説明

鋼材部品、鋼材の熱処理方法および熱処理装置

【課題】 薄い鋼材あるいは直径の小さな鋼材であっても熱変形させることなく、外表面に300μm未満の熱処理された硬化層を有する鋼材部品を提供する。
【解決手段】 1〜4MHzの超高周波が出力2〜15kWで供給された誘導加熱手段に鋼材を近接させ、鋼材および誘導加熱手段の少なくとも一方を移動させながら鋼材の表面を加熱し、加熱直後の鋼材表面を急冷することによって熱処理し、鋼材の表面に50μm以上300μm未満の硬化層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に熱処理によって形成された硬化層を有する鋼材部品、鋼材の熱処理方法および熱処理装置に関する。なお、本明細書においては、鋼材とは熱処理前のもの、鋼材部品とは熱処理が施され硬化層が形成されたものを示す。
【背景技術】
【0002】
炭素鋼などでなる鋼材は、例えばシャフト、ネジ、バルブ部品、歯車等の各種部品材料として用いられている。このような鋼材には、その用途に応じて耐磨耗性、耐疲労特性等の機械的特性を向上させるため焼入れ等の熱処理が施される。熱処理の方法としては例えば炎焼入れ、レーザー焼入れ、高周波焼入れがあるが、中でも高周波焼入れは表皮効果によって鋼材の表面のみ加熱することができるので、部分的に硬化層を形成する場合に好適に用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1においては、被処理部材としてトランスミッション部品を用い、その被処理面を冷却液中に浸漬した状態でコイルを近づけて2.5MHzの超高周波を供給し、0.3mm〜0.4mmの厚さの硬化層が設けられた熱処理の例が記載されている。
【特許文献1】特開2002−356713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波の周波数が高いほど硬化層が薄く形成され得ることは知られているが、高周波電力の供給を短時間に制御しても、今まで厚さ300μm未満の硬化層を形成することはできなかった。特に薄い被処理部材あるいは直径の小さな被処理部材に対しては、加熱された表面からその内部深くまで熱が伝導してしまい、被処理材が変形してしまうという問題もあり、薄い硬化層を形成する技術が望まれていた。上記特許文献1に記載される熱処理は、冷却液中に被処理部材を浸漬した状態で行われ、鋼材表面の加熱が冷却と同時になされるため十分な硬度を持つ300μm未満の硬化層を得ることは難しく、また冷却が緩慢であるため鋼材内部まで熱が入りこむ恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋼材の新規な熱処理方法およびその装置を見出し、鋼材表面に300μm未満の硬化層を有する新規な鋼材部品を製造するに至った。
すなわち、本発明の鋼材部品は、鋼材の外表面に厚さ50μm以上300μm未満の熱処理された硬化層を有してなることを特徴とする。
【0006】
本発明の鋼材の熱処理方法は、鋼材に上記厚さの硬化層を形成するための方法であり、鋼材を、この鋼材表面に1〜4MHzの超高周波が出力5〜15kWで供給できる誘導加熱手段に近接させ、鋼材および誘導加熱手段の少なくとも一方を移動させながら鋼材の表面を加熱し、加熱直後の鋼材表面を急冷することを特徴とする。
【0007】
本発明の鋼材の熱処理装置は、本発明の熱処理方法を実施するのに好適な装置であり、誘導加熱手段と、この誘導加熱手段に1〜4MHzの超高周波を供給する発振装置と、鋼材素材を保持して前記誘導加熱手段に近接するように移動させる保持冶具と、加熱直後の鋼材素材表面を急冷する冷却手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来なかった100μm以上300μm未満の薄い硬化層を有する鋼材部品を提供することができる。また、本発明の熱処理方法によれば、誘導加熱による熱の影響を鋼材の内部まで及ぼすことがないので、直径の小さな棒状の鋼材、あるいは厚さの薄い鋼材に対しても熱処理することができる。本発明の熱処理装置によれば、鋼材表面の加熱と加熱直後の冷却を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照してさらに詳細に説明する。
【0010】
