金属物の形状判定方法
【課題】金属物の形状を判別して検知できる金属物の形状判定方法を提供する。
【解決手段】センサーコイル5,6を用いて、被検出物2中に混入した金属物を検知する。センサーコイル5,6から出力される検出信号を信号処理解析して、金属物の形状を判定する。解析のとき、被検出物2がセンサーコイル5,6に入力するタイミングから、センサーコイル5,6を通過して出ていくタイミングまでの信号を規格化して規格化信号にし、規格化信号の中に、3以上のピーク値があるとき、針であると判定する。規格化信号の中に、2個のピーク値のみがあるとき、鉄粉であると判定する。
【解決手段】センサーコイル5,6を用いて、被検出物2中に混入した金属物を検知する。センサーコイル5,6から出力される検出信号を信号処理解析して、金属物の形状を判定する。解析のとき、被検出物2がセンサーコイル5,6に入力するタイミングから、センサーコイル5,6を通過して出ていくタイミングまでの信号を規格化して規格化信号にし、規格化信号の中に、3以上のピーク値があるとき、針であると判定する。規格化信号の中に、2個のピーク値のみがあるとき、鉄粉であると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を検知するための金属物の形状判定方法に関する。更に詳しくは、磁性体の針、粉末などの形状の金属を、形状別に検知する金属物の形状判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属物の検出装置は、様々な分野で利用されている。その代表的な例は、商品の製造工程で、商品に混入した金属異物の検出である。具体的には、食料品、医薬品等の検査対象物の製造工程などにおいて、検査対象物の中に金属破片などをはじめとする異物が混入されることがある。検査対象物の安全性を保証するためには、金属異物が混入した検査対象物からこの異物を排除する必要があるので、この金属異物を検知することが不可欠である。更に、商品の製造工程のみでなくスーパーマーケットやコンビニエンスストアといった小売店の店頭で食品に針を混入させる手口の偽計業務妨害が相次いでいる。これらも同様に検出し排除する必要がある。
【0003】
本発明の出願人等は、特許文献1、2に記載の発明を提案した。特許文献1、2に記載の装置は、被検出物中の金属異物を検知するものである。ここで提案したセンサーコイルを用いて、微小な磁性体の検知に成功した。具体的には、特許文献1には、被検出物中に混入した金属異物を検知する金属異物検知方法と金属異物検知装置を開示している。この発明によると、被検出物中に混入したステンレス等の金属異物を検知するのみならず、導電性の包装材料で包まれた食品、医薬品、工業 用材料等の被検出物中に混入した金属異物も検知できる。
【0004】
日本国特許第3857271号の金属異物検知方法は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて、前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出工程とからなる金属異物検知方法において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力工程と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定するために信号を解析する信号解析工程とからなり、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B−H)特性の内、前記磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、前記電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
【0005】
日本国特許第3857271号の金属異物検知装置は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送するための搬送路を有する搬送手段と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出手段とからなる金属異物検知装置において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させ、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力手段と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定する信号解析による信号解析手段とを有し、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B−H)特性の内、前記磁化特性を表す磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものである前記コイルに流される電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
また、この金属異物検知装置の前記検出部は、前記金属異物からの前記検出磁界は、前記微少磁界に影響を与えて前記コイルに印加された前記電圧、又は前記コイルを流れる前記電流の前記周波数が変化して、前記検出信号を出力する。
【0006】
特許文献1のこの金属異物検知装置は、コアに導線を巻いた構成の1つのコイルを有した検出部により微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した金属異物からの検出磁界をコイルの検出電圧、又は検出電流として検出して検出信号を出力するものである。微少磁界は、コイルに、数百Hzから数十kHzの周波数の印加される電圧、又は供給される電流が微少で、かつコイルを構成するコアの磁化(B−H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものである。
【0007】
金属異物がコイル付近を通過するとき、コイルに鎖交する磁力線の形成が乱れ、信号電圧の振幅、位相、周波数が変化し、これにより、金属異物を検知する。この装置は、1mm以下の金属異物を検知できる優れた感度をもつものである。また、アルミニウム包装内の針等の細長い金属物と、金属粉末からなる酸化防止剤の検知が可能である。本発明の出願人が出願し権利化された特許文献3には、「金属探知機用センサーと金属探知機」を開示している。特許文献3に開示されたこの金属探知機用センサーは、被検出物中の金属物を探知するための金属探知機用センサーであって、前記コアに接触して配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化するための磁石とからなる。
【0008】
特許文献3に開示されたこの金属探知機は、被検出物を搬送する搬送路を有する搬送手段と、前記搬送路の途中に設けられ、電流を流して磁界を発生させるための導線のコイルが金属のコアに巻かれたセンサーコイルとからなる金属探知機において、前記センサーコイルにより発生される磁界の及ぶ範囲に配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化する磁石とからなり、前記電流は交番磁界を発生させるための交流電流であり、前記磁石は前記コアに接触して配置されている磁石であることを特徴とする。
【0009】
詳しくは、コイルセンサー近傍、又は直接センサーに磁石を固定し、センサーコイルに鎖交する不平等な静磁場を形成させている。被検出物がこの不平等磁場を横切ったとき金属異物が1時的に磁化されると同時に、磁化された被検出物から発生する磁場が、センサーコイルに鎖交する磁場を乱す。その磁場乱れをセンサーコイルが検出信号として送出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3857271号
【特許文献2】特開2005−188985号公報
【特許文献3】特許第3875161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、食品製造業や医薬品製造業で汎用されている金属検出器は、金属がセンサー付近に侵入した場合に渦電流による磁界が生じて金属として認識しているが、金属の大きさや形状認識を行っていない。更に、従来の検出機は、製品の一部が金属で構成されていたり、金属粉からなる脱酸素剤などの金属物が故意に封入された場合など、金属異物として誤検知する。たとえば、製品を金属の蓋のある容器に入れる場合は、蓋をする前に内容物に対して、金属異物の検査をしなければならず、異物混入の危険性が高い包装工程では金属異物の検査を実施することができない。このため、製品製造時の検査工程や異物検査の信頼性に多くの制限がかかっている。
【0012】
また、製品の一部を金属のワイヤで巻いたり、封し包装したりするときも、金属のワイヤは、金属異物検知装置に検知され、金属異物と区別することができない。又、製品の中や包装面に、金属プレートを付けることもある。よって、金属異物検知装置においては、製品にわざといれた金属物を金属異物と区別できることが望まれている。
【0013】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、金属物の形状を判別して検知できる金属物の形状判定方法を提供する。
本発明の他の目的は、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される金属物と、金属異物とを区別して検知できる金属物の形状判定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の発明1の金属物の形状判定方法は、被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、かつ、センサーコイルの近傍に配置された磁石ブースターで、前記被検出物中の磁性体を磁化又は磁化強化しながら、前記センサーコイルの付近の磁界の変化を前記センサーコイルにより検出して検出信号を出力して、前記被検出物中の金属物を検出するための金属物検出工程とからなる金属物検知方法であって、前記金属物が前記センサーコイル付近を通過するとき、(I)前記磁石ブースターにより形成されたもので前記センサーコイルと鎖交する不平等な前記磁界を前記金属物が横切り、(II)前記金属物が前記磁界を横切ることによって前記磁界が乱れ、(III)前記センサーコイルに鎖交する磁束が変化し、(IV)前記センサーコイルを鎖交する前記磁束の時間的変化の割合が、前記センサーコイルの検出電圧又は検出電流となって前記検出信号を出力する検出信号出力工程と、及び、前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を解析して前記金属物の形状を特定する信号解析工程とからなり、前記検出信号の信号波形は、線状(1次元)、面状(2次元)、球状(3次元)、及び、塊状(多次元)の中から選択される一形状の金属の形状に依存して変化し、前記信号解析工程は、前記検出信号の前記信号波形を、予め測定されたもので、前記金属の形状を示す値と比較して、前記金属物の形状を特定することを特徴とする。
【0015】
本発明の発明2の金属物の形状判定方法は、発明1において、前記(不平等)磁界は、前記磁石ブースターを構成する磁石が同一磁極を前記センサーコイル(の長て方向)に向けて前記センサーコイルに固定されて形成された磁界であることを特徴とする。
本発明の発明3の金属物の形状判定方法は、発明1又は2において、前記信号解析工程で、前記検出信号の波形の中に、3個以上のピーク値があるとき、棒状の金属であると判定し、前記検出信号の波形の中に、2個のピーク値のみがあるとき、金属粉であると判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の発明4の金属物の形状判定方法は、発明1又は2において、前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を規格化して規格化信号に変換し、前記規格化信号は、その時間軸の先頭から第1領域〜第5領域の5領域に分け、第1領域(A’)の前記規格化信号に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、前記第1領域(A’)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形があり、更に、前記第2領域(A)と前記第5領域(D)の1つの領域に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、前記第1領域(A’)、前記第2領域(A)、及び、前記第5領域(D)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に2次元の金属物が含まれていると判定することを特徴とする。
【0017】
