説明

金属酸化物の電気化学的還元

電解セルの中で固体状態の金属酸化物供給材料を電気化学的に還元する方法が開示されている。電解セルは電解質の溶融浴、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間に電位を印加する手段を包含している。本方法は、還元された材料と共に浴から除去される電解質と置き換わるのに必要とされる量の電解質より大きい量である量の電解質を浴の中に供給すること、及び浴の高さを必要とされる高さに又は必要とされる高さの範囲内に維持するように浴から溶融電解質を除去すること、を特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物の電気化学的還元に関する。
【0002】
本発明は特に、代表的には0.2重量%以下の低酸素濃度を有する金属を生産するための粉末形態の金属酸化物の連続式または半連続式電気化学的還元に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は本出願人によって遂行されている金属酸化物の電気化学的還元に対する継続中の研究プロジェクトの進行中に成された。その研究プロジェクトはチタニア(TiO)の還元に焦点をあわせている。
【0004】
その研究プロジェクトの進行中に、本出願人は溶融CaCl系電解質のプールと、グラファイトから形成されたアノードと、カソードの連なりとを含んでいる電解セルの中でのチタニアの還元を究明する一連の実験を遂行してきた。
【0005】
実験に使用したCaCl系電解質は商業的に入手可能なCaCl、いわゆる塩化カルシウム2水和物であって、それは加熱で分解し非常に少量のCaOを生成した。
【0006】
本出願人は電解セルをCaOの分解電位より上で、且つCaClの分解電位より下の電位で操作した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は電解セルがこれらの電位においてはチタニアを電気化学的に還元して低濃度すなわち0.2重量%未満の濃度の酸素をもったチタンにすることができることを解明した。
【0008】
本出願人は研究の初期にはペレットおよびより大きい固体ブロックの形態のチタニアをそして研究の後期にはチタニア粉末を用いて回分式(batch basis)で電解セルを操作した。
出願人は、また、他の金属酸化物を用いて、回分式で電解セルを操作した。
【0009】
研究はかかる電解セルの中でチタニア(およびその他の金属酸化物)を電気化学的に還元して低濃度酸素を有する金属にすることが可能であるということを確立したが、本出願人は回分式で電解セルを工業的に操作するには有意な実施上の困難性があることを理解した。
【0010】
研究の結果と技術の工業化の可能性を考察する過程で、本出願人は金属酸化物の粉末およびペレットが制御された様式でセルの中を搬送され、そして還元形態でセルから排出されながら、電解セルを連続式または半連続式で操作することによって商業的生産が達成できるということがわかった。
【0011】
本出願人の名での国際出願PCT/AU2003/001657には、この発明は広い言い方では、溶融電解質の浴とカソードとアノードを含んでいる電解セルの中で固体状態のチタニアのような金属酸化物を電気化学的に還元する方法であって、(a)浴に供給された金属酸化物を電気化学的に還元することができるセル電位をアノードとカソードの間に印加し、(b)金属酸化物を粉末および/またはペレットの形態で連続的または半連続的に浴の中に供給し、(c)該粉末および/またはペレットを浴内の進路に沿って搬送し、そしてその進路に沿って金属酸化物の粉末および/またはペレットが移動するときに金属酸化物を還元し、そして(d)浴から金属を連続的または半連続的に取り出す諸工程を含む上記方法として記載されている。
【0012】
この国際出願は用語「粉末および/またはペレット」を3.5mm以下の粒子サイズを有する粒子を意味すると定義している。
【0013】
本明細書の中に使用されるとき用語「粉末」および「ペレット」は主寸法が5mm未満である粒子を意味すると理解される。
【0014】
本明細書の中で使用される用語の「粉末」および「ペレット」は、特許保護の範囲を特定の粒子製造手順に限定することを意図していない。
【0015】
用語「半連続式」は該国際出願の中では及び本明細書の中では、方法が(a)金属酸化物粉末および/またはペレットをセルに供給する期間とそのような金属酸化物粉末および/またはペレットのセルへの供給の無い期間、そして(b)還元された材料をセルから取り出す期間とそのような還元された材料のセルからの取り出しの無い期間を含んでいることを意味している。
【0016】
