説明

銅回路部品およびその製造方法

【課題】
小型で、微細な配線を有する銅回路部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の銅回路部品は、3次元配線を有する銅回路部品の基材表面に配線となる凹部を形成する工程と、凹部を含む基材表面に電解めっきの導電層となる第1の金属層を形成する工程と、配線となる凹部にのみ選択的に配線となる第2の金属層を形成する工程と、配線となる凹部以外の表面に形成された第1の金属層を除去する工程と、を含む配線の形成方法によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元配線を有する電子部品に好適に用いられる微細配線,構造体およびこれを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は例えば携帯電話に代表されるように、小型化,高機能化が進み、搭載する電子部品自身の小型化が行われ、これに伴い回路基板上の配線密度の向上が図られている。このため回路基板は多層化,微細配線化が行われ、より高密度な実装を可能にする形状へと進行している。また電子部品の多様化に伴って回路基板にも多種多様な特性が求められており、特に3次元の配線パターンを有する立体回路の提案は、以前から盛んに行われていた。
【0003】
その立体回路の形成方法として、従来、凹凸形状を有する3次元的な基板表面に回路を形成した立体回路基板として、MID基板(Molded Interconnect Device)が知られている。このような立体回路基板は、小型・軽量化が要求される電子・オプトデバイスなどに適用されている。立体形状を有する基板表面に回路を形成する方法として、基材の絶縁性表面にめっき下地層を形成し、めっき下地層のうち回路部と非回路部の境界をレーザ光照射によって除去し、回路部に回路形成用のめっきを施し、その後、非回路部のめっき下地層を除去するためのライトエッチングを行うという方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基板上に金属材料(導電性材料)からなるめっき層を形成し、次いでめっき層の表面に、感光性のエッチングレジストを塗布し、そのエッチングレジストを塗布した基板の同一平面上にない複数面にマスクフィルムを通してレーザー光を照射させる露光を行い、現像によりレジストパターンを再現させて、エッチングレジストの塗布部分のめっき層を残しながら、残りのめっき層部分を化学的にエッチングして、基板上の複数面に3次元の配線パターンを形成し、その後、配線パターンの所定位置に任意の電子部品を実装することが、考えられる。
【0005】
また、射出成型部品を用いて3次元回路部品を作る際には、例えば、めっき触媒を含む樹脂を成型後に、回路となる部分以外に絶縁樹脂を再度成型する、所謂2色成型法によって、最後に露出しているめっき触媒を利用して無電解めっきによって回路を形成する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平07−66533号公報
【特許文献2】特開2007−173546号公報
【特許文献3】特開2005−217156号公報
【特許文献4】特開平11−220244号公報
【特許文献5】特許第3715866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されているように、3次元的な回路部品を形成するためには、レーザーによってレジストへ直接描画する方法が考えられるが、微細な配線を形成するためには、複雑な形状の土台へレジストを正確に塗る工程や各々の配線を高精度に位置合わせるなどの煩雑な工程が必須であり、配線の微細化、しいては部品の小型化が困難であるという課題があった。また、特許文献3に示されるようにフォトレジストを用いた場合には、部品の上面と下面の位置合せや側面との位置ずれなどが生じやすく、配線の微細化は困難であった。更に、これらの方式では、配線と配線の間隔が狭くなると配線の側面において電界の影響によりマイグレーションが発生し、高密度な配線にすることが難しいという課題もあった。更に、レーザーや露光において側面を高精度に加工することは困難であり、側面などが垂直面にすることが難しいという課題もあった。また、配線が基材から凸状となっているため、土台のハンドリングの際に配線部の密着性が不十分であると剥れてしまったり、他の部材との接触によって配線が傷ついたりするという課題もあった。
【0008】
特許文献2,4では成型方法として所謂2色成型法を用いることで、無電解めっきの触媒を配線部だけに露出させる方法が提案されている。しかしながら、この方法では高価な金属であるパラジウムを多量に含んだ樹脂を成型で必要とし、更に後から成型する絶縁樹脂を高精細に形成することが困難であるため、配線を微細化することが難しい。
【0009】
また、以上のような方式では、構造体の外表面への配線形成はできるものの、円筒や管などの構造体内面への配線形成が困難であり、回路部品の小型化には課題があった。
【0010】
