説明

銅表面の処理方法

【課題】封止材等との接着性が良好であり、電気特性及び放熱性の低下を抑制することができ、低温処理可能であって、生産性に優れ、キズやコスレなどの痕が付きにくい、半導体実装用導電基材の表面処理方法を提供する。
【解決手段】腐食抑制剤、硫酸及び過酸化水素を含有する化学粗化液を接触させて銅表面に粗化形状を形成する粗化工程を有し、前記腐食抑制剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び5−アミノ−1H−テトラゾールを含有し、前記粗化工程の後に、前記粗化工程で表面に形成される有機皮膜を、アミン及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属化合物を含有しているアルカリ性溶液に接触させて除去する皮膜除去工程を有する銅表面の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体実装用導電基材の表面処理方法、ならびにこの処理方法を用いてなる導電基材および半導体パッケージに関するものであり、特に銅または銅合金よりなるリードフレームの表面処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の発展は目覚しく、民生機器ではパソコン、携帯電話などの小型化、軽量化、高性能化、高機能化が進められ、産業用機器としては無線基地局、光通信装置、サーバ、ルータなどのネットワーク関連機器など、大型、小型を問わず、同じように機能の向上が求められている。また、情報伝達量の増加に伴い、年々扱う信号の高周波化が進む傾向にあり、高速処理および高速伝送技術の開発が進められている。これを支えているのは、半導体チップ(LSI)技術と実装技術である。
半導体チップの動作周波数や集積度は年々増加し、より高速で高機能な処理が可能となってきている。一方、実装技術についても小型化、軽量化、高密度実装化が進展している。現在最も一般的な実装形態としては、半導体チップをパッケージ化してマザーボードと呼ばれる配線基板上に実装する方法である。このように、半導体チップをパッケージ化する実装形態には、以下のようなメリットが挙げられる。
(1)半導体チップを熱や紫外線等の外的環境から保護することが容易である。
(2)半導体チップの取扱いが容易になり、半導体チップの検査(動作チェック等)および良品選別が容易になる。
(3)半導体チップの配線ルール(配線幅や配線間が数十nm〜数百nm)とマザーボードの配線ルール(配線幅や配線間隔が数十μm〜数百μm)には大きなギャップがあり、半導体チップとマザーボードの電気的な接続が容易になる。
【0003】
以上のメリットから、半導体チップの実装方法として、初期から半導体パッケージによる実装形態が広く用いられ、半導体チップの種類、機能、性能に合わせた多種多様な半導体パッケージが考案、実用化された。現在、半導体パッケージは、DIP(Dual Inline Package)、SOP(Small Outline Package)、LOC(Lead On Chip)、QFP(Quad Flat Package)、QFN(Quad Flat No Lead Package)等に代表されるリードフレームと呼ばれる導電基材を用いたタイプと、PGA(Pin Grid Array)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等に代表される無機または有機配線基板を用いたタイプに大別される。図1にはリードフレームタイプとしてQFP、図3には配線基板タイプとしてCSPの断面構造の一例を示す。リードフレームタイプは、価格が安価なことや生産性に優れることから、初期の半導体パッケージから実用化され、1985年以前は半導体パッケージのほとんどがリードフレームタイプであり、現在でもメモリ等の比較的低ピンの半導体パッケージに多用されている。一方配線基板タイプは、半導体チップの高機能化や多ピン化が進むに従って、多ピン化に適したPGAが実用化され、現在ではさらに小型化されたBGAやCSPが多数製造されるようになった。なお、図3のCSP50は、ポリイミドフィルム51、接着剤52、配線53、ダイボンド材54、金ワイヤ55、半導体チップ56、封止材57、はんだボール58より構成される。
【0004】
前述のように、価格や生産性に優れることから、現在でもリードフレームタイプの半導体パッケージは多数製造されている。初期のリードフレームの基材には、半導体パッケージの各種信頼性を満足させるために、半導体チップの熱膨張率(約3ppm/℃)に近い材質として42アロイ(鉄とニッケルの合金)が使用されていた。その後、更なる低価格化、高速化、高放熱化の要求が高まり、金属銅や銅合金を基材とした銅リードフレームの実用化が強く望まれるようになった。しかし、銅リードフレームの熱膨張率は十数ppm/℃と半導体チップに比べて非常に大きく、半導体チップとダイパッド間や銅リードフレームと封止材間で剥離やクラックが発生して、半導体パッケージの信頼性を充分に確保することができなかった。その後、ダイボンド材や封止材、銅リードフレーム基材の改良により、半導体パッケージの信頼性を確保することが可能になり、現在では銅リードフレームを使用するのが一般的となってきている。しかし、マザーボードへの実装が鉛フリー化されることによる高温での実装(リフロー温度の上昇)が必要になったことや、半導体チップの発熱量の増大などにより、より高い信頼性が求められ、銅リードフレームと封止材との更なる接着性向上が必要になっている。
【0005】
銅リードフレームと封止材との接着性を向上させるために、従来、下記に示す銅リードフレームの表面処理方法が行われてきた。
第1の従来技術は、特許文献1に示すような、銅リードフレーム表面を有機アルカリ溶液中で陽極酸化させ、アルカリ金属残渣が1ng/cm以下である黒色酸化膜を形成する方法である。
第2の従来技術は、特許文献2に示すような、銅リードフレーム表面を自己還元力に優れた酸化剤を添加した黒化処理液で処理することにより、銅リードフレーム表面に水酸化物を含む酸化銅の皮膜を形成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−148509号公報
【特許文献2】特開2006−316355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来技術は以下のような課題がある。
アルカリ金属残渣が1ng/cm以下である黒色酸化膜を形成する方法である第1の従来技術は、陽極酸化によって黒色酸化皮膜を形成するために、銅リードフレームを電源に接続した状態で処理することが必要であり、生産性が悪いという問題点がある。また、銅リードフレーム表面に厚い酸化銅の皮膜を形成するために、電気特性の低下や放熱性の低下という問題もある。