該オーストラリア仮出願の中では及び本明細書の中では用語「連続式」および「半連続式」の使用の総体的な意図は回分式以外のセルの操作を記述することである。
【0017】
対照的に、用語「回分式」(batch)は該国際出願の中では及び本明細書の中では、金属酸化物が連続的にセルに供給され、そして還元金属がセルのサイクルの最後までセル内に蓄積する状況、たとえば、国防大臣の名での国際出願WO01/62996に開示されているような、を包含すると理解される。
【0018】
上記の最初の発明を成した後に、本出願人は電解セルを連続式または半連続式で操作することに基づいた商業的生産の可能性への更なる研究を遂行した。本出願人は、商業的生産向けのセルが含有すべきセルのカソードは、本明細書の中に記載されているようにペレット形態の金属酸化物を支持するための上面を有して水平に配置されているか又は僅かに傾けられており、そして電解質の浴の中に浸漬されており、そして運動好ましくは前後方向の運動に向くように支持されていて金属酸化物ペレットをカソードの前端に向って動かせるプレートのような部材の形態であるということに気付いた。
【0019】
本出願人の名での国際出願PCT/AU2004/000809はこの所謂「シェーカーテーブル(shaker table)」カソード発明を広い言い方で記載している。
【0020】
本出願人は「シェーカーテーブル」発明についての更なる研究開発を遂行し、そして今や該発明に従った特定の電解セルを設計した。特定電解セル設計の発明はオーストラリア仮出願2003905261からの優先権を主張して本出願人の名で2004年9月27日に提出された国際出願の主題である。特定電解セル設計は多数アノードを特徴とし且つ「シェーカーテーブル」カソードとセルの上方からのアノードとを分離して支持する支持体構造を特徴としており、支持体構造は「シェーカーテーブル」カソードの上面の上方のアノードの間隔を調節することができる。
【0021】
電解セルを連続式または半連続式で操作することに基づいた商業的生産の可能性についての研究開発の過程で、本出願人は還元金属と共に浴から排出される電解質を補うのに必要とされるものを上回る電解質を連続的または周期的に浴からパージすること及びこのパージを補うために電解質を慎重に添加することがセルの効率的操作には重要であるということに気付いた。
【0022】
その研究開発の過程で、更に、本出願人はパージされた電解質を清浄化して汚染物質(たとえば炭化物および炭酸塩)を除去することができるということ及び清浄化された電解質を浴に戻すことができるということに気付いた。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、電解質の溶融浴、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間に電位を印加する手段を含んでいるタイプの電解セルの中で固体形態の金属酸化物供給材料を電気化学的に還元する方法であって、(a)溶融電解質の浴に供給された金属酸化物を電気化学的に還元することができる電位をアノードとカソードの間に印加し、(b)連続的または半連続的に金属酸化物供給材料を浴の中に供給し、(c)金属酸化物供給材料を浴内の進路に沿って搬送し、そして金属酸化物を供給材料が進路に沿って移動するにつれて還元し、(d)連続的または半連続的に浴から少なくとも部分的には還元された材料を取り出し、(e)浴から失われる還元された材料および浴から還元された材料と共に除去される電解質を補償するのに必要とされる量の電解質よりも大きい量の電解質を浴の中に供給し、そして(f)浴の高さを必要とされる高さに又は必要とされる高さの範囲内に維持するように浴から溶融電解質を除去する、諸工程を含む上記方法が提供される。
【0024】
上記方法は浴から取り出された還元された材料を補償するのに必要とされる電解質とセルの操作中に還元された材料によって保留された電解質との量を上回る電解質(代表的にはCaCl)の慎重な添加(単数または複数)を行う工程(e)を特徴としている。
【0025】
工程(e)における電解質添加は連続式または周期式であってもよい。
【0026】
工程(e)において浴に添加される電解質は溶融相または固体相の状態にあってもよい。
【0027】
好ましくは、工程(e)は、電解質を時間平均に基づき、工程(b)において浴に供給される金属酸化物供給材料の量の70%〜100%である量で供給することを包含する。
【0028】
上記方法は、また、浴の高さを必要とされる高さに又は高さの範囲内に維持するように浴から電解質を慎重に除去する工程(f)を特徴としている。
【0029】
一つの、しかし限定されるものではない、態様においては、電解質除去はセルの中のオーバーフロー堰(overflow weir)による。除去された電解質は炭化物や炭酸塩のような汚染物質を除去するために処理される。処理済み電解質はセルに戻される。