本発明の発明5の金属物の形状判定方法は、発明1又は2において、前記搬送路と平行な面に第1の前記センサーコイルを配置し、前記第1の前記センサーコイルと平行で、前記搬送路を挟んで、前記搬送路と平行な面に第2の前記センサーコイルを配置し、前記搬送路と平行で、前記第1及び前記第2の前記センサーコイルと直交する面に第3の前記センサーコイルを配置し、前記検出信号出力工程は、前記第1〜第3の前記センサーコイルそれぞれの前記検出信号の3つの前記検出信号を出力し、前記3つの前記検出信号それぞれを、前記信号解析工程で解析して出力した計3つの前記判定を、組み合わせることで、前記被検出物に含まれる前記金属物の3次元形状を特定し、前記3次元形状を特定するとき、第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ1次元と判定したとき、前記金属物が1次元形状を有し、第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ2次元と判定したとき、前記金属物が3次元形状を有し、第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、2次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有し、第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が2次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の金属物の形状判定方法によると、金属物の形状を判別して検知できるようになった。
本発明の金属物の形状判定方法によると、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される金属物と、故意的に入れた金属異物、又は製造時に誤って偶然に混入された金属異物を形状判別にて区別して検知できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の金属検出器1の概要を図示している。
【図2】図2は、センサーコイルの構成例を示す図であり、図2(a)はセンサーコイル5の正面図、図2(b)は図2(a)の平面図、及び図2(c)は図2(a)のA−A線の切断断面図である。
【図3】図3は、磁石ブースター8の配置例を示す図である。
【図4】図4は、磁石ブースター8の配置例示す図である。
【図5】図5は、金属検出器1の制御部3の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6は、検出信号の波形例を示す概念図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の金属検出器1で被検出物を検知する様子を説明するための図である。
【図8】図8は、金属物の形状を示すパターンを示す図である。
【図9】図9は、金属検出器1の制御部3で、金属物の形状判定をするときの動作例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、センサーコイルの付近を棒状の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。
【図11】図11は、センサーコイルの付近を四角形状の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。
【図12】図12は、センサーコイルの付近を円形の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。
【図13】図13は、実施例1において、針等の棒状の金属物を、被検出物2に刺した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の金属検出器1の概要を図示している。金属検出器1は、被検出物2の中の金属物を検知又は探知して通知するためのものである。被検出物2は、例えば、食品、医薬品等の商品である。これらの被検出物2は、包装材等で包装されて、又は、容器に入っていることが一般的である。被検出物2は、食品を包む容器であるアルミニウム包装袋で、食品が包装されていることもある。また、金属検出器1は、これらの被検出物2に混入された金属異物を検知するものである。
【0021】
被検出物2は、鉄粉からなる脱酸素剤、金属製の蓋や、金属製の名札等の金属構造物を有することができる。金属検出器1は、この金属構造物と、金属異物を形状分けして検出するものである。以下、その検知原理から、金属物の形状を判定する判定ルールを詳細に説明する。
〔金属検出器の概要〕
金属検出器1は、被検出物2を搬送するための搬送手段である滑り台4、制御部3、センサーコイル5、6からなる。
【0022】
また、滑り台4は、複数のローラ(図示せず。)の上を被検出物2を滑らすものである。搬送手段は、この滑り台4に限定されるものではない。搬送手段は、片方に設けられた駆動用モータによってエンドレスのベルトを回転駆動し、被検出物2をベルトの上に載せて搬送するベルトコンベヤでも良い。搬送手段は、人間の手によって被検出物2を搬送するものでも良い。図1の中には、被検出物2を搬送する搬送方向を矢印で示している。被検出物2が搬送される搬送路中、滑り台4の長さ方向の中央あたりに制御部3と、センサーコイル5,6が配置されている。
【0023】
センサーコイル5,6は、金属物や金属異物等の磁性体金属から発生する磁界の乱れの変化を検知するためのもので、磁界の変化に応じた電圧又は電流の検出信号を出力する。制御部3は、センサーコイル5,6から受信した検出信号を信号処理して、被検出物2の中に金属異物があるか否かを判定するものである。この実施の形体においては、センサーコイル5とセンサーコイル6は、同一構造のもので、その構造に関する詳細な説明は後述する。
【0024】
制御部3は、センサーコイル5及び/又はセンサーコイル6からの検出信号を受信して、それを信号処理して、被検出物2中に金属異物があるか否かの判定を行い、その旨を通知(警告音、表示等)するものである。制御部3は、センサーコイル5及び/又はセンサーコイル6から信号を受信する場所であれば、任意の場所に設置できる。金属検出器1は、被検出物2の有無を検知するための光センサー7を備えている。光センサー7は、センサーコイル5及びセンサーコイル6の手前側に設置される。
【0025】
光センサー7は、被検出物2が搬送されてセンサーコイル5とセンサーコイル6に入るタイミングを検知し、この検知を制御部3へ送信するためのものである。言い換えると、被検出物2の搬送方向で見ると、被検出物2は、光センサー7を通過し、センサーコイル5とセンサーコイル6の間の空間を通過する。光センサー7は、被検出物2がセンサーコイル5とセンサーコイル6の間に入るときのタイミングを検出でき、この検出した信号を制御部3に送信できるものであれば、任意の形状、任意の構造、任意の動作方式のものであることができる。
【0026】
制御部3は、光センサー7からの信号を受信して、被検出物2がセンサーコイル5とセンサーコイル6を通過する際のタイミングを計算でき、それを用いてセンサーコイル5,6からの検出信号を解析し、被検出物2に金属異物が含まれているか否かを判定する。被検出物2に金属異物が含まれている場合、制御部3は、その旨の出力信号を出力する。この出力信号は、金属検出器1に設けられている、又は接続されている電動アーム(図示せず)等の他の装置へ送られ、金属異物を含む被検出物2を取り除く等の必要な処理が行われる。
【0027】
制御部3は、駆動されている滑り台4の搬送速度が把握できる必要がある。この搬送速度の把握と計算は、周知の技術でかつ本発明の要旨ではないのでその説明は略する。センサーコイル5とセンサーコイル6には、被検出物2に含まれる磁性体金属を磁化、磁化強化するため、センサーコイル5,6の長さに対応する磁石ブースター8が取り付けられている。この磁石ブースター8については後述する。
【0028】
〔センサーコイル〕
センサーコイル5とセンサーコイル6は、互いに所定の距離離れて配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6は、平行な2つの面に配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6の間の空間を、被検出物2が通過する。図1の例では、センサーコイル5とセンサーコイル6は、滑り台4を挟んで上下に配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6は、滑り台4と平行な面に配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6は、細長い形状をしており、互いに平行になるように配置されている。
【0029】
センサーコイル5とセンサーコイル6は、この例で同一の構造であるので、センサーコイル5を例にその構造を説明する。図2は、センサーコイル5の構造例を示す図である。図2(a)はセンサーコイル5の正面図、図2(b)は図2(a)の平面図、及び図2(c)は図2(a)のA−A線の切断断面図である。センサーコイル5は、図2(a)に示すように細長い棒状の形をする。センサーコイル5は、細長い棒状の形状をし、かつ、断面構造がE形である導電性材料の鉄心10の溝部に沿って、コイル11を巻き付けた構成である。
【0030】
鉄心10は珪素鋼板やアモルファスなどの板を積層して構成される。あるいは、フェライトコア、永久磁石などを使っても良い。センサーコイル5には、微小な電圧が印加される。殆ど電流が流れない設計になっている。センサーコイル5の磁化(B−H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用して、金属物の検知を行う。この磁化特性、その利用方法についての技術思想は、特許文献1に詳しく述べている。特許文献1の発明が全部又はその一部は、本発明を構成する。
【0031】
ただし、センサーコイル5,6に印加される電圧、電流、その周波数は、全部又は一部が、本願発明の実施の形態で特許文献1と異なる値でも良い。センサーコイル5,6には、特別に、電流供給、電圧印加がされていなくても、検知動作する。例えば、センサーコイル5,6には、増幅器のバイアス電圧を印加しておく。これにより、増幅器の入力バイアス電流がセンサーコイル5,6のコイル11に流れることになる。これに、周辺磁界の変化に伴って、センサーコイル5,6を横切る磁束が変化すると、センサーコイル5,6を流れる電流及び/又は電圧が変化し、出力信号となる。
【0032】
〔磁石ブースター〕
センサーコイル5,6に直接取り付けられた磁石ブースター8の動きは、磁性体金属物を磁化し、その直後にこの磁性体金属物がセンサーコイル5,6によってセンシング可能にすることである。本発明の実施の形態の金属検出器1の磁石ブースター8は、磁性体金属を磁化、磁化強化するためのものである。被検出物2に含まれる金属物や金属異物が十分な強度で磁化されているとき、磁石ブースター8は必要ではない。本発明のセンサーコイル5、6は、主に、1mm以下の微小な金属を検知するために用いられている。
【0033】
そのために、被検出物2に含まれる金属物や金属異物を少しでも磁化強化し、検知感度をあげるために、磁石ブースター8が役立っている。図3と図4には、磁石ブースター8の例を図示している。本実施の形態においては、磁石ブースター8は、永久磁石からなる。図3に図示したように、磁石ブースター8は、複数の磁石要素8aから構成されており、その磁石要素8aは、センサーコイル5とセンサーコイル6へ同じ磁極を向くように配置されている。図3の例では、磁石要素8aは、S極をセンサーコイル5へ向けて配置されている。金属検出器1に磁石ブースター8を用いると、被検出物中2の磁性体を磁化又は磁化強化しながら、金属検出器1が金属物を検出することが可能となる。
【0034】
センサーコイル5,6は、そのセンサーコイル5,6の付近の磁界の変化を検出して検出信号を出力する。センサーコイル5,6の付近の磁界は、磁石ブースター8で形成される静磁界と、センサーコイル5,6により形成される磁界によるものである。磁石ブースター8が、センサーコイル5,6に固定されているため、対称な磁界が形成されるのではなく、不平等な磁界が形成される。この不平等な磁界を被検出物2が横切って通過することになる。このことは、後述する、実施例の図10、図11、及び図12に図示されている。
【0035】
図10、図11、及び図12から明らかなように、磁界は、磁石ブースター8の近傍で強く、かつ不平等になっている。この不平等な磁力線の形成は、磁石ブースター8の片方にセンサーコイル5,6があり、磁石ブースター8の磁界とセンサーコイル5,6と相互作用によるものである。磁石ブースター8から発生する磁力線が、センサーコイル5,6を鎖交する。金属物がこの磁界を横切りと、磁界が乱れ、センサーコイル5,6に鎖交する磁束が変化する。センサーコイル5,6を鎖交する磁束の時間的変化の割合が、センサーコイル5,6の検出電圧又は検出電流となって検出信号になる。
【0036】
図4に図示したように、磁石ブースター8は、S極をセンサーコイル5とセンサーコイル6へ向くように配置されている。磁石ブースター8は、センサーコイル5とセンサーコイル6の長手軸と平行になるように配置されている。センサーコイル5の近傍に微小な金属破片が接近したとき、例えばオーステナイト系のステンレス(SUS304など)が、破断、潰れ、曲がり、欠けなどの塑性変形により、マルテンサイト誘起変態を起こして弱い磁性をもった部分が磁石ブースター8の静磁界の働きにより磁化し磁極を生じさせる。
【0037】
この磁極の変化がセンサーコイル5の磁界へ影響を与え、この影響に対応する出力をセンサーコイル5が検出信号として出力する。この検出信号を後段の回路で信号解析して、金属異物か否かを判定する。磁石ブースター8の長さは、センサーコイル5又はセンサーコイル6と同じ長さのものが理想的である。磁石ブースター8の静磁界の働きにより金属物を磁化し磁極を生じさせると、検出感度が従来より著しく向上する。特に、磁化強化の効果が大きい強磁性体にとっては、磁石ブースター8の影響で検出感度が向上するという効果が大きい。
