鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール及びこれを用いた金属ナノ粒子
鎖末端官能性化したメトキシ(ポリエチレングリコール)(mPEG)及びその製造方法、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを調製するためのリビングメトキシポリ(エチレングリコール)、上記鎖末端官能性化メトキシポリ(エチレングリコール)により形成したミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されているナノ粒子及び、上記遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法が開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール及びその製造方法に関する。また、本発明は上記官能性化したメトキシポリエチレングリコールを製造するためのリビングメトキシポリエチレングリコールに関する。また、本発明は上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールが形成したミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されている遷移金属またはその金属塩のナノ粒子に関する。また、本発明は上記遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水溶性薬物などのカプセル化に有用なポリエチレンオキシドの一方の末端を官能性化させる方法及びこれらの応用分野などが研究されてきている(J. M. Harris et al,, Nature Reviews Drug Discovery, 2003, Vol. 2, pages 214−221及びS. Zalipsky et al, Bioconjugate Chemistry, 1995, Vol. 6, pages 150-165)。これと関連して、リビングアニオン重合法を用いてポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを合成する方法は、多くの文献に詳しく説明されている(S. Slomkowski et al, “Anionic Ring−opening polymerization”, in Ring−Opening Polymerization: Mechanism, Catalysis, Structure, Utility; Editied by D. J. Brunelle, 1993, Chap. 3, pages 87−128及びR. P. Quirk et al, “Macromonomers and Macromonomers”, in Ring−Opening Polymerization: Mechanism, Catalysis, Structure, Utility; Editied by D. J. Brunelle, 1993, Vol. 9, pages 263−293)。
【0003】
ポリエチレングリコールと各種の高分子物質とのブロック共重合体の製造方法は、文献に詳しく説明されている(例えば、Jankova, K. et al., Macromolecules, 1998, Vol. 31, pages 538−541及びTopp, M. D. C. et al, Macromolecules, 1997, Vol. 30, pages 8518−8520)。
【0004】
また、pHに応答性のあるヒドロゲルとしては、カルボキシ基、スルホン酸基、アミン基、またはアンモニウム塩基を有するビニル系単量体の重合により得られた高分子電解質が用いられてきている(R. S. Harland et al., “Polyelectrolyte Gels; Properties, Preparation, and Applications, “ACS Symp. Series #480, Am. Chem. Soc. Washington, D. C., 1992, Chap. 17, page 285参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、上記問題点を解決することである。
【0006】
本発明の別の実施形態の目的は、メトキシポリエチレングリコールをリビングアニオン重合法を用いて製造し、鎖末端官能性化を通じて分子量が調節可能なメトキシポリエチレングリコール系高分子素材の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の実施形態の目的は、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを製造するためのリビングメトキシポリエチレングリコールを提供することである。
【0008】
本発明の別の実施形態の目的は、ナノ寸法の遷移金属または金属塩粒子を提供することである。
【0009】
本発明の別の実施形態の目的は、ビタミン、抗癌剤などの薬物に上記メトキシポリエチレングリコールを結合させて高分子薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、下記一般式1の構造を持つ末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコール:
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様による鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールは、下記一般式2〜5で表される化合物からなる群より選ばれることを特徴とする。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
式中、R1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
R4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、ヒドロキシ基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)、2−ブロモイソブチリル基、2−ブロモプロピオニル基、メタクリレート基または無水物基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。
【0019】
本発明の態様による一般式2の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−2)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップ、及び(b−2)上記得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空下で官能性化物質と反応させ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の別の態様による一般式3の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−3)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、(b−3)上記ステップ(a−3)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴンや窒素気流下でトリメリット酸無水物クロライドと反応させるステップと、(c−3)ω−無水メトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴンや窒素気流下で官能性化物質と反応させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の別の態様による一般式4の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−4)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、(b−4)上記ステップ(a−4)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールの鎖末端を真空下で2−ブロモイソブチリルまたは2−ブロモプロピオニルで官能性化させるステップと、(c−4)鎖末端に臭素基を有するメトキシポリエチレングリコールを開始剤とし、スルホンアミドメタクリレート単量体またはN−イソプロピルアクリルアミド単量体と原子移動ラジカル重合反応させてブロック共重合体を得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の別の態様による一般式5の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−5)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、(b−5)上記ステップ(a−5)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをメタクリロイルクロライドと反応させ、メタクリレート基で鎖末端が官能性化したメトキシポリエチレングリコールを提供するステップと、(c−5)メタクリレート基で鎖末端が官能性化されたメトキシポリエチレングリコールをマクロモノマーとし、N−イソプロピルアクリルアミド単量体またはスルホンアミドメタクリレート単量体とラジカル重合反応させてグラフト共重合体を得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の別の態様による高分子−薬物複合体は、高分子と薬物が結合された高分子−薬物複合体であって、上記複合体は、R2及びYが葉酸のようなビタミン;またはインジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれる上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0024】
本発明の別の態様によれば、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールによって形成されたミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されている、遷移金属又はその金属塩のナノ粒子が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物(例えば、金属塩、水和物)を溶媒に溶解させて還元剤の存在下で反応させる、遷移金属またはその金属塩のナノ粒子を製造する方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、例えば、ビタミン、抗癌剤物質、スルホンアミド系物質などの種々の官能性材料が付着した、分子量が調節されたメトキシポリエチレングリコール系高分子薬物、及びpHまたは熱応答性機能を有するメトキシポリエチレングリコール系グラフトまたはブロック共重合体を容易に製造することができて、さらに、上記種々の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール系高分子を用いて1〜500nm、好ましくは、1〜100nmの粒度を有する遷移金属またはその金属塩のナノ粒子を容易に製造することができる。したがって、本願発明は、例えば、造影剤及び抗癌剤を同時に運搬する、薬物運搬体系に用いて好適な新素材を開発する上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に従い製造されたリビングメトキシポリエチレングリコールのNMRデータを示す図である。
【図2】実施例1に従い製造されたリビングメトキシポリエチレングリコールのGPCデータを示す図である。
【図3】実施例2に従い製造されたmPEG系マクロ開始剤のNMRデータを示す図である。
【図4】実施例2に従い製造されたmPEG系マクロ開始剤のGPCデータを示す図である。
【図5】実施例3に従い製造されたmPEG系マクロモノマーのNMRデータを示す図である。
【図6】実施例3に従い製造されたmPEG系マクロモノマーのGPCデータを示す図である。
【図7】実施例4に従い製造されたω−スルホン化mPEGのNMRデータを示す図である。
【図8】実施例4に従い製造されたω−スルホン化mPEGのGPCデータを示す図である。
【図9】実施例5に従い製造されたω−チオール化mPEGのNMRデータを示す図である。
【図10】実施例5に従い製造されたω−チオール化mPEGのGPCデータを示す図である。
【図11】実施例6に従い製造されたω−無水物基mPEGのNMRデータを示す図である。
【図12】実施例6に従い製造されたmPEGω−無水物のGPCデータを示す図である。
【図13】実施例7に従い製造されたmPEG−ドキソルビシンのNMRデータを示す図である。
【図14】実施例7に従い製造されたmPEG−ドキソルビシンのGPCデータを示す図である。
【図15】実施例8に従い製造されたmPEG−スルファメタジンのNMRデータを示す図である。
【図16】実施例8に従い製造されたmPEG−スルファメタジンのGPCデータを示す図である。
【図17】実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸のNMRデータを示す図である。
【図18】実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸のGPCデータを示す図である。
【図19】実施例10に従い製造されたmPEG−バンコマイシンのNMRデータを示す図である。
【図20】実施例10に従い製造されたmPEG−バンコマイシンのGPCデータを示す図である。
【図21】実施例11に従い製造されたmPEG−g−NiPAM共重合体のNMRデータを示す図である。
【図22】実施例11に従い製造されたmPEG−g−NiPAM共重合体のGPCデータを示す図である。
【図23】実施例12に従い製造されたmPEG−g−MASX共重合体のNMRデータを示す図である。
【図24】実施例12に従い製造されたmPEG−g−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【図25】実施例13に従い製造されたmPEG−b−MASX共重合体のNMRデータを示す図である。
【図26】実施例13に従い製造されたmPEG−b−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【図27】実施例14に従い製造されたmPEG−b−MASX及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図28】実施例15に従い製造されたω−スルホン化mPEG及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図29】実施例16に従い製造されたω−チオール化mPEG及び金のナノ粒子のTEM写真である。
【図30】実施例17に従い製造されたω−スルホン化mPEG及び金のナノ粒子のTEM写真である。
【図31】実施例18に従い製造されたmPEG−TMA−ドキソルビシン及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図32】実施例19に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図33】実施例20に従い製造されたmPEG−g−MASX及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図34】実施例21に従い製造されたmPEG−スルファジアジンのNMRデータを示す図である。