銅リードフレーム表面に水酸化物を含む酸化銅の皮膜を形成する方法である第2の従来技術は、酸化銅の皮膜を形成する処理工程の温度が50〜80℃と高温であり、高温に耐えうる高価な処理装置が必要である。また、酸化銅の皮膜を形成後の表面には、針状結晶が形成されるため、表面にキズやコスレなどの痕が付きやすく、生産性の低下や歩留まりの低下という問題がある。さらに、第1の従来技術と同様に、銅リードフレーム表面に酸化銅の皮膜を形成するために、電気特性の低下や放熱性の低下という問題もある。さらに、酸化銅皮膜を形成する際に酸化剤または酸化強化剤として使用される亜塩素酸ナトリウムや過マンガン酸ナトリウム等は、有害物質のため環境負荷が大きいという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、以下のように構成される。
(1)半導体実装用導電基材に腐食抑制剤を含有する化学粗化液を接触させて表面に粗化形状を形成する粗化工程を有する半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(2)前記化学粗化液は、さらに硫酸及び過酸化水素を含有している、(1)に記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(3)前記腐食抑制剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾールを含有している、(2)に記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(4)前記腐食抑制剤は、さらに5−アミノ−1H−テトラゾールを含有している、(3)に記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(5)前記粗化工程は、第1の化学粗化液に接触させる第1粗化工程と、前記第1粗化工程の後に第2の化学粗化液に接触させる第2粗化工程からなる、(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(6)前記粗化工程の後に、前記粗化工程で表面に形成される有機皮膜を除去する皮膜除去工程を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(7)前記除去工程は、アルカリ性溶液に接触させる工程からなる、(6)に記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(8)前記アルカリ性溶液は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属化合物と、トリエタノールアミンまたはモノエタノールアミンから選択されるエタノールアミンを含有している、(7)に記載の半導体実装用導電基材の表面処理方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の表面処理を行った半導体実装用導電基材。
(10)(9)に記載の半導体実装用導電基材と半導体チップを接着し、その後封止材にて必要な箇所を封止して製造される半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の処理方法により、銅リードフレーム等の表面に効率よく微細な凹凸を形成できるため、アンカー効果によって封止材との接着性を向上させることができる。
また、本発明の処理方法では、銅リードフレーム等の表面に酸化銅の皮膜は形成せず、電気特性および放熱性の低下を抑制することが可能である。
また、本発明の処理方法は低温での処理が可能である。よって、生産性に優れ、製造装置のコスト低減、製造コストの低減や歩留まりも向上できる。
また、本発明の処理方法は、従来技術のような有害物質を使用せずとも効果を得ることができ、環境負荷を低減できる。
また、本発明の半導体装置用導電基材は、封止材などとの接着性が良好であり、該導電基材を用いた半導体パッケージは信頼性、電気特性、放熱性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、銅リードフレームを用いたQFPの構造の一例を示す断面概略図である。
【図2】図2は、銅リードフレームの構造の一例を示す平面概略図である。
【図3】図3は、配線基板を用いたCSPの構造の一例を示す断面概略図である。
【図4】図4は、銅リードフレームおよびこれを用いた半導体パッケージの製造工程の一例を示す断面概略図である。
【図5】図5は、封止材との接着性を評価するための接着力測定サンプルの斜視図である。
【図6】図6は、ボンドテスタを用いたシェア強度測定方法の一例を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、半導体パッケージに用いられる銅系の半導体実装用導電基材の表面を、腐食抑制剤を含有する化学粗化液で処理し、粗化形状を形成することを特徴とする。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について、詳細に説明する。ここでは、本発明の適用例として、銅リードフレームの表面処理とこれを用いたQFPを一例として説明するが、半導体用の放熱板の表面処理方法や、その他の半導体パッケージについても同様に適用することができる。
【0012】
(半導体実装用導電基材)
半導体実装用導電基材とは、銅系の半導体実装用導電基材であり、例えば、銅または銅合金からなる金属製の放熱板やリードフレーム等が挙げられる。本願発明の方法を銅または銅合金からなる放熱板やリードフレームに使用した場合、顕著な効果が得られる。銅合金としては、銅を主成分として、クロム、ジルコニウム、亜鉛、鉄、チタン、リン等を含有したものが使用できる。
図1は、リードフレームを用いたQFPの構造の一例を示す断面概略図である。図1において、ダイパット12上にダイボンド材17を介して半導体チップ16が載置され、半導体チップ16は金ワイヤ18を介してインナーリード13のめっき15が形成された箇所と接続されており、これらは封止材19により封止され、インナーリード13から続くアウターリード14が封止材の外に伸び、全体として半導体パッケージ10を構成する。このうち、ダイパット12、インナーリード13及びアウターリード14がリードフレームに該当する。
