説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】良好なヒューズ動作を得ることが可能で、そのため良好な保安機能を有し安全性の高い金属化フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】相隣接する金属化フィルム1・1における誘電体フィルム2と蒸着電極3との密着度に関し、各ヒューズ部7a、7b及びその近傍の密着度を、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kの密着度よりも低下させる。各ヒューズ部7a、7bにおいては、上記密着度の低下に起因して、絶縁破壊時に蒸着電極が飛散し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体フィルムに蒸着電極を設けた金属化フィルムを用い、蒸着電極にヒューズ部を形成した金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型金属化フィルムコンデンサの金属化フィルム1の構造を図6に示す。同図に示すように、上記金属化フィルム1は、誘電体フィルム2と、この誘電体フィルム2表面の幅方向の一端部に、端縁絶縁帯4を残して金属蒸着した電極蒸着膜3とから構成されている。上記金属化フィルム1には、上記電極蒸着膜3を金属化フィルム1の幅方向と直行する方向(長手方向)において複数(図の場合には2個)の電極領域に分割するように、金属化フィルム1の幅方向に延びる第1マージン部5(金属蒸着がない部分)が形成されている。この第1マージン部5は、図のように1本でもよいが、複数形成することもある。また、上記金属化フィルム1の幅方向の他端部には、その長手方向に不連続状に延びる第2マージン部6・6が形成されており、上記第2マージン部6、6間の不連続部がヒューズ部7として機能するように構成されている。このとき、上記各マージン部5、6によって分割された複数(図の場合には2個)の電極領域に、上記ヒューズ部7(他の部分と比べて電流容量の小さい部分)がそれぞれ形成されるように構成することにより、絶縁破壊時の短絡電流を上記ヒューズ機能によって遮断して絶縁破壊部分の電極領域を切離すことができるようにし、これによってコンデンサとしての全体の機能が喪失されるのを防止できるように構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平7−142284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記ヒューズ部7は、上下方向に積層された金属化フィルム1・1の誘電体フィルム2、2によって挟まれているため蒸着電極が飛散しにくいことが原因で、絶縁破壊時の短絡電流によってヒューズ部7が動作せず、保安動作が十分に機能し得ないという不具合の生じることがあった。
【0004】
この発明は上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、良好なヒューズ動作を得ることが可能で、そのため良好な保安機能を有し安全性の高い金属化フィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこでこの発明の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルム2を介して対向する蒸着電極3を有し、端面にメタリコン電極11、12が形成され、蒸着電極3は、複数の小電極に分割されるとともに、一方のメタリコン電極11に沿う第1のヒューズ部7aと他方のメタリコン電極12に沿う第2のヒューズ部7bとが形成された金属化フィルムコンデンサであって、相隣接する金属化フィルム1・1における誘電体フィルム2と蒸着電極3との密着度に関し、各ヒューズ部7a、7b及びその近傍の密着度を、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kの密着度よりも低下させたことを特徴としている。
【0006】
また、この金属化フィルムコンデンサは、上記第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kを、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間隔よりも狭い幅のシート10で挟持し、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の誘電体フィルム2と蒸着電極3の層を密着させたことを特徴としている。
【0007】
さらに、この金属化フィルムコンデンサは、上記第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kを、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間隔よりも狭い幅の押圧板20で押圧し、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の誘電体フィルム2と蒸着電極3の層を密着させたことを特徴としている。
【0008】
