説明

金属部材の接合構造

【課題】 ベース部材に接合されるビーム部材のフランジ部の外側端部(エッジ)におけるシール性を確保しながら、ベース部材およびビーム部材の耐腐食性を向上させることができる金属部材の接合構造を提供すること。
【解決手段】 フロアパネル5とフロアサイドメンバ9との接合構造15において、フロアサイドメンバ9に、長手方向に沿って延びフロアパネル5へ向かって開放する凹部本体16と、凹部本体16の各遊端部から幅方向外方へ張り出すフランジ部17とを形成する。フランジ部17には、フロアパネル5に接合される直交部23と、フロアパネル5に接合されない傾斜部24とを長手方向に沿って交互に複数設ける。そして、傾斜部24を、その外側端部21のみがフロアパネル5に接触するように、フロアパネル5と間隔を隔てて対向配置させた状態で、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士の接合構造として、例えば、自動車のフロアパネルと、フロアパネルを補強するためのメンバとの接合構造が知られている。
例えば、車両のフロントフロアパネルと、車両の前後方向に沿って延在する左右1対のフロントサイドメンバ、および平面視でフロントサイドメンバと重なるように車両の前後方向に沿って延在するフロアアッパメンバとの接合構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
フロントサイドメンバは、底壁部、左右1対の側壁部および左右1対のフランジ部を有する断面ハット状のフロントサイドメンバリヤと、同じく底壁部、左右1対の側壁部および左右1対のフランジ部を有する断面ハット状のフロントサイドメンバリヤリインフォースとの嵌合構造からなり、フロントサイドメンバリヤの凹部にフロントサイドメンバリヤインフォースが被嵌されている。
【0004】
一方、フロアアッパメンバは、頂壁部、左右1対の側壁部および左右1対のフランジ部を有する断面ハット状である。
上記した接合構造を形成するには、例えば、まず、フロントサイドメンバリヤのフランジ部とフロアアッパメンバのフランジ部とを対向させた状態で、フロントフロアパネルをこれらで挟み込む。次いで、両方のフランジ部とフロントフロアパネルとの重なり部分を、長手方向に沿って交互にスポット溶接することによって各部材同士を接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような接合構造では、各メンバのフランジ部の幅方向外側端部(エッジ)に対する塗料の付着性が低いので、エッジが露出しやすく、そのためエッジに錆が発生しやすい。それゆえ、フランジ部のエッジは、通常、シーリング材によって被覆される。
このようなシーリング材は、フランジ部とフロアパネルとの接合界面への水の浸入を抑制するためにも必要である。すなわち、上記の接合構造では、各メンバのフランジ部の全領域がフロアパネルに対して隙間なく密着するべた付けとなるので、塗装工程時、フロアパネルと各メンバとの接合界面に塗料が行き渡り難い。そのため、エッジがシーリング材で被覆されていないと、フランジ部のエッジ付近における接合界面から水が浸入し、フロアパネルやメンバが腐食するおそれがある。
【0007】
一方、フランジ部におけるスポット溶接に必要な領域を確保しつつ、フロアパネルとフランジ部との間に塗料を入り込ませるための隙間を設ける構造が検討されつつある。このような構造であれば、フロアパネルおよびフランジ部における他方との密着面積を低減できるので、フロアパネルおよびメンバの耐腐食性の向上が期待される。
しかし、そのような構造を設計する場合であっても、シーリング材によるシール性を維持する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、ベース部材に接合されるビーム部材のフランジ部の外側端部(エッジ)におけるシール性を確保しながら、ベース部材およびビーム部材の耐腐食性を向上させることができる金属部材の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の金属部材の接合構造は、ベース部材と、前記ベース部材に接合されるビーム部材とを備え、前記ビーム部材は、断面ハット状をなし、長手方向に沿って延び、前記ベース部材へ向かって開放される凹部本体と、前記凹部本体の各遊端部から前記長手方向に直交する幅方向外方へ張り出すフランジ部とを有し、前記フランジ部は、前記ベース部材に接合される接合部と、前記ベース部材に接合されない非接合部とを前記長手方向に沿って交互に複数有し、前記非接合部は、前記幅方向外側端部のみが前記ベース部材に接触するように、前記ベース部材と間隔を隔てて対向配置されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、ビーム部材が、長手方向に沿って非接合部と交互に複数設けられた接合部において、ベース部材に接合されている。これにより、ビーム部材が、ベース部材に対して複数点で接合されるので、ベース部材とビーム部材との接合強度を高めることができる。