【図35】実施例22に従い製造されたω−スルホン化mPEG及び硫化カドミウムのナノ粒子のTEM写真である。
【図36】実施例23に従い製造されたω−チオール化mPEG及び硫化カドミウムのナノ粒子のTEM写真である。
【図37】実施例24に従い製造されたmPEG−バンコマイシン及び銀のナノ粒子のTEM写真である。
【図38】実施例25に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸及び銀のナノ粒子のTEM写真である。
【図39】実施例26に従い製造されたω−チオール化mPEG及び銀のナノ粒子のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0029】
本発明の実施形態では、上記一般式2〜一般式5の任意の化合物は、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、及びスルホンアミド基(−SO2NH−)などを含むように製造可能である。例えば、上記ステップ(a−2)、(a−3)、(a−4)または(a−5)(以下、「(a)」と総称する)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールに1,3−プロパンスルトンを添加すると末端に−SO3H基が、プロピレンスルィド単量体を投入すると−SH基が、二酸化炭素を投入すると−COOH基が生成される。
【0030】
さらに、一般式3の化合物を溶媒中で葉酸などのビタミン類;又はアンプレナビル、ドキソルビシン、パクリタキセル、及びバンコマイシンなどのアミド基(−NH2)若しくはスルホンアミド基(−SO2NH−基)系薬物などと反応させると、ポリエチレンオキシド鎖末端(Yグループ、R2)に薬物が導入された高分子薬物を得ることもできる。
【0031】
上記一般式において、nは10〜500の整数であることが好ましい。これは、分子量が上記範囲外であると反応性が顕著に低下し、反応歩留まりに影響を与え得るためである。また、重合をするに際し、kは1〜10の整数、mは5〜50の整数であることが好ましい。これは、一般式4におけるマクロ開始剤、一般式5におけるマクロモノマーが構造的に立体障害を起こし得るためである。
【0032】
本発明の一実施形態による鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法において、ステップ(a)の出発物質であるメトキシポリエチレングリコールの分子量は500〜20,000g/molであることが好ましい。分子量がこの範囲外であると、立体障害等の要因によって反応性が顕著に低下し、低い反応収率になる。
【0033】
上記ステップ(a)では、メトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させることで、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得ることができる。上記アルキルアルカリ金属は、アルキルリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム及び上記リチウムをナトリウム、カリウム、セシウムまたはルビジウムで置換したアルキルアルカリ金属から選ばれた一種以上であることが好ましい。その中でも特にブチルリチウムが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態による鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法において、ステップ(b−2)、(b−3)、(b−4)、(b−5)(以下、「(b)」と総称する。)は、ステップ(a)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをスルトン(例えば、1,3−プロパンスルトンまたは1,4−ブタンスルトン)、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、トリメリット酸無水物クロライド、メタクリロイルクロライド、2−ブロモイソブチリルブロマイド、2−ブロモプロピオニルブロマイド、又は2−ブロモプロピオニルクロライドなどと真空またはアルゴン若しくは窒素気流下で反応させることで得られる。
【0035】
上記ステップ(b)において使用される溶媒は、ベンゼン/DMSO、ベンゼン/メタノール/DMSOでよい。官能性化ステップ(b)は、20〜80℃の反応温度で、6〜48時間行われ得る。
【0036】
さらに、上記ステップ(b)においてメトキシポリエチレングリコールの鎖末端に種々の官能性基を定量的に導入することができ、上記一般式2〜5で表される鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを得ることができる。ここで、官能性基としては、限定されるものではないが、水素、ヒドロキシル基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシル基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−);葉酸などのビタミン;及びドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン、アンプレナビルなどのアミン基またはスルホンアミド基を含んだ薬物などを含んでよい。
【0037】
また、ステップ(a)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをトリメリット酸無水物クロライドと反応させて、無水物基含有メトキシポリエチレングリコールを得ることができる。生成した無水物基含有メトキシポリエチレングリコールをメタノールまたは水などの溶媒中で葉酸などのビタミン;ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルなどのアミド基またはスルホンアミド基を含む薬物などと反応させると、メトキシポリエチレングリコール鎖末端に薬物が導入された一般式3の高分子薬物が得られる。
【0038】
ステップ(c−3)、(c−4)及び(c−5)(以下、「(c)と総称する。」は、グラフトまたはブロック共重合体を調製するステップである。具体的には、ステップ(b)において得られた鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールとして、マクロ開始剤(例えば、Xが2−ブロモイソブチリル基または2−ブロモプロピオニル基である式(2)の化合物)をN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)またはスルファジアジンなどのスルホンアミド系メタクリル酸単量体と溶媒中で触媒系の存在下で反応(原子移動ラジカル重合)させ、上記一般式4のブロック共重合体を得ることができる。
【0039】
また、マクロモノマー(例えば、Xがメタクリレートである式2の化合物)をN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)、またはスルファジアジンなどのようなスルホンアミド系メタクリレート単量体と溶媒中で開始剤(過酸化ベンゾイル(BPO)あるいはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))の存在下で反応(ラジカル重合)させ、上記一般式5のグラフト共重合体で表される熱またはpH応答性のメトキシポリエチレングリコール系共重合体を得ることができる。
【0040】
上記ステップ(c)において使用される反応溶媒は、水若しくはシクロヘキサン、又はベンゼン若しくはトルエンなどの非極性溶媒とテトラヒドロフラン(THF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒との混合溶媒(非極性/極性の混合体積比は90/10〜70/30でよい)を使用することができる。開始剤、過酸化ベンゾイルまたはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)でよい。触媒としては、銅系原子移動ラジカル重合触媒などを使用してよい。また、ラジカル重合ステップ(c)は、20〜80℃の温度で行われることが好ましい。
【0041】
上述のとおり、本発明によれば、薬物を含む種々の官能性基を、特定の分子量を有するメトキシポリエチレングリコール中に効率よく導入することができる。さらに、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を用いて遷移金属含有化合物(例えば、金属塩又は金属水和物)のナノ寸法化を容易に達成することができる。このナノ寸法化された金属又は金属塩の粒子は、ポリマーが水溶性mPEG系材料であるポリマーカプセル化粒子の形態で得られる。このようにして、それらは、水性媒体並びに有機溶媒中で容易に溶解し得る。
【0042】
ここで、用語「遷移金属含有化合物」とは、遷移金属を含む化合物を総称するものであって、金属塩または金属水和物が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、この遷移金属含有化合物は、FeCl3、FeCl2、HAuCl4、Cd(OAc)2・xH2O及びAgNO3からなる群より選ばれる一種以上でよい。
【0043】
上記のようにして得られた官能性基を有するメトキシポリエチレングリコールを用いて金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、カドミウムスルフィド(CdS)、酸化鉄(γ−Fe2O3またはFe3O4)、PbSなどのような遷移金属及びその金属塩は、ナノクラスターの形態で安定化が可能である。このナノクラスターの粒度は、好ましくは1nm〜500nmで、より好ましくは、1nm〜100nmである。
【0044】
遷移金属またはその金属塩のナノ粒子としては、Au、Ag、Pt(II)、Pd(II)、CdS、PbS、TiO2、γ−Fe2O3、Fe3O4の粒子が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本発明による遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法において、出発物質としての遷移金属含有化合物の溶液の濃度は0.01〜1g/mLであることが好ましい。反応温度は5℃〜70℃であることが好ましく、これは、所望の粒子の粒度や反応速度に応じて調節が可能である。還元剤としては、水酸化アンモニウム(NH4OH)、ヒドラジン一水和物(N2H2)、NaBH4、H2O2、H2S、Na2Sなどが使用されてよい。上記方法において、鎖末端官能性化したメトキシ−ポリエチレングリコール:金属またはその金属塩のモル比は、100:1〜1:1であることが好ましい。ポリマーの量が多すぎるとナノ粒子の含量が過度に小さくなる。ポリマーの量が少なすぎると金属ナノ粒子が安定化しにくくなるため不均一な粒子を形成し、沈殿物が発生する。上記方法は、有機溶媒だけでなく水溶液中の金属又はその塩のナノクラスターの調製を可能にする。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を挙げて詳述するが、本発明が下記の実施例に制限されるものではない。
【0047】
<実施例1>
容量2Lの丸いパイレックス(登録商標)製フラスコ内にメトキシポリエチレングリコール(分子量5,000g/mol、Aldrich社;Poly(ethylene glycol)methyl ether(mPEG))0.01モルを入れた後、真空ラインに取り付けて空気を完全に抜き取り乾燥した。ベンゼン1Lを蒸留してm−PEGを溶解させた。氷水槽を使用して温度を下げながら、アルゴン気流下でn−ブチルリチウム(30mL)を注射器を用いてゆっくりと生成溶液に注入し、その後、ゆっくり30℃まで温度を上げた。48時間反応させ、透明であった色が徐々に黄色へと変色していくことを確認した後、メタノールを少量蒸留して入れ、空気と接触させて反応を終了した。ジエチルエーテル中に沈澱させて末端基がリチウム(Li)で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコール(mPEG−Li)を得た。得られた高分子の数平均分子量は5,000g/molであった。図1は、上記得られたリビングメトキシポリエチレングリコールのNMRデータを示す図であり、図2は、上記得られたリビングメトキシポリエチレングリコールのGPCデータを示す図である。
【0048】
<実施例2>
実施例1に従い合成された重合体のアルコキシド溶液200mL([mPEG−Li]=6.3mmol)に2−ブロモイソブチリルブロマイド(20mL、THF中の20mmol)を投入し、室温下で攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を除去した。得られた残渣をエタノールから再結晶して粉末(mPEG系マクロ開始剤)を得た。得られた高分子は、GPCによる数平均分子量が5,300g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端臭化率は95mol%以上であった。図3は、上記得られたmPEG系マクロ開始剤のNMRデータを示す図であり、図4は、上記得られたmPEG系マクロ開始剤のGPCデータを示す図である。
【0049】
<実施例3>
実施例1に従い合成されたリビングメトキシポリエチレングリコール溶液200mL([mPEG−Li]=6.3mmol)にメタクリロイルクロライド(30mmol)を加え、常温下で24時間撹拌させた。反応終了後、得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、得られた残渣をTHFに再溶解させて、ジエチルエーテルに沈澱させた後、さらにエチルアルコールから再結晶させて、mPEG系マクロモノマーを得た。得られた高分子の数平均分子量は5,100g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端官能性化率は95mol%以上であった。図5は、上記得られたmPEG系マクロモノマーのNMRデータを示す図であり、図6は、上記得られたmPEG系マクロモノマーのGPCデータを示す図である。
【0050】
<実施例4>
実施例1で得られたリビングメトキシポリエチレングリコール(Mw=5,000g/mol)の溶液200mLに1,3−プロパンスルトンのTHF溶液を添加した後([mPEG−Li]/[スルトン]=1/3、mol/mol)、常温下で24時間反応させてω−スルホン化mPEGを合成した。得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を一部除去し、ジエチルエーテルに沈澱させた後、さらにTHFに溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、粉末を得た。合成された高分子のGPC分析による数平均分子量は5,100g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端官能性化率は95mol%以上であった。図7は、上記得られたω−スルホン化mPEGのNMRデータを示す図であり、図8は、上記で得られたω−スルホン化mPEGのGPCデータを示す図である。
【0051】
<実施例5>
