説明

金属パターン形成方法、金属パターン、金属コロイド分散液、およびインクジェット記録装置

【課題】特定のコート紙に低温処理でも良好な電気導電性を発現する金属パターン形成方法と、金属コロイド分散液、金属パターン、インクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】金属コロイド、金属コロイドを分散させるための物質、フッ素系界面活性剤、および液媒体を組成分として含有し、金属コロイド以外の組成分の下記記録用媒体への浸透が下記転移量を満たすように調整された金属コロイド分散液を、支持体の一方の面に塗工層を有し、動的走査吸液計で測定される該記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msで2〜35mL/m2であり、接触時間400msで3〜40mL/m2の記録用媒体に付与し、該記録用媒体上に金属コロイドを主成分とする導電性のパターンを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コロイド粒子分散液とそれを使用して特定のコート紙上に導電性の金属パターンを形成する方法とその方法により得られた金属パターンおよび形成方法に用いられる金属コロイド分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリングあるいはメッキにより形成した導電性皮膜をフォトリソグラフィー法で配線パターン化する方法が広く用いられているが、複雑な操作、材料ロス、量産性や製造コスト、廃液処理、環境負荷などの点で問題があった。
このため、近年、銀、銅等のコロイド粒子を配合したペースト、インキ、塗料等を用いて、スクリーン印刷やインクジェット印刷等の手法により基板上に回路や電極のパターンを塗布した後、加熱して金属コロイド粒子を融着させ、微細な電極を形成する技術が注目され検討されており、特にプリント配線基板の製造に応用されつつある。この場合、基板としてはシリコン基板、シリコン酸化膜基板、あるいはプラスチック基板上が一般的である。
【0003】
例えば、金属コロイド溶液をインクジエット方式により、インクジエットインク用受容層が形成された基材(プラスチック、紙、金属、ガラス、セラミック、木材)に塗布して、100℃以下で乾燥し、導電性コ−ティング膜を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この提案の実施例では、銀コロイド粒子、マルチトール、グリセリン、メチルエチルケトンおよび水からなる金属コロイド溶液を用い、インクジエット専用紙にインクジエットプリンターでベタ印字した例が記載されている。
【0004】
また、多孔質基体に可視情報を形成する液体を直接付与して可視情報を形成し、さらにこの基体の一部分に絶縁性液を付与して絶縁層を形成し、その絶縁層上に電気回路を形成する液体を付与して電気回路を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
この提案では、電気回路を形成する液体に関して、具体的な組成や処方の記載はない。また、多孔質基材(紙または布)に直接電気回路を形成する液体を付与するのでなく一旦、絶縁性膜を形成してその上に電気回路を形成している。
【0005】
あるいは、金属微粒子コロイド、炭素数6以下のケトン類、多価アルコール、および水を含むインクジエットインクが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
このインクを用いて基材(例えば、実施例では電子写真用紙使用)面に導電回路が形成できるとされているが、提案の組成のインクでは一般の電子写真用紙を用いた場合にインクの染込みが大きく、きれいな配線パターンが得られにくいという難点がある。
【0006】
さらに、ポリアニオンを対イオンとして含むポリアルキレンジオキシチオフェンの水分散体をインクジエットプリンターにより基質(紙またはプラスチックフィルム)上に導電性構造を印刷する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
本提案における実施例では単に、紙に印刷した、と記載されており、紙質に関して記載されておらず、また、分散体の組成は、ポリアルキレンジオキシチオフェンと水からなるものであり、その他の添加剤を含まないものである(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
上記従来技術では、基材上に水性金属コロイド分散液で印刷すると、一般に、液媒体が乾燥するのに非常に長時間を要するという問題がある。
また、液媒体が蒸発乾燥しても、金属コロイドを液媒体中で安定に分散させるために用いる分散剤が残り、これを介して金属コロイドが結合するために導体化(導電性の発現)が妨げられる。このため、強制的に高温加熱して分散剤を除去し、金属同士を融着させる必要が生じる。このような処理を施すことによって、導電性パターンも不均一になりやすく、精細な電気回路形成が難しくなる。
また、前述のようにインクジェットプリンタでインクなどの液を紙基材に印字する場合には、通常、インクジェット専用紙が用いられている。しかし、インクジェット専用紙の場合、印字品質は高いが水性金属コロイド分散液を用いる場合には、分散液の浸透性が高過ぎる傾向がある。また、インクジェット専用紙は比較的高価である。
