説明

金属積層構造体の製造方法

【課題】厚みを薄くすることができるとともに効率的に製造することが可能な金属積層構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の金属層と、第2の金属層と、第3の金属層と、を備え、第1の金属層は第2の金属層の一方の表面上に設置され、第3の金属層は第2の金属層の他方の表面上に設置されており、第1の金属層は、タングステンを含み、第2の金属層は、銅を含み、第3の金属層は、タングステンを含む金属積層構造体を製造する方法であって、第2の金属層の一方の表面上に第1の金属層を溶融塩浴めっきにより形成する工程と、第2の金属層の他方の表面上に第3の金属層を溶融塩浴めっきにより形成する工程と、を含み、溶融塩浴めっきに用いられる溶融塩浴は、フッ化カリウムと、酸化ホウ素と、酸化タングステンとを含む混合物を溶融して作製されたものである、金属積層構造体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属積層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばLED(Light Emitting Diode)素子などの半導体装置においては、半導体素子の駆動時に発生する熱を外部に放熱するための放熱基板(ヒートシンク)を設置することが一般的に行なわれている。
【0003】
たとえば特許文献1(特許第2860037号公報)には、圧延法を用いて作製された直径200mmで厚み0.465mmのCu板と、Cu板と同じ直径で厚み0.090mmのMo板とをCu板/Mo板/Cu板の順に重ね合わせた状態でホットプレスを行なうことによって厚さ1.02mmのCu/Mo/Cuクラッド材を作製し、これを半導体装置の放熱基板として用いることが記載されている(特許文献1の段落[0034]〜[0049]等)。
【0004】
また、特許文献1には、Moの代わりにWを用いた場合にも同様の製造方法によって信頼性の高いクラッド材が得られることも記載されている(特許文献1の段落[0033])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2860037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の放熱基板の厚さは1.02mmと非常に厚いため、放熱基板に薄さが要求された場合に対応することができないという問題があった。
【0007】
また、Mo板やW板については、圧延できる厚みに制約があるため、放熱基板の全体の厚さを薄くすることが困難であるという問題もあった。
【0008】
さらに、上記のホットプレスのように、クラッド材の作製ごとにCu板およびMo板をそれぞれホットプレス装置内に設置し、ホットプレス後にホットプレス装置内からクラッド材を取り出すという製造方法では、効率的に放熱基板を作製することができないという問題もあった。
【0009】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、厚みを薄くすることができるとともに効率的に製造することが可能な金属積層構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の金属層と、第2の金属層と、第3の金属層と、を備え、第1の金属層は第2の金属層の一方の表面上に設置され、第3の金属層は第2の金属層の他方の表面上に設置されており、第1の金属層は、タングステンを含み、第2の金属層は、銅を含み、第3の金属層は、タングステンを含む金属積層構造体を製造する方法であって、第2の金属層の一方の表面上に第1の金属層を溶融塩浴めっきにより形成する工程と、第2の金属層の他方の表面上に第3の金属層を溶融塩浴めっきにより形成する工程と、を含み、溶融塩浴めっきに用いられる溶融塩浴は、フッ化カリウムと、酸化ホウ素と、酸化タングステンとを含む混合物を溶融して作製されたものである、金属積層構造体の製造方法である。
【0011】
また、本発明の金属積層構造体の製造方法においては、第1の金属層の厚さと第2の金属層の厚さと第3の金属層の厚さとの和に対する第1の金属層の厚さと第3の金属層の厚さとの和の比が0.2以上0.8以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の金属積層構造体は、第1の金属層の第2の金属層の設置側とは反対側に第4の金属層を形成する工程と、第3の金属層の第2の金属層の設置側とは反対側に第5の金属層を形成する工程とを含み、第4の金属層および第5の金属層はそれぞれ銅を含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の金属積層構造体の製造方法においては、第1の金属層の厚さと第2の金属層の厚さと第3の金属層の厚さと第4の金属層の厚さと第5の金属層の厚さとの和に対する第1の金属層の厚さと第3の金属層の厚さとの和の比が0.2以上0.8以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の金属積層構造体の製造方法においては、第1の金属層と第4の金属層との間、および第3の金属層と第5の金属層との間の少なくとも一方の間にコバルト含有層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明の金属積層構造体の製造方法においては、コバルト含有層の厚さが0.05μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の金属積層構造体の製造方法においては、金属積層構造体の全体の厚さが20μm以上400μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、厚みを薄くすることができるとともに効率的に製造することが可能な金属積層構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の金属積層構造体の一例の模式的な断面図である。
