鉄道車両車軸用軸受装置
【課題】インサイドフレーム式の鉄道車両に適用される鉄道車両車軸用軸受装置において、油切りと軸受内輪との接触領域でのクリープを抑制すること。
【解決手段】鉄道車両車軸用軸受装置は、車軸1、軸受2、シール部材3a、油切り4a,4bを具備する。車軸1には、外周に環状溝1dが形成されている。シール部材3aは、油切り4a,4bと協働で接触シールを構成する。油切り4a,4bの軸方向一方側が車軸1の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が環状溝1dの外径側に延びて車軸1と非接触となる。互いに対向する油切り4a,4bの端面41と内輪8a,8bの端面82との接触領域を内径側に限定した。
【解決手段】鉄道車両車軸用軸受装置は、車軸1、軸受2、シール部材3a、油切り4a,4bを具備する。車軸1には、外周に環状溝1dが形成されている。シール部材3aは、油切り4a,4bと協働で接触シールを構成する。油切り4a,4bの軸方向一方側が車軸1の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が環状溝1dの外径側に延びて車軸1と非接触となる。互いに対向する油切り4a,4bの端面41と内輪8a,8bの端面82との接触領域を内径側に限定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両車軸用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インサイドフレーム式の鉄道車両においては、車軸を支持する軸受が通常一般的な車輪の外側ではなく、車輪の内側に配置される(例えば特許文献1参照)。図13に示すように、この種の軸受22は、車輪21aのボスと車軸21に設けられた軸肩21cとの間に配置される。軸受22の複列の内輪26a,26bのうち、外側の内輪26aと車輪21aとの間、および内側の内輪26bと軸肩21cとの間には、それぞれ油切り29a,29bが配置され、複列の内輪26a,26b間には間座28が配置されている。これら油切り29a,29bおよび間座28との当接により、軸受22の内輪26a,26bが車輪21aのボスと軸肩21cとの間の所定位置で軸方向に位置決めされている。
【0003】
上述した軸受を有する軸受装置において、油切り29a,29bはその内周面の一部(内輪26a、26bと対向する側の端部の内周面)を車軸21の外周面に圧入することで車軸21に固定される。油切り29a,29bの圧入部以外の内周面は、車軸21の外周に形成した環状溝21dの外径側にオーバーハングしており、車軸21とは非接触の状態にある。かかる構成を採用することで、使用中における油切り29a,29bによる車軸外周面の損傷が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−244605号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車軸21には、車両の重量に起因する径方向荷重によって撓みが発生する。このような撓みが生じると、油切り29a,29bが環状溝21dの外径側にオーバーハングした片持ち構造であることも関係して、図14に誇張して示すように、油切り29a,29bが環状溝21dに入り込むような態様で車軸21の軸線に対して傾く場合がある。この現象に着目してFEM解析を行ったところ、図15に示すように、油切り29a,29bの内輪26a,26bと対向する端面291では、その上側領域で端面全体が内輪26a,26bと接触する一方、下側領域で端面の外径側が内輪26a,26bに対して非接触となることが判明した(図15中の散点部分が接触領域を表す)。この場合、車軸21の回転に伴い、油切り29a,29bの端面291の外径側が内輪26a,26bの端面に対して接触と非接触を繰り返すため、油きり29a,29bのクリープを生じるおそれがある。クリープが生じると、油きり29a,29bの嵌合部において車軸21の表面に損傷が発生したり、油切り29a,29bと内輪26a,26bの接触領域でフレッティング摩耗が進行してこれらの部材のガタの要因となる、あるいは摩耗粉が軸受内部に入り込んで軸受性能に悪影響を与える等の不具合を招く。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、インサイドフレーム式鉄道車両に適用される鉄道車両車軸用軸受装置において、油切りのクリープを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、互いに対向する油切りの端面と内輪の端面との接触領域を内径側に限定したことを特徴とする。
【0008】
図15の解析結果からも明らかなように、油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域では、上下の位置を問わず、内径側が円周方向の全位相で相手側と常時接触する。従って、互いに対向する油切りの端面と内輪の端面との接触領域を内径側に限定すれば、車軸が撓んだ状態で回転し、そのために油切りが傾いたとしても、接触領域が一時的に非接触状態に切り替わることはなく、常時接触状態が維持される。そのため、車軸1が撓みを伴い回転する状況でも、油切りのクリープを防止することができる。接触領域の限定は、例えば油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域のうち、内径側に端面同士が接触する接触部を設け、外径側に端面同士が非接触となる非接触部を設けることで行うことができる。
【0009】
油切りを軸方向で対称に形成すれば、車軸に油切りを取り付ける際の方向判別が不要となり、取付け作業性が向上する。
【0010】
端面同士の接触部に、軟質金属被膜を介在させれば、硬質部材同士のフレッティングを回避できるので、たとえ僅かなクリープが生じたとしても接触部での摩耗を防止することができる。同様の効果は、油切りの端面と、これに対向する内輪の端面との間に軟質金属からなるスペーサを介在させることでも得ることができる。ここでいう「軟質」は接触部における油切りおよび内輪の表面硬度よりも低硬度であることを意味する。
【0011】
端面同士の接触部に硬質金属被膜を介在させても、硬質金属被膜が有する耐摩耗性により、同様に接触部での摩耗を防止することができる。
【0012】
油切りの外周にシール部材と摺接するスリーブ部材を嵌合させ、スリーブ部材の前記軸方向一方側の端部を内径側に折り曲げて前記非接触部に収容すれば、スリーブ部材の抜け止めを行うことができる。この場合、スリーブ部材の折り曲げ端に弾性部材を装着し、この弾性部材を前記非接触部に圧縮状態で収容すれば、接触部で摩耗粉が生じた場合でも、その軸受内部への侵入を弾性部材で確実に阻止することができる。
【0013】
油切りの外周面を部分的に肉取りしてもよい。これにより、油切りの外径側の剛性が内径側よりも小さくなるので、車軸への取り付け後において、油切りに軸方向の圧縮力が作用した際には、油切りが鼓形に変形する。そのため、油切りの端面の内径側を内輪の端面に確実に接触させることができ、クリープをより確実に防止できる。この場合、油切りの肉取り部をスリーブ部材の内径側に形成すれば、肉取り部を軸方向寸法を大きくすることができ、油切りが変形し易くなって、クリープ防止により有効となる。
