説明

銅の表面処理方法及び銅

【課題】銅の表面処理によって1μmを超す凹凸を形成することなく、銅表面と絶縁層との接着強度を確保し、配線間の絶縁信頼性を向上できる銅の表面処理方法及び銅を提供することを目的とする。
【解決手段】銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成する工程、その後、前記銅表面を酸化剤を含むアルカリ性溶液により酸化処理する工程を有する銅の表面処理方法及び当該方法により表面処理された銅を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅の表面処理方法及び当該表面処理方法により表面処理が施された銅に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の発展は目覚しく、民生機器ではパソコン、携帯電話などの小型化、軽量化、高性能化、高機能化が進められ、産業用機器としては無線基地局、光通信装置、サーバ、ルータなどのネットワーク関連機器など、大型、小型を問わず、同じように機能の向上が求められている。また、情報伝達量の増加に伴い、年々扱う信号の高周波化が進む傾向にあり、高速処理および高速伝送技術の開発が進められている。実装関係についてみると、CPU、DSPや各種のメモリなどのLSIの高速化、高機能化と共に、新たな高密度実装技術としてシステムオンチップ(SoC)、システムインパッケージ(SiP)などの開発が盛んに行われている。このために、半導体チップ搭載基板やマザーボードも、高周波化、高密度配線化、高機能化に対応するために、L/S=30μm/30μm以下の微細配線を形成したビルドアップ方式の多層配線基板が使用されるようになってきた。
【0003】
微細配線を形成する基板は、サブトラクティブ法、あるいはセミアディティブ法により行われている。
【0004】
サブトラクティブ法による一般的な配線形成工程は、銅表面にエッチングレジストを形成し、その後、露光、現像を行い、レジストパターンを形成する。次に、不要な銅をエッチングし、レジスト剥離を行うことにより配線を形成する。
【0005】
セミアディティブ法による一般的な配線形成工程は、銅(シード層)表面にめっきレジストを形成し、その後、露光、現像を行い、レジストパターンを形成する。次に、電気めっき、レジスト剥離及びエッチングを行うことにより配線を形成する。
【0006】
また、これらの配線形成後に、外部接続端子や半導体チップ接続端子等以外の配線を保護するために、配線上にソルダーレジストやカバーレイを形成することもできる。
【0007】
これらの方法により、L/S幅の設計値に対する微細配線の形成率を上げるためには、レジストパターンを設計通りに形成することが必要である。しかし、L/S=30μm/30μm以下の微細配線形成においては、露光の際、光沢性のある銅表面では、光の反射によるハレーションの影響により、レジストパターンの精度が得られにくい問題がある。
【0008】
また、銅表面とレジストパターンとの密着力が低下し、レジストパターンが剥がれる問題がある。一方、配線(銅)とソルダーレジスト間や配線とカバーレイ間では、配線が微細になるに従い、十分な接着性が得られないという問題がある。従って、これらの問題を解決するためには、銅表面の無光沢化および銅表面とレジストの密着力の強化が重要である。
【0009】
一方で、ビルドアップ方式の多層配線基板は、層間絶縁層形成工程と配線形成工程を相互に繰り返して製造される。この製造方法では、配線と絶縁樹脂の接着強度と、配線間の絶縁信頼性を確保することが重要である。
【0010】
上記に示す特性を満足させるため、従来、下記に示す銅表面処理方法が行われてきた。
【0011】
つまり、銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与して、銅表面を無光沢化し、更にアンカー効果によって、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。例えば、無機酸および銅の酸化剤からなる主剤と、少なくとも一種のアゾール類および少なくとも一種のエッチング抑制剤からなる助剤とを含む水溶液を用いて銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与する方法(日本国特開2000−282265号公報)、マイクロエッチングによって高さが1.5〜5.0μmの連続的な凹凸を形成した後、クロメート処理とカップリング剤処理を施す方法(日本国特開9−246720号公報)などがある。
【0012】
また、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与して凹凸を形成することにより、銅表面を無光沢化し、更にアンカー効果によって、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。例えば、亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を含有するアルカリ性水溶液を用いて、80℃前後で浸漬することにより、微細な酸化銅の針状結晶を付与する方法がある(日本国特公平7−13304号公報)。
【0013】
その他、銅表面に微細な酸化銅の針状結晶による凹凸形成後、還元処理を行うことによって、微細な金属銅の針状結晶を付与して、銅表面を無光沢化し、更にアンカー効果によって、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着力を得る方法である。例えば、亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を含有するアルカリ性水溶液を用いて、80℃前後で浸漬することにより酸化銅の微細な針状結晶を付与し、更にその後アミンボラン類の少なくとも一種類とホウ素系薬品を混合した酸性溶液により還元処理を施すことにより、微細な金属銅の針状結晶を付与する方法(日本国特許第2656622号公報)などがある。
【発明の開示】
【0014】
前述の銅表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与し、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させる第1の従来技術は、銅表面にRzで1.5〜5μmの凹凸を形成し、アンカー効果によって接着強度を確保していた。しかし、微細配線形成においては、L/Sが狭く且つレジストと密着している銅界面の凹凸が1μmを超す粗化形状になると、現像の際、レジストを銅表面から完全に除去することが困難であるため、その後のエッチング処理時に、銅配線間に短絡が発生する問題がある。また、レジスト剥離の際、同様にレジストを銅表面から完全に除去することが困難なため、その後の銅表面と絶縁樹脂または銅表面とソルダーレジスト間の密着性が得られない問題がある。その他、外部接続端子等の金めっき処理時に、めっきの未析出あるいはめっきムラが発生する問題がある。
【0015】
また、セミアディティブ法による微細配線形成においては、銅のシード層膜厚が薄く、特にスパッタリングにより形成された銅のシード層の膜厚は0.1μm〜1.0μmであるために、このような銅表面には凹凸形成をすることができない問題がある。
【0016】
更に、配線表面の凹凸が1μmを超す粗化形状であるため、このような配線に高速の電気信号を流すと、表皮効果により電気信号は配線の表面付近に集中して流れるようになり、伝送損失が大きくなるという問題がある。また、更に微細なL/S=25μm/25μm未満の配線になると、配線が細くなったり、配線幅のばらつきが大きくなったりするという問題がある。
【0017】
銅表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与して、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着強度を向上させる第2の従来技術は、配線表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.1〜1.5μmの凹凸を形成することで、第1の従来技術と同様にアンカー効果によって接着強度を確保していた。しかし、微細配線形成においては、レジストと密着している銅表面の凹凸が針状形状になると、前述と同様にレジスト残りによる、配線間に短絡が発生する問題、銅表面と絶縁樹脂または銅表面とソルダーレジスト間の密着性が得られない問題、金めっきの未析出あるいは金めっきムラが発生する問題がある。
【0018】
また、セミアディティブ法による微細配線形成においては、スパッタリング等により形成された銅のシード層上に凹凸形成することは可能である。しかし、前述と同様にレジストを銅表面から完全に除去することができないため、シード層上への配線形成が困難になる問題、配線間に短絡が発生する問題、銅表面と絶縁樹脂または銅表面とソルダーレジスト間の密着性が得られない問題、金めっきの未析出あるいは金めっきムラが発生する問題がある。
【0019】
更に、凹凸の高さバラツキが大きく、Rz<0.5μmでは高温・高湿時の接着信頼性が低下する問題があり、Rz>1.0μmでは第1の従来技術と同様に伝送損失が大きくなるという問題がある。また、酸化銅の針状結晶は壊れやすいため、水平ラインによる処理は不可能であり、薄板を処理する際は作業性が悪いという問題がある。さらに、スルーホール接続のめっき工程で、この酸化銅の針状結晶が溶解することにより、スルーホール周辺にピンク色のリング(ピンクリング)が発生し、配線間絶縁距離の短い部分で絶縁信頼性の低下や銅表面と絶縁樹脂間で剥離が発生しやすい。また、高温のアルカリ性溶液を使用しているため、絶縁樹脂表面が侵されやすく、イオン汚染あるいは絶縁劣化によって絶縁信頼性が低下しやすい。その他、酸化処理後水洗の際、酸化銅の複雑な針状結晶凹凸により針状結晶間中の水洗が充分に行えず、結晶間中の残存イオンによって絶縁信頼性が低下しやすいという問題がある。
【0020】
銅表面に微細な金属銅の針状結晶を付与して、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂の接着強度を向上させる第3の従来技術は、スルーホール接続のめっき工程でこの金属銅の針状結晶が溶解することは無いため、ピンクリングの発生はない。しかし、第2の従来技術と同様に、微細配線形成においては、レジスト残りによる、配線間に短絡が発生する問題、銅表面と絶縁樹脂または銅表面とソルダーレジスト間の密着性が得られない問題、金めっきの未析出あるいは金めっきムラが発生する問題、高温・高湿時の信頼性低下の問題、伝送損失の問題、薄板処理時の作業性の問題、絶縁材料のイオン汚染性あるいは絶縁劣化による絶縁信頼性低下の問題、酸化還元処理後の水洗性による絶縁信頼性低下の問題がある。
【0021】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を改善するためになされたものであり、銅表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着強度を確保し、各種信頼性を向上させることができる銅の表面処理方法、ならびに当該表面処理方法により表面が処理された銅を提供することである。
【0022】
すなわち、本発明は下記(1)〜(12)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0023】
(1)銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成する工程、その後、前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理する工程を有する、銅の表面処理方法。
【0024】
(2)前記銅表面を酸化処理する工程後、さらに還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理からなる群から選択される1つ以上の処理を行う工程を有する、上記(1)に記載の銅の表面処理方法。
【0025】
(3)前記酸化剤が、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、上記(1)または(2)に記載の銅の表面処理方法。
【0026】
(4)前記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、または前記金属を含む合金である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の銅の表面処理方法。
【0027】
(5)前記銅よりも貴な金属の形成量が、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の銅の表面処理方法。
【0028】
(6)処理後の前記銅表面の粗さが、Rzで1nm以上かつ1000nm以下である、上記(1)〜(5)に記載の銅の表面処理方法。
【0029】
(7)銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成し、その後、前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理してなる銅。
【0030】
(8)前記酸化処理後、さらに還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理からなる群から選択される1つ以上の処理を施してなる、上記(7)に記載の銅。
【0031】
(9)前記酸化剤が、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、上記(7)または(8)に記載の銅。
【0032】
(10)前記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、または前記金属を含む合金であることを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれかに記載の銅。
【0033】
(11)表面に形成された前記銅よりも貴な金属の量が、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下である、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の銅。
【0034】
(12)処理後の前記銅表面の粗さが、Rzで1nm以上かつ1000nm以下である、上記(7)〜(11)に記載の銅。
【0035】
以上のような本発明によれば、銅表面に1000nmを超す凹凸を形成することなく、銅表面とレジストまたは銅表面と絶縁樹脂との接着強度を確保し、各種信頼性を向上させることができる銅の表面処理方法、ならびに当該表面処理方法により表面が処理された銅を提供することが可能となる。
【0036】
なお、本出願は、同出願人により先にされた日本国特許出願、すなわち、2005−069058号(出願日2005年3月11日)、2005−277732号(出願日2005年9月26日)及び2005−287038号(出願日2005年9月30日)に基づく優先権主張を伴うものであって、これらの明細書を参照のためにここに組み込むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。ここでは、本発明の銅の表面処理方法の適用例として、半導体チップ搭載基板の銅配線の表面処理を一例として説明するが、その他の銅表面の処理方法として同様に適用することができる。
【0038】
(銅表面の凹凸形成法)
銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成し、その後、銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理することで、銅表面に緻密且つ均一な酸化銅の結晶による微細凹凸を形成することができる。また、上記酸化処理後に還元処理を行うことで、緻密且つ均一な金属銅の結晶による微細凹凸を形成できる。さらに、上記酸化処理後、カップリング処理、腐食抑制処理のうち少なくとも1つ以上の処理を行うことが好ましい。上記酸化処理後あるいは上記還元処理後あるいは上記カップリング処理あるいは上記腐食抑制処理後、これらの銅の表面処理によって生じる銅表面粗さは、Rz(十点平均粗さ)で1nm以上かつ1,000nm以下であることが好ましい。また、Rzで1nm以上かつ100nm以下であることがより好ましく、1nm以上かつ50nm以下であることがさらに好ましい。Rzが1nm未満では、レジストまたは絶縁樹脂等との接着力が低下する傾向があり、Rzが1,000nmを超えると、従来技術の問題点が発生しやすくなる傾向がある。なお、「緻密且つ均一」とは、銅表面の形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により、あるいは集束イオンビーム加工観察装置(FIB)により加工を行い、走査イオン顕微鏡(SIM)像を用いて観察した時に、酸化銅あるいは金属銅の結晶の大きさおよび高さが1nm以上かつ1,000nm以下で形成され、その形成された結晶が密集しているという意味である。
【0039】
以下では、上記した各処理について詳しく説明する。なお、本発明においては、各処理の前処理として、銅表面の清浄化を行う脱脂処理、酸洗処理あるいはこれらを適宜組み合わせて行うことが望ましい。
【0040】
(銅よりも貴な金属形成法)
銅より貴な金属を離散的に銅表面に形成する方法としては、特に限定されないが、銅よりも貴な金属を、無電解めっき、電気めっき、置換めっき、スプレー噴霧、塗布、スパッタリング、蒸着等により、下地の銅表面を完全に覆うことなく、銅表面に均一に分散するように形成することが好ましい。より好ましくは、銅より貴な金属を置換めっきにより離散的に銅表面に形成する方法である。置換めっきは、銅と銅よりも貴な金属とのイオン化傾向の違いを利用するものであり、これによれば銅より貴な金属を容易かつ安価に銅表面に離散的に形成することができる。
【0041】
銅より貴な金属としては、特に限定されないが、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムから選択される金属またはこれらの金属を含む合金を用いることができる。
【0042】
また、銅表面上に離散的に形成する上記銅よりも貴な金属の形成量は、特に限定されないが、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下であることが好ましい。また、形成量は0.01μmol/dm以上かつ10μmol/dm以下であることがより好ましく、0.1μmol/dm以上かつ4μmol/dm以下であることがさらに好ましい。形成量が0.001μmol/dm未満では、緻密且つ均一な微細凹凸を形成することが困難になる傾向があり、40μmol/dmを超えると接着強度が低下する傾向がある。なお、銅より貴な金属を離散的に銅表面に形成した量は、王水によって銅表面上の貴な金属を溶解させた後、その溶解液を原子吸光光度計で定量分析を行うことにより求めることができる。また、「離散的」とは、銅表面に貴金属が完全に被覆されることなく、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下の量で形成した貴金属が銅表面に分散しているという意味である。
【0043】
(銅表面の酸化処理方法)
本発明では、上記のようにして銅より貴な金属を離散的に銅表面に形成した後、当該銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液にて酸化処理する。
【0044】
上記酸化剤を含むアルカリ性溶液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などを含むアルカリ性溶液に、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩等の酸化剤がさらに含まれるアルカリ性溶液であることが好ましい。上記アルカリ金属やアルカリ土類金属などを含むアルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を水あるいはイオン交換樹脂により処理した水などの溶媒に添加することで得ることができる。また、上記酸化剤は、より具体的には、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記アルカリ性溶液にリン酸塩を添加してもよい。使用できるリン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三リチウム等が挙げられる。さらに、上記アルカリ性溶液に公知の有機酸やキレート剤を添加してもよい。
【0045】
上記のような酸化剤を含むアルカリ性溶液による酸化処理により、銅表面に酸化銅の結晶による凹凸を形成することができる。酸化銅の結晶量は、0.001mg/cm以上かつ0.3mg/cm以下であることが好ましく、0.01mg/cm以上かつ0.2mg/cm以下であることがより好ましく、0.03mg/cm以上かつ0.1mg/cm以下であることが特に好ましい。酸化銅結晶量が0.001mg/cm未満では、レジストの剥がれ、または絶縁樹脂等との接着力が低下する傾向があり、0.3mg/cmを超えると従来技術の問題点が発生しやすくなる傾向がある。なお、銅表面に形成した酸化銅結晶量は、電解還元量を測定することにより調べることができる。例えば、酸化処理を施した銅を作用極(陰極)として、0.5mA/cmの一定の電気量を通電し、銅の表面電位が酸化銅の電位から金属銅の電位に完全に変化するまで、即ち−1.0V以下の安定な電位になるまでの時間を測定し、その電解還元量から酸化銅結晶量を求めることができる。
【0046】
また、上記酸化剤を含むアルカリ性溶液により酸化処理を行う際の当該アルカリ性溶液の温度は、特に限定されないが、20〜95℃で行うことが好ましく、30〜80℃で行うことがより好ましく、40〜60℃で行うことが特に好ましい。また、酸化剤を含むアルカリ性溶液の濃度および該溶液による酸化処理時間については、上記した酸化銅の結晶量が0.001mg/cm以上かつ0.3mg/cm以下となるように適宜条件を選択することが好ましい。
【0047】
(還元処理方法)
上記酸化処理により銅表面に形成された酸化銅の結晶による凹凸は、還元処理により金属銅の凹凸にすることができる。この還元処理では、pH9.0から13.5に調整したアルカリ性溶液中に、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、芳香族アルデヒド化合物などを添加した水溶液、次亜リン酸や次亜リン酸塩などを添加した水溶液、ジメチルアミンボランやそれを含む化合物などを添加した水溶液、水素化ほう素塩やそれを含む化合物などを添加した水溶液等を使用することができる。より具体的には、例えば、HIST−100(日立化成工業株式会社製、商品名、HIST−100BおよびHIST−100Dを含む)などを上記還元処理用の溶液として用いることができる。また、ここに示すアルカリ性溶液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などを含むアルカリ性溶液である。さらに詳細に説明すると、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を水あるいはイオン交換樹脂により処理した水などの溶媒に添加することで得ることができる。
【0048】
また、上記方法は化学的に酸化銅を還元する方法であるが、その他、電気的に酸化銅を還元することもできる。
【0049】
(カップリング処理)
上記酸化処理後、銅表面と絶縁層(ビルドアップ層等)との接着強度を向上させるために、カップリング処理を行ってもよく、当該カップリング処理は、上記還元処理後や上記腐食抑制処理後に行ってもよい。これにより、接着性を向上させることができる。カップリング処理に使用するカップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤が挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を併用してもよい。中でもシラン系カップリング剤が好ましく、シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イミダゾール基、ビニル基、またはメタクリル基等の官能基を分子中に有するものであることが好ましい。また、上記カップリング剤は、これを含む溶液として使用することができ、当該カップリング剤溶液の調整に使用される溶媒は、特に限定されないが、水、アルコール、ケトン類等を用いることが可能である。また、カップリング剤の加水分解を促進させるために、少量の酢酸や塩酸等の酸を添加することもできる。また、カップリング剤の含有量は、カップリング剤溶液全体に対して、0.01質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%であることがさらに好ましい。カップリング剤による処理は、上記のように調整したカップリング剤溶液に処理対象となる銅を浸漬する、カップリング剤溶液を銅に対しスプレー噴霧もしくは塗布する等の方法により行うことができる。また、上記シラン系カップリング剤で処理した銅は、自然乾燥、加熱乾燥、または真空乾燥により乾燥するが、使用するカップリング剤の種類によっては、乾燥前に水洗または超音波洗浄を行うことも可能である。
【0050】
(腐食抑制処理)
上記酸化処理後、銅の腐食を抑制するために腐食抑制処理を行ってもよく、当該腐食抑制処理は、上記還元処理後もしくは上記カップリング処理後に行ってもよい。腐食抑制処理に使用する腐食抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄含有有機化合物または窒素含有有機化合物を少なくとも1種以上含んでいるものであればよい。腐食抑制剤としては、特に限定されないが、メルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のような硫黄原子を含有する化合物、または分子内に−N=またはN=Nまたは−NHを含む窒素含有有機化合物を少なくとも1種以上含む化合物であることが好ましい。
【0051】
上記メルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のような硫黄原子を含有する化合物としては、例えば、脂肪族チオール(HS−(CH)n−R(但し、式中、nは1から23までの整数、Rは一価の有機基、水素基またはハロゲン原子を表す)で表される構造を有し、Rはアミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基のいずれかであることが好ましいが、これに限定したものではなく、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロアルキル基、ハロゲン原子、水素基、チオアルキル基、チオール基、置換されていても良いフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、複素環などが挙げられる。また、R中のアミノ基、アミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基は、1個あればよく、好ましくは1個以上、他に上記のアルキル基等の置換基を有していても良い。また、式中、nが1から23までの整数で示される化合物を用いることが好ましく、さらに、nが4から15までの整数で示される化合物がより好ましく、またさらに6から12までの整数で示される化合物であることが特に好ましい。)、チアゾール誘導体(例えば、チアゾール、2−アミノチアゾール、2−アミノチアゾール−4−カルボン酸、アミノチオフェン、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾロール、2,3−ジヒドロイミダゾ〔2,1−b〕ベンゾチアゾール−6−アミン、2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノ酢酸エチル、2−メチルベンゾチアゾール、2−フェニルベンゾチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール等)、チアジアゾール誘導体(1,2,3−チアジアゾール)、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、2,5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3−メチルメルカプト−5−メルカプト−1,2,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、2−(エチルアミノ)−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール等)、メルカプト安息香酸、メルカプトナフトール、メルカプトフェノール、4−メルカプトビフェニル、メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオウラシル、3−チオウラゾール、2−チオウラミル、4−チオウラミル、2−メルカプトキノリン、チオギ酸、1−チオクマリン、チオクモチアゾン、チオクレゾール、チオサリチル酸、チオチアヌル酸、チオナフトール、チオトレン、チオナフテン、チオナフテンカルボン酸、チオナフテンキノン、チオバルビツル酸、チオヒドロキノン、チオフェノール、チオフェン、チオフタリド、チオフテン、チオールチオン炭酸、チオルチドン、チオールヒスチジン、3−カルボキシプロピルジスルフィド、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、2−アミノプロピオン酸、ジチオジグリコール酸、D−システイン、ジ−t−ブチルジスルフィド、チオシアン、チオシアン酸等が挙げられる。
【0052】
上記分子内に−N=またはN=Nまたは−NHを含むN含有有機化合物を少なくとも1種以上含む化合物として好ましい化合物は、トリアゾール誘導体(1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3−オキシ−1,2,4−トリアゾール、アミノウラゾール等)、テトラゾール誘導体(テトラゾリル、テトラゾリルヒドラジン、1H−1,2,3,4−テトラゾール、2H−1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、1−エチル−1,4−ジヒドロキシ5H−テトラゾール−5−オン、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、テトラゾールメルカプタン等)、オキサゾール誘導体(オキサゾール、オキサゾリル、オキサゾリン、ベンゾオキサゾール、3−アミノ−5−メチルイソオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−アミノオキサゾリン、2−アミノベンゾオキサゾール等)、オキサジアゾール誘導体(1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾロン−5、1,3,4−オキサジアゾロン−5等)、オキサトリアゾール誘導体(1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール等)、プリン誘導体(プリン、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリン、2−アミノ−6−メチルメルカプトプリン、2−メルカプトアデニン、メルカプトヒポキサンチン、メルカプトプリン、尿酸、グアニン、アデニン、キサンチン、テオフィリン、テオブロミン、カフェイン等)、イミダゾール誘導体(イミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、4−アミノ−5−イミダゾールカルボン酸アミド、ヒスチジン等)、インダゾール誘導体(インダゾール、3−インダゾロン、インダゾロール等)、ピリジン誘導体(2−メルカプトピリジン、アミノピリジン等)、ピリミジン誘導体(2−メルカプトピリミジン、2−アミノピリミジン、4−アミノピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノー4−ヒドロキシ−6−メチルピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メチルピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、2−ヒドロキシピリミジン、4−メルカプト−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、4−アミノ−2,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン等)、チオ尿素誘導体(チオ尿素、エチレンチオ尿素、2−チオバルビツール酸等)、アミノ酸(グリシン、アラニン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン等)、1,3,4−チオオキサジアゾロン−5、チオクマゾン、2−チオクマリン、チオサッカリン、チオヒダントイン、チオピリン、γ-チオピリングアナジン、グアナゾール、グアナミン、オキサジン、オキサジアジン、メラミン、2,4,6−トリアミノフェノール、トリアミノベンゼン、アミノインドール、アミノキノリン、アミノチオフェノール、アミノピラゾール等があげられる。