本発明の鋼材部品は、本発明の以下の熱処理方法、すなわち、1〜4MHzの超高周波が出力5〜15kWで供給された誘導加熱手段に鋼材を近接させ、鋼材および誘導加熱手段の少なくとも一方を移動させながら鋼材の表面を加熱し、加熱直後の鋼材表面を急冷することにより製造することができる。図1は、本発明の鋼材部品の一例を示し、丸棒状の鋼材1にこの熱処理を施してなる鋼材部品3を軸方向に直交する面で切断した状態を示している。その外表面には硬化層2が形成され、その厚さTは100μm以上300μm未満である。
【0011】
誘導加熱は1〜4MHz、好ましくは1.5〜2.5MHz、さらに好ましくは2MHz程度の超高周波を用いて行う。1MHz未満では鋼材の表面における渦電流の発生部位が300μm以上の深い部分まで及ぶ恐れがある。周波数が高いほど表面効果により渦電流は鋼材表面の浅い部位に集中させることができるが、4MHzより高い周波数では、放電状態となってエネルギーが空中に放出され、鋼材の誘導加熱がなされない恐れがある。
【0012】
超高周波の出力は、2〜15kW、好ましくは8〜12kW、さらに好ましくは10kW程度である。2kW未満では十分な硬度を持った硬化層が得られない恐れがある。また15kW以上では、過熱されて硬化層の厚さが300μm以上になり、また、薄い鋼材あるいは細い鋼材を熱処理する場合には塑性変形する恐れがある。
【0013】
上記誘導加熱は、鋼材表面に超高周波が供給できる状態の誘導加熱手段と鋼材を近接させ、瞬時に高エネルギーの磁場を鋼材へ供給することにより行う。また、誘導加熱手段と鋼材の少なくとも一方を移動させながら加熱することで、鋼材表面近くのみを加熱し、かつ鋼材深層部に加熱の影響が及ぶことを防止することができる。鋼材が棒状である場合、特に鋼材を周方向に回転させて軸方向に移動させながら誘導加熱手段に近接させてその表面を加熱すれば、鋼材深層部への熱の侵入を防ぐためにより効果的である。
【0014】
さらに、誘導加熱手段からの磁場を集約した状態で鋼材表面に供給すれば、より効率よく集中してエネルギーを鋼材表面に供給できるだけでなく、加熱部位を限定し、他の部位への影響を防ぎながら処理することができ好ましい。
【0015】
鋼材表面の硬化層の形成は、加熱方法だけでなく加熱部位の冷却状態にも影響されるため、薄く形成するためには加熱後急冷することが必要である。鋼材表面の急冷は水等の冷却液あるいは冷却ガスを噴射することによって行うことが好ましく、特に冷却液を用いることがより好ましい。この冷却液の噴射は鋼材表面に対して斜めの方向から、すなわち、少なくとも鋼材の移動する方向とは直交する平面上において鋼材表面に対し傾斜した方向から、加熱中の部位が冷却されないように行うことが好ましい。
【0016】
上記冷却液の噴射の方向について、例えば鋼材が図6(a)に示すような角棒状である場合について説明する。この角棒状の鋼材61の移動方向がその軸方向Xである場合、冷却液は鋼材61の表面62に対して斜めの方向Aから噴射される。この方向Aは、軸方向Xに対して直交する面S上で、表面62に対し真っ直ぐな方向Bよりも所定の角度αだけ傾斜した方向である(なお、上記「鋼材の移動する方向とは直交する平面上において鋼材表面に対し傾斜した方向」とは、鋼材が棒状である場合にはその周方向に傾斜した方向となる)。このような角度αを有する複数の方向Aから鋼材61の表面62に向けて冷却液を噴射した場合の、表面62上の冷却液の流れを図6(b)に点線の矢印で示す。また、図7(a)に示すように、鋼材が丸棒状であってこれを軸方向Xに移動させながら冷却する場合は、鋼材71の中心に向けた方向B(表面72に対し真っ直ぐな方向)よりも、円周方向に所定の角度αだけ傾いた方向Aから鋼材表面72に向けて冷却液の噴射を行う。このような角度αを有する複数の方向Aから鋼材71の表面72に冷却液を噴射した場合の、表面72上の水の流れを図7(b)に点線の矢印で示す。
【0017】
このような棒状の鋼材61、71を、先述のように周方向に回転させかつ軸方向に移動させながら誘導加熱手段に近接させてその表面を加熱し、加熱直後の部位を冷却する場合には、鋼材の中心に向けた方向よりも前記回転の方向に傾斜した方向から冷却液を噴射し冷却する。
【0018】
上記のように鋼材表面に斜めの方向から冷却液を噴射することにより、図6(b)、図7(a)、図7(b)に点線の矢印で示したように冷却液が鋼材表面上をまつわりながら連続して流れ落ちるため、鋼材表面に対して真っ直ぐに噴射するよりも均一かつ急速に効率よく加熱部位を冷却することができる。さらに、冷却液が鋼材表面で跳ね返ることを軽減することができるため、冷却効率を向上させるだけでなく、加熱中の鋼材表面に冷却液がかかることを防止することもできる。なお、方向AおよびAを、軸方向XあるいはXの下向きに適宜傾斜させてもよい。それによりさらに、冷却液が螺旋状に鋼材61、71の表面62、72にまつわるように流れ落ちやすくすることができる。
