説明

金属粉末スラリー

【課題】分散性に優れ、かつ経時的な粘度変化が小さい金属粉末スラリーを提供する。
【解決手段】成分(A)を0.05〜20質量%、成分(B)を40〜90質量%、成分(C)を5〜50質量%からなる組成を有する金属粉末スラリー。(A)下記式により示されるポリアルキレングリコール誘導体。HO−CH−CH(OH)−CH(OH)−CH(OH)−CH−O−(AO)−R(式中、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基である。mはAOの平均付加モル数で、mは5〜80を満たす。Rは、水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基である。)(B)金属粉末(C)有機溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末を含有するスラリーに関し、より詳細には塗料、インキ、導電性ペースト等の製造に有用な金属粉末スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末は、従来、金属の持つ光沢や導電性等の特性を活かし、光沢性や導電性を有する塗膜を形成する材料として、インキ、塗料、電子材料などの分野で利用されてきた。例えばアルミニウムや銅は、金属光沢等の諸性能を有する印刷物や塗工物の材料として、また銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅といった導電性の高い金属粉末は、プリント基板の電気回路や電子部品の電極を形成する材料として利用されている。
【0003】
電子部品の電極を形成する材料として金属粉末を利用する場合、各種有機溶剤中に金属粉末を分散させ、バインダや可塑剤等を適宜加え、スラリーとしたものが利用されている。
しかし金属粉末を溶剤中に分散させることは容易ではなく、分散不良によりスラリーの粘度が過度に高まってしまう。また金属粉末が分散したスラリーが得られても、分散安定性が悪いことからスラリーの運搬時や保管時において、経時的な粘度変化が生じ増粘するといった問題があった。このようなスラリーを、スクリーン印刷等により、電極として基板上に印刷した場合、粘度が高く、版離れしにくいため、印刷した塗膜にかすれが生じ、所望の電極性能が得られない。このことから、金属粉末を溶剤中に均一に分散させる必要が生じており、経時的な粘度変化が小さいスラリーが求められていた。
【0004】
従来、金属粉末を溶剤中に均一に分散させる為に、オレイン酸やステアリン酸などの脂肪酸が分散剤として使用されているが、これら脂肪酸では金属粉末を十分に分散させることは困難であった。
【0005】
また、無機粉末の分散剤としてポリグリセリン骨格を有した分散剤が開示されている(例えば特許文献1)。この分散剤を金属粉末に用いると、初期の分散性は高いものの、スラリーの経時的な粘度変化を小さくする効果は十分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−031337
【特許文献2】特願2010−020008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
なお、本出願人は、平成22年2月に特許文献2を出願し、キシリトール構造の親水性部分を有するポリオキシアルキレン重合体が界面活性剤として有用であることを開示している。
【0008】
本発明の課題は、分散性に優れ、かつ経時的な粘度変化が小さい金属粉末スラリーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は以下に示されるものである。
(1) 下記の成分(A)を0.05〜20質量%、成分(B)を40〜90質量%、成分(C)を5〜50質量%からなる組成を有することを特徴とする金属粉末スラリー。
(A) 下記式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体
【化1】