図2は、銅リードフレーム11の構造の一例を示す平面概略図である。銅リードフレーム11は、半導体チップが接着されるダイパッド12、半導体パッケージの内側の配線であるインナーリード13(封止材で封止される箇所)、半導体パッケージの外側に露出する配線であるアウターリード14(封止材で封止されない箇所)等で構成される。ダイパッド12の半導体チップが接着される面や、インナーリード13の先端部(金ワイヤ18の接続部)には、銀、錫、ニッケルおよび金めっき等が施されることが好ましい。インナーリード13の先端部のめっき部を、めっき15として示す。さらにアウターリード14の外側には、半導体チップの接着(ダイボンド)、封止、外形加工等の際に使用されるガイド穴20等が形成される。銅リードフレーム11は、図2では1パッケージ分の構成を図示したが、これを基本単位として長手方向に複数個形成して短冊状に加工するのが一般的である。銅リードフレーム11の製造方法としては、厚さ100〜300μmのリール状の銅または銅合金条を用意し、まずガイド穴20等の加工を行う。続いてガイド穴20を用いて打ち抜き金型によって所定のパターンに打ち抜いて(スタンピング)、短冊状の銅リードフレーム11に加工される。また、微細なインナーリード13やアウターリード14を加工する場合は、エッチングでパターン形成することもできる。次に、ダイパッド12、及びインナーリード13の金ワイヤ18との接続部分に銀、錫、ニッケルおよび金めっき等を行ってめっき付き銅リードフレームが完成する。
【0013】
(化学粗化液)
本発明における化学粗化液は、銅を溶解する溶液及び腐食抑制剤を含有することが好ましい。このような化学粗化液を半導体実装用導電基材に接触させることで、表面に粗化形状を形成できる。粗化形状が形成された表面は有機皮膜で覆われている。
(銅を溶解する溶液)
具体的には、銅を溶解する溶液としては、例えば、過硫酸塩、硫酸及び過酸化水素(硫酸と過酸化水素の混合液)、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩化テトラアミン銅が挙げられる。中でも、硫酸及び過酸化水素が、低価格で入手がしやすく、生産性に優れ、環境への負荷も少ないことから特に好ましい。
化学粗化液中の、銅を溶解する溶液の濃度は、粗化処理のスピード及びランニングコストを考慮すると、10〜400g/Lであり、より好ましくは、20〜200g/Lである。
特に、銅を溶解する溶液が硫酸及び過酸化水素の場合は、硫酸の濃度としては、20〜400g/Lであると好ましく、20〜200g/Lであるとより好ましく、50〜100g/Lであると特に好ましい。硫酸の濃度が20g/L以上であると、銅等の金属の溶解度が高いため結果的に液寿命が長くなり、400g/L以下であれば、ランニングコストを少なくすることができる。また、過酸化水素の濃度としては、10〜200g/Lであると好ましく、10〜100g/Lであるとより好ましく、10〜50g/Lであると特に好ましい。過酸化水素の濃度が10g/L以上であると、粗化処理のスピードが大きいため処理時間が短くなり、生産性が高くなる傾向がある。また、200g/L以下だと、過酸化水素の自然分解が少ないので使用量を抑えることができ、ランニングコストを少なくすることができる。
【0014】
(腐食抑制剤)
腐食抑制剤としては、半導体実装用導電基材の表面に所望の粗化形状を形成することができれば特に制限はないが、効率よく形成するためにはアゾール化合物を含有することが好ましい。アゾール化合物としては、例えば、5−アミノ−1H−テトラゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−メチルテトラゾール、2−メチルテトラゾール、5−メチルトリアゾール、1−フェニルテトラゾール、イミダゾール、5−フェニルテトラゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、1,2,3−トリアゾール、インダゾール、1,2,4−トリアゾールなどが好適に使用できる。
腐食抑制剤として、少なくとも1,2,3−ベンゾトリアゾール及び5−アミノ−1H−テトラゾールのいずれかを用いることが好ましく、これらを併用することがより好ましい。
腐食抑制剤として1,2,3−ベンゾトリアゾールを使用した場合に顕著な効果が得られ、つまり、効率よく粗化形状を形成できるとともに、封止材との接着性を向上させることができる。また、さらに5−アミノ−1H−テトラゾールを併用することにより、特に銅合金の銅リードフレームを処理した場合、化学粗化液中での沈殿物の発生を抑制でき、液寿命を長くすることができ、経済的面からも好ましい。また、5−アミノ−1H−テトラゾールを使用することで、処理ムラを抑制することもできる。
この腐食抑制剤を含有する化学粗化液で処理することにより、半導体実装用導電基材が例えば銅リードフレームの場合には、銅リードフレーム表面に効率よく封止材との接着性に優れた粗化形状を形成でき、本発明による効果を更に確実に得ることができる。その理由は必ずしも明らかではないが、かかる化学粗化液においては、銅を溶解する溶液が半導体実装用導電基材の表面を酸化および溶解する一方、腐食抑制剤が半導体実装用導電基材表面の腐食を抑制すると考えられる。例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾールを含有する化学粗化液で粗化した銅リードフレーム表面上では、X線光電子分光分析(XPS)からCu(Cと推定される銅及び1,2,3−ベンゾトリアゾールの化学結合が認められた。このため、銅リードフレーム表面にはCu(Cに起因する有機皮膜が形成されると考えられる。このように互いに拮抗する成分を同時に半導体実装用導電基材の表面に接触させると、銅を溶解する溶液による表面の酸化および溶解が、部分的に腐食抑制剤によって防止されるものと考えられる。これにより、半導体実装用導電基材の表面に極めて複雑な粗化形状を形成できるものと推測される。
かかる効果を好適に得るためには、化学粗化液中の腐食抑制剤の濃度は、形成される粗化形状の大きさと処理ムラを低減することを考慮すると、0.5〜30g/Lが好ましく、より好ましくは0.5〜20g/Lである。中でも、5−アミノ−1H−テトラゾールまたは1,2,3−ベンゾトリアゾールそれぞれの濃度は、0.5〜20g/Lであると好ましく、0.5〜10g/Lであるとより好ましく、0.5〜7g/Lであると特に好ましい。濃度を0.5g/L以上とすることで、充分な粗化形状が得られやすくなり、20g/L以下とすることで、処理ムラの低減ができる。
【0015】
(アルコール溶媒)
上記に加えて化学粗化液には、更にアルコール溶媒を含有していることが好ましい。これにより、沈殿物の発生をさらに抑制し、その結果、沈殿物の再付着による異物不良を低減することができる。更に、接着特性を損なうことなく、化学粗化液の液寿命を4倍程度に延命することができる。アルコール溶媒としては、特に限定されないが、グリコール系の溶媒であると好ましい。グリコール系の溶媒としては、例えば、アルキレングリコール、アルキレングリコールアルキルエーテル、グリコール酸、及び分子量200〜20000のポリエチレングリコールなどが挙げられる。アルキレングリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、メチルプロピレングリコールなどが挙げられる。アルキレングリコールアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、また、2種以上混合して使用することもできる。