また、この発明の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルム2を介して対向する蒸着電極3を有し、端面にメタリコン電極11、12が形成された金属化フィルムコンデンサであって、蒸着電極3は、複数の小電極に分割されるとともにメタリコン電極11、12に沿ってヒューズ部7が形成され、かつ一方の誘電体フィルム2の蒸着電極3と重なる他方の誘電体フィルム2は、一方の誘電体フィルム2のヒューズ部7と重なる領域に孔30又は凹部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の金属化フィルムコンデンサによれば、相隣接する金属化フィルム1・1における誘電体フィルム2と蒸着電極3との密着度に関し、各ヒューズ部7a、7b及びその近傍の密着度は、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kの密着度よりも低下することになるので、各ヒューズ部7a、7bにおいては、絶縁破壊時に蒸着電極が飛散し易くなり、絶縁破壊時の短絡電流によってヒューズ部7a、7bが動作せず、保安動作が十分に機能し得ないという不具合の生じるのを抑制できる。そのため、良好なヒューズ動作を得ることが可能で、良好な保安機能を有し安全性の高い金属化フィルムコンデンサを提供することができる。
【0010】
また、第1のヒューズ部7aと、上記第2のヒューズ部7bとの間の領域Kを、シート10で挟持すること、あるいは、押圧板20で押圧することにより、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の誘電体フィルム2と蒸着電極3の層を密着させるようにすれば、その実施を容易化でき、しかも上記同様に保安機能向上という効果が得られる。
【0011】
さらに、他方の誘電体フィルム2において、一方の誘電体フィルム2のヒューズ部7と重なる領域に孔30又は凹部を設けても、ヒューズ部7及びその近傍が、他の誘電体フィルム2から押圧される押圧作用が軽減されるので、絶縁破壊時に蒸着電極が飛散し易くなり、良好なヒューズ動作を得ることが可能で、良好な保安機能を有し安全性の高い金属化フィルムコンデンサを提供することができる。また、その実施を容易化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明の金属化フィルムコンデンサの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1及び図2には、この発明の金属化フィルムコンデンサの第1実施形態を示している。この実施形態において使用する金属化フィルム1は、図6に示しているものと同一のものである。すなわち、図6に示す金属化フィルム1を、必要枚数だけ、その左右(図6において)を逆にしながら、つまり各端縁絶縁帯4を交互に逆にして、図5に示すように、幅方向に若干ずらせながら積層して積層体を形成する。この場合、各第1マージン部5・5、は上下方向に重なるように配置するのが好ましいが、特にこの配置態様に限られるわけではない。また、各第2マージン部6・6、及び各ヒューズ部7・7は他方の金属化フィルム1の各端縁絶縁帯4に重なるように配置する。そして、以下に説明するように、この積層体をその上下から一対のシート10、10で挟持した状態で、各端縁絶縁帯4側にメタリコン電極11、12を形成して積層型の金属化フィルムコンデンサが構成される。いま便宜上、一方のメタリコン電極11に沿うヒューズ部7を第1のヒューズ部7a、他方のメタリコン電極12に沿うヒューズ7を第2のヒューズ部7bと称する。
【0013】
そして、必要枚数の金属化フィルム1・1を上記のように積層した状態において、上記第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域K(具体的には、各端縁絶縁帯4を除いて互いに積層されている容量寄与領域)を、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間隔よりも狭い幅の上下一対の絶縁性シート10で挟持する。具体的には、上記積層体をシートで挟んだ状態でプレスを行うか、あるいは、加熱エージングを行い、シートを積層体に埋設状態とする。そして、この後、メタリコン電極11、12を形成するのである。なお、この実施形態における上記誘電体フィルム2には、例えばPET、又はPP等のプラスチックフィルムが使用され、また上記誘電体フィルム1に蒸着される金属には、アルミニウム、亜鉛、又はそれらの混合金属が用いられる。
【0014】
上記金属化フィルムコンデンサにおいては、上下方向(積層方向)に相隣接する金属化フィルム1・1における誘電体フィルム2と蒸着電極3との密着度に関し、各ヒューズ部7a、7b及びその近傍の密着度は、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kの密着度よりも低下することになる。この結果、各ヒューズ部7a、7bにおいては、絶縁破壊時に蒸着電極が飛散し易くなり、絶縁破壊時の短絡電流によってヒューズ部7a、7bが動作せず、保安動作が十分に機能し得ないという不具合の生じるのを抑制できる。そのため、良好なヒューズ動作を得ることが可能で、良好な保安機能を有し安全性の高い金属化フィルムコンデンサを提供することができる。しかもその実施が容易である。
【0015】
図3には、第2実施形態を示している。これは、上記のような積層状態において、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の領域Kを、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間隔よりも狭い幅の押圧板20で押圧し、第1のヒューズ部7aと第2のヒューズ部7bとの間の誘電体フィルム2と蒸着電極3の層を密着させたものである。すなわち、積層体の上下に一対の押圧板20、20を配置して、上下からプレス本体P、Pでプレスするのである。なお、押圧板20、20は、プレス本体と一体のものとして構成してもよい。そして、その後、積層体の両側にメタリコン電極11、12を形成する。