上記に鑑み、本発明は、配線の高密度化,微細化に対応することのできる配線パターンを、精密かつ低コストに3次元的な銅回路を形成した銅回路部品およびその形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の銅回路部品は、銅回路の土台となる絶縁基材に3次元の配線パターンを有する銅回路部品において、前記配線は前記絶縁基材に埋設されていることを特徴とする。また、絶縁基材の表面に配線となる3次元パターン状に凹部があって、凹部には第1の金属層と配線となる第2の金属とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の銅回路部品は、3次元配線を有する銅回路部品の基材表面に配線となる凹部を形成する工程と、凹部を含む基材表面に電解めっきの導電層となる第1の金属層を形成する工程と、配線となる凹部にのみ選択的に配線となる第2の金属層を形成する工程と、配線となる凹部以外の表面に形成された第1の金属層を除去する工程と、を含む配線の形成方法によって製造される。
【0013】
また、第2の金属層が銅であり、第2の金属層を形成する工程で使用されるめっき液が、第1の金属層表面に配線となる金属に対して析出過電圧を大きくする物質を含むめっき液、酸性の硫酸銅電気銅めっき液であり、回転ディスク電極で測定した分極曲線において、電極が静止時に対して電極は1000rpmで回転した時の電流値が1/100以下となる電位領域を有する特性のめっき液、あるいは、酸性の硫酸銅電気銅めっき液であり、回転ディスク電極で測定した分極曲線が、標準水素電極電位に対して100〜200mVの範囲では静止時に対して1000rpmの電流値が1/100以下であり、−100mV以下では、静止時よりも回転時の方が電流値が大きくなる特性のめっき液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微細な配線を精度良く、3次元立体的な配線構造の銅回路部品を提供することが可能となる。また、上記バリヤ膜を有する配線構造とすることで、高信頼性かつ小型の銅回路部品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の銅回路部品は、少なくとも、絶縁基材とその表面に3次元配線となるパターン状の凹部があって、凹部には第1の金属層と配線となる第2の金属層とを備えた銅回路部品である。このように凹部に配線が形成されていることによって配線間を絶縁性よく分離することが可能となる。従って、配線間の信頼性を損なうことなく、高密度な配線を有する銅回路を形成することができ、かつ小型な銅回路部品を提供することが可能となる。さらに本発明における配線板の特徴は、凹部内に配線を有することから配線と絶縁基材との密着性が良いことである。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1および図4は、本発明の実施の形態における銅回路部品の構成を示す概略図である。絶縁基材101は、配線パターンとなる凹部102を形成されている。凹部102は図2に示すように配線の形状となるように溝状、孔状など任意の形状に形成することができる。凹部の幅は例えば特に制限することはないが、0.1μm〜1mmとすることができ、特に1〜100μmの範囲では加工が容易であるため好適である。また、様々な幅や形状を組み合わせてもよい。凹部の間隔は特に制限することはないが、0.1μm〜1mmとすることができ、特に1〜100μmの範囲では加工が容易であるため好適である。
【0018】
絶縁基材101は、回路部品の構造を形作るものであり、回路部品の使用目的,使用場所(取付場所),使用方法などに応じて所定の立体形状を付与して成形される。図3(a)に成形体の一部断面を示す。成形体の成形は、例えば、射出成形やプレス成形などの方法を用いて行われる。成形体の全体を絶縁性材料で形成する場合、例えば、絶縁性材料として、ガラス,アルミナ,、窒化アルミ,炭化ケイ素などのセラミック材料,PPS(ポリフェニレンスルフィド),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),ポリフタルアミド,PTFE(ポリエチレンテレフタラート),アクリル樹脂,ポリカーボネート,ポリスチレン,ポリプロピレン,ポリシクロオキサイド,エポキシ樹脂,ポリイミド,LCP(液晶ポリエステル樹脂),PEI(ポリエーテルイミド)などの樹脂材料を用いることができる。また、この工程において形成される成形体は、少なくとも回路を形成する表面が絶縁材料で形成されておればよく、銅、アルミなどの表面に絶縁材料を被覆したメタルコア基板などの成形体を用いることもできる。また、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの従来から公知の光硬化樹脂にレーザー光を照射する光造形法によって基材を形成することもできる。
【0019】
絶縁基材101の形状としては、平面を組み合わせた形状だけではなく、曲面を有する形状でもよく球状,円筒状,円錐状などや平面と組み合わせた形状でもよい。更には球体であってもよく、必要とされる機能に応じた形状で形成することができる。
【0020】