【0014】
また、本発明は、一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、車軸に対する油切りの傾きを規制したことを特徴とする。
【0015】
このように車軸に対する油切りの傾き自体を規制することで、車軸が撓んだ場合でも油切りを車軸と同軸に保持することができる。そのため、油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域では、接触部が一時的に非接触状態に切り替わることはなく、常時接触状態を維持できる。そのため、車軸が撓みを伴い回転する場合でも、油切りのクリープを防止することができる。「傾きの規制」は、例えば油切りを車軸の軸方向複数個所に嵌合させることで行うことができる。
【0016】
以上に述べた各構成においては、油切りの外周にスリーブ部材を嵌合し、スリーブ部材の外周にシール部材を摺接させるのが望ましい。
【0017】
この場合、前記油切りの外周面に突出部を形成し、この突出部をスリーブ部材と軸方向で係合させれば、スリーブ部材の抜け止めを行うことができる。また、油切りを車軸から取り外す際に、突出部を工具の引っかかりとして活用できるので、取り外し作業を容易化することができる。
【0018】
上記の何れかの構成において、前記軸受が複列のころ軸受であれば、鉄道車両車軸用により好適な軸受装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、油切りのクリープを抑制することができるので、フレッティング摩耗の進行によるガタの発生や摩耗粉の軸受内部への侵入等を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両車軸用軸受装置の軸方向断面図である。
【図2】図1のギヤユニット側の軸受の周辺の拡大図である。
【図3】図2の車輪側の拡大図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図5】要部の変形例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図12】本発明に係る油切りの端面の状態を示す図である。
【図13】従来の鉄道車両車軸における軸受周辺の軸方向断面図である。
【図14】従来の鉄道車両車軸が撓んだ場合の軸受周辺の軸方向断面図である。
【図15】従来の油切りの端面の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0022】
本発明の鉄道車両車軸用軸受装置は、図1に示すように、車軸1の両端に車輪1aを固定し、車輪1aの内側に二つの軸受2を配置したインサイドフレーム式の鉄道車両に適用されるものである。軸受2は、台車に取り付けた軸箱5内に収容されている。図示例の車両では、二つの軸受2の間に配置されたギヤユニット6から車軸1に動力が伝達され、車軸1が回転駆動される。本発明の鉄道車両車軸用軸受装置は、車軸1の軸方向両側に設けられるが、双方の構成は共通するため、以下の説明では軸方向一方側の軸受装置のみを説明し、他方の軸受装置については、その詳細な説明を省略する。なお、以下の説明において、「内側」は車両幅方向(車軸1の軸方向)における車両中心側を意味し、「外側」は車両幅方向における車両端部側を意味する。
【0023】
図2に拡大して示すように、本発明にかかる鉄道車両車軸用軸受装置は、車軸1と、軸受2と、軸受2の軸方向両側に配置されたシール3と、軸受2の軸方向両側に設けられた油切り4a,4bとを具備する。
【0024】
軸受2は、例えば複列の円すいころ軸受で構成され、内周面に複列の円すい状の軌道面71を有する外輪7と、一対の内輪8a,8bと、転動体としての複数の円すいころ9と、一対の保持器10とを主要な構成要素として備える。内輪8a,8bには、それぞれの外周面に円すい状の軌道面81が設けられ、これら軌道面81と外輪7に設けた複列の軌道面71との間に複数の円すいころ9が転動自在に介在している。保持器10は、それぞれ複数の円すいころ9を円周方向等間隔に保持する。
【0025】
軸受2の外輪7は軸箱5(図1参照)に固定され、二つの内輪8a,8bはそれぞれ車軸1の外周面に圧入固定される。内輪8a,8bの間には間座11が配置されており、この間座11と間座11の軸方向両側に離間した油切り4a,4bとの間に各内輪8a,8bが配置されている。外側の油切り4aの軸方向一方側(内輪と対向する側)の端面41は外側の内輪8aの外側端面(大鍔端面82)に当接し、軸方向他方側の端面42は車輪1aのボスの端面1bに当接している。内側の油切り4bの内輪8bと対向する側の端面41は、内側内輪8bの内側端面(大鍔端面82)に当接し、内側の油切り4bの内側端部は車軸1に設けられた軸肩1cに係合している。また、外側内輪8aの内側端面(小鍔端面83)および内側内輪8bの外側端面(小鍔端面83)がそれぞれ間座11の両端面に当接している。以上の構成から、両内輪8a,8bが軸肩1cと車輪1a間の所定位置で軸方向に位置決めされる。
【0026】
各油切り4a,4bは、対向する内輪8a,8b側の端部内周面を車軸1の外周面に圧入することでそれぞれ車軸1に固定されている。車軸1の外周面のうち、各油切り4a,4bの内径側には、環状溝1dが形成されている。各油切り4a,4bは環状溝1dの外径側にオーバーハングしており、このオーバーハング部分では、各油切り4a,4bと車軸1とが非接触の状態にある。各油切り4a,4bの外周面には、図3に拡大して示すように、円筒部12aおよび円筒部12aの一端から外径側に延びる折り返し部12bを一体に有するスリーブ部材12が嵌合固定されている。スリーブ部材12にシール部材3aの複数のシールリップが摺接することでシール3が構成され、軸受内部に封入したグリースの漏れや軸受内部への異物の侵入が防止される。シール部材3aは、仕切り板3bおよびシールケース3cを介して外輪7に固定されている。以上の構成は、図3に現れていない内側のシール3についても同様に適用される。
【0027】
各油切り4a,4bは、スリーブ部材12(少なくともシール部材3aの摺接面)よりも低硬度とし、例えばHB155以下に形成する。
【0028】
二つの油切り4a,4bのうち、外側の油切り4aの外周面の軸方向中央部には半径方向の段差S1が形成され、段差部よりも内側が小径外周面、外側が大径外周面となっている。小径外周面にスリーブ部材12を圧入し、段差部にスリーブ部材12の折り返し部12bを当接させることで、スリーブ部材12の外側への移動が規制される。
【0029】