【0019】
なお、冷却液の温度は、温度が高いとこの冷却液の中に気泡が生じやすくなり冷却効率が下がるおそれがあるので、少なくとも室温程度以下、さらには20℃前後であることが好ましい。
【0020】
硬化層の厚さや硬さは、これら熱処理の諸条件を変えることにより調節することが可能である。例えば、超高周波の出力と鋼材の移動速度についていえば、同じ出力であれば移動速度が速いほど硬化層は薄くなり、移動速度が同じであれば出力が大きいほど硬化層は厚くなる傾向がある。同じ厚さの硬化層を有する鋼材部品であっても、大きな出力で短時間処理したものよりも小さな出力で長時間処理したものの方が硬化層が密になる傾向があるので、鋼材部品に要求される硬化層の質や作業効率等を考慮し、適宜熱処理条件を設定すればよい。
【0021】
本発明の熱処理方法は、棒状、板状、また平面の一部に筋状の突起あるいは溝を有するレール形状や歯車形状等の異形状等の鋼材いずれにも適用可能であるが、鋼材表面の浅い部位のみを加熱でき、かつその加熱による影響を鋼材の深層部に及ぼすことがないので、直径または厚さが6mm以下の鋼材に対しても変形することなく熱処理することができる。なお、ここで直径とは、鋼材が断面形状多角形の棒状である場合にはこの多角形に外接する円の直径をいうものとする。
【0022】
また、鋼材の材料としては、構造用鋼、炭素鋼、工具鋼、合金鋼、ステンレス鋼、ばね鋼、軸受鋼等が挙げられる。炭素鋼としては、JISのS10C〜S60C等、合金鋼としては、JISのSNC(ニッケルクロム鋼)、SNCM(ニッケルクロムモリブデン鋼)、SCr(クロム鋼)、SCM(クロムモリブデン鋼)等が挙げられる。特に好ましくは炭素鋼である。鋼材中の炭素の含有量は0.05〜2.1%であることが好ましい。
【0023】
次に、本発明の熱処理装置について説明する。図2は装置の構成を示した概略図である。熱処理装置は、誘導加熱手段4と、この誘導加熱手段4に1〜4MHzの超高周波を供給する発振装置5と、鋼材1を保持して前記誘導加熱手段4に近接するように移動させる保持冶具6と、加熱直後の鋼材1の表面を急冷する冷却手段7を有する。
【0024】
発振装置5には発振される周波数と電力を制御する制御手段8が備えられており、変成器9を介して誘導加熱手段4に超高周波を供給するように構成されている。発振装置5は、トランジスタ方式、真空管方式等の1〜4MHzの超高周波を発振可能なものであれば特に限定されないが、ノイズおよび消費電力の少なさ、また装置の小型化が容易であるという点からトランジスタ方式の発振装置が好ましく用いられる。
【0025】
誘導加熱手段4は、図3および図4に示すように、超高周波電流が供給された際に磁場を発生させるコイル10および、これにろう付された導電性の板状体11でなる。コイル10はこれと一体形成された一対のリード部10a、10bにより変成器9と接続されており、また板状体11にはリード部10a、10bの分岐点に相当する位置にスリット11aが設けられている。コイル10と板状体11は、銅等導電性を有する材料であればいずれを用いて形成してもよい。コイル10および板状体11は、電流印加時にこれら自身も加熱されてしまうので、鋼材1に誘導加熱以外の熱の影響を与えないために、冷却手段を備えることが好ましい。例えば、図4に示すようにコイル10がパイプ形状を有し、そのパイプ内部には水等の冷却液12が流れる構成とする。
【0026】
コイル10の形状は必ずしも円でなくともよく、角張った形状、楕円形状など、被処理物である鋼材の形状等に合わせてその大きさや形状を適宜調節して用いることができる。
【0027】
板状体11はコイル10の内周中央位置に相当する部分に、鋼材1が通過可能な大きさの開口部13を有し、鋼材1をこの開口部13を通過させた際にその縁部14から磁場を鋼材1の表面に供給する構成となっている。これにより誘導加熱手段4で発生した磁場を集約して鋼材1表面に供給することができる。この開口部13の縁部14においては、より磁場を集約するため図4にその断面が示されるように、板状体11の他の部分と比べて厚さが薄くなるように形成することが好ましい。
【0028】
鋼材1を保持する保持冶具6は上記誘導加熱手段4の上方に設けられている。保持冶具6にはこれを回転させるモータ15および上下方向に移動させる手段(図示せず)が備えられており、鋼材1を回転させながらコイル10および板状体11の開口部13を通過させる構成となっている。なお、これらモータ15および前記移動させる手段にはこれらの動作を制御する装置(図示せず)が設けれられている。