【図2】本発明の金属積層構造体の製造方法の一例を図解する模式的な構成図である。
【図3】本発明の金属積層構造体の製造方法の一例を図解する模式的な構成図である。
【図4】本発明の金属積層構造体を用いた半導体装置の一例であるLED素子の一例の模式的な断面図である。
【図5】本発明の金属積層構造体の他の一例の模式的な断面図である。
【図6】本発明の金属積層構造体の製造方法の一例を図解する模式的な構成図である。
【図7】本発明の金属積層構造体の製造方法の一例を図解する模式的な構成図である。
【図8】本発明の金属積層構造体のさらに他の一例の模式的な断面図である。
【図9】実施例1〜4で用いられた装置の模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0020】
<金属積層構造体>
図1に、本発明の金属積層構造体の一例の模式的な断面図を示す。ここで、金属積層構造体100は、第1の金属層1と、第1の金属層1上に設置された第2の金属層2と、第2の金属層2上に設置された第3の金属層3との積層構造体から構成されている。すなわち、金属積層構造体100において、第1の金属層1は第2の金属層2の一方の表面上に設置され、第3の金属層3は第2の金属層2の他方の表面上に設置されている。
【0021】
ここで、第1の金属層1は、タングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を含む金属からなる金属層であり、なかでも、金属積層構造体100の厚みを薄くして金属積層構造体100を効率的に製造する観点からは、第1の金属層1は、めっきにより形成されたタングステン層またはモリブデン層であることが好ましい。
【0022】
また、第2の金属層2は、銅を含む金属からなる金属層であり、なかでも、金属積層構造体100の厚みを薄くして金属積層構造体100を効率的に製造する観点からは、第2の金属層2はたとえば銅箔などの銅の薄板であることが好ましい。
【0023】
また、第3の金属層3は、タングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を含む金属からなる金属層であり、なかでも、金属積層構造体100の厚みを薄くして金属積層構造体100を効率的に製造する観点からは、第3の金属層3は、めっきにより形成されたタングステン層またはモリブデン層であることが好ましい。
【0024】
また、金属積層構造体100の全体の厚さhは、20μm以上400μm以下であることが好ましい。金属積層構造体100の厚さhが20μm以上400μm以下である場合には、金属積層構造体100の厚みを薄くして金属積層構造体100を効率的に製造することができる傾向が大きくなる。
【0025】
また、金属積層構造体100において、第1の金属層1の厚さh1と第2の金属層2の厚さh2と第3の金属層3の厚さh3との和(h1+h2+h3)に対する第1の金属層1の厚さh1と第3の金属層3の厚さh3との和(h1+h3)の比[(h1+h3)/(h1+h2+h3)]が0.2以上0.8以下であることが好ましい。上記の比が0.2以上0.8以下である場合には、金属積層構造体100の線膨張が大きくなりすぎず、かつ熱伝導率も小さくなりすぎないため、たとえばヒートシンクとして金属積層構造体100を半導体装置の半導体基板に貼り付けた場合に、金属積層構造体100と当該半導体基板との熱膨張の差異があまり大きくなることなく、金属積層構造体100の放熱機能を十分に発揮することができる傾向にある。
【0026】
また、金属積層構造体100の反りを抑制するためには、金属積層構造体100の厚み方向の中央部(この例では、金属積層構造体100の全体の厚さhの1/2の部分)から上方の部分と積層構造体の厚み方向の中央部から下方の部分とが積層構造体の厚み方向の中央部に関して対称となっていることが好ましい。なお、本発明において、「対称」は、金属積層構造体100の厚み方向の中央部から上端面までを鉛直方向の上方に進む場合に現れる層の材質と厚さとが、金属積層構造体100の厚み方向の中央部から下端面までを鉛直方向の下方に進む場合と完全に同一である場合だけなく同等程度である場合も含む概念である。
【0027】
<金属積層構造体の製造方法>
以下、図1に示す金属積層構造体100の製造方法の一例について説明するが、本発明の金属積層構造体の製造方法はこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0028】
まず、図2の模式的構成図に示すように、タングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を含む溶融塩浴8を容器7に収容する。溶融塩浴8は、溶融塩浴8の電解によりタングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を析出することができるものであれば特に限定はされない。なお、溶融塩浴8の好ましい構成については後述する。
【0029】
次に、容器7に収容された溶融塩浴8中に、たとえば第2の金属層2としての銅箔および対向電極6をそれぞれ浸漬させる。ここで、対向電極6としては、導電性の電極であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、金属からなる電極などを用いることができる。
【0030】