【0053】
また、上記腐食抑制剤を含む溶液の調整には、水や有機溶媒を使用することができる。上記有機溶媒の種類は、特に限定はしないが、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール類、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジアリルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、フェノールなどの芳香族炭化水素などを用いることができ、これらの溶媒を1種類ないし2種類以上組み合わせて用いることもできる。また、上記酸化剤を含むアルカリ性溶液またはカップリング剤溶液に上記腐食抑制剤を加えて用いることも可能である。
【0054】
また、上記腐食抑制剤を含む溶液の濃度は、0.1〜5000ppmの濃度が好ましく、0.5〜3000ppmがより好ましく、1〜1000ppmであることが特に好ましい。腐食抑制剤の濃度が0.1ppm未満では、イオンマイグレーション抑制効果や、銅表面と絶縁層との接着強度が低下する傾向がある。一方、腐食抑制剤の濃度が5000ppmを超えると、イオンマイグレーション抑制効果は得られるが、銅表面と絶縁層との接着強度が低下する傾向がある。腐食抑制剤を含む溶液による処理時間は、特に限定しないが、腐食抑制剤の種類および濃度に応じて適宜変化させることが好ましい。また、処理後に超音波洗浄を行うことも可能である。
【0055】
(レジスト)
本発明に用いるレジストとしては、エッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト、カバーレイ等が挙げられる。エッチングレジストおよびめっきレジストは、配線形成を目的に使用するために、配線形成後に剥離され、基板等には残らないものである。ソルダーレジストまたはカバーレイは、外部接続端子や半導体チップ接続端子等以外の配線保護を目的としているために、基板表面に形成される。これらのレジストは、液状またはフィルム状のものを使用することができ、感光性があることが好ましい。
【0056】
(半導体チップ搭載基板)
図1に、本発明の半導体チップ搭載基板の一実施例(片面ビルドアップ層2層)の断面模式図を示した。ここでは、ビルドアップ層(層間絶縁層)を片面にのみ形成した実施形態で説明するが、必要に応じて図8に示すようにビルドアップ層は両面に形成しても良い。
【0057】
本発明の半導体チップ搭載基板は、図1に示すように、半導体チップが搭載される側の絶縁層であるコア基板100上に、半導体チップ接続端子及び第1の層間接続端子101を含む第1の配線106aが形成される。コア基板の他方の側には、第2の層間接続端子103を含む第2の配線106bが形成され、第1の層間接続端子と第2の層間接続端子は、コア基板の第1の層間接続用IVH(インタースティシャルバイアホール)102を介して電気的に接続される。コア基板の第2の配線側には、ビルドアップ層104が形成され、ビルドアップ層上には第3の層間接続端子を含む第3の配線106cが形成され、第2の層間接続端子と第3の層間接続端子は、第2の層間接続用IVH108を介して電気的に接続される。
【0058】
ビルドアップ層が複数形成される場合は、同様の構造を積層し、最外層のビルドアップ層上には、マザーボードと接続される外部接続端子107が形成され、さらに外部接続端子と第3の層間接続端子は第3の層間接続用IVH105を介して電気的に接続される。配線の形状や各々の接続端子の配置等は特に制限されず、搭載する半導体チップや目的とする半導体パッケージを製造するために、適宜設計可能である。また、半導体チップ接続端子と第1の層間接続端子等を共用することも可能である。更に、最外層のビルドアップ層上には、必要に応じてソルダーレジスト等の絶縁被覆109を設けることもできる。
【0059】
(コア基板)
コア基板の材質は特に問わないが、有機基材、セラミック基材、シリコン基材、ガラス基材などが使用できる。熱膨張係数や絶縁性を考慮すると、セラミックや、ガラスを用いることが好ましい。ガラスのうち非感光性ガラスとしては、ソーダ石灰ガラス(成分例:SiO 65〜75wt%、Al 0.5〜4wt%、CaO 5〜15wt%、MgO 0.5〜4wt%、NaO 10〜20wt%)、ホウ珪酸ガラス(成分例:SiO 65〜80wt%、B 5〜25wt%、Al 1〜5wt%、CaO 5〜8wt%、MgO 0.5〜2wt%、NaO 6〜14wt%、KO 1〜6wt%)等が挙げられる。また、感光性ガラスとしてはLiO−SiO系結晶化ガラスに感光剤として金イオン及び銀イオンを含むものが挙げられる。
【0060】
有機基板としては、ガラス布に樹脂を含浸させた材料を積層した基板や樹脂フィルムが使用できる。使用する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性の有機絶縁材料が好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。
【0061】
これらの樹脂には充填材を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0062】
コア基板の厚さは100〜800μmであるのが、IVH形成性の点で好ましく、更に150〜500μmであるのがより好ましい。
【0063】
(ビルドアップ層)
層間絶縁層(ビルドアップ層)104は、絶縁材料からなり、絶縁材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂が使用できる。またビルドアップ層は熱硬化性の有機絶縁材料を主成分とするのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。
【0064】
絶縁材料には充填材を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。
【0065】
(熱膨張係数)
半導体チップの熱膨張係数とコア基板の熱膨張係数とが近似していて、かつコア基板の熱膨張係数とビルドアップ層の熱膨張係数とが近似していることが好ましいが、これに限定したものではない。さらに、半導体チップ、コア基板、ビルドアップ層の各々の熱膨張係数をα1、α2、α3(ppm/℃)としたとき、α1≦α2≦α3であることがより好ましい。
【0066】
具体的には、コア基板の熱膨張係数α2は、7〜13ppm/℃が好ましく、更に好ましくは9〜11ppm/℃である。ビルドアップ層の熱膨張係数α3は10〜40ppm/℃であるのが好ましく、更に好ましくは10〜20ppm/℃であり、11〜17ppm/℃が特に好ましい。
【0067】
(ヤング率)
ビルドアップ層のヤング率は、1〜5GPaであるのが熱ストレスに対する応力緩和の点で好ましい。ビルドアップ層中の充填材は、ビルドアップ層の熱膨張係数が10〜40ppm/℃、ヤング率が1〜5GPaになるように添加量を適宜調整して添加するのが好ましい。
【0068】
(半導体チップ搭載基板の製造方法)
半導体チップ搭載基板は、以下の製造方法の組み合わせで製造することができる。製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。
【0069】
(配線形成方法)
配線の形成方法としては、コア基板表面またはビルドアップ層上に金属箔を形成し、金属箔の不要な箇所をエッチングで除去する方法(サブトラクティブ法)、コア基板表面またはビルドアップ層上の必要な箇所にのみめっきにより配線を形成する方法(アディティブ法)、コア基板表面またはビルドアップ層上に薄い金属層(シード層)を形成し、その後、電解めっきで必要な配線を形成した後、薄い金属層をエッチングで除去する方法(セミアディティブ法)がある。
【0070】
(サブトラクティブ法よる配線形成)
金属箔上の配線となる箇所にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した箇所に、化学エッチング液をスプレー噴霧して、不要な金属箔をエッチング除去し、配線を形成することができる。例えば、金属箔として銅箔を用いる場合、エッチングレジストは、通常の配線板に用いることのできるエッチングレジスト材料を使用できる。例えばレジストインクをシルクスクリ−ン印刷してエッチングレジストを形成したり、またエッチングレジスト用ネガ型感光性ドライフィルムを銅箔の上にラミネートして、その上に配線形状に光を透過するフォトマスクを重ね、紫外線で露光し、露光しなかった箇所を現像液で除去してエッチングレジストを形成する。化学エッチング液には、塩化第二銅と塩酸の溶液、塩化第二鉄溶液、硫酸と過酸化水素の溶液、過硫酸アンモニウム溶液など、通常の配線板に用いる化学エッチング液を用いることができる。
【0071】
(アディティブ法による配線形成)
また、配線は、コア基板またはビルドアップ層上の必要な箇所にのみ、めっきを行うことで形成することも可能であり、通常のめっきによる配線形成技術を用いることができる。例えば、コア基板に無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、無電解めっき液に浸漬し、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ、無電解めっきを行い配線形成する。
【0072】
(セミアディティブ法による配線形成)
コア基板表面またはビルドアップ層上に、セミアディティブ法に用いるシード層を形成する方法は、蒸着またはめっきによる方法と、金属箔を貼り合わせる方法がある。また同様の方法で、サブトラクティブ法の金属箔を形成することもできる。
【0073】
(蒸着またはめっきによるシード層の形成)
コア基板表面またはビルドアップ層上に蒸着またはめっきによってシード層を形成することができる。例えば、シード層として、スパッタリングにより下地金属と薄膜銅層を形成する場合、薄膜銅層を形成するために使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタ、3極スパッタ、4極スパッタ、マグネトロンスパッタ、ミラートロンスパッタ等を用いることができる。スパッタに用いるターゲットは、密着を確保するために、例えば、Cr、Ni、Co、Pd、Zr、Ni/Cr、Ni/Cu等の金属を下地金属として用い、厚み5〜50nmのスパッタリングを施す。その後、銅をターゲットにして厚み200〜500nmのスパッタリングを施しシード層を形成することができる。また、コア基板表面またはビルドアップ層上に無電解銅めっきにより0.5〜3μmの厚みのめっき銅を形成してもよい。
【0074】
(金属箔を貼り合わせる方法)
コア基板またはビルドアップ層に接着機能がある場合は、金属箔をプレスやラミネートによって貼り合わせることによりシード層を形成することもできる。しかし、薄い金属層を直接貼り合わせるのは非常に困難であるため、厚い金属箔を張り合わせた後にエッチング等により薄くする方法や、キャリア付金属箔を貼り合わせた後にキャリア層を剥離する方法などがある。例えば前者としてはキャリア銅/ニッケル/薄膜銅の三層銅箔があり、キャリア銅をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液で除去できる。後者としては、アルミ、銅、絶縁材料などをキャリアとしたピーラブル銅箔などが使用でき、厚み5μm以下のシード層を形成できる。また、厚み9〜18μmの銅箔を貼り付け、エッチングにより厚み5μm以下になるように均一に薄くし、シード層を形成してもかまわない。
【0075】
前述の方法で形成されたシード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、配線を形成することができる。
【0076】
(配線の形状)
配線の形状は特に問わないが、少なくとも半導体チップが搭載される側には半導体チップ接続端子16(ワイヤボンド端子等)、その反対面にはマザーボードと電気的に接続される外部接続端子(はんだボール等が搭載される箇所)及びそれらを繋ぐ展開配線、層間接続端子等から構成される。また、配線の配置も特に問わないが、図5に示すような(内層配線、層間接続端子等は省略)、半導体チップ接続端子16より内側に外部接続端子19を形成したファン−インタイプの半導体チップ搭載基板や、図6に示すような半導体チップ接続端子16の外側に外部接続端子19を形成したファン−アウトタイプの半導体チップ搭載基板、またはこれらを組み合わせたタイプでもよい。なお、図5および図6において、13は半導体パッケージ領域、14はダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)、15は半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)、17はダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)、18は半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)、20は展開配線を示す。また、半導体チップ接続端子16の形状は、ワイヤボンド接続やフリップチップ接続などが可能であれば、特に問わない。また、ファン−アウト、ファン−インどちらのタイプでも、ワイヤボンド接続やフリップチップ接続などは可能である。さらに必要に応じて、半導体チップと電気的に接続されないダミーパターン21(図6参照)を形成してもかまわない。ダミーパターンの形状や配置も特には問わないが、半導体チップ搭載領域に均一に配置するのが好ましい。これによって、ダイボンド接着剤で半導体チップを搭載する際に、ボイドが発生しにくくなり、信頼性を向上できる。
【0077】
(バイアホール)
多層の半導体チップ搭載基板は、複数の配線層を有するため、各層の配線を電気的に接続するためのバイアホールを設けることができる。バイアホールは、コア基板またはビルドアップ層に接続用の穴を設け、この穴を導電性ペーストやめっき等で充填し形成することができる。穴の加工方法としては、パンチやドリルなどの機械加工、レーザ加工、薬液による化学エッチング加工、プラズマを用いたドライエッチング法などがある。
【0078】
また、ビルドアップ層のバイアホール形成方法としては、予めビルドアップ層に導電性ペーストやめっきなどで導電層を形成し、これをコア基板にプレス等で積層する方法などもある。
【0079】
(絶縁被覆の形成)
半導体チップ搭載基板の外部接続端子側には絶縁被覆を形成することができる。パターン形成は、ワニス状の材料であれば印刷で行うことも可能であるが、より精度を確保するためには、感光性のソルダーレジスト、カバーレイフィルム、フィルム状レジストを用いるのが好ましい。材質としては、エポキシ系、ポリイミド系、エポキシアクリレート系、フルオレン系の材料を用いることができる。
【0080】