図2に示すように、内側の油切り4bの外周面には、外径側への突出部45が形成されている。油切り4bの外周面に嵌合したスリーブ部材12の折り返し部12bが軸方向で突出部45と当接しており、これによって、スリーブ部材12の内側への移動が規制されている。突出部45よりも内側の外周面は、突出部45の外側の外周面よりも小径になっている。この突出部45の内側端面は、鉄道車両のメンテナンスにおける軸受交換作業等において、内側の油切り4bを車軸1から抜き取る際に使用する工具を係合させる部位としても利用することができ、これにより、油切り4bの取り外し作業がより一層容易なものとなる。
【0030】
本発明では、図3に拡大して示すように、外側の油切り4aの内側端面41に軸方向の段差S2を形成することで、油切り4aの内側端面41を内径側端面41aと、これよりも外側にずれた外径側端面41bとに区画している。油切り4aの内径側端面41aが外側内輪8aの大鍔端面82と接触し、外径側端面41bが外側内輪8aの端面82と非接触となる。これにより、油切り4aの内側端面41と内輪8aの大鍔端面82との軸方向対向領域のうち、内径側に両者が接触する接触部が形成され、外径側に両者が非接触となる非接触部が形成される。
【0031】
このように本発明では、油切り4aと内輪8aの軸方向対向領域において内径側に接触部を設け、外径側に非接触部を設けることとし、互いに対向する油切り4aの端面41と内輪8aの端面82との接触領域を内径側に限定している。図15の解析結果からも明らかなように、油切り4aの端面41と内輪8aの端面82との軸方向の対向領域では、上下の位置を問わず、内径側が円周方向の全位相で相手側と常時接触する。そのため、接触領域を内径側に限定することで、車軸1の撓みにより油切り4aが環状溝1dに落ち込むような態様で傾いたとしても、図12に示すように、油切り4aの内径側端面41aを常時内輪8aの端面82に接触させることが可能となる(図中の散点模様が内輪8aとの接触部分を表す)。このように油切り4aの内径側端面41aを外側内輪8aの端面82に常時接触させることにより、車軸1の回転中に油切り4aと内輪8aの接触部が一時的に非接触となる事態を防止することができる。そのため、車軸1に撓みと回転が生じたとしても、油きり4aのクリープを防止することができ、ガタの発生や軸受内部への摩耗粉の侵入等を長期間防止することが可能となる。
【0032】
油切り4aと内輪8aの軸方向対向領域における接触/非接触の繰り返しは、接触部の外径寸法を小さくするほど防止効果が高まる。この上限値を見出すために本発明者が検証したところ、図2に示すように、油切り4aの内径側端面41aの外径寸法Dを油切り4aの圧入部の内径寸法D0の110%以下にすれば、車軸回転中の接触部での接触/非接触の繰り返しが防止され、接触部を常時接触させ得ることが判明した。従って、D/D0≦1.1に設定するのが望ましい。
【0033】
接触部を構成する油切り4aの内径側端面41aおよび外側内輪8aの大鍔端面82の何れか一方に金属被膜を形成すれば、接触部での摩耗防止に有効となる。例えばクロムめっき等で形成した硬質金属被膜であれば、耐摩耗性を向上させて、接触部での摩耗をより確実に抑制することが可能である。一方、銅めっき等で形成した軟質金属被膜であれば、硬質部材同士のフレッティングを阻止することができるので、接触部での摩耗をより確実に抑制することができる。
【0034】
以上に述べた構成は、図2に示すように、内側の油切り4bの外側端面41と内側内輪8bの大鍔端面82との接触領域にも適用することができる。すなわち、内側の油切り4bの外側端面41に軸方向の段差S2(図3参照)を設け、これによって画成された内径側端面41aを内側内輪8bの大鍔端面82に接触させる共に、外径側端面41bを内側内輪8bの大鍔端面82と非接触にする。これにより車軸1の回転中に油切り4bの内径側端面41aと内側内輪8bの大鍔端面82とを常時接触させることができ、油きり4bのクリープ防止を図ることができる。
【0035】
図2に示す実施形態では、内側の油切り4bにおいて、以上に述べたクリープ対策(第1のクリープ対策)に加え、これとは別の第2のクリープ対策も付加している。この第2のクリープ対策は、内側の油切り4bの内側端部の内周に切欠き46を設け、この切欠き46を車軸1の軸肩1cに嵌合させることで構成される。この場合、切欠き46の端面47は軸肩1cに当接させる。かかる構成であれば、内側の油切り4bが、両端を車軸1で支持された両持ち構造となるので、車軸1に対する油切り4bの傾きが規制され、車軸1の撓みによる油切り4bの環状溝1dへの落ち込み、さらには油切り4bの傾斜を防止することができる。これにより、内側の油切り4bの外側端面41と内側の内輪8bの大鍔端面82との接触部を車軸1の回転中も常時接触させることができ、クリープ防止を図ることができる。油切り4bは少なくとも軸方向二箇所で車軸1に嵌合されていればよく、3箇所以上で車軸1に嵌合させても構わない。
【0036】
図2に示す実施形態では、上述のように内側の油切り4bにおいて二重のクリープ対策を採用しているが、クリープ防止が十分に達成できる限り、何れか一方のクリープ対策を省略し、他方のクリープ対策のみを採用してもよい。例えば図4は、内側の油切り4bにおいて第1のクリープ対策を省略して上記第2のクリープ対策(内側の油切り4bを両持ち梁構造にする)のみを採用したものである。この場合、内側の油切り4bの外側端面41に軸方向の段差S2は設けず、該端面41の全体を内側内輪8bの大鍔端面82に当接させる。
【0037】
油切り4a,4bの端面41と内輪8aの端面82との間の接触部および非接触部は、外径側に向けて一方の端面を他方の端面から徐々に離間させることでも形成することができる。例えば図5(A)や(B)に示すように、油切り4aの内輪8aと対向する端面41の外径端に、ストレートなテーパ状のクラウニングを形成し(A図)、あるいは曲面状のクラウニングを形成する(B図)ことで、油切り4aの端面41と内輪8aの端面82との間に接触部および非接触部を形成することもできる(この場合、クラウニング部と内輪8aの端面82との間に非接触部が形成される)。何れの構成でも、エッジロードを防止するため、クラウニング部とその内径側の端面41との境界部は円弧で滑らかにつなぐのが望ましい。
【0038】
図6に、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態では、図2に示す油切り4a,4bの内径側端面41aと、内輪8a,8bの端面82との間にスペーサ13を介在させている。図示例のスペーサ13は、油切り4a,4bや内輪8a,8bよりも軟質の金属材料、例えば銅合金等で形成されており、環状の本体部13aと、この本体部13aの外径端から軸方向に延びる屈曲部13bとを一体に有する。このようなスペーサ13を介在させることで、硬質部材同士の微小滑りが生じず、従って、フレッティングによる摩耗をより確実に防止することが可能となる。スペーサ13の屈曲部13bを油切り4a,4bの内径側端面41aと、内輪8a,8bの端面82との間の段差に係合させることでスペーサ13の脱落を防止することができる。
【0039】