また、フランジ部の非接合部の外側端部が、ベース部材と離間するのではなく、ベース部材に接触している。そのため、外側端部付近にシーリング材を塗布したときに、そのシール性を十分確保することができる。すなわち、非接合部の外側端部がベース部材と離間する構成では、外側端部とベース部材との間に生じる隙間によって、シーリング材のシール不良が生じやすいが、上記の構成では、そのようなシール不良を抑制することができる。その結果、シール不良に起因する、外側端部における錆の発生、ベース部材とフランジ部との接合界面への水の浸入などを抑制することができる。
【0011】
さらに、非接合部は、外側端部のみがベース部材に接触するように、ベース部材と間隔を隔てて対向配置されている。これにより、ベース部材とフランジ部との間に隙間が設けられる。したがって、ベース部材およびビーム部材における他方との密着面積を低減でき、さらに、例えば、当該隙間に塗料を行き渡らせることによって、非接合部およびベース部材における非接合部に対向する部分を塗装することもできる。その結果、ベース部材およびビーム部材の耐腐食性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の金属部材の接合構造では、前記非接合部が、前記ベース部材に対して前記幅方向外側端部から前記幅方向内側端部へ向かって傾斜していることが好適である。
この構成では、非接合部が、ベース部材に対して幅方向外側端部から幅方向内側端部へ向かって傾斜している。すなわち、非接合部が、接合部に対して幅方向外側端部から幅方向内側端部へ向かって傾斜している形態および/またはベース部材における非接合部に対向する部分が、接合部に対向する部分に対して幅方向外側端部から幅方向内側端部へ向かって傾斜している形態である。そのため、例えば、プレス加工などの方法によって、上記した傾斜形態を有するベース部材および/またはビーム部材を容易に形成することができる。
【0013】
さらに、ビーム部材がベース部材の下面に接合され、かつ、非接合部が接合部に対して傾斜する形態である場合には、非接合部に水滴などが生じても、非接合部の傾斜を利用して、その水滴を下方に落とすことができる。
さらに、本発明の金属部材の接合構造では、前記ベース部材が、自動車のフロアパネルであり、前記ビーム部材が、メンバであることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属部材の接合構造によれば、ビーム部材が、長手方向に沿って非接合部と交互に複数設けられた接合部において、ベース部材に接合されている。これにより、ビーム部材が、ベース部材に対して複数点で接合されるので、ベース部材とビーム部材との接合強度を高めることができる。
また、ビーム部材の非接合部は、幅方向外側端部のみがベース部材に接触するように、ベース部材と間隔を隔てて対向配置されている。
【0015】
非接合部の外側端部がベース部材と離間していないので、外側端部付近にシーリング材を塗布したときに、そのシール性を十分確保することができる。
また、ベース部材とフランジ部との間に隙間が設けられるので、ベース部材およびビーム部材における他方との密着面積を低減できる。その結果、ベース部材およびビーム部材の耐腐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態を示す接合構造が採用された自動車ボデーの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るフロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造の要部断面図であって、(a)が図1にII−IIで示される切断線で切断したときの断面図、(b)が(a)にIIb−IIbで示される切断線で切断したときの断面図、(c)が(a)にIIc−IIcで示される切断線で切断したときの断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るフロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造の要部断面図であって、(a)が図1にII−IIで示される切断線で切断したときの断面図、(b)が(a)にIIIb−IIIbで示される切断線で切断したときの断面図、(c)が(a)にIIIc−IIIcで示される切断線で切断したときの断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るフロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造の要部断面図であって、(a)が図1にII−IIで示される切断線で切断したときの断面図、(b)が(a)にIVb−IVbで示される切断線で切断したときの断面図、(c)が(a)にIVc−IVcで示される切断線で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.自動車ボデーの全体構成