このような絶縁被覆は硬化時の収縮があるため、片面だけに形成すると基板に大きな反りを生じやすい。そこで、必要に応じて半導体チップ搭載基板の両面に絶縁被覆を形成することもできる。さらに、反りは絶縁被覆の厚みによって変化するため、両面の絶縁被覆の厚みは、反りが発生しないように調整することがより好ましい。その場合、予備検討を行い、両面の絶縁被覆の厚みを決定することが好ましい。また、薄型の半導体パッケージとするには、絶縁被覆の厚みが50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0081】
(配線のめっき)
配線の必要な部分にニッケル、金めっきを順次施すことができる。さらに必要に応じてニッケル、パラジウム、金めっきとしても良い。これらのめっきは、配線の半導体チップ接続端子と、マザーボードまたは他の半導体パッケージと電気的に接続するための外部接続端子に施される。このめっきは、無電解めっき、または電解めっきのどちらを用いてもよい。
【0082】
(半導体チップ搭載基板の製造方法)
このような半導体チップ搭載基板は、以下のような工程で製造することができる。図2の(a)〜(g)に、本発明における半導体チップ搭載基板の製造方法の一実施形態を断面模式図で示す。ただし、製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。
【0083】
(工程a)
(工程a)は、図2(a)に示したようにコア基板100上に第1の配線106aを作製する工程である。第1の配線106aは、例えば、片面に銅層が形成されたコア基板の銅層を脱脂処理し、塩酸あるいは硫酸洗浄した後、当該銅層上に銅よりも貴な金属である金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属、またはこれらの金属を含む合金を離散的に形成し、酸化剤を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより酸化処理を行い、その後、酸化処理された銅層上に、第1の配線形状にエッチングレジストを形成し、塩化銅や塩化鉄、硫酸−過酸化水素及び硝酸−過酸化水素などのエッチング液により銅層をエッチングした後、エッチングレジストを除去することで作製することができる。また、上記酸化処理後に、更に還元処理、カップリング処理及び腐食抑制処理の1つ以上の処理を行うことが好ましい。いずれにしても配線表面のRzを1nm以上かつ1,000nm以下になるように処理を行う。コア基板100上に銅層を形成するには、スパッタリング、蒸着、めっき等により銅薄膜を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行うことで可能である。なお、第1の配線106aは、第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子(半導体チップと電気的に接続される部分)を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いても良い。
【0084】
(工程b)
(工程b)は、図2(b)に示したように、前記第1の層間接続端子101と、後述する第2の配線とを接続するための第1の層間接続用IVH102(バイアホール)を形成する工程である。
【0085】
バイアホールとなる穴は、コア基板100が非感光性基材の場合、COレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザ光をバイアホールとなる箇所に照射することで形成することができる。生産性及び穴品質の観点からは、CO2レーザを用いることが好ましく、IVH径が30μm未満の場合には、レーザ光を絞ることが可能なYAGレーザが適している。なお、非感光性基材としては、前述した非感光性ガラスなどが挙げられるが、これに限定されない。また、コア基板100が感光性基材の場合、バイアホールとなる箇所以外の領域をマスクし、紫外光を照射した後、熱処理とエッチングによりバイアホールとなる穴を形成する。なお、感光性基材としては、前述した感光性ガラスなどが挙げられるが、これに限定されない。また、コア基板100が、有機溶剤等の薬液による化学エッチング加工が可能な基材の場合は、化学エッチングによってバイアホールとなる穴を形成することもできる。上記のようにバイアホールとなる穴を形成した後は、層間を電気的に接続するために、必要に応じてデスミア処理を行った後、当該穴を導電性のペーストやめっきなどにより導電化し、バイアホールとする。
【0086】
(工程c)
(工程c)は、図2(c)に示したように、コア基板100の第1の配線106aと反対側の面に第2の配線106bを形成する工程である。第2の配線106bは、コア基板100の第1の配線と反対の面に上記(工程a)における第1の配線と同様にして形成することができる。銅層の形成方法としては、(工程a)と同様、スパッタリング、蒸着、めっき等により銅薄膜を形成した後、所望の厚みになるまで電気銅めっきを行うことで可能である。なお、第2の配線106bは第2の層間接続端子103を含んでおり、微細配線の形成方法としてはセミアディティブ法を用いても良い。
【0087】
(工程d)
(工程d)は、図2(d)に示すように前記第2の配線106bを形成した面にビルドアップ層(層間絶縁層)104を形成する工程である。ここでは、まず、第2の配線106b表面を、脱脂処理を行い、塩酸あるいは硫酸洗浄を行うことが望ましい。次に、銅よりも貴な金属、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムから選択される金属またはこれらの金属を含む合金を、離散的に銅配線表面(第2の配線106b上)に形成し、酸化剤を含むアルカリ性溶液に浸漬することにより酸化処理を行い、その後、必要に応じて還元処理を行う。その後、更にカップリング処理、腐食抑制処理の少なくとも1つ以上の処理を行い、銅配線表面の粗さRzが1nm以上かつ1,000nm以下となるようにする。
【0088】
次に、コア基板100表面及び第2の配線106b表面に、ビルドアップ層104を形成する。ビルドアップ層104の絶縁材料としては、前記したように熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合樹脂が使用できるが、熱硬化性材料を主成分とするのが好ましい。ビルドアップ層104の形成は、絶縁材料がワニス状の場合には、印刷やスピンコート等により、絶縁材料がフィルム状の場合には、ラミネートやプレス等により行うことができる。絶縁材料が熱硬化性材料を含む場合は、さらに加熱硬化させることが望ましい。
【0089】
(工程e)
(工程e)は、図2(e)に示したように、前記ビルドアップ層104に第2の層間接続用のIVH(バイアホール)108を形成する工程であり、その形成手段としては、上記工程(b)における第1の層間接続用IVH102と同様に行うことができる。
【0090】
(工程f)
(工程f)は、図2(f)に示したように、前記第2のIVH108が形成されたビルドアップ層上に、第3の配線106cを形成する工程である。第3の配線106cは、上記(工程a)における第1の配線106aと同様にして形成することができる。L/S=35μm/35μm以下の微細な配線を形成するプロセスとしては、前記したセミアディティブ法が好ましい。また、ビルドアップ層104上に、蒸着またはめっきによる方法や金属箔を貼り合わせる方法などにより前述したシード層を形成することが好ましい。この場合、当該シード層上に、めっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成した後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去することで、微細な配線を形成することができる。
【0091】
(工程d)から(工程f)までを繰り返して、図2(g)に示すようにビルドアップ層104を2層以上作製してもよい。この場合、最外のビルドアップ層に形成された層間接続端子が、外部接続端子107となる。
【0092】
(工程g)
(工程g)は、図2(g)に示したように、外部接続端子107以外の配線等を保護するための絶縁被覆109を形成する工程である。絶縁被覆材としては、ソルダーレジストが用いられ、熱硬化型や紫外線硬化型のものが使用できるが、レジスト形状を精度良く仕上げることができる紫外線硬化型のものが好ましい。まず、外部接続端子107およびそれ以外の配線等を、脱脂処理を行い、その後、塩酸あるいは硫酸洗浄を行う。次に、銅よりも貴な金属である金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムから選択される金属、またはこれらの金属を含む合金を離散的に形成し、酸化剤を含むアルカリ性水溶液に浸漬することにより酸化処理を行う。その後、更に還元処理を行うことが好ましい。その後更に、カップリング処理及び腐食抑制処理の少なくとも1つ以上の処理を行ってもよいが、いずれにしても、配線表面のRzを1nm以上かつ1,000nm以下になるように処理を行う。その後、外部接続端子107以外の部分にソルダーレジストを形成し、外部接続端子107を露出させる。第3の層間接続用IVH105を介して第3の配線と電気的に接続する。
【0093】
(半導体チップ搭載基板の形状)
半導体チップ搭載基板の形状は、特に問わないが、図7に示したようなフレーム形状にすることが好ましい。半導体チップ搭載基板22の形状をフレーム形状にすることで、半導体パッケージの組立てを効率よく行うことができる。以下、好ましいフレーム形状について詳細に説明する。
【0094】
図7に示したように、半導体パッケージ領域13(1個の半導体パッケージとなる部分)を行及び列に各々複数個等間隔で格子状に配置したブロック23を形成する。さらに、このようなブロックを複数個行及び列に形成する。図7では、2個のブロックしか記載していないが、必要に応じて、ブロックを格子状に配置してもよい。ここで、半導体パッケージ領域間のスペース部の幅は、50〜500μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。さらに、後に半導体パッケージを切断するときに使用するダイサーのブレード幅と同じにするのが最も好ましい。
【0095】
このように半導体パッケージ領域を配置することで、半導体チップ搭載基板の有効利用が可能になる。また、半導体チップ搭載基板の端部には、位置決めのマーク11等を形成することが好ましく、貫通穴によるピン穴であることがより好ましい。ピン穴の形状や配置は、形成方法や半導体パッケージの組立て装置に合うように選択すればよい。
【0096】
さらに、前記半導体パッケージ領域間のスペース部や前記ブロックの外側には補強パターン24を形成することが好ましい。補強パターンは、別途作製し半導体チップ搭載基板と貼り合わせてもよいが、半導体パッケージ領域に形成される配線と同時に形成された金属パターンであることが好ましく、さらに、その表面には、配線と同様のニッケル、金などのめっきを施すか、絶縁被覆を施すことがより好ましい。補強パターンが、このような金属の場合は、電解めっきの際のめっきリードとして利用することも可能である。また、ブロックの外側には、ダイサーで切断する際の切断位置合わせマーク25を形成することが好ましい。このようにして、フレーム形状の半導体チップ搭載基板を作製することができる。
【0097】
(半導体パッケージ)
図3に、本発明のフリップチップタイプ半導体パッケージの一実施形態を断面模式図で示す。図3に示したように本発明の半導体パッケージは、上記本発明の半導体チップ搭載基板に、さらに半導体チップ111が搭載されているもので、半導体チップと半導体チップ接続端子とを接続バンプ112を用いてフリップチップ接続することによって電気的に接続されている。
【0098】
さらに、これらの半導体パッケージには、図示するように、半導体チップと半導体チップ搭載基板の間をアンダーフィル材113で封止することが好ましい。アンダーフィル材の熱膨張係数は、半導体チップ111及びコア基板100の熱膨張係数と近似していることが好ましいがこれに限定したものではない。さらに好ましくは(半導体チップの熱膨張係数)≦(アンダーフィル材の熱膨張係数)≦(コア基板の熱膨張係数)である。さらに、半導体チップの搭載には異方導電性フィルム(ACF)や導電性粒子を含まない接着フィルム(NCF)を用いて行うこともできる。この場合は、アンダーフィル材で封止する必要がないため、より好ましい。さらに、半導体チップを搭載する際に超音波を併用すれば、電気的な接続が低温でしかも短時間で行えるため特に好ましい。
【0099】
また、図4には、本発明のワイヤボンドタイプ半導体パッケージの一実施形態の断面図を示す。半導体チップの搭載には、一般のダイボンドペーストも使用できるが、ダイボンドフィルム117を用いるのがより好ましい。半導体チップと半導体チップ接続端子との電気的な接続は金ワイヤ115を用いたワイヤボンドで行う。半導体チップの封止は、半導体用封止樹脂116をトランスファモールドで行うことができる。この場合、封止領域は、必要な部分だけ、例えば、半導体チップのフェース面だけを封止しても良いが、図4のように半導体パッケージ領域全体を封止することがより好ましい。これは、半導体パッケージ領域を行及び列に複数個配列した半導体チップ搭載基板において、基板と封止樹脂116を同時にダイサー等で切断する場合、特に有効な方法である。
【0100】
また、マザーボードとの電気的な接続を行うために、外部接続端子107には、例えば、はんだボール114を搭載することができる。はんだボールには、共晶はんだやPbフリーはんだが用いられる。はんだボールを外部接続端子107に固着する方法としては、例えば、Nリフロー装置などを用いることができるが、これに限定されない。
【0101】
上記半導体チップ搭載基板に複数の半導体チップを搭載してなる複数の半導体パッケージは、最後に、ダイサー等を用いて個々の半導体パッケージに切断する。
【実施例】
【0102】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
本発明の銅表面処理を適用して作製した半導体パッケージの信頼性を評価するために、以下のようにして半導体パッケージサンプルを作製した。
【0104】
(工程a)
コア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。なおスパッタリングは、日本真空技術株式会社製装置型番MLH−6315を用いて、以下に示した条件1で行った。
【0105】
条件1
電流:3.5A
電圧:500V
アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:5nm/秒
【0106】
その後、第1の配線106aとなる部分にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングし、エッチングレジストを除去することで、第1の配線106a(第1の層間接続端子101及び半導体チップ接続端子を含む)を形成した。
【0107】
(工程b)
第1の配線106aが形成されたガラス基板の第1の配線106aと反対面から第1の層間接続端子101に到達するまで、レーザで穴径50μmのIVHとなる穴を形成した。レーザにはYAGレーザLAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数4kHz、ショット数50、マスク径0.4mmの条件でIVHとなる穴の形成を行った。ついで、穴内のデスミア処理を行った。その後、当該穴に導電性ペーストMP−200V(日立化成工業株式会社製、商品名)を充填して、160℃30分で硬化し、ガラス基板上の第1の層間接続端子101と電気的に接続し、第1の層間接続用IVH102(バイアホール)を形成した。
【0108】
(工程c)
(工程b)で形成された第1の層間接続用IVH102(第1のバイアホール)と電気的に接続するために、ガラス基板の、第1の配線106aと反対側の面にスパッタリングにより200nmの銅薄膜を形成した後、電気銅めっきで10μmの厚さまでめっきを行った。スパッタリングは、(工程a)と同様に行った。
【0109】
その後、(工程a)と同様に第2の配線106bの形状にエッチングレジストを形成し、塩化第二鉄エッチング液を用いてエッチングして、エッチングレジストを除去することで、第2の配線106b(第2の層間接続端子103を含む)を形成した。