【0030】
好ましくは、金属酸化物供給材料はここに記載されている通りの粉末および/またはペレットの形態である。
【0031】
好ましくは、本方法は工程(f)において浴から除去された電解質を処理して汚染物質を除去し、そして処理済み電解質を浴に供給することを包含する。
【0032】
好ましくは、カソードは、粉末および/またはペレット形態にある金属酸化物を支持するための上面を有し、水平に配置されているか又は僅かに傾けられており、そして電解質の浴の中に浸漬されており、そして金属酸化物粉末および/またはペレットをカソードの前端に向って動かせるように前後方向の運動に向くように支持されているプレートのような部材の形態である。
【0033】
この配置では、好ましくは、工程(b)は金属粉末および/またはペレット形態の金属酸化物供給材料を該粉末および/またはペレットがカソードの後端でカソードの上面に堆積するように浴に供給することを包含する。
【0034】
好ましくは、本方法は金属酸化物粉末および/またはペレットを溶融電解質と接触した状態でカソードの上面の上をカソードの前端に向って移動させ、それによって粉末および/またはペレットが前端に向って動くにつれて金属酸化物の電気化学的還元が起こる工程を包含している。
【0035】
好ましくは、工程(b)は金属酸化物粉末および/またはペレットを該粉末および/またはペレットがカソードの上面に単層を形成するように溶融電解質の浴の中に供給することを包含する。
【0036】
好ましくは、工程(c)は金属酸化物粉末および/またはペレットを粉末および/またはペレットの充填単層の層としてカソードの上面をカソードの前端に向って金属酸化物ペレットを移動させることによって搬送することを包含する。
【0037】
好ましくは、工程(c)は金属酸化物粉末および/またはペレットをカソードの上面の上をカソードの前端に向って移動させるようにカソードを選択的に動かすことを包含する。
【0038】
好ましくは、工程(c)は金属酸化物粉末および/またはペレットが浴内で実質的に同じ滞留時間を有するように粉末および/またはペレットがカソードの幅にわたって同じ速度で移動することを起こさせるようにカソードを動かすことによって金属酸化物粉末および/またはペレットを搬送することを包含する。
【0039】
好ましくは、本方法は金属酸化物を電気化学的に還元して0.3重量%以下である酸素濃度を有する金属にする。
【0040】
より好ましくは、酸素濃度は0.2重量%以下である。
【0041】
本方法は一つまたはそれ以上の電解セルを伴う一段法または多段法であってもよい。
【0042】
金属酸化物供給材料が粉末および/またはペレット形態である状況では、好ましくは、本方法は工程(d)において、浴から取り出された粉末および/またはペレットを洗浄して該粉末および/またはペレットと一緒にセルから運ばれた電解質を分離することを包含する。
【0043】
本方法は粉末および/またはペレットから洗除された電解質を回収し、そして該電解質をセルに再循環させることを包含する。
【0044】
好ましくは、本方法は、電解質の気化および/または分解の温度より低く、セルの温度を維持することを包含する。
【0045】
好ましくは、本方法は、電解質の中にカソード金属酸化物のカチオン以外の金属のカチオンが存在するように電解質の少なくとも一つの成分の分解電位より上のセル電位を印加することを包含する。
【0046】
金属酸化物がチタニアである状況では、電解質は成分の一つとしてCaOを含有するCaCl系電解質であることが好ましい。
【0047】
かかる状況では、本方法はセル電位をCaOの分解電位より上に維持することを包含することが好ましい。
【0048】
本発明によれば、金属酸化物供給材料を電気化学的に還元するための電解セルであって、(a)溶融電解質の浴、(b)カソード、(c)アノード、(d)アノードとカソードの間に電位を印加する手段、(e)金属酸化物供給材料を電解質の浴に供給する手段、(f)電解質の浴から少なくとも部分的には電気化学的に還元された金属酸化物を取り出す手段、(g)失われる還元された材料と浴から取り出される還元された材料によって保留される電解質とを補償するのに必要とされる量の電解質より大きい量の電解質を浴の中に供給する手段、および(f)浴の高さを必要とされる高さに又は必要とされる高さの範囲内に維持するように浴から溶融電解質を除去する手段を包含する前記セルが提供される。
【0049】
好ましくは、電解セルはさらに、工程(f)において浴から除去された電解質を処理して電解質から汚染物質を除去し、そして処理済み電解質を浴に供給する手段を包含する。上記の通り、標的汚染物質としては炭化物および炭酸塩が挙げられる。
【0050】