一方、コート紙(以降、「商業・出版印刷用塗工紙」と表現することがある。)は安価である上に光沢感があって品質が良く、大量印刷用途として適している媒体であるが、金属コロイド粒子分散液などを用いる場合には、液の浸透性が遅く、金属コロイドと液媒体の分離や乾燥に時間を要する問題がある。すなわち、本発明者らが、コート紙面上に導電性パターンを形成するべくナノ銀インク(金属コロイド粒子分散液)を塗布してみたが、均一なパターンを得るのが困難であった。
【0008】
なお、本出願人は先に、インクジエットヘッドにおけるヘッド板の外側表面上に撥インク性皮膜(フッ素樹脂)を備え、その表面粗さを0.2μm以下とするように構成したインクジエットヘッドとその製造方法を提案した(例えば、特許文献5参照。)。
また、インクジエットヘッドにおけるノズル形成部材の表面にSiO2膜を形成し、そのSiO2膜上にフッ素系撥水層を形成し、そのフッ素系撥水層の膜厚を30Åを超えるように構成したインクジエットヘッドを提案した(例えば、特許文献6参照。)。
上記特許文献5、6の提案は、いずれもインクジエット装置による記録の際に、インクジエットヘッドにおけるインク液の溜まりによる残滓防止、インクおよびワイピングに対する耐久性の向上を目的としたものであり、インク液の性質、例えば、浸透性との関係(その作用、効果)について注目したものではない。したがって、これに関する技術的な記載はない。
【0009】
さらに本出願人は、インクジエットヘッドの基材表面に撥インク膜(シリコーン樹脂またはフッ素樹脂)を形成し、その撥インク膜の開口部近傍における当該開口部の中心線に垂直な平面での断面積が、基材表面から離れるにつれて順次大きくなっていくように構成されたノズル部材を提案した(例えば、特許文献7参照。)。
この提案では、フッ素系界面活性剤を含有するインク(表面張力が20mN/m、35mN/m)を用いた場合、C1(フッ素樹脂)処理ノズル板では撥インク性が得られていない。
【0010】
【特許文献1】特開2004−207558号公報
【特許文献2】特開2005−183805号公報
【特許文献3】特開2004−315650号公報
【特許文献4】特表2002−525390号公報
【特許文献5】特開2003−266699号公報
【特許文献6】特開2005−59255号公報
【特許文献7】特開2006−51808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有する記録用媒体(特定のコート紙)上に金属コロイドからなる導電性のパターンを設ける場合に、速やかに乾燥し、均一に導電性パターンを形成し、しかも低温処理でも良好な電気導電性を発現する金属パターン形成方法とそれに用いる金属コロイド分散液および記録用媒体上に設けられた金属パターン、並びに金属パターンを形成するインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の(1)〜(6)に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
(1):金属コロイド分散液を記録用媒体に付与し、記録用媒体上に金属コロイドからなる導電性のパターンを設ける金属パターン形成方法において、
前記記録用媒体は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有し、動的走査吸液計により測定される該記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msにおいて2〜35ml/m2であり、かつ接触時間400msにおいて3〜40ml/m2であると共に、
前記金属コロイド分散液は、金属コロイド、金属コロイドを分散させるための物質、フッ素系界面活性剤、および液媒体を組成分として含有し、且つ、金属コロイド以外の組成分の前記記録用媒体に対する浸透が前記転移量を満たすように調整され、
前記導電性のパターンは、電気導電性を阻害する残存成分を含まず金属コロイドを主成分とし、低温処理により形成されることを特徴とする金属パターン形成方法である。
【0014】
(2):上記(1)に記載の金属パターン形成方法において、前記金属コロイド分散液を記録用媒体に付与する手段として複数のノズルからなる液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、該液滴吐出ヘッドから金属コロイド分散液を吐出し、記録用媒体上に金属コロイドからなる導電性のパターンを設けることを特徴とする。
【0015】
(3):上記(2)に記載の金属パターン形成方法において、前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル構成部材が、フッ素系化合物からなる撥水層を有することを特徴とする。
【0016】
(4):前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属パターン形成方法により記録用媒体上に導電性のパターンが設けられたことを特徴とする金属パターンである。
【0017】
(5):金属コロイド分散液を、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有し、動的走査吸液計により測定される該記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msにおいて2〜35ml/m2であり、かつ接触時間400msにおいて3〜40ml/m2である記録用媒体に付与し、