【0016】
図4には、第3実施形態を示している。これは、一方の誘電体フィルム2の蒸着電極3と重なる他方の誘電体フィルム2においては、一方の誘電体フィルム2のヒューズ部7a、7bと重なる領域に孔30を設けたものである。すなわち、ヒューズ部7a、7bにおいては、その部分に重なる他の誘電体フィルム2に孔30を設けることで、他の誘電体フィルム2によるヒューズ部7a、7bの押圧作用を除去したものである。なお、上記孔30を形成するのに代えて、その部分に凹部を形成してもよい。
【0017】
上記各実施形態の金属化フィルムコンデンサによれば、第1実施形態と同様に、その実施を容易化でき、しかも保安機能向上という効果が得られる。
【0018】
以上にこの発明の金属化フィルムコンデンサの具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。すなわち、上記実施形態においては、積層型の金属化フィルムコンデンサを示しているが、巻回型の扁平なコンデンサ素子を有する金属化フィルムコンデンサにおいても上記同様に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第1実施の形態である金属化フィルムコンデンサの概略断面図である。
【図2】上記実施の形態における金属化フィルムの積層状態を示す平面大図である。
【図3】第2実施形態の金属化フィルムコンデンサの製造過程を示す概略正面図である。
【図4】第3実施形態の金属化フィルムコンデンサにおける金属化フィルムの積層状態を示す平面大図である。
【図5】上記各実施形態における金属化フィルムの積層状態を示す概略平面図である。
【図6】上記各実施形態における金属化フィルムを示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 金属化フィルム
2 誘電体フィルム
3 蒸着電極
7a 第1のヒューズ部
7b 第2のヒューズ部
10 シート
11 メタリコン電極
12 メタリコン電極
20 押圧板
30 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルム(2)を介して対向する蒸着電極(3)を有し、端面にメタリコン電極(11)(12)が形成され、蒸着電極(3)は、複数の小電極に分割されるとともに、一方のメタリコン電極(11)に沿う第1のヒューズ部(7a)と他方のメタリコン電極(12)に沿う第2のヒューズ部(7b)とが形成された金属化フィルムコンデンサであって、相隣接する金属化フィルム(1・1)における誘電体フィルム(2)と蒸着電極(3)との密着度に関し、各ヒューズ部(7a)(7b)及びその近傍の密着度を、第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間の領域(K)の密着度よりも低下させたことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
上記第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間の領域(K)を、第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間隔よりも狭い幅のシート(10)で挟持し、第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間の誘電体フィルム(2)と蒸着電極(3)の層を密着させたことを特徴とする請求項1の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
上記第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間の領域(K)を、第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間隔よりも狭い幅の押圧板(20)で押圧し、第1のヒューズ部(7a)と第2のヒューズ部(7b)との間の誘電体フィルム(2)と蒸着電極(3)の層を密着させたことを特徴とする請求項1の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
誘電体フィルム(2)を介して対向する蒸着電極(3)を有し、端面にメタリコン電極(11)(12)が形成された金属化フィルムコンデンサであって、蒸着電極(3)は、複数の小電極に分割されるとともにメタリコン電極(11)(12)に沿ってヒューズ部(7)が形成され、かつ一方の誘電体フィルム(2)の蒸着電極(3)と重なる他方の誘電体フィルム(2)は、一方の誘電体フィルム(2)のヒューズ部(7)と重なる領域に孔(30)又は凹部を有することを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−67169(P2007−67169A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251234(P2005−251234)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】