(式中、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基である。mはAOの平均付加モル数で、mは5〜80を満たす。Rは、水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基である。
(B)金属粉末
(C)有機溶剤
(2) 式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、AOが炭素数4のオキシアルキレン基であることを特徴とする前記の金属粉末スラリー。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分散性に優れ、かつ経時的な粘度の変化が小さい金属粉末スラリーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(成分(A))
式(1)に示されるようなキシリトール骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体であり、金属粉末を有機溶剤中に分散させる分散剤として機能し、経時的な粘度の変化が小さい金属粉末スラリーを提供するものである。
【0012】
式(1)に示されるようなキシリトール骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体は、4つの水酸基が隣接しており、これら水酸基が金属粉末に対して吸着部位として作用する。キシリトール以外の骨格、例えばグリセリンモノ脂肪酸エステルのように隣接する水酸基が2つの場合や、特許文献1に例示されるトリグリセリン誘導体のように、4個以上の水酸基が隣接して存在しない場合では、金属表面への吸着能力が十分ではない。従って本願の課題を達成するためにはキシリトール骨格を有することが必須である。
【0013】
(AO)mはポリオキシアルキレン基であり、金属粉末に吸着した際、立体反発部位として作用することで金属粉末を良好に分散させるとともに、塗料、インクや導電性ペースト等の分野で多く使用される親油性の高い溶剤への溶解性を高める。
【0014】
AOは、炭素数3〜4のオキシアルキレン基である。炭素数が3未満では、親油性の高い溶剤に対する溶解性が劣るため、十分な分散効果が得られない。炭素数3のオキシアルキレン基はオキシプロピレン基である。炭素数4のオキシアルキレン基は、具体的には、オキシエチルエチレン基、オキシジメチルエチレン基、オキシテトラメチレン基が好ましく、1,2−ブチレンオキシド由来のオキシエチルエチレン基が特に好ましい。また、異なるオキシアルキレン基の付加形態は、単独、ブロック状またはランダム状のいずれでも良い。
【0015】
mは、AOの平均付加モル数であって5〜80の正数を示す。mが5未満であると、立体反発部位として小さいため、十分な分散効果が得られない。この観点からは、mは10以上が好ましく、15以上が更に好ましい。また、mが80を超えると、ポリオキシアルキレン誘導体の粘度が高くなり、製造が困難となるため好ましくない。この観点からは、mは、60以下が好ましく、45以下が更に好ましい。
【0016】
は、水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基であり、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの飽和炭化水素基、アリル基、メタリル基などの不飽和炭化水素基などが挙げられるが、好ましくは水素原子である。炭素数が5より大きいものは、その製造が困難である。
【0017】
式(1)で示されるキシリトール骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体を製造する際には、異性体が生成することがある。
【0018】
(成分(B))
本発明で使用可能な金属粉末は特に限定はされないが、銀、アルミニウム、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅などの粉末を用いることが出来る。また上記金属の合金粉末や複合粉末、混合粉末を用いても良い。好ましくは銀、ニッケル、銅およびこれらの混合粉末である。
【0019】
金属粉末の平均粒径は用途によって異なるため、限定はされないが、有用性、分散性および分散安定性の観点からは、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜5μmが更に好ましい。ただし、平均粒径はマイクロトラック法に従って決定するものとする。
【0020】
(成分(C))
本発明の成分(C)の有機溶剤は、インキ、塗料や導電性ペースト等の分野で用いられている炭化水素系、アルコール系、エーテル系、エステル系、ケトン系またはグリコール系の溶剤などを用いることが出来る。例えばトルエン、キシレン、オクタノール、デカノール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ミネラルスピリット、N−メチルピロリドン、γーブチロラクトンなどが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができ、金属粉末スラリーのハンドリング性やスラリーから得られる塗膜の乾燥性などを考慮すると、好ましくはターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0021】
(組成)
本発明の金属粉末スラリー組成物は、成分(A)(B)(C)の合計量を100質量%とする。ここで、本発明の作用効果の観点からは、成分(A)の比率は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。また、成分(A)の量が多過ぎても効果が乏しいので、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
【0022】
成分(B)の比率は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が特に好ましい。また、成分(B)の比率は、90質量%以下が好ましく、89.9質量%以下が更に好ましく、84.5質量%以下が特に好ましい。
【0023】
成分(C)の比率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が特に好ましい。また、成分(C)の比率は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0024】
(添加成分)
さらに本発明の金属粉末スラリーには、その目的が損なわれない範囲で、所望により他の分散剤、界面活性剤、バインダ、可塑剤、消泡剤など各種添加剤を配合させることが出来る。
【0025】
(スラリーの製法)
金属粉末スラリーの製造方法には特に制限はなく、公知のスラリーの製法により製造することが出来る。例えば、分散剤を溶解した溶剤中に金属粉末を添加後、室温下にて攪拌・混合する方法や、金属粉末に溶剤及び分散剤を添加後、室温下にて攪拌・混合する方法等が挙げられる。
【0026】
混合分散するための分散機としては、公知の分散機を使用できる。例えば、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、自転公転ミキサー等が挙げられる。
【0027】
(ポリアルキレングリコール誘導体の製法)
一般式(1)に示されるポリアルキレングリコール誘導体は、通常、以下の(1)〜(3)の手順により製造することができる。
【0028】
(1) キシリトールを酸触媒の存在下、ケタール化剤もしくはアセタール化剤と反応させ、下記一般式(2)に示すキシリトールジケタール化合物もしくはジアセタール化合物を得る。
【0029】
【化2】