図1は、本発明の実施形態を示す接合構造が採用された自動車ボデーの概略構成図である。
自動車ボデー1は、例えば、ハッチバック型車両に適用され、例えば、エンジン、動力伝達装置などを支持するためのシャシ部2と、乗員室、荷物室などを構成する箱状のシェル部3とが一体化されたフレームレス構造(モノコック構造)である。
【0018】
シャシ部2は、ロッカパネル4と、ベース部材としてのフロアパネル5と、フロアトンネル6と、フロントフロアクロスメンバ7と、リアフロアクロスメンバ8と、ビーム部材としてのフロアサイドメンバ9とを備えている。
ロッカパネル4は、自動車ボデー1の幅方向(以下、幅方向)両端において自動車ボデー1の前後方向(以下、前後方向)に沿って直線状に延び、前後各2つずつ設けられたホイールハウス10間を連結している。
【0019】
フロアパネル5は、略平板状に形成され、水平面に対して略平行をなして、一方のロッカパネル4と他方のロッカパネル4との間を連結している。フロアパネル5の上には、例えば、乗員が座るためのシートなどが取り付けられる。
フロアトンネル6は、フロアパネル5における幅方向略中央において、フロアパネル5の前端から後端に至るまで前後方向に沿って直線状に延び、フロアパネル5から上方へ突出する断面コ字状に形成されている。フロアトンネル6において下方へ開放された凹部には、例えば、フロアパネル5よりも前方に形成されたエンジンルームから後方へ延びる排気パイプなどが配設される。
【0020】
フロントフロアクロスメンバ7は、フロアパネル5上において、フロアトンネル6を隔てて左右両側に1対設けられている。各フロントフロアクロスメンバ7は、フロアトンネル6の前後方向途中部から一方もしくは他方のロッカパネル4に至るまで、幅方向に沿って直線状に延び、フロアパネル5から上方へ突出する断面コ字状に形成されている。
リアフロアクロスメンバ8は、フロアパネル5上において、一方のロッカパネル4から他方のロッカパネル4に至るまで、フロアトンネル6の後端を通過して幅方向に沿って直線状に延び、フロアパネル5から上方へ突出する断面コ字状に形成されている。
【0021】
フロアサイドメンバ9は、フロアパネル5の下面において、フロアトンネル6を挟んで左右両側に1対設けられている。各フロアサイドメンバ9は、フロントフロアクロスメンバ7と直交するように、フロアパネル5の前端から後端に至るまで前後方向に沿って直線状に延びている。
シェル部3は、フードパネル11、ルーフパネル12、フロントピラー13、センターピラー14などによって構成されている。
2.フロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造(第1の実施形態)
(1)接合構造の構成
図2は、本発明の第1の実施形態に係るフロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造の要部断面図であって、(a)が図1にII−IIで示される切断線で切断したときの断面図、(b)が(a)にIIb−IIbで示される切断線で切断したときの断面図、(c)が(a)にIIc−IIcで示される切断線で切断したときの断面図である。
【0022】
この接合構造15は、略平板状のフロアパネル5と、長手方向に沿って延びる断面ハット状のフロアサイドメンバ9との組み合わせによって構成されている。
フロアパネル5は、例えば、鋼板を用いて形成されている。鋼板の厚さは、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。
フロアサイドメンバ9は、例えば、鋼板を用いて形成され、凹部本体16と、フランジ部17とを一体的に備えている。
【0023】
凹部本体16は、長手方向に沿って延びる略長方形状の底壁18と、底壁18の幅方向両端からフロアパネル5へ向かって立設された1対の側壁19とを一体的に有する断面コ字状に形成されている。
底壁18の幅方向中央には、底壁18を貫通する平面視略円形の流通孔20が、長手方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。なお、図2では、流通孔20を1つのみ表わしている。流通孔20の直径は、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。
【0024】
1対の側壁19は、互いに同一形状であり、いずれも底壁18に対して直交している。一方の側壁19と他方の側壁19とは、車種などによって異なるが、適切に設計された距離D1(凹部本体16の幅)を隔てて、互いに平行に配置されている。
フランジ部17は、各側壁19の上端部(遊端部)から幅方向外方へ張り出して1対設けられている。一方のフランジ部17および他方のフランジ部17は、いずれも長手方向における側壁19の一端から他端に至るまで一定幅で延びる、平面視長方形状に形成されている。