実施例1で得られたリビングメトキシポリエチレングリコール溶液200mL(Mw=5,000g/mol、6.3mmol)に精製されたプロピレンスルフィドを添加した後([mPEG−Li]/[PPS]=1/3、mol/mol)、常温の高真空下で6時間反応させて高分子の鎖末端にチオール基を導入した。生成物をジエチルエーテルに沈澱させて回収した後、THFに再溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、粉末を得た。得られた高分子のGPCによる数平均分子量は5,100g/molであり、1H−NMRによって測定した鎖末端チオール化率は95mol%以上であった。図9は、上記得られたω−チオール化mPEGのNMRデータを示す図であり、図10は、上記得られたω−チオール化mPEGのGPCデータを示す図である。
【0052】
<実施例6>
実施例1で得られた分子量Mw=5,000g/molのリビングmPEG溶液([mPEG−Li]=0.001mol)を含む反応器に、トリメリット酸無水物クロライド(98%)(Aldrich社製)0.005モルのTHF液60mLをシリンジで投入した。この混合物を5℃で1時間、35℃で15時間反応させた後、ジエチルエーテルに沈澱させて溶媒を除去した。生成した残渣をTHFに溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、ω−無水物−mPEGを得た。鎖末端官能性化率は最初に使用された高分子溶液の濃度を基準として約85mol%であり、数平均分子量は5,200g/molであった。図11は、上記得られたω−無水物−mPEGのNMRデータを示す図であり、図12は、実施例6に従い製造されたω−無水物−mPEGのGPCデータを示す図である。
【0053】
<実施例7>
実施例6に従い合成されたω−無水物−メトキシポリエチレングリコール(mPEG−TMA、Mn=5,200g/mol、1.5g)とドキソルビシンクロライド(0.17g)/MeOH(50mL)を100mLの反応器に入れ、窒素ガス雰囲気下で24時間反応させた。生成物をジメチルエーテルに沈澱させて回収し、さらにジエチルエーテルで数回洗浄した。沈殿物をTHFに溶解させると、THFに可溶な部分と不溶な部分が分離した。THFに可溶な部分はmPEG−ドキソルビシン(mPEG−TMA−Dox)を含み、THFに不溶な部分は未反応ドキソルビシンを含む。THFに可溶な部分を濃縮して赤色固体粉末(mPEG−TMA−Dox)を得た。得られた粉末は、その鎖末端にドキソルビシン基を有するメトキシ−ポリエチレングリコールの高分子薬物であった。その高分子薬物の数平均分子量は5,800g/molであり、官能性化率は、1H−NMRによる分析の結果、95mol%以上であった。図13は、上記得られたmPEG−ドキソルビシンのNMRデータを示す図であり、図14は、上記得られたmPEG−ドキソルビシンのGPCデータを示す図である。
【0054】
<実施例8>
実施例6に従い製造されたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、0.01mol)とスルファメタジン(0.03mol)/エチルアルコール(50mL)を250mLの反応器内に投入した。次に、そこへエチルアルコール100mLを入れ、70℃で攪拌しながら、12時間還流条件下で反応させた。反応終了後、生成物を常温下でジエチルエーテルに沈澱させ、エチルアルコール中において再結晶させて固体を得た(mPEG−スルホンアミド)。得られた高分子の数平均分子量は5,400g/molであり、反応収率は、使用されたmPEG量を基準にして約95mol%以上であった。図15は、上記得られたmPEG−スルファメタジンのNMRデータを示す図であり、図16は、上記で得られたmPEG−スルファメタジンのGPCデータを示す図である。
【0055】
<実施例9>
実施例6に従い製造されたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、1g)と葉酸(0.42g、5当量)を20mLのDMSO中で常温下、約24時間反応させた。生成物をジエチルエーテルに沈殿させて、さらにTHFに再溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、黄色の粉末を得た(mPEG−TMA−FA)。得られたポリマーの数平均分子量は5,600g/molであり、反応収率は、mPEGを基準にして98mol%以上であった。図17は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸のNMRデータを示す図であり、図18は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸のGPCデータを示す図である。
【0056】
<実施例10>
実施例6で得られたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、0.8g)とバンコマイシン(0.68g、3当量)を20mLのDMSO中で常温下、約80時間反応させた。生成物をメタノールに溶かした後、ジエチルエーテルに沈澱させて灰色の粉体を得た。得られたポリマーのGPCによる数平均分子量は6,500g/molであり、1H−NMR測定による鎖末端官能性化率は98mol%以上であった。図19は、上記得られたmPEG−バンコマイシンのNMRデータを示す図であり、図20は、上記得られたmPEG−バンコマイシンのGPCデータを示す図である。
【0057】
<実施例11>
実施例3に従い製造されたマクロモノマー(1.6mol%)とN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM;98.4mol%)との共重合を次のとおりに行った。先ず、250mLの3口フラスコ内に4−(ブロモメチル)安息香酸(0.25mmol)、苛性ソーダ(0.5mmol)及び蒸留水20mLを窒素ガス雰囲気下で投入し、約30分かけてゆっくりと攪拌した。100mLの2口フラスコにおいて、メトキシポリエチレングリコールマクロモノマー(2.55g;0.5mmol)/蒸留水(50mL)の溶液をアルゴンガス雰囲気下で調製した。他の100mLの2口フラスコ内において、NiPAM(3.4g;30mmol)/蒸留水(50mL)の溶液をアルゴンガス雰囲気下で攪拌しながら調製した。開始剤が入っている250mlのフラスコ内にMe6TREN(リガンド;0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)の混合物を注入した。1分後にカニューレを用いてそれぞれマクロモノマー溶液を反応器内に注入させると同時に、注射器を用いてNiPAM溶液を反応器内に注入した。常温下、アルゴン気流下で攪拌しながら生成した混合物を3時間撹拌させた。この生成溶液を50℃の蒸留水に沈澱させて4.5gの粉末を得た。得られたグラフト共重合体の数平均分子量は18,000g/molであった。図21は、上記得られたmPEG−g−NiPAM共重合体のNMRデータを示す図であり、図22は、上記得られたmPEG−g−NiPAM共重合体のGPCデータを示す図である。
【0058】
<実施例12>
実施例3に従い製造されたマクロモノマー(5mol%)とスルホンアミドメタクリルアミド単量体(MASX;95mol%)との共重合を下記のようにして行った。先ず、250mLの3口フラスコ内に4−(ブロモメチル)安息香酸(0.25mmol)、苛性ソーダ(0.5mmol)及び蒸留水20mLを窒素気流下で投入し、約30分かけてゆっくりと攪拌した。別の100mLの2口フラスコ内でメトキシ−ポリエチレングリコールマクロモノマー(2.55g;0.5mmol)/蒸留水(50mL)の溶液をアルゴン気流下で調製した。他の100mLの2口フラスコ内において、スルホンアミドメタクリルアミド(MASX;3.8g;10mmol)/NaOH(50mmol)/H2O(50mL)の溶液をアルゴン気流下で調製した。開始剤が入っている250mlのフラスコ内にMe6TREN(リガンド;0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)の混合物を注入した。1分後に、カニューレを用いてそれぞれマクロモノマー溶液を反応器内に注入させると同時に、注射器を用いてMASX溶液を反応器内に注入した。常温下、アルゴン気流下で攪拌させながら生成した混合物を3時間反応させた。過量のHCl溶液を投入して反応を止め、生成溶液をpH4.5の蒸留水に沈澱させて、約4.9gの粉末を得た。得られたグラフト共重合体の数平均分子量は19,000g/molであった。図23は、上記得られたmPEG−g−MASX共重合体のNMRデータを示す図であり、図24は、上記得られたmPEG−g−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【0059】
<実施例13>
実施例2で合成された鎖末端に臭素基を有するmPEGを開始剤として使用して、原子移動ラジカル重合(atom transfer radical polymerization)を下記のように行った。先ず、250mLの3口フラスコ内にH2O/THF(100mL/10mL)を注入し、次に、そこへ合成されたmPEG系マクロ開始剤(Mn=5,300g/mol、1.25g)を投入し、アルゴン気流下で完全に溶解させた。100mLの2口フラスコ内において、MASX(2.6g;7mmol)/NaOH(0.301g;7mmol)を蒸留水(50mL)に完全に溶解させた。上記250mLのフラスコ内にMe6TREN(0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)の混合物を注入し、約10分間攪拌した。この生成混合物に、MASX溶液をカニューラを用いて投入し、2時間重合させた。重合を止め、生成溶液をHCl水溶液に沈澱させて粉末を得た。HCl/メタノールを用いてこの粉末を数回洗浄させ、真空オーブン中において乾燥させた。このようにして得られたブロック共重合体の数平均分子量は15,000g/molであった。図25は、上記得られたmPEG−b−MASX共重合体のNMRデータを示す図であり、図26は、上記得られたmPEG−b−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【0060】
<実施例14>
実施例13に従い製造されたブロック共重合体(mPEG−b−P(スルホンアミド))0.15gを20mLのバイアルに入れ、DMF(99%)3mLを添加して完全に溶解させた。次いで、それにFeCl3(0.146gのFeCl3/10mLのDMF)溶液1mLを注射器を用いて注入した。次いで、磁気攪拌棒を用いてゆっくりと攪拌しながら10分、この混合物を撹拌した。バイアル中の溶液の色は褐色であった。この混合物へ、1mLのヒドラジン一水和物(N2H2、和光純薬製、98%)をそれ以上の色の変化がなくなるまで撹拌しながら徐々に加えた。それ以上の色の変化及び気泡の発生が起きなくなったときに、生成混合物を過量のメタノールに沈澱させてろ過し、この後、洗浄し、乾燥させてベージュ色の粉末を得た。透過電子顕微鏡(TEM)分析による粒度は2〜20nmの範囲であった。図27は、上記得られたmPEG−b−MASX酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0061】
<実施例15>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したmPEG0.51gを20mLのバイアルに投入し、DMF(99%)5mLを用いて完全に溶解させた。次いで、それにFeCl2(0.4gのFeCl2/1mLのDMF)溶液2mLを注射器を用いて注入した。さらにNaOH水溶液(12.5N)5mLをこの混合物に添加した後、60℃まで昇温させて攪拌した。そこに、注射器を用いて1.5mLのNH4OHを注入し、約6時間攪拌した後、常温まで降温させて、さらに24時間攪拌した。褐色の不溶性部分をろ過して除去し、生成溶液は減圧蒸留して濃縮した。生成した残渣をメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈澱させて、黄色の粉末を得た。TEM分析による粒度は3〜10nmの範囲であった。図28は、上記得られたω−スルホン化mPEG−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0062】
<実施例16>
実施例5に従い合成された鎖末端にチオール基を有するメトキシ−ポリエチレングリコール(Mn=5,100g/mol)0.51gをテトラヒドロフラン(THF)10mLに完全に溶解させた。30mLのバイアル内にAldrich社から購入したHAuCl4(2.0×10-4モル)を入れた後、THF(10mL)に溶解させて溶液を調製した。ここに、THF/メタノール混合溶液(9/1、v/v)10mLに溶解させたNaBH4(1.6×10-2モル)を注射器を用いて投入した。このTHFに溶解させた高分子溶液を上記混合された溶液に注射器を用いて投入し、次に、常温下で24時間攪拌した。この溶媒を蒸発させて一部除去し、この残渣をジメチルエーテルに沈澱させて、薄紫色の粉末を得た。TEM分析による粒度は、2〜10nmの範囲であった。図29は、上記得られたω−チオール化mPEG−金ナノ粒子のTEM写真である。
【0063】
<実施例17>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したmPEG0.51gを20mLのバイアルに投入し、THF(99%)5mLによって完全に溶解させた。30mLのバイアルにAldrich社から購入したHAuCl4(2.0×10-4モル)を注入した後、THF(10mL)に溶解させて溶液を調製した。ここに、THF/メタノール混合溶液(9/1、v/v)10mLに溶解させたNaBH4(1.6×10-2モル)を注射器を用いて注入した。この混合物に、THFに溶解させた高分子溶液を注射器を用いて投入し、次に常温下で24時間攪拌した。減圧蒸留して溶媒を一部除去し、この残渣をジメチルエーテルに沈澱させて、薄紫色の粉末を得た。TEM分析による粒度は、3〜20nmの範囲であった。図30は、上記得られたω−スルホン化mPEG−金ナノ粒子のTEM写真である。
【0064】
<実施例18>
実施例7に従い製造されたmPEG−TMA−Dox(Mn=5,800g/mol)1.0gを20mLのバイアルに入れ、メタノール10mLを加えて完全に溶解させた。この混合物に、FeCl3溶液(0.48gのFeCl3/100mLのメタノール)1mLをピペットを用いて注入した後、1mLのN2H2を注射器を用いてゆっくりと注入し、次に、2時間攪拌した。不溶性部分をろ過によって除去した。この残渣をジエチルエーテルに沈澱させて、次に数回洗浄して紫色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析を行ったところ、2〜20nmの粒度を有するナノハイブリッドが形成されていた。図31は、上記得られたmPEG−TMA−ドキソルビシン−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0065】
<実施例19>
実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−FA(Mn=5,600g/mol)1.5gを脱酸素化蒸留水50mLに溶解させた。そこにFeCl2/FeCl3(1mol/2mol、0.4g/1.0g)を入れて、攪拌しながら80℃まで昇温させた。ここに、1.5mLのNH4OHを入れて、30分間攪拌した。この生成混合物を常温まで冷却し、攪拌しながら24時間反応させた。生成溶液から、黒褐色の不溶性部分をろ過して取り出し、水を除去した。生成した残渣をメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈澱させて黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析による粒度は、2〜10nmの範囲であった。図32は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0066】
