説明

鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸、医学的療法における該物質の使用、および該物質を含む薬学的組成物−026

本発明は、鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩、固体状態にある該物質、医学的療法における該物質の使用、該物質を含む薬学的組成物、疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における該物質の使用、および疾患を予防するかまたは治療するための方法における該物質の使用に関する。本発明は、ホスホイノシチド(PI)3−キナーゼβの選択的阻害剤、および例えば抗血栓療法における選択的阻害剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩、固体状態にある鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸、該物質の調製プロセス、医学的療法における該物質の使用、該物質を含む薬学的組成物、疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における該物質の使用、および疾患を予防するかまたは治療するための方法における該物質の使用に関する。本発明は、例えば、新規抗血栓療法および該新規療法に有用な鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸に関する。より詳細には、本発明は、ホスホイノシチド(PI)3−キナーゼβの選択的阻害剤、および抗血栓療法における選択的阻害剤(すなわち(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸)に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は、止血プロセスにおいて基本的な役割を果たす、特殊化接着細胞である。通常の条件下では、血小板は血管内皮に接着しないし、また血管内皮によって活性化されない。しかし、内皮が損傷されるかまたはプラークが破壊されると、血流が多様な血栓形成要素に曝露される。循環血小板は、これらの血栓形成要素の受容体を所持する。血管傷害が起こると、血小板は、糖タンパク質GPIbα受容体を介して、破裂したプラークの部位でコラーゲンに結合したフォンビルブランド因子に接着し(血小板接着)、活性化され(血小板活性化)、そしてあらかじめ作製されていたかまたは血小板活性化に際して産生されるかいずれかの多くの物質を放出し、これらにはアデノシン二リン酸(ADP)、セロトニン、およびトロンボキサンA2(TxA2)等が含まれ、これらはすべて血小板アゴニストとして作用し、そしてしたがって接着が誘導する初期の弱い血小板活性化を増強する。さらに、やはり強力な血小板アゴニストであるトロンビンが、傷害部位で刺激される凝血カスケードによって生成される。これらの血小板アゴニストすべてに対する主な機能的応答の1つは、血小板表面上でのインテグリンαIIbβ(GPIIb/IIIa)の活性コンホメーションへの変換である。活性コンホメーションになると、これらのインテグリンは、血小板同士をつなぐフィブリノーゲン架橋(血小板凝集)およびそれに続く血栓形成の受容体として働く。
【0003】
したがって、進行した動脈硬化プラークが突然破裂するかまたは亀裂を生じると、過剰な血小板接着/凝集反応が引き起こされ、これは一般的に、血管閉塞性血小板血栓の形成につながる。冠循環または脳循環におけるこれらの血栓形成は、それぞれ、急性心筋梗塞および脳卒中につながり、これは組み合わされると、先進工業国における主な死因に相当する。血小板血栓形成はまた、不安定性狭心症、突然死、一過性脳虚血発作、一過性黒内障、ならびに肢および内臓の急性虚血を含む、多くの他の臨床状態にもつながる。破裂プラークの血栓形成能力の増加に寄与する多くの要因には、(1)プラーク中の接着性物質の高い反応性、(2)病変中の組織因子の存在、および(3)アテローム血栓性プロセスによる血管腔狭窄によって引き起こされる高い剪断の間接的な血小板活性化効果が含まれる。
【0004】
現存する抗血栓療法は、主に、血栓プロセスにおける1以上の重要な工程をターゲットとする。すなわち、血栓症を軽減するために、抗凝血剤および抗血小板剤がしばしば用いられる。病的血栓形成は、多くの例で、1以上のクマリン誘導体(例えばワルファリンおよびジクマロール)または荷電ポリマー(例えばヘパリン、ヒルジンまたはヒルログ)を含む適切な抗凝血剤を投与することによって、あるいは抗血小板剤(例えばアスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリジモール(dipyridimole)、またはいくつかのGPIIb/IIIa受容体アンタゴニストの1つ)の使用を通じて、最小限にされるかまたは除去されうる。しかし、抗凝血剤および血小板阻害剤は、出血、再閉塞、「ホワイトクロット」症候群、過敏、先天性欠損症、血小板減少症、および肝機能不全などの副作用のため、重大な制限に悩まされる。さらに、抗凝血剤および血小板阻害剤の長期投与は、生命を脅かす疾病または出血のリスクを特に増加させうる。
【0005】
したがって、現存する抗血栓療法の前述の欠点を回避するため、正常な止血に干渉せずに、病的な血栓形成に決定的に重要なプロセスを選択的にターゲティングする新規抗血栓療法を発展させる必要がある。
【0006】
流体力学的障害(高い剪断および乱流)は、病的血栓を促進する際に主な役割を果たし、そしてしたがって、1つのこうした戦略は、血小板における機械感覚性要素をターゲティングすることによって、高い剪断ストレスの血小板活性化効果を減弱することである。WO2004016607において、剪断が誘導する血小板活性化に重要であるが、止血には重要でないシグナル伝達事象が同定されてきている。
【0007】
さらに、2つの主な血小板接着受容体、GPIb/V/IX糖タンパク質複合体中のGPIbαおよびインテグリンαIIbβは、流体力学的障害(高い剪断および剪断における迅速な加速)の条件下で、血小板活性化に適したユニークな機械感覚性機能を所持する。WO2004016607において、両方の受容体を通じたシグナル伝達は、剪断速度の急速な加速によって制御されて、PI3−キナーゼ依存性シグナル伝達プロセスを通じて血小板活性化を誘導することが記載される。
【0008】
