説明

金属材と樹脂材の接合方法、及び金属材と樹脂材の接合体

【課題】局部加熱を容易に実施でき、樹脂材にダメージを与えることなく金属材と樹脂材の接合体を得ることができる金属材と樹脂材の接合方法、及びそれにより接合された金属材と樹脂材の接合体を提供すること。
【解決手段】厚さ0.1mm以上の金属材1であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜11を形成してなる当該金属材1と、塗膜11の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材2とを接合する方法である。金属材1を塗膜11が形成されている面を樹脂材2側にして樹脂材2と重ね合わせ、金属材1側から円柱状の回転工具3を押し当てて回転させることにより摩擦熱を発生させ、塗膜11と樹脂材2との界面を加熱して両者を相溶させ、その後冷却し両者を一体化することにより金属材1と樹脂材2とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材と樹脂材とを接合する方法、及びそれを用いて接合させた金属材と樹脂材の接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ製品は、ステンレス等の金属に比べて軽量化が図ることができるため、例えば、自動車のフード、ドア、ボンネット、フロアー、電子機器筐体等に用いられる。そして、このようなアルミ製品の一部分を樹脂で代替することによる軽量化も期待されている。
【0003】
従来、アルミニウム合金と樹脂材とを接合する場合には、接着剤を用いて接合を行う方法や、アルミニウム合金にプライマを塗布し、外部加熱によりアルミニウムとポリプロピレンを接合する方法等により行われてきた。
【0004】
しかしながら、接着剤を用いて接合する場合には、長時間の硬化時間が必要であるという問題や、接合位置が不明確になるという問題があった。
また、外部加熱で行う場合には、樹脂材の接合部以外の部分にダメージを与えるため、外部加熱によって接合することが基本的に困難であった。
また、これらの問題はアルミニウム合金に限らず、その他の金属材料においても同様である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−302633号公報
【特許文献2】特開2005−152971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、局部加熱を容易に実施でき、樹脂材にダメージを与えることなく金属材と樹脂材の接合体を得ることができる金属材と樹脂材の接合方法、及びそれにより接合された金属材と樹脂材の接合体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、厚さ0.1mm以上の金属材であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜を形成してなる当該金属材と、上記塗膜の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材とを接合する方法であって、
上記金属材を上記塗膜が形成されている面を上記樹脂材側にして上記樹脂材と重ね合わせ、上記金属材側から円柱状の回転工具を押し当てて回転させることにより摩擦熱を発生させ、上記塗膜と上記樹脂材との界面を加熱して両者を相溶させ、その後冷却し両者を一体化することにより上記金属材と樹脂材とを接合することを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法にある(請求項1)。
【0008】
上記接合方法は、金属材に特定の塗膜を形成させ、かつ、加熱方法として上記特定の方法を積極的に採用することにより、局部加熱を容易に実施でき、樹脂材にダメージを与えることなく金属材と樹脂材の接合体を得ることができる。
【0009】
上記金属材を上記塗膜が形成されている面を上記樹脂材側にして樹脂材と重ね合わせ、その境界部分を加熱すると、上記塗膜の熱可塑性樹脂と、上記樹脂材を構成する熱可塑性樹脂とがよく混ざり合い(相溶し)、一体化する。つまり、上記金属材に付着している塗膜を、上記樹脂材と一体化させることにより、上記金属材と上記樹脂材とを良好に接合することができる。
【0010】
そして、上記接合方法では、加熱手段は、回転工具を回転させることによる摩擦熱である。金属材は、熱伝導性に優れるため、金属材と回転工具との摩擦により発生した摩擦熱は、上記金属材と上記樹脂材との境界部分に良好に伝わっていく。
また、摩擦による加熱は、効率よく加熱することができるため、塗膜を溶融させる温度まで加熱しても熱エネルギーを低く抑えることができる。また、摩擦で加熱することにより、到達温度が安定し、安定した接合状態を得ることができる。
また、回転工具を押し当てて加熱するため、摩擦熱を発生させる場所を制御できることから、接合位置を限定することが可能となる。つまり、所望の部分に点状、線状に接合を行うこともできる。