<実施例20>
実施例12に従い製造されたグラフト共重合体0.15gを20mLのバイアルに投入し、DMF(99%)3mLを添加して完全に溶解させた。ここに、FeCl3(0.146gのFeCl3/10mLのDMF)溶液1mLを注射器を用いて添加した後、磁気攪拌棒を用いてゆっくりと10分間攪拌した。このとき、溶液の色は褐色であった。ここに、還元剤としてのヒドラジン一水和物(N2H2、和光純薬製98%)1mLをそれ以上の色の変化がなくなるまで撹拌しながら徐々に加えた。それ以上の色の変化及び気泡発生が起きなくなったときに、この生成溶液を過量のメタノールに沈澱させてろ過した。ろ過物をさらに数回洗浄した後乾燥して、ベージュ色の粉末を得た。透過電子燎微鏡による粒度は、3〜30nmの範囲であった。図33は、上記得られたmPEG−g−MASX−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0067】
<実施例21>
実施例6に従い製造されたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、0.01mol)とスルファジアジン(0.03mol)/エチルアルコール(50mL)を250mLの反応器内に投入し、エチルアルコール100mLを添加した。70℃の温度下で還流条件下で12時間反応させた。得られた生成物を常温下でジエチルエーテルに沈澱させ、エチルアルコールから再結晶させて固体(mPEG−スルホンアミド)を得た。GPC分析による得られた高分子の数平均分子量は6,000g/molであり、反応収率は、使用されたmPEGの量を基準にして約85mol%以上であった。図34は、上記得られたmPEG−スルファジアジンのNMRデータを示す図である。
【0068】
<実施例22>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したmPEG(Mn=5,100g/mol)0.51gを20mLのバイアルに投入し、トルエン/メタノール(90/10、v/v)5mLを注入して完全に溶解させた。ここに、カドミウムアセテート水和物(Cd(OAc)2・xH2O;6.38×10-4モル)0.147gをトルエン/メタノール(90/10、v/v)混合溶液10mLに溶解させて加えた。溶液の色が黄色に変わるまで、攪拌しながら注射器を用いて硫化水素(H2S)ガスをゆっくりと注入した。次に、それを6時間撹拌した。生成混合物をジエチルエーテルに沈澱させて黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析による粒度は、2〜30nmの範囲であった。図35は、上記得られたω−スルホン化mPEG−硫化カドミウムナノ粒子のTEM写真である。
【0069】
<実施例23>
実施例5に従い製造された鎖末端にチオール基を有するmPEG(Mn=5,100g/mol)0.51gを20mLのバイアルに投入し、トルエン/メタノール(90/10、v/v)5mLを注入してmPEGを完全に溶解させてCdS粉末を得たことを除いては、実施例22と同様な工程をくり返した。得られた粉末の粒度は、SEM分析によると2〜30nmの範囲であった。図36は、上記得られたω−チオール化mPEG硫化カドミウムナノ粒子のTEM写真である。
【0070】
<実施例24>
実施例10に従い製造されたmPEG−TMA−バンコマイシン(Mn=6,500g/mol)0.5gを蒸留水100mLに完全に溶解させた。さらに、AgNO3(1/5当量mPEGモル)及び還元剤としてNaBH4(1当量AgNO3モル)をそこへ加えた。この混合物を常温下、8時間攪拌しながら反応させた後に、メタノールに溶かしてジエチルエーテルに沈澱させ、灰色の粉体を得た。メタノールにこの粉末を溶かした後に、TEM測定による粒度は5〜15nmの範囲であった。図37は、上記得られたmPEG−TMA−バンコマイシンのナノ粒子のTEM写真である。
【0071】
<実施例25>
実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−FA(Mn=5、600g/mol)1.5gを脱酸素化蒸留水50mLに溶解させ、AgNO3(0.01mol)を投入した後、攪拌しながら40℃まで昇温させた。さらに、NH4OH溶液1.5mLを注入し、30分間攪拌した。次いで、反応温度を常温まで下げて、攪拌しながら、24時間反応させた。生成溶液から、黒褐色の不溶性部分をろ過して除去し、次に水を除去した。生成した残渣をメタノールに溶解させてジメチルエーテルに沈澱させて、黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析による粒度は、2〜50nmの範囲であった。図38は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸−銀ナノ粒子のTEM写真である。
【0072】
<実施例26>
実施例5に従い製造されたω−チオール化−mPEG(Mn=5,100g/mol)2.5gを脱酸素化蒸留水に溶解させ、AgNO3(0.01mol)を投入した後に、攪拌しながら40℃まで昇温させた。さらに、この混合物へ、NH4OH溶液1.5mLを注入し、次に30分間攪拌した。次いで、生成した混合物を常温まで冷却して、さらに24時間撹拌した。この生成溶液から、黒褐色の不溶性部分をろ過して除去し、次に水を除去した。生成した残渣をメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈澱させて黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析によるこの粉末の粒度は、2〜50nmの範囲であった。図39は、上記得られたω−チオール化−mPEG−銀ナノ粒子のTEM写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール及びその製造方法に関する。また、本発明は上記官能性化したメトキシポリエチレングリコールを製造するためのリビングメトキシポリエチレングリコールに関する。また、本発明は上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールが形成したミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されている遷移金属またはその金属塩のナノ粒子に関する。また、本発明は上記遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水溶性薬物などのカプセル化に有用なポリエチレンオキシドの一方の末端を官能性化させる方法及びこれらの応用分野などが研究されてきている(J. M. Harris et al,, Nature Reviews Drug Discovery, 2003, Vol. 2, pages 214−221及びS. Zalipsky et al, Bioconjugate Chemistry, 1995, Vol. 6, pages 150-165)。これと関連して、リビングアニオン重合法を用いてポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを合成する方法は、多くの文献に詳しく説明されている(S. Slomkowski et al, “Anionic Ring−opening polymerization”, in Ring−Opening Polymerization: Mechanism, Catalysis, Structure, Utility; Editied by D. J. Brunelle, 1993, Chap. 3, pages 87−128及びR. P. Quirk et al, “Macromonomers and Macromonomers”, in Ring−Opening Polymerization: Mechanism, Catalysis, Structure, Utility; Editied by D. J. Brunelle, 1993, Vol. 9, pages 263−293)。
【0003】
ポリエチレングリコールと各種の高分子物質とのブロック共重合体の製造方法は、文献に詳しく説明されている(例えば、Jankova, K. et al., Macromolecules, 1998, Vol. 31, pages 538−541及びTopp, M. D. C. et al, Macromolecules, 1997, Vol. 30, pages 8518−8520)。
【0004】
また、pHに応答性のあるヒドロゲルとしては、カルボキシ基、スルホン酸基、アミン基、またはアンモニウム塩基を有するビニル系単量体の重合により得られた高分子電解質が用いられてきている(R. S. Harland et al., “Polyelectrolyte Gels; Properties, Preparation, and Applications, “ACS Symp. Series #480, Am. Chem. Soc. Washington, D. C., 1992, Chap. 17, page 285参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、上記問題点を解決することである。
【0006】
本発明の別の実施形態の目的は、メトキシポリエチレングリコールをリビングアニオン重合法を用いて製造し、鎖末端官能性化を通じて分子量が調節可能なメトキシポリエチレングリコール系高分子素材の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の実施形態の目的は、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを製造するためのリビングメトキシポリエチレングリコールを提供することである。
【0008】
本発明の別の実施形態の目的は、ナノ寸法の遷移金属または金属塩粒子を提供することである。
【0009】
本発明の別の実施形態の目的は、ビタミン、抗癌剤などの薬物に上記メトキシポリエチレングリコールを結合させて高分子薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、下記一般式1の構造を持つ末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコール:
【0011】
【化1】
【0012】
式中、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様による鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールは、下記一般式2〜5で表される化合物からなる群より選ばれることを特徴とする。
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
【化5】
【0018】
式中、R1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
R4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、ヒドロキシ基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)、2−ブロモイソブチリル基、2−ブロモプロピオニル基、メタクリレート基または無水物基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。
【0019】
本発明の態様による一般式2の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−2)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップ、及び(b−2)上記得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空下で官能性化物質と反応させ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の別の態様による一般式3の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−3)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、(b−3)上記ステップ(a−3)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴンや窒素気流下でトリメリット酸無水物クロライドと反応させるステップと、(c−3)ω−無水メトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴンや窒素気流下で官能性化物質と反応させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の別の態様による一般式4の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−4)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、(b−4)上記ステップ(a−4)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールの鎖末端を真空下で2−ブロモイソブチリルまたは2−ブロモプロピオニルで官能性化させるステップと、(c−4)鎖末端に臭素基を有するメトキシポリエチレングリコールを開始剤とし、スルホンアミドメタクリレート単量体またはN−イソプロピルアクリルアミド単量体と原子移動ラジカル重合反応させてブロック共重合体を得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の別の態様による一般式5の構造を持つ鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法は、(a−5)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、(b−5)上記ステップ(a−5)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをメタクリロイルクロライドと反応させ、メタクリレート基で鎖末端が官能性化したメトキシポリエチレングリコールを提供するステップと、(c−5)メタクリレート基で鎖末端が官能性化されたメトキシポリエチレングリコールをマクロモノマーとし、N−イソプロピルアクリルアミド単量体またはスルホンアミドメタクリレート単量体とラジカル重合反応させてグラフト共重合体を得るステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の別の態様による高分子−薬物複合体は、高分子と薬物が結合された高分子−薬物複合体であって、上記複合体は、R2及びYが葉酸のようなビタミン;またはインジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれる上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0024】