化学粗化液中のアルコール溶媒の濃度は、沈殿物を低減することを考慮すると3〜70mL/Lが好ましく、より好ましくは、3〜50mL/Lである。
【0016】
(化学粗化液による処理)
前述のような化学粗化液を用いて半導体実装用導電基材を処理する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、スプレー法、ディップ法によって、化学粗化液を半導体実装用導電基材に接触させる方法がある。
また、半導体実装用導電基材が、例えば銅リードフレームの場合は、処理温度及び処理時間については、銅リードフレームの粗化形状がRz0.5〜5μmとなるように適宜決定することが好ましい。Rzは十点平均粗さであり、JIS B0601 1994に準拠して測定できる。Rzを0.5μm以上とすることで、充分な封止材との接着力が得られ、さらに安定した接着力を得るためには0.7μm以上がより好ましい。また、Rzが大きすぎるとエッチング量が大きくなって、微細なパターンではインナーリードやアウターリードの細りが問題になる場合があり、5μm以下とすることでこれらの問題が生じにくくなる。また、2.0μmを越えるとワイヤボンド強度が低下する傾向があり、安定したワイヤボンド強度を得るためには、1.5μm以下が好ましい。したがって、安定した封止材との接着力とワイヤボンド強度を両立させるためには、Rzは0.7〜1.5μmであることが最も好ましい。これらのRzを満たすためには、温度は10〜40℃、時間は30〜600秒で処理することが好ましい。
【0017】
(粗化工程)
粗化工程は、1回で行っても、複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けて行う場合は、安価に生産性よく処理ムラを抑制し、安定して粗化するため、化学粗化液の濃度を順に高くしていくことが好ましい。
好ましくは、第1の化学粗化液に接触させる第1粗化工程と、第1粗化工程の後に第2の化学粗化液に接触させる第2粗化工程との2回に分けて行う。第1粗化工程で半導体実装用導体基板表面を若干粗化して銅表面の汚染等を除去し、第2粗化工程で所望の粗化形状を得る。これにより均一に処理が行えるため、処理ムラを低減できる。2回処理を行う場合、第1の化学粗化液および第2の化学粗化液は、少なくとも5−アミノ−1H−テトラゾールまたは1,2,3−ベンゾトリアゾールを含有することが好ましく、第1の化学粗化液および第2の化学粗化液が少なくとも5−アミノ−1H−テトラゾールまたは1,2,3−ベンゾトリアゾールを含有し、かつ第1の化学粗化液および前記第2の化学粗化液の少なくとも一方に、1,2,3−ベンゾトリアゾールを含有していることがより好ましく、第1の化学粗化液および前記第2の化学粗化液の両方に、5−アミノ−1H−テトラゾールおよび1,2,3−ベンゾトリアゾールの両方を含有していることが最も好ましい。また、5−アミノ−1H−テトラゾールまたは1,2,3−ベンゾトリアゾールの濃度は、第1の化学粗化液より第2の化学粗化液を高くすることがより好ましい。具体的には、腐食抑制剤の合計濃度は、第1の化学粗化液中において0.5〜10g/Lが好ましく、第2の化学粗化液において1〜20g/Lが好ましい。粗化工程を複数回に分けて行うことにより、より安価に生産性よく、また処理ムラを抑制し安定して半導体実装用導体基板表面に有機皮膜付きの粗化形状を形成することができる。
【0018】
(皮膜除去工程)
粗化工程の後に有機皮膜を除去する皮膜除去工程をさらに行うことが好ましい。前述の通り、腐食抑制剤を含有する化学粗化液で半導体実装用導電基材を処理すると、粗化形状の表面に有機被膜が形成される。半導体実装用導電基材を長期保存する場合は表面の防錆効果が期待できるために、有機皮膜が付いた状態で保存することが好ましく、実際に使用する直前に有機皮膜を除去することが好ましい。例えば、半導体実装用導電基材が銅リードフレームの場合は、半導体パッケージを組立てる直前に有機皮膜を除去することが好ましい。使用の直前に有機皮膜を除去することにより、汚染の少ない銅または銅合金の表面が得られ、封止材との接着性を向上することができる。
有機皮膜の除去方法は特に問わないが、アルカリ性溶液に接触させる処理方法が好ましく、スプレー法やディップ法で行うことが効率的で好ましい。アルカリ性溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を溶解した水溶液が好ましく、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属化合物が有機皮膜の除去性に優れていることから、より好ましい。
また、アルカリ性溶液は、さらにアミンを含有していることが好ましい。アミンを含有することで均一かつ容易に有機皮膜を除去できる。使用できるアミンは特に問わないが、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンから選択されるエタノールアミンが有機皮膜の除去性に優れており、より好ましい。
アルカリ金属化合物の濃度は、5〜100g/Lが好ましく、30〜70g/Lがより好ましい。5g/L以上にすることで、有機皮膜の除去性が充分に得られやすくなり、アルカリ金属化合物が高濃度の場合に半導体実装用導体基板が変色する場合があり、100g/L以下にすることで銅リードフレームは変色しにくくなる。また、アミンの濃度は、5〜100g/Lが好ましく、30〜70g/Lがより好ましい。同様に、5g/L以上とすることで、有機皮膜の除去性が充分に得られやすくなり、100g/L以下とすることでアミンによる半導体実装用導体基板の変色が起こりにくくなる。
処理温度及び処理時間は、有機皮膜が完全に除去可能な条件を適宜決定することができるが、温度は30〜80℃、時間は10〜100秒であることが好ましい。
【0019】
(半導体パッケージ)
次に、本発明を適用した半導体パッケージについて説明する。ここでは、本発明の表面処理を行った銅リードフレームを用いたQFPを一例として説明するが、その他の半導体パッケージについても同様に適用することが可能である。
【0020】
(ダイボンド材)
半導体チップを銅リードフレームに接着するためのダイボンド材としては、半導体用のダイボンドペーストまたはダイボンドフィルムなどが使用できる。半導体パッケージの信頼性を向上させるためには、半導体チップと銅リードフレームの接着力が強い、ダイボンドフィルムを使用することが好ましい。ダイボンドフィルムは、熱可塑性と熱硬化性のものがあるが、低温接着可能な熱硬化性のものが好ましい。半導体チップの接着は、一般的な接着方法で行えば良い。例えば、所定のサイズのダイボンドフィルムを予め銅リードフレームのダイパッドに仮接着し、その後ダイボンダで半導体チップを熱圧着して接着することができる。また、半導体ウエハをダイボンドフィルム付きダイシングテープに貼り付けてダイシングすることで、半導体チップの裏面にダイボンドフィルムを仮接着し、これを銅リードフレームに熱圧着する方法もあり、この方法は効率的で好ましい。熱硬化性のダイボンド材を使用した場合は、半導体チップを搭載後にダイボンド材を加熱硬化するのが一般的であるが、特に熱硬化性のダイボンドフィルムを使用した場合は、封止材の後加熱時に同時に硬化することもできる。