好ましくは、アノードとカソードの間に電位を印加する手段は、(a)電源および(b)電源とアノードとカソードを電気接続する電気回路を包含する。
【0051】
好ましくは、電解セルはセルから放出されたガスを処理する手段を包含している。
【0052】
ガス処理手段は、ガスから一酸化炭素、二酸化炭素、塩素含有ガスおよびホスゲンのいずれか一つ以上を除去する手段を包含してもよい。
【0053】
ガス処理手段はまた、ガスの中の一酸化炭素ガスを燃焼させる手段を包含してもよい。
【0054】
金属酸化物がチタニアである状況では、電解質は成分の一つとしてCaOを含んでいるCaCl系電解質であることが好ましい。
【0055】
好ましくは、粉末および/またはペレットの粒子サイズは1〜4mmの範囲にある。
【0056】
代表的には、粉末および/またはペレットの粒子サイズは1〜3mmの範囲にある。
【0057】
更に本発明を例でもって図面を参照して記載する。
【0058】
以下の記述は、チタニアを電気化学的に還元して酸素濃度が0.3重量%未満であるチタン金属にするものである。しかしながら、本発明はこの金属酸化物に限定されるものではなく、その他の金属酸化物の粉末および/またはペレットおよび/またはその他の形態に及ぶ、ということを言及しておく。
【0059】
本方法は、還元された材料とセルの操作中に浴から取り出された還元された材料によって保留された電解質とを補償するために必要とされる電解質の量を上回る電解質(代表的にはCaCl)の慎重な添加を行う工程を特徴としている。
【0060】
本方法はまた、セル内の浴の高さを維持するために浴から電解質を慎重に除去する工程を特徴としている。
【0061】
当該態様においては、電解質の添加は適切な大きさの注型ブロックの形態であり、そして電解質除去はセル内のオーバーフロー堰による。除去された電解質はCaOを除去する(HClで洗浄することによる)ように及び場合によっては炭素のような汚染物質を除去するように処理される。処理された電解質はセルに戻される。実際には、電解質の除去と電解質の処理が電解質から酸素イオンを除去する。これはカソードからアノードへの酸素イオンの拡散速度を改善するという点で有利である。
【0062】
通例の提案はセルにチタニアを0.8kg/時でそして電解質を1.0kg/時で添加することである。これは浴が約700kgの塩を保持する状況においては比較的少量の電解質添加であるが、セルへのチタニアの添加量の関係においては比較的かなりの添加である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
図1に示された装置の主な構成要素は電解セル1である。
【0064】
図面に示されたセルは平面図では矩形である囲い込まれたチャンバーであり、そして底面壁(base wall)3、相対する端面壁(end walls)5、相対する側面壁(side walls)7、およびトップカバー(top cover)9を有する。
【0065】
セルは溶融電解質の浴21を含有している。好ましい電解質は少なくとも若干のCaOを含有するCaClである。
【0066】
セルは固体電解質ブロックのための入口59(図2参照)をトップカバー9の中に、図2で見ると右側の端面に、そしてその他の図で見ると左側の端面に、含んでいる。
【0067】
装置は商業的に支給された電解質を溶融するための炉45と炉からの溶融電解質を適切な大きさのブロックに注型するための注型ステーション(casting station)47を含んでいる。
【0068】
セルはチタニアペレットのための一連の入口をトップカバー9の中に、図1、3、4および5で見るとセルの左側の端近くに、そして図2で見るとセルの右側の端近くに、含んでいる。セルのこの端を以後、セルの「後端」と称する。これら入口は図2の中の符号11で同定されている。
【0069】
装置はチタニアペレットを「生(green)」状態で成形するパンペレット製造機(pan pelletiser)51と、生ペレットを焼結して後続の処理工程に耐えるに十分な強度にする焼結炉53を含んでいる。焼結ペレットはそのまま貯蔵箱(storage bin)55の中に貯蔵されて振動供給装置(vibratory feeder)57を経てセル入口11に供給される。代表的には、ペレットは1〜4mmのサイズ範囲を有する。
【0070】
セルはさらに、セル1から過剰の電解質を除去するためのオーバーフロー堰49(図3、4および5を参照)の形態の出口を含んでいる。オーバーフロー堰49は、電解質入口59に対してセル1の反対側の端に位置している。オーバーフロー堰49は電解質の浴が予め定められた最大高さを超えないことを確保するのに有効なオプションである。
【0071】
装置はまた、オーバーフロー堰49を経由してセル1から除去された電解質のためのタンク57を含んでいる。
