説明

銅含有積層膜用エッチング液

【課題】Cu金属膜とCu合金酸化物層を一括でエッチングするための、銅合金酸化物膜の溶解を制御することが可能で、とくに一括エッチングの対象となる積層において、Cu合金酸化物層を含む全ての層の溶解が適度なバランスで進む条件を実現するエッチング液およびエッチング方法を提供する。
【解決手段】基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングするためのエッチング液であって、過酸化物および有機酸を含む、前記エッチング液、および、基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングする方法であって、過酸化物および有機酸を含むエッチング液を用いてエッチングする工程を含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等に用いる積層膜のエッチング液に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示面積が大型化すると、薄膜トランジスタと接続されるゲート線およびデータ線が長くなり、それらの配線の抵抗も高くなるため、信号遅延などの問題が生じる。従来の液晶表示装置の金属配線にはAlが使用されているが、大型基板についてはより抵抗の低いCu配線が使用されている。
【0003】
Cu配線の場合のバリアメタルには、Cuが半導体膜へ拡散するのを防止するため、また半導体膜との密着性の向上のため、Ti、Mo、Crなどの金属膜が使用される。すなわち、Cu/Mo、Cu/Ti、Cu/Crなどの積層膜構成となる。このような積層膜構造をエッチング加工する場合、Cu膜のエッチング加工を行い、続いて下地膜であるMoやTiのエッチング加工を行う2段階方式と、Cu/MoまたはCu/Ti積層膜を一液で一度にエッチング加工を行う一括加工方式との2つの方法がある。後者の一括加工方式が、作業工程としては有利であるが、耐食性の異なる金属積層膜を一液でエッチングすることが難しい上に、電池効果などの影響も考慮すると積層膜を段差のないテーパー形状に一括エッチングすることは容易ではない。さらに、配線の加工精度から横方向に過度のエッチングが起こること(サイドエッチング)は、極力避けなければならないことから、一括エッチング液の開発は極めて困難となる。
【0004】
このような背景において、それぞれ層を構成する各金属に有効な酸化剤を選択することでCu/MoやCu/Ti並びにCu/Crなどの一括エッチング方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、Cu溶解の酸化剤としてペルオキソ一硫酸一水素カリウムを用いたエッチング技術が記載され、下地積層金属に合わせて各種酸を組み合わせたエッチング液について検討されている。すなわち、ペルオキソ一硫酸一水素カリウムを必須成分とし、Cu/Tiの場合は、さらにフッ酸またはペルオキソ硫酸塩とフッ化物とを組合わせ、Cu/Moの場合は、さらにリン酸と硝酸とを組合わせ、Cu/Crの場合は、さらに塩酸を組み合わせたエッチング組成物が示されている。
【0005】
また、特許文献2〜4には、Cu溶解の酸化剤として過酸化水素を用いたエッチング技術が記載され、各種有機酸もしくは中性塩、さらには各種添加物を併用することによって、Cu/MoまたはCu/Ti積層膜を同時にエッチングすることが検討されている。
最近、Cu/Mo、Cu/Ti積層膜に代わる積層膜として、銅合金酸化層を含む積層膜が開発された。これらは、下地膜としての性能に優れるだけではなく、成膜工程においても積層の各層を同一装置で成膜できるというメリットを有する。しかしながら、この新たに開発された銅合金酸化層を含む積層膜に対する効果的なエッチング方法については、全く検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3974305号公報
【特許文献2】特開2002−302780号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/105579号明細書
【特許文献4】特開2004−193620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、前記の背景技術を踏まえ、CuMg/CuMgO、CuCa/CuCaO、Cu/CuCaO、Cu/CuAlMgOなどの銅と銅合金酸化物からなる新たな積層膜を一括エッチングする技術の開発を試みる中で、例えば、Cu単層膜のエッチングやCu/Mo、Cu/Ti、Cu/Crなどの既存の銅積層膜用一括エッチングに使用されてきたFeCl、CuCl系、混酸系のエッチング液では、CuMgOやCuCaO等の下層膜の溶解性が高いため、下地膜のサイドエッチングが大きくなり、テーパー状の形が得られないなどの問題に直面した。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、前記のような問題を解決し、Cu金属層とCu合金酸化物層を一括エッチングするための、溶解性の高い銅合金酸化物層の溶解を制御することができ、さらにまた、一括エッチングの対象となる積層において、Cu合金酸化物層を含む全ての層の溶解が適度なバランスで進む条件を実現するエッチング液およびエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、驚くべきことに、過酸化物と有機酸とを含むエッチング液を用いることによって、上記の積層膜を良好に一括エッチングできることを見出し、さらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングするためのエッチング液であって、
過酸化物および有機酸を含む、前記エッチング液に関する。