【0021】
(封止材)
封止材としては、半導体を封止できる材料であれば良いが、半導体封止用エポキシ系封止材が好ましい。エポキシ系封止材は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤、カップリング剤、難燃剤を含有しているものが好ましい。
エポキシ樹脂は、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、アルキル置換、芳香環置換又は非置換のビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール等のジグリシジルエーテル、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノ−ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるアラルキル型フェノール樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化剤は、たとえば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のジクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて併用してもよい。
硬化促進剤は、たとえば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等のホスフィン化合物及びこれらのホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤は、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カップリング剤は、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができるが、アミノシランが好ましい。
難燃剤は、たとえば、リン化合物や赤リン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機物及び/又はフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆されたリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
更に、必要に応じて着色剤、可撓剤、イオン捕捉剤などその他添加剤を加えることが好ましい。
エポキシ系封止材を用いて半導体チップを封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【0022】
(めっき付き銅リードフレームおよび半導体パッケージの製造方法)
図4の(a)〜(d)に本発明におけるめっき付き銅リードフレーム22の製造方法を、図4の(e)〜(h)に本発明における半導体パッケージ10の製造方法の一実施形態を断面模式図で示す。ただし、製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。
【0023】
(工程a)
(工程a)は、図4(a)に示すとおり、銅または銅合金条21を準備する工程である。便宜上、短冊状に図示したが、実際はリール状のものを使用することが好ましい。
【0024】
(工程b)
(工程b)は、図4(b)に示すとおり、銅または銅合金条21をフレーム形状に加工する工程である。まずリール状の銅または銅合金条21の両端に、図2に示すようなガイド穴20等を形成し、続いてガイド穴20を用いて位置決めして、金型によって所定のパターンにスタンピングし、銅リードフレーム11に加工する。また、微細パターンが必要な場合は、エッチングでフレーム形状に加工することもできる。
【0025】
(工程c)
(工程c)は、図4(c)に示すとおり、本発明の表面処理を行う工程である。
(工程c−1)
(工程b)まで作製した銅リードフレーム11に、脱脂および酸洗浄処理を行う。脱脂処理は、酸性脱脂およびアルカリ性脱脂のいずれを用いても良いが、アルカリ性脱脂が好ましい。酸洗浄処理は、硫酸、塩酸、硝酸等が使用できるが、硫酸が好ましい。
(工程c−2)
次に、銅リードフレーム11を前述の化学粗化液に浸漬して、表面に有機皮膜付きの粗化形状を形成する(粗化工程)。粗化工程は、1段階で行っても、複数段階に分けて行っても良い。2段階で行う場合、すなわち、第1の化学粗化液に浸漬して第1粗化工程を行い、続けて第2の化学粗化液に浸漬して第2粗化工程を行う場合は、処理ムラを低減することができる。
(工程c−3)
最後に、前述の通りアルカリ性溶液に浸漬して有機皮膜を除去して、粗化形状付の銅リードフレーム22を得る。
【0026】
(工程d)
(工程d)は、図4(d)に示すとおり、めっきを行う工程である。前述のように、ダイパッド12の半導体チップ16が接着される面、及びインナーリード13の先端部である金ワイヤ18の接続部にめっき15を施し、めっき付き銅リードフレームを製造する。めっきの種類としては、銀、錫、ニッケル及び金が使用できる。
【0027】
以上の説明では、(工程c)の表面処理後に(工程d)のめっきを行う方法を説明したが、(工程d)のめっきを行った後に(工程c)の表面処理を行うこともできる。これにより、予めめっきされた金ワイヤ18の接続部には、粗化形状が形成されないため、ワイヤボンド性が向上して好ましい。
また、(工程b)をスタンピングで行うときは、(工程b)を(工程c)の後に行うことで、効率よく表面処理を行うことができ、さらに銅リードフレーム11の変形を低減できるため好ましい。
また、(工程b)を(工程d)の後に行うことで、効率よくめっきおよび表面処理を行うことができ、さらに銅リードフレーム11の変形が低減できるため好ましい。
また、(工程b)でパターンのみ加工して、リール状に繋がった状態で(工程c)および(工程d)を行うことで、さらに効率よく表面処理およびめっきを行うことができるため、より好ましい。
【0028】
(工程e)
(工程e)は、図4(e)に示すとおり、銅リードフレームに半導体チップ16を搭載する工程である。(工程d)まで作製した銅リードフレームに、ダイボンド材17を用いて半導体チップ16を接着させる。熱硬化性のダイボンド材17を使用した場合は、さらに加熱硬化することができる。
【0029】