絶縁基材101の立体的な表面には配線パターンとなる凹部102が形成され、3次元的な立体銅回路部品を構成している。凹部102は射出成型時に予め金型で形成しても良く、成型体の表面に別途インプリントによって形成することもできる。
【0021】
凹部に形成した第1の金属層は、スパッタリング法などの乾式法,無電解めっきなどの湿式法,ゾルゲル法などの塗布法により形成することができる。低コストな湿式法が好ましく、無電解めっきがより好ましい。無電解めっきの場合には、銅,ニッケルリン,ニッケルリンホウ素,ニッケルホウ素,ニッケルすずリン,ニッケル鉄リン,ニッケル亜鉛リン,ニッケルタングステンリン,ニッケルモリブデンリンなどのニッケル合金やコバルトリン,コバルトホウ素などのコバルト合金、あるいは銅すず,銅亜鉛などの銅合金,銀,すず銀などの銀合金やこれらの混合物をめっきすることができる。ニッケルリン,ニッケルホウ素,コバルトリンやコバルトホウ素などの無電解めっき膜に高融点金属であるタングステンやモリブデンなどを添加した合金の場合、配線材として用いる銅の拡散を抑制するバリヤ膜として機能するため、配線の信頼性に優れるため好適である。また、ニッケルホウ素は絶縁基材と配線材との密着性にも優れるため更に好適である。
【0022】
また、第1の金属層103の厚みは、特に限定されないが、0.01μm〜5μmであることが好ましく、0.05μm〜2μmであることがより好ましい。この厚みが0.01μm未満の場合、銅の拡散を抑制することが困難となる。また、厚く析出させる場合、析出時間が長くなり製造コストが高くなってしまうため、厚み5μm以下であることが望ましい。
【0023】
本発明における表面に凹部を有する絶縁基材に銅めっきをする方法の特徴は、めっき反応を抑制する添加剤を用いて凹部内に優先的に電気銅めっきを行うことである。この方法によって実質的に凹部内にのみほぼ選択的なめっきを析出させることが可能になる。つまり、凹部内のめっき膜厚を凹部以外の基板表面部分のめっき膜厚よりも十分厚くすることができるため、凹部以外の基板表面の銅めっき膜を容易に除去することが出来る。
【0024】
このような銅めっきに用いる添加剤としては、めっき反応を抑制し、めっき反応の進行と同時にめっき反応抑制効果を失う物質が良い。添加剤のめっき反応を抑制する効果は、めっき液中に添加剤を加えることで金属の析出過電圧が大きくなることで確認できる。添加剤がめっき反応の進行と同時にめっき反応抑制効果を失う効果は、めっき液の流速が速い程、めっきする金属の析出過電圧が大きくなることで確認できる。このことは、添加剤の第1の金属層表面への供給速度が速い程、めっき反応の抑制効果が高くなることを示している。添加剤がめっき反応抑制効果を失うときには、添加剤は分解されて別の物質に変化する、あるいは、還元されて酸化数の異なる物質に変化する場合がある。
【0025】
このような添加剤を含むめっき液でめっきを行うことで凹部内にほぼ選択的にめっきを析出させることができる理由を以下に述べる。このような添加剤を用いてめっきを行うと、めっき反応の進行と共に第1の金属層表面で添加剤がその効果を失う。その結果、第1の金属層表面でめっき反応に関与する実効的な添加剤濃度が減少する。添加剤の濃度が減少すると、添加剤は溶液中からの拡散によって供給されるが、凹部内はめっき液沖合いからの距離も基板表面に比べて長い。したがって、凹部内では添加剤の供給が遅くなり、拡散による添加剤濃度の増加速度が遅い。このため、凹部内では基板表面に比べて添加剤濃度が低い状態が維持される。この添加剤はめっき反応を抑制する効果を持つので、添加剤濃度が低い凹部内ではめっき反応は抑制されず、めっき膜が凹部内で選択的に成長することができる。
【0026】
このような特性を持つめっき液としては、回転ディスク電極で測定した分極曲線において、電極が静止時に対して電極は1000rpmで回転した時の電流値が1/100以下となる電位領域を有する特性を有することが好ましい。このようなめっき液では、図7に示すように、ある電位E′において静止時(0rpm)の電流密度Aに対して1000rpm時の電流密度Bが1/100以下となる。
【0027】
めっき液の添加剤として好適に用いることができるのは、2−[(1,3−Dihydro−1,3,3−trimethyl−2H−indol−2−ylidene)−methyl]−1,3,3−trimethyl−3H−indolium perchlorate、2−[3−(1,3−Dihydro−1,3,3−trimethyl−2H−indol−2−ylidene)−1−propenyl]−1,3,3−trimethyl−3H−indolium chloride,2−[5−(1,3−Dihydro−1,3,3−trimethyl−2H−indol−2−ylidene)−1,3−pentadienyl]−1,3,3−trimethyl−3H−indolium iodide、2−[7−(1,3−Dihydro−1,3,3−trimethyl−2H−indol−2−ylidene)−1,3,5−heptatrienyl]−1,3,3−trimethyl−3H−indolium iodide、3−Ethyl−2−[5−(3−ethyl−2(3H)−benzothiazolylidene)−1,3−pentadienyl]benzothiazolium iodide、Janus Green Bなどのシアニン色素及びその誘導体の少なくとも1種類を含むことが望ましい。