さらに本発明は、銅含有積層膜が、Cu/CuXOまたはCuX/CuXO(式中、Xは、Mg、CaまたはMgAlである)である、前記のエッチング液に関する。
また本発明は、pHが3〜6である、前記のエッチング液に関する。
さらに本発明は、過酸化物が、過酸化水素である、前記のエッチング液に関する。
また本発明は、さらにキレート剤を含有する、前記のエッチング液に関する。
さらに本発明は、キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ塩、またはジエチレントリアミン五酢酸およびそのアルカリ塩である、前記のエッチング液に関する。
また本発明は、有機酸が、クエン酸またはグリシンである、前記のエッチング液に関する。
【0011】
さらに本発明は、過酸化物が、過硫酸または過硫酸塩を含む、前記のエッチング液に関する。
また本発明は、過硫酸塩が、KHSO、NaHSO、K、Naおよび(NHからなる群から選択される、前記のエッチング液に関する。
さらに本発明は、有機酸が、酢酸である、前記のエッチング液に関する。
また本発明は、基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングする方法であって、
過酸化物および有機酸を含むエッチング液を用いてエッチングする工程を含む、前記方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記の構成により、銅含有積層膜の基板と接する層が、銅酸化物層または銅合金酸化物層に対して作用させると、銅合金酸化物層の溶解速度を制御することができ、例えば、Cu/CuXO(Xは任意の金属)積層膜をテーパー形状でサイドエッチングも少ない一括エッチングを達成することができる。
これは、既存の銅積層膜用一括エッチング液はいずれも金属の酸化溶解によるものであり、銅合金酸化物積層膜の溶解は、銅の価数変化を伴わない、すなわち酸化溶解ではなく化学溶解であると考えられるところ、Cu合金酸化物膜をCuO、CuO等の酸化物と同様に考えた場合、Cuの電位−pH線状態図から、pH4以下では酸化物の安定領域はなくCuイオンとなるため、CuO、CuOの安定領域とCuイオン安定領域の境界条件付近(例えば、pH3〜6)に制御することで、Cu合金酸化物膜の溶解速度を制御することができるためであると説明することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、No.3溶液によるCuMg/CuMgO基板処理結果110sec(JET×1.5)エッチング処理後の断面観察図である(実施例3)。
【図2】図2は、No.3溶液によるCu/Mo基板処理結果171sec(JET×1.5)エッチング処理後の断面観察図である(比較例3)。
【図3】図3は、No.8溶液によるCuMg/CuMgO基板処理結果96sec(JET×1.5)エッチング処理後の断面観察図である(実施例8)。
【図4】図4は、No.9溶液によるCuMg/CuMgO基板処理結果132sec(JET×1.5)エッチング処理後の断面観察図である(実施例9)。
【図5】図5は、No.8溶液によるCu/Mo基板処理結果158sec(JET×1.2)エッチング処理後の断面観察図である(比較例8)。
【図6】図6は、No.10溶液によるCu/CuCaO基板処理結果53sec(JET×1.5)エッチング処理後の断面観察図である(実施例10)。
【図7】図7は、No.10溶液によるCu/Mo基板処理結果354sec(JET×1.5)エッチング処理後の断面観察図である(比較例10)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一態様において、基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングするためのエッチング液であって、過酸化物および有機酸を含む、前記エッチング液を提供する。
ここで基板は、半導体基板等に用いられ得る任意のものでよく、典型的には、ガラス、石英、セラミックなどが挙げられる。
【0015】
本発明において、銅含有積層膜は、銅または銅合金(銅と任意の金属の合金)の層と、銅酸化物または銅合金酸化物の層とを含む。積層は、典型的には2層であるが、3層以上であっても一括エッチングすることができる。また、銅合金層における銅以外の金属元素は、銅合金酸化物層における銅以外の金属元素を同一であっても異なっていてもよい。本発明において、好ましい銅含有積層膜は、Cu/CuXOまたはCuX/CuXO(式中、Xは、Mg、CaまたはMgAlである)である。
【0016】
本発明において、エッチング液のpHは、限定されるものではないが、積層膜種および膜厚、テーパー形状、サイドエッチング量などの観点から、3〜6が好ましく、3.5〜5.5がとくに好ましい。pHの調整は、有機酸および有機酸塩の緩衝系を利用したり、pH調整剤を加えることで行うことができる。pHが低いと、下層の銅酸化物膜の溶解が早く良好なテーパー形状が得られにくくなり、pHが高いと、Cu膜のエッチング反応が進行しないかもしくは実用的なエッチング速度ではエッチングが進行しない虞がある。
【0017】
本発明のエッチング液に用いられる酸化剤(過酸化物)は、とくに限定されないが、過酸化水素、過硫酸、過硫酸塩、過酢酸、過酢酸塩、過炭酸、過炭酸塩などが挙げられる。とくに、過酸化物の安定性、入手しやすさ、取り扱いやすさ、コストなどの観点から、過酸化水素、過硫酸、過硫酸塩が好ましい。また、過硫酸塩としては、例えば、KHSO、NaHSO、K、Na、(NHなどが挙げられる。また過酸化物は、適宜、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明において、過酸化物の濃度はとくに限定されないが、過酸化水素を用いた場合、好ましくは、0.01〜3.0mol/Lであり、より好ましくは、0.05〜2.0mol/Lであり、さらに好ましくは、0.1〜1.0mol/Lである。過酸化水素の濃度が低いと、エッチング速度が遅くなり、高いとエッチング速度が早くなりすぎて、得られるパターンのコントロールが困難になる虞がある。