本発明の別の態様によれば、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールによって形成されたミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されている、遷移金属又はその金属塩のナノ粒子が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物(例えば、金属塩、水和物)を溶媒に溶解させて還元剤の存在下で反応させる、遷移金属またはその金属塩のナノ粒子を製造する方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、例えば、ビタミン、抗癌剤物質、スルホンアミド系物質などの種々の官能性材料が付着した、分子量が調節されたメトキシポリエチレングリコール系高分子薬物、及びpHまたは熱応答性機能を有するメトキシポリエチレングリコール系グラフトまたはブロック共重合体を容易に製造することができて、さらに、上記種々の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール系高分子を用いて1〜500nm、好ましくは、1〜100nmの粒度を有する遷移金属またはその金属塩のナノ粒子を容易に製造することができる。したがって、本願発明は、例えば、造影剤及び抗癌剤を同時に運搬する、薬物運搬体系に用いて好適な新素材を開発する上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に従い製造されたリビングメトキシポリエチレングリコールのNMRデータを示す図である。
【図2】実施例1に従い製造されたリビングメトキシポリエチレングリコールのGPCデータを示す図である。
【図3】実施例2に従い製造されたmPEG系マクロ開始剤のNMRデータを示す図である。
【図4】実施例2に従い製造されたmPEG系マクロ開始剤のGPCデータを示す図である。
【図5】実施例3に従い製造されたmPEG系マクロモノマーのNMRデータを示す図である。
【図6】実施例3に従い製造されたmPEG系マクロモノマーのGPCデータを示す図である。
【図7】実施例4に従い製造されたω−スルホン化mPEGのNMRデータを示す図である。
【図8】実施例4に従い製造されたω−スルホン化mPEGのGPCデータを示す図である。
【図9】実施例5に従い製造されたω−チオール化mPEGのNMRデータを示す図である。
【図10】実施例5に従い製造されたω−チオール化mPEGのGPCデータを示す図である。
【図11】実施例6に従い製造されたω−無水物基mPEGのNMRデータを示す図である。
【図12】実施例6に従い製造されたmPEGω−無水物のGPCデータを示す図である。
【図13】実施例7に従い製造されたmPEG−ドキソルビシンのNMRデータを示す図である。
【図14】実施例7に従い製造されたmPEG−ドキソルビシンのGPCデータを示す図である。
【図15】実施例8に従い製造されたmPEG−スルファメタジンのNMRデータを示す図である。
【図16】実施例8に従い製造されたmPEG−スルファメタジンのGPCデータを示す図である。
【図17】実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸のNMRデータを示す図である。
【図18】実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸のGPCデータを示す図である。
【図19】実施例10に従い製造されたmPEG−バンコマイシンのNMRデータを示す図である。
【図20】実施例10に従い製造されたmPEG−バンコマイシンのGPCデータを示す図である。
【図21】実施例11に従い製造されたmPEG−g−NiPAM共重合体のNMRデータを示す図である。
【図22】実施例11に従い製造されたmPEG−g−NiPAM共重合体のGPCデータを示す図である。
【図23】実施例12に従い製造されたmPEG−g−MASX共重合体のNMRデータを示す図である。
【図24】実施例12に従い製造されたmPEG−g−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【図25】実施例13に従い製造されたmPEG−b−MASX共重合体のNMRデータを示す図である。
【図26】実施例13に従い製造されたmPEG−b−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【図27】実施例14に従い製造されたmPEG−b−MASX及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図28】実施例15に従い製造されたω−スルホン化mPEG及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図29】実施例16に従い製造されたω−チオール化mPEG及び金のナノ粒子のTEM写真である。
【図30】実施例17に従い製造されたω−スルホン化mPEG及び金のナノ粒子のTEM写真である。
【図31】実施例18に従い製造されたmPEG−TMA−ドキソルビシン及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図32】実施例19に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図33】実施例20に従い製造されたmPEG−g−MASX及び酸化鉄のナノ粒子のTEM写真である。
【図34】実施例21に従い製造されたmPEG−スルファジアジンのNMRデータを示す図である。
【図35】実施例22に従い製造されたω−スルホン化mPEG及び硫化カドミウムのナノ粒子のTEM写真である。
【図36】実施例23に従い製造されたω−チオール化mPEG及び硫化カドミウムのナノ粒子のTEM写真である。
【図37】実施例24に従い製造されたmPEG−バンコマイシン及び銀のナノ粒子のTEM写真である。
【図38】実施例25に従い製造されたmPEG−TMA−葉酸及び銀のナノ粒子のTEM写真である。
【図39】実施例26に従い製造されたω−チオール化mPEG及び銀のナノ粒子のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0029】
本発明の実施形態では、上記一般式2〜一般式5の任意の化合物は、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、及びスルホンアミド基(−SO2NH−)などを含むように製造可能である。例えば、上記ステップ(a−2)、(a−3)、(a−4)または(a−5)(以下、「(a)」と総称する)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールに1,3−プロパンスルトンを添加すると末端に−SO3H基が、プロピレンスルィド単量体を投入すると−SH基が、二酸化炭素を投入すると−COOH基が生成される。
【0030】
さらに、一般式3の化合物を溶媒中で葉酸などのビタミン類;又はアンプレナビル、ドキソルビシン、パクリタキセル、及びバンコマイシンなどのアミド基(−NH2)若しくはスルホンアミド基(−SO2NH−基)系薬物などと反応させると、ポリエチレンオキシド鎖末端(Yグループ、R2)に薬物が導入された高分子薬物を得ることもできる。
【0031】
上記一般式において、nは10〜500の整数であることが好ましい。これは、分子量が上記範囲外であると反応性が顕著に低下し、反応歩留まりに影響を与え得るためである。また、重合をするに際し、kは1〜10の整数、mは5〜50の整数であることが好ましい。これは、一般式4におけるマクロ開始剤、一般式5におけるマクロモノマーが構造的に立体障害を起こし得るためである。
【0032】
本発明の一実施形態による鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法において、ステップ(a)の出発物質であるメトキシポリエチレングリコールの分子量は500〜20,000g/molであることが好ましい。分子量がこの範囲外であると、立体障害等の要因によって反応性が顕著に低下し、低い反応収率になる。
【0033】
上記ステップ(a)では、メトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させることで、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得ることができる。上記アルキルアルカリ金属は、アルキルリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム及び上記リチウムをナトリウム、カリウム、セシウムまたはルビジウムで置換したアルキルアルカリ金属から選ばれた一種以上であることが好ましい。その中でも特にブチルリチウムが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態による鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法において、ステップ(b−2)、(b−3)、(b−4)、(b−5)(以下、「(b)」と総称する。)は、ステップ(a)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをスルトン(例えば、1,3−プロパンスルトンまたは1,4−ブタンスルトン)、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド、トリメリット酸無水物クロライド、メタクリロイルクロライド、2−ブロモイソブチリルブロマイド、2−ブロモプロピオニルブロマイド、又は2−ブロモプロピオニルクロライドなどと真空またはアルゴン若しくは窒素気流下で反応させることで得られる。
【0035】
上記ステップ(b)において使用される溶媒は、ベンゼン/DMSO、ベンゼン/メタノール/DMSOでよい。官能性化ステップ(b)は、20〜80℃の反応温度で、6〜48時間行われ得る。
【0036】
さらに、上記ステップ(b)においてメトキシポリエチレングリコールの鎖末端に種々の官能性基を定量的に導入することができ、上記一般式2〜5で表される鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを得ることができる。ここで、官能性基としては、限定されるものではないが、水素、ヒドロキシル基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシル基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−);葉酸などのビタミン;及びドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン、アンプレナビルなどのアミン基またはスルホンアミド基を含んだ薬物などを含んでよい。
【0037】
また、ステップ(a)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをトリメリット酸無水物クロライドと反応させて、無水物基含有メトキシポリエチレングリコールを得ることができる。生成した無水物基含有メトキシポリエチレングリコールをメタノールまたは水などの溶媒中で葉酸などのビタミン;ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルなどのアミド基またはスルホンアミド基を含む薬物などと反応させると、メトキシポリエチレングリコール鎖末端に薬物が導入された一般式3の高分子薬物が得られる。
【0038】
ステップ(c−3)、(c−4)及び(c−5)(以下、「(c)と総称する。」は、グラフトまたはブロック共重合体を調製するステップである。具体的には、ステップ(b)において得られた鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールとして、マクロ開始剤(例えば、Xが2−ブロモイソブチリル基または2−ブロモプロピオニル基である式(2)の化合物)をN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)またはスルファジアジンなどのスルホンアミド系メタクリル酸単量体と溶媒中で触媒系の存在下で反応(原子移動ラジカル重合)させ、上記一般式4のブロック共重合体を得ることができる。
【0039】
また、マクロモノマー(例えば、Xがメタクリレートである式2の化合物)をN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM)、またはスルファジアジンなどのようなスルホンアミド系メタクリレート単量体と溶媒中で開始剤(過酸化ベンゾイル(BPO)あるいはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))の存在下で反応(ラジカル重合)させ、上記一般式5のグラフト共重合体で表される熱またはpH応答性のメトキシポリエチレングリコール系共重合体を得ることができる。
【0040】
上記ステップ(c)において使用される反応溶媒は、水若しくはシクロヘキサン、又はベンゼン若しくはトルエンなどの非極性溶媒とテトラヒドロフラン(THF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒との混合溶媒(非極性/極性の混合体積比は90/10〜70/30でよい)を使用することができる。開始剤、過酸化ベンゾイルまたはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)でよい。触媒としては、銅系原子移動ラジカル重合触媒などを使用してよい。また、ラジカル重合ステップ(c)は、20〜80℃の温度で行われることが好ましい。
【0041】
上述のとおり、本発明によれば、薬物を含む種々の官能性基を、特定の分子量を有するメトキシポリエチレングリコール中に効率よく導入することができる。さらに、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール(mPEG)を用いて遷移金属含有化合物(例えば、金属塩又は金属水和物)のナノ寸法化を容易に達成することができる。このナノ寸法化された金属又は金属塩の粒子は、ポリマーが水溶性mPEG系材料であるポリマーカプセル化粒子の形態で得られる。このようにして、それらは、水性媒体並びに有機溶媒中で容易に溶解し得る。
【0042】
ここで、用語「遷移金属含有化合物」とは、遷移金属を含む化合物を総称するものであって、金属塩または金属水和物が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましくは、この遷移金属含有化合物は、FeCl3、FeCl2、HAuCl4、Cd(OAc)2・xH2O及びAgNO3からなる群より選ばれる一種以上でよい。
【0043】
上記のようにして得られた官能性基を有するメトキシポリエチレングリコールを用いて金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、カドミウムスルフィド(CdS)、酸化鉄(γ−Fe2O3またはFe3O4)、PbSなどのような遷移金属及びその金属塩は、ナノクラスターの形態で安定化が可能である。このナノクラスターの粒度は、好ましくは1nm〜500nmで、より好ましくは、1nm〜100nmである。
【0044】
遷移金属またはその金属塩のナノ粒子としては、Au、Ag、Pt(II)、Pd(II)、CdS、PbS、TiO2、γ−Fe2O3、Fe3O4の粒子が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本発明による遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法において、出発物質としての遷移金属含有化合物の溶液の濃度は0.01〜1g/mLであることが好ましい。反応温度は5℃〜70℃であることが好ましく、これは、所望の粒子の粒度や反応速度に応じて調節が可能である。還元剤としては、水酸化アンモニウム(NH4OH)、ヒドラジン一水和物(N2H2)、NaBH4、H2O2、H2S、Na2Sなどが使用されてよい。上記方法において、鎖末端官能性化したメトキシ−ポリエチレングリコール:金属またはその金属塩のモル比は、100:1〜1:1であることが好ましい。ポリマーの量が多すぎるとナノ粒子の含量が過度に小さくなる。ポリマーの量が少なすぎると金属ナノ粒子が安定化しにくくなるため不均一な粒子を形成し、沈殿物が発生する。上記方法は、有機溶媒だけでなく水溶液中の金属又はその塩のナノクラスターの調製を可能にする。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を挙げて詳述するが、本発明が下記の実施例に制限されるものではない。