該記録用媒体上に、電気導電性を阻害する残存成分を含まず金属コロイドを主成分とする導電性のパターンを設ける金属パターン形成方法において用いられる該金属コロイド分散液であって、
前記金属コロイド分散液は、金属コロイド、金属コロイドを分散させるための物質、フッ素系界面活性剤、および液媒体を組成分として含有し、且つ、金属コロイド以外の組成分の前記記録用媒体に対する浸透が前記転移量を満たすように調整されたものであることを特徴とする金属コロイド分散液である。
【0018】
(6):上記(5)に記載の金属コロイド分散液を収容するインクカートリッジを備え、該インクカートリッジの液滴吐出ヘッドから金属コロイド分散液を記録用媒体上に付与して金属パターンを形成するように構成したことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金属パターン形成方法によれば、記録用媒体上に付与される金属コロイド分散液の金属コロイドのみが媒体表面に残り、金属コロイド以外の組成分は速やかに媒体中に浸透するため短時間で乾燥し、低温で処理しても良好な導電性が得られる。低温処理によるため、均一で精細な金属パターンが得られる。
金属パターン形成方法において、インクジェット記録装置を用い、液滴吐出ヘッドから金属コロイド分散液を記録用媒体上に付与すれば、オンデマンドで金属パターンを形成することができ、多品種少量生産等の多様な生産が可能である。さらに二次元のパターンに限らず、重ね印刷なども可能となる。ノズル構成部材がフッソ系化合物からなる撥水層を備えていれば、本発明で用いる低表面張力の分散液であっても、安定して液滴を吐出することができ、良好な金属パターン形成が維持される。
また、金属コロイド分散液によれば、特定の記録媒体(コート紙:支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有する)に対して、好適な浸透性を有するため、導電性の優れた金属パターンが短時間に得られる。
さらに、本発明の金属パターンによれば、薄型で精細な回路が得られるため、各種機能デバイス用途として応用することが可能である。また、金属パターンのプラズモン吸収による発色を利用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
前述のように本発明における金属パターン形成方法は、金属コロイド分散液を記録用媒体に付与し、記録用媒体上に金属コロイドからなる導電性のパターンを設ける金属パターン形成方法において、
前記記録用媒体は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有し、動的走査吸液計により測定される該記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msにおいて2〜35ml/m2であり、かつ接触時間400msにおいて3〜40ml/m2であると共に、
前記金属コロイド分散液は、金属コロイド、金属コロイドを分散させるための物質、フッ素系界面活性剤、および液媒体を組成分として含有し、且つ、金属コロイド以外の組成分の前記記録用媒体に対する浸透が前記転移量を満たすように調整され、
前記導電性のパターンは、電気導電性を阻害する残存成分を含まず金属コロイドを主成分とし、低温処理により形成されることを特徴とするものである。
【0021】
本発明者らは、特定のコート紙面上に導電性パターンを得る方法として、金属コロイド粒子の分散液にフッ素系界面活性剤を添加することにより、均一なパターンを得ることができ、しかも、界面活性剤を添加しない場合に比べて、導電性に優れており、相対的に低抵抗な導電性のパターンを得ることができることを見出した。本発明によれば、インクジェット装置を用いて紙面上に機能デバイスをオンデマンドで作製することが可能である。
【0022】
本発明における金属コロイド分散液中に含有される金属コロイドは、平均粒子径が1〜100nm程度の金属コロイド粒子であり、金属コロイド分散液の組成分として用いた場合に、本発明で使用する記録用媒体上に形成された金属パターンが低温処理により電気導電性が発現される性質のものであれば特に制約はなく、どのような方法で得られたものでもよい。
【0023】
本発明で使用可能な金属コロイド粒径は、上記のように平均粒子径が1〜100nm程度であるが、特に、15nm程度がより好ましい。
ここで、金属コロイド粒径は、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定した値である。
【0024】
分散液中に含有される金属コロイドの濃度としては、50質量%の高濃度のものから、1質量%程度の低濃度のものでも使用可能である。低温処理での電気伝導度を上げるためには、濃度はむしろ数質量%以下と低い方が有利であった。低濃度とすることにより、分散液の媒体による、金属と他の組成分、所謂ビヒクル(金属コロイドを分散させるための物質やフッ素系界面活性剤)との分離効率が良好になったものと思われる。
【0025】