さらに、WO2004016607において、高い剪断条件下での血小板活性化を制御する決定的に重要なシグナル伝達機構、およびPI3−キナーゼβは、病的血流条件下で血小板活性化を誘導する要素と同定されることが解明されている。WO2004016607以前に存在した、特定の血小板接着受容体を遮断する抗血小板療法は、病的および正常止血性血小板活性化を区別しなかった。したがって、PI3−キナーゼβの選択的阻害が、生理学的アゴニストによって誘導される血小板活性化に影響を及ぼさずに、剪断率の病的増加によって誘導される血小板活性化を予防しうるという、WO2004016607における開示は、こうした療法のための新規化学的化合物を含めて、抗血栓療法への新規のそして特異的なアプローチを提供した。さらに、剪断依存性血小板接着および活性化が、動脈血栓形成に重要であるため、PI3−キナーゼβが心臓血管疾患一般の療法的介入の重要なターゲットであることもまた強調される。
【0009】
さらに、WO2004016607は、高い剪断条件下で生じる、血小板凝集および接着を破壊する方法、ならびに剪断によって誘導される血小板活性化を阻害するための方法を提供し、ここで、どちらの方法も、選択的PI3−キナーゼβ阻害剤を投与する工程を含む。WO2004016607はまた、選択的PI3−キナーゼβ阻害剤の有効量を投与する工程を含む抗血栓法も提供する。該方法にしたがって、剪断が誘導する血小板活性化に重要なPI3−キナーゼβをターゲティングすることによって、正常な止血に影響を及ぼすことなく、血栓の特異的阻害が得られうる。前記抗血栓法は、したがって、正常な止血の破壊によって引き起こされる副作用、例えば出血時間の延長を伴わない。
【0010】
さらに、WO2004016607において、「選択的PI3−キナーゼβ阻害剤」化合物は、慣用的にそして一般的に設計されるPI3−キナーゼ阻害剤、例えばLY294002またはワートマニンなどの化合物より、PI3−キナーゼβに関して、より選択的であると理解される。WO2004016607において、選択的PI3−キナーゼβ阻害剤が、生化学アッセイにおいて、他のクラスI PI3−キナーゼ・アイソフォームに比較して、PI3−キナーゼβの阻害に関して少なくとも約>10倍選択的であることが好ましく、より好ましくは>20倍、より好ましくは>30倍選択的である。こうした他のI型PI3−キナーゼには、PI3−キナーゼα、γおよびδが含まれる。
【0011】
ホスホイノシチド(PI)3−キナーゼβの選択的阻害剤である化合物2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸は、他のこうした阻害剤とともに、WO2004016607に記載される。WO2004016607にさらに記載されるように、化合物2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸は、療法、例えば抗血栓療法において有用でありうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2004016607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
化合物2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸は、非対称中心を有し、すなわち該化合物は、2つの鏡像異性体として存在する。改善された活性、薬物動態学的および/または代謝特性を持つ化合物を得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の単一の鏡像異性体であるこうした化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の(−)−鏡像異性体、すなわち(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸のX線粉末回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、新規化合物、すなわち鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩を提供する。
【0017】
表現「鏡像異性的に純粋な」は、他の鏡像異性体、すなわち2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の(+)−鏡像異性体を本質的に含まない、(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸を意味する。本発明の(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸を含む、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の単一鏡像異性体は、これまで得られていなかった。本発明の1つの側面にしたがった、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の鏡像異性体を調製する特定のプロセスによって、本発明の純粋な鏡像異性体を得ることが可能である。表現「鏡像異性的に純粋な」は、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の鏡像異性体の一方の≧95%の鏡像異性過剰(ee)を意味する。
【0018】
「鏡像異性的に純粋な」鏡像異性体は、pH1〜14において、ラセミ化に関して安定である。
さらに、前記プロセスによって、本発明の2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の純粋な鏡像異性体は、高い鏡像異性純度、例えば≧99.8%の鏡像異性過剰(ee)、例えば(−)2−[(1R)−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の99.9% eeで得られうる。
【0019】
さらに、(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸および(+)2−[(1S)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸それぞれ、またはその薬学的に許容されうる塩は、高い鏡像異性的純度で提供されうる。
【0020】
2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の鏡像異性的に純粋な(−)−鏡像異性体は、有益な特性を有し、例えば、該異性体は、表2に示すような選択的PI3−キナーゼβ阻害剤である。
【0021】
さらに、鏡像異性的に純粋な(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸は、中性型である。中性型は、より安定で、取り扱いおよび保存がより容易であり、精製がより容易であり、そして再現可能な方式での合成がより容易でありうる。
【0022】