図7に、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態では、外側の油切り4aの外側端面42に内側端面41と同様の軸方向の段差を設けることで、油切り4aの軸方向の断面形状を軸方向で対称としており、これにより、油切り4aの組み付け時の方向判別を不要として組み付け作業性を向上させている。この場合、油切り4aの外側端面42のうち、内径側端面42aが車輪1aのボスの端面1bと接触し、外径側端面42bはボスの端面1bに対して非接触となる。
【0040】
かかる構成の油切り4aの外周面には、半径方向の段差S1(図3参照)を形成することができず、該外周面はストレートな円筒面状となる。この外周面に嵌合したスリーブ部材12の抜けを防止するため、スリーブ部材12の内輪8a側の一端を内径側に折り曲げて、これを油切り4aの内側端面41と外側内輪8aの大鍔端面82との間の非接触部に収容し、かつ油切り4aの外径側端面41bに係合させている。この実施形態においては、図8に示すように、スリーブ部材12の折り曲げ端に弾性部材14を装着し、この弾性部材14を上記非接触部に圧縮状態で収容してもよい。これにより、たとえ接触部でクリープが生じても、軸受内部への摩耗粉の侵入を防止することができる。
【0041】
以上の実施形態では、油切り4a,4bの内輪8a,8bと対向する端面41に軸方向の段差S2を設けることで、油切り4a,4bの端面41と内輪の端面82との間に接触部と非接触部を構成する場合を例示したが、この接触部および非接触部は、図9に示すように、油切り4a,4bと対向する内輪8aの端面82に軸方向の段差S3を形成することでも構成することができる。段差S3により、該端面82が内径側端面82aと外径側端面82bとに区画される。この実施形態では、油切り4aの外周面に径方向の段差S1(図3参照)を形成せず、該外周面をストレートな円筒面状としている。これに応じて、図7に示す実施形態と同様に、油切り4aの外周面に嵌合するスリーブ部材12の一端を内径側に折り曲げて非接触部に収容し、スリーブ部材12の抜けを防止している。また、油切り4aの外側端面42に軸方向の段差S4を設けることで、該端面42を内径側端面42aと外径側端面42bとに区画し、内径側端面42aを車輪1aのボスの端面1bに当接させ、外径側端面42bをボスの端面1bに対して非接触としている。また、内輪8aの内径側端面82aにおける径方向の中心位置と、油切り4aの内径側端面42aの径方向中央位置は同一である。
【0042】
図10および図11に示す実施形態は、油切り4aの外周面の軸方向中間部に肉取り部43を形成したものである。このように肉取り部43を形成することで、油切り4aの外径側の剛性が低下するため、車輪1aを車軸1に圧入して油切り4aに軸方向の圧縮力をさせた際に、油切り4aが鼓形に変形する。この油切り4aの変形により、油切り4aの内径側端面41aを内輪8aの端面82により確実に常時接触させることが可能となる。図11に示す実施形態は、スリーブ部材12の内径側に肉取り部43を設け、肉取り部43の軸方向両側にスリーブ部材12の内周面を嵌合させることで、より大きな肉取り部43を形成可能とし、油切り4aの上記変形をより生じやすくしたものである。
【0043】
以上の図5(A)(B)、および図6〜図11に示す各実施形態の説明では、外側の油切り4aと外側内輪8aとの間のクリープ対策としているが、同様の構成は特に矛盾を生じない限り、内側の油切り4bと内側内輪8bとの間のクリープ対策としても適用することができる。また、以上の説明では、軸受2として複列の円すいころ軸受を使用する場合を例に挙げて説明しているが、軸受形式は特に限定されず、複列円筒ころ軸受等の他の軸受形式を採用する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車軸
1a 車輪
1d 環状溝
2 軸受
3 シール
3a シール部材
4a,4b 油切り
7 外輪
8a,8b 内輪
9 ころ(転動体)
12 スリーブ部材
13 スペーサ
14 弾性部材
41 端面
43 肉取り部
45 突出部
82 大鍔端面
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両車軸用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インサイドフレーム式の鉄道車両においては、車軸を支持する軸受が通常一般的な車輪の外側ではなく、車輪の内側に配置される(例えば特許文献1参照)。図13に示すように、この種の軸受22は、車輪21aのボスと車軸21に設けられた軸肩21cとの間に配置される。軸受22の複列の内輪26a,26bのうち、外側の内輪26aと車輪21aとの間、および内側の内輪26bと軸肩21cとの間には、それぞれ油切り29a,29bが配置され、複列の内輪26a,26b間には間座28が配置されている。これら油切り29a,29bおよび間座28との当接により、軸受22の内輪26a,26bが車輪21aのボスと軸肩21cとの間の所定位置で軸方向に位置決めされている。
【0003】
上述した軸受を有する軸受装置において、油切り29a,29bはその内周面の一部(内輪26a、26bと対向する側の端部の内周面)を車軸21の外周面に圧入することで車軸21に固定される。油切り29a,29bの圧入部以外の内周面は、車軸21の外周に形成した環状溝21dの外径側にオーバーハングしており、車軸21とは非接触の状態にある。かかる構成を採用することで、使用中における油切り29a,29bによる車軸外周面の損傷が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−244605号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車軸21には、車両の重量に起因する径方向荷重によって撓みが発生する。このような撓みが生じると、油切り29a,29bが環状溝21dの外径側にオーバーハングした片持ち構造であることも関係して、図14に誇張して示すように、油切り29a,29bが環状溝21dに入り込むような態様で車軸21の軸線に対して傾く場合がある。この現象に着目してFEM解析を行ったところ、図15に示すように、油切り29a,29bの内輪26a,26bと対向する端面291では、その上側領域で端面全体が内輪26a,26bと接触する一方、下側領域で端面の外径側が内輪26a,26bに対して非接触となることが判明した(図15中の散点部分が接触領域を表す)。この場合、車軸21の回転に伴い、油切り29a,29bの端面291の外径側が内輪26a,26bの端面に対して接触と非接触を繰り返すため、油きり29a,29bのクリープを生じるおそれがある。クリープが生じると、油きり29a,29bの嵌合部において車軸21の表面に損傷が発生したり、油切り29a,29bと内輪26a,26bの接触領域でフレッティング摩耗が進行してこれらの部材のガタの要因となる、あるいは摩耗粉が軸受内部に入り込んで軸受性能に悪影響を与える等の不具合を招く。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、インサイドフレーム式鉄道車両に適用される鉄道車両車軸用軸受装置において、油切りのクリープを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、互いに対向する油切りの端面と内輪の端面との接触領域を内径側に限定したことを特徴とする。