このような金属コロイド粒子は公知の手法、例えば湿式法により、溶液中で金属化合物(溶媒に溶解した際、金属イオンを生じる化合物)を分散剤の存在下に還元して得ることができる。金属としては、金、銀、ルテニウム、リジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅などが挙げられ、中でも金、銀、白金、パラジウムなどは導電性の観点から好ましいものの例である。
【0026】
例えば、金属化合物をアミン化合物により溶媒中で還元し、これにチオール化合物を添加して粒子表面を修飾して安定化させた金属コロイド粒子(例えば、特開平11−60581号公報)、あるいはメルカプトカルボン酸を金属コロイドの粒子表面に付着させた後、さらにメルカプトカルボン酸エステルを付着させた金属コロイド粒子(例えば、特開2005−179754号公報)、あるいは溶媒中の金属粒子の表面をクエン酸および窒素化合物によって保護された金属コロイド粒子(例えば、特開2004−256757号公報)、あるいはCOOH基、OH基を有する分散剤(クエン酸やリンゴ酸等のイオン性化合物)により安定化した金属コロイド粒子(例えば、特開2005−310703号公報)、あるいは分散剤として高分子顔料(例えば、特開2004−175832号公報)を用いた金属コロイド粒子などが利用でき、精製、処理後の最終生成物としての性質が本発明の要求を阻害しないものであればいずれも使用可能である。なお、前記金属コロイド粒子は一例であって、ここに挙げたものに限定するものではない。
【0027】
本発明の金属コロイド分散液中に含まれる、金属コロイドを分散させるための物質としては、金属コロイドの製造方法によって種々のものが使用される。例えば、限定するものではないが上記ように、チオール化合物、メルカプトカルボン酸、メルカプトカルボン酸エステル、クエン酸、窒素化合物、高分子顔料などが挙げられる。
【0028】
さらに、本発明における金属コロイド分散液には、フッ素系界面活性剤が添加される。フッ素系界面活性剤を加えることにより、金属コロイド分散液の表面張力が著しく低下し、記録媒体〔塗工層を有する紙であり、液の浸透性(転移量)が規定されている〕に付与した場合に、金属コロイド以外の分散液組成分は、前記記録用媒体における転移量をもって速やかに記録用媒体に浸透し、そのため、蒸発が早まり、早く乾燥する。この状況は、例えば、金属コロイド分散液をガラス基板上に付与した場合、分散液が基板上で速やかに均一に広がり、素早く蒸発し、乾燥することからも確認される。この場合、ガラス基板上に親水、疎水のパターンを予め設けておくとさらに効果がある。
なお、本発明におけるフッ素系界面活性剤を含有する金属コロイド分散液は表面張力が極めて低く、測定装置により測定した場合に測定限界以下の表面張力を有するものである。
【0029】
さらに、金属コロイド以外の他の分散液組成分が速やかに記録用媒体に浸透し、記録媒体上には、余分な成分を含まず殆どが金属コロイドからなるパターンが形成されるため、強制的に高温加熱等の処理を要することなく、低温でも十分に導電性が得られ、導電性パターンとすることができる。このため、高温処理による劣化や変形などがなく導電性パターンを均一、かつ精細とすることができ、安定性の高い電気回路形成が可能である。
【0030】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、限定するものではないが、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられ、市販品も使用できる。
【0031】
市販品のフッ素系界面活性剤としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも住友スリーエム社製)、メガファックF−470、F1405、F−474(いずれも大日本インキ化学工業社製)、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれもDuPont社製)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも株式会社ネオス社製)、PF−151N(オムノバ社製)などが挙げられる。
【0032】
一方、金属コロイドの多くを表面に残し、その他の多くの組成分が内部に浸透する記録用媒体に印写すると、前記した表面張力を低下させた活性剤により、金属コロイドは表面に残留し、その他のビヒクルの多くは速やかに内部に浸透する。これは、後述する特定のコート紙で達成できる。この場合、金属コロイド分散液の乾燥速度は上がり、なおかつ、室温においてすでにパターンは黄金色の金属光沢を有し、実際、界面活性剤を入れない場合に比べ、低抵抗化したのが確認できた。絶縁性のビヒクルが内部に浸透し、金属コロイドと分離した結果である。
【0033】
界面活性剤としては、フッ素系のほかシリコーン系界面活性剤もあるが、フッ素系が特に好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては市販品も使用でき、例えば、ポリエーテル変性シリコーン化合物として、KF−618、KF−642、KF643(いずれも信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
なお、本発明における記録液には必要により、pH調整剤、防錆剤等を含有することができる。
【0034】
次に、本発明において用いる記録用媒体、所謂特定のコート紙について説明する。
前述のように記録用媒体としては、金属コロイド分散液が付与された際に、金属コロイドの多くを表面に残し、その他の組成分の多くが内部に速やかに浸透し、それぞれが分離する媒体であることが好ましい。
