナノ粒子、Co−Ptナノ粒子、Co−Agナノ粒子、Co−Auナノ粒子、Rh−Niナノ粒子、Rh−Pdナノ粒子、Rh−Ptナノ粒子、Rh−Agナノ粒子、Rh−Auナノ粒子、Ni−Pdナノ粒子、Ni−Ptナノ粒子、Ni−Agナノ粒子、Ni−Auナノ粒子、Pd−Ptナノ粒子、Pd−Agナノ粒子、Pd−Auナノ粒子、Pt−Agナノ粒子、Pt−Auナノ粒子、及びAg−Auナノ粒子が挙げられ、三元金属ナノ粒子としては、Ru−Co−Rhナノ粒子、及びPd−Rh−Ruナノ粒子等が挙げられ、多元金属ナノ粒子としては、Ru−Co−Rh−Pdナノ粒子等、複数の金属を含むナノ粒子が挙げられる。
【0041】
これらの二元金属または三元金属ナノ粒子などの多元金属ナノ粒子は、ナノ粒子を構成する各々の金属原子が固溶した合金となっていてもよく、コア−シェル構造を有していても良い。
なお、アルキン化合物、アルケン化合物の具体例は前記同様であり、本明細書ではアルキン化合物はアルキニルアルコール化合物を含む上位概念の用語として用いる。
【0042】
本発明の金属ナノ粒子は、それ自体で有機合成反応の触媒、たとえば、水素化反応を含む還元反応、酸化反応、カップリング反応を含むC−C結合形成反応などの触媒として用いることができ、特に、水素化触媒として利用することができる。より高い触媒活性を得る目的で、または、アルキン化合物の水素化反応において、アルキン化合物からアルケン化合物への部分水素化反応を進行させる目的で、本発明の金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤を組み合わせた触媒を用いることもできる。
【0043】
即ち、アルキン化合物からアルケン化合物への部分水素化反応を目的としたアルキン水素化触媒を得る場合には、金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤を組み合わせた触媒を選定することが望ましい。一般に反応基質として内部アルキン化合物を用いた場合には、異性化反応によりトランスアルケン化合物が生成したり過剰水素化反応によってアルカン化合物が生成したりして高選択的にシスアルケン化合物が得られにくいのに対して、本発明の金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤と組み合わせた触媒は、その内部アルキン化合物のシスアルケン化合物への水素化反応を高選択的に進行させることがある。
【0044】
かかる触媒で用いられる塩基は、前記ナノ粒子製造で用いられる塩基と同義である。また、還元剤は、例えば、ボロヒドリド化合物、及びボラン化合物であり、具体的にはLiBH、NaBH、KBH、MeNBH、BuNBH、Ca(BH、LiEtBH、ジボラン、ジメチルアミン−ボラン錯体、ピリジン−ボラン錯体などが挙げられる。このうち、アルキン化合物の水素化反応において、高選択的にシスアルケンを得ることができるLiBH、NaBH、KBH、BuNBH、MeNBHが好ましい。
なお、本発明の触媒には、本発明のナノ粒子を2種以上含んでいる場合も当然に含まれる。
【0045】
上記の1種類または2種類以上の金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤とを含む触媒は、金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤とを混合することにより得られる。この混合操作は、金属ナノ粒子へ塩基及び/又は還元剤を直接投入して混合してもよいし、金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤を、これらを可溶な溶媒に投入して混合してもよい。また、触媒反応の際に金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤とを投入し混合して反応系中にて触媒を調製してもよい。
【0046】
ここでの塩基及び/又は還元剤の役割は、基質化合物の反応性を向上させることや、アルキン化合物の水素化反応、主に内部アルキン化合物の部分水素化を行う場合に、いったん生成したシスアルケンが再度金属触媒と相互作用して異性化したり過剰に水素化されたりする事を抑制することにある。
塩基と還元剤の含有効果は、ナノ粒子を構成する金属種類や基質構造によって変化するため一概に論ずることはできないが、基質構造中に、還元剤と直接反応を起こすような置換基が含まれていない場合には、還元剤及び/又は塩基を含有させることができる。このような場合には、還元剤び/又は塩基の含有効果を得ることができる。
【0047】