【0019】
また、過硫酸または過硫酸塩を用いた場合、過硫酸の濃度は、好ましくは、0.01〜3.0mol/Lであり、より好ましくは、0.05〜2.0mol/Lであり、さらに好ましくは、0.1〜1.0mol/Lである。過硫酸の濃度が低いと、エッチング速度が遅くなり、高いとエッチング速度が早くなりすぎて、得られるパターンのコントロールが困難になる虞がある。
【0020】
本発明のエッチング液に用いられる有機酸は、とくに限定されないが、クエン酸、グリシン、酢酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、フタル酸などが挙げられる。とくに、pH緩衝能力と溶解性、入手のしやすさ、コストなどの観点から、クエン酸、グリシン、酢酸が好ましい。また有機酸は、適宜、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明において、有機酸の濃度はとくに限定されないが、0.05〜5.0mol/Lであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3.0mol/L、とくに好ましくは0.1〜2.0mol/Lであり、さらに好ましくは0.1〜1.0mol/Lである。有機酸濃度が低いと、pH緩衝剤としての働きが不十分となり、エッチング液を所定pH範囲内に維持することが困難になる。また有機酸濃度が高いと、溶解性の問題が生じ、高濃度化による効果が十分には得られない虞がある。
【0022】
本発明のエッチング液に用いられるキレート剤は、とくに限定されないが、エチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ塩、ジエチレントリアミン五酢酸およびそのアルカリ塩、ニトリロ三酢酸およびそのアルカリ塩などが挙げられる。とくに、キレート化能力、キレート剤の溶解性などの観点から、エチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ塩、ジエチレントリアミン五酢酸およびそのアルカリ塩が好ましい。またキレート剤は、適宜、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。かかるキレート剤を配合することにより、エッチングによって溶解したCu、Ca、Mgなどの金属イオンをキレート化することで、エッチング反応物の溶液内析出を抑える効果があり、例えば、Cuイオンによる過酸化水素の分解反応を抑制することができる。
【0023】
本発明において、キレート剤の濃度はとくに限定されないが、0.01〜0.2mol/Lであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.15mol/Lであり、さらに好ましくは0.05〜0.1mol/Lである。キレート剤濃度が低いと、キレート剤としての働きが不十分であり、高いと溶解度不足で均一溶液とならない虞がある。
【0024】
本発明において、過酸化物として過酸化水素を用いた場合、有機酸としてクエン酸またはグリシンを用いることが好ましい。またこの場合、さらにキレート剤として、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウムを含むことが好ましい。このように、過酸化水素、有機酸およびキレート剤を含む場合、それぞれの濃度は、とくに限定されないが、例えば、過酸化水素0.01〜3.0mol/Lに対して、有機酸は、0.05〜3.0mol/L、好ましくは、0.1〜2.0mol/L、さらに好ましくは、0.1〜1.0mol/Lであり、キレート剤は、0.01〜0.2mol/L、好ましくは、0.03〜0.15mol/L、さらに好ましくは、0.05〜0.1mol/Lとすることができる。
【0025】
本発明において、過酸化物として過硫酸または過硫酸塩を用いた場合、有機酸として酢酸を用いることが好ましい。この場合、それぞれの濃度は、とくに限定されないが、例えば、過硫酸または過硫酸塩0.01〜3.0mol/Lに対して、酢酸は、0.05〜5.0mol/L、好ましくは、0.1〜3.0mol/L、さらに好ましくは0.1〜1.0mol/Lとすることができる。酢酸濃度が低いと、pH緩衝剤としての働きが不十分で、エッチング液を所定pH範囲内に維持することが困難となり、高いと酢酸の臭気の問題もあり、また高濃度化による効果も十分には得られない虞がある。
【0026】
本発明のエッチング方法は、一態様において、基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングする方法であって、過酸化物および有機酸を含むエッチング液を用いてエッチングする工程を含む、前記方法である。
したがって、エッチング対象が銅含有積層膜の基板と接する層が、銅酸化物層または銅合金酸化物層であること、エッチング液として過酸化物および有機酸を含むエッチング液を用いること以外は、とくに限定されず、適宜、従来から用いられているエッチングのための工程を用いることができる。
【実施例】
【0027】
1.CuMg/CuMgO/glass基板処理(実施例1〜6)
ガラス基板上に500ÅのCuMgO膜をスパッタリングし、さらにその上に3000ÅのCuMg膜をスパッタリングしてCuMg/CuMgO二重積層膜を形成した。さらに、このCuMg/CuMgO二重積層膜上にフォトレジストコーティングした後、選択的に露光および現像して、エッチングマスクを形成した。表1に示すエッチング液(No.1〜6)を調製し、上記基板を液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
【0028】
【表1】