【0008】
図15の解析結果からも明らかなように、油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域では、上下の位置を問わず、内径側が円周方向の全位相で相手側と常時接触する。従って、互いに対向する油切りの端面と内輪の端面との接触領域を内径側に限定すれば、車軸が撓んだ状態で回転し、そのために油切りが傾いたとしても、接触領域が一時的に非接触状態に切り替わることはなく、常時接触状態が維持される。そのため、車軸1が撓みを伴い回転する状況でも、油切りのクリープを防止することができる。接触領域の限定は、例えば油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域のうち、内径側に端面同士が接触する接触部を設け、外径側に端面同士が非接触となる非接触部を設けることで行うことができる。
【0009】
油切りを軸方向で対称に形成すれば、車軸に油切りを取り付ける際の方向判別が不要となり、取付け作業性が向上する。
【0010】
端面同士の接触部に、軟質金属被膜を介在させれば、硬質部材同士のフレッティングを回避できるので、たとえ僅かなクリープが生じたとしても接触部での摩耗を防止することができる。同様の効果は、油切りの端面と、これに対向する内輪の端面との間に軟質金属からなるスペーサを介在させることでも得ることができる。ここでいう「軟質」は接触部における油切りおよび内輪の表面硬度よりも低硬度であることを意味する。
【0011】
端面同士の接触部に硬質金属被膜を介在させても、硬質金属被膜が有する耐摩耗性により、同様に接触部での摩耗を防止することができる。
【0012】
油切りの外周にシール部材と摺接するスリーブ部材を嵌合させ、スリーブ部材の前記軸方向一方側の端部を内径側に折り曲げて前記非接触部に収容すれば、スリーブ部材の抜け止めを行うことができる。この場合、スリーブ部材の折り曲げ端に弾性部材を装着し、この弾性部材を前記非接触部に圧縮状態で収容すれば、接触部で摩耗粉が生じた場合でも、その軸受内部への侵入を弾性部材で確実に阻止することができる。
【0013】
油切りの外周面を部分的に肉取りしてもよい。これにより、油切りの外径側の剛性が内径側よりも小さくなるので、車軸への取り付け後において、油切りに軸方向の圧縮力が作用した際には、油切りが鼓形に変形する。そのため、油切りの端面の内径側を内輪の端面に確実に接触させることができ、クリープをより確実に防止できる。この場合、油切りの肉取り部をスリーブ部材の内径側に形成すれば、肉取り部を軸方向寸法を大きくすることができ、油切りが変形し易くなって、クリープ防止により有効となる。
【0014】
また、本発明は、一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、車軸に対する油切りの傾きを規制したことを特徴とする。
【0015】
このように車軸に対する油切りの傾き自体を規制することで、車軸が撓んだ場合でも油切りを車軸と同軸に保持することができる。そのため、油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域では、接触部が一時的に非接触状態に切り替わることはなく、常時接触状態を維持できる。そのため、車軸が撓みを伴い回転する場合でも、油切りのクリープを防止することができる。「傾きの規制」は、例えば油切りを車軸の軸方向複数個所に嵌合させることで行うことができる。
【0016】
以上に述べた各構成においては、油切りの外周にスリーブ部材を嵌合し、スリーブ部材の外周にシール部材を摺接させるのが望ましい。
【0017】
この場合、前記油切りの外周面に突出部を形成し、この突出部をスリーブ部材と軸方向で係合させれば、スリーブ部材の抜け止めを行うことができる。また、油切りを車軸から取り外す際に、突出部を工具の引っかかりとして活用できるので、取り外し作業を容易化することができる。
【0018】
上記の何れかの構成において、前記軸受が複列のころ軸受であれば、鉄道車両車軸用により好適な軸受装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、油切りのクリープを抑制することができるので、フレッティング摩耗の進行によるガタの発生や摩耗粉の軸受内部への侵入等を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両車軸用軸受装置の軸方向断面図である。
【図2】図1のギヤユニット側の軸受の周辺の拡大図である。
【図3】図2の車輪側の拡大図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図5】要部の変形例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示す軸方向断面図である。
【図12】本発明に係る油切りの端面の状態を示す図である。
【図13】従来の鉄道車両車軸における軸受周辺の軸方向断面図である。
【図14】従来の鉄道車両車軸が撓んだ場合の軸受周辺の軸方向断面図である。
【図15】従来の油切りの端面の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0022】
本発明の鉄道車両車軸用軸受装置は、図1に示すように、車軸1の両端に車輪1aを固定し、車輪1aの内側に二つの軸受2を配置したインサイドフレーム式の鉄道車両に適用されるものである。軸受2は、台車に取り付けた軸箱5内に収容されている。図示例の車両では、二つの軸受2の間に配置されたギヤユニット6から車軸1に動力が伝達され、車軸1が回転駆動される。本発明の鉄道車両車軸用軸受装置は、車軸1の軸方向両側に設けられるが、双方の構成は共通するため、以下の説明では軸方向一方側の軸受装置のみを説明し、他方の軸受装置については、その詳細な説明を省略する。なお、以下の説明において、「内側」は車両幅方向(車軸1の軸方向)における車両中心側を意味し、「外側」は車両幅方向における車両端部側を意味する。
【0023】
図2に拡大して示すように、本発明にかかる鉄道車両車軸用軸受装置は、車軸1と、軸受2と、軸受2の軸方向両側に配置されたシール3と、軸受2の軸方向両側に設けられた油切り4a,4bとを具備する。
【0024】
軸受2は、例えば複列の円すいころ軸受で構成され、内周面に複列の円すい状の軌道面71を有する外輪7と、一対の内輪8a,8bと、転動体としての複数の円すいころ9と、一対の保持器10とを主要な構成要素として備える。内輪8a,8bには、それぞれの外周面に円すい状の軌道面81が設けられ、これら軌道面81と外輪7に設けた複列の軌道面71との間に複数の円すいころ9が転動自在に介在している。保持器10は、それぞれ複数の円すいころ9を円周方向等間隔に保持する。
【0025】