【0030】
式(2)のキシリトールジケタール化物もしくはジアセタール化物は、必要に応じて、蒸留等で精製しても構わない。
【0031】
(2) 続いてアルカリ触媒下、炭素数3〜4のオキシアルキレン基を付加反応し、さらに必要に応じて、アルカリ触媒下にて、アルキルハライド、アルケニルハライドと反応させ、末端水酸基をエーテル化することもできる。
(3) その後、酸の存在下で脱ケタール化もしくは脱アセタール化を行う。
【0032】
式(2)において、RおよびRは、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であり、RおよびRが同時に水素原子になることはない。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示できるが、好ましくはメチル基、エチル基である。R=R=メチル基の場合、ケタール化剤としてアセトン、2,2−ジメトキシプロパンが例示でき、R=水素原子、R=メチル基の場合、アセタール化剤として、アセトアルデヒドが例示できる。
【0033】
ケタール化もしくはアセタール化の触媒としては、酸触媒、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。通常、ケタール化剤もしくはアセタール化剤の仕込み量はキシリトールに対して200〜400モル%、酸触媒の仕込み量はキシリトールに対して5×10−6〜15×10−3モル%、反応温度は30〜90℃で行うのが一般的である。
【0034】
式(2)のキシリトールジアセタール化物もしくはジケタール化物を、次工程のアルキレンオキシド付加反応で使用する場合、特に触媒除去処理などをしなくても差し支えないが、必要であれば、アルカリによる中和処理や酸吸着処理、濾過等を行うことができる。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの中和剤や、協和化学工業(株)製のキョーワード300、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)製のトミックスAD−500等の吸着剤、その他ゼオライト等が使用できる。
【0035】
式(2)の化合物について、アルカリ触媒の存在下でアルキレンオキシド付加反応を行う場合、通常、オートクレーブなどの加圧反応釜において、40〜180℃で反応を行う。このときアルカリ触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコラート等を使用することができる。触媒の使用量は特に限定されないが、付加反応終了後の質量に対して0.01〜5.0質量%が一般的である。
【0036】
アルキレンオキシドの付加反応後、必要に応じて、アルカリ存在下、炭素数1〜4のアルキルハライドやアルケニルハライド等を反応させ、アルキルエーテル化またはアルケニルエーテル化することもできる。アルキルハライドの例としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等が、アルケニルハライドの例としては塩化アリル、塩化メタリルが挙げられる。また、このときのアルカリとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコラート等を使用することができる。アルカリハライドの仕込み量は、反応する水酸基数に対して100〜400モル%、アルカリ量は、反応する水酸基数に対して100〜500モル%、反応温度は60〜180℃で行うのが一般的である。
【0037】
式(2)の化合物のオキシアルキレン化物における脱ケタール化もしくは脱アセタール化物反応は、酸の存在下で行う。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、その他固体酸、陽イオン交換樹脂、酸性白土等が挙げられる。酸の使用量としては、式(2)の化合物のオキシアルキレン化物に対して0.001〜6.0質量%である。また、必要に応じて水を添加して反応もでき、使用量としては、0.01〜100質量%である。反応温度は60〜150℃で行うのが一般的である。
【0038】
脱ケタール化もしくは脱アセタール化反応終了後は、アルカリによる中和処理や酸吸着剤処理、濾過等を行うことができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム等の中和剤や、協和化学工業(株)製のキョーワード300、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)製のトミックスAD−500等の吸着剤、その他ゼオライト等が使用できる。
【0039】
以上説明したように、一般式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体は、予めキシリトールの水酸基をジケタール化又はジアセタール化によって保護し、この状態で水酸基のポリオキシアルキレン化反応を行い、必要に応じてエーテル化を行った後、脱ケタール化または脱アセタール化反応により脱保護化という一連の工程が行われる。そして、これにより、式(1)に示すようなキシリトールの水酸基1つが修飾されたポリアルキレングリコール誘導体を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を説明する。
本発明にかかるポリアルキレングリコール誘導体の合成例を示す。なお水酸基価は、JIS K1557 6.4に準じて測定した。
【0041】
(成分(A)の合成)
合成例:ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)
(1)ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管及び油水分離管を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、キシリトール700g、2,2−ジメトキシプロパン1291g、パラトルエンスルホン酸一水和物27mgを仕込み、反応系内を60〜90℃に保持し、2時間反応させた。反応終了後、副生したメタノール及び過剰分の2,2−ジメトキシプロパンを除去し、1014gのジイソプロピリデンキシリトール(化合物1a)を得た。水酸基価は、240KOHmg/gであった。
【0042】
【化3】