触媒の製造に必要な塩基及び還元剤の使用量は、ナノ粒子を構成する金属の種類、基質構造、基質/触媒(以下、S/C)、塩基、還元剤の種類によって異なる。さらに、基質アルキン中に含まれる不純物によって異なるため、その都度適宜の量を設定すればよいが、触媒に対して1当量以上とすることが好ましい。基質中には酸性成分、ケトン、又は過酸化物等が不純物として含まれていることがあり、基質を精製することによってこれらの不純物の除去を行った場合には、使用量を減ずることができる。
【0048】
本発明のナノ粒子を含む触媒は、かかる触媒を用いた種々の有機合成反応のうち、水素化反応に好ましく用いられ、特に好ましくはアルキン化合物またはアルケン化合物の水素化反応に用いられる。
すなわち、本発明のアルケン化合物またはアルカン化合物の製造方法は、上述した触媒を用いて、反応溶媒中、水素又は水素を供与する化合物の存在下、反応基質であるアルキン化合物またはアルケン化合物を水素化することに行われる。
ここで、反応基質に内部アルキンを用いた場合は、高選択的に対応するシスアルケン化合物を得ることができる。
【0049】
水素化反応が適用可能なアルキン化合物またはアルケン化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、凝集保護剤に含まれるアルキン化合物またはアルケン化合物として既に例示列挙した化合物等が挙げられる。また、触媒も前記したものと同様なものが用いられる。
触媒の使用量は、ナノ粒子を構成する金属の種類、反応基質の種類、反応容器や経済性などによって異なるが、反応基質であるアルキン化合物とのS/Cが10〜100,000で用いることができる。より実用的には、50〜1,000の範囲で用いることが好ましい。なお、本明細書では、S/Cを算出するにあたり、「C」を触媒に含まれる金属量と定義した。
【0050】
本発明のアルキン化合物の水素化方法で使用される溶媒としては、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、配位性溶媒又はこれらの混合溶媒など、適宜なものを用いることができる。プロトン性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコノール、ベンジルアルコールなどのアルコール溶媒及び水又はこれらの混合溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、THFなどのエーテル系溶媒、又はこれらの混合溶媒が挙げられる。配位性溶媒としては、アセトニトリル、DMA、DMF、N−メチルピロリドン、DMSOなどヘテロ原子を含む有機溶媒又はこれらの混合溶媒が挙げられる。このうち、好ましくはエーテル系溶媒、DMF、DMA、及びアルコール溶媒であり、さらに好ましくはTHF、DMF、DMAである。
【0051】
本発明のアルキン化合物の水素化反応で水素を用いる場合、その圧力は1〜100気圧の範囲とするのが好ましく、3〜50気圧の範囲がより好ましい。
本発明のアルキン化合物の水素化反応で用いる、水素を供与する化合物は、具体的には重水素、アルコール、ギ酸、金属ヒドリドが挙げられ、好ましくは重水素または水素が用いられる。かかる化合物の使用量は、アルキン基質に対して大過剰量が好ましい。
【0052】
反応温度は特に限定されないが、−15℃〜100℃とすることができ、経済的には20℃〜40℃とすることが好ましい。反応時間は、使用する水素化触媒の種類、S/C、反応基質の種類、濃度、溶媒、温度、圧力等の諸条件によって異なるが、実施が容易となるよう反応時間を1時間〜10時間程度となるようにS/C等を設定することが望ましい。
【0053】
ところで、基質であるアルキン化合物には、酸性成分、ケトン、過酸化物、金属やイオンなどが不純物として含まれていることがある。これらの不純物は水素化反応を阻害したり、シス選択性を低下させる要因となるため、基質とするアルキン化合物は精製操作を行って不純物を除去したあとに水素化反応に供することが好ましい。
本発明のアルキン化合物の水素化方法においては、反応系内に他の更なる添加物を加えてもよい。
【0054】
本発明のナノ粒子は、有機合成反応用触媒やガス処理用触媒として用いる他、半導体材料、誘電体材料、磁気記録媒体などに用いられる薄膜の前駆体、導電性ペースト剤、燃料電池用電極材料、医療用の免疫反応を利用した検査用試薬の基材などに用いることもできる。
【0055】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、下記の各実施例における反応は、アルゴンガス又は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なった。反応に使用した溶媒は乾燥、脱気したものを用いた。水素化反応に用いた基質は、特記なき場合には1%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄して酸性成分を除去後、蒸留精製したものを用いた。また、アルキン化合物からアルケン化合物への変換率や内部アルキン化合物からシスアルケン化合物への選択率は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定した。GC装置はGC−17A(島津製作所製)を使用し、カラムは内径0.25mm、長さ100mのキャピラリーカラムCP−Sil PONA CB(VARIAN社製)を使用して温度65℃(定温)で測定した。X線回折装置は、RINT2100Ultima/PC(リガク社製)を使用した。