(工程f)
(工程f)は、図4(f)に示すとおり、銅リードフレームと半導体チップ16を電気的に接続する工程である。半導体チップ16の電極と銅リードフレームのインナーリード13のめっき15の形成部分を、ワイヤボンダを用いて金ワイヤ18で電気的に接続する。
【0030】
(工程g)
(工程g)は、図4(g)に示すとおり、半導体チップ16を封止する工程である。半導体チップ16が搭載された銅リードフレームを封止用金型に装填し、トランスファーモールドにて封止材19で封止する。その後、封止材19の後加熱を行う。
【0031】
(工程h)
(工程h)は、図4(h)に示すとおり、銅リードフレームのアウターリード14部分を外形加工する工程である。複数の半導体パッケージが繋がった状態の銅リードフレームから、金型を用いてアウターリード14の切断と外形加工を行い、更に、必要に応じてアウターリード14にめっきを行い、本発明の半導体パッケージ10が製造できる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明を実施例に基づいて図面を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
本発明の半導体実装用導電基材の表面処理を適用して作製した半導体パッケージ(QFP)の信頼性を評価するために、以下のようにして銅リードフレームおよび半導体パッケージのサンプルを作製した。
【0034】
(工程a)
銅合金条21として、幅34.8mm、長さ25m、厚み150μmのリール状MF202材(三菱電機メテックス社製、商品名)を用意した。(図4(a))
【0035】
(工程b)
リール状の銅合金条21の両端に、図2に示すような、ガイド穴20等を形成し、続いてガイド穴20を用いて位置決めして、金型によってスタンピングし、幅34.8mm、長さ200mm、厚み150μmの銅リードフレーム11を作製した(図4(b))。
【0036】
(工程c)
(工程c−1)
(工程b)まで作製した銅リードフレーム11の表面を、200ml/Lに調整した酸性脱脂液Z−200(ワールドメタル社製、商品名)に液温50℃で2分間浸漬した後、液温50℃の水に2分間浸漬することにより湯洗し、さらに水洗した。次いで、3.6Nの硫酸水溶液に浸漬し、水洗した。
【0037】
(工程c−2)
次に、銅リードフレーム11を75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、5−アミノ−1H−テトラゾール2g/L、および1,2,3−ベンゾトリアゾール3g/Lからなる化学粗化液に液温30℃で2分間浸漬し(粗化工程)、その後水洗して表面粗さ1.4μmの有機皮膜付き銅リードフレームを作製した。
【0038】
(工程c−3)
皮膜除去工程として、水酸化ナトリウム40g/L、トリエタノールアミン50g/Lからなるアルカリ性溶液に40℃で3分間浸漬し、さらに水洗した後80℃で30分間乾燥させ、銅リードフレーム表面の有機皮膜を除去して粗化形状付き銅リードフレーム22を作製した(図4(c))。
【0039】
(工程d)
粗化形状付き銅リードフレーム22の表面にレジストを形成し、インナーリード13の端子部とダイパッド12を露出させて、銀めっき15を露出部分に施した後、レジストを剥離した(図4(d))。
【0040】
(工程e)
(工程d)まで作製した銅リードフレームのダイパッド12表面に、所定のサイズに切断したダイボンド材17であるDF−402(日立化成工業社製、商品名、ダイボンドフィルム)を120℃、15秒で仮接着した後、ダイボンダを用いて半導体チップ16を150℃、15秒でダイパッド12に接着した。その後、180℃、60分の加熱処理を行い、ダイボンド材17を硬化させた(図4(e))。
【0041】
(工程f)
半導体チップ16の電極と、銅リードフレームのインナーリード13の銀めっき15の形成部分とを、ワイヤボンダを用いてφ25μmの金ワイヤ18で電気的に接続した(図4(f))。
【0042】
(工程g)
(工程f)まで作製した銅リードフレームを封止用金型に装填し、トランスファーモールドにて封止材19であるCEL−9240HF10(日立化成工業社製、商品名)を用いて180℃、90秒で封止した。その後、180℃、5時間の加熱処理を行い、封止材19を完全硬化させた(図4(g))。
【0043】
(工程h)
複数の半導体パッケージが繋がった状態の銅リードフレームから、アウターリード加工用金型を用いてアウターリード14の切断と外形加工を行い、本発明の半導体パッケージ10を作製した(図4(h))。
【0044】
(実施例2)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、5−アミノ−1H−テトラゾール2g/L、からなる化学粗化液を用いて液温30℃で2分間浸漬して粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ0.6μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0045】
(実施例3)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、1,2,3−ベンゾトリアゾール3g/Lからなる化学粗化液を用いて液温30℃で2分間浸漬して粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ1.4μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0046】
(実施例4)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、5−アミノ−1H−テトラゾール1g/L、1,2,3−ベンゾトリアゾール2g/L、およびプロピレングリコール25mL/Lからなる第1の化学粗化液を用いて液温30℃で1分間浸漬して第1の粗化工程を行い、続いて75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、5−アミノ−1H−テトラゾール2g/L、1,2,3−ベンゾトリアゾール3g/L、およびプロピレングリコール25mL/Lからなる第2の化学粗化液を用いて液温30℃で1分間浸漬して第2の粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ1.4μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0047】
(実施例5)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、5−アミノ−1H−テトラゾール2g/L、および1,2,3−ベンゾトリアゾール0.5g/Lからなる化学粗化液を用いて液温30℃で2分間浸漬して粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ0.9μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0048】