【0028】
本発明の銅めっき液としては、銅イオン,硫酸,塩素イオンを含むめっき液に上述の添加剤が添加されためっき液が用いられる。銅イオンとしては、硫酸銅五水和物や酸化銅を溶解したもの、硫酸,塩素イオンとしては、塩化ナトリウムや塩酸などを用いることができる。また、上記成分以外にも、公知の促進剤であるBis(3−sulfopropyl)disulfideや界面活性剤であるポリエチレングリコールなどを含んでいてもよい。銅イオンの濃度としては7.5〜70g/dm3、硫酸濃度としては50〜250g/dm3、塩素イオン濃度としては10〜150mg/dm3程度のものが好適である。
【0029】
めっき方法として好適に用いることができるのは、部品を治具やラックに固定した吊り下げ式の電気めっき方法であるが、構造部品が微小な場合は、バレルめっきによってもよい。
【0030】
本発明により、最小の配線幅が20μm以下、配線の高さと幅の比が最大1.5以上の微細な3次元配線を形成した銅回路部品を得ることが可能となる。
【0031】
次に、本発明の銅回路部品を製造する方法について図を用いて説明する。図2は銅回路部品の製造フローチャートである。
【0032】
図2は本発明の第1の実施形態に係る立体回路基板の製造方法についてのフローチャートを示し、図3(a)〜(d)はその製造方法の主要な工程における立体回路基板を工程順に示す。本発明の製造方法は、成形体の表面に回路を備えた立体回路基板を製造する方法であって、図2に示すように、所望の立体形状の成形体および配線となる溝を形成する成形体形成工程(S1),第一の金属膜となるニッケルリン膜を形成する下地膜形成工程(S2)、第一の金属膜の表面に電気めっきを施すことにより溝を充填し、回路を形成するめっき膜形成工程(S3),第一の金属膜の不要部を除去する工程(S4)、とがこの順番で実施される。
【0033】
また、例えば、本発明の銅回路部品を作製した後、必要に応じて、プリプレグなどを加熱積層し、ビアホールや外層回路などを形成したり、公知の絶縁層形成工程や回路形成工程によりさらに多層化することも可能である。
【0034】
また、上記銅回路部品の表面に、ソルダーレジストなどを塗布することで配線表面の安定性を向上させ、信頼性を向上させることもできる。
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
図3は図1の本発明の実施形態における銅回路部品の製造工程を示すものである。絶縁回路部品はPPS樹脂を絶縁基材として用い、図1に示す直方体部品の形状を射出成型によって形成した。形成した直方体の外寸は幅6mm,高さ3mm,奥行き3mmとした。図3(a)に示すように、部品の上面,下面,側面の1面上の絶縁基材表面に配線パターン状に凹状の溝を形成した。配線状の溝の深さは10μmとし、幅は幅7〜100μmとし、間隔を10μmとした。次に図3(b)に示すように、無電解ニッケルめっきによって第1の金属層3を形成した。無電解ニッケルめっきには、奥野製薬社製トップケミアロイ66を用い、ニッケル膜厚は200nmとした。下地膜の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、Chemical Vapor Deposition(CVD)法などを用いることができる。また、第1の金属層としては、ニッケル、コバルト、クロム、タングステン、パラジウム、チタン及びこれらの合金を用いることができる。続いて、図3(c)に示すように、電気銅めっきによって銅めっき膜4を形成した。電気めっきは表1に示すめっき液に2−[(1,3−Dihydro−1,3,3−trimethyl−2F−indol−2−ylidene)−methyl]−1,3,3−trimethyl−3H−indolium perchlorateを添加剤として加えて用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
めっき条件としては、めっき時間は10分、電流密度は1.0A/dm2、めっき液の温度は25℃とした。
【0039】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った。図7に示す配線用の溝における銅めっき膜厚T1と配線以外の表面における銅めっき膜厚T2を測定した。その結果、配線用の溝内部における銅めっき膜厚T1は10μm、表面における銅めっき膜厚T2は0.001μm以下であった。このことから銅めっき膜は溝内部へ選択的に成長し、表面にはほとんど銅は析出しないことがわかった。次に図3(d)に示すように、表面のニッケル膜を除去した。ニッケル膜の除去には、メック社製のCH−1935を用いた。ニッケル膜の除去には、メルテックス社製メルストリップ,荏原ユージライト社製シードロンプロセスなどを用いることができる。表面の銅めっき膜は、ニッケル膜と同時に除去することができた。以上の結果、表面の銅めっき膜の除去工程が不要となり、配線幅7〜100μmの微細な銅配線が絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造が容易になった。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【0040】