次に、第2の金属層2としての銅箔を陰極にするとともに、対向電極6を陽極として、第2の金属層2としての銅箔と対向電極6との間に電圧を印加して溶融塩浴8を電解することによって、溶融塩浴8中のタングステンおよび/またはモリブデンを第2の金属層2としての銅箔の両面にそれぞれ析出させて溶融塩浴めっきにより第1の金属層1および第3の金属層3を形成する。
【0031】
その後、第1の金属層1および第3の金属層3の形成後の第2の金属層2としての銅箔を溶融塩浴8から取り出し、たとえばイオン交換水などによって第1の金属層1および第3の金属層3にそれぞれ付着している溶融塩浴8を洗って除去する。そして、たとえば所定の酸で洗うことによって、第1の金属層1および第3の金属層3のそれぞれの表面に形成された酸化膜を除去する。以上により、図1に示す金属積層構造体100を製造することができる。
【0032】
また、図1に示す金属積層構造体100は、たとえば以下のように製造することもできる。
【0033】
まず、図3の模式的構成図に示すように、第2の金属層2としての銅箔が容器7に収容された溶融塩浴8中を通過するように第2の金属層2としての銅箔を第1のロール31aと第2のロール31bとの間に掛け渡す。
【0034】
次に、第1のロール31aから第2の金属層2としての銅箔を繰り出し、容器7に収容された溶融塩浴8中に銅箔を連続的に浸漬させながら溶融塩浴8を電解することによって銅箔の両面にそれぞれタングステンおよび/またはモリブデンを析出させて溶融塩浴めっきにより金属積層構造体100を形成する。
【0035】
その後、銅箔の両面にそれぞれタングステンおよび/またはモリブデンを析出させることによって形成された金属積層構造体100は第2のロール31bに巻き取られて回収される。
【0036】
上記のように、第2の金属層2の表面上にタングステンおよび/またはモリブデンを連続的に析出させて、金属積層構造体100を連続的に形成した場合には金属積層構造体100をさらに効率的に製造することができる。
【0037】
<半導体装置>
図4に、本発明の金属積層構造体を用いた半導体装置の一例であるLED素子の一例の模式的な断面図を示す。ここで、図4に示すLED素子は、図1に示す金属積層構造体100と、金属積層構造体100上に設置されたLED構造体10とを備えており、金属積層構造体100とLED構造体10とは接合層21によって接合されている。
【0038】
ここで、LED構造体10は、半導体基板14と、半導体基板14上に設置されたn型半導体層13と、n型半導体層13上に設置された活性層12と、活性層12上に設置されたp型半導体層11と、p型半導体層11上に設置された半透明電極17と、半透明電極17上に設置されたp電極15と、n型半導体層13上に設置されたn電極16とを備えている。
【0039】
なお、LED構造体10としては、p型半導体層11とn型半導体層13と活性層12とを含み、p型半導体層11とn型半導体層13との間に活性層12が設置されており、電流の注入により活性層12から発光する構造であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、従来から公知のLED構造体を用いることができる。
【0040】
LED構造体10としては、なかでも、p型半導体層11、活性層12およびn型半導体層13にそれぞれIII族元素(Al、InおよびGaからなる群から選択された少なくとも1種)とV族元素(窒素)との化合物であるIII−V族窒化物半導体を用いることが好ましい。この場合には、活性層12から青色の光を発光させることが可能となる。
【0041】
活性層12から青色の光を発光させることが可能なLED構造体10の一例としては、たとえば、図4に示す半導体基板14としてGaN基板またはサファイア基板を用い、p型半導体層11としてp型GaN層を用い、活性層12としてアンドープInGaN層を用い、n型半導体層13としてn型GaN層を用いたLED構造体などを挙げることができる。
【0042】
また、本発明の金属積層構造体は、LED素子に限られず、たとえば半導体レーザ素子または電界効果トランジスタなどのLED素子以外の半導体装置にも適用することができる。ここで、活性層12から青色の光を発光させることが可能なLED構造体10以外の半導体装置に用いられる半導体基板14としては、たとえば、シリコン基板、炭化ケイ素基板またはガリウム砒素基板などを用いることができる。
【0043】
なお、p型半導体層11はp型不純物がドープされているp型の導電型を有する半導体層のことであり、n型半導体層13はn型不純物がドープされているn型の導電型を有する半導体層のことであることは言うまでもない。また、活性層12は、p型またはn型のいずれか一方の導電型を有していてもよく、p型不純物およびn型不純物のいずれの不純物もドープされていないアンドープの半導体層であってもよい。
【0044】
さらに、半導体基板14とn型半導体層13との間、n型半導体層13と活性層12との間、活性層12とp型半導体層11との間、p型半導体層11と半透明電極17との間、半透明電極17とp電極15との間、およびn型半導体層13とn電極16との間の少なくとも1つの間に他の層が含まれていてもよい。
【0045】
また、接合層21としては、たとえば、共晶半田よりも熱伝導率が高い導電性の物質からなる層を用いることができる。接合層21としては、特に、電気抵抗が低く、熱伝導率が高く、かつ酸化しにくい金属を用いることが好ましく、なかでも、金、銀、銅およびニッケルからなる群から選択された少なくとも1種を含む層を用いることがより好ましい。
【0046】
以上のような構成を有するLED素子のn電極16を陰極とし、p電極15を陽極として、これらの電極間に電圧を印加することによって、LED構造体10の内部にp電極15からn電極16に向かって電流を流す。これにより、LED構造体10のp型半導体層11とn型半導体層13との間の活性層12で光を発生させることができる。
【0047】