【実施例1】
【0056】
4−オクチンを凝集保護剤とするRuナノ粒子の調製
撹拌子を備えた20mlシュレンク型反応管に、ルテニウム化合物としてRuCl・2.5HO(266.4mg、1.054mmol)を量り取り、アルゴン雰囲気下でDMF(10.5ml)、凝集保護剤として4−オクチン(1.55ml,10.5mmol)を加えて攪拌した。続いて還元剤であるNaBH(79.8mg,2.11mmol,Ruに対して2.0当量)を加えて攪拌すると、反応が開始して溶液の色調が濃茶色に変化していった。この様子は、Ruナノ粒子が生成していることを示すものと考えられる。その後、室温で3時間攪拌し、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=40(deg)付近にRuに由来する回折が認められ、生成した化合物が0価Ruナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は2.5nmと計算された。
【実施例2】
【0057】
4−オクチンを凝集保護剤とするCoナノ粒子の調製
金属化合物としてCoCl・6HOを用いたほかは実施例1と同条件で反応を行い、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=44(deg)付近にCoに由来する回折が認められ、生成した化合物が0価Coナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は3.0nmと計算された。
【実施例3】
【0058】
4−オクチンを凝集保護剤とするRhナノ粒子の調製
金属化合物としてRhCl・2.4HOを用いたほかは実施例1と同条件で反応を行い、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=40(deg)付近にRhに由来する回折が認められ、生成した化合物が0価Rhナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は1.3nmと計算された。
【実施例4】
【0059】
4−オクチンを凝集保護剤とするNiナノ粒子の調製
金属化合物としてNiBr・3HOを用いたほかは実施例1と同条件で反応を行い、濃赤褐色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、測定中に試料の酸化が生起したため明瞭な回折パターンは得られなかったが、NiBrのパターンは認められないうえ、ナノ粒子に特有の濃赤褐色の色調が認められ、Niナノ粒子が生成したものと推定された。
【実施例5】
【0060】
4−オクチンを凝集保護剤とするPtナノ粒子の調製
金属化合物としてPtClを用いたほかは実施例1と同条件で反応を行い、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=39(deg)付近にPtに由来する回折が認められ、生成したナノ粒子が0価Ptナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は1.6nmと計算された。
【実施例6】
【0061】
ジフェニルアセチレンを凝集保護剤とするPtナノ粒子の調製
凝集保護剤としてジフェニルアセチレンを用いたほかは実施例5と同条件で反応を行い、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=38(deg)付近にPtに由来する回折が認められ、生成したナノ粒子が0価Ptナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は2.7nmと計算された。
【実施例7】
【0062】
4−オクチンを凝集保護剤とするAuナノ粒子の調製
金属化合物としてAuClを用いたほかは実施例1と同条件で反応を行い、濃青色のDMF溶液を得た。若干の凝集した粒子が認められた。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=38(deg)、44(deg)、64(deg)、77(deg)、81(deg)付近にAuに由来する回折が認められ、生成した化合物が0価Auナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は11.0nmと計算された。