【0072】
装置はまた、タンク57からの電解質をセル1に再循環させるのに先立って処理するための処理ステーション(図示されてない)を含んでいる。たとえば、電解質は電解質から炭化物および炭酸塩を除去するように処理されてもよい。処理はまた、そうではなく、他の汚染物質を除去するように電解質を処理することを包含してもよい。
【0073】
セルはさらに、底面壁3の中にチタン金属ペレット用の出口13を、図1、3、4および5で見たときにはセルの右側の端近くに、そして図2で見たときにはセルの右側の端近くに、含んでいる。セルのこの端を以後、セルの「前端」と称する。出口13は下方に向って収束していく側面15と上方に向って傾斜したオーガー(auger)35とによって規定された溜め(sump)の形態であるか又は溜めの下端からチタンペレットおよび保留電解質を受理するように、そしてペレットをセルから搬出するように配置されたその他の適切な手段である。
【0074】
セルはさらに、カソード25を、浴21の中に浸漬され、そして底面壁21の上方の短い距離に配置されたプレートまたはその他の適する部材の形態で、含んでいる。カソードプレート25は支持体構造物によってセルの中に、カソードプレート25の上面が水平になっているか又はセルの後端から前端へと僅かに下に傾いているように、支持されている。カソードプレート25の長さおよび幅の寸法はセル内に都合よく嵌ることが可能なかぎり大きくなるように選択されている。カソードプレート25は後述する通り振動運動(oscillating motion)で前後方向に動くように支持されている。カソードプレート支持体構造は本出願人の名で2004年9月27日に提出された国際出願の中に詳細に記載されており、そして該国際出願の中の開示はクロスリファレンスによって本明細書の中に組み込まれる。
【0075】
セルはさらに、浴21の中へと延びている包括的に符号19によって同定された6個のアノードを含んでいる。アノード19は棒またはその他の適する支持部材27の末端に搭載されたグラファイトブロック23を包含する。アノードブロック19は電解質の浴21の中に発生したガスを浴から逃がすことを可能にする縦方向に延びたスロット91(図2を参照)を含んでいる。アノード19は対で配列されており、そしてアノードブロック23の大きさはアノードがカソードプレート25の上面の実質的に全面の上方に直接に位置を定められるように選ばれている。アノード19はアノードブロック23をアノードグラファイトの下方区域がアノードでのセル反応によって消費されるにつれて次第に浴中に降ろしていくことができるように支持体構造によって支持されている。セルのトップカバー9は支持部材27のための開口95(図2および3を参照)を含んでいる。アノード支持体構造は本出願人の名で2004年9月27日に提出された上記の国際出願の中に詳細に記載されている。
【0076】
本出願人は、短時間の前後運動すなわち振動運動と短時間の休止とを含む反復シーケンスでのカソードプレート25の運動はカソードプレート25の上面の上のペレットを上面の上での一連の短いステップでセルの後端から前端へと動かすことを可能にする、ということを発明した。
【0077】
その上、本出願人は、上記タイプの運動はペレットが浴21の中で実質的に同じ滞留時間を有するようにペレットをしてカソードプレート25の幅にわたって定速度で動かすことができる、ということを明らかにした。
【0078】
セルはさらに、アノードブロック23とカソードプレート25の間に電位を印加するための電源31を含んでおり、そして電気回路(上記のカソード支持部材79を包含する)は電源31とアノード23とカソードを電気的に接続する。カソード支持部材79の大きさおよび/または位置はカソードプレート25の上でのチタニアペレットの電気化学的還元を最適化するために予め選択された電流分布をカソードプレート25に供給するように選択されている。環境に依存して、セルの操作に必要とされる電流分布の範囲が存在するであろう。
【0079】
セルの操作はアノードブロック23において一酸化炭素および二酸化炭素および場合によっては塩素含有ガスを発生させるので、これらガスをセルから除去することが重要である。さらに、セルは排ガスの出口41をセルのトップカバー9の中に含み、そして排ガスを処理するガス処理ユニット43を含み、処理済みガスを大気に放出する。ガス処理は二酸化炭素および何らかの塩素ガスを除去することを包含しており、そして一酸化炭素を燃焼してプロセスのための熱を発生させることを包含してもよい。
【0080】