【0011】
このように、本発明によれば、局部加熱を容易に実施でき、樹脂材にダメージを与えることなく金属材と樹脂材の接合体を得ることができる。
【0012】
第2の発明は、厚さ0.1mm以上の金属材であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜を形成してなる当該金属材と、上記塗膜の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材とを接合してなる接合体であって、
第1の発明に記載の接合方法を用いて両者を接合してなることを特徴とする金属材と樹脂材の接合体にある(請求項7)。
【0013】
本発明の接合体は、上述の、局部加熱を容易に実施でき、樹脂材にダメージを与えることなく実施できる金属材と樹脂材の接合方法によって得られた接合体である。そのため、本発明の金属材と樹脂材の接合体は、樹脂材の接合部以外の部分には損傷が見られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明の金属材と樹脂材の接合方法は、上述したように、厚さ0.1mm以上の金属材であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜を形成してなる当該金属材と、上記塗膜の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材とを接合する方法である。
【0015】
上記金属材の厚みが0.1mm未満の場合には、工具を回転させ接触させると、金属材そのものが破れる等の損傷が生じるという問題がある。一方、上記金属材の厚みの上限は、使用する回転工具の形状によって異なるが、概ね2.0mmとすることが好ましい。2.0mmを超える場合には、回転工具の回転により発生した摩擦熱が、金属材と樹脂材の境界まで伝わり難くなり、塗膜を十分に加熱することができず、接合が困難になるという問題がある。なお、2.0mmを超える場合でも、後述するごとく、先端に突起を有する回転工具を用いた場合には、対応可能な場合がある。上記金属材の厚みは、好ましくは、0.5mm〜2mmである。
【0016】
また、上記塗膜の膜厚が0.1μm未満である場合には、接合力が不十分になるという問題がある。一方、上記塗膜の膜厚が50μmを超える場合には、塗装コストが増加するという問題や、接合力の向上が飽和するという問題がある。上記塗膜の膜厚は、好ましくは、0.5〜10μmであり、より好ましくは1〜5μmである。
【0017】
また、上記樹脂材の厚みが0.1mm未満である場合には、接合部以外の部分への熱的ダメージが発生するという問題がある。また、上記樹脂材の厚みの上限は、取り扱いが可能な範囲であれば、特に制限はない。上記樹脂材の厚みは、好ましくは、0.5〜5mmである。
また、上記樹脂材が、塗膜の樹脂と相溶しない材料からなる場合には、得られる接合体が十分な接合安定性を有することができないという問題がある。
【0018】
また、接合を行う際には、上記金属材を上記塗膜が形成されている面を上記樹脂材側にして上記樹脂材と重ね合わせ、上記金属材側から円柱状の回転工具を押し当てて回転させることにより摩擦熱を発生させ、上記塗膜と上記樹脂材との界面を加熱して両者を相溶させ、その後冷却し両者を一体化することにより上記金属材と樹脂材とを接合する。
【0019】
回転工具の回転数は、工具の形状、大きさ、金属材の厚み等、状況に応じて好ましい回転数を適宜選択することができ、それは、実験等により容易に導き出すことができる。なお、どのような状況においても、回転数1000rpm以上とすれば、良好に接合を行うことができる。
【0020】
また、本発明において、上記回転工具は、摩擦撹拌接合方法(Friction Stir Welding;FSW)に用いられる回転工具を用いることが好ましい。FSWは、入熱が少なく、軟化や歪みの程度が軽い接合方法であり、特許第2712838号公報等には、アルミニウム合金の突き合わせ摩擦撹拌接合方法が開示されている。FSWは、アルミニウム板を突き合わせて拘束し、上記工具を高速で回転させてアルミニウム板を掻き回すことにより、溶融させることなく接合する技術である。そして、FSWには、先端に突起(上記ピン状プローブ)の付いた硬質の工具が用いられる。また、上記工具の先端の突起は、長さの調製をすることができ、なくすこともできる。
また、上記回転工具は、例えば、SKD60などの工具鋼からなることが好ましい。
また、上記接合方法において、上記冷却は、通常、自己放冷により行われる。
【0021】
また、上記金属材と樹脂材の接合方法において、上記金属材はアルミニウム材であることが好ましい(請求項2)。
アルミニウム材は、種々の構造材、筐体等として広く用いられており、樹脂との接合容易化によって様々な効果を得ることができる。