【0110】
(工程d)
(工程d−1)
(工程c)で形成した第2の配線106b側の配線表面を、200ml/Lに調整した酸性脱脂液Z−200(ワールドメタル社製、商品名)に、液温50℃で2分間浸漬した後、液温50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、さらに1分間水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した。
【0111】
(工程d-2)
上記前処理工程を経た第2の配線106bを、置換パラジウムめっき液SA−100(日立化成工業株式会社、製品名)に30℃で3分間浸漬して、銅よりも貴な金属であるパラジウムめっきを1.0μmol/dm施し、1分間水洗した後、さらに、りん酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線16b表面に0.07mg/cmの酸化銅の結晶を形成した。この後、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0112】
(工程d-3)
次に、第2の配線106b側の面に層間絶縁層(ビルドアップ層)104を次のように形成した。すなわち、シアネートエステル系樹脂組成物の絶縁ワニスを、スピンコート法により、条件1500rpmで、第2の配線106b側の面に塗布し、厚み20μmの樹脂層を形成した後、常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、230℃で80分間保持することにより熱硬化し、15μmのビルドアップ層104を形成した。
【0113】
(工程e)
上記(工程d-3)で形成したビルドアップ層104の表面から第2の層間接続用端子103に到達するまで、レーザで穴径50μmのIVHとなる穴を形成した。レーザにはYAGレーザLAVIA−UV2000(住友重機械工業株式会社製、商品名)を使用し、周波数4kHz、ショット数20、マスク径0.4mmの条件でIVHとなる穴の形成を行った。その後、デスミア処理を行った。デスミア処理方法としては、膨潤液サーキュポジットホールプリップ4125(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社、製品名)に80℃で3分浸漬後、3分間水洗した。その後、デスミア液サーキュポジットMLBプロモーター213(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社、製品名)に80℃で5分浸漬後、3分間水洗した。次いで、還元液サーキュポジットMLB216−4(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社、製品名)に40℃で3分浸漬後、3分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0114】
(工程f)
上記(工程d-3)で形成したビルドアップ層104上に第3の配線106c及び第2のIVH108を形成するために、ビルドアップ層104上にスパッタリングにより、厚さ20nmのNi層(下地金属)を形成し、さらに当該Ni層上に厚さ200nmの薄膜銅層を形成することで、シード層を形成した。スパッタリングは、日本真空技術株式会社製MLH−6315を用いて以下に示した条件2で行った。
【0115】
条件2
(Ni層)
電流:5.0A
電流:350V
電圧アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:0.3nm/秒
(薄膜銅層)
電流:3.5A
電圧:500V
アルゴン流量:35SCCM(0.059Pa・m/s)
圧力:5×10−3Torr(6.6×10−1Pa)
成膜速度:5nm/秒
【0116】
次に、シード層上(薄膜銅層上)に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚10μmのめっきレジスト層を形成した。ついで、めっきレジスト層を1000mJ/cmの条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、L/S=10μm/10μmのレジストパターンを形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ約5μmの第3の配線106cを形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線パターンを形成した。
【0117】
(工程g)
この後、(工程d)〜(工程f)までを再度繰り返し、ビルドアップ層及び外部接続端子107を含む最外層の配線をさらに一層形成した。
【0118】
最後にソルダーレジスト109を形成して、その後、外部接続端子107および半導体チップ接続端子に金めっき処理を施し、図1(1パッケージ分の断面図)、図5(1パッケージ分の平面図)、及び図7(半導体チップ搭載基板全体図)に示すようなファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板を作製した。
【0119】
(工程h)
前記(工程a)〜(工程g)により作製された半導体チップ搭載基板の半導体チップ搭載領域に、接続バンプ112が形成された半導体チップ111を、フリップチップボンダを用いて超音波を印加しながら必要な数だけ搭載した。さらに、半導体チップ搭載基板と半導体チップの隙間に、半導体チップ端部からアンダーフィル材113を注入し、オーブンを用いて80℃で1時間の1次硬化及び150℃で4時間の2次硬化を行った。次に、外部接続端子107に直径0.45mmの鉛・錫共晶はんだボール114をNリフロー装置を用いて融着した。最後に、幅200μmのブレードを装着したダイサーで半導体チップ搭載基板を切断し、図3に示す半導体パッケージを作製した。
【0120】
(実施例2)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗を行い、85℃で30分間乾燥する還元処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0121】
(実施例3)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥するカップリング処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0122】
(実施例4)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリン(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0123】
(実施例5)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0124】
(実施例6)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリン(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行い、その後さらに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥するカップリング処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0125】
(実施例7)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥するカップリング処理工程を行い、その後さらに、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0126】
(実施例8)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗する還元処理工程を行いその後さらに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥するカップリング処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0127】
(実施例9)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗する還元処理工程を行い、その後さらに、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリン(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0128】
(実施例10)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗する還元処理工程を行い、その後さらに、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0129】
(実施例11)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗する還元処理工程を行い、その後さらに、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−メルカプトプリン(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行い、その後さらに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥するカップリング処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0130】
(実施例12)
(工程d−2)において第2の配線106b表面に酸化銅の結晶を形成した後、(工程d−3)におけるビルドアップ層104を形成する前に、当該第2の配線106b表面を5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗する還元処理工程を行い、その後さらに、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量%水溶液に30℃で3分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥するカップリング処理工程を行い、その後さらに、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール(和光純薬工業株式会社製、商品名)の濃度が10ppmであるエタノール溶液に25℃で10分間浸漬し、さらに1分間水洗し、85℃で30分間乾燥する腐食抑制処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0131】
(実施例13)
(工程d−2)において用いた置換パラジウムめっき液SA−100(日立化成工業株式会社、製品名)に代えて、置換金めっき液HGS−500(日立化成工業株式会社、製品名)を用い、当該置換金めっき液に第2の配線106b表面を30℃で1分間浸漬して、配線表面に銅よりも貴な金属である金めっきを1.0μmol/dm施し、1分間水洗した後、さらに、りん酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に0.03mg/cmの酸化銅の結晶を形成し、さらにこの後、5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗を行い、85℃で30分間乾燥する還元処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0132】
(実施例14)
(工程d−2)において用いた置換パラジウムめっき液SA−100(日立化成工業株式会社、製品名)に代えて、硝酸銀7.5g/L、水酸化アンモニア75g/L、チオ硫酸ナトリウム5水和物30g/Lをそれぞれ含む置換銀めっき液を用い、当該置換銀めっき液に第2の配線106b表面を30℃で20秒間浸漬して、配線表面に銅よりも貴な金属である銀めっきを1.0μmol/dm施し、1分間水洗した後、さらに、りん酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に50℃で3分間浸漬することで、第2の配線106b表面に0.05mg/cmの酸化銅の結晶を形成し、さらにこの後、5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗を行い、85℃で30分間乾燥する還元処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0133】
(比較例1)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきを行わずに、第2の配線106b表面を酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、当該配線表面に0.50mg/cmの酸化銅の結晶を形成した以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0134】
(比較例2)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきを行わずに、第2の配線106b表面を酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、当該配線106b表面に0.50mg/cmの酸化銅の結晶を形成し、さらにこの後、5分間水洗し、還元処理液HIST−100D(日立化成工業株式会社製、商品名)に40℃で3分間浸漬し、さらに10分間水洗を行い、85℃で30分間乾燥する還元処理工程を行った以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0135】
(比較例3)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)における置換パラジウムめっきおよび酸化処理を行わずに、第2の配線106b表面をマイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック株式会社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬し、水洗した後、常温にて3.6Nの硫酸水溶液に60秒間浸漬し、更に水洗を1分間行い、85℃で30分間乾燥させた以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0136】
(比較例4)
(工程d)の(工程d−1)における前処理を行った後、(工程d−2)の工程を行わなかった。すなわち、凹凸形成処理を行わなかった。それ以外は、実施例1と同様にしてファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板及び半導体パッケージを作製した。
【0137】
(実施例15)
本発明の銅表面処理後における銅表面の接着性、清浄度、平滑度、光沢性、表面形状を評価するために、18μmの電解銅箔GTS−18(古河サーキットフォイル株式会社製、商品名)を5cm×8cm×5枚(接着試験用、銅表面清浄度評価用、銅表面平滑度評価用、銅表面形状評価用、銅表面光沢評価用)に切り出し、各電解銅箔の片面に、実施例1の(工程d−1)および(工程d−2)に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成および酸化処理)を施し、電解銅箔の試験片を作製した。
【0138】
(実施例16)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0139】
(実施例17)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0140】
(実施例18)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0141】