【実施例8】
【0063】
2−ブチン−1,4−ジオールを凝集保護剤とするAgナノ粒子の調製
撹拌子を備えた20mlシュレンク型反応管に、銀化合物としてAg(OAc)(170.7mg,1.023mmol)を量り取り、アルゴン雰囲気下でDMF(10.2ml)を加えて攪拌した。続いて、還元剤兼凝集保護剤である2−ブチン−1,4−ジオール(881mg,10.23mmol,Agに対して10.0当量)を加えて攪拌すると、反応が開始して溶液の色調が少しずつ濃茶色に変化していった。この様子は、Agナノ粒子が生成していることを示すものと考えられる。その後、室温で12時間攪拌し、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=38(deg)、64(deg)、77(deg)付近にAgに由来する回折が認められ、生成した化合物が0価Agナノ粒子であると同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は13.5nmと計算された。
【実施例9】
【0064】
2−ブチン−1,4−ジオールを凝集保護剤とするRhナノ粒子の調製
金属化合物としてRh(OAc)を用い、反応温度を100℃としたほかは実施例8と同条件で反応を行い、濃赤褐色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、明瞭な回折パターンは得られなかったが、Rh(OAc)のパターンは認められないうえ、ナノ粒子に特有の濃赤褐色の色調が認められ、Rhナノ粒子が生成したものと推定された。
【実施例10】
【0065】
2−ブチン−1,4−ジオールを凝集保護剤とするPd−Rhナノ粒子の調製
撹拌子を備えた20mlシュレンク型反応管に、金属化合物としてPd(OAc)(105mg、0.468mmol)とRh(OAc)(103mg、0.468mmol)を量り取り、アルゴン雰囲気下でDMF(9.4ml)、還元剤兼凝集保護剤である2−ブチン−1,4−ジオール(806mg,9.36mmol,PdとRhの合算値に対して10.0当量)を加えて攪拌すると、反応が開始して溶液の色調が濃茶色に変化していった。この様子は、ナノ粒子が生成していることを示すものと考えられる。その後、100℃で1時間攪拌し、濃茶色のDMF溶液を得た。凝集した粒子は認められなかった。
得られた化合物のX線回折測定を行ったところ、2θ=39.8(deg)、65.3(deg)付近に回折が認められ、ナノ粒子が生成したと同定された。また、回折ピークの半値幅から、結晶径の平均値は2.3nmと計算された。
【実施例11】
【0066】
種々の金属ナノ粒子を触媒として4−オクチンの水素化反応を行った。まず、周囲を30℃に保温した攪拌子を備えた100mlガラス製オートクレーブを、アルゴンガスで置換した。次に、このオートクレーブに、THFを5.0ml、4−オクチンを0.73ml(5.0mmol)、実施例1で得たRuナノ粒子を含むDMF溶液0.50ml(Ru量=50μmol)アルゴン雰囲気下で加えた。ガス導入管を用いてオートクレーブと水素ボンベを接続し、導入管内の空気を2気圧の水素で3回置換した。続いて、8気圧の水素をオートクレーブに導入したのちに2気圧まで注意深く放出する操作を7回繰り返した後、水素圧を8気圧にして溶液を30℃で1時間激しく攪拌した。これにより水素化反応が進行した。変換率及び生成物中のシス−4−オクテンの選択性は、GCにより決定した。主生成物としてシス−4−オクテンのほか、トランス体(トランス−4−オクテン)、位置異性体(トランス−3−オクテン及びシス−2−オクテン等)、過剰水添体(オクタン)が生成した。なお、他の金属ナノ粒子を用いた場合も同様に行った。本実施例の結果を表1に示す。いずれの触媒(金属ナノ粒子)を用いてもアルキン化合物の水素化反応は進行しており、シスアルケンが最大で93.5%の選択性で得られた。
【0067】
【表1】

【実施例12】
【0068】
種々の金属ナノ粒子とボロヒドリド化合物からなる水素化触媒を用いて4−オクチンの水素化を行った。まず、周囲を30℃に保温した攪拌子を備えた100mlガラス製オートクレーブを、アルゴンガスで置換した。次に、このオートクレーブに、THFを5.0ml、BuNBHを64mg(0.25mmol)、4−オクチンを0.73ml(5.0mmol)、実施例1で得たRuナノ粒子を含むDMF溶液0.50ml(Ru量=50μmol)アルゴン雰囲気下で加えた。この操作にてオートクレーブ内で、Ruナノ粒子とBuNBHからなる水素化触媒が調製された。ガス導入管を用いてオートクレーブと水素ボンベを接続し、導入管内の空気を2気圧の水素で3回置換した。続いて、8気圧の水素をオートクレーブに導入したのちに2気圧まで注意深く放出する操作を7回繰り返した後、水素圧を8気圧にして溶液を30℃で激しく攪拌した。これにより水素化反応が進行した。変換率及び生成物中のシス−4−オクテンの選択性は、GCにより決定した。主生成物としてシス−4−オクテンのほか、トランス体(トランス−4−オクテン)、位置異性体(トランス−3−オクテン及びシス−2−オクテン等)、過剰水添体(オクタン)が生成した。なお、他の金属ナノ粒子を用いた場合も同様に行った。本実施例の結果を表2に示す。いずれの触媒(金属ナノ粒子)を用いてもアルキン化合物の水素化反応は進行しており、シスアルケンが最大で96.1%の選択性で得られた。