【0025】
各フランジ部17は、凹部本体16の底壁18に対する幅方向外側端部21(遊端部)の高さが長手方向に沿って一定である。
各フランジ部17は、凹部本体16の側壁19に直角に交わる平面視矩形状の接合部としての直交部23と、外側端部21から内側端部22へ向かって直交部23に対して下方へ傾斜して、凹部本体16の側壁19に所定の角度で交わる平面視矩形状の非接合部としての傾斜部24とを長手方向に沿って交互に複数有し、互いに隣接する直交部23と傾斜部24とを一体的に連結する連結壁25をさらに有している。
【0026】
一方のフランジ部17における直交部23と傾斜部24との交互サイクルと、他方のフランジ部17における当該交互サイクルとは、同じであり、例えば、いずれのフランジ部17においても、長手方向両端部に直交部23が配置され、それらの間に傾斜部24と直交部23とが交互に配置されている。
これにより、一方のフランジ部17における、他方のフランジ部17の直交部23に対向する位置には、直交部23が配置され、一方のフランジ部17における、他方のフランジ部17の傾斜部24に対向する位置には、傾斜部24が配置される。
【0027】
直交部23の平面視における幅W1(フランジ部17の幅)および平面視における長さL1は、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。また、複数の直交部23は、全て同一形状であることが好ましく、さらに平面視正方形状であることが好ましい。
傾斜部24の平面視における幅W2(フランジ部17の幅)および平面視における長さL2は、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。また、複数の傾斜部24は、全て同一形状であることが好ましく、さらに平面視で直交部23と同一の正方形状であることが好ましい。
【0028】
また、直交部23に対する傾斜部24の傾斜角θは、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。
連結壁25は、各フランジ部17における、長手方向に沿って互いに隣接する直交部23と傾斜部24との各境界において、直交部23の一方側(他方側)縁部と傾斜部24の他方側(一方側)縁部とを連結する上下方向に沿って延びる断面視直角三角形状に形成されている。
【0029】
上記のようなフロアサイドメンバ9は、例えば、公知のプレス加工法によって形成することができる。例えば、まず、鋼板を、凹部本体16と、凹部本体16に長手方向に沿って直交するフランジ部17とを有する断面ハット形状に成形する。
次いで、当該フランジ部17のみを、所定の金型を用いてプレスすることによって、フランジ部17に傾斜部24を形成する。以上の工程を経て、フロアサイドメンバ9が得られる。
【0030】
フロアサイドメンバ9に適用される鋼板としては、例えば、JIS Z 2241に準拠して測定される引張強さがフロアパネル5よりも大きい鋼板が挙げられ、好ましくは、高張力鋼板が挙げられる。また、鋼板の厚さは、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。
また、フロアサイドメンバ9において、凹部本体16の厚さとフランジ部17の厚さとは、同じである必要はなく、例えば、差厚鋼板を用いることによって、差があってもよい。
【0031】
その場合、フランジ部17の厚さが、例えば、凹部本体16の厚さよりも小さいことが好ましい。凹部本体16とフランジ部17と間において、厚さの差が設けられることによって、凹部本体16に優れた強度を保持させつつ、フランジ部17を精密にプレス加工することができる。
そして、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9とは、フロアパネル5の下面26とフランジ部17の直交部23の上面27とを重ねた状態で、例えば、これら重なった部分がスポット溶接されることによって接合されている(図2の「×」部分参照)。
【0032】
フランジ部17の外側端部21(遊端部)の高さが、長手方向に沿って凹部本体16の底壁18に対して一定であることから、フランジ部17は、その外側端部21の全部が長手方向に沿ってフロアパネル5に接触する。
そのため、このような接合構造15では、傾斜部24は、その外側端部21のみが、直交部23と同様にフロアパネル5の下面26に接触し、外側端部21から内側端部22に至るまでの部分が、フロアパネル5と間隔を隔てて対向することとなる。すなわち、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9との間には、傾斜部24において、外側端部21から内側端部22へ向かって連続的に大きくなる隙間28が形成される。
【0033】
フロアパネル5と傾斜部24との間の隙間28の最大間隔D2は、車種などによって異なり、適宜適切な大きさに設計される。