【0038】
強磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルトの混入物、及びこれらの合金、マルテンサイト系ステンレス等が例示できる。センサーコイル5,6の側面に設けた磁石ブースター8で、空間的に不平等な磁場が形成される。つまり、3次元的に不平等な磁場形状になる。形状の異なる金属物がその磁場を通過すると、その搬送速度と形状によって時間的、空間的に磁場の変化が異なり、したがって、センサーコイル5,6の鎖交磁束が、金属物の形状に依存して変化する。この鎖交磁束の変化を受け、最終的に、センサーコイル5,6から出力される出力信号が、金属物の形状別にユニークに発生する。
【0039】
よって、各センサーコイル5,6からは、金属の形状別にそれぞれ異なる信号が出力されると言える。
〔金属検出器1のブロック図〕
図5は、金属検出器1の中の信号処理の概要を示すブロック図である。センサーコイル5,6から検出信号が出力される。この検出信号は、微弱な信号あるため、それを増幅器20で増幅し、増幅された検出信号からLPF21で高周波成分をカットする。更に、LPF21から出力される信号を増幅器22で増幅し、この増幅された信号からフィルタ23で直流電源による成分をカットする。
【0040】
フィルタ23から出力された信号を波形整形器24で波形整形し、ディジタルコンピュータ処理部25に入力する。ディジタルコンピュータ処理部25は、信号を解析して、金属異物であるか否かの判定を行い、この判定の結果を信号出力する。波形整形器24では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、かつ受信感度の調整を行って、ディジタルコンピュータ処理部25へ出力する。波形整形器24は、振幅比較/信号抽出回路、搬送速度タイミング回路等から構成されている。
【0041】
また、ディジタルコンピュータ処理部25は、光センサー7から被検査物2の信号を受け取り、被検出物2がセンサーユニット5,6を通過する情報を得る。よって、ディジタルコンピュータ処理部25は、波形整形器24からのディジタル信号を受信し、上記の滑り台4の搬送速度、被検出物2の通過信号等と合わせて、被検出物2中に含まれる金属異物を判定する。センサーコイル5、6の出力信号が後段の回路の信号処理に必要な強度を有し、十分な強度を有するときは、増幅器20は必然的なものではない。LPF21から出力される信号が後段の回路の信号処理に必要な強度を有し、十分な強度を有するときは、増幅器22は必然的なものではない。
【0042】
〔異物形状による判定ルール〕
図6は、センサーコイル5又はセンサーコイル6で、被検出物2を検出した検出信号の波形例を示す図である。図6は、一本のセンサーコイル5又はセンサーコイル6で、被検出物2を検出した検出信号の波形例を示す図である。検出信号は、複数の波形からなっている。図6(a)と図6(b)の横軸は、被検出物2が、センサーコイル5、6の付近を通るときの時間を示す時間軸である。図6(a)と図6(b)の縦軸は、電圧の振幅を示す。
【0043】
そして、各符号a’、a、b、c、及びdは、検出信号の各波形の最大強度を示している。被検出物2がセンサーコイル5、6の付近に近付いてから、通り過ぎるまでの間は、センサーコイル5、6は、a’、a、b、c、及びdの波形を示す検出信号を出力する。センサーコイル5、6から出力される検出信号は、アナログ信号の波形であり、雑音信号が含まれていることが一般的である。そのために、検出信号をA/D変換し、アナログの検出信号をディジタル信号(離散値)にする。
【0044】
A/D変換された複数のサンプリング離散値はメモリーに蓄え、そのサンプリング値の前後の複数のサンプリング値の移動平均を取って、滑らかにする。このようにすると、検出信号は、なめらかになり、信号処理が容易になる。言い換えると、被検出物2がセンサーコイル5、6の付近に近付いてから、通り過ぎるまでの間に、センサーコイル5、6で検出された波形を規格化すると、被検出物2に含まれる金属物の形状によって、波形a’、a、b、c、及びdが全部又はその一部が、センサーコイル5、6から出力される。
【0045】
図6(a)は、センサーコイル5,6で検出した検出信号を示している。図6(b)は、この検出信号を、信号処理して、その絶対値強度に変換したものである。このときの、各波形は、a’、a、b、c、及びdに対応してA’、A、B、C、及び、Dである。波形A’〜Dは、波形a’〜dの絶対値強度である。金属物がセンサーコイル5,6の間の空間を通過するとき、センサーコイル5とセンサーコイル6で検知した場合、金属物からセンサーコイル5までの位置と、金属物からセンサーコイル6までの位置が異なる。
【0046】
従って、センサーコイル5とセンサーコイル6からは、異なる強度の波形を有する検出信号が出力される。金属物が、センサーコイル5,6の間の全く中央なら、センサーコイル5とセンサーコイル6で同じ大きさの信号を検出する。金属物が、センサーコイル5,6の間を通過するとき、センサーコイル5とセンサーコイル6で検知した場合、それぞれの検出信号に大小がでるが、両検出信号の波形は相関があり、波形の形状がほぼ同じである。特に、センサーコイル5、6の極近傍でこの効果が大きく現れるので、センサーコイル5で微小破片を確実に検出することが可能である。
【0047】
図7は、本発明の実施の形態の金属検出器1で被検出物2を検知する様子を説明するための図である。この例では、被検出物2は、立体構造のもので、その各面を次のように定義する。まず、滑り台4の上側に設置されたセンサーコイル5へ向く被検出物2の面をA面とする。滑り台4の下側に設置されたセンサーコイル6へ向く被検出物2の面をC面とする。この図面で、紙面の表へ向く被検出物2の面をB面とする。この図面で、紙面の裏へ向く被検出物2の面をB’面とする。
【0048】
被検出物2の搬送方向に垂直な面は、D面とD’面とする。D面とD’面の内、最初のセンサーコイル5を通過する面は、D面とする。図8は、金属検出器1で検出された金属物の検出波形パターンを示す表である。金属物が、針等の細長いものと、鉄粉等の体積を有するものの場合、その検出波形を示す。この表の第1欄は、金属物の種類を示している。この表の第2欄は、第1欄の金属物が、被検出物2の中で配置された位置を示している。例えば、針1は、C面に対して90度となるように配置されている。
【0049】
この表の第3欄と第4欄は、金属物を特定するための条件である第1判定ルールと第2判定ルールを示している。この表の第5欄は、検出された波形の形状を示している。金属物が針1の場合、針1は、被検出物2のC面に90度となるように配置され、第1判定ルールはh1≠0、第2判定ルールはh2≠1になっており、波形A、B、及びCが検出されている。しかし、波形Dは、検出されていない。
【0050】
このh1は、波形A,B、C及びDの最大値強度によって求められ、次の式になる。
〔第1判定ルール〕 h1=(A+D)/(B+C)
同様に、第2判定ルールのh2は、波形B、Cの最大値強度によって求められ、次の式になる。
〔第2判定ルール〕 h2=B/C
この表から明らかなように、針1〜4のように、棒状の金属物は、波形BとCを有し、かつ、波形A又は波形Dを有する。金属物が鉄粉の場合は、波形BとCのみが検出され、波形Aと波形Dは検出されない。
【0051】
そして、図8の表の第5欄に図示されていないが、第3判定ルールがある。第3判定ルールは、h3が0より大きいか否かを判定する。波形A’によって、判定するものである。棒状の金属物は、常に波形a’、A’を有する。
〔第3判定ルール〕 h3=A’
さらに、波形Dに注目すると、棒状の金属物の場合は、波形Dは立ち上がり信号になる。
【0052】
〔判定フローチャート〕
図9は、金属検出器1で金属物の形状判定をする動作例を示すフローチャートである。金属検出器1の制御部3は、判定を開始する(ステップ1)。まず、制御部3は、第3判定ルールで判定をする(ステップ2)。第3判定ルールでは、h3が0より大きいか否かを判定する(ステップ2)。h3が0より大きい場合は、1次元材料と判定する(ステップ9)。この第3判定ルールは、波形a’によるものである。言い換えると、波形A’があるか否かで、1次元材料を判定する。
【0053】
第3判定ルールが満たされない場合は、第1判定ルールと第2判定ルールを満たしているか否かを確認する(ステップ3~5)。第1判定ルールは、h1の値が0であるか否かを確認する(ステップ3)。第2判定ルールでは、h2の値が1であるか否かを確認する(ステップ4、5)。第1判定ルールと第2判定ルールの両方の判定が「はい」で、第1判定ルールと第2判定ルールの両方を満たしている場合は、2次元材料であると判定する(ステップ3→5→8)。
【0054】
第1判定ルールと第2判定ルールの両方の判定が「いいえ」で、第1判定ルールと第2判定ルールの両方を満たしていない場合は、1次元材料であると判定する(ステップ3→4→6)。第1判定ルールと第2判定ルールの片方を満たしている場合は、判定不可のものであると判定する(ステップ3→4又は5→7)。
【0055】
A’、A、B、C、及びDは、回路上の特性から、まったく0になることはまれである。そのため、基本的に、0近傍の値か、他の波形と比べ、ずっと小さい値の場合、0とみなして、各計算をする。同様に、A、B、C、及びDの内の2つの値が互いに所定範囲以内であるとき、その2つの値を同じ値とする。この所定範囲は、例えば5%、10%、20%等のように決められるものであり、金属検出器1の判定精度になる。この所定範囲が大きくなれば、誤検知が少なくなる。h3のA’は、回路上の特性から、まったく0になることはまれである。
【0056】
そのため、基本的に、0近傍の値か、他の波形と比べ、ずっと小さい値の場合、h3を0とみなして、各計算をする。h1の場合も同様に、AとDの値が、同時に、又は、片方でも、0になることはまれである。そのため、基本的に、0近傍の値か、他の波形と比べ、ずっと小さい値の場合、AとDを0とみなして、各計算をする。また、同様に、h2の場合は、BとCが、まったく同じ値になることは、まれであり、基本的に、所定範囲内の値で、ほぼ同じ値の場合、BとCを同じ値とみなして、各計算をする。
【0057】
本実施の形態において、金属検出器1は、金属物の形状判定をする手段として、ディジタルコンピュータ処理部25を用いている。ディジタルコンピュータ処理部25は、図示しないが、少なくともも、中央処理装置(CPU)、メモリ(RAM、ROM等)からなり、メモリに格納されたプログラムを、中央処理装置で実行し、金属物の形状判定をする。このプログラムは、特に、図9に図示したプローチャートの各ステップを中央処理装置に実行させるものである。また、ディジタルコンピュータ処理部25は、中央処理装置とメモリからなるマイクロコンピュータの他に、それと同じ動作を、アナログ回路又はディジタル回路からなる回路手段で実現できる。このとき、図9のフローチャートの各ステップは、それぞれ回路手段として実現される。
【0058】
〔FEMM解析〕
センサーコイル5,6の付近を、棒状の金属物が通過するときの磁場の変化はコンピュータシュミレーションで解析できる。図10は、センサーコイル5,6の付近を棒状の金属物が通過するときの解析結果を示す図である。この解析は、磁場解析手法の一つであるFEMM(Finite Element Method Magnetics)解析を使って行われた。FEMM解析は、有限要素法を用いて磁場を解析するための解析手法であり、低周波数の交番磁場、静磁場の解析に幅広く利用されている。図中は、同一電位を示す磁力線を実線で示している。
【0059】
まず、図10(a)は、棒状の金属物が、センサーコイル5,6に近付いているときの磁場を示す図である。このシミュレーションでは、図1、図2、図3、及び図4に図示したセンサーコイル5,6及び、磁石ブースター8が想定された。図10(b)は、棒状の金属物がセンサーコイル6に近付くに連れて、磁場が変化し始めている様子を示している。図10(c)は、棒状の金属物がセンサーコイル6の隣に来ており、磁場の乱れが大きくなっていることを示している。
【0060】
図10(d)は、棒状の金属物がセンサーコイル5とセンサーコイル6の間の位置に来ていることを示している。図10(e)は、棒状の金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎているときの磁場の様子を示している。このとき、磁場の乱れが大きいままである。ここから、磁場の乱れが小さくなり、図10(f)に示すように、棒状の金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎたとき、磁場が図10(a)のような状態に戻っている。この解析からわかるように、磁性体の金属物がセンサーコイル5,6の付近を通り過ぎると、センサーコイル5,6から発生している磁場が乱れることが分かる。
【0061】
図11は、センサーコイル5,6の付近を四角形状の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。図12は、センサーコイル5,6の付近を円形の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。これらの図11と図12は、図10と同様に、金属物がセンサーコイル5,6の付近を通過するときの磁場の様子を示すものである。図11(a)と図12(a)は、金属物が、センサーコイル5,6に近付いているときの磁場を示す図である。