更に、部品の上面と下面の配線部に交互に電気的な接点をとった後、接点以外の部分をソルダーレジストで被覆した部品も形成した。60Vの電圧を印加し、85℃,85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、ソルダーレジストで被覆していない部品では、配線表面の酸化が進行したが、ソルダーレジストで被覆した部品では1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は3%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。
【実施例2】
【0041】
図4は、実施例1の別の実施形態を示したものである。実施例1と同様に射出成型によって、円筒状の微小部品を形成した。形成した円筒部品の外寸は直径6mm、高さ6mmとし、絶縁基材の厚みを1mmとした。部品の外側面および内側面に配線パターン状に凹状の溝を形成した。配線状の溝の深さは10μmとし、幅は幅7〜100μmとした。実施例1と同様にシード層形成,電気銅めっき,シード層の除去を行った。以上の結果、微細な銅配線が絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造が容易になった。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【0042】
更に、部品の上面と下面の配線部に交互に電気的な接点をとった後、接点以外の部分をソルダーレジストで被覆した部品も形成した。60Vの電圧を印加し、85℃、85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、ソルダーレジストで被覆していない部品では、配線表面の酸化が進行したが、ソルダーレジストで被覆した部品では1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は3%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。配線幅7〜100μmの微細な銅配線を有する微小銅回路部品の製造が容易になった。また、内側面にも微細な配線を容易に形成することができた。得られた部品の上面と下面の配線部に交互に電気的な接点をとり、接点以外の部分をソルダーレジストで被覆した。60Vの電圧を印加し、85℃,85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は4%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。
【実施例3】
【0043】
本実施例では、実施例1と同様の直方体の部品を射出成型により形成した。射出成型に用いた絶縁材としてPTFE,ポリカーボネート,PEEK,PPSを使用し、それぞれの絶縁材部品の外側面に形成した配線パターンの溝として、溝の深さは15μmとし、幅は幅7,10,20,50,100μmと、配線の高さと幅の比が最大で2以上とした以外は実施例1と同様とした。この場合でも、実施例1と同様に微細な銅配線が絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造が容易になった。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、PTFE,ポリカーボネート,PEEK,PPSいずれの絶縁基材の場合も銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【0044】
更に、部品の上面と下面の配線部に交互に電気的な接点をとった後、接点以外の部分をソルダーレジストで被覆した部品も形成した。60Vの電圧を印加し、85℃,85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、ソルダーレジストで被覆していない部品では、配線表面の酸化が進行したが、ソルダーレジストで被覆した部品では1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は3%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。
【実施例4】
【0045】
本実施例では、図8に示すように部品の上面と下面に接続用のパッドを形成した以外は実施例1と同様に直方体の微小部品を形成した。形成した直方体の外寸は幅1mm,高さ0.5mm,奥行き0.5mmとした。部品形成後に、図8(b)に示すようにパッド上にはんだを形成した。また、同様に図9に示すように配線がコイル状に側面に形成された銅回路部品を容易に形成することができた。
【0046】
以上の結果から微細な銅配線が絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造が容易になった。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【0047】