セルの使用においては、チタニアペレットはカソードプレート25の上に単層を形成するようにセルの後端でカソードプレート25の上面に供給され、そしてカソードは上記の通りに動かされ、そしてペレットをプレートの表面上で前方へセルの前端までステップさせ、最終的にはカソードの前端から落下させる。ペレットがカソードプレート25の表面上を移動させられるにつれてペレットはセル内で累進的に電気化学的に還元される。カソードプレート25の操作パラメーターはペレットがセル内でチタニアペレットの必要レベルの還元を達成するのに十分な滞留時間を有するように選択される。代表的には、2〜4mmチタニアペレットは3Vのセル操作電圧において0.3重量%の酸素濃度をもつチタンに還元されるのには4時間の滞留時間を必要とする。
【0081】
本出願人は上記配置が結果としてセルの前端から短い距離の範囲内でチタニアペレットの実質的還元を生じさせるということを明らかにした。
【0082】
チタンペレットはチタンペレットの細孔の中に保留された電解質と一緒に出口13でセルから連続的または半連続的に取り出される。排出された材料はオーガー(auger)35によって散水チャンバー(water spray chamber)37へと搬送され、そして電解質の固化温度未満である温度に急冷され、それによって、電解質が金属の直接露出を阻止し、それによって金属の酸化を制限する。排出された材料は次いで、保留電解質を金属粉末から分離するように洗浄される。金属粉末はその後、最終製品を製造するために要求される通りに加工される。
【0083】
排出されるチタンペレットと共に失われる電解質の正味損失を補償するのに必要とされるよりも多い量の電解質が注型電解質ブロックの形態でセルに入口59から添加される。上述した通り、追加電解質の目的は最適操作条件を維持するためにセルをパージすることである。電解質がセルの後端において入口59からセルに添加されると、電解質はセルの前端において堰49から溢れ出し、そして貯蔵タンク57の中に流れ込み、その後で、CaOを除去するためにHClで洗浄されることによって処理され、そして処理済み電解質はセルへの電解質添加の一部としてセルに戻される。
【0084】
アノードブロック23はセルの操作中にアノードブロック23の中の炭素とカソードプレート25において発生したO−−アニオンとの間の反応によって次第に消費され、そして該反応は主としてアノードブロック23の下端で起こる。カソードプレート25の上面とアノードブロック23の下端との間の距離はセル内の最適操作条件を維持するために必要とされる通りに維持される。好ましくは、カソードプレート25の上面とアノードブロック23の下端との間の距離は浴21を必要操作温度に維持するのに十分な抵抗加熱が発生するように選択される。
【0085】
好ましくは、セルは電解質の中のCaOの分解電位より高い電位で操作される。環境に依存して、電位は4〜5Vのように高いものであってもよい。上記メカニズムによれば、CaOの分解電位より上での操作は、Ca++カチオンの存在によるものであり、カソードプレート25の上でのCa金属の析出を促進し、及び印加された電場の結果としてアノードブロック23へのO−−アニオンの移動を促進し、そしてO−−アニオンとアノードブロック23の炭素との反応を促進して一酸化炭素および二酸化炭素を発生させそして電子を放出させる。加えて、上記メカニズムによれば、Ca金属の析出は結果として上記メカニズムを経てチタニアの化学的還元を生じ、そしてO−−アニオンを発生させ、そのO−−アニオンは印加した電場と更なる電子放出の結果としてアノードブロック23へ移動する。セルをCaClの分解電位より下で操作することは塩素ガスの発生を最少にし、そしてこれは、この方式の利点である。
【0086】
上記のセルおよび方法は金属酸化物を粉末および/またはペレットの形態で連続的または半連続的に電気化学的に還元して低酸素濃度を有する還元された材料を生産するのに効率的かつ有効な手段である。
【0087】
上記の本発明の態様には、本発明の精神および範囲を逸脱しないで多数の変更がなされてもよい。
【0088】
特に、図に示された電解セルは本発明の範囲内にある多数の可能なセル構成のうちの一例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明に従う電気化学的な方法および装置の一態様を図解する概略線図である。
【図2】図2は、図1に示された装置の電解セルの斜視図であり、図を明瞭にするためにカソード支持体棒が省略されている。
【図3】図3は、図1および図2に示された電解セルの縦断面図である。
【図4】図4は、図3に示された縦断面図であるが、より明瞭にカソードとカソード支持体構造物を図解するために、トップカバーとアノードとアノード支持体構造物を削除してある。