なお、図4に示す構成のLED素子は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0048】
まず、半導体基板14をたとえばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置内にセットした後に、たとえば図4の模式的断面図に示すように、半導体基板14の表面上に、n型半導体層13、活性層12およびp型半導体層11をこの順序でたとえばMOCVD法などによりエピタキシャル成長させて形成する。
【0049】
次に、n型半導体層13、活性層12およびp型半導体層11の一部をたとえばフォトエッチングなどにより除去した後に、たとえばリフトオフ法などを利用して、p型半導体層11上に半透明電極17およびp電極15を形成するとともに、n型半導体層13上にn電極16を形成する。
【0050】
次に、上記のp電極15およびn電極16の形成後の半導体基板14の裏面に金属積層構造体100を接合層21によって接合する。
【0051】
そして、たとえば円形回転刃などによって、上記の接合層21の形成後の半導体基板14を切断することによって、図4に示す模式的な断面を有する個々のLED素子に分割する。以上により、図4に示す構成のLED素子を得ることができる。
【0052】
また、本発明においては、従来よりも大幅に厚さを薄くした金属積層構造体100を半導体装置のヒートシンクとして用いることができることから、金属積層構造体100の材料コストを低減することができるとともに、素子への分割の際の金属積層構造体100の切断が容易となるため、加工性が向上する。さらには、金属積層構造体100の厚さを薄くすることができることから、半導体装置自体の厚みも低減することができる。
【0053】
<その他の形態>
図5に、本発明の金属積層構造体の他の一例の模式的な断面図を示す。ここで、金属積層構造体200は、第1の金属層1の第2の金属層2の設置側とは反対側に設置された第4の金属層4と、第3の金属層3の第2の金属層2の設置側とは反対側に設置された第5の金属層5と、を備えていることに特徴がある。
【0054】
ここで、第4の金属層4および第5の金属層5としてはそれぞれ、たとえば銅を含む金属からなる金属層を用いることができる。
【0055】
ここでも、金属積層構造体200の全体の厚さhは、20μm以上400μm以下であることが好ましい。金属積層構造体200の厚さhが20μm以上400μm以下である場合には、金属積層構造体200の厚みを薄くして金属積層構造体200を効率的に製造することができる傾向が大きくなる。
【0056】
また、金属積層構造体200において、第1の金属層1の厚さh1と第2の金属層2の厚さh2と第3の金属層3の厚さh3と第4の金属層4の厚さh4と第5の金属層5の厚さh5との和(h1+h2+h3+h4+h5)に対する第1の金属層1の厚さh1と第3の金属層3の厚さh3との和(h1+h3)の比[(h1+h3)/(h1+h2+h3+h4+h5)]が0.2以上0.8以下であることが好ましい。上記の比が0.2以上0.8以下である場合には、金属積層構造体200の線膨張が大きくなりすぎず、かつ熱伝導率も小さくなりすぎないため、たとえばヒートシンクとして金属積層構造体200を半導体装置の半導体基板に貼り付けた場合に、金属積層構造体200と当該半導体基板との熱膨張の差異があまり大きくなることなく、金属積層構造体200の放熱機能を十分に発揮することができる傾向にある。
【0057】
また、金属積層構造体200の反りを抑制するためには、金属積層構造体200の厚み方向の中央部(この例では、金属積層構造体200の全体の厚さhの1/2の部分)から上方の部分と積層構造体の厚み方向の中央部から下方の部分とが積層構造体の厚み方向の中央部に関して対称となっていることが好ましい。
【0058】
図5に示す金属積層構造体200は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0059】
まず、上述した図2に示す方法により、溶融塩浴8中のタングステンおよび/またはモリブデンをたとえば銅箔などの第2の金属層2の両面にそれぞれ析出させて溶融塩浴めっきにより第1の金属層1および第3の金属層3を形成する。
【0060】
次に、第1の金属層1および第3の金属層3の形成後の第2の金属層2を溶融塩浴8から取り出し、たとえばイオン交換水などによって第1の金属層1および第3の金属層3にそれぞれ付着している溶融塩浴8を洗って除去する。そして、たとえば所定の酸で洗うことによって、第1の金属層1および第3の金属層3のそれぞれの表面に形成された酸化膜を除去する。
【0061】
その後、図6の模式的構成図に示すように、容器7に収容された電気めっき液9中に、第1の金属層1および第3の金属層3の形成後の第2の金属層2ならびに対向電極6をそれぞれ浸漬させる。
【0062】
ここで、電気めっき液9としては、第4の金属層4および第5の金属層5を構成する金属原子を含んでおり、第4の金属層4および第5の金属層5を構成する金属を電気めっき液9の電解により析出させることができるものであれば特に限定はされないが、たとえば第4の金属層4および第5の金属層5がそれぞれ銅からなる場合には、電気めっき液9としてたとえば市販の硫酸銅めっき液などを用いることができる。
【0063】
次に、第2の金属層2を陰極にするとともに、対向電極6を陽極として、第2の金属層2と対向電極6との間に電圧を印加して電気めっき液9を電解する。これにより、電気めっき液9中の銅を第1の金属層1の表面および第3の金属層3の表面にそれぞれ析出させて第4の金属層4および第5の金属層5を形成して金属積層構造体200を作製する。
【0064】