【0062】
図11(b)と図12(b)は、金属物がセンサーコイル6に近付くに連れて、磁場が変化し始めている様子を示している。図11(c)と図12(c)は、金属物がセンサーコイル6の隣に来ており、磁場の乱れが大きくなっていることを示している。図11(d)と図12(d)は、金属物がセンサーコイル5とセンサーコイル6の間の位置に来ていることを示している。図11(e)と図12(e)は、金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎているときの磁場の様子を示している。図11(f)と図12(f)は、金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎたときの磁場を示している。図10、図11、及び、図12に例示したこのFEMM解析は、本願発明の発明者等が、金属物検知の業界でも、学会でも、初めて行ったものである。
【0063】
[実施例]
ここで、実施例を説明する。この実施例は、金属異物検出機を用いて、針、鉄粉等の金属物を測定した。この実施例に用いた金属異物検出機は、トック・エンジニアリング社製(日本国東京都立川市)の金属異物検出機『お見通し(登録商標)』NIP-IIIDのセンサーの一部を変更したものである。つまり、従来の金属異物検出機のマグネットの長さ及びその配置場所を変更した。
【0064】
変更後の状態は、図1に図示した。また、金属異物検出機のベルトコンベアを滑り台4に変更した。具体的には金属異物検出機のベルトコンベアのプーリーを交換し、滑り台4の搬送速度が40〜150m/minにし、その速度の被検出物2を検知して、データを採取可能にした。この速度で、信号判定が可能である。人間が被検出物2を手で持って、被検出物2を動かし得る速度を80〜90m/minと仮定した。
【0065】
この金属異物検出機のセンサーコイルには、電圧が特別に印加されていない。センサーコイルには、OPアンプのバイアス電圧が印加された。センサーコイルは、E型のコアにコイルを巻いた構造ものである。センサーコイルのコイルが抵抗を通してOPアンプの入力に接続されている構造にした。従って、OPアンプの入力バイアス電流がコイルに流れる。電流を供給するための電源は、OPアンプの電源電圧で±15Vであった。
【0066】
被検出材料は、一次元の材料として縫い針、二次元の材料としてエージレス(登録商標)を用いた。この縫い針は、長さが42mm、最大径が0.8mm、材質が鋼である一般的な針である。このエージレスは、長さが30.5mm、幅が20.5mm、厚さが3mmで、中身は鉄粉である。図13は、被検出物2の説明のための図で、針等の棒状の金属物を刺して様子を説明する図である。被検出物2は、図13に示したように、辺の長さが115cmの正立方体である。
【0067】
被検出物の中に配置された被検出材料は、図7、図13に示したように、被検出物2を各辺を定義した。図13に示すように、被検出材料を、各面A〜Dに対して角度を付けて配置した。そして、一次元材料と二次元材料は、センサーコイルに対するその傾きを変化させて測定を行った。また、センサーコイル5センサーコイル6の間隔は、155mmであった。この間隔は、滑り台4を基準にしている。被検出物2の搬送速度は、80m/min、90m/minであった。
【0068】
センサーコイル6の上面と、被検出物2の下面のC面との距離は、5mmであった。二次元材料の試験ではB面とD面の測定を、下部のセンサーコイル6から10mm、57.5mm、105mmの三段階の高さで実施した。さらに、追加測定として、上下のセンサーコイル5,6の中間である高さ75.5mmにおいても、測定を行った。検出信号は、信号増幅アンプの2段目から信号を取得した。この検出信号の取得には、オシロスコープ(テクトロにクス社製)を用いた。検出信号の採取は、1msec毎に行い、計n=10000回行った。
【0069】
そして、下側センサーコイルからの検出信号のみを評価した。オシロスコープで採取したデータを以下の手順で整形した。まず、データは、検出信号から1024個のデータを抽出した。上述の信号周波数はFFT解析の結果20Hz以下であったので、これを、フーリエ変換し、ローパスフィルタで50Hz以上の周波数のデータをカットした。そして、さらに、逆フーリエ変換した。逆フーリエ変換されたデータを、絶対値のデータに変換した。
【0070】
最後に、このデータを、上述の第1〜3判定ルールに従って判定を行い、金属物の形状を判定した。針又はエージレスを被検出物2の各面A〜Dに配置して、センサーコイル6で、検出し判定した。次の表1、2は、このとき、針又はエージレスを下センサー単独又は上センサー単独で正確に判定できた判定率を示したものである。この判定率は、第1〜3判定ルールを総括したものである。従って、上下のセンサーコイル5,6を組み合わせるとほぼ100%の判定率となる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
針を被検出物2の各面Cから所定の高さに配置して、センサーコイル6で、検出し判定した。次の表3は、このとき、針を正確に判定できた判定率を示したものである。
【0074】
【表3】
【0075】
〔三次元形状の認識〕
針等の線状のものは、一次元の被検出物である。鉄粉等の面状のものは、二次元の被検出物である。このように、一次元と二次元の被検出物の形状検出は、3本のE型コアのセンサーコイルを用いて、その検出信号を信号処理することで実現することができる。しかし、立体の被検出物である三次元の被検出物の形状検出には、3本以上のE型コアのセンサーコイルが必要になる。
【0076】
この4本のE型コアセンサーコイルの個別信号を、組み合わせることで三次元認識処理が可能となる。センサーコイル5とセンサーコイル6と垂直な面で、搬送方向と平行な面において、第3センサーコイルを用いることができる。図7で説明すると、センサーコイル5とセンサーコイル6は、A面とC面に平行であり、第3センサーコイルは、B面に平行なもので、側面センサーコイルとも言える。従って、側面センサーコイルで検出した検出信号の波形は、上下のセンサーコイル5,6と異なり、上下のセンサーコイル5,6で針が平行の場合の信号と同じである。
【0077】
センサーコイル5、センサーコイル6、及び、側面センサーコイルからの3つの検出信号それぞれを、信号解析して出力した計3つの判定を、組み合わせることで、被検出物2に含まれる金属物の3次元形状が特定できる。例えば、3つのセンサーコイルで検出した検出信号が、全部、1次元形状を有するものあれば、金属物が1次元形状のものと断定できる。3つのセンサーコイルで検出した検出信号が、全部、2次元形状を有するものあれば、金属物が3次元形状のものと断定できる。
【0078】
同様に、3つのセンサーコイルの内2の検出信号が、2次元形状を示し、残りのセンサーコイルの検出信号が、1次元形状を示すとき、金属物が2次元形状のものと断定できる。そして、互いに平行に配置されていない、2つのセンサーコイルの検出信号が2次元形状を示すとき、金属物が2次元形状のものと断定できる。互いに平行に配置されていない、2つのセンサーコイルの検出信号が1次元形状を示すとき、金属物が1次元形状のものと断定できる。
【0079】
このように、3本のセンサーコイルからの波形を使い、物体の形状だけでなく位置や大きさ、傾きまで解析するアルゴリズムが作成できる。無論、センサーコイルの数を増やし、例えば、4本、5本を用い、検知精度を更に向上させることができる。しかしながら、理論的には可能であるが、全ての金属物体の形状を認識できているのではなく粉、直線、丸物(塊)、立方体角状が判定きる程度である。今回の実施例では、粉末の集合体のエージレスと、針の違いが判別できた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、金属物を、その形状別に検知して利用する分野に利用するとよい、特に、医薬品、化粧品、食料品の製造分野で、製品の中に混入した金属異物検知に利用すると良い。本発明は、アルミニウム蒸着、又はアルミニウム箔等で等の導電性の包装材料で包まれた被検出物2中に混入した磁性体の金属物を検知する。被検出物2としては、冷凍食品、穀物等の食品素材、医薬品、工業用材料等に混入した磁性体金属異物を検知する分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…金属検出器
2…被検出物
3…制御部
4…滑り台
5,6…センサーコイル
7…光センサー
8…磁石ブースター
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を検知するための金属物の形状判定方法に関する。更に詳しくは、磁性体の針、粉末などの形状の金属を、形状別に検知する金属物の形状判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属物の検出装置は、様々な分野で利用されている。その代表的な例は、商品の製造工程で、商品に混入した金属異物の検出である。具体的には、食料品、医薬品等の検査対象物の製造工程などにおいて、検査対象物の中に金属破片などをはじめとする異物が混入されることがある。検査対象物の安全性を保証するためには、金属異物が混入した検査対象物からこの異物を排除する必要があるので、この金属異物を検知することが不可欠である。更に、商品の製造工程のみでなくスーパーマーケットやコンビニエンスストアといった小売店の店頭で食品に針を混入させる手口の偽計業務妨害が相次いでいる。これらも同様に検出し排除する必要がある。
【0003】
本発明の出願人等は、特許文献1、2に記載の発明を提案した。特許文献1、2に記載の装置は、被検出物中の金属異物を検知するものである。ここで提案したセンサーコイルを用いて、微小な磁性体の検知に成功した。具体的には、特許文献1には、被検出物中に混入した金属異物を検知する金属異物検知方法と金属異物検知装置を開示している。この発明によると、被検出物中に混入したステンレス等の金属異物を検知するのみならず、導電性の包装材料で包まれた食品、医薬品、工業 用材料等の被検出物中に混入した金属異物も検知できる。
【0004】
日本国特許第3857271号の金属異物検知方法は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて、前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出工程とからなる金属異物検知方法において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力工程と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定するために信号を解析する信号解析工程とからなり、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B−H)特性の内、前記磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、前記電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
【0005】
日本国特許第3857271号の金属異物検知装置は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送するための搬送路を有する搬送手段と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出手段とからなる金属異物検知装置において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させ、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力手段と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定する信号解析による信号解析手段とを有し、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B−H)特性の内、前記磁化特性を表す磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものである前記コイルに流される電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
また、この金属異物検知装置の前記検出部は、前記金属異物からの前記検出磁界は、前記微少磁界に影響を与えて前記コイルに印加された前記電圧、又は前記コイルを流れる前記電流の前記周波数が変化して、前記検出信号を出力する。
【0006】
特許文献1のこの金属異物検知装置は、コアに導線を巻いた構成の1つのコイルを有した検出部により微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した金属異物からの検出磁界をコイルの検出電圧、又は検出電流として検出して検出信号を出力するものである。微少磁界は、コイルに、数百Hzから数十kHzの周波数の印加される電圧、又は供給される電流が微少で、かつコイルを構成するコアの磁化(B−H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものである。
【0007】