更に、部品の上面と下面の接続用パッド以外の部分をソルダーレジストで被覆した後、はんだボールを搭載し電気的な接点をとった。60Vの電圧を印加し、85℃,85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は3%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。
【実施例5】
【0048】
本実施例では、直方体の部品を射出成型により形成した。図5は、本発明による配線の形成方法を示す基板の断面図である。射出形成により形成した絶縁基材1の表面に熱可塑性の樹脂(本実施例では、PEI)を塗布した後、図5(b)に示すように、金型を押し当て、深さ7μm、幅7〜100μmの配線溝パターンを加工した。次に、図5(d)に示すように、無電解ニッケルめっきによって第1の金属層3を形成した。続いて、図5(e)に示すように、電気銅めっきによって銅めっき膜4を形成した。次に図5(f)に示すように、基板表面のニッケル膜を除去した。以上の結果、本方式によっても微細な銅配線が絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造ができた。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【0049】
更に、部品の上面と下面の配線部に交互に電気的な接点をとった後、接点以外の部分をソルダーレジストで被覆した部品も形成した。60Vの電圧を印加し、85℃,85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、ソルダーレジストで被覆していない部品では、配線表面の酸化が進行したが、ソルダーレジストで被覆した部品では1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は3%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。
【実施例6】
【0050】
本実施例では、実施例1と同様な形状の直方体の部品を射出成型により形成し、埋設された配線を形成した銅回路部品を製造した。その後に、実施例5と同様に樹脂を塗布し、上下配線層の接続ビア8を含む配線溝を形成した。その後、実施例1と同様にめっきを行った。以上の結果、本方式によっても微細な銅配線が2層積層され、絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造ができた。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【実施例7】
【0051】
本実施例では、実施例1と同様な形状の直方体の部品を射出成型により形成し、ニッケルシードまで同様に形成した。シード形成後の電気銅めっき液として、市販のビアフィリング用硫酸銅めっき液(本実施例では、荏原ユージライト製CU−BRITE−VF4)を用いた。めっき条件としては、電流密度は1.5A/dm2、めっき液の温度は25℃とした。
【0052】
電気銅めっき後に配線断面観察を行った。図7に示す配線用の溝における銅めっき膜厚T1と配線以外の表面における銅めっき膜厚T2を測定した。その結果、配線用の溝内部における銅めっき膜厚T1は10μm、表面における銅めっき膜厚T2は4μmであった。このことから銅めっき膜は溝内部で優先的に成長したものの表面でも銅が析出したことがわかった。次に、表面の銅めっき膜およびニッケル膜を除去した。不要な銅めっき膜を塩化第二鉄水溶液を用いてエッチングし、ニッケル膜の除去には、メック社製のCH−1935を用いた。以上の結果、表面の銅めっき膜の除去工程が必要であったものの、配線幅7〜100μmの微細な銅配線が絶縁基材に埋設された微小銅回路部品の製造できた。得られた部品のハンドリングをピンセットによって行ったところ、配線が絶縁基材に埋設されているため、銅配線が剥れることなくハンドリングすることができた。
【0053】
更に、部品の上面と下面の配線部に交互に電気的な接点をとった後、接点以外の部分をソルダーレジストで被覆した部品も形成した。60Vの電圧を印加し、85℃,85%の環境で絶縁信頼性試験を実施した結果、ソルダーレジストで被覆していない部品では、配線表面の酸化が進行したが、ソルダーレジストで被覆した部品では1000時間後でも最小線幅の7μm配線部でもマイグレーションなどは観察されず、絶縁抵抗は6%低下するに留まった。以上の結果から、立体的な構造を有する部品に、信頼性の高い微細配線を形成することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、銅回路部品およびその製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】銅回路部品。
【図2】銅回路部品の製造方法。
【図3】銅回路部品の製造方法。
【図4】銅回路部品の構造例。
【図5】銅回路部品の製造方法。
【図6】銅回路部品のめっき後の配線断面例。
【図7】電気めっき液の分極特性。
【図8】銅回路部品の構造例。
【図9】銅回路部品の構造例。