そして、第4の金属層4および第5の金属層5の形成後の金属積層構造体200は電気めっき液9から取り出され、たとえばイオン交換水などによって第4の金属層4および第5の金属層5に付着している電気めっき液9を洗って除去し、その後、たとえば所定の酸で洗うことによって、第4の金属層4および第5の金属層5のそれぞれの表面に形成された酸化膜を除去することができる。以上により、図5に示す金属積層構造体200を製造することができる。
【0065】
また、図5に示す金属積層構造体200は、たとえば以下のように製造することもできる。
【0066】
まず、図7の模式的構成図に示すように、第2の金属層2としての銅箔が容器7に収容された溶融塩浴8および容器7に収容された電気めっき液9中をそれぞれ通過するように銅箔を第1のロール31aと第2のロール31bとの間に掛け渡す。
【0067】
次に、第1のロール31aから銅箔を繰り出し、容器7に収容された溶融塩浴8中に銅箔を連続的に浸漬させながら溶融塩浴8を電解することによって銅箔の両面にそれぞれタングステンおよび/またはモリブデンを析出させて溶融塩浴めっきにより銅箔の両面にそれぞれ第1の金属層1および第3の金属層3をそれぞれ形成する。
【0068】
続いて、容器7に収容された電気めっき液9中に第1の金属層1および第3の金属層3の形成後の銅箔を容器7に収容された電気めっき液9中に銅箔を連続的に浸漬させながら電気めっき液9を電解する。これにより、第1の金属層1および第3の金属層3の表面にそれぞれ銅を析出させて電気めっきにより第1の金属層1および第3の金属層3のそれぞれの表面に第4の金属層4および第5の金属層5をそれぞれ形成して金属積層構造体200とする。
【0069】
その後、金属積層構造体200は第2のロール31bに巻き取られて回収される。
また、上記においては、電気めっき液9を用いて第4の金属層4および第5の金属層5をそれぞれ形成したが、第4の金属層4および第5の金属層5の形成方法はこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0070】
たとえばスパッタ法などの従来から公知の気相法により第4の金属層4および第5の金属層5をそれぞれ形成することによっても金属積層構造体200を形成することができる。
【0071】
また、第4の金属層4および第5の金属層5は、たとえば、上記の電気めっき液の電解による形成とスパッタ法などの気相法による形成とを組み合わせて形成されてもよい。
【0072】
また、金属積層構造体は、上記の3層や5層の構造に限定されるものではなく、第1の金属層1と、第2の金属層2と、第3の金属層3とがこの順序で含まれるものであればよい。
【0073】
また、たとえば図8の模式的断面図に示すように、金属積層構造体200の第4の金属層4の第1の金属層1の設置側と反対側の表面にたとえばニッケルなどからなる金属層41を設けてもよい。
【0074】
また、金属積層構造体200の第1の金属層1と第4の金属層4との間および/または第3の金属層3と第5の金属層5との間に、コバルトを含むコバルト含有層が設置されていてもよい。
【0075】
上記のコバルト含有層を含む金属積層構造体200は、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0076】
まず、第2の金属層2の表面の両面にそれぞれ形成された第1の金属層1および第3の金属層3をアルカリ溶液に浸漬させることによって、第1の金属層1の表面および第3の金属層3の表面の脱脂工程を行なう。
【0077】
次に、第1の金属層1および第3の金属層3を陽極としてアルカリ水溶液中に浸漬させて電解を行なうことによって、第1の金属層1の表面および第3の金属層3の表面からそれぞれ酸化膜を除去する。
【0078】
次に、上記の酸化膜除去後の第1の金属層1および第3の金属層3を陰極として硫酸コバルト水溶液などからなるコバルトめっき液中に浸漬させて電解を行なうことによって、第1の金属層1の表面および第3の金属層3の表面にそれぞれコバルトを析出させてコバルト含有層を形成する。
【0079】
その後、上記で形成したコバルト層を陰極として硫酸銅めっき液中に浸漬させて電解を行なうことによって、コバルト層の表面上に銅を析出させて、銅からなる第4の金属層4および第5の金属層5をそれぞれ形成する。
【0080】
以上により、金属積層構造体200の第1の金属層1と第4の金属層4との間および第3の金属層3と第5の金属層5との間にそれぞれコバルト含有層を形成することができる。
【0081】
<溶融塩浴の好ましい構成>
本発明に用いられる溶融塩浴8としては、たとえば、フッ化カリウム(KF)と酸化ホウ素(B23)と酸化タングステン(WO3)とをたとえば67:26:7のモル比で混合した混合物を溶融して作製した溶融塩浴などを用いることができる。
【0082】
また、第1の金属層1および第3の金属層3がそれぞれモリブデンからなる場合には、溶融塩浴8としては、たとえば、KFとK2MoO4とB23とをたとえば81:9:10のモル比で混合した混合物をたとえば850℃程度の温度で溶融して作製した溶融塩浴などを用いることもできる。
【0083】
また、第1の金属層1および第3の金属層3がそれぞれタングステンおよびモリブデンからなる場合には、溶融塩浴8としては、たとえば、KFとWO3とK2MoO4とB23とをたとえば80:4:5:10のモル比で混合した混合物をたとえば850℃程度の温度で溶融して作製した溶融塩浴などを用いることもできる。
【実施例】
【0084】
<実施例1のヒートシンクの作製>
KF粉末319gおよびWO3粉末133gをそれぞれ耐圧容器に封入した後に、耐圧容器を500℃に保持し、耐圧容器の内部を2日間以上真空引きすることによってKF粉末およびWO3粉末をそれぞれ乾燥させた。
【0085】
また、B23粉末148gについては上記とは別の耐圧容器に封入した後に耐圧容器を380℃に保持し、耐圧容器の内部を2日間以上真空引きすることによってB23粉末を乾燥させた。