【0029】
液No.1〜6を用いてCuMg/CuMgO/glass基板を処理した結果を表2に示す。
【表2】

【0030】
実施例1〜6ではいずれも、断面がテーパー形状となり、サイドエッチング量も1.0〜1.6μmと比較的少なく抑えられている。また、ガラス基板上に、エッチング残渣等も認められなかった。
また、典型的な断面観察図(走査型電子顕微鏡(SEM)による写真。倍率:40,000倍)を図1(No.3溶液によるCuMg/CuMgO基板処理結果110sec(JET×1.5)エッチング処理後(実施例3))に示す。
【0031】
2.Cu/Mo/glass基板処理(比較例2〜6)
ガラス基板上に250ÅのMo膜をスパッタリングし、さらにその上に4000ÅのCu膜をスパッタリングしてCu/Moの二重積層膜を形成した。さらに、このCu/Mo二重積層膜上にフォトレジストコーティングした後、選択的に露光および現像して、エッチングマスクを形成した。実施例と同様に表1に示すエッチング液(No.2〜6)を調製し、上記基板を液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
液No.2〜6を用いてCu/Mo/glass基板を処理した結果を表3に示す。
なお、比較例1となるべき液No.1を用いた実験は、該液No.1のpHが3.3であり、液No.2〜6の結果から形状が不良となることが明らかなため行わなかった。
【0032】
【表3】