軸受2の外輪7は軸箱5(図1参照)に固定され、二つの内輪8a,8bはそれぞれ車軸1の外周面に圧入固定される。内輪8a,8bの間には間座11が配置されており、この間座11と間座11の軸方向両側に離間した油切り4a,4bとの間に各内輪8a,8bが配置されている。外側の油切り4aの軸方向一方側(内輪と対向する側)の端面41は外側の内輪8aの外側端面(大鍔端面82)に当接し、軸方向他方側の端面42は車輪1aのボスの端面1bに当接している。内側の油切り4bの内輪8bと対向する側の端面41は、内側内輪8bの内側端面(大鍔端面82)に当接し、内側の油切り4bの内側端部は車軸1に設けられた軸肩1cに係合している。また、外側内輪8aの内側端面(小鍔端面83)および内側内輪8bの外側端面(小鍔端面83)がそれぞれ間座11の両端面に当接している。以上の構成から、両内輪8a,8bが軸肩1cと車輪1a間の所定位置で軸方向に位置決めされる。
【0026】
各油切り4a,4bは、対向する内輪8a,8b側の端部内周面を車軸1の外周面に圧入することでそれぞれ車軸1に固定されている。車軸1の外周面のうち、各油切り4a,4bの内径側には、環状溝1dが形成されている。各油切り4a,4bは環状溝1dの外径側にオーバーハングしており、このオーバーハング部分では、各油切り4a,4bと車軸1とが非接触の状態にある。各油切り4a,4bの外周面には、図3に拡大して示すように、円筒部12aおよび円筒部12aの一端から外径側に延びる折り返し部12bを一体に有するスリーブ部材12が嵌合固定されている。スリーブ部材12にシール部材3aの複数のシールリップが摺接することでシール3が構成され、軸受内部に封入したグリースの漏れや軸受内部への異物の侵入が防止される。シール部材3aは、仕切り板3bおよびシールケース3cを介して外輪7に固定されている。以上の構成は、図3に現れていない内側のシール3についても同様に適用される。
【0027】
各油切り4a,4bは、スリーブ部材12(少なくともシール部材3aの摺接面)よりも低硬度とし、例えばHB155以下に形成する。
【0028】
二つの油切り4a,4bのうち、外側の油切り4aの外周面の軸方向中央部には半径方向の段差S1が形成され、段差部よりも内側が小径外周面、外側が大径外周面となっている。小径外周面にスリーブ部材12を圧入し、段差部にスリーブ部材12の折り返し部12bを当接させることで、スリーブ部材12の外側への移動が規制される。
【0029】
図2に示すように、内側の油切り4bの外周面には、外径側への突出部45が形成されている。油切り4bの外周面に嵌合したスリーブ部材12の折り返し部12bが軸方向で突出部45と当接しており、これによって、スリーブ部材12の内側への移動が規制されている。突出部45よりも内側の外周面は、突出部45の外側の外周面よりも小径になっている。この突出部45の内側端面は、鉄道車両のメンテナンスにおける軸受交換作業等において、内側の油切り4bを車軸1から抜き取る際に使用する工具を係合させる部位としても利用することができ、これにより、油切り4bの取り外し作業がより一層容易なものとなる。
【0030】
本発明では、図3に拡大して示すように、外側の油切り4aの内側端面41に軸方向の段差S2を形成することで、油切り4aの内側端面41を内径側端面41aと、これよりも外側にずれた外径側端面41bとに区画している。油切り4aの内径側端面41aが外側内輪8aの大鍔端面82と接触し、外径側端面41bが外側内輪8aの端面82と非接触となる。これにより、油切り4aの内側端面41と内輪8aの大鍔端面82との軸方向対向領域のうち、内径側に両者が接触する接触部が形成され、外径側に両者が非接触となる非接触部が形成される。
【0031】
このように本発明では、油切り4aと内輪8aの軸方向対向領域において内径側に接触部を設け、外径側に非接触部を設けることとし、互いに対向する油切り4aの端面41と内輪8aの端面82との接触領域を内径側に限定している。図15の解析結果からも明らかなように、油切り4aの端面41と内輪8aの端面82との軸方向の対向領域では、上下の位置を問わず、内径側が円周方向の全位相で相手側と常時接触する。そのため、接触領域を内径側に限定することで、車軸1の撓みにより油切り4aが環状溝1dに落ち込むような態様で傾いたとしても、図12に示すように、油切り4aの内径側端面41aを常時内輪8aの端面82に接触させることが可能となる(図中の散点模様が内輪8aとの接触部分を表す)。このように油切り4aの内径側端面41aを外側内輪8aの端面82に常時接触させることにより、車軸1の回転中に油切り4aと内輪8aの接触部が一時的に非接触となる事態を防止することができる。そのため、車軸1に撓みと回転が生じたとしても、油きり4aのクリープを防止することができ、ガタの発生や軸受内部への摩耗粉の侵入等を長期間防止することが可能となる。
【0032】
油切り4aと内輪8aの軸方向対向領域における接触/非接触の繰り返しは、接触部の外径寸法を小さくするほど防止効果が高まる。この上限値を見出すために本発明者が検証したところ、図2に示すように、油切り4aの内径側端面41aの外径寸法Dを油切り4aの圧入部の内径寸法D0の110%以下にすれば、車軸回転中の接触部での接触/非接触の繰り返しが防止され、接触部を常時接触させ得ることが判明した。従って、D/D0≦1.1に設定するのが望ましい。
【0033】
接触部を構成する油切り4aの内径側端面41aおよび外側内輪8aの大鍔端面82の何れか一方に金属被膜を形成すれば、接触部での摩耗防止に有効となる。例えばクロムめっき等で形成した硬質金属被膜であれば、耐摩耗性を向上させて、接触部での摩耗をより確実に抑制することが可能である。一方、銅めっき等で形成した軟質金属被膜であれば、硬質部材同士のフレッティングを阻止することができるので、接触部での摩耗をより確実に抑制することができる。
【0034】
以上に述べた構成は、図2に示すように、内側の油切り4bの外側端面41と内側内輪8bの大鍔端面82との接触領域にも適用することができる。すなわち、内側の油切り4bの外側端面41に軸方向の段差S2(図3参照)を設け、これによって画成された内径側端面41aを内側内輪8bの大鍔端面82に接触させる共に、外径側端面41bを内側内輪8bの大鍔端面82と非接触にする。これにより車軸1の回転中に油切り4bの内径側端面41aと内側内輪8bの大鍔端面82とを常時接触させることができ、油きり4bのクリープ防止を図ることができる。
【0035】
図2に示す実施形態では、内側の油切り4bにおいて、以上に述べたクリープ対策(第1のクリープ対策)に加え、これとは別の第2のクリープ対策も付加している。この第2のクリープ対策は、内側の油切り4bの内側端部の内周に切欠き46を設け、この切欠き46を車軸1の軸肩1cに嵌合させることで構成される。この場合、切欠き46の端面47は軸肩1cに当接させる。かかる構成であれば、内側の油切り4bが、両端を車軸1で支持された両持ち構造となるので、車軸1に対する油切り4bの傾きが規制され、車軸1の撓みによる油切り4bの環状溝1dへの落ち込み、さらには油切り4bの傾斜を防止することができる。これにより、内側の油切り4bの外側端面41と内側の内輪8bの大鍔端面82との接触部を車軸1の回転中も常時接触させることができ、クリープ防止を図ることができる。油切り4bは少なくとも軸方向二箇所で車軸1に嵌合されていればよく、3箇所以上で車軸1に嵌合させても構わない。