【符号の説明】
【0056】
1 絶縁基材
2 熱可塑性の樹脂
3 第1の金属層
4 銅めっき膜
101 絶縁基材
102 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅回路の土台となる絶縁基材に3次元の配線パターンを有する銅回路部品において、前記配線は前記絶縁基材に埋設されていることを特徴とする銅回路部品。
【請求項2】
請求項1に記載の銅回路部品において、絶縁基材の表面に配線となる3次元パターン状に凹部があって、凹部には第1の金属層と配線となる第2の金属とを備えたことを特徴とする銅回路部品。
【請求項3】
請求項1に記載の銅回路部品において、最小の配線幅が20μm以下であることを特徴とする銅回路部品。
【請求項4】
請求項1に記載の銅回路部品において、配線の高さと幅の比が最大1.5以上であることを特徴とする銅回路部品。
【請求項5】
請求項1に記載の銅回路部品において、配線の底面と側面にはバリヤ膜が形成されていることを特徴とする銅回路部品。
【請求項6】
請求項5に記載の銅回路部品において、前記バリヤ膜はニッケルもしくはコバルトを主成分とするバリヤ膜であることを特徴とする銅回路部品。
【請求項7】
請求項1に記載の銅回路部品において、基材の外面または内面の少なくとも一方に配線を備えたことを特徴とする銅回路部品。
【請求項8】
請求項1に記載の銅回路部品において、絶縁基材の少なくとも一面上に絶縁層を介在させて複数層の回路パターンが積層された多層回路部とを備える銅回路部品。
【請求項9】
請求項1に記載の銅回路部品において、絶縁基材の形状の少なくとも一箇所が曲面であることを特徴とする銅回路部品。
【請求項10】
請求項1に記載の銅回路部品において、絶縁基材の形状が球体であることを特徴とする銅回路部品。
【請求項11】
3次元配線を有する銅回路部品の基材表面に配線となる凹部を形成する工程と、凹部を含む基材表面に電解めっきの導電層となる第1の金属層を形成する工程と、配線となる凹部にのみ選択的に配線となる第2の金属層を形成する工程と、配線となる凹部以外の表面に形成された第1の金属層を除去する工程と、を含む銅回路部品の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、第2の金属層が銅であることを特徴とする銅回路部品の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、第2の金属層を形成する工程が、第1の金属層表面に配線となる金属に対して析出過電圧を大きくする物質を含むめっき液を用いて電気めっきを行うことを特徴とする銅回路部品の製造方法。
【請求項14】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、第2の金属層形成に使用するめっき液が硫酸銅電気銅めっき液であり、回転ディスク電極で測定した分極曲線において、電極が静止時に対して電極は1000rpmで回転した時の電流値が1/100以下となる電位領域を有する特性のめっき液である事を特徴とする銅回路部品の製造方法。
【請求項15】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、第2の金属層形成に使用するめっき液が硫酸銅電気銅めっき液であり、回転ディスク電極で測定した分極曲線が、標準水素電極電位に対して100〜200mVの範囲では静止時に対して1000rpmの電流値が1/100以下であり、−100mV以下では、静止時よりも回転時の方が電流値が大きくなる特性のめっき液である事を特徴とする銅回路部品の製造方法。
【請求項16】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、前記銅めっき液がシアニン色素及びその誘導体の少なくとも1種類を含むことを特徴とする銅回路部品の製造方法。
【請求項17】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、前記シアニン色素が下記の化学構造式(nは0,1,2,3のいずれか)で表されることを特徴とする銅回路部品の製造方法。
【化1】

【請求項18】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、第1の金属層,第2の金属層がいずれも銅であることを特徴とする銅回路部品の製造方法。
【請求項19】
請求項11記載の銅回路部品の製造方法において、第1の金属層が、ニッケル,コバルト,クロム,タングステン,パラジウム,チタンまたはニッケル,コバルト,クロム,タングステン,パラジウム,チタンの少なくともいずれかひとつを含む合金であり、第2の金属層が銅であることを特徴とする銅回路部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−10500(P2010−10500A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169763(P2008−169763)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】