すなわち、本発明において用いる記録用媒体は、支持体と、支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有するものであり、動的走査吸液計により測定される記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msにおいて2〜35ml/m2であり、かつ接触時間400msにおいて3〜40ml/m2である所謂特定のコート紙である。
例えば、接触時間100msでの純水の転移量が少なすぎると、ビーディングが発生しやすくなり、接触時間400msでの転移量が少なすぎると、乾燥性が不十分となりやすい傾向がある。
【0035】
ここで、前記動的走査吸収液計(dynamic scanning absorptometer;DSA、紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88〜92頁、空閑重則)は、極めて短時間における吸液量を正確に測定できる装置である。前記動的走査吸液計は、(a)吸液の速度をキャピラリー中のメニスカスの移動から直読する、(b)試料を円盤状とし、この上で吸液ヘッドをらせん状に走査する、(c)予め設定したパターンに従って走査速度を自動的に変化させ、1枚の試料で必要な点の数だけ測定を行う、という手順からなる測定方法を自動化したものである。
【0036】
上記評価において紙試料への液体供給ヘッドはテフロン(登録商標)管を介してキャピラリーに接続され、キャピラリー中のメニスカスの位置は光学センサで自動的に読み取られる。具体的には、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水またはインクの転移量を測定する。接触時間100msおよび接触時間400msにおける転移量は、それぞれの接触時間に近隣する接触時間での転移量の測定値から補間により求めることができる。
【0037】
前記コート紙として具体的には、一般に印刷用に使用されている、汎用で市販の印刷用紙、例えば印刷用のオフセットコート紙、カレンダー用紙、カタログ用紙、包装材料、ラベル印刷用紙などの水吸収能力の小さな表面が非多孔質の紙である。
一般の電子写真用紙では吸収性が強く、平滑性がないため使用できない。インク吸収層を表面に有したインクジェット専用紙でも可能であるが表面の平滑性が足らない。特に紙の浸透性(吸収)が非常に速過ぎると金属コロイドと分散体との分離がうまくいかない場合もある。
【0038】
本発明において用いることのできる記録用媒体の具体例として、これに限定するものではないが、下記の記録用紙が挙げられる。
記録用紙(例1):市販のオフセット印刷用塗工紙〔商品名:オーロラコート(日本製紙株式会社製)、坪量=104.7g/m2〕;下記動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の転移量:2.8mL/m2、接触時間400msにおける純水の転移量:3.4mL/m2
記録用紙(例2):市販の電子写真用塗工紙〔商品名:PODグロスコート(王子製紙株式会社製)、坪量=100g/m2〕;下記動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の転移量:3.1mL/m2、接触時間400msにおける純水の転移量:3.5mL/m2
【0039】
<動的走査吸液計による水及びインクの転移量の測定条件>
上記記録用紙(例1)および記録用紙(例2)について、以下のようにして、純水の転移量を測定した。
動的走査吸液計(型式:KS350D、協和精工株式会社製)を用いて、純水の吸収曲線を測定した。吸収曲線は転移量(mL/m2)と接触時間の平方根√(ms)でプロットして一定の傾きを持つ直線とし、内挿により一定時間後の転移量の値を測定した。これらの紙はいずれも本発明の記録媒体として使用可能である。
【0040】
ここで、前記のような支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有する記録用媒体の一般的な作成方法について以下に説明する。
[支持体]
支持体としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木材繊維主体の紙、木材繊維及び合成繊維を主体とした不織布のようなシート状物質などが挙げられる。
【0041】
支持体に使用される内添填料としては、例えば、白色顔料として従来公知の顔料が用いられる。前記白色顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等のような白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等のような有機顔料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
[塗工層]
塗工層は、顔料およびバインダー(結着剤)を含有してなり、さらに必要に応じて、界面活性剤、その他の成分を含有してなる。顔料としては、無機顔料、もしくは無機顔料と有機顔料を併用したものを用いることができる。