(実施例19)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例5に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0142】
(実施例20)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例6に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0143】
(実施例21)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例7に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、カップリング処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0144】
(実施例22)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例8に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0145】
(実施例23)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例9に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0146】
(実施例24)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例10に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0147】
(実施例25)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例11に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0148】
(実施例26)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例12に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0149】
(実施例27)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例13に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(金)形成および酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0150】
(実施例28)
電解銅箔に対する表面処理として、実施例14に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(銀)形成および酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0151】
(比較例5)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および酸化処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0152】
(比較例6)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0153】
(比較例7)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理およびエッチング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0154】
(比較例8)
電解銅箔に対する表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および凹凸形成処理なし)と同様の表面処理を施した以外は、実施例15と同様に電解銅箔の試験片を作製した。
【0155】
(実施例29)
(工程d)における本発明の銅表面処理によって、配線間の絶縁抵抗値、耐PCT性を評価するために、以下のような評価用基板を作製した。
【0156】
(工程a’)
図9および図10に示すコア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面に層間絶縁層104を次のように形成した。すなわち、シアネートエステル系樹脂組成物の絶縁ワニスをスピンコート法により、条件1500rpmで、ガラス基板上に塗布し、厚み20μmの樹脂層を形成した後、常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、230℃で80分間保持することにより熱硬化し、層間絶縁層104を形成した。その後、実施例1の(工程a)により厚さ200nmの銅薄膜118のみを形成した。
【0157】
次に、銅箔膜上に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚10μmのめっきレジスト層を形成した。ついで、めっきレジスト層を1000mJ/cmの条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、レジストパターン119を形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ約5μmの配線106を形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去し、配線106を形成した。
【0158】
(工程d’)
上記(工程a’)で形成した配線106に対し、実施例1の(工程d−1)および(工程d−2)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理)を施した後、図9に示す層間絶縁層(ビルドアップ層)104と図10に示すソルダーレジスト109をそれぞれ形成し、図11に示すL/S=5μm/5μm、図12に示すL/S=10μm/10μmの評価用基板をそれぞれ32枚作製した。
【0159】
(実施例30)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0160】
(実施例31)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0161】
(実施例32)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0162】
(実施例33)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例5に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0163】
(実施例34)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例6に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0164】
(実施例35)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例7に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、カップリング処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0165】
(実施例36)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例8に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0166】
(実施例37)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例9に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0167】
(実施例38)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例10に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0168】
(実施例39)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例11に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0169】
(実施例40)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例12に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0170】
(実施例41)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例13に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(金)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0171】
(実施例42)
上記(工程d’)における各表面処理として、実施例14に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(銀)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0172】
(比較例9)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および酸化処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0173】
(比較例10)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0174】
(比較例11)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理およびエッチング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0175】
(比較例12)
上記(工程d’)における各表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および凹凸形成処理なし)と同様の表面処理を施した以外は、実施例29と同様に評価用基板を作製した。
【0176】
(実施例43)
本発明の銅表面処理をレジストパターン形成前処理として用いた時のレジストパターン形成性および配線形成性を評価するために、以下のような評価用基板を作製した。
【0177】
(工程a’)
図9および図10に示すコア基板100として0.4mm厚のソーダガラス基板(熱膨張係数11ppm/℃)を用意し、片面に層間絶縁層104を次のように形成した。すなわち、シアネートエステル系樹脂組成物の絶縁ワニスをスピンコート法により、条件1500rpmで、ガラス基板上に塗布し、厚み20μmの樹脂層を形成した後、常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、230℃で80分間保持することにより熱硬化し、層間絶縁層104を形成した。その後、実施例1の(工程a)により銅薄膜118のみを形成した。
【0178】
更に、上記で形成した銅薄膜118に対して、実施例1の(工程d−1)および(工程d−2)記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理)を施した。
【0179】
次に、銅表面処理された銅箔膜上に、スピンコート法でめっきレジストPMER P−LA900PM(東京応化工業株式会社製、商品名)を塗布し、膜厚10μmのめっきレジスト層を形成した。ついで、めっきレジスト層を1000mJ/cmの条件で露光した後、PMER現像液P−7Gに23℃で6分間浸漬し、レジストパターン119を形成した。その後、硫酸銅めっき液を用いて電気銅めっきを行い、厚さ約5μmの配線106を形成した。めっきレジストの剥離は、メチルエチルケトンを用いて室温(25℃)で1分間浸漬して行った。また、シード層のクイックエッチングには、CPE−700(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名)の5倍希釈液を用いて、30℃で30秒間浸漬揺動することにより、これをエッチング除去して配線106を形成し、図11に示すL/S=5μm/5μm、図12に示すL/S=10μm/10μmの評価用基板をそれぞれ32枚作製した。
【0180】
(実施例44)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0181】
(実施例45)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0182】
(実施例46)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0183】
(実施例47)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例5に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0184】
(実施例48)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例6に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0185】
(実施例49)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例7に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、カップリング処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0186】
(実施例50)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例8に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0187】
(実施例51)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例9に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0188】
(実施例52)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例10に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0189】
(実施例53)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例11に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0190】
(実施例54)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例12に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0191】
(実施例55)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例13に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(金)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0192】