この接合構造15において、フランジ部17の外側端部21に沿ってシーリング材29が直線状に塗布されることによって、フランジ部17の外側端部21およびフロアパネル5の下面26における外側端部21に近接する部分が被覆されている。
(2)作用・効果
以上のように、この接合構造15によれば、フロアサイドメンバ9は、長手方向に沿って傾斜部24と交互に複数設けられた直交部23がスポット溶接されることによって、フロアパネル5に接合されている。これにより、フロアサイドメンバ9が、フロアパネル5に対して複数点で接合されるので、フロアサイドメンバ9とフロアパネル5との接合強度を高めることができる。
【0034】
また、一方のフランジ部17における直交部23と傾斜部24との交互サイクルと、他方のフランジ部17における当該交互サイクルとが同じである。そのため、上記した接合点を長手方向に沿って一定間隔で整列させることができる。その結果、フロアサイドメンバ9とフロアパネル5との接合強度を一層高めることができる。
また、フランジ部17の傾斜部24の外側端部21が、フロアパネル5の下面26と離間するのではなく、下面26に接触している。そのため、下面26に接合される直交部23だけでなく、傾斜部24においても、フランジ部17の外側端部21とフロアパネル5の下面26との隙間をなくすことができる。その結果、フランジ部17の外側端部21に沿って塗布されたシーリング材29のシール性を十分確保することができる。
【0035】
すなわち、仮に、フランジ部17の外側端部21が、傾斜部24においてフロアパネル5の下面26と離間していると、外側端部21とフロアパネル5との間に生じる隙間によって、シーリング材29のシール不良が生じやすいが、この接合構造15では、そのようなシール不良を抑制することができる。その結果、シール不良に起因する、フランジ部17の外側端部21における錆の発生、フロアパネル5とフランジ部17との接合界面への水の浸入などを抑制することができる。
【0036】
さらに、フロアパネル5と傾斜部24との間には、フランジ部17の外側端部21から内側端部22へ向かって連続的に大きくなる隙間28が形成されている。これにより、フロアパネル5とフランジ部17との密着面積を、直交部23の上面27の面積にまで低減でき、さらに、隙間28に塗料を行き渡らせることによって、傾斜部24、連結壁25およびフロアパネル5の下面26における傾斜部24に対向する部分を塗装することもできる。その結果、フロアパネル5およびフロアサイドメンバ9の耐腐食性を向上させることができる。
【0037】
また、フランジ部17における、フロアパネル5に接合されない部分が、外側端部21から内側端部22へ向かって直交部23に対して下方へ傾斜する傾斜部24である。そのため、鋼板をプレス加工することによって、傾斜部24を有するフロアサイドメンバ9を容易に形成することができる。また、プレス加工用の金型を作製することによってフランジ部17を加工できるので、生産コストの上昇を抑制することもできる。
【0038】
さらに、フロアサイドメンバ9がフロアパネル5の下面26に接合されているので、傾斜部24に水滴などが生じても、傾斜部24の傾斜を利用して、その水滴を凹部本体16の底壁18に落とすことができる。その上、底壁18に流通孔20が形成されていることから、落下した水滴を、流通孔20を介してフロアサイドメンバ9外に排出(水抜き)することができる。
3.フロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造(第2の実施形態)
(1)接合構造の構成
図3は、本発明の第2の実施形態に係るフロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造の要部断面図である。図3において、図2に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
第1の実施形態では、フランジ部17において、各直交部23の間に傾斜部24を形成したが、図4に示すように、傾斜部24に代えて鉤部31を形成してもよい。
すなわち、フランジ部17は、平面視矩形状の直交部23と、直交部23に対して垂直方向下方へ窪み、凹部本体16の側壁19に直角に交わる断面視鉤形かつ平面視矩形状の非接合部としての鉤部31とを長手方向に沿って交互に複数有し、互いに隣接する直交部23と鉤部31とを一体的に連結する連結壁32をさらに有していてもよい。
【0040】
第2の実施形態に係る接合構造30では、フロアパネル5の下面26と直交部23の上面27とを重ねた状態で、例えば、これら重なった部分がスポット溶接されることによって、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9とが接合されている(図4の「×」部分参照)。
そして、フランジ部17に鉤部31が形成されているので、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9との間には、鉤部31において、外側端部21から内側端部22へ向かって一定間隔の隙間33が形成される。