金属異物がコイル付近を通過するとき、コイルに鎖交する磁力線の形成が乱れ、信号電圧の振幅、位相、周波数が変化し、これにより、金属異物を検知する。この装置は、1mm以下の金属異物を検知できる優れた感度をもつものである。また、アルミニウム包装内の針等の細長い金属物と、金属粉末からなる酸化防止剤の検知が可能である。本発明の出願人が出願し権利化された特許文献3には、「金属探知機用センサーと金属探知機」を開示している。特許文献3に開示されたこの金属探知機用センサーは、被検出物中の金属物を探知するための金属探知機用センサーであって、前記コアに接触して配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化するための磁石とからなる。
【0008】
特許文献3に開示されたこの金属探知機は、被検出物を搬送する搬送路を有する搬送手段と、前記搬送路の途中に設けられ、電流を流して磁界を発生させるための導線のコイルが金属のコアに巻かれたセンサーコイルとからなる金属探知機において、前記センサーコイルにより発生される磁界の及ぶ範囲に配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化する磁石とからなり、前記電流は交番磁界を発生させるための交流電流であり、前記磁石は前記コアに接触して配置されている磁石であることを特徴とする。
【0009】
詳しくは、コイルセンサー近傍、又は直接センサーに磁石を固定し、センサーコイルに鎖交する不平等な静磁場を形成させている。被検出物がこの不平等磁場を横切ったとき金属異物が1時的に磁化されると同時に、磁化された被検出物から発生する磁場が、センサーコイルに鎖交する磁場を乱す。その磁場乱れをセンサーコイルが検出信号として送出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3857271号
【特許文献2】特開2005−188985号公報
【特許文献3】特許第3875161号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、食品製造業や医薬品製造業で汎用されている金属検出器は、金属がセンサー付近に侵入した場合に渦電流による磁界が生じて金属として認識しているが、金属の大きさや形状認識を行っていない。更に、従来の検出機は、製品の一部が金属で構成されていたり、金属粉からなる脱酸素剤などの金属物が故意に封入された場合など、金属異物として誤検知する。たとえば、製品を金属の蓋のある容器に入れる場合は、蓋をする前に内容物に対して、金属異物の検査をしなければならず、異物混入の危険性が高い包装工程では金属異物の検査を実施することができない。このため、製品製造時の検査工程や異物検査の信頼性に多くの制限がかかっている。
【0012】
また、製品の一部を金属のワイヤで巻いたり、封し包装したりするときも、金属のワイヤは、金属異物検知装置に検知され、金属異物と区別することができない。又、製品の中や包装面に、金属プレートを付けることもある。よって、金属異物検知装置においては、製品にわざといれた金属物を金属異物と区別できることが望まれている。
【0013】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、金属物の形状を判別して検知できる金属物の形状判定方法を提供する。
本発明の他の目的は、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される金属物と、金属異物とを区別して検知できる金属物の形状判定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の発明1の金属物の形状判定方法は、被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、かつ、センサーコイルの近傍に配置された磁石ブースターで、前記被検出物中の磁性体を磁化又は磁化強化しながら、前記センサーコイルの付近の磁界の変化を前記センサーコイルにより検出して検出信号を出力して、前記被検出物中の金属物を検出するための金属物検出工程とからなる金属物検知方法であって、前記金属物が前記センサーコイル付近を通過するとき、(I)前記磁石ブースターにより形成されたもので前記センサーコイルと鎖交する不平等な前記磁界を前記金属物が横切り、(II)前記金属物が前記磁界を横切ることによって前記磁界が乱れ、(III)前記センサーコイルに鎖交する磁束が変化し、(IV)前記センサーコイルを鎖交する前記磁束の時間的変化の割合が、前記センサーコイルの検出電圧又は検出電流となって前記検出信号を出力する検出信号出力工程と、及び、前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を解析して前記金属物の形状を特定する信号解析工程とからなり、前記検出信号の信号波形は、線状(1次元)、面状(2次元)、球状(3次元)、及び、塊状(多次元)の中から選択される一形状の金属の形状に依存して変化し、前記信号解析工程は、前記検出信号の前記信号波形を、予め測定されたもので、前記金属の形状を示す値と比較して、前記金属物の形状を特定することを特徴とする。
【0015】
本発明の発明2の金属物の形状判定方法は、発明1において、前記(不平等)磁界は、前記磁石ブースターを構成する磁石が同一磁極を前記センサーコイル(の長て方向)に向けて前記センサーコイルに固定されて形成された磁界であることを特徴とする。
本発明の発明3の金属物の形状判定方法は、発明1又は2において、前記信号解析工程で、前記検出信号の波形の中に、3個以上のピーク値があるとき、棒状の金属であると判定し、前記検出信号の波形の中に、2個のピーク値のみがあるとき、金属粉であると判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の発明4の金属物の形状判定方法は、発明1又は2において、前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を規格化して規格化信号に変換し、前記規格化信号は、その時間軸の先頭から第1領域〜第5領域の5領域に分け、第1領域(A’)の前記規格化信号に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、前記第1領域(A’)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形があり、更に、前記第2領域(A)と前記第5領域(D)の1つの領域に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、前記第1領域(A’)、前記第2領域(A)、及び、前記第5領域(D)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に2次元の金属物が含まれていると判定することを特徴とする。
【0017】
本発明の発明5の金属物の形状判定方法は、発明1又は2において、前記搬送路と平行な面に第1の前記センサーコイルを配置し、前記第1の前記センサーコイルと平行で、前記搬送路を挟んで、前記搬送路と平行な面に第2の前記センサーコイルを配置し、前記搬送路と平行で、前記第1及び前記第2の前記センサーコイルと直交する面に第3の前記センサーコイルを配置し、前記検出信号出力工程は、前記第1〜第3の前記センサーコイルそれぞれの前記検出信号の3つの前記検出信号を出力し、前記3つの前記検出信号それぞれを、前記信号解析工程で解析して出力した計3つの前記判定を、組み合わせることで、前記被検出物に含まれる前記金属物の3次元形状を特定し、前記3次元形状を特定するとき、第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ1次元と判定したとき、前記金属物が1次元形状を有し、第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ2次元と判定したとき、前記金属物が3次元形状を有し、第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、2次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有し、第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が2次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の金属物の形状判定方法によると、金属物の形状を判別して検知できるようになった。
本発明の金属物の形状判定方法によると、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される金属物と、故意的に入れた金属異物、又は製造時に誤って偶然に混入された金属異物を形状判別にて区別して検知できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の金属検出器1の概要を図示している。
【図2】図2は、センサーコイルの構成例を示す図であり、図2(a)はセンサーコイル5の正面図、図2(b)は図2(a)の平面図、及び図2(c)は図2(a)のA−A線の切断断面図である。
【図3】図3は、磁石ブースター8の配置例を示す図である。
【図4】図4は、磁石ブースター8の配置例示す図である。
【図5】図5は、金属検出器1の制御部3の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6は、検出信号の波形例を示す概念図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の金属検出器1で被検出物を検知する様子を説明するための図である。
【図8】図8は、金属物の形状を示すパターンを示す図である。
【図9】図9は、金属検出器1の制御部3で、金属物の形状判定をするときの動作例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、センサーコイルの付近を棒状の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。
【図11】図11は、センサーコイルの付近を四角形状の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。
【図12】図12は、センサーコイルの付近を円形の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。
【図13】図13は、実施例1において、針等の棒状の金属物を、被検出物2に刺した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態の金属検出器1の概要を図示している。金属検出器1は、被検出物2の中の金属物を検知又は探知して通知するためのものである。被検出物2は、例えば、食品、医薬品等の商品である。これらの被検出物2は、包装材等で包装されて、又は、容器に入っていることが一般的である。被検出物2は、食品を包む容器であるアルミニウム包装袋で、食品が包装されていることもある。また、金属検出器1は、これらの被検出物2に混入された金属異物を検知するものである。
【0021】
被検出物2は、鉄粉からなる脱酸素剤、金属製の蓋や、金属製の名札等の金属構造物を有することができる。金属検出器1は、この金属構造物と、金属異物を形状分けして検出するものである。以下、その検知原理から、金属物の形状を判定する判定ルールを詳細に説明する。
〔金属検出器の概要〕
金属検出器1は、被検出物2を搬送するための搬送手段である滑り台4、制御部3、センサーコイル5、6からなる。
【0022】
また、滑り台4は、複数のローラ(図示せず。)の上を被検出物2を滑らすものである。搬送手段は、この滑り台4に限定されるものではない。搬送手段は、片方に設けられた駆動用モータによってエンドレスのベルトを回転駆動し、被検出物2をベルトの上に載せて搬送するベルトコンベヤでも良い。搬送手段は、人間の手によって被検出物2を搬送するものでも良い。図1の中には、被検出物2を搬送する搬送方向を矢印で示している。被検出物2が搬送される搬送路中、滑り台4の長さ方向の中央あたりに制御部3と、センサーコイル5,6が配置されている。
【0023】
センサーコイル5,6は、金属物や金属異物等の磁性体金属から発生する磁界の乱れの変化を検知するためのもので、磁界の変化に応じた電圧又は電流の検出信号を出力する。制御部3は、センサーコイル5,6から受信した検出信号を信号処理して、被検出物2の中に金属異物があるか否かを判定するものである。この実施の形体においては、センサーコイル5とセンサーコイル6は、同一構造のもので、その構造に関する詳細な説明は後述する。
【0024】
制御部3は、センサーコイル5及び/又はセンサーコイル6からの検出信号を受信して、それを信号処理して、被検出物2中に金属異物があるか否かの判定を行い、その旨を通知(警告音、表示等)するものである。制御部3は、センサーコイル5及び/又はセンサーコイル6から信号を受信する場所であれば、任意の場所に設置できる。金属検出器1は、被検出物2の有無を検知するための光センサー7を備えている。光センサー7は、センサーコイル5及びセンサーコイル6の手前側に設置される。
【0025】