【0029】
上記板状体11の下方には冷却手段7が設けられている。この冷却手段7は、図4に示すように、その内部に給水管16を備えた環状体であり、その内周部には、給水管16と連通し、環の中心に向かって突出する複数のノズル17が設けられている。上記ノズル17は、図5に示すように、環状体の中心に向かう向きよりも環状体の周方向に傾斜した向きに、さらに図4に示すように下方(鋼材1の移動方向)にやや傾斜した向きに備えられている。
【0030】
冷却手段7上の板状体11との間の位置には、塩化ビニル等の樹脂、ガラス等の絶縁体でなるシート状体18が設けられており、絶縁すると共にノズル17から噴射した冷却液が誘導加熱手段4側に跳ね返ることを防止する構成となっている。さらに、冷却手段7の下方には、冷却液を受ける排水槽19が設けられている。
【0031】
次に、この熱処理装置を用いて棒状の鋼材1を熱処理する場合の動作について説明する。まず、発振装置5から超高周波をコイル10に供給し、板状体11の開口部13の縁部14に磁場を集約させ、次いで前記ノズル17からは冷却液を噴射させる。熱処理装置をこの状態で保持し、誘導加熱手段4の上部位置にて保持冶具6に固定した鋼材1を回転させながら下降させ、開口部13および冷却手段7内を通過させる。これにより、鋼材1の表面は連続的に加熱、そして冷却され熱処理が終了する。なお、冷却される際、ノズル17の上方に前記シート状体18があるため、これらの間の空間では冷却液が蒸発することにより生じた正圧によって、噴射中の冷却液が下方に押し出され、さらに確実に鋼材1の加熱中の部位に冷却液がかかることが防止されると考えられる。鋼材1の上部の所定位置まで誘導加熱手段4内を通過させたら超高周波の供給を止め、保持冶具6を上昇させ(この時冷却液は噴射したままでもよい)熱処理装置から取り出す。
【0032】
上記においては、棒状の鋼材をコイルの内部を通して熱処理する場合、あるいは鋼材がコイル内部を通過可能な大きさのものである場合について述べたが、本発明は棒状以外の板状やコイルの内部を通過できない大きさや形状の鋼材に対しても適用可能である。
【0033】
例えば、コイルの内径より大きな幅および長さを有する板状の鋼材を熱処理する場合は、以下のように行うことが可能である。誘導加熱手段の外側部位において磁場が作用する位置に鋼材表面を近接させ、鋼材および/または誘導加熱手段を鋼材表面から所定の近接した距離を保持し移動させながら加熱する。加熱直後、誘導加熱手段に隣接する位置に設けた冷却手段によって、鋼材表面に対し斜め方向から冷却液を噴射させ急冷することにより処理を行う。
【実施例1】
【0034】
図2〜図5において示される上述の構成の熱処理装置において、発振装置としてMOSFET方式発振器を装置を使用し、誘導加熱後噴霧する冷却液として約20℃の水を用いてJISのS45C炭素鋼でなる丸棒状鋼材を熱処理した。
高周波誘導条件:2MHz、10kW
鋼材の直径:6mm
鋼材の長さ:10cm
鋼材の回転数:30rps
鋼材の送り速度:17.6mm/sec
これにより、表面に290μmの硬化層を有する鋼材部品が得られた。鋼材部品表面のビッカース硬度は700HVであった。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同様の装置を用い、同様の素材でなり、直径が異なる丸棒状鋼材を熱処理した。
高周波誘導条件:2MHz、10kW
鋼材の直径:3mm
鋼材の長さ:10cm
鋼材の回転数:30rps
鋼材の送り速度:50mm/sec
これにより、表面に139μmの硬化層を有する鋼材部品が得られた。鋼材部品表面のビッカース硬度は602であった。
【実施例3】
【0036】
実施例1と同様の装置を用い、実施例2と同様の丸棒状鋼材について下記の通り条件を変えて熱処理した。
高周波誘導条件:2MHz、6.5kW
鋼材の直径:3mm
鋼材の長さ:10cm
鋼材の回転数:30rps
鋼材の送り速度:50mm/sec
これにより、表面に90μmの硬化層を有する鋼材部品が得られた。鋼材部品表面のビッカース硬度は597であった。
【実施例4】
【0037】
実施例1と同様の装置を用い、実施例2と同様の丸棒状鋼材について下記の通り条件を変えて熱処理した。
高周波誘導条件:2MHz、6.0kW
鋼材の直径:3mm
鋼材の長さ:10cm
鋼材の回転数:30rps
鋼材の送り速度:50mm/sec