【0047】
<実施例1>
容量2Lの丸いパイレックス(登録商標)製フラスコ内にメトキシポリエチレングリコール(分子量5,000g/mol、Aldrich社;Poly(ethylene glycol)methyl ether(mPEG))0.01モルを入れた後、真空ラインに取り付けて空気を完全に抜き取り乾燥した。ベンゼン1Lを蒸留してm−PEGを溶解させた。氷水槽を使用して温度を下げながら、アルゴン気流下でn−ブチルリチウム(30mL)を注射器を用いてゆっくりと生成溶液に注入し、その後、ゆっくり30℃まで温度を上げた。48時間反応させ、透明であった色が徐々に黄色へと変色していくことを確認した後、メタノールを少量蒸留して入れ、空気と接触させて反応を終了した。ジエチルエーテル中に沈澱させて末端基がリチウム(Li)で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコール(mPEG−Li)を得た。得られた高分子の数平均分子量は5,000g/molであった。図1は、上記得られたリビングメトキシポリエチレングリコールのNMRデータを示す図であり、図2は、上記得られたリビングメトキシポリエチレングリコールのGPCデータを示す図である。
【0048】
<実施例2>
実施例1に従い合成された重合体のアルコキシド溶液200mL([mPEG−Li]=6.3mmol)に2−ブロモイソブチリルブロマイド(20mL、THF中の20mmol)を投入し、室温下で攪拌しながら24時間反応させた。反応終了後、得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を除去した。得られた残渣をエタノールから再結晶して粉末(mPEG系マクロ開始剤)を得た。得られた高分子は、GPCによる数平均分子量が5,300g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端臭化率は95mol%以上であった。図3は、上記得られたmPEG系マクロ開始剤のNMRデータを示す図であり、図4は、上記得られたmPEG系マクロ開始剤のGPCデータを示す図である。
【0049】
<実施例3>
実施例1に従い合成されたリビングメトキシポリエチレングリコール溶液200mL([mPEG−Li]=6.3mmol)にメタクリロイルクロライド(30mmol)を加え、常温下で24時間撹拌させた。反応終了後、得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を除去し、次いで、得られた残渣をTHFに再溶解させて、ジエチルエーテルに沈澱させた後、さらにエチルアルコールから再結晶させて、mPEG系マクロモノマーを得た。得られた高分子の数平均分子量は5,100g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端官能性化率は95mol%以上であった。図5は、上記得られたmPEG系マクロモノマーのNMRデータを示す図であり、図6は、上記得られたmPEG系マクロモノマーのGPCデータを示す図である。
【0050】
<実施例4>
実施例1で得られたリビングメトキシポリエチレングリコール(Mw=5,000g/mol)の溶液200mLに1,3−プロパンスルトンのTHF溶液を添加した後([mPEG−Li]/[スルトン]=1/3、mol/mol)、常温下で24時間反応させてω−スルホン化mPEGを合成した。得られた溶液を減圧蒸留して溶媒を一部除去し、ジエチルエーテルに沈澱させた後、さらにTHFに溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、粉末を得た。合成された高分子のGPC分析による数平均分子量は5,100g/molであり、1H−NMRスペクトル分析による鎖末端官能性化率は95mol%以上であった。図7は、上記得られたω−スルホン化mPEGのNMRデータを示す図であり、図8は、上記で得られたω−スルホン化mPEGのGPCデータを示す図である。
【0051】
<実施例5>
実施例1で得られたリビングメトキシポリエチレングリコール溶液200mL(Mw=5,000g/mol、6.3mmol)に精製されたプロピレンスルフィドを添加した後([mPEG−Li]/[PPS]=1/3、mol/mol)、常温の高真空下で6時間反応させて高分子の鎖末端にチオール基を導入した。生成物をジエチルエーテルに沈澱させて回収した後、THFに再溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、粉末を得た。得られた高分子のGPCによる数平均分子量は5,100g/molであり、1H−NMRによって測定した鎖末端チオール化率は95mol%以上であった。図9は、上記得られたω−チオール化mPEGのNMRデータを示す図であり、図10は、上記得られたω−チオール化mPEGのGPCデータを示す図である。
【0052】
<実施例6>
実施例1で得られた分子量Mw=5,000g/molのリビングmPEG溶液([mPEG−Li]=0.001mol)を含む反応器に、トリメリット酸無水物クロライド(98%)(Aldrich社製)0.005モルのTHF液60mLをシリンジで投入した。この混合物を5℃で1時間、35℃で15時間反応させた後、ジエチルエーテルに沈澱させて溶媒を除去した。生成した残渣をTHFに溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、ω−無水物−mPEGを得た。鎖末端官能性化率は最初に使用された高分子溶液の濃度を基準として約85mol%であり、数平均分子量は5,200g/molであった。図11は、上記得られたω−無水物−mPEGのNMRデータを示す図であり、図12は、実施例6に従い製造されたω−無水物−mPEGのGPCデータを示す図である。
【0053】
<実施例7>
実施例6に従い合成されたω−無水物−メトキシポリエチレングリコール(mPEG−TMA、Mn=5,200g/mol、1.5g)とドキソルビシンクロライド(0.17g)/MeOH(50mL)を100mLの反応器に入れ、窒素ガス雰囲気下で24時間反応させた。生成物をジメチルエーテルに沈澱させて回収し、さらにジエチルエーテルで数回洗浄した。沈殿物をTHFに溶解させると、THFに可溶な部分と不溶な部分が分離した。THFに可溶な部分はmPEG−ドキソルビシン(mPEG−TMA−Dox)を含み、THFに不溶な部分は未反応ドキソルビシンを含む。THFに可溶な部分を濃縮して赤色固体粉末(mPEG−TMA−Dox)を得た。得られた粉末は、その鎖末端にドキソルビシン基を有するメトキシ−ポリエチレングリコールの高分子薬物であった。その高分子薬物の数平均分子量は5,800g/molであり、官能性化率は、1H−NMRによる分析の結果、95mol%以上であった。図13は、上記得られたmPEG−ドキソルビシンのNMRデータを示す図であり、図14は、上記得られたmPEG−ドキソルビシンのGPCデータを示す図である。
【0054】
<実施例8>
実施例6に従い製造されたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、0.01mol)とスルファメタジン(0.03mol)/エチルアルコール(50mL)を250mLの反応器内に投入した。次に、そこへエチルアルコール100mLを入れ、70℃で攪拌しながら、12時間還流条件下で反応させた。反応終了後、生成物を常温下でジエチルエーテルに沈澱させ、エチルアルコール中において再結晶させて固体を得た(mPEG−スルホンアミド)。得られた高分子の数平均分子量は5,400g/molであり、反応収率は、使用されたmPEG量を基準にして約95mol%以上であった。図15は、上記得られたmPEG−スルファメタジンのNMRデータを示す図であり、図16は、上記で得られたmPEG−スルファメタジンのGPCデータを示す図である。
【0055】
<実施例9>
実施例6に従い製造されたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、1g)と葉酸(0.42g、5当量)を20mLのDMSO中で常温下、約24時間反応させた。生成物をジエチルエーテルに沈殿させて、さらにTHFに再溶解させ、エチルアルコール中において再結晶させて、黄色の粉末を得た(mPEG−TMA−FA)。得られたポリマーの数平均分子量は5,600g/molであり、反応収率は、mPEGを基準にして98mol%以上であった。図17は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸のNMRデータを示す図であり、図18は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸のGPCデータを示す図である。
【0056】
<実施例10>
実施例6で得られたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、0.8g)とバンコマイシン(0.68g、3当量)を20mLのDMSO中で常温下、約80時間反応させた。生成物をメタノールに溶かした後、ジエチルエーテルに沈澱させて灰色の粉体を得た。得られたポリマーのGPCによる数平均分子量は6,500g/molであり、1H−NMR測定による鎖末端官能性化率は98mol%以上であった。図19は、上記得られたmPEG−バンコマイシンのNMRデータを示す図であり、図20は、上記得られたmPEG−バンコマイシンのGPCデータを示す図である。
【0057】
<実施例11>
実施例3に従い製造されたマクロモノマー(1.6mol%)とN−イソプロピルアクリルアミド(NiPAM;98.4mol%)との共重合を次のとおりに行った。先ず、250mLの3口フラスコ内に4−(ブロモメチル)安息香酸(0.25mmol)、苛性ソーダ(0.5mmol)及び蒸留水20mLを窒素ガス雰囲気下で投入し、約30分かけてゆっくりと攪拌した。100mLの2口フラスコにおいて、メトキシポリエチレングリコールマクロモノマー(2.55g;0.5mmol)/蒸留水(50mL)の溶液をアルゴンガス雰囲気下で調製した。他の100mLの2口フラスコ内において、NiPAM(3.4g;30mmol)/蒸留水(50mL)の溶液をアルゴンガス雰囲気下で攪拌しながら調製した。開始剤が入っている250mlのフラスコ内にMe6TREN(リガンド;0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)の混合物を注入した。1分後にカニューレを用いてそれぞれマクロモノマー溶液を反応器内に注入させると同時に、注射器を用いてNiPAM溶液を反応器内に注入した。常温下、アルゴン気流下で攪拌しながら生成した混合物を3時間撹拌させた。この生成溶液を50℃の蒸留水に沈澱させて4.5gの粉末を得た。得られたグラフト共重合体の数平均分子量は18,000g/molであった。図21は、上記得られたmPEG−g−NiPAM共重合体のNMRデータを示す図であり、図22は、上記得られたmPEG−g−NiPAM共重合体のGPCデータを示す図である。
【0058】
<実施例12>
実施例3に従い製造されたマクロモノマー(5mol%)とスルホンアミドメタクリルアミド単量体(MASX;95mol%)との共重合を下記のようにして行った。先ず、250mLの3口フラスコ内に4−(ブロモメチル)安息香酸(0.25mmol)、苛性ソーダ(0.5mmol)及び蒸留水20mLを窒素気流下で投入し、約30分かけてゆっくりと攪拌した。別の100mLの2口フラスコ内でメトキシ−ポリエチレングリコールマクロモノマー(2.55g;0.5mmol)/蒸留水(50mL)の溶液をアルゴン気流下で調製した。他の100mLの2口フラスコ内において、スルホンアミドメタクリルアミド(MASX;3.8g;10mmol)/NaOH(50mmol)/H2O(50mL)の溶液をアルゴン気流下で調製した。開始剤が入っている250mlのフラスコ内にMe6TREN(リガンド;0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)の混合物を注入した。1分後に、カニューレを用いてそれぞれマクロモノマー溶液を反応器内に注入させると同時に、注射器を用いてMASX溶液を反応器内に注入した。常温下、アルゴン気流下で攪拌させながら生成した混合物を3時間反応させた。過量のHCl溶液を投入して反応を止め、生成溶液をpH4.5の蒸留水に沈澱させて、約4.9gの粉末を得た。得られたグラフト共重合体の数平均分子量は19,000g/molであった。図23は、上記得られたmPEG−g−MASX共重合体のNMRデータを示す図であり、図24は、上記得られたmPEG−g−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【0059】
<実施例13>
実施例2で合成された鎖末端に臭素基を有するmPEGを開始剤として使用して、原子移動ラジカル重合(atom transfer radical polymerization)を下記のように行った。先ず、250mLの3口フラスコ内にH2O/THF(100mL/10mL)を注入し、次に、そこへ合成されたmPEG系マクロ開始剤(Mn=5,300g/mol、1.25g)を投入し、アルゴン気流下で完全に溶解させた。100mLの2口フラスコ内において、MASX(2.6g;7mmol)/NaOH(0.301g;7mmol)を蒸留水(50mL)に完全に溶解させた。上記250mLのフラスコ内にMe6TREN(0.25mmol)/Cu(I)Br(0.25mmol)の混合物を注入し、約10分間攪拌した。この生成混合物に、MASX溶液をカニューラを用いて投入し、2時間重合させた。重合を止め、生成溶液をHCl水溶液に沈澱させて粉末を得た。HCl/メタノールを用いてこの粉末を数回洗浄させ、真空オーブン中において乾燥させた。このようにして得られたブロック共重合体の数平均分子量は15,000g/molであった。図25は、上記得られたmPEG−b−MASX共重合体のNMRデータを示す図であり、図26は、上記得られたmPEG−b−MASX共重合体のGPCデータを示す図である。
【0060】
<実施例14>
実施例13に従い製造されたブロック共重合体(mPEG−b−P(スルホンアミド))0.15gを20mLのバイアルに入れ、DMF(99%)3mLを添加して完全に溶解させた。次いで、それにFeCl3(0.146gのFeCl3/10mLのDMF)溶液1mLを注射器を用いて注入した。次いで、磁気攪拌棒を用いてゆっくりと攪拌しながら10分、この混合物を撹拌した。バイアル中の溶液の色は褐色であった。この混合物へ、1mLのヒドラジン一水和物(N2H2、和光純薬製、98%)をそれ以上の色の変化がなくなるまで撹拌しながら徐々に加えた。それ以上の色の変化及び気泡の発生が起きなくなったときに、生成混合物を過量のメタノールに沈澱させてろ過し、この後、洗浄し、乾燥させてベージュ色の粉末を得た。透過電子顕微鏡(TEM)分析による粒度は2〜20nmの範囲であった。図27は、上記得られたmPEG−b−MASX酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0061】