【0086】
そして、図9に模式的構成図を示す装置を用いて、上記の乾燥後のKF粉末、B23粉末およびWO3粉末から溶融塩浴を作製した。
【0087】
具体的には、まず、500℃で2日間以上乾燥させたSiC製の坩堝111に上記の乾燥後のKF粉末、B23粉末およびWO3粉末をそれぞれ投入し、これらの粉末が投入された坩堝111を石英製の耐真空容器110に封入した。
【0088】
次に、耐真空容器110の上部の開口部にSUS316L製の蓋118をした状態で坩堝111を500℃に保持し、耐真空容器110の内部を1日間以上真空引きした。
【0089】
そして、ガス導入口117から耐真空容器110の内部に高純度アルゴンガスを導入して耐真空容器110の内部に高純度アルゴンガスを充填し、坩堝111を850℃に保持して上記の粉末を溶融させて溶融塩浴前駆体112を作製した。
【0090】
次に、蓋118に設けられた開口部から陽極としてのタングステン板113(表面:20cm2)を含む棒状電極と陰極としてのニッケル板114(表面:20cm2)を含む棒状電極とをそれぞれ挿入してタングステン板113およびニッケル板114をそれぞれ坩堝111中の溶融塩浴前駆体112中に浸漬させた。
【0091】
ここで、上記の棒状電極においては、タングステン板113およびニッケル板114にそれぞれリード線115が接続されており、耐真空容器110の内部のリード線115にはタングステン線を用い、耐真空容器110の外部のリード線115には銅線を用いた。また、リード線115の少なくとも一部をアルミナ製の被覆材116により被覆した。
【0092】
また、上記の棒状電極の挿入時には、ガス導入口117から耐真空容器110の内部に高純度アルゴンガスを導入して耐真空容器110の内部に大気が混入しないように設定した。
【0093】
また、タングステン板113およびニッケル板114の酸化の進行による溶融塩浴前駆体112中への不純物の混入を防止するため、図9に示すようにタングステン板113およびニッケル板114についてはそれぞれ表面全域を溶融塩浴前駆体112中に浸漬させた。
【0094】
そして、溶融塩浴前駆体112を電解することによって不純物をニッケル板114に析出させることによって溶融塩浴前駆体112から不純物を除去して溶融塩浴を作製した。
【0095】
次に、上記の不純物が析出したニッケル板114を厚さ40μmの銅箔に取り替えた後、上記のタングステン板113と銅箔との間に3A/dm2の電流密度の電流を17分間流して、溶融塩浴の定電流電解を行ない、銅箔の両面にそれぞれタングステンを析出させることによって厚さ5μmのタングステン層を形成した。そして、図9に示す装置から上記のタングステン層形成後の銅箔を取り出してタングステン層の表面をイオン交換水によってタングステン層に付着している溶融塩浴を洗って除去した後に、酸で洗うことによってタングステン層の表面に形成された酸化膜を除去することによって実施例1のヒートシンクを作製した。
【0096】
そして、実施例1のヒートシンクについて、水平方向への線膨張係数(ppm/℃)を測定した。その結果を表1に示す。なお、線膨張係数(ppm/℃)の測定は、熱機械分析装置(TMA)にて行ない、室温〜150℃まで測定し、その平均値を算出することにより行なった。
【0097】
<実施例2のヒートシンクの作製>
厚さ20μmの銅箔を用いて、当該銅箔と図9に示す装置のタングステン板113との間に3A/dm2の電流密度の電流を136分間流して溶融塩浴の定電流電解を行なうことによって、銅箔の両面にそれぞれタングステンを析出させて厚さ40μmのタングステン層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のヒートシンクを作製した。
【0098】
そして、実施例2のヒートシンクについても、実施例1と同様にして、水平方向への線膨張係数(ppm/℃)を測定した。その結果を表1に示す。
【0099】
<実施例3のヒートシンクの作製>
厚さ10μmの銅箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のヒートシンクを作製した。そして、実施例3のヒートシンクについても、実施例1と同様にして、水平方向への線膨張係数(ppm/℃)を測定した。その結果を表1に示す。
【0100】
<実施例4のヒートシンクの作製>
まず、厚さ100μmの銅箔と図9に示す装置のタングステン板113との間に3A/dm2の電流密度の電流を340分間流して溶融塩浴の定電流電解を行なったこと以外は実施例1と同様にして、銅箔の両面にそれぞれタングステンを析出させて厚さ100μmのタングステン層を形成した。
【0101】
次に、図9に示す装置から上記のタングステン層形成後の銅箔を取り出してタングステン層の表面をイオン交換水によってタングステン層に付着している溶融塩浴を洗って除去した後に、酸で洗うことによってタングステン層の表面に形成された酸化膜を除去した。
【0102】
次に、上記の酸化膜除去後のタングステン層の表面を50℃のアルカリ脱脂液(奥野製薬工業(株)製のエースクリーンA220)中に20分間浸漬させることによって洗浄した。
【0103】
次に、上記の洗浄後のタングステン層を陽極としてアルカリ水溶液中に浸漬させて電解(アルカリ陽極電解)を行なうことによって、タングステン層の表面からそれぞれ酸化膜を除去した。
【0104】
次に、硫酸コバルト水溶液からなるコバルトめっき液中に1枚のコバルト板からなる陽極と、当該陽極と対向するようにして上記のアルカリ陽極電解後の銅箔を陰極として浸漬させた。ここで、コバルトめっき液としては、コバルトめっき液1リットル当たり200gの硫酸コバルトと100gの硫酸とが水に溶解している硫酸コバルト水溶液を用いた。