【0033】
Cu/Mo二重積層膜では、どの処理液においても、下地Mo膜の溶解が速く進むため断面形状は『くの字型』となり、正常な配線を形成することは困難であった。本態様におけるエッチング液組成物はCuX/CuXO二重積層膜用に調整したものであり、銅合金酸化物膜が適切な速度で溶解することがポイントである。そのため、単純に既存Cu/Mo二重積層膜へ適用することはできない。
また、典型的な断面観察図(走査型電子顕微鏡(SEM)による写真。倍率:40,000倍)を図2(No.3溶液によるCu/Mo基板処理結果171sec(JET×1.5)エッチング処理後(比較例3))に示す。
【0034】
3.CuMg/CuMgO/glass基板処理(実施例7〜9)
実施例1〜6で用いた基板と同様のCuMg/CuMgO二重積層膜を用意し、下記表4に示す液(No.7〜9)によるエッチング処理を実施した。液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行い、目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
【0035】
【表4】

【0036】
液No.7〜9を用いてCuMg/CuMgO/glass基板を処理したを表5に示す。
【表5】

【0037】
実施例7〜9ではいずれも、断面がテーパー形状となり、サイドエッチング量も0.9〜1.3μmと比較的少なく抑えられている。また、ガラス基板上に、エッチング残渣等も認められなかった。
また、典型的な断面観察図(走査型電子顕微鏡(SEM)による写真。倍率:40,000倍)を図3(No.8溶液によるCuMg/CuMgO基板処理結果96sec(JET×1.5)エッチング処理後(実施例8))および図4(No.9溶液によるCuMg/CuMgO基板処理結果132sec(JET×1.5)エッチング処理後(実施例9))に示す。
【0038】
4.Cu/Mo/glass基板処理(比較例7〜9)
比較例として、前述の比較例2〜6と同様のCu/Moの二重積層膜を用い、実施例と同じく表4に示すエッチング液(No.7〜9)により、液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.2倍および1.5倍を処理時間とした。
液No.7〜9を用いてCu/Mo/glass基板を処理した結果を表6に示す。
【0039】
【表6】

【0040】
Cu/Mo二重積層膜では、どの処理液においても、下地Mo膜の溶解が速く進むため断面形状は『垂直からわずかな逆くの字型』となり、また、サイドエッチング量も3.0μm以上となり正常な配線を形成することは困難であった。本態様におけるエッチング液組成物はCuX/CuXO二重積層膜用に調整したものであり、銅合金酸化物膜が適切な速度で溶解することがポイントである。既存Cu/Mo二重積層膜へ適用することはできない。
また、典型的な断面観察図(走査型電子顕微鏡(SEM)による写真。倍率:40,000倍)を図5(No.8溶液によるCu/Mo基板処理結果158sec(JET×1.2)エッチング処理後(比較例8))に示す。
【0041】
5.各種Cu積層膜の処理(実施例10〜12および比較例10)
ガラス基板上に500ÅのCuCaO膜をスパッタリングし、さらにその上に3000ÅのCu膜をまたはCuCa膜をスパッタリングしてCu/CuCaO二重積層膜およびCuCa/CuCaO二重積層膜を作製した。また、ガラス基板上に下地層として500ÅのCuMgAlO膜をスパッタリングした後、その上に3000ÅのCu膜スパッタリングしてCu/CuMgAlO二重積層を作製した。、これらの二重積層膜にフォトレジストコーティングした後、選択的に露光および現像して、エッチングマスクを形成した。次に、表7に示すエッチング液(No.10)を調製し、上記各二重層基板について、液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
【0042】
また、比較例10として、前述の比較例2〜6と同様のCu/Moの二重積層膜を用い、実施例と同じく表7に示すエッチング液(No.10)により、液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
【表7】