上記アルミニウム材は、純アルミニウム又はアルミニウム合金よりなるものを用いることができる。アルミニウム材の形態は限定されるものではないが、板材又は少なくとも一部に接合部となる板状部分を有する形態が好ましい。
また、上記アルミニウム材は、上記塗膜を形成する前に、化成皮膜を設けてもよい。
【0022】
また、金属材がアルミニウム材である場合において、上記塗膜がα、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂よりなり、上記樹脂材が上記塗膜の樹脂と同種のポリオレフィン樹脂よりなることが好ましい(請求項3)。
【0023】
上記塗膜を構成するα、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂は上記アルミニウム材表面との密着性に優れている。そして、上記アルミニウム材を上記塗膜が形成されている面を上記樹脂材側にして樹脂材と重ね合わせ、その境界部分を加熱すると、上記塗膜の変性したポリオレフィン樹脂と、上記樹脂材を構成するポリオレフィン樹脂とが相溶し、一体化する。つまり、上記アルミニウム材と強固に付着している塗膜を、上記樹脂材と一体化させることにより、上記アルミニウム材と上記樹脂材とを高い接合安定性で接合することができる。
【0024】
また、上記α、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂としては、従来より公知のものが、いずれも使用可能である。上記α、β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、及びこれらの無水物などを例示することができる。また、上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン等が挙げられる。そして、上記ポリオレフィン樹脂はポリプロピレンであることが好ましい(請求項3)。また、本発明においては、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂としては、無水マレイン酸で変性されたポリプロピレンが特に有用に用いられる。
【0025】
また、上記樹脂材は、上記塗膜の樹脂と同種のポリオレフィン樹脂よりなる。つまり、上記塗膜に用いられているポリオレフィン樹脂と同種であれば、上記樹脂材は、変性されたポリオレフィン樹脂であっても、変性されていないポリオレフィン樹脂であってもよい。好ましくは、例えば、上記塗膜が変性されたポリエチレン樹脂からなる場合には、上記樹脂材は変性されていないポリエチレン樹脂からなる樹脂材を用いても、変性されたポリエチレン樹脂からなる樹脂材を用いてもよい。また、上記塗膜が変性されたポリプロピレン樹脂からなる場合には、上記樹脂材は変性されていないポリプロピレン樹脂からなる樹脂材を用いても、変性されたポリプロピレン樹脂からなる樹脂材を用いてもよい。
【0026】
上記接合方法において、上記回転工具は、先端に上記金属材の厚み以下の長さを有する突起を有しており、回転工具を押し当てる際に、上記突起により上記金属材を撹拌させ、上記摩擦熱、及び上記撹拌による熱を発生させもよい(請求項5)。
この場合には、上述の回転工具の回転による摩擦熱のみならず、撹拌による熱も発生させることができ、良好に上記金属材と上記樹脂材の境界部分の加熱を行うことができる。
【0027】
また、上記回転工具は、先端に上記金属材の厚み超え、上記金属材と上記塗膜と上記樹脂材の合計厚さ以下の長さを有する突起を有しており、回転工具を押し当てる際に、上記突起により上記金属材及び上記樹脂材を撹拌し、上記摩擦熱、及び上記撹拌による熱を発生させてもよい(請求項6)。
この場合にも、上述の回転工具の回転による摩擦熱のみならず、撹拌による熱も発生させることができ、良好に上記金属材と上記樹脂材の境界部分の加熱を行うことができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる金属材と樹脂材の接合方法、及び金属材と樹脂材の接合体について説明する。
本例の接合方法は、厚さ0.1mm以上の金属材であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜を形成してなる当該金属材と、上記塗膜の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材とを接合する方法である。
以下、これを図1〜図4を用いて詳説する。
【0029】
本例では、本発明の接合方法の実施例として、表1に示す10通りの接合方法(方法E1〜方法E10)を実施し、また、本発明の接合方法の比較例として、表2に示す9通りの接合方法(方法C1〜方法C9)を実施した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
まず、図1に示すように、金属材1として、表1、2に示す厚みを有するアルミニウム合金板(A5052−O)を用意した。