【0036】
図2に示す実施形態では、上述のように内側の油切り4bにおいて二重のクリープ対策を採用しているが、クリープ防止が十分に達成できる限り、何れか一方のクリープ対策を省略し、他方のクリープ対策のみを採用してもよい。例えば図4は、内側の油切り4bにおいて第1のクリープ対策を省略して上記第2のクリープ対策(内側の油切り4bを両持ち梁構造にする)のみを採用したものである。この場合、内側の油切り4bの外側端面41に軸方向の段差S2は設けず、該端面41の全体を内側内輪8bの大鍔端面82に当接させる。
【0037】
油切り4a,4bの端面41と内輪8aの端面82との間の接触部および非接触部は、外径側に向けて一方の端面を他方の端面から徐々に離間させることでも形成することができる。例えば図5(A)や(B)に示すように、油切り4aの内輪8aと対向する端面41の外径端に、ストレートなテーパ状のクラウニングを形成し(A図)、あるいは曲面状のクラウニングを形成する(B図)ことで、油切り4aの端面41と内輪8aの端面82との間に接触部および非接触部を形成することもできる(この場合、クラウニング部と内輪8aの端面82との間に非接触部が形成される)。何れの構成でも、エッジロードを防止するため、クラウニング部とその内径側の端面41との境界部は円弧で滑らかにつなぐのが望ましい。
【0038】
図6に、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態では、図2に示す油切り4a,4bの内径側端面41aと、内輪8a,8bの端面82との間にスペーサ13を介在させている。図示例のスペーサ13は、油切り4a,4bや内輪8a,8bよりも軟質の金属材料、例えば銅合金等で形成されており、環状の本体部13aと、この本体部13aの外径端から軸方向に延びる屈曲部13bとを一体に有する。このようなスペーサ13を介在させることで、硬質部材同士の微小滑りが生じず、従って、フレッティングによる摩耗をより確実に防止することが可能となる。スペーサ13の屈曲部13bを油切り4a,4bの内径側端面41aと、内輪8a,8bの端面82との間の段差に係合させることでスペーサ13の脱落を防止することができる。
【0039】
図7に、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態では、外側の油切り4aの外側端面42に内側端面41と同様の軸方向の段差を設けることで、油切り4aの軸方向の断面形状を軸方向で対称としており、これにより、油切り4aの組み付け時の方向判別を不要として組み付け作業性を向上させている。この場合、油切り4aの外側端面42のうち、内径側端面42aが車輪1aのボスの端面1bと接触し、外径側端面42bはボスの端面1bに対して非接触となる。
【0040】
かかる構成の油切り4aの外周面には、半径方向の段差S1(図3参照)を形成することができず、該外周面はストレートな円筒面状となる。この外周面に嵌合したスリーブ部材12の抜けを防止するため、スリーブ部材12の内輪8a側の一端を内径側に折り曲げて、これを油切り4aの内側端面41と外側内輪8aの大鍔端面82との間の非接触部に収容し、かつ油切り4aの外径側端面41bに係合させている。この実施形態においては、図8に示すように、スリーブ部材12の折り曲げ端に弾性部材14を装着し、この弾性部材14を上記非接触部に圧縮状態で収容してもよい。これにより、たとえ接触部でクリープが生じても、軸受内部への摩耗粉の侵入を防止することができる。
【0041】
以上の実施形態では、油切り4a,4bの内輪8a,8bと対向する端面41に軸方向の段差S2を設けることで、油切り4a,4bの端面41と内輪の端面82との間に接触部と非接触部を構成する場合を例示したが、この接触部および非接触部は、図9に示すように、油切り4a,4bと対向する内輪8aの端面82に軸方向の段差S3を形成することでも構成することができる。段差S3により、該端面82が内径側端面82aと外径側端面82bとに区画される。この実施形態では、油切り4aの外周面に径方向の段差S1(図3参照)を形成せず、該外周面をストレートな円筒面状としている。これに応じて、図7に示す実施形態と同様に、油切り4aの外周面に嵌合するスリーブ部材12の一端を内径側に折り曲げて非接触部に収容し、スリーブ部材12の抜けを防止している。また、油切り4aの外側端面42に軸方向の段差S4を設けることで、該端面42を内径側端面42aと外径側端面42bとに区画し、内径側端面42aを車輪1aのボスの端面1bに当接させ、外径側端面42bをボスの端面1bに対して非接触としている。また、内輪8aの内径側端面82aにおける径方向の中心位置と、油切り4aの内径側端面42aの径方向中央位置は同一である。
【0042】
図10および図11に示す実施形態は、油切り4aの外周面の軸方向中間部に肉取り部43を形成したものである。このように肉取り部43を形成することで、油切り4aの外径側の剛性が低下するため、車輪1aを車軸1に圧入して油切り4aに軸方向の圧縮力をさせた際に、油切り4aが鼓形に変形する。この油切り4aの変形により、油切り4aの内径側端面41aを内輪8aの端面82により確実に常時接触させることが可能となる。図11に示す実施形態は、スリーブ部材12の内径側に肉取り部43を設け、肉取り部43の軸方向両側にスリーブ部材12の内周面を嵌合させることで、より大きな肉取り部43を形成可能とし、油切り4aの上記変形をより生じやすくしたものである。
【0043】
以上の図5(A)(B)、および図6〜図11に示す各実施形態の説明では、外側の油切り4aと外側内輪8aとの間のクリープ対策としているが、同様の構成は特に矛盾を生じない限り、内側の油切り4bと内側内輪8bとの間のクリープ対策としても適用することができる。また、以上の説明では、軸受2として複列の円すいころ軸受を使用する場合を例に挙げて説明しているが、軸受形式は特に限定されず、複列円筒ころ軸受等の他の軸受形式を採用する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 車軸
1a 車輪
1d 環状溝
2 軸受
3 シール
3a シール部材
4a,4b 油切り
7 外輪
8a,8b 内輪
9 ころ(転動体)
12 スリーブ部材
13 スペーサ
14 弾性部材
41 端面
43 肉取り部
45 突出部
82 大鍔端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、
互いに対向する油切りの端面と内輪の端面との接触領域を内径側に限定したことを特徴とする鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項2】
前記油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域のうち、内径側に端面同士が接触する接触部を設け、外径側に端面同士が非接触となる非接触部を設けた請求項1記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項3】