前記無機顔料としては、例えば、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、非晶質シリカ、チタンホワイト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クロライトなどが挙げられる。
【0043】
前記カオリンの添加量は、前記バインダー100質量部に対し50質量部以上が好ましい。前記添加量が50質量部未満であると、光沢度において十分な効果が得られないことがある。前記添加量の上限は特に制限はないが、カオリンの流動性、特に高せん断力下での増粘性を考慮すると、塗工適性の点から、90質量部以下がより好ましい。
【0044】
前記有機顔料としては、例えば、スチレン−アクリル共重合体粒子、スチレン−ブタジエン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子等の水溶性ディスパージョンがある。これら有機顔料は2種以上が混合されてもよい。
有機顔料の添加量は、前記塗工層の全顔料100質量部に対し2〜20質量部が好ましい。前記有機顔料は、光沢発現性に優れていることと、その比重が無機顔料と比べて小さいことから、嵩高く、高光沢で、表面被覆性の良好な塗工層を得ることができる。
【0045】
前記バインダーとしては、水性樹脂を使用するのが好ましい。前記水性樹脂としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂の少なくともいずれかを好適に用いられる。
前記水性樹脂の添加量は、前記顔料100質量部に対し、2〜100質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。前記水性樹脂の添加量は記録用メディアの吸液特性が所望の範囲に入るように決定される。
【0046】
前記塗工層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記支持体上に塗工層液を含浸または塗布する方法により行うことができる。
前記塗工層液の含浸または塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレス、ブレードコーター、ロッドコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーターなど各種塗工機で塗工することも可能であるが、コストの点から、抄紙機に設置されているコンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレスなどで含浸または付着させ、オンマシンで仕上げてもよい。
【0047】
前記塗工層液の付着量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、固形分で、0.5〜20g/m2が好ましく、1〜15g/m2がより好ましい。
前記含浸または塗布の後、必要に応じて乾燥させてもよく、この場合の乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜250℃程度が好ましい。
【0048】
前記記録用媒体(以下、「記録用メディア」と表現することがある。)は、さらに支持体の裏面にバック層、支持体と塗工層との間、また、支持体とバック層間にその他の層を形成してもよく、塗工層上に保護層を設けることもできる。これらの各層は単層であっても複数層であってもよい。
前記記録用メディアは、吸液特性が上記本発明の範囲であれば、インクジェット記録用メディアの他、市販のオフセット印刷用コート紙、グラビア印刷用コート紙などであってもよい。
【0049】
本発明においては、記録用媒体は上記吸液特性を有するものが適しているが、例えば、ディスプレー等精密なデバイス用の配線パターンを作製する場合は、比較的堅い基盤(例えば、シリコン基盤、あるいはシリコン酸化膜基盤等)上に液媒体の吸収層をコロイダルシリカ等により設けて表面を平滑にし、場合により、液媒体は吸収するが、金属コロイドは通さない有機の薄い層を設けることによりパターン形成することも可能である。この場合、厳密な平滑性が要求される。
【0050】
次に、インクジェット印刷する場合のインクジェット記録装置について説明する。
すなわち、インクジェット記録装置としては、本発明の金属コロイド分散液を収容するインクカートリッジを備え、該インクカートリッジの液滴吐出ヘッドから金属コロイド分散液を前記特定のコート紙(記録用媒体)上に付与して金属パターンが形成されるように構成されていればよく特に制約されるものではない。具体的な例としては、株式会社リコー製、IPSiO G505、G707などが挙げられる。
ただし、本発明で用いる低表面張力の金属コロイド分散液を安定に印写するためには液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)のノズル構成部材(所謂ヘッド表面)が強い撥水性を有することが必要である。
前述のように前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル構成部材が、フッ素系化合物からなる撥水層を有することが好ましい。強い撥水性を有すれば、分散液がヘッド面に広がるのを抑制し、安定な液噴射を実行することができる。フッ素系化合物としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのパーフルオロ化合物、フルオロアルキル基を有するフッ素化合物、変性パーフルオロポリオキセタンなど各種化合物が挙げられ、いずれも使用できる。なお、フッ素系化合物としては前記化合物に限定されるものではない。