<実施例15>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したmPEG0.51gを20mLのバイアルに投入し、DMF(99%)5mLを用いて完全に溶解させた。次いで、それにFeCl2(0.4gのFeCl2/1mLのDMF)溶液2mLを注射器を用いて注入した。さらにNaOH水溶液(12.5N)5mLをこの混合物に添加した後、60℃まで昇温させて攪拌した。そこに、注射器を用いて1.5mLのNH4OHを注入し、約6時間攪拌した後、常温まで降温させて、さらに24時間攪拌した。褐色の不溶性部分をろ過して除去し、生成溶液は減圧蒸留して濃縮した。生成した残渣をメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈澱させて、黄色の粉末を得た。TEM分析による粒度は3〜10nmの範囲であった。図28は、上記得られたω−スルホン化mPEG−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0062】
<実施例16>
実施例5に従い合成された鎖末端にチオール基を有するメトキシ−ポリエチレングリコール(Mn=5,100g/mol)0.51gをテトラヒドロフラン(THF)10mLに完全に溶解させた。30mLのバイアル内にAldrich社から購入したHAuCl4(2.0×10-4モル)を入れた後、THF(10mL)に溶解させて溶液を調製した。ここに、THF/メタノール混合溶液(9/1、v/v)10mLに溶解させたNaBH4(1.6×10-2モル)を注射器を用いて投入した。このTHFに溶解させた高分子溶液を上記混合された溶液に注射器を用いて投入し、次に、常温下で24時間攪拌した。この溶媒を蒸発させて一部除去し、この残渣をジメチルエーテルに沈澱させて、薄紫色の粉末を得た。TEM分析による粒度は、2〜10nmの範囲であった。図29は、上記得られたω−チオール化mPEG−金ナノ粒子のTEM写真である。
【0063】
<実施例17>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したmPEG0.51gを20mLのバイアルに投入し、THF(99%)5mLによって完全に溶解させた。30mLのバイアルにAldrich社から購入したHAuCl4(2.0×10-4モル)を注入した後、THF(10mL)に溶解させて溶液を調製した。ここに、THF/メタノール混合溶液(9/1、v/v)10mLに溶解させたNaBH4(1.6×10-2モル)を注射器を用いて注入した。この混合物に、THFに溶解させた高分子溶液を注射器を用いて投入し、次に常温下で24時間攪拌した。減圧蒸留して溶媒を一部除去し、この残渣をジメチルエーテルに沈澱させて、薄紫色の粉末を得た。TEM分析による粒度は、3〜20nmの範囲であった。図30は、上記得られたω−スルホン化mPEG−金ナノ粒子のTEM写真である。
【0064】
<実施例18>
実施例7に従い製造されたmPEG−TMA−Dox(Mn=5,800g/mol)1.0gを20mLのバイアルに入れ、メタノール10mLを加えて完全に溶解させた。この混合物に、FeCl3溶液(0.48gのFeCl3/100mLのメタノール)1mLをピペットを用いて注入した後、1mLのN2H2を注射器を用いてゆっくりと注入し、次に、2時間攪拌した。不溶性部分をろ過によって除去した。この残渣をジエチルエーテルに沈澱させて、次に数回洗浄して紫色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析を行ったところ、2〜20nmの粒度を有するナノハイブリッドが形成されていた。図31は、上記得られたmPEG−TMA−ドキソルビシン−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0065】
<実施例19>
実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−FA(Mn=5,600g/mol)1.5gを脱酸素化蒸留水50mLに溶解させた。そこにFeCl2/FeCl3(1mol/2mol、0.4g/1.0g)を入れて、攪拌しながら80℃まで昇温させた。ここに、1.5mLのNH4OHを入れて、30分間攪拌した。この生成混合物を常温まで冷却し、攪拌しながら24時間反応させた。生成溶液から、黒褐色の不溶性部分をろ過して取り出し、水を除去した。生成した残渣をメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈澱させて黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析による粒度は、2〜10nmの範囲であった。図32は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0066】
<実施例20>
実施例12に従い製造されたグラフト共重合体0.15gを20mLのバイアルに投入し、DMF(99%)3mLを添加して完全に溶解させた。ここに、FeCl3(0.146gのFeCl3/10mLのDMF)溶液1mLを注射器を用いて添加した後、磁気攪拌棒を用いてゆっくりと10分間攪拌した。このとき、溶液の色は褐色であった。ここに、還元剤としてのヒドラジン一水和物(N2H2、和光純薬製98%)1mLをそれ以上の色の変化がなくなるまで撹拌しながら徐々に加えた。それ以上の色の変化及び気泡発生が起きなくなったときに、この生成溶液を過量のメタノールに沈澱させてろ過した。ろ過物をさらに数回洗浄した後乾燥して、ベージュ色の粉末を得た。透過電子燎微鏡による粒度は、3〜30nmの範囲であった。図33は、上記得られたmPEG−g−MASX−酸化鉄ナノ粒子のTEM写真である。
【0067】
<実施例21>
実施例6に従い製造されたmPEG−TMA(Mn=5,200g/mol、0.01mol)とスルファジアジン(0.03mol)/エチルアルコール(50mL)を250mLの反応器内に投入し、エチルアルコール100mLを添加した。70℃の温度下で還流条件下で12時間反応させた。得られた生成物を常温下でジエチルエーテルに沈澱させ、エチルアルコールから再結晶させて固体(mPEG−スルホンアミド)を得た。GPC分析による得られた高分子の数平均分子量は6,000g/molであり、反応収率は、使用されたmPEGの量を基準にして約85mol%以上であった。図34は、上記得られたmPEG−スルファジアジンのNMRデータを示す図である。
【0068】
<実施例22>
実施例4に従い製造された鎖末端スルホン酸化したmPEG(Mn=5,100g/mol)0.51gを20mLのバイアルに投入し、トルエン/メタノール(90/10、v/v)5mLを注入して完全に溶解させた。ここに、カドミウムアセテート水和物(Cd(OAc)2・xH2O;6.38×10-4モル)0.147gをトルエン/メタノール(90/10、v/v)混合溶液10mLに溶解させて加えた。溶液の色が黄色に変わるまで、攪拌しながら注射器を用いて硫化水素(H2S)ガスをゆっくりと注入した。次に、それを6時間撹拌した。生成混合物をジエチルエーテルに沈澱させて黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析による粒度は、2〜30nmの範囲であった。図35は、上記得られたω−スルホン化mPEG−硫化カドミウムナノ粒子のTEM写真である。
【0069】
<実施例23>
実施例5に従い製造された鎖末端にチオール基を有するmPEG(Mn=5,100g/mol)0.51gを20mLのバイアルに投入し、トルエン/メタノール(90/10、v/v)5mLを注入してmPEGを完全に溶解させてCdS粉末を得たことを除いては、実施例22と同様な工程をくり返した。得られた粉末の粒度は、SEM分析によると2〜30nmの範囲であった。図36は、上記得られたω−チオール化mPEG硫化カドミウムナノ粒子のTEM写真である。
【0070】
<実施例24>
実施例10に従い製造されたmPEG−TMA−バンコマイシン(Mn=6,500g/mol)0.5gを蒸留水100mLに完全に溶解させた。さらに、AgNO3(1/5当量mPEGモル)及び還元剤としてNaBH4(1当量AgNO3モル)をそこへ加えた。この混合物を常温下、8時間攪拌しながら反応させた後に、メタノールに溶かしてジエチルエーテルに沈澱させ、灰色の粉体を得た。メタノールにこの粉末を溶かした後に、TEM測定による粒度は5〜15nmの範囲であった。図37は、上記得られたmPEG−TMA−バンコマイシンのナノ粒子のTEM写真である。
【0071】
<実施例25>
実施例9に従い製造されたmPEG−TMA−FA(Mn=5、600g/mol)1.5gを脱酸素化蒸留水50mLに溶解させ、AgNO3(0.01mol)を投入した後、攪拌しながら40℃まで昇温させた。さらに、NH4OH溶液1.5mLを注入し、30分間攪拌した。次いで、反応温度を常温まで下げて、攪拌しながら、24時間反応させた。生成溶液から、黒褐色の不溶性部分をろ過して除去し、次に水を除去した。生成した残渣をメタノールに溶解させてジメチルエーテルに沈澱させて、黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析による粒度は、2〜50nmの範囲であった。図38は、上記得られたmPEG−TMA−葉酸−銀ナノ粒子のTEM写真である。
【0072】
<実施例26>
実施例5に従い製造されたω−チオール化−mPEG(Mn=5,100g/mol)2.5gを脱酸素化蒸留水に溶解させ、AgNO3(0.01mol)を投入した後に、攪拌しながら40℃まで昇温させた。さらに、この混合物へ、NH4OH溶液1.5mLを注入し、次に30分間攪拌した。次いで、生成した混合物を常温まで冷却して、さらに24時間撹拌した。この生成溶液から、黒褐色の不溶性部分をろ過して除去し、次に水を除去した。生成した残渣をメタノールに溶解させ、ジメチルエーテルに沈澱させて黄色の粉末を得た。透過電子燎微鏡の写真分析によるこの粉末の粒度は、2〜50nmの範囲であった。図39は、上記得られたω−チオール化−mPEG−銀ナノ粒子のTEM写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1:
【化1】
(式中、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれる。)の構造を持つ末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコール。
【請求項2】
下記一般式2〜5:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、R1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン、及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
R4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、ヒドロキシ基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)、2−ブロモイソブチリル基、2−ブロモプロピオニル基、メタクリレート基または無水物基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
nは10〜500の整数であり
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。)で表される化合物からなる群より選ばれた鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール。
【請求項3】
下記一般式2:
【化6】
(式中、Xは水素、ヒドロキシ基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)、2−ブロモイソブチリル基、2−ブロモプロピオニル基、メタクリレート基または無水物基であり、
nは10〜500の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−2)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップ、及び
(b−2)上記ステップ(a−2)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空下で官能性化物質と反応させ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項4】
下記一般式3:
【化7】
(式中、Yはスルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
nは10〜500の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−3)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
(b−3)上記ステップ(a)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴン若しくは窒素気流下でトリメリット酸無水物クロライドと反応させるステップと、
(c−3)上記ステップ(b)において得られたω−無水メトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴン若しくは窒素気流下で官能性化物質と反応させるステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項5】
下記一般式4:
【化8】
(式中、R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
nは10〜500の整数であり
mは5〜50の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−4)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
(b−4)上記ステップ(a−4)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールの鎖末端を真空下で2−ブロモイソブチリルまたは2−ブロモプロピオニルで官能性化するステップと、
(c−4)上記ステップ(b−4)において得られた鎖末端に臭素基を有するメトキシポリエチレングリコールを開始剤として使用し、スルホンアミドメタクリレート単量体またはN−イソプロピルアクリルアミド単量体と原子移動ラジカル重合反応させてブロック共重合体を得るステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項6】
下記一般式5:
【化9】
(式中、R1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
R4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−5)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
(b−5)上記ステップ(a−5)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをメタクリロイルクロライドと反応させ、メタクリレート基で鎖末端が官能性化されたメトキシポリエチレングリコールを提供するステップと、
(c−5)上記ステップ(b−5)において得られた、メタクリレート基で鎖末端が官能性化されたメトキシポリエチレングリコールをマクロモノマーとして使用し、スルホンアミドメタクリレート単量体またはN−イソプロピルアクリルアミド単量体とラジカル重合反応させてグラフト共重合体を得るステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項7】