(実施例56)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例14に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(銀)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0193】
(比較例13)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および酸化処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0194】
(比較例14)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0195】
(比較例15)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理およびエッチング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0196】
(比較例16)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および凹凸形成処理なし)と同様の表面処理を施した以外は、実施例43と同様に評価用基板を作製した。
【0197】
(実施例57)
本発明の銅表面処理によるピンクリング発生有無を評価するために、以下のような評価用基板を作製した。
【0198】
実施例43の(工程a’)と同様にして形成した銅薄膜118上に電気めっきを施した後、(工程a’)の各表面処理(前処理及び貴金属形成、酸化処理)を行った後、配線形成工程(レジスト塗布、露光、現像、電気めっき、レジスト剥離、エッチング)を行わずに、当該表面処理後の銅表面に、シアネートエステル系樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグのGXA−67N(日立化成工業株式会社製、商品名)を重ね、3.0MPaの圧力で常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、230℃において1時間保持することにより積層接着した。
【0199】
その後、上記で得た積層体に、レーザーにより、穴径0.1mm、0.2mm、0.3mmの穴をそれぞれ20個形成し、ピンクリング発生有無評価用基板を作製した。
【0200】
(実施例58)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0201】
(実施例59)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0202】
(実施例60)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0203】
(実施例61)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例5に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0204】
(実施例62)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例6に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0205】
(実施例63)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例7に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0206】
(実施例64)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例8に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理およびカップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0207】
(実施例65)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例9に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0208】
(実施例66)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例10に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理および腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0209】
(実施例67)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例11に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0210】
(実施例68)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例12に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0211】
(実施例69)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例13に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(金)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0212】
(実施例70)
上記(工程a’)における各表面処理として、実施例14に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(銀)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0213】
(比較例17)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および酸化処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0214】
(比較例18)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、酸化処理および還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0215】
(比較例19)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理およびエッチング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0216】
(比較例20)
上記(工程a’)における各表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理および凹凸形成処理なし)と同様の表面処理を施した以外は、実施例57と同様に評価用基板を作製した。
【0217】
(実施例71)
本発明の銅表面処理によって、金めっき処理した時の外観を評価するために、以下のような評価用基板を作製した。
【0218】
実施例2に示す(工程a)から(工程f)まで行い、その後(工程g)において、(工程d)から(工程f)までを再度繰り返し、ビルドアップ層104及び外部接続端子107を含む最外層の配線をさらに一層形成した。
【0219】
次に、上記で形成した配線に対し、実施例1の(工程d−1)および(工程d−2)に記載された各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理)を施した。その後、ソルダーレジスト109を形成し、さらに、外部接続端子107部分への金めっき処理を行い、図1(1パッケージ分の断面図)、図5(1パッケージ分の平面図)、及び図7(半導体チップ搭載基板全体図)に示すようなファン−インタイプBGA用半導体チップ搭載基板(評価用基板)を作製した。
【0220】
なお、上記金めっき処理は、下記(1)〜(4)の手順に従って行った。
【0221】
(1)ソルダーレジスト109形成後の評価用基板を、水で200ml/Lに調整した酸性脱脂液Z−200(ワールドメタル社製、商品名)に液温50℃で2分間浸漬した後、液温50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、さらに1分間水洗した。
【0222】
(2)次いで、3.6Nの硫酸水溶液に1分間浸漬し、1分間水洗した後、置換パラジウムめっき液SA−100(日立化成工業株式会社、製品名)に30℃で3分間浸漬して、外部接続端子107部分に選択的にパラジウムを施し、1分間水洗した。
【0223】
(3)次に、無電解ニッケルめっき液NIPS−100(日立化成工業株式会社、製品名)に85℃で15分間浸漬して、外部接続端子107部分に選択的にニッケルを5μm施し、1分間水洗した。
【0224】
(4)次に、置換金めっき液HGS−500(日立化成工業株式会社、製品名)に85℃で10分間浸漬して、外部接続端子107部分に選択的に金を0.05μm施し、1分間水洗した後、無電解金めっき液HGS−2000(日立化成工業株式会社、製品名)に60℃で40分間浸漬して、外部接続端子部分に選択的に金を0.5μm施し、5分間水洗し、85℃で30分間乾燥させた。
【0225】
(実施例72)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0226】
(実施例73)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0227】
(実施例74)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0228】
(実施例75)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例5に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0229】
(実施例76)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例6に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、腐食抑制処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0230】
(実施例77)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例7に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、カップリング処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0231】
(実施例78)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例8に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0232】
(実施例79)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例9に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0233】
(実施例80)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例10に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0234】
(実施例81)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例11に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、腐食抑制処理、カップリング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0235】
(実施例82)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例12に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属形成、酸化処理、還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0236】
(実施例83)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例13に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(金)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0237】
(実施例84)
上記(工程g)における各表面処理として、実施例14に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、貴金属(銀)形成、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0238】
(比較例21)
上記(工程g)における各表面処理として、比較例1に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、酸化処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0239】
(比較例22)
上記(工程g)における各表面処理として、比較例2に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、酸化処理、還元処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0240】
(比較例23)
上記(工程g)における各表面処理として、比較例3に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、エッチング処理)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0241】
(比較例24)
上記(工程g)における各表面処理として、比較例4に記載された配線表面に対する各表面処理(前処理、凹凸形成処理なし)と同様の表面処理を施した以外は、実施例71と同様に評価用基板を作製した。
【0242】
以上のように作製した各種試験用サンプルについて、以下のようにして各評価試験を行った。
【0243】
(半導体パッケージの信頼性試験)
実施例1〜14及び比較例1〜4に記載された各々22個の半導体パッケージサンプルに対して吸湿処理を行った後、到達温度240℃、長さ2mのリフロー炉に0.5m/分の条件で各サンプルを流して、リフローを行った。その後、各サンプルについてクラック発生の有無を調べ、発生した場合をNGとした。結果を表1に示す。
【0244】
また、各々22個の半導体パッケージサンプルを厚さ0.8mmのマザーボードに実装し、−55℃、30分〜125℃、30分の条件で温度サイクル試験を行い、500サイクル目、1000サイクル目、1500サイクル目に、ヒューレットパッカード社製マルチメータ3457Aを用い、配線の導通抵抗値を測定した。測定した抵抗値が初期抵抗値より10%以上変化した場合をNGとした。結果を表1に示す。但し、比較例3については、配線精度を維持することができず、試験基板を作製することができなかった。
【0245】
(接着性試験)