(実施例6)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、5−アミノ−1H−テトラゾール2g/L、および1,2,3−ベンゾトリアゾール6g/Lからなる化学粗化液を用いて液温30℃で2分間浸漬して粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ2.1μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0049】
(実施例7)
(工程c−2)の水洗後に、(工程c−3)を行わずに80℃で30分間乾燥させ、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ1.4μmの、有機皮膜付き銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0050】
(実施例8)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、1,2,3−ベンゾトリアゾール20g/Lからなる化学粗化液を用いて液温30℃で2分間浸漬して粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ2.5μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0051】
(実施例9)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/L、1,2,3−ベンゾトリアゾール25g/Lからなる化学粗化液を用いて液温30℃で2分間浸漬して粗化工程を行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ2.4μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0052】
(実施例10)
(工程a)および(工程b)を行い、次に(工程d)の銀めっきを行った後に(工程c)の表面粗化処理を行った。それ以外は実施例6と同様に行って表面粗さ2.1μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0053】
(比較例1)
(工程c−2)および(工程c−3)を行わずに、(工程c)は(工程c−1)のみを行い、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ0.2μmの銅リードフレーム作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0054】
(比較例2)
(工程c−2)において、リン酸三ナトリウム10g/Lおよび水酸化カリウム25g/Lを含むアルカリ性溶液に亜塩素酸ナトリウム15g/L添加した酸化処理液に85℃で3分間浸漬し、水洗した後、80℃で30分間乾燥を行った。その後(工程c−3)は行わず、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ0.7μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0055】
(比較例3)
(工程c−2)において、マイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ8100(メック社製、商品名)に40℃で1分30秒間浸漬し、水洗した後、常温にて3.6Nの硫酸水溶液に浸漬し、水洗した後、80℃で30分間乾燥を行った。その後(工程c−3)は行わず、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ2.1μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0056】
(比較例4)
(工程c−2)において、75質量%硫酸水溶液80mL/L、35質量%過酸化水素水60mL/Lからなる混合液を用いて液温30℃で2分間浸漬し、2分間水洗した後、80℃で30分間乾燥を行った。その後(工程c−3)は行わず、それ以外は実施例1と同様に行って表面粗さ0.4μmの銅リードフレームを作製した。また、実施例1と同様にして半導体パッケージ10を作製した。
【0057】
(実施例11)
本発明の表面処理を行った銅リードフレームと封止材19との接着性を評価するために、以下の評価サンプルを作製した。
厚み150μmのリール状の銅合金条21であるMF202材(三菱電機メテックス社製、商品名)から、9mm角の被着体30を切り出し、実施例1の(工程c)に示す表面処理を行った。次に被着体30をトランスファーモールド用金型に装填し、実施例1の(工程g)と同様に封止材を硬化させ、図5に示すような、封止材31の接着面積が10mmの接着力測定サンプルを作製した。
【0058】
(実施例12)
被着体30に対して、実施例2の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0059】
(実施例13)
被着体30に対して、実施例3の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0060】
(実施例14)
被着体30に対して、実施例4の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0061】
(実施例15)
被着体30に対して、実施例5の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0062】
(実施例16)
被着体30に対して、実施例6の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0063】
(実施例17)
被着体30に対して、実施例7の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0064】
(実施例18)
被着体30に対して、実施例8の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0065】
(実施例19)
被着体30に対して、実施例9の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例11と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0066】
(比較例5)