前記油切りを軸方向で対称に形成した請求項2に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項4】
前記端面同士の接触部に、軟質金属被膜を介在させた請求項2に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項5】
前記端面同士の接触部に、硬質金属被膜を介在させた請求項2に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項6】
油切りの外周にシール部材と摺接するスリーブ部材を嵌合させ、スリーブ部材の前記軸方向一方側の端部を内径側に折り曲げて前記非接触部に収容した請求項2〜5の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項7】
前記スリーブ部材の折り曲げ端に弾性部材を装着し、この弾性部材を前記非接触部に圧縮状態で収容した請求項6に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項8】
前記油切りの端面と、これに対向する内輪の端面との間に軟質金属からなるスペーサを介在させた請求項1〜7の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項9】
前記油切りの外周面を部分的に肉取りした請求項1〜8の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項10】
前記油切りの肉取り部をスリーブ部材の内径側に形成した請求項9に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項11】
一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、
車軸に対する油切りの傾きを規制したことを特徴とする鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項12】
油切りを車軸の軸方向複数個所に嵌合させた請求項11に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項13】
油切りの外周にスリーブ部材を嵌合し、スリーブ部材の外周にシール部材を摺接させる請求項1〜12の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項14】
前記油切りの外周面に突出部を形成し、この突出部をスリーブ部材と軸方向で係合させた請求項13に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項1】
一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、
互いに対向する油切りの端面と内輪の端面との接触領域を内径側に限定したことを特徴とする鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項2】
前記油切りの端面と内輪の端面との軸方向の対向領域のうち、内径側に端面同士が接触する接触部を設け、外径側に端面同士が非接触となる非接触部を設けた請求項1記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項3】
前記油切りを軸方向で対称に形成した請求項2に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項4】
前記端面同士の接触部に、軟質金属被膜を介在させた請求項2に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項5】
前記端面同士の接触部に、硬質金属被膜を介在させた請求項2に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項6】
油切りの外周にシール部材と摺接するスリーブ部材を嵌合させ、スリーブ部材の前記軸方向一方側の端部を内径側に折り曲げて前記非接触部に収容した請求項2〜5の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項7】
前記スリーブ部材の折り曲げ端に弾性部材を装着し、この弾性部材を前記非接触部に圧縮状態で収容した請求項6に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項8】
前記油切りの端面と、これに対向する内輪の端面との間に軟質金属からなるスペーサを介在させた請求項1〜7の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項9】
前記油切りの外周面を部分的に肉取りした請求項1〜8の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項10】
前記油切りの肉取り部をスリーブ部材の内径側に形成した請求項9に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項11】
一端に車輪が設けられ、外周に環状溝が形成された車軸と、内輪、外輪、および内外輪間に介在する複数の転動体を有し、車輪の内側で車軸を回転自在に支持する軸受と、内輪と外輪間の空間を密封するシール部材と、軸受の内輪で位置決めされ、軸方向一方側が車軸の外周面に嵌合されると共に、この嵌合部の軸方向他方側が前記環状溝の外径側に延びて車軸と非接触となり、シール部材との協働で密封構造を構成する油切りとを具備する鉄道車両車軸用軸受装置において、
車軸に対する油切りの傾きを規制したことを特徴とする鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項12】
油切りを車軸の軸方向複数個所に嵌合させた請求項11に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項13】
油切りの外周にスリーブ部材を嵌合し、スリーブ部材の外周にシール部材を摺接させる請求項1〜12の何れか1項に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【請求項14】
前記油切りの外周面に突出部を形成し、この突出部をスリーブ部材と軸方向で係合させた請求項13に記載の鉄道車両車軸用軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−241883(P2012−241883A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115945(P2011−115945)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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