(2)作用・効果
以上のように、この接合構造30によれば、フロアサイドメンバ9は、長手方向に沿って鉤部31と交互に複数設けられた直交部23がスポット溶接されることによって、フロアパネル5に接合されている。これにより、フロアサイドメンバ9が、フロアパネル5に対して複数点で接合されるので、フロアサイドメンバ9とフロアパネル5との接合強度を高めることができる。
【0041】
また、一方のフランジ部17における直交部23と鉤部31との交互サイクルと、他方のフランジ部17における当該交互サイクルとが同じである。そのため、上記した接合点を長手方向に沿って一定間隔で整列させることができる。その結果、フロアサイドメンバ9とフロアパネル5との接合強度を一層高めることができる。
また、フランジ部17の鉤部31の外側端部21が、フロアパネル5の下面26と離間するのではなく、下面26に接触している。そのため、下面26に接合される直交部23だけでなく、鉤部31においても、フランジ部17の外側端部21とフロアパネル5の下面26との隙間をなくすことができる。その結果、フランジ部17の外側端部21に沿って塗布されたシーリング材29のシール性を十分確保することができる。
【0042】
すなわち、仮に、フランジ部17の外側端部21が、鉤部31においてフロアパネル5の下面26と離間していると、外側端部21とフロアパネル5との間に生じる隙間によって、シーリング材29のシール不良が生じやすいが、この接合構造30では、そのようなシール不良を抑制することができる。その結果、シール不良に起因する、フランジ部17の外側端部21における錆の発生、フロアパネル5とフランジ部17との接合界面への水の浸入などを抑制することができる。
【0043】
さらに、フロアパネル5と鉤部31との間には、フランジ部17の外側端部21から内側端部22へ向かって一定間隔の隙間33が形成されている。これにより、フロアパネル5とフランジ部17との密着面積を、直交部23の上面27の面積にまで低減でき、さらに、隙間33に塗料を行き渡らせることによって、鉤部31、連結壁32およびフロアパネル5の下面26における鉤部31に対向する部分を塗装することもできる。その結果、フロアパネル5およびフロアサイドメンバ9の耐腐食性を向上させることができる。
4.フロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造(第3の実施形態)
(1)接合構造の構成
図4は、本発明の第3の実施形態に係るフロアパネルとフロアサイドメンバとの接合構造の要部断面図である。図4において、図2に示す各部に対応する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
第1の実施形態では、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9との間に隙間28を設けるための傾斜部24は、フロアサイドメンバ9のフランジ部17に形成されたが、図4に示すように、傾斜部37がフロアパネル5に形成されてもよい。
第3の実施形態に係る接合構造34では、フロアサイドメンバ9のフランジ部17は、その全体が凹部本体16の側壁19に直角に交わる平板状の直交部として形成されている。
【0045】
一方、フロアパネル5には、フロアサイドメンバ9と対向する部分において、フランジ部17と重なる接合部としての平面部35と、平面部35に対して上方へ凹む幅方向に長い平面視長方形状のビード部36とが、長手方向に沿って交互に複数形成されている。
ビード部36は、1対のフランジ部17の両外側端部21から内側端部22へ向かって、平面部35に対して上方へ傾斜する1対の非接合部としての傾斜部37と、これらの上端を連結し、平面部35に対して平行な平行部38とを一体的に有する平面視矩形状の断面視等脚台形状に形成されている。
【0046】
この接合構造34では、フロアパネル5の下面26における平面部35とフランジ部17の上面27とを重ねた状態で、例えば、これら重なった部分がスポット溶接されることによって、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9とが接合されている(図3の「×」部分参照)。
そして、フロアパネル5にビード部36が形成されているので、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9との間には、傾斜部37において、外側端部21から内側端部22へ向かって連続的に大きくなる隙間39が形成される。
(2)作用・効果
以上のように、この接合構造34によれば、フロアサイドメンバ9は、フランジ部17がフロアパネル5の平面部35にスポット溶接されることによって、フロアパネル5に接合されている。これにより、フロアサイドメンバ9が、フロアパネル5に対して複数点で接合されるので、フロアサイドメンバ9とフロアパネル5との接合強度を高めることができる。