そして、金属材1の一方の面に、表1、2に示す樹脂からなり、表1、2に示す膜厚を有するα、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂よりなる塗膜11を形成した。
次に、樹脂材2として、表1、2に示す種類の樹脂よりなり、表1、2に示す板厚を有する樹脂材2を用意した。
【0033】
そして、上記金属材(アルミニウム板)1を上記塗膜11が形成されている面を上記樹脂材2側にして上記樹脂材2と重ね合わせた(塗膜が形成されていないアルミニウム板については重ね合わせる面の区別はしない)。なお、重ね合わせは、図1に示す2種類のパターン(パターンa,b)で行った。パターンaは、図1(a)に示すように、上板に金属材1、下板に樹脂材2を配置する。パターンbは、図1(b)に示すように、上板に樹脂材2、下板に金属材1を配置する。
【0034】
その後、図2〜図5に示すように、上記上板側から、円柱状の回転工具3を押し当て、回転させることにより金属材1と樹脂材2の接合を行った。
上記回転工具3は、FSWに用いられる回転工具を用意し、円柱形状の回転工具と、円柱形状の先端にさらに突起31を設けた回転工具を用意した。表1、2には、回転工具3の円柱部分の径(ショルダー径)、先端の突起31の径(プローブ径)、長さ(プローブ長さ)を示す。
また、上記回転工具3の差込深さ、及び回転数についても表1、2に示す。
上記差込深さは、先端に突起を有しない円柱状の回転工具3の場合には、その端面からの長さであり、先端に突起31が設けられている場合には、その突起31の先端面からの長さである。
【0035】
上板が金属材1である場合の接合ついて説明する。
まず、方法E1のように、先端に突起を有しない円柱状の回転工具3を用いる場合には、図2に示すように、回転工具3を回転させながら金属材1に押し当て、回転工具3の回転による摩擦熱を発生させて加熱を行い、その後、自己放冷による冷却を行って接合体を得る。
【0036】
また、例えば、方法E3のように、金属材1の厚み以下の長さを有する突起31を先端に有する回転工具3を用いる場合には、図3に示すように、回転工具3を押し当てる際に、上記回転工具3を回転させながら上記先端の突起31を上記金属材1に差し込み、金属材1を撹拌し、上記摩擦熱、及び上記撹拌による熱を発生させて加熱を行い、その後、自己放冷による冷却を行って接合体を得る。
【0037】
また、例えば、方法E2のように、金属材1の厚み超え、金属材1と塗膜11と樹脂材2の合計厚さ以下の長さを有する突起31を先端に有する回転工具3を用いる場合には、図4に示すように、回転工具3を押し当てる際に、上記回転工具3を回転させながら上記先端の突起31を上記樹脂材2まで差し込み、上記金属材1及び上記樹脂材2を撹拌し、上記摩擦熱、及び上記撹拌による熱を発生させて加熱を行い、その後、自己放冷による冷却を行って接合体を得る。
【0038】
また、上板が樹脂材2である場合の接合について説明する。
例えば、方法C1、C3は、樹脂材の厚み以下の長さを有する突起を先端に有する回転工具を用い、回転工具を押し当てる際に、上記回転工具を回転させながら上記先端の突起を上記樹脂材に差し込むことによって行った。
【0039】
次に、得られた接合体について、接合部12(アルミニウム板の塗膜と樹脂材とが一体化した部分)の測定、引張剪断試験を行った。
<接合部の測定>
接合部の測定は、接合部12の断面を観察し、ノギスを用いて接合部12の径を測定することにより行った。結果を表3に示す。
【0040】
<引張剪断試験>
引張剪断試験は、JIS Z 3136に規定されている方法により行い、引張剪断荷重を測定して剪断強度を評価すると共に、破壊部位を観察した。結果を表3に示す。
剪断強度は、引張剪断荷重が1kN以上である場合を合格、1kN未満である場合を不合格とした。
また、破壊部位は、引張剪断試験において、接合部12(塗膜11と樹脂材2が一体化した部分)はそのままの状態を保ちながら樹脂材2に破壊が起こった場合を合格(評価○)、接合部12で破壊が起こった場合を不合格(評価×)とした。
【0041】
【表3】

【0042】
表3より知られるように、方法E1〜方法E10により得られた接合体は、良好な大きさの接合部が形成されており、また、引張剪断試験においても良好な結果を示した。
また、本例では、上述の回転工具を用いて加熱を行ったため、局部加熱を容易に実施でき、樹脂材にダメージを与えることなく接合することができた。
また、金属材にはα、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂よりなる塗膜が設けられており、かつ、樹脂材が塗膜の樹脂と同種のポリオレフィン樹脂よりなるため、得られた接合体の接合安定性も優れている。
【0043】
また、表3より知られるように、方法C1により得られた接合体は、回転工具を樹脂材側から押し当てているため、摩擦熱が十分に発生せず、十分な接合強度を得ることができなかった。