これにより、表面に79μmの硬化層を有する鋼材部品が得られた。鋼材部品表面のビッカース硬度は515であった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の鋼材部品の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の熱処理装置の一実施態様の構成を示す概略図である。
【図3】図2の熱処理装置を構成する誘導加熱手段の斜視図である。
【図4】図2の熱処理装置によって鋼材に熱処理を施す状態を示す縦断面図である。
【図5】図2の熱処理の熱処理装置を構成する冷却装置の横断面図である。
【図6】本発明の熱処理方法において角棒状の鋼材に水が噴射される角度を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
【図7】本発明の熱処理方法において丸棒状の鋼材に水が噴射される角度を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図である。
【符号の説明】
【0039】
1、51、61 鋼材
2 硬化層
3 鋼材部品
4 誘導加熱手段
5 発振装置
6 保持冶具
7 冷却手段
10 コイル
11 板状体
13 開口部
14 縁部
17 ノズル
52、62 鋼材表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の外表面に厚さ50μm以上300μm未満の熱処理された硬化層を有してなる鋼材部品。
【請求項2】
鋼材の形状が棒状であり、その直径が2〜6mmである請求項1記載の鋼材部品。
【請求項3】
鋼材を、この鋼材表面に1〜4MHzの超高周波が出力2〜15kWで供給できる誘導加熱手段に近接させ、鋼材および誘導加熱手段の少なくとも一方を移動させながら鋼材の表面を加熱し、加熱直後の鋼材表面を急冷することを特徴とする鋼材の熱処理方法。
【請求項4】
鋼材表面の急冷を、冷却液を噴射することによって行う請求項3記載の鋼材の熱処理方法。
【請求項5】
鋼材表面の急冷は、少なくとも前記鋼材の移動する方向とは直交する平面上において鋼材表面に対し傾斜した方向から、冷却液が鋼材表面にまつわるように噴射することによって行う請求項4記載の鋼材の熱処理方法。
【請求項6】
鋼材が棒状であって、前記鋼材表面に対して傾斜した方向が、鋼材の周方向に傾斜した方向である請求項5記載の鋼材の熱処理方法。
【請求項7】
棒状の鋼材を、周方向に回転させかつ軸方向に移動させながら誘導加熱手段に近接させてその表面を加熱し、加熱直後の部位に、鋼材の中心に向けた方向よりも前記回転の方向に傾斜した方向から冷却液を噴射し冷却することを特徴とする鋼材の熱処理方法。
【請求項8】
誘導加熱手段と、この誘導加熱手段に1〜4MHzの超高周波を供給する発振装置と、鋼材素材を保持して前記誘導加熱手段に近接するように移動させる保持冶具と、加熱直後の鋼材素材表面を急冷する冷却手段とを備えたことを特徴とする鋼材の熱処理装置。
【請求項9】
前記誘導加熱手段が、コイルと、このコイルで生じた磁場を集約して前記鋼材素材表面に供給する導電性部材とを備えた請求項8記載の鋼材の熱処理装置。
【請求項10】
前記導電性部材が、コイルと接合された板状体であって、コイルの内周の中央位置に鋼材が通過可能な大きさの開口部を有する請求項9記載の鋼材の熱処理装置。
【請求項11】
前記板状体の厚さがその開口部の縁部において他の部分より薄く形成されている構造を有する請求項10記載の鋼材素材の熱処理装置。
【請求項12】
前記発振装置がトランジスタ式発振装置である請求項8記載の鋼材の熱処理装置。
【請求項13】
前記冷却手段が、給水管をその内部に備えた環状体であり、環状体の内周側に給水管に連通しかつ環状体の中心に向かって周方向に傾斜した向きに設けられた一以上のノズルを有する請求項8記載の鋼材の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−328439(P2006−328439A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149471(P2005−149471)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(391017849)山梨県 (19)
【出願人】(591090828)ワイエス電子工業株式会社 (10)
【出願人】(505189051)浅川熱処理株式会社 (1)
【出願人】(505189062)有限会社丸眞熱処理工業 (1)
【Fターム(参考)】