【0047】
また、ビード部36が、一方のフランジ部17と他方のフランジ部17と間に跨るように、平面視長方形状に形成されている。そのため、このビード部36の間に配置される平面部35において、上記した接合点を長手方向に沿って一定間隔で整列させることができる。その結果、フロアサイドメンバ9とフロアパネル5との接合強度を一層高めることができる。
【0048】
また、ビード部36の傾斜部37が、フランジ部の外側端部21と離間するのではなく外側端部21に接触しており、そのため、外側端部21がフロアパネル5の下面26に接触している。したがって、フランジ部17に接合される平面部35だけでなく、傾斜部37においても、フランジ部17の外側端部21とフロアパネル5の下面26との隙間をなくすことができる。その結果、フランジ部17の外側端部21に沿って塗布されたシーリング材29のシール性を十分確保することができる。
【0049】
すなわち、仮に、ビード部36の傾斜部37が、フランジ部の外側端部21と離間していると、外側端部21とフロアパネル5との間に生じる隙間によって、シーリング材29のシール不良が生じやすいが、この接合構造34では、そのようなシール不良を抑制することができる。その結果、シール不良に起因する、フランジ部17の外側端部21における錆の発生、フロアパネル5とフランジ部17との接合界面への水の浸入などを抑制することができる。
【0050】
さらに、傾斜部37とフランジ部17との間には、フランジ部17の外側端部21から内側端部22へ向かって連続的に大きくなる隙間39が形成されている。これにより、フロアパネル5とフランジ部17との密着面積を、フロアパネル5の下面26における平面部35の面積にまで低減でき、さらに、隙間39に塗料を行き渡らせることによって、傾斜部37およびフランジ部17における傾斜部37に対向する部分を塗装することもできる。その結果、フロアパネル5およびフロアサイドメンバ9の耐腐食性を向上させることができる。
【0051】
また、フロアパネル5における、フランジ部17に接合されない部分が、外側端部21から内側端部22へ向かって平面部35に対して上方へ傾斜する傾斜部37である。そのため、鋼板をプレス加工することによって、傾斜部37を有するフロアパネル5を容易に形成することができる。また、プレス加工用の金型を作製することによってビード部36を加工できるので、生産コストの上昇を抑制することもできる。
【0052】
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。
例えば、前述の実施形態では、本発明の一例として、フロアパネル5とフロアサイドメンバ9との接合を取り上げたが、本発明は、上記実施形態以外にも、例えば、自動車ボデーにおけるその他の接合構造(例えば、フロアパネル5とフロントフロアクロスメンバ7との接合構造)、例えば、建物の壁面に設置された鋼板とアングル材との接合構造など、各種工業分野において好適に実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
5 フロアパネル
9 フロアサイドメンバ
15 接合構造
16 凹部本体
17 フランジ部
19 側壁
21 外側端部
22 内側端部
23 直交部
24 傾斜部
30 接合構造
31 鉤部
34 接合構造
35 平面部
37 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に接合されるビーム部材とを備え、
前記ビーム部材は、断面ハット状をなし、
長手方向に沿って延び、前記ベース部材へ向かって開放される凹部本体と、
前記凹部本体の各遊端部から前記長手方向に直交する幅方向外方へ張り出すフランジ部とを有し、
前記フランジ部は、前記ベース部材に接合される接合部と、前記ベース部材に接合されない非接合部とを前記長手方向に沿って交互に複数有し、
前記非接合部は、前記幅方向外側端部のみが前記ベース部材に接触するように、前記ベース部材と間隔を隔てて対向配置されていることを特徴とする、金属部材の接合構造。
【請求項2】
前記非接合部が、前記ベース部材に対して前記幅方向外側端部から前記幅方向内側端部へ向かって傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の金属部材の接合構造。
【請求項3】
前記ベース部材が、自動車のフロアパネルであり、
前記ビーム部材が、メンバであることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−227981(P2010−227981A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80011(P2009−80011)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】