被着体30に対して、比較例1の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例8と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0067】
(比較例6)
被着体30に対して、比較例2の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例8と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0068】
(比較例7)
被着体30に対して、比較例3の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例8と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0069】
(比較例8)
被着体30に対して、比較例4の(工程c)と同じ表面処理を施した以外は、実施例8と同様に接着力測定サンプルを作製した。
【0070】
(半導体パッケージの信頼性評価)
実施例1〜10および比較例1〜4で作製した各々22個の半導体パッケージのサンプルに対して、85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に168時間放置して吸湿処理を行った後、到達温度260℃、長さ2mのIRリフロー炉に0.5m/分の条件で各サンプルを流して、リフロー試験を行った。その後、各サンプルについて剥離やクラック発生の有無を調べ、いずれかが発生した場合をNGとし、NGとなる半導体パッケージ数を調べて、「フロー試験後のNG数」として表1に示した。
また、各々22個の半導体パッケージのサンプルを、−65℃、30分〜150℃、30分の条件で温度サイクル試験を行い、500サイクル目、1000サイクル目、1500サイクル目、2000サイクル目に、各サンプルについて剥離やクラック発生の有無を調べ、いずれかが発生した場合はそのサンプルをNGとし、NGとなるサンプル数を調べ、「温度サイクル試験後のNG数」として表1に示した。
【0071】
(銅リードフレームの外観評価)
実施例1〜10および比較例1〜4で作製した各々20枚の銅リードフレームの外観を目視で検査し、キズおよび処理ムラ発生の有無を調べ、いずれかが発生した場合はその銅リードフレームをNGとし、NGとなる銅リードフレーム数を調べた。結果を表2に示す。また、処理後の各銅リードフレームの十点平均表面粗さを表2に示す。なお、「キズ」とは、粗化形状形成後の製造工程で主に接触やコスレなどの物理的要因で発生した銅リードフレームの全体に対する割合である。「処理ムラ」とは、粗化の程度が均一でない場合にリードフレームの表面の色合いに微妙な変化(色ムラ)が生じた銅リードフレームの全体に対する割合である。
【0072】
(封止材との接着性評価)
実施例11〜19および比較例5〜8で作製した接着力測定サンプルを、図6に示すボンドテスタ BT2400(Dage社製、商品名)を用いてシェア強度を測定した。シェアツール32は被着体30から高さ100μmに固定し、試料台33を測定スピード50μm/秒で水平移動させて、封止材31と被着体30との接合面が破断されたときの強度を測定し、測定は各々5回測定して平均値を求め、「初期」の「シェア強度」として表3に示す。また、各接着力測定サンプルを220℃、20分間熱処理した後、同様にシェア強度を測定し、「220℃、20分熱処理後」の「シェア強度」として結果を表3に示す。
【0073】
(ワイヤボンドプル強度の評価)
実施例1〜10および比較例1〜4で作製した銅リードフレーム11に、実施例1の(工程e)(工程f)を行い、半導体チップ16の搭載およびワイヤボンドを行ったサンプルを作製し、ボンドテスタ BT2400(Dage社製、商品名)を用いて、ワイヤボンドプル強度を測定した。結果を表4に示す。なお、測定の条件はプルスピード0.5mm/秒であった。
【0074】
以上の結果から、本発明の実施例では、封止材との接着力、ワイヤボンドプル強度、表面のキズ、処理ムラ等の特性に優れた銅リードフレームを製造することができ、この銅リードフレームを用いることで、信頼性に優れた半導体パッケージを製造することができた。一方、従来技術を用いた比較例では、上記特性の全てを満足できる銅リードフレームおよび半導体パッケージを製造することはできなかった。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、封止材との接着性を向上できる半導体実装用導電基材の表面処理方法を提供するものであり、特に銅または銅合金よりなる放熱板やリードフレーム、およびこれらを用いた半導体パッケージに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0080】
10 半導体パッケージ(QFP)
11 導電基材(リードフレーム)
12 ダイパッド
13 インナーリード
14 アウターリード
15 めっき
16、56 半導体チップ
17、54 ダイボンド材(ダイボンドフィルム)
18、55 金ワイヤ
19、57 封止材
20 ガイド穴
21 銅または銅合金条
22 粗化形状付き銅リードフレーム
30 被着体
31 封止材(シェア強度測定用)
32 シェアツール
33 試料台
34 サンプル固定治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食抑制剤、硫酸及び過酸化水素を含有する化学粗化液を接触させて銅表面に粗化形状を形成する粗化工程を有し、
前記腐食抑制剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び5−アミノ−1H−テトラゾールを含有し、
前記粗化工程の後に、前記粗化工程で表面に形成される有機皮膜を、アミン及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選択されるアルカリ金属化合物を含有しているアルカリ性溶液に接触させて除去する皮膜除去工程を有する銅表面の処理方法。
【請求項2】
前記粗化工程は、第1の化学粗化液に接触させる第1粗化工程と、前記第1粗化工程の後に第2の化学粗化液に接触させる第2粗化工程からなる、請求項1に記載の銅表面の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−82528(P2012−82528A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21932(P2012−21932)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2009−270310(P2009−270310)の分割
【原出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】