【0043】
液No.10による各種Cu積層膜を処理した結果を表8に示す。
【表8】

【0044】
Cu/CuCaO、CuCa/CuCaO、Cu/CuMgAlOいずれの二重積層膜でも、断面が純テーパー形状となり、サイドエッチング量も0.6〜1.3μmと比較的少なく抑えられている。また、ガラス基板上に、エッチング残渣等も認められなかった。
断面観察図(走査型電子顕微鏡(SEM)による写真。倍率:40,000倍)を図6(No.10溶液によるCu/CuCaO基板処理結果53sec(JET×1.5)エッチング処理後(実施例10))に示す。
【0045】
一方、Cu/Mo二重積層膜では、下地Mo膜の溶解が速く進むため断面形状は『逆テーパー形状』となり、また、サイドエッチング量も3.0μmと大きく、ガラス基板上に微細粒子状の残渣も認められ、正常な配線を形成することは困難であった。本態様におけるエッチング液組成物はCuX/CuXO二重積層膜用に調整したものであり、銅合金酸化物膜が適切な速度で溶解することがポイントである。既存Cu/Mo二重積層膜への適用することはできない。
断面観察図(走査型電子顕微鏡(SEM)による写真。倍率:40,000倍)を図7(No.10溶液によるCu/Mo基板処理結果354sec(JET×1.5)エッチング処理後(比較例11))に示す。
【0046】
6.各種Cu積層膜の処理(実施例13〜15および比較例11)
実施例10〜12で用いたCu/CuCaO、CuCa/CuCaO、Cu/CuMgAlO各二重積層膜について、表4に示すエッチング液(No.7)を調製し、液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
【0047】
比較例11として、前述の比較例2〜6と同様のCu/Moの二重積層膜を用い、実施例と同じく表4に示すエッチング液(No.7)により、液温度30℃、撹拌条件で浸漬処理を行った。目視によりジャストエッチング時間(JET)を確認し、JETの1.5倍を処理時間とした。
液No.7による各種Cu積層膜を処理した結果を表9に示す。
【表9】

【0048】
Cu/CuCaO、CuCa/CuCaO、Cu/CuMgAlOいずれの二重積層膜も、断面が純テーパー形状となり、サイドエッチング量も0.5〜1.0μmと比較的少なく抑えられている。また、ガラス基板上に、エッチング残渣等も認められなかった。
【0049】
一方、Cu/Mo二重積層膜では、下地Mo膜の溶解が速く進むため断面形状は垂直となり、また、サイドエッチング量は8.3μmとなり、正常な配線を形成することは困難であった。
【0050】
本態様におけるエッチング液組成物はCuX/CuXO二重積層膜用に調整したものであり、銅合金酸化物膜が適切な速度で溶解することがポイントである。既存Cu/Mo二重積層膜へ適用することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のエッチング液およびエッチング方法は、銅含有積層膜の基板と接する層が、銅酸化物層または銅合金酸化物層である新しい半導体等の積層体基板において、テーパー形状でサイドエッチングも少ない一括エッチングを達成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングするためのエッチング液であって、
過酸化物および有機酸を含む、前記エッチング液。
【請求項2】
銅含有積層膜が、Cu/CuXOまたはCuX/CuXO(式中、Xは、Mg、CaまたはMgAlである)である、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
pHが3〜6である、請求項1または2に記載のエッチング液。
【請求項4】
過酸化物が、過酸化水素である、請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項5】
さらにキレート剤を含有する、請求項4に記載のエッチング液。
【請求項6】
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸およびそのアルカリ塩、またはジエチレントリアミン五酢酸およびそのアルカリ塩である、請求項5に記載のエッチング液。
【請求項7】
有機酸が、クエン酸またはグリシンである、請求項4〜6のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項8】
過酸化物が、過硫酸または過硫酸塩を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項9】
過硫酸塩が、KHSO、NaHSO、K、Naおよび(NHからなる群から選択される、請求項8に記載のエッチング液。
【請求項10】
有機酸が、酢酸である、請求項8または9に記載のエッチング液。
【請求項11】
基板と接する銅酸化物層または銅合金酸化物層を含む、基板上の銅含有積層膜をエッチングする方法であって、
過酸化物および有機酸を含むエッチング液を用いてエッチングする工程を含む、前記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−265524(P2010−265524A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119170(P2009−119170)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】