また、方法C2により得られた接合体は、金属材に塗膜が形成されていないため、接合部を形成できず、接合体を得ることができなかった。
【0044】
また、方法C3により得られた接合体は、金属材に塗膜が形成されておらず、また、回転工具を樹脂材側から押し当てているため、接合部を形成できず、接合体を得ることができなかった。
また、方法C4により得られた接合体は、金属材の厚みが本発明の下限を下回るため、金属材自体が機械的ダメージを受け、接合することができなかった。
【0045】
また、方法C5により得られた接合体は、接合部は10mmφ以上であるが、塗膜の膜厚が本発明の下限を下回るため、接合力が不足し、剪断強度を得ることができなかった。
また、方法C6により得られた接合体は、樹脂材の厚みが本発明の下限を下回るため、
樹脂材の接合部以外の部分が熱的ダメージを受け、接合することができなかった。
また、方法C7により得られた接合体は、塗膜を構成するポリオレフィン樹脂と、樹脂材を構成するポリオレフィン樹脂が異なり、互いが相溶しないため、接合部を形成することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1における、金属材(アルミニウム板)と樹脂材の重ね合わせパターンを示す説明図。
【図2】実施例1における、接合方法を示す説明図。
【図3】実施例1における、接合方法を示す説明図。
【図4】実施例1における、接合方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0047】
1 金属材(アルミニウム板)
11 塗膜
2 樹脂材
3 回転工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.1mm以上の金属材であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜を形成してなる当該金属材と、上記塗膜の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材とを接合する方法であって、
上記金属材を上記塗膜が形成されている面を上記樹脂材側にして上記樹脂材と重ね合わせ、上記金属材側から円柱状の回転工具を押し当てて回転させることにより摩擦熱を発生させ、上記塗膜と上記樹脂材との界面を加熱して両者を相溶させ、その後冷却し両者を一体化することにより上記金属材と樹脂材とを接合することを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法。
【請求項2】
請求項1において、上記金属材はアルミニウム材であることを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法。
【請求項3】
請求項2において、上記塗膜がα、β−エチレン性不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂よりなり、上記樹脂材が上記塗膜の樹脂と同種のポリオレフィン樹脂よりなることを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法。
【請求項4】
請求項3において、上記ポリオレフィン樹脂はポリプロピレンであることを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記回転工具は、先端に上記金属材の厚み以下の長さを有する突起を有しており、回転工具を押し当てる際に、上記突起により上記金属材を撹拌させ、上記摩擦熱、及び上記撹拌による熱を発生させることを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記回転工具は、先端に上記金属材の厚み超え、上記金属材と上記塗膜と上記樹脂材の合計厚さ以下の長さを有する突起を有しており、回転工具を押し当てる際に、上記突起により上記金属材及び上記樹脂材を撹拌し、上記摩擦熱、及び上記撹拌による熱を発生させることを特徴とする金属材と樹脂材の接合方法。
【請求項7】
厚さ0.1mm以上の金属材であって、その一方の面に熱可塑性樹脂よりなる膜厚0.1〜50μmの塗膜を形成してなる当該金属材と、上記塗膜の熱可塑性樹脂と相溶可能な熱可塑性樹脂よりなり、厚みが0.1mm以上である樹脂材とを接合してなる接合体であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の接合方法を用いて両者を接合してなることを特徴とする金属材と樹脂材の接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−279858(P2009−279858A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135173(P2008−135173)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】