光センサー7は、被検出物2が搬送されてセンサーコイル5とセンサーコイル6に入るタイミングを検知し、この検知を制御部3へ送信するためのものである。言い換えると、被検出物2の搬送方向で見ると、被検出物2は、光センサー7を通過し、センサーコイル5とセンサーコイル6の間の空間を通過する。光センサー7は、被検出物2がセンサーコイル5とセンサーコイル6の間に入るときのタイミングを検出でき、この検出した信号を制御部3に送信できるものであれば、任意の形状、任意の構造、任意の動作方式のものであることができる。
【0026】
制御部3は、光センサー7からの信号を受信して、被検出物2がセンサーコイル5とセンサーコイル6を通過する際のタイミングを計算でき、それを用いてセンサーコイル5,6からの検出信号を解析し、被検出物2に金属異物が含まれているか否かを判定する。被検出物2に金属異物が含まれている場合、制御部3は、その旨の出力信号を出力する。この出力信号は、金属検出器1に設けられている、又は接続されている電動アーム(図示せず)等の他の装置へ送られ、金属異物を含む被検出物2を取り除く等の必要な処理が行われる。
【0027】
制御部3は、駆動されている滑り台4の搬送速度が把握できる必要がある。この搬送速度の把握と計算は、周知の技術でかつ本発明の要旨ではないのでその説明は略する。センサーコイル5とセンサーコイル6には、被検出物2に含まれる磁性体金属を磁化、磁化強化するため、センサーコイル5,6の長さに対応する磁石ブースター8が取り付けられている。この磁石ブースター8については後述する。
【0028】
〔センサーコイル〕
センサーコイル5とセンサーコイル6は、互いに所定の距離離れて配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6は、平行な2つの面に配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6の間の空間を、被検出物2が通過する。図1の例では、センサーコイル5とセンサーコイル6は、滑り台4を挟んで上下に配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6は、滑り台4と平行な面に配置されている。センサーコイル5とセンサーコイル6は、細長い形状をしており、互いに平行になるように配置されている。
【0029】
センサーコイル5とセンサーコイル6は、この例で同一の構造であるので、センサーコイル5を例にその構造を説明する。図2は、センサーコイル5の構造例を示す図である。図2(a)はセンサーコイル5の正面図、図2(b)は図2(a)の平面図、及び図2(c)は図2(a)のA−A線の切断断面図である。センサーコイル5は、図2(a)に示すように細長い棒状の形をする。センサーコイル5は、細長い棒状の形状をし、かつ、断面構造がE形である導電性材料の鉄心10の溝部に沿って、コイル11を巻き付けた構成である。
【0030】
鉄心10は珪素鋼板やアモルファスなどの板を積層して構成される。あるいは、フェライトコア、永久磁石などを使っても良い。センサーコイル5には、微小な電圧が印加される。殆ど電流が流れない設計になっている。センサーコイル5の磁化(B−H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用して、金属物の検知を行う。この磁化特性、その利用方法についての技術思想は、特許文献1に詳しく述べている。特許文献1の発明が全部又はその一部は、本発明を構成する。
【0031】
ただし、センサーコイル5,6に印加される電圧、電流、その周波数は、全部又は一部が、本願発明の実施の形態で特許文献1と異なる値でも良い。センサーコイル5,6には、特別に、電流供給、電圧印加がされていなくても、検知動作する。例えば、センサーコイル5,6には、増幅器のバイアス電圧を印加しておく。これにより、増幅器の入力バイアス電流がセンサーコイル5,6のコイル11に流れることになる。これに、周辺磁界の変化に伴って、センサーコイル5,6を横切る磁束が変化すると、センサーコイル5,6を流れる電流及び/又は電圧が変化し、出力信号となる。
【0032】
〔磁石ブースター〕
センサーコイル5,6に直接取り付けられた磁石ブースター8の動きは、磁性体金属物を磁化し、その直後にこの磁性体金属物がセンサーコイル5,6によってセンシング可能にすることである。本発明の実施の形態の金属検出器1の磁石ブースター8は、磁性体金属を磁化、磁化強化するためのものである。被検出物2に含まれる金属物や金属異物が十分な強度で磁化されているとき、磁石ブースター8は必要ではない。本発明のセンサーコイル5、6は、主に、1mm以下の微小な金属を検知するために用いられている。
【0033】
そのために、被検出物2に含まれる金属物や金属異物を少しでも磁化強化し、検知感度をあげるために、磁石ブースター8が役立っている。図3と図4には、磁石ブースター8の例を図示している。本実施の形態においては、磁石ブースター8は、永久磁石からなる。図3に図示したように、磁石ブースター8は、複数の磁石要素8aから構成されており、その磁石要素8aは、センサーコイル5とセンサーコイル6へ同じ磁極を向くように配置されている。図3の例では、磁石要素8aは、S極をセンサーコイル5へ向けて配置されている。金属検出器1に磁石ブースター8を用いると、被検出物中2の磁性体を磁化又は磁化強化しながら、金属検出器1が金属物を検出することが可能となる。
【0034】
センサーコイル5,6は、そのセンサーコイル5,6の付近の磁界の変化を検出して検出信号を出力する。センサーコイル5,6の付近の磁界は、磁石ブースター8で形成される静磁界と、センサーコイル5,6により形成される磁界によるものである。磁石ブースター8が、センサーコイル5,6に固定されているため、対称な磁界が形成されるのではなく、不平等な磁界が形成される。この不平等な磁界を被検出物2が横切って通過することになる。このことは、後述する、実施例の図10、図11、及び図12に図示されている。
【0035】
図10、図11、及び図12から明らかなように、磁界は、磁石ブースター8の近傍で強く、かつ不平等になっている。この不平等な磁力線の形成は、磁石ブースター8の片方にセンサーコイル5,6があり、磁石ブースター8の磁界とセンサーコイル5,6と相互作用によるものである。磁石ブースター8から発生する磁力線が、センサーコイル5,6を鎖交する。金属物がこの磁界を横切りと、磁界が乱れ、センサーコイル5,6に鎖交する磁束が変化する。センサーコイル5,6を鎖交する磁束の時間的変化の割合が、センサーコイル5,6の検出電圧又は検出電流となって検出信号になる。
【0036】
図4に図示したように、磁石ブースター8は、S極をセンサーコイル5とセンサーコイル6へ向くように配置されている。磁石ブースター8は、センサーコイル5とセンサーコイル6の長手軸と平行になるように配置されている。センサーコイル5の近傍に微小な金属破片が接近したとき、例えばオーステナイト系のステンレス(SUS304など)が、破断、潰れ、曲がり、欠けなどの塑性変形により、マルテンサイト誘起変態を起こして弱い磁性をもった部分が磁石ブースター8の静磁界の働きにより磁化し磁極を生じさせる。
【0037】
この磁極の変化がセンサーコイル5の磁界へ影響を与え、この影響に対応する出力をセンサーコイル5が検出信号として出力する。この検出信号を後段の回路で信号解析して、金属異物か否かを判定する。磁石ブースター8の長さは、センサーコイル5又はセンサーコイル6と同じ長さのものが理想的である。磁石ブースター8の静磁界の働きにより金属物を磁化し磁極を生じさせると、検出感度が従来より著しく向上する。特に、磁化強化の効果が大きい強磁性体にとっては、磁石ブースター8の影響で検出感度が向上するという効果が大きい。
【0038】
強磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルトの混入物、及びこれらの合金、マルテンサイト系ステンレス等が例示できる。センサーコイル5,6の側面に設けた磁石ブースター8で、空間的に不平等な磁場が形成される。つまり、3次元的に不平等な磁場形状になる。形状の異なる金属物がその磁場を通過すると、その搬送速度と形状によって時間的、空間的に磁場の変化が異なり、したがって、センサーコイル5,6の鎖交磁束が、金属物の形状に依存して変化する。この鎖交磁束の変化を受け、最終的に、センサーコイル5,6から出力される出力信号が、金属物の形状別にユニークに発生する。
【0039】
よって、各センサーコイル5,6からは、金属の形状別にそれぞれ異なる信号が出力されると言える。
〔金属検出器1のブロック図〕
図5は、金属検出器1の中の信号処理の概要を示すブロック図である。センサーコイル5,6から検出信号が出力される。この検出信号は、微弱な信号あるため、それを増幅器20で増幅し、増幅された検出信号からLPF21で高周波成分をカットする。更に、LPF21から出力される信号を増幅器22で増幅し、この増幅された信号からフィルタ23で直流電源による成分をカットする。
【0040】
フィルタ23から出力された信号を波形整形器24で波形整形し、ディジタルコンピュータ処理部25に入力する。ディジタルコンピュータ処理部25は、信号を解析して、金属異物であるか否かの判定を行い、この判定の結果を信号出力する。波形整形器24では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、かつ受信感度の調整を行って、ディジタルコンピュータ処理部25へ出力する。波形整形器24は、振幅比較/信号抽出回路、搬送速度タイミング回路等から構成されている。
【0041】
また、ディジタルコンピュータ処理部25は、光センサー7から被検査物2の信号を受け取り、被検出物2がセンサーユニット5,6を通過する情報を得る。よって、ディジタルコンピュータ処理部25は、波形整形器24からのディジタル信号を受信し、上記の滑り台4の搬送速度、被検出物2の通過信号等と合わせて、被検出物2中に含まれる金属異物を判定する。センサーコイル5、6の出力信号が後段の回路の信号処理に必要な強度を有し、十分な強度を有するときは、増幅器20は必然的なものではない。LPF21から出力される信号が後段の回路の信号処理に必要な強度を有し、十分な強度を有するときは、増幅器22は必然的なものではない。
【0042】
〔異物形状による判定ルール〕
図6は、センサーコイル5又はセンサーコイル6で、被検出物2を検出した検出信号の波形例を示す図である。図6は、一本のセンサーコイル5又はセンサーコイル6で、被検出物2を検出した検出信号の波形例を示す図である。検出信号は、複数の波形からなっている。図6(a)と図6(b)の横軸は、被検出物2が、センサーコイル5、6の付近を通るときの時間を示す時間軸である。図6(a)と図6(b)の縦軸は、電圧の振幅を示す。
【0043】
そして、各符号a’、a、b、c、及びdは、検出信号の各波形の最大強度を示している。被検出物2がセンサーコイル5、6の付近に近付いてから、通り過ぎるまでの間は、センサーコイル5、6は、a’、a、b、c、及びdの波形を示す検出信号を出力する。センサーコイル5、6から出力される検出信号は、アナログ信号の波形であり、雑音信号が含まれていることが一般的である。そのために、検出信号をA/D変換し、アナログの検出信号をディジタル信号(離散値)にする。
【0044】
A/D変換された複数のサンプリング離散値はメモリーに蓄え、そのサンプリング値の前後の複数のサンプリング値の移動平均を取って、滑らかにする。このようにすると、検出信号は、なめらかになり、信号処理が容易になる。言い換えると、被検出物2がセンサーコイル5、6の付近に近付いてから、通り過ぎるまでの間に、センサーコイル5、6で検出された波形を規格化すると、被検出物2に含まれる金属物の形状によって、波形a’、a、b、c、及びdが全部又はその一部が、センサーコイル5、6から出力される。
【0045】
図6(a)は、センサーコイル5,6で検出した検出信号を示している。図6(b)は、この検出信号を、信号処理して、その絶対値強度に変換したものである。このときの、各波形は、a’、a、b、c、及びdに対応してA’、A、B、C、及び、Dである。波形A’〜Dは、波形a’〜dの絶対値強度である。金属物がセンサーコイル5,6の間の空間を通過するとき、センサーコイル5とセンサーコイル6で検知した場合、金属物からセンサーコイル5までの位置と、金属物からセンサーコイル6までの位置が異なる。
【0046】
従って、センサーコイル5とセンサーコイル6からは、異なる強度の波形を有する検出信号が出力される。金属物が、センサーコイル5,6の間の全く中央なら、センサーコイル5とセンサーコイル6で同じ大きさの信号を検出する。金属物が、センサーコイル5,6の間を通過するとき、センサーコイル5とセンサーコイル6で検知した場合、それぞれの検出信号に大小がでるが、両検出信号の波形は相関があり、波形の形状がほぼ同じである。特に、センサーコイル5、6の極近傍でこの効果が大きく現れるので、センサーコイル5で微小破片を確実に検出することが可能である。
【0047】
図7は、本発明の実施の形態の金属検出器1で被検出物2を検知する様子を説明するための図である。この例では、被検出物2は、立体構造のもので、その各面を次のように定義する。まず、滑り台4の上側に設置されたセンサーコイル5へ向く被検出物2の面をA面とする。滑り台4の下側に設置されたセンサーコイル6へ向く被検出物2の面をC面とする。この図面で、紙面の表へ向く被検出物2の面をB面とする。この図面で、紙面の裏へ向く被検出物2の面をB’面とする。
【0048】