【0051】
以下、本発明における金属コロイド分散液を用いて記録用媒体上に金属コロイドからなる導電性のパターンを形成するインクジェット記録装置について、一例を挙げて図面を用いて説明する。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の構成例を示す斜視図である。
【0052】
図1において、金属コロイド分散液が収容されるインクカートリッジ(略、カートリッジ)20は、キャリッジ18に収納される。ここで、カートリッジ20は便宜上複数設けられているが、複数である必要はない。このような状態で金属コロイド分散液が、カートリッジ20からキャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aに供給される。なお、図1において、吐出ノズル面は下方方向を向いた状態であるため見えない状態であるが、この吐出ノズルから金属コロイド分散液が吐出される。
キャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aは、主走査モータ24で駆動されるタイミングベルト23によってガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。一方、特定のコート紙(記録用媒体)はプラテン19によって液滴吐出ヘッド18aと対面する位置に置かれる。なお、図中における各符号、1はインクジェット記録装置、2は本体筐体、16はギア機構、17は副走査モーター、25及び27はギア機構、26は主走査モーターを示す。
本発明における金属コロイド分散液を収容したインクジェット記録装置を用いて記録用媒体上にパターン形成を行えば、オンデマンドで導電性の印刷物が得られる。また、金属コロイド分散液の補充はインクカートリッジ単位で取り替えることが可能である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。
【0054】
(実施例1)
[金属コロイド分散液の製造]
以下のようにして金属コロイド分散液(ナノ銀インク)を製造した。
すなわち、硝酸銀50g、メルカプト酢酸1.4gを純水140mLに溶解し、アンモニア水(28%)150mLを加えて金属コロイド生成用の溶液(pH:11.8)を調製した。また、予め28%アンモニア水4mLを加えた純水295mLに水素化ホウ素ナトリウム2.1gを添加して還元用の溶液を調製した。
それぞれ調製した金属コロイド生成用の溶液と還元用の溶液を純水中600mLに撹拌しながら同時かつ徐々に滴下した。銀コロイド粒子が生成した後、メルカプト酢酸メチル1.6gを添加した。この操作により、表面にメルカプト酢酸とメルカプト酢酸メチルが付着した銀コロイド粒子を含む溶液が得られた。ここで、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル加水分解生成物が、金属コロイドを分散させるための物質に相当する。
次に、上記溶液を1時間加熱(60℃)処理した後、硝酸(30%)を加えて、溶液のpHを2.5に調整し、銀コロイド粒子を沈降させた。銀コロイド粒子をろ別し、十分に水洗して、メルカプト酢酸とメルカプト酢酸メチルの加水分解生成物とが表面に付着した銀コロイド粒子湿ケーキを得た。この銀コロイド粒子湿ケーキを、濃度が50%になるように水に添加し、pH調整、分散操作などにより、粒径約15μmの銀ナノ粒子分散液を得た。
得られた銀ナノ粒子分散液を5倍に希釈した液10重量部に、さらにフッ素系界面活性剤〔商品名:FS−3000(デユポン社製)〕約0.3重量部を加え本発明の金属コロイド分散液を製造した。
【0055】
[導電性のパターンの形成]
上記で得られた金属コロイド分散液(ナノ銀インク)を記録用媒体〔PODグロスコート100g/m2紙(王子製紙株式会社製)〕におよそ100g/m2の付着量で付与(塗布)した。
この紙の動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の記録用メディアへの転移量は3.1ml/m2であり、かつ接触時間400msにおける純水の記録用メディアへの転移量は3.5ml/m2であった。
金属コロイド分散液付与(塗布)後、数分で塗布面(パターン)は黄金色の金属光沢を示した。このパターンの電気抵抗を測定したところ1cmの距離で100kΩであった(およそ1Ωcm)。これをホットプレートにて120℃で乾燥したところ、5分で約数Ωの電気抵抗となった。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、フッ素系界面活性剤〔商品名:FS−3000(デユポン社製)〕を添加しない以外は実施例1と同じようにして金属コロイド分散液を製造した。
得られた比較例の金属コロイド分散液を用いて、実施例1と同様にしてPODグロスコート100g/m2紙に付与(塗布)した。金属コロイド分散液付与(塗布)後、塗布面(パターン)は金属光沢を示さず、電気抵抗は100MΩ以上であった。また、実施例1と同様に120℃で乾燥したところ、乾燥に10分以上を要した。
【0057】
実施例1で形成した金属パターンの外観写真を図2に示す。