低誘電正接高耐熱多層材料として使用することが可能な、厚さ0.8mmのガラス布-シアネートエステル系樹脂組成物含浸両面銅張り積層板であるMCL−LX−67(日立化成工業株式会社製、商品名)の片面を、化学エッチング粗化処理液HIST−7300(日立化成工業株式会社製)を用いて粗化処理し、その銅表面粗さRzを3.5μmとした。その後、Rz=3.5μmの銅表面に、シアネートエステル系樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグであるGXA−67N(日立化成工業株式会社製、商品名)を積層し、さらに最外層に実施例15〜28及び比較例5〜8で作製した電解銅箔1枚を積層し、3.0MPaの圧力で常温(25℃)から6℃/minの昇温速度で230℃まで加熱し、230℃において1時間保持することにより積層接着し、接着性試験用基板を作製した。なお、上記電解銅箔は、各種表面処理を施した面側において絶縁層(プリプレグ)と接着している。
【0246】
ついで、上記で得た各接着性試験用基板について、初期(0時間)の接着性、150℃で120時間および240時間放置した後の接着性を測定した。なお、上記接着性の指標となるピール強度(N/m)の測定は、レオメータNRM−3002D−H(不動工業株式会社製、商品名)を用い、電解銅箔を基板に対して垂直方向に50mm/minの速度で引き剥がして行った。ピール強度の値が300N/m以上の値を示した場合を○、300N/m未満の値を示した場合を×とした。結果を表2に示す。
【0247】
(銅表面洗浄度評価試験)
実施例15〜28及び比較例5〜8で作製した各電解銅箔の表面処理を施した面側について、純水20mlで85℃、1時間の抽出を行い、抽出液の陽イオン及び陰イオンの定性分析をイオンクロマトグラフで行った。イオンクロマトグラフはDionex社製 DX−500を用いて、以下に示した条件2で行った。
【0248】
条件2
陽イオン測定条件
溶離液:8mmol/L−メタンスルホン酸
注入量:100μL
分離カラム:2mmφ×250mm lonPac CS14
検出器:電気伝導度計
陰イオン測定条件
溶離液:2.7mmol/L−炭酸ナトリウムと0.3mmol/L−炭酸水素ナトリウムの混合液
注入量:500μL
分離カラム:4mmφ×200mm lonPac AS12A
検出器:電気伝導度計
【0249】
さらに、前記抽出液に硝酸を添加し、金属イオンの定量分析をICP発行分析法で行った。ICP発行分析法はエスアイアイ・ナノテクノロジー社製 SPS3000を用いて行った。洗浄性の度合いとなる各陽イオン・陰イオンおよび各金属イオンの検出量が1μg/枚以上の値を示した場合を+++、0.1μg/枚以上かつ1μg/枚未満の値を示した場合を++、0.04μg/枚以上かつ0.1μg/枚未満の値を示した場合を+、0.04μg/枚未満の値を示した場合を−とした。結果を表3に示す。
【0250】
(銅表面平滑度評価試験)
実施例15〜28及び比較例5〜8で作製した電解銅箔の表面処理を施した面側の表面粗さ(Rz)を簡易式原子間力顕微鏡(AFM) Nanopics2100を用いて、以下に示した条件3で測定した。
【0251】
条件3
測定長さ:1μm
SCAN SPEED:1.35μm/sec
FORCE REFARENCE:160
【0252】
Rzが1nm以上かつ100nm以下のものを◎、Rzが100nmを超えかつ1000nm以下のものを○、Rzが1nm未満または1000nmを超えるものを△とした。結果を表2に示す。
【0253】
(銅表面形状評価試験)
実施例15〜28及び比較例5〜8で作製した電解銅箔の表面処理を施した面側の表面形状を調べた。走査型電子顕微鏡(S−4700:日立製作所製)による10万倍の観察で、銅表面形状が緻密且つ均一の凹凸を有するものを○、そうでないものを×とした。結果を表2に示す。但し、比較例4については、(工程d−2)を行っていないため、銅表面の凹凸を観察することはできなかった。
【0254】
(銅表面光沢評価試験)
実施例15〜28及び比較例5〜8で作製した電解銅箔の表面処理を施した面側を目視により観察し、表面光沢の有無を調べた。無光沢のものを○、光沢のあるものを×とした。結果を表2に示す。
【0255】
(配線への銅表面処理による配線間の絶縁性)
実施例29〜42及び比較例9〜12に記載された各評価用基板について、以下のようにして、L/S=5/5μmおよびL/S=10/10μmの配線間の短絡および配線の断線が無い評価基板4枚を選び、配線間の絶縁抵抗値を測定した。ただし、比較例11の評価基板については、配線精度を維持することができなかったため、測定を行わなかった。
【0256】
まず、アドバンテスト株式会社社製R−8340A型デジタル超高抵抗微小電流計を用いて、L/S配線間に室温でDC5Vの電圧を30秒間印加し、L/S配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、1GΩ以下の絶縁抵抗測定には、株式会社ヒューレット・パッカード(HP)社製デジタルマルチメータ3457Aを用いた。
【0257】
次に、85℃・相対湿度85%に保った恒湿恒温層中で、L/S配線間に連続的にDC5Vの電圧を印加し、24h、48h、96h、200h、500h、1,000h後に上記と同様にL/S配線間の絶縁抵抗値を測定した。なお、恒湿恒温槽は株式会社日立製作所製EC−10HHPS型恒湿恒温を用い、投入後1000時間まで測定した。
【0258】
以上のようにして測定した評価基板4枚について、絶縁抵抗値の最小値が、1GΩ未満の場合には×とし、1.0×10Ω以上の場合には○とした。結果を表4、表5に示す。
【0259】
(レジストパターン形成評価試験)
実施例43〜56及び比較例13〜16に記載された(工程a’)において、レジストパターン119の形成成功率の評価をした。評価方法は、配線が形成される箇所にレジスト残さ、あるいは形成されたレジストの剥れがなく、且つ、各L/Sのレジストが形成されたレジスト幅を測定し、各L/Sレジスト幅の設計値に対する誤差が±10%以内のものを良品とし、その割合を調べた。結果を表6に示す。ただし、比較例15の評価基板については、銅表面処理を行うことにより、銅薄膜118が消失するため、測定を行わなかった。
【0260】
(配線形成評価試験)
実施例43〜56及び比較例13〜16に記載された(工程a’)において、配線106の形成成功率の評価をした。評価方法は、配線間の短絡あるいは配線の断線がなく、且つ、銅めっき厚の設計値5μmに対する誤差が±10%以内のものを良品とし、その割合を調べた。結果を表6に示す。ただし、比較例15の評価基板については、銅表面処理を行うことにより、銅薄膜118が消失するため、測定を行わなかった。
【0261】
(耐PCT性評価試験)
実施例29〜42及び比較例9〜12に記載された評価用基板について、耐PCT試験(121℃、200h、0.2MPa)を行った。評価方法は、耐PCT試験後の配線106と絶縁層(ビルドアップ層)104間、絶縁層104と絶縁層(ビルドアップ層)104間および配線106とソルダーレジスト109間、絶縁層104とソルダーレジスト109間に膨れおよび剥がれが無いものを良品とし、その割合を調べた。結果を表7に示す。但し、比較例11については、形成した配線が消失するために、試験基板を作成することができなかった。
【0262】
(ピンクリング発生有無評価試験)
実施例57〜70及び比較例17〜20に記載された各評価用基板について、18%塩酸に3h浸漬し、穴周辺にピンク色のリング(ピンクリング)が発生する割合を調べた。結果を表8に示した。
【0263】
(金めっき外観およびソルダーレジスト状態の評価)
実施例71〜84及び比較例21〜24に記載された評価用基板について、その金めっき外観を、目視あるいは顕微鏡により観察し、金めっきのムラが無い場合を○、金めっきのムラが有る場合を△、金めっき未析出の場合を×とした。また、ソルダーレジストの状態として、剥がれおよびソルダーレジスト下への金めっき析出の無いものを○、そうでないものを×とした。結果を表9に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0264】
表1に示すように、実施例1〜14で作製した半導体パッケージのうち、アルカリ性溶液による酸化処理後に還元処理を行った実施例2、8〜14については、極めて良好な信頼性を示した。
【0265】
また、表2に示すように、実施例15から28で作製した電解銅箔は、緻密且つ均一な数十ナノレベルの凹凸をその表面に有することで銅表面の光沢を抑制し、さらに、その表面と絶縁層との150℃・240h放置後の接着強度(ピール強度)は、300N/m以上であり良好であった。また、表3に示すように、実施例15から28で作製した電解銅箔の表面処理を施した面から各種イオンは検出されなかったことから、当該表面の洗浄性は良好であるといえる。
【0266】
また、表4および表5に示すように、実施例29から42で作製した評価基板における配線間絶縁信頼性は、L/S=5/5μmおよびL/S=10/10μmのいずれにおいても極めて良好であった。また、表6に示すように実施例43から56で作製した評価基板におけるレジストパターン形成成功率は、L/S=5/5μmおよびL/S=10/10μmにおいても極めて良好であった。また、表6に示すように実施例43から56で作製した評価基板における配線形成成功率は、L/S=5/5μmおよびL/S=10/10μmにおいても極めて良好であった。また、表7に示すように実施例29から42で作製した評価基板における耐PCT性は、ビルドアップ層と配線間、ビルドアップ層と絶縁層間およびソルダーレジストと配線間、ソルダーレジストと絶縁層間のいずれにおいても極めて良好であった。
【0267】
また、表8に示すように、実施例57から70で作製した評価基板のうち、還元処理を行った実施例58、64〜70についてはピンクリングの発生は無く、極めて良好であった。
【0268】
また、表9に示すように、実施例71から84で作製した評価基板における金めっきの外観は、極めて良好であり、還元処理を行った実施例72、78〜84については金めっき処理によって、ソルダーレジストの剥がれおよびソルダーレジスト下への金めっき析出はなく、極めて良好であった。
【0269】
一方、従来技術では、比較例1から24で示したように、平滑性、接着性、銅表面の形状、銅表面の光沢、銅表面洗浄性、配線間絶縁信頼性、レジストパターン形成、配線形成、耐PCT性、金めっき処理による特性の全てを満足することはできなかった。
【0270】
したがって、本発明の銅の表面処理方法によれば、銅表面に数十ナノレベルの緻密且つ均一な微細凹凸を形成することができるため、当該銅表面と絶縁層との接着強度を向上させることが可能となる。また、この結果、ピンクリングが発生することなく、配線間絶縁信頼性、微細配線形成に優れた配線板及び半導体チップ搭載基板、さらに耐リフロー性、温度サイクル性、外部接続端子への金めっき処理に優れた半導体パッケージを製造することが可能となる。
【0271】
前述したところが、この発明の好ましい実施態様であること、多くの変更及び修正をこの発明の精神と範囲とにそむくことなく実行できることは当業者によって了承されよう。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【図1】本発明の一実施形態が適用される半導体チップ搭載基板の断面図。
【図2】(a)〜(g)は本発明の半導体チップ搭載基板の製造方法の一実施形態を示す工程図。
【図3】本発明の一実施形態が適用されるフリップチップタイプ半導体パッケージの断面図。
【図4】本発明の一実施形態が適用されるワイヤボンドタイプ半導体パッケージの断面図。
【図5】本発明のファン−インタイプ半導体チップ搭載基板の平面図。
【図6】本発明のファン−アウトタイプ半導体チップ搭載基板の平面図。
【図7】本発明の半導体チップ搭載基板のフレーム形状を表す平面図。
【図8】本発明の一実施形態が適用される半導体チップ搭載基板の断面図。
【図9】(a’)、(d’)は本発明の試験用評価基板製造方法の一実施形態を示す工程図。
【図10】(a’)、(d’)は本発明の試験用評価基板製造方法の一実施形態を示す工程図。
【図11】本発明の一実施形態が適用される電食試験用評価基板の平面図。
【図12】本発明の一実施形態が適用される電食試験用評価基板の平面図。
【符号の説明】
【0273】
11.位置決めマーク(位置合わせ用ガイド穴)
13.半導体パッケージ領域
14.ダイボンドフィルム接着領域(フリップチップタイプ)
15.半導体チップ搭載領域(フリップチップタイプ)
16.半導体チップ接続端子
17.ダイボンドフィルム接着領域(ワイヤボンドタイプ)
18.半導体チップ搭載領域(ワイヤボンドタイプ)
19.外部接続端子
20.展開配線
21.ダミーパターン
22.半導体チップ搭載基板
23.ブロック
24.補強パターン
25.切断位置合わせマーク
100 コア基板
101 第1の層間接続端子
102 第1の層間接続用IVH(バイアホール)
103 第2の層間接続端子
104 層間絶縁層(ビルドアップ層)
105 第3の層間接続用IVH(バイアホール)
106 配線
106a 第1の配線
106b 第2の配線
106c 第3の配線
107 外部接続端子
108 第2の層間接続用IVH(バイアホール)
109 絶縁被覆(ソルダーレジスト)
111 半導体チップ
112 接続バンプ
113 アンダーフィル材
114 はんだボール
115 金ワイヤ
116 半導体用封止樹脂
117 ダイボンドフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成する工程、その後、前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理する工程を有する、銅の表面処理方法。
【請求項2】
前記銅表面を酸化処理する工程後、さらに還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理からなる群から選択される1つ以上の処理を行う工程を有する、請求項1に記載の銅の表面処理方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の銅の表面処理方法。
【請求項4】
前記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、または前記金属を含む合金である、請求項1〜3のいずれかに記載の銅の表面処理方法。
【請求項5】
前記銅よりも貴な金属の形成量が、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の銅の表面処理方法。
【請求項6】
処理後の前記銅表面の粗さが、Rzで1nm以上かつ1000nm以下である、請求項1〜5に記載の銅の表面処理方法。
【請求項7】
銅表面に銅よりも貴な金属を離散的に形成し、その後、前記銅表面を、酸化剤を含むアルカリ性溶液で酸化処理してなる銅。
【請求項8】
前記酸化処理後、さらに還元処理、カップリング処理、腐食抑制処理からなる群から選択される1つ以上の処理を施してなる、請求項7に記載の銅。
【請求項9】
前記酸化剤が、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩からなる群から選択される1種以上である、請求項7または8に記載の銅。
【請求項10】
前記銅よりも貴な金属が、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択される金属、または前記金属を含む合金であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の銅。
【請求項11】
表面に形成された前記銅よりも貴な金属の量が、0.001μmol/dm以上かつ40μmol/dm以下である、請求項7〜10のいずれかに記載の銅。
【請求項12】
処理後の前記銅表面の粗さが、Rzで1nm以上かつ1000nm以下である、請求項7〜11に記載の銅。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−262579(P2007−262579A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87884(P2007−87884)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【分割の表示】特願2007−507199(P2007−507199)の分割
【原出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】