【0105】
そして、コバルトめっき液の温度を80℃に保持した状態で、上記の陽極と陰極との間に電流密度15A/dm2の電流を3分間流した。
【0106】
このような条件でコバルトめっき液の電解を行なうことにより、陰極であるタングステン層形成後の銅箔の当該タングステン層のそれぞれの表面上にコバルトを析出させて当該銅箔の両面のタングステン層のそれぞれの表面上に厚さ0.5μmのコバルト層を形成した。
【0107】
その後、コバルト層の形成後の銅箔をコバルトめっき液から取り出し、イオン交換水によってタングステン層に付着しているコバルトめっき液を洗って除去するとともに、その後、酸で洗うことによってタングステン層の表面に形成された酸化膜を除去した。
【0108】
次に、パイレックス(登録商標)ビーカーに収容された硫酸銅めっき液(上村工業(株)製のレブコEX)中に1枚の含リン銅からなる対向電極とともに、上記のコバルト層形成後の銅箔を対向電極と対向するようにして浸漬させた。
【0109】
そして、硫酸銅めっき液の温度を30℃に保持した状態で、陽極としての対向電極および陰極としてのコバルト層形成後の銅箔の表面1cm2当たり20mA(ミリアンペア)の電流(電流密度20mA/cm2)が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を1470分間流した。
【0110】
このような条件で硫酸銅めっき液の電解を行なうことにより、陰極であるコバルト層形成後の銅箔の両面の当該コバルト層のそれぞれの表面上に銅を析出させて厚さ49μmの銅層を形成した。
【0111】
次に、上記の銅層形成後の銅箔の銅層の表面をイオン交換水によって銅層に付着している硫酸銅めっき液を洗って除去した後に、酸で洗うことによって銅層の表面に形成された酸化膜を除去して、実施例4のヒートシンクを作製した。
【0112】
そして、実施例4のヒートシンクについても、実施例1と同様にして、水平方向への線膨張係数(ppm/℃)を測定した。その結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
以上のようにして作製された実施例1〜4のヒートシンクは全体の厚さを100μm以下と薄く作製することができるとともに、さらにはめっき液を用いた電気めっきによって効率的に作製できることが確認された。
【0115】
また、表1に示すように、実施例1〜4のヒートシンクにおいては、銅層の厚さ(銅箔の厚さを含む)の総和とタングステン層の厚さの総和との和に対するタングステン層の厚さの総和の比が0.2以上0.8以下であったため、線膨張が大きくなりすぎず、かつ熱伝導率も小さくなりすぎない優れたヒートシンクであることが確認された。
【0116】
<実施例5のヒートシンクの作製>
まず、フッ化カリウム(KF)粉末と酸化ホウ素(B23)粉末と酸化タングステン(WO3)粉末とを67:26:7のモル比で混合した混合物を作製し、その混合物をSiC製の坩堝(アズワン(株)製)に投入した。
【0117】
ここで、フッ化カリウム(KF)粉末、酸化ホウ素(B23)粉末および酸化タングステン(WO3)粉末はそれぞれAr(アルゴン)雰囲気のグローブボックス内で秤量され、同じグローブボックス内にあるSiC製の坩堝に投入された。
【0118】
次に、上記の混合物が投入されたSiC製の坩堝をマントルヒーターを用いて850℃に加熱することによって上記の混合物を溶融して溶融塩浴を作製した。
【0119】
次に、上記のグローブボックス内で、上記の溶融塩浴に、タングステン板からなる対向電極(陽極)とともに、厚さ40μmの銅箔(陰極)を対向電極と対向するように浸漬させた。
【0120】
ここで、上記の陽極および陰極にはそれぞれニッケル線を溶接し、ニッケル線から陽極と陰極との間に電流を供給できる構造とした。
【0121】
そして、溶融塩浴の温度を850℃に保持した状態で、陽極および陰極を揺動させながら陽極の表面1cm2当たり30mA(ミリアンペア)の電流(電流密度30mA/cm2)が流れるように上記の陽極と陰極との間に電流を150分間流した。
【0122】
このような条件で溶融塩浴の電解を行なうことにより、陰極である銅箔の表面上にタングステンを析出させてタングステン析出物からなるタングステン層を30μmの厚さに形成した。
【0123】
次に、上記のグローブボックスの外で、上記のタングステン層の形成後の銅箔を溶融塩浴から取り出し、イオン交換水によってタングステン層に付着している溶融塩浴を洗って除去した後に、酸で洗うことによってタングステン層の表面に形成された酸化膜を除去した。以上により、実施例5のヒートシンクを作製した。
【0124】
以上のようにして作製された実施例5のヒートシンクは全体の厚さを100μmと薄く作製することができるとともに、さらには溶融塩浴めっきによって効率的に作製できることが確認された。
【0125】
また、実施例5のヒートシンクにおいては、銅層の厚さ(銅箔の厚さを含む)の総和とタングステン層の厚さの総和との和に対するタングステン層の厚さの総和の比が0.6であり、0.2以上0.8以下の範囲内のものであったため、線膨張が大きくなりすぎず、かつ熱伝導率も小さくなりすぎない優れたヒートシンクであることが確認された。
【0126】
<実施例1〜5のLED素子の作製>
次に、サファイア基板の一方の表面上にLED構造体が形成されたウエハを5枚作製した。
【0127】
ここで、5枚のウエハはそれぞれ以下のようにして製造した。まず、直径が100mmの円形状の表面を有し、かつ厚さが100μmのサファイア基板の表面上に、n型GaN層、アンドープInGaN活性層およびp型GaN層をこの順序でMOCVD法によりエピタキシャル成長させた。
【0128】
次に、フォトエッチングによりn型GaN層の表面の一部が露出するまでn型GaN層、アンドープInGaN活性層およびp型GaN層のそれぞれの一部を除去した。