すなわち、本発明によれば、分散液が速やかに乾燥し、金属コロイド粒子以外の分散液組成分が残存することなく、図2のように黄金色の金属光沢で抵抗の低いパターンが作成可能となり、しかも低温処理でも良好な電気導電性を発現する。
比較例1で形成した金属パターンの外観写真を図3に示す。
フッ素系界面活性剤を添加していない比較例の場合には、金属光沢がなく高抵抗で全く導電性を示さない。すなわち、金属コロイド粒子が均一化しておらず、金属コロイド粒子同士の分離があるため、導電性が阻害されているものと見られる。
このようにフッ素系活性剤を添加するか、しないかにより、導電性の発現において全く様子が異なる。フッ素系活性剤を添加した場合に、電導性を示すようになるメカニズムは現状確かではないが、フッ素系界面活性剤と金属コロイドが反応したというよりもむしろフッ素系界面活性剤により、分散液の表面張力が低下し、金属コロイド以外の組成分、特に絶縁性の有機物が紙媒体に浸透し、媒体上では金属同士が融着し易くなったものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】実施例1で形成した金属パターンの外観写真である。
【図3】比較例1で形成した金属パターンの外観写真である。
【符号の説明】
【0059】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
16 ギア機構
17 副走査モーター
18 キャリッジ
18a 液滴吐出ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ(カートリッジ)
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モーター
25 ギア機構
26 主走査モーター
27 ギア機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コロイド分散液を記録用媒体に付与し、記録用媒体上に金属コロイドからなる導電性のパターンを設ける金属パターン形成方法において、
前記記録用媒体は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有し、動的走査吸液計により測定される該記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msにおいて2〜35ml/m2であり、かつ接触時間400msにおいて3〜40ml/m2であると共に、
前記金属コロイド分散液は、金属コロイド、金属コロイドを分散させるための物質、フッ素系界面活性剤、および液媒体を組成分として含有し、且つ、金属コロイド以外の組成分の前記記録用媒体に対する浸透が前記転移量を満たすように調整され、
前記導電性のパターンは、電気導電性を阻害する残存成分を含まず金属コロイドを主成分とし、低温処理により形成されることを特徴とする金属パターン形成方法。
【請求項2】
前記金属コロイド分散液を記録用媒体に付与する手段として複数のノズルからなる液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、該液滴吐出ヘッドから金属コロイド分散液を吐出し、記録用媒体上に金属コロイドからなる導電性のパターンを設けることを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成方法。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル構成部材が、フッ素系化合物からなる撥水層を有することを特徴とする請求項2に記載の金属パターン形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属パターン形成方法により記録用媒体上に導電性のパターンが設けられたことを特徴とする金属パターン。
【請求項5】
金属コロイド分散液を、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に塗工層を有し、動的走査吸液計により測定される該記録媒体に対する純水の転移量が、23℃、50%RHの条件下、接触時間100msにおいて2〜35ml/m2であり、かつ接触時間400msにおいて3〜40ml/m2である記録用媒体に付与し、
該記録用媒体上に、電気導電性を阻害する残存成分を含まず金属コロイドを主成分とする導電性のパターンを設ける金属パターン形成方法において用いられる該金属コロイド分散液であって、
前記金属コロイド分散液は、金属コロイド、金属コロイドを分散させるための物質、フッ素系界面活性剤、および液媒体を組成分として含有し、且つ、金属コロイド以外の組成分の前記記録用媒体に対する浸透が前記転移量を満たすように調整されたものであることを特徴とする金属コロイド分散液。
【請求項6】
請求項5に記載の金属コロイド分散液を収容するインクカートリッジを備え、該インクカートリッジの液滴吐出ヘッドから金属コロイド分散液を記録用媒体上に付与して金属パターンを形成するように構成したことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−78215(P2008−78215A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253100(P2006−253100)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】