被検出物2の搬送方向に垂直な面は、D面とD’面とする。D面とD’面の内、最初のセンサーコイル5を通過する面は、D面とする。図8は、金属検出器1で検出された金属物の検出波形パターンを示す表である。金属物が、針等の細長いものと、鉄粉等の体積を有するものの場合、その検出波形を示す。この表の第1欄は、金属物の種類を示している。この表の第2欄は、第1欄の金属物が、被検出物2の中で配置された位置を示している。例えば、針1は、C面に対して90度となるように配置されている。
【0049】
この表の第3欄と第4欄は、金属物を特定するための条件である第1判定ルールと第2判定ルールを示している。この表の第5欄は、検出された波形の形状を示している。金属物が針1の場合、針1は、被検出物2のC面に90度となるように配置され、第1判定ルールはh1≠0、第2判定ルールはh2≠1になっており、波形A、B、及びCが検出されている。しかし、波形Dは、検出されていない。
【0050】
このh1は、波形A,B、C及びDの最大値強度によって求められ、次の式になる。
〔第1判定ルール〕 h1=(A+D)/(B+C)
同様に、第2判定ルールのh2は、波形B、Cの最大値強度によって求められ、次の式になる。
〔第2判定ルール〕 h2=B/C
この表から明らかなように、針1〜4のように、棒状の金属物は、波形BとCを有し、かつ、波形A又は波形Dを有する。金属物が鉄粉の場合は、波形BとCのみが検出され、波形Aと波形Dは検出されない。
【0051】
そして、図8の表の第5欄に図示されていないが、第3判定ルールがある。第3判定ルールは、h3が0より大きいか否かを判定する。波形A’によって、判定するものである。棒状の金属物は、常に波形a’、A’を有する。
〔第3判定ルール〕 h3=A’
さらに、波形Dに注目すると、棒状の金属物の場合は、波形Dは立ち上がり信号になる。
【0052】
〔判定フローチャート〕
図9は、金属検出器1で金属物の形状判定をする動作例を示すフローチャートである。金属検出器1の制御部3は、判定を開始する(ステップ1)。まず、制御部3は、第3判定ルールで判定をする(ステップ2)。第3判定ルールでは、h3が0より大きいか否かを判定する(ステップ2)。h3が0より大きい場合は、1次元材料と判定する(ステップ9)。この第3判定ルールは、波形a’によるものである。言い換えると、波形A’があるか否かで、1次元材料を判定する。
【0053】
第3判定ルールが満たされない場合は、第1判定ルールと第2判定ルールを満たしているか否かを確認する(ステップ3~5)。第1判定ルールは、h1の値が0であるか否かを確認する(ステップ3)。第2判定ルールでは、h2の値が1であるか否かを確認する(ステップ4、5)。第1判定ルールと第2判定ルールの両方の判定が「はい」で、第1判定ルールと第2判定ルールの両方を満たしている場合は、2次元材料であると判定する(ステップ3→5→8)。
【0054】
第1判定ルールと第2判定ルールの両方の判定が「いいえ」で、第1判定ルールと第2判定ルールの両方を満たしていない場合は、1次元材料であると判定する(ステップ3→4→6)。第1判定ルールと第2判定ルールの片方を満たしている場合は、判定不可のものであると判定する(ステップ3→4又は5→7)。
【0055】
A’、A、B、C、及びDは、回路上の特性から、まったく0になることはまれである。そのため、基本的に、0近傍の値か、他の波形と比べ、ずっと小さい値の場合、0とみなして、各計算をする。同様に、A、B、C、及びDの内の2つの値が互いに所定範囲以内であるとき、その2つの値を同じ値とする。この所定範囲は、例えば5%、10%、20%等のように決められるものであり、金属検出器1の判定精度になる。この所定範囲が大きくなれば、誤検知が少なくなる。h3のA’は、回路上の特性から、まったく0になることはまれである。
【0056】
そのため、基本的に、0近傍の値か、他の波形と比べ、ずっと小さい値の場合、h3を0とみなして、各計算をする。h1の場合も同様に、AとDの値が、同時に、又は、片方でも、0になることはまれである。そのため、基本的に、0近傍の値か、他の波形と比べ、ずっと小さい値の場合、AとDを0とみなして、各計算をする。また、同様に、h2の場合は、BとCが、まったく同じ値になることは、まれであり、基本的に、所定範囲内の値で、ほぼ同じ値の場合、BとCを同じ値とみなして、各計算をする。
【0057】
本実施の形態において、金属検出器1は、金属物の形状判定をする手段として、ディジタルコンピュータ処理部25を用いている。ディジタルコンピュータ処理部25は、図示しないが、少なくともも、中央処理装置(CPU)、メモリ(RAM、ROM等)からなり、メモリに格納されたプログラムを、中央処理装置で実行し、金属物の形状判定をする。このプログラムは、特に、図9に図示したプローチャートの各ステップを中央処理装置に実行させるものである。また、ディジタルコンピュータ処理部25は、中央処理装置とメモリからなるマイクロコンピュータの他に、それと同じ動作を、アナログ回路又はディジタル回路からなる回路手段で実現できる。このとき、図9のフローチャートの各ステップは、それぞれ回路手段として実現される。
【0058】
〔FEMM解析〕
センサーコイル5,6の付近を、棒状の金属物が通過するときの磁場の変化はコンピュータシュミレーションで解析できる。図10は、センサーコイル5,6の付近を棒状の金属物が通過するときの解析結果を示す図である。この解析は、磁場解析手法の一つであるFEMM(Finite Element Method Magnetics)解析を使って行われた。FEMM解析は、有限要素法を用いて磁場を解析するための解析手法であり、低周波数の交番磁場、静磁場の解析に幅広く利用されている。図中は、同一電位を示す磁力線を実線で示している。
【0059】
まず、図10(a)は、棒状の金属物が、センサーコイル5,6に近付いているときの磁場を示す図である。このシミュレーションでは、図1、図2、図3、及び図4に図示したセンサーコイル5,6及び、磁石ブースター8が想定された。図10(b)は、棒状の金属物がセンサーコイル6に近付くに連れて、磁場が変化し始めている様子を示している。図10(c)は、棒状の金属物がセンサーコイル6の隣に来ており、磁場の乱れが大きくなっていることを示している。
【0060】
図10(d)は、棒状の金属物がセンサーコイル5とセンサーコイル6の間の位置に来ていることを示している。図10(e)は、棒状の金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎているときの磁場の様子を示している。このとき、磁場の乱れが大きいままである。ここから、磁場の乱れが小さくなり、図10(f)に示すように、棒状の金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎたとき、磁場が図10(a)のような状態に戻っている。この解析からわかるように、磁性体の金属物がセンサーコイル5,6の付近を通り過ぎると、センサーコイル5,6から発生している磁場が乱れることが分かる。
【0061】
図11は、センサーコイル5,6の付近を四角形状の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。図12は、センサーコイル5,6の付近を円形の金属物が通過するときの磁界を、FEMM解析で解析した結果を示す図である。これらの図11と図12は、図10と同様に、金属物がセンサーコイル5,6の付近を通過するときの磁場の様子を示すものである。図11(a)と図12(a)は、金属物が、センサーコイル5,6に近付いているときの磁場を示す図である。
【0062】
図11(b)と図12(b)は、金属物がセンサーコイル6に近付くに連れて、磁場が変化し始めている様子を示している。図11(c)と図12(c)は、金属物がセンサーコイル6の隣に来ており、磁場の乱れが大きくなっていることを示している。図11(d)と図12(d)は、金属物がセンサーコイル5とセンサーコイル6の間の位置に来ていることを示している。図11(e)と図12(e)は、金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎているときの磁場の様子を示している。図11(f)と図12(f)は、金属物がセンサーコイル5,6を通り過ぎたときの磁場を示している。図10、図11、及び、図12に例示したこのFEMM解析は、本願発明の発明者等が、金属物検知の業界でも、学会でも、初めて行ったものである。
【0063】
[実施例]
ここで、実施例を説明する。この実施例は、金属異物検出機を用いて、針、鉄粉等の金属物を測定した。この実施例に用いた金属異物検出機は、トック・エンジニアリング社製(日本国東京都立川市)の金属異物検出機『お見通し(登録商標)』NIP-IIIDのセンサーの一部を変更したものである。つまり、従来の金属異物検出機のマグネットの長さ及びその配置場所を変更した。
【0064】
変更後の状態は、図1に図示した。また、金属異物検出機のベルトコンベアを滑り台4に変更した。具体的には金属異物検出機のベルトコンベアのプーリーを交換し、滑り台4の搬送速度が40〜150m/minにし、その速度の被検出物2を検知して、データを採取可能にした。この速度で、信号判定が可能である。人間が被検出物2を手で持って、被検出物2を動かし得る速度を80〜90m/minと仮定した。
【0065】
この金属異物検出機のセンサーコイルには、電圧が特別に印加されていない。センサーコイルには、OPアンプのバイアス電圧が印加された。センサーコイルは、E型のコアにコイルを巻いた構造ものである。センサーコイルのコイルが抵抗を通してOPアンプの入力に接続されている構造にした。従って、OPアンプの入力バイアス電流がコイルに流れる。電流を供給するための電源は、OPアンプの電源電圧で±15Vであった。
【0066】
被検出材料は、一次元の材料として縫い針、二次元の材料としてエージレス(登録商標)を用いた。この縫い針は、長さが42mm、最大径が0.8mm、材質が鋼である一般的な針である。このエージレスは、長さが30.5mm、幅が20.5mm、厚さが3mmで、中身は鉄粉である。図13は、被検出物2の説明のための図で、針等の棒状の金属物を刺して様子を説明する図である。被検出物2は、図13に示したように、辺の長さが115cmの正立方体である。
【0067】
被検出物の中に配置された被検出材料は、図7、図13に示したように、被検出物2を各辺を定義した。図13に示すように、被検出材料を、各面A〜Dに対して角度を付けて配置した。そして、一次元材料と二次元材料は、センサーコイルに対するその傾きを変化させて測定を行った。また、センサーコイル5センサーコイル6の間隔は、155mmであった。この間隔は、滑り台4を基準にしている。被検出物2の搬送速度は、80m/min、90m/minであった。
【0068】
センサーコイル6の上面と、被検出物2の下面のC面との距離は、5mmであった。二次元材料の試験ではB面とD面の測定を、下部のセンサーコイル6から10mm、57.5mm、105mmの三段階の高さで実施した。さらに、追加測定として、上下のセンサーコイル5,6の中間である高さ75.5mmにおいても、測定を行った。検出信号は、信号増幅アンプの2段目から信号を取得した。この検出信号の取得には、オシロスコープ(テクトロにクス社製)を用いた。検出信号の採取は、1msec毎に行い、計n=10000回行った。
【0069】
そして、下側センサーコイルからの検出信号のみを評価した。オシロスコープで採取したデータを以下の手順で整形した。まず、データは、検出信号から1024個のデータを抽出した。上述の信号周波数はFFT解析の結果20Hz以下であったので、これを、フーリエ変換し、ローパスフィルタで50Hz以上の周波数のデータをカットした。そして、さらに、逆フーリエ変換した。逆フーリエ変換されたデータを、絶対値のデータに変換した。
【0070】
最後に、このデータを、上述の第1〜3判定ルールに従って判定を行い、金属物の形状を判定した。針又はエージレスを被検出物2の各面A〜Dに配置して、センサーコイル6で、検出し判定した。次の表1、2は、このとき、針又はエージレスを下センサー単独又は上センサー単独で正確に判定できた判定率を示したものである。この判定率は、第1〜3判定ルールを総括したものである。従って、上下のセンサーコイル5,6を組み合わせるとほぼ100%の判定率となる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
針を被検出物2の各面Cから所定の高さに配置して、センサーコイル6で、検出し判定した。次の表3は、このとき、針を正確に判定できた判定率を示したものである。
【0074】
【表3】
【0075】
〔三次元形状の認識〕
針等の線状のものは、一次元の被検出物である。鉄粉等の面状のものは、二次元の被検出物である。このように、一次元と二次元の被検出物の形状検出は、3本のE型コアのセンサーコイルを用いて、その検出信号を信号処理することで実現することができる。しかし、立体の被検出物である三次元の被検出物の形状検出には、3本以上のE型コアのセンサーコイルが必要になる。
【0076】
この4本のE型コアセンサーコイルの個別信号を、組み合わせることで三次元認識処理が可能となる。センサーコイル5とセンサーコイル6と垂直な面で、搬送方向と平行な面において、第3センサーコイルを用いることができる。図7で説明すると、センサーコイル5とセンサーコイル6は、A面とC面に平行であり、第3センサーコイルは、B面に平行なもので、側面センサーコイルとも言える。従って、側面センサーコイルで検出した検出信号の波形は、上下のセンサーコイル5,6と異なり、上下のセンサーコイル5,6で針が平行の場合の信号と同じである。