【0129】
その後、リフトオフによりn型GaN層上のn電極、p型GaN層上の半透明電極および半透明電極上のp電極を形成することにより上記のウエハをそれぞれ作製した。
【0130】
そして、上記で作製した実施例1〜5のヒートシンクをそれぞれ、上記で作製したウエハのLED構造体の形成側とは反対側の裏面に共晶半田により接合し、円形回転刃で10mm×10mmの正方形状の表面を有する大きさのLED素子に分割することによって、実施例1〜5のLED素子をそれぞれ得た。
【0131】
<実施例1〜5のLED素子の評価>
銅板およびタングステン板を圧接により接合して銅(20μm)/タングステン(60μm)/銅(20μm)の積層構造体からなる全体の厚さが1mmのヒートシンクとLED構造体とを上記の共晶半田により接合してLED素子を形成したこと以外は上記と同様にして比較例のLED素子を作製した。
【0132】
そして、上記で作製した実施例1〜5のLED素子と、上記の比較例のLED素子との発光特性を比較したところ発光特性は同等であった。
【0133】
しかしながら、実施例1〜5のLED素子のヒートシンクの厚さは100μm以下であり、比較例のLED素子のヒートシンクの厚さは1mmであったため、実施例1〜5のLED素子は比較例のLED素子と比べてヒートシンクの材料コストを低減することができ、さらには円形回転刃によるウエハの切断が容易であったため加工性も向上することが確認された。
【0134】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の金属積層構造体の製造方法は、たとえば半導体装置のヒートシンクなどに利用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0136】
1 第1の金属層、2 第2の金属層、3 第3の金属層、4 第4の金属層、5 第5の金属層、6 対向電極、7 容器、8 溶融塩、9 電気めっき液、10 LED構造体、11 p型半導体層、12 活性層、13 n型半導体層、14 半導体基板、15 p電極、16 n電極、17 半透明電極、31a 第1のロール、31b 第2のロール、41 接合層、100,200 金属積層構造体、110 耐真空容器、111 坩堝、112 溶融塩浴前駆体、113 タングステン板、114 ニッケル板、115 リード線、116 被覆材、117 ガス導入口、118 蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属層と、第2の金属層と、第3の金属層と、を備え、
前記第1の金属層は前記第2の金属層の一方の表面上に設置され、
前記第3の金属層は前記第2の金属層の他方の表面上に設置されており、
前記第1の金属層は、タングステンを含み、
前記第2の金属層は、銅を含み、
前記第3の金属層は、タングステンを含む金属積層構造体を製造する方法であって、
前記第2の金属層の一方の表面上に前記第1の金属層を溶融塩浴めっきにより形成する工程と、
前記第2の金属層の他方の表面上に前記第3の金属層を溶融塩浴めっきにより形成する工程と、を含み、
前記溶融塩浴めっきに用いられる溶融塩浴は、フッ化カリウムと、酸化ホウ素と、酸化タングステンとを含む混合物を溶融して作製されたものである、金属積層構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の金属層の厚さと前記第2の金属層の厚さと前記第3の金属層の厚さとの和に対する前記第1の金属層の厚さと前記第3の金属層の厚さとの和の比が0.2以上0.8以下である、請求項1に記載の金属積層構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属層の前記第2の金属層の設置側とは反対側に第4の金属層を形成する工程と、
前記第3の金属層の前記第2の金属層の設置側とは反対側に第5の金属層を形成する工程と、を含み、
前記第4の金属層および前記第5の金属層はそれぞれ銅を含む、請求項1または2に記載の金属積層構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の金属層の厚さと前記第2の金属層の厚さと前記第3の金属層の厚さと前記第4の金属層の厚さと前記第5の金属層の厚さとの和に対する前記第1の金属層の厚さと前記第3の金属層の厚さとの和の比が0.2以上0.8以下である、請求項3に記載の金属積層構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の金属層と前記第4の金属層との間、および前記第3の金属層と前記第5の金属層との間の少なくとも一方の間にコバルト含有層を形成する工程を含む、請求項3または4に記載の金属積層構造体の製造方法。
【請求項6】
前記コバルト含有層の厚さが0.05μm以上3μm以下である、請求項5に記載の金属積層構造体の製造方法。
【請求項7】
前記金属積層構造体の全体の厚さが20μm以上400μm以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の金属積層構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149103(P2011−149103A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85441(P2011−85441)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2009−155159(P2009−155159)の分割
【原出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】