【0043】
(2)ポリオキシブチレン化反応
化合物1aを235g、水酸化カリウム15.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した。攪拌下、100〜120℃、0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器より1,2−ブチレンオキシド2900gを窒素ガス圧により加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させた後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、2850gのポリオキシブチレン(40モル)ジイソプロピリデンキシリトール(化合物1b)を主成分とする化合物を得た。水酸基価は、18.1KOHmg/gであった。
【0044】
【化4】

【0045】
(3)脱ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、化合物1bを700g、水70g、36%塩酸10gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で2時間脱ケタール化反応を行った。続いて10%水酸化カリウム水溶液でpH6〜7に合わせ、含有する水分を除去するために、100℃で1時間、減圧処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、650gのポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)を得た。
【0046】
【化5】

【0047】
上記合成例に準じて、下記表1に示す組成のポリアルキレングリコール誘導体を調製した。
【0048】
【表1】

【0049】
(スラリーの調製)
<実施例1〜4および比較例1〜3>
金属粉末としてニッケル(平均粒径:0.2μm、マイクロトラック法)、溶剤としてターピネオールを用いて次のようにスラリーを調製した。すなわち50mlスクリュー管にニッケル粉末3.0gを秤量し、ターピネオールを0.75g、表2に示す分散剤を0.03gそれぞれ加え、自転公転ミキサーで2分間混合しスラリーを調製した。
【0050】
次に、得られたスラリーについて、動的粘弾性装置(Paar Physica MCR300、Anton Paar社製)を用いて、温度20℃、せん断速度が0.1〜100(1/s)に対するせん断粘度を測定し、せん断速度が1(1/s)の時のせん断粘度を表2に示した。また室温で1週間静置したスラリーのせん断粘度を同一の条件で測定した。
【0051】
【表2】

【0052】
【化6】

【0053】
本発明の化合物1〜4を添加した実施例1〜4は、いずれも製造直後において良好な分散性を示しており、1週後においても経時的な粘度変化はほとんど見られなかった。
【0054】
一方、トリグリセリン骨格を有する比較例1は、製造直後において良好な分散性を示したものの、経時的な粘度変化が大きかった。またグリセリン骨格を有する比較例2、3では、直後の分散性が低下しており、経時的な粘度変化も大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)を0.05〜20質量%、成分(B)を40〜90質量%、成分(C)を5〜50質量%からなる組成を有することを特徴とする、金属粉末スラリー。
(A) 下記式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体
【化7】

(式中、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、mはAOの平均付加モル数で、mは5〜80を満たす。Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
(B) 金属粉末
(C) 有機溶剤
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコール誘導体において、AOが炭素数4のオキシアルキレン基であることを特徴とする、請求項1記載の金属粉末スラリー。

【公開番号】特開2013−32445(P2013−32445A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169337(P2011−169337)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】