【0069】
【表2】

【実施例13】
【0070】
実施例4で調製したNiナノ粒子とボロヒドリド化合物からなる水素化触媒を用いて1−ペンチンの水素化を行った。基質として4−オクチンの代わりに1−ペンチンを用いたほかは実施例12と同様に30分間水素化反応を行った。変換率100%で1−ペンテンを主成分とする化合物が得られた。1−ペンテンの選択率は73.1%であり、2−ペンテンが1.1%、ペンタンが25.8%副生した。
【実施例14】
【0071】
実施例4で調製したNiナノ粒子とボロヒドリド化合物からなる水素化触媒を用いて3−ヘキシン−1−オールの水素化を行った。基質として4−オクチンの代わりに3−ヘキシン−1−オールを用いたほかは実施例13と同様に90分間水素化反応を行った。変換率14.0%でシス−3−ヘキセン−1−オールを主成分とする化合物が得られた。シス−3−ヘキセン−1−オールの選択率は98.8%であり、トランス−3−ヘキセン−1−オールが1.2%副生した。
[参考例]
【0072】
Agナノ粒子を用いたAg膜の製造
実施例8で調製したAgナノ粒子を含むDMF溶液を、ガラス板上に塗布し、溶媒及び凝集保護剤を室温で減圧留去した。溶媒及び凝集保護剤を留去した後には、銀白色を呈する薄膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、主に化学産業に利用可能であり、例えば医薬品や農薬の中間体として利用される種々のアルケンを製造する際の触媒に利用することができる。また、各種のセンサーやペースト剤等の機能性材料、医療用の免疫反応を利用した検査用試薬の基材として幅広く利用できる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤と、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が一種類の場合はPdを除く。)と、還元剤を反応させる、金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
還元性基を有するアルキン化合物または還元性基を有するアルケニル化合物を含む凝集保護剤と、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属化合物(ただし、金属化合物が一種類の場合はPdを除く。)を反応させる、金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記還元性基が水酸基である、請求項2に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
アルキン化合物またはアルケン化合物を含む凝集保護剤を有する、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Os、Ag又はAuから選択される1種または2種以上の金属ナノ粒子(ただし、Pdナノ粒子の場合を除く。)。
【請求項5】
前記アルキン化合物またはアルケン化合物が炭素数2〜25の化合物である、請求項4に記載の金属ナノ粒子。
【請求項6】
請求項4または5に記載の金属ナノ粒子を含む、触媒。
【請求項7】
請求項4または5に記載の金属ナノ粒子と塩基及び/又は還元剤とを含む、触媒。
【請求項8】
前記還元剤がボロヒドリド化合物である、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の触媒を用いて、水素又は水素を供与する化合物の存在下、反応基質であるアルキン化合物またはアルケン化合物を水素化する、アルケン化合物またはアルカン化合物の製造方法。
【請求項10】
前記アルキン化合物が内部アルキン化合物である、請求項9に記載のアルケン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2007−100117(P2007−100117A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287439(P2005−287439)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】