上記ステップ(a−2)、(a−3)、(a−4)及び(a−5)のアルキルアルカリ金属は、アルキルリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム、及びこれらのアルキルアルカリ金属において前記リチウムをナトリウム、カリウム、セシウムまたはルビジウムで置換したアルキルアルカリ金属から選ばれた一種以上であることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれかに記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項8】
高分子と薬物とが結合された高分子−薬物複合体であって、
上記複合体は、請求項2に記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールであって、R2及びYが葉酸のようなビタミン;またはインジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれることを特徴とする高分子−薬物複合体。
【請求項9】
請求項2に記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールまたは請求項8に記載の高分子−薬物複合体によって形成されたミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されている遷移金属またはその塩のナノ粒子。
【請求項10】
上記遷移金属またはその金属塩は、Au、Ag、Pt(II)、Pd(II)、CdS、PbS、TiO2、−Fe2O3及びFe3O4からなる群より選ばれることを特徴とする請求項9に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子。
【請求項11】
上記粒子の粒度は1〜500nmであることを特徴とする請求項9に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子。
【請求項12】
請求項9に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法であって、
請求項2に記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物を反応させることを含む遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
上記遷移金属含有化合物は、FeCl3、FeCl2、HAuCl4、Cd(OAc)2・xH2O及びAgNO3からなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項12に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物とを極性溶媒、非極性溶媒または極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒に溶解させ、還元剤の存在下で反応させることを特徴とする請求項12に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
上記溶媒は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノールまたはトルエン/メタノール混合溶媒であることを特徴とする請求項14に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物を、モル比が100:1〜1:1になるように混合することを特徴とする請求項12に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
上記還元剤は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、ヒドラジン一水和物(N2H2)、NaBH4、H2O2、H2S及びNa2Sからなる群より選ばれることを特徴とする請求項14に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項1】
下記一般式1:
【化1】
(式中、Zはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びルビジウムからなる群より選ばれる。)の構造を持つ末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコール。
【請求項2】
下記一般式2〜5:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、R1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン、及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
R4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
Xは水素、ヒドロキシ基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)、2−ブロモイソブチリル基、2−ブロモプロピオニル基、メタクリレート基または無水物基であり、
Yはスルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
nは10〜500の整数であり
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。)で表される化合物からなる群より選ばれた鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコール。
【請求項3】
下記一般式2:
【化6】
(式中、Xは水素、ヒドロキシ基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、チオール基(−SH)、カルボキシ基(−COOH)、スルホンアミド基(−SO2NH−)、2−ブロモイソブチリル基、2−ブロモプロピオニル基、メタクリレート基または無水物基であり、
nは10〜500の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−2)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップ、及び
(b−2)上記ステップ(a−2)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空下で官能性化物質と反応させ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項4】
下記一般式3:
【化7】
(式中、Yはスルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
nは10〜500の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−3)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
(b−3)上記ステップ(a)において得られたリビングメトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴン若しくは窒素気流下でトリメリット酸無水物クロライドと反応させるステップと、
(c−3)上記ステップ(b)において得られたω−無水メトキシポリエチレングリコールを真空またはアルゴン若しくは窒素気流下で官能性化物質と反応させるステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項5】
下記一般式4:
【化8】
(式中、R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
nは10〜500の整数であり
mは5〜50の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−4)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
(b−4)上記ステップ(a−4)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールの鎖末端を真空下で2−ブロモイソブチリルまたは2−ブロモプロピオニルで官能性化するステップと、
(c−4)上記ステップ(b−4)において得られた鎖末端に臭素基を有するメトキシポリエチレングリコールを開始剤として使用し、スルホンアミドメタクリレート単量体またはN−イソプロピルアクリルアミド単量体と原子移動ラジカル重合反応させてブロック共重合体を得るステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項6】
下記一般式5:
【化9】
(式中、R1及びR5はそれぞれ独立して水素またはメチルであり、
R2はN−イソプロピルアミドのようなアミド;スルファベンゼン、スルフィソキサゾール、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファメタジン、スルフィソイミジン及びスルファピリジンのようなスルホンアミド;葉酸のようなビタミン;インジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれ、
R3は水素、イソブチルアクリロニトリル、フェニルまたはハロゲンであり、
R4はフェニルまたはイソブチルアクリロニトリルであり、
nは10〜500の整数であり、
kは1〜10の整数であり、
mは5〜50の整数である。)の構造を持つ、鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法であって、
(a−5)数平均分子量(Mn)が500〜20,000g/molのメトキシポリエチレングリコールをアルキルアルカリ金属と反応させ、末端基が陽イオンアルカリ金属で置換されたリビングメトキシポリエチレングリコールを得るステップと、
(b−5)上記ステップ(a−5)で得られたリビングメトキシポリエチレングリコールをメタクリロイルクロライドと反応させ、メタクリレート基で鎖末端が官能性化されたメトキシポリエチレングリコールを提供するステップと、
(c−5)上記ステップ(b−5)において得られた、メタクリレート基で鎖末端が官能性化されたメトキシポリエチレングリコールをマクロモノマーとして使用し、スルホンアミドメタクリレート単量体またはN−イソプロピルアクリルアミド単量体とラジカル重合反応させてグラフト共重合体を得るステップと、
を含む鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項7】
上記ステップ(a−2)、(a−3)、(a−4)及び(a−5)のアルキルアルカリ金属は、アルキルリチウム、ジイソプロピルアミノリチウム、及びこれらのアルキルアルカリ金属において前記リチウムをナトリウム、カリウム、セシウムまたはルビジウムで置換したアルキルアルカリ金属から選ばれた一種以上であることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれかに記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールの製造方法。
【請求項8】
高分子と薬物とが結合された高分子−薬物複合体であって、
上記複合体は、請求項2に記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールであって、R2及びYが葉酸のようなビタミン;またはインジスラム、ドキソルビシン、パクリタキセル、バンコマイシン及びアンプレナビルのようなアミド基またはスルホンアミド基含有薬物からなる群より選ばれることを特徴とする高分子−薬物複合体。
【請求項9】
請求項2に記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールまたは請求項8に記載の高分子−薬物複合体によって形成されたミセル構造内部に遷移金属またはその金属塩が捕集されている遷移金属またはその塩のナノ粒子。
【請求項10】
上記遷移金属またはその金属塩は、Au、Ag、Pt(II)、Pd(II)、CdS、PbS、TiO2、−Fe2O3及びFe3O4からなる群より選ばれることを特徴とする請求項9に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子。
【請求項11】
上記粒子の粒度は1〜500nmであることを特徴とする請求項9に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子。
【請求項12】
請求項9に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法であって、
請求項2に記載の鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物を反応させることを含む遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
上記遷移金属含有化合物は、FeCl3、FeCl2、HAuCl4、Cd(OAc)2・xH2O及びAgNO3からなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項12に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物とを極性溶媒、非極性溶媒または極性溶媒と非極性溶媒の混合溶媒に溶解させ、還元剤の存在下で反応させることを特徴とする請求項12に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
上記溶媒は、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノールまたはトルエン/メタノール混合溶媒であることを特徴とする請求項14に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
上記鎖末端官能性化したメトキシポリエチレングリコールと遷移金属含有化合物を、モル比が100:1〜1:1になるように混合することを特徴とする請求項12に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
上記還元剤は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、ヒドラジン一水和物(N2H2)、NaBH4、H2O2、H2S及びNa2Sからなる群より選ばれることを特徴とする請求項14に記載の遷移金属またはその金属塩のナノ粒子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公表番号】特表2010−528172(P2010−528172A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510217(P2010−510217)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003028
【国際公開番号】WO2008/147128
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003028
【国際公開番号】WO2008/147128
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504466616)ヨウル チョン ケミカル カンパニー, リミテッド (16)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]