【0077】
センサーコイル5、センサーコイル6、及び、側面センサーコイルからの3つの検出信号それぞれを、信号解析して出力した計3つの判定を、組み合わせることで、被検出物2に含まれる金属物の3次元形状が特定できる。例えば、3つのセンサーコイルで検出した検出信号が、全部、1次元形状を有するものあれば、金属物が1次元形状のものと断定できる。3つのセンサーコイルで検出した検出信号が、全部、2次元形状を有するものあれば、金属物が3次元形状のものと断定できる。
【0078】
同様に、3つのセンサーコイルの内2の検出信号が、2次元形状を示し、残りのセンサーコイルの検出信号が、1次元形状を示すとき、金属物が2次元形状のものと断定できる。そして、互いに平行に配置されていない、2つのセンサーコイルの検出信号が2次元形状を示すとき、金属物が2次元形状のものと断定できる。互いに平行に配置されていない、2つのセンサーコイルの検出信号が1次元形状を示すとき、金属物が1次元形状のものと断定できる。
【0079】
このように、3本のセンサーコイルからの波形を使い、物体の形状だけでなく位置や大きさ、傾きまで解析するアルゴリズムが作成できる。無論、センサーコイルの数を増やし、例えば、4本、5本を用い、検知精度を更に向上させることができる。しかしながら、理論的には可能であるが、全ての金属物体の形状を認識できているのではなく粉、直線、丸物(塊)、立方体角状が判定きる程度である。今回の実施例では、粉末の集合体のエージレスと、針の違いが判別できた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、金属物を、その形状別に検知して利用する分野に利用するとよい、特に、医薬品、化粧品、食料品の製造分野で、製品の中に混入した金属異物検知に利用すると良い。本発明は、アルミニウム蒸着、又はアルミニウム箔等で等の導電性の包装材料で包まれた被検出物2中に混入した磁性体の金属物を検知する。被検出物2としては、冷凍食品、穀物等の食品素材、医薬品、工業用材料等に混入した磁性体金属異物を検知する分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…金属検出器
2…被検出物
3…制御部
4…滑り台
5,6…センサーコイル
7…光センサー
8…磁石ブースター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、
前記搬送路の途中に設けられ、かつ、センサーコイルの近傍に配置された磁石ブースターで、前記被検出物中の磁性体を磁化又は磁化強化しながら、前記センサーコイルの付近の磁界の変化を前記センサーコイルにより検出して検出信号を出力して、前記被検出物中の金属物を検出するための金属物検出工程と
からなる金属物検知方法であって、
前記金属物が前記センサーコイル付近を通過するとき、(I)前記磁石ブースターにより形成されたもので前記センサーコイルと鎖交する不平等な前記磁界を前記金属物が横切り、(II)前記金属物が前記磁界を横切ることによって前記磁界が乱れ、(III)前記センサーコイルに鎖交する磁束が変化し、(IV)前記センサーコイルを鎖交する前記磁束の時間的変化の割合が、前記センサーコイルの検出電圧又は検出電流となって前記検出信号を出力する検出信号出力工程と、及び、
前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を解析して前記金属物の形状を特定する信号解析工程と
からなり、
前記検出信号の信号波形は、線状(1次元)、面状(2次元)、球状(3次元)、及び、塊状(多次元)の中から選択される一形状の金属の形状に依存して変化し、
前記信号解析工程は、前記検出信号の前記信号波形を、予め測定されたもので、前記金属の形状を示す値と比較して、前記金属物の形状を特定する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属物の形状判定方法において、
前記(不平等)磁界は、前記磁石ブースターを構成する磁石が同一磁極を前記センサーコイル(の長て方向)に向けて前記センサーコイルに固定されて形成された磁界である
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属物の形状判定方法において、
前記信号解析工程で、
前記検出信号の波形の中に、3個以上のピーク値があるとき、棒状の金属であると判定し、
前記検出信号の波形の中に、2個のピーク値のみがあるとき、金属粉であると判定する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属物の形状判定方法において、
前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を規格化して規格化信号に変換し、
前記規格化信号は、その時間軸の先頭から第1領域〜第5領域の5領域に分け、
第1領域(A’)の前記規格化信号に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、
前記第1領域(A’)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形があり、更に、前記第2領域(A)と前記第5領域(D)の1つの領域に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、
前記第1領域(A’)、前記第2領域(A)、及び、前記第5領域(D)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に2次元の金属物が含まれていると判定する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金属物の形状判定方法において、
前記搬送路と平行な面に第1の前記センサーコイルを配置し、
前記第1の前記センサーコイルと平行で、前記搬送路を挟んで、前記搬送路と平行な面に第2の前記センサーコイルを配置し、
前記搬送路と平行で、前記第1及び前記第2の前記センサーコイルと直交する面に第3の前記センサーコイルを配置し、
前記検出信号出力工程は、前記第1〜第3の前記センサーコイルそれぞれの前記検出信号の3つの前記検出信号を出力し、
前記3つの前記検出信号それぞれを、前記信号解析工程で解析して出力した計3つの前記判定を、組み合わせることで、前記被検出物に含まれる前記金属物の3次元形状を特定し、
前記3次元形状を特定するとき、
第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ1次元と判定したとき、前記金属物が1次元形状を有し、
第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ2次元と判定したとき、前記金属物が3次元形状を有し、
第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、2次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有し、
第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が2次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項1】
被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、
前記搬送路の途中に設けられ、かつ、センサーコイルの近傍に配置された磁石ブースターで、前記被検出物中の磁性体を磁化又は磁化強化しながら、前記センサーコイルの付近の磁界の変化を前記センサーコイルにより検出して検出信号を出力して、前記被検出物中の金属物を検出するための金属物検出工程と
からなる金属物検知方法であって、
前記金属物が前記センサーコイル付近を通過するとき、(I)前記磁石ブースターにより形成されたもので前記センサーコイルと鎖交する不平等な前記磁界を前記金属物が横切り、(II)前記金属物が前記磁界を横切ることによって前記磁界が乱れ、(III)前記センサーコイルに鎖交する磁束が変化し、(IV)前記センサーコイルを鎖交する前記磁束の時間的変化の割合が、前記センサーコイルの検出電圧又は検出電流となって前記検出信号を出力する検出信号出力工程と、及び、
前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を解析して前記金属物の形状を特定する信号解析工程と
からなり、
前記検出信号の信号波形は、線状(1次元)、面状(2次元)、球状(3次元)、及び、塊状(多次元)の中から選択される一形状の金属の形状に依存して変化し、
前記信号解析工程は、前記検出信号の前記信号波形を、予め測定されたもので、前記金属の形状を示す値と比較して、前記金属物の形状を特定する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属物の形状判定方法において、
前記(不平等)磁界は、前記磁石ブースターを構成する磁石が同一磁極を前記センサーコイル(の長て方向)に向けて前記センサーコイルに固定されて形成された磁界である
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属物の形状判定方法において、
前記信号解析工程で、
前記検出信号の波形の中に、3個以上のピーク値があるとき、棒状の金属であると判定し、
前記検出信号の波形の中に、2個のピーク値のみがあるとき、金属粉であると判定する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属物の形状判定方法において、
前記被検出物が前記センサーコイルに入力するタイミングから、前記センサーコイルを通過して出ていくタイミングまでの前記検出信号を規格化して規格化信号に変換し、
前記規格化信号は、その時間軸の先頭から第1領域〜第5領域の5領域に分け、
第1領域(A’)の前記規格化信号に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、
前記第1領域(A’)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形があり、更に、前記第2領域(A)と前記第5領域(D)の1つの領域に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に1次元の金属物が含まれていると判定し、
前記第1領域(A’)、前記第2領域(A)、及び、前記第5領域(D)に所定強度以上の波形が無く、前記第3領域(B)及び前記第4領域(C)に所定強度以上の波形がある場合、前記被検出物に2次元の金属物が含まれていると判定する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金属物の形状判定方法において、
前記搬送路と平行な面に第1の前記センサーコイルを配置し、
前記第1の前記センサーコイルと平行で、前記搬送路を挟んで、前記搬送路と平行な面に第2の前記センサーコイルを配置し、
前記搬送路と平行で、前記第1及び前記第2の前記センサーコイルと直交する面に第3の前記センサーコイルを配置し、
前記検出信号出力工程は、前記第1〜第3の前記センサーコイルそれぞれの前記検出信号の3つの前記検出信号を出力し、
前記3つの前記検出信号それぞれを、前記信号解析工程で解析して出力した計3つの前記判定を、組み合わせることで、前記被検出物に含まれる前記金属物の3次元形状を特定し、
前記3次元形状を特定するとき、
第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ1次元と判定したとき、前記金属物が1次元形状を有し、
第1及び/又は第3、及び第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、それぞれ2次元と判定したとき、前記金属物が3次元形状を有し、
第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、2次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有し、
第1又は第3の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が2次元と判定し、かつ、第2の前記センサーコイルで検出した前記検出信号が、1次元と判定したとき、前記金属物が2次元形状を有する
ことを特徴とする金属物の形状判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−122897(P2011−122897A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279927(P2009−279927)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(599058866)トック・エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(599058866)トック・エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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