【図5】図5は、図3に示された縦断面図であるが、より明瞭にアノードとアノード支持体構造物を図解するために、トップカバーとカソードとカソード支持体構造物を削除してある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の溶融浴、アノード、カソード、およびアノードとカソードの間に電位を印加する手段を含んでいるタイプの電解セルの中で固体形態の金属酸化物供給材料を電気化学的に還元する方法であって、(a)溶融電解質の浴に供給された金属酸化物を電気化学的に還元することができる電位をアノードとカソードの間に印加し、(b)連続的または半連続的に金属酸化物供給材料を浴の中に供給し、(c)金属酸化物供給材料を浴内の進路に沿って搬送し、そして金属酸化物を供給材料が進路に沿って移動するにつれて還元し、(d)連続的または半連続的に浴から少なくとも部分的には還元された材料を取り出し、(e)浴から失われる還元された材料および浴から還元された材料と共に除去される電解質を補償するのに必要とされる量の電解質よりも大きい量の電解質を浴の中に供給し、そして(f)浴の高さを必要とされる高さに又は必要とされる高さの範囲内に維持するように浴から溶融電解質を除去する、諸工程を含む上記方法。
【請求項2】
工程(e)における電解質添加が連続式または周期式である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(e)において浴に添加される電解質が溶融相または固体相の状態にある、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(e)は電解質を時間平均に基づき、工程(b)において浴に供給される金属酸化物供給材料の量の70%〜100%である量で供給することを包含する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金属酸化物供給材料が粉末および/またはペレットの形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(f)において浴から除去された電解質を処理して汚染物質を除去し、そして処理済み電解質を浴に供給することを包含する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電解質の中にカソード金属酸化物のカチオン以外の金属のカチオンが存在するように電解質の少なくとも一つの成分の分解電位より上のセル電位を印加することを包含する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
金属酸化物はチタニアであり、そして電解質は成分の一つとしてCaOを含有するCaCl系電解質である、請求項1から7のいずれか一項に記載方法。
【請求項9】
セル電位をCaOの分解電位より上に維持することを包含する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
金属酸化物供給材料を電気化学的に還元するための電解セルであって、(a)溶融電解質の浴、(b)カソード、(c)アノード、(d)アノードとカソードの間に電位を印加する手段、(e)金属酸化物供給材料を電解質の浴に供給する手段、(f)電解質の浴から少なくとも部分的には電気化学的に還元された金属酸化物を取り出す手段、(g)失われる還元された材料と浴から取り出される還元された材料によって保留される電解質とを補償するのに必要とされる量の電解質より大きい量の電解質を浴の中に供給する手段、および(f)浴の高さを必要とされる高さに又は必要とされる高さの範囲内に維持するように浴から溶融電解質を除去する手段を包含する、上記電解セル。
【請求項11】
さらに、工程(f)において浴から除去された電解質を処理して電解質から汚染物質を除去し、そして処理済み電解質を浴に供給する手段を包含する、請求項10に記載のセル。
【請求項12】
アノードとカソードの間に電位を印加する手段が(a)電源および(b)電源とアノードとカソードを電気接続する電気回路とを包含する、請求項10または請求項11に記載のセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−509232(P2007−509232A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534543(P2006−534543)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001410
【国際公開番号】WO2005/038092
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(504000269)ビーエイチピー ビリトン イノベーション プロプライアタリー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】