本発明はさらに、不定形、少なくとも部分的に結晶または実質的に結晶であってもよい固体状態にある、鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩に関する。結晶型は、より安定で、取り扱いおよび保存がより容易であり、そして精製がより容易であり、そして再現可能な方式での合成がより容易でありうる。
【0023】
本発明のさらなる側面にしたがって、鏡像異性的に純粋な(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩は、少なくとも部分的に結晶または実質的に結晶であってもよい固体状態で存在してもよい。結晶型は、より安定で、取り扱いおよび保存がより容易であり、精製がより容易であり、そして再現可能な方式での合成がより容易でありうる。
【0024】
さらに、本発明のさらなる側面にしたがった特定のプロセスによって、純粋な鏡像異性体、すなわち、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の(−)−鏡像異性体は、実質的に結晶型にある固体状態で得られうる。
【0025】
2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の(−)−鏡像異性体は、表1に提供するd値および相対強度を有するX線粉末回折(XRPD)パターンを有することによって特徴付けられる。
【0026】
表1
(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸
【0027】
【表1】

【0028】
これらにおいてX線粉末回折(XPRD)パターンは、Bragg−Bretano型で得られた。絶対強度はより正確でなく、そしてしたがって相対強度で置き換えた:
vs=50〜100、s=20〜50、m=5〜20、w=1〜5、およびvw<1
例えば、Kitaigorodsky, A.I.(1973), Molecular Crystals and Molecules, Academic Press, New York; Bunn, C.W.(1948), Chemical Crystallography, Clarendon Press, London;またはKlug, H.P.&Alexander, L.E.(1974), X−Ray Diffraction Procedures, John Wiley & Sons, New Yorkに見出されうる標準法にしたがって、X線回折分析を行った。X線粉末回折パターンデータは、内部参照としてコランダムを用いることによって補正され、そして可変スリットを用いて測定された。
【0029】
本発明は、以下のおよそのd値:6.8、5.9および3.91ÅでのXRPDピークを有する、純粋な鏡像異性体(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸に関する。
【0030】
さらに、本発明は、以下のおよそのd値:6.8、6.1、5.9、4.98、4.41、4.26および3.91ÅでのXRPDピークを有する、純粋な鏡像異性体(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸に関する。
【0031】
さらに、本発明は、図1に本質的に示すようなXRPD−回折図形を有する、(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸に関する。
【0032】
さらなる側面において、本発明は、分別結晶による分離またはクロマトグラフィーによる分離を含んでもよい、2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の分離のためのプロセスに関する。
【0033】
実施例に記載される2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸の純粋な鏡像異性体の調製のための特定のプロセスは、キラルクロマトグラフィー、その後、鏡像異性的に純粋なメチルエステルの加水分解および結晶化による、メチル2−{[−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}ベンゾエートの2つの鏡像異性体の分離を含む。
【0034】
必要な患者に選択的PI3−キナーゼβ阻害剤の有効量を投与することによる、心臓血管疾患、例えば冠動脈閉塞、脳卒中、急性冠不全症候群、急性心筋梗塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、および/または不安定性狭心症を予防するかまたは治療するための方法を提供することもまた、本発明の目的である。この方法において、選択的PI3−キナーゼβ阻害剤を使用すると、例えば皮膚出血時間の延長によって測定されるような、正常な止血の破壊によって引き起こされる副作用を回避することが可能である。
【0035】
本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩は、療法、特に補助的療法において有用である可能性があり、特に該化合物は:血小板活性化接着/凝集および脱顆粒化の阻害剤、血小板脱凝集の促進剤、抗血栓剤としての、あるいは血栓性障害の治療または予防における使用のために示される。血栓症と関連する障害または血栓症のリスク増加の例は、不安定性狭心症、心筋梗塞、血栓性または塞栓性脳卒中、一過性虚血発作、末梢血管疾患、播種性血管内凝固などのびまん性血栓性/血小板消費構成要素を伴う状態、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、敗血症の血栓性合併症、成人呼吸促迫症候群、抗リン脂質症候群、ヘパリン誘導性血小板減少症および子癇前症/子癇、または深部静脈血栓症などの静脈血栓症、肺塞栓症、静脈閉塞性疾患、血小板血症を含む骨髄増殖性疾患などの血液学的状態、鎌状赤血球疾患、経皮的冠動脈形成術(PCI)または他の血管における介入、ステント留置、動脈内膜切除術、冠動脈および他の血管移植手術、偶発的または外科的外傷後の組織サルベージなどの外科的または機械的損傷の血栓性合併症、皮膚および筋肉弁を含む再構築性手術、血管炎、動脈炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患および臓器移植拒絶などの血管損傷/炎症に続発性の血栓症、偏頭痛などの状態、レイノー現象、血小板がアテローム性プラーク形成/進行、狭窄/再狭窄などの血管壁における根底の炎症性疾患プロセスに寄与しうる状態、ならびに血小板および血小板由来因子が免疫学的疾患プロセスに関与する喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの炎症性状態である。血液が体において異質の(foreign)表面と接触する状態、例えば生物学的もしくは機械的心臓弁、留置永久カテーテルを持つ患者における状態、または血液が体の外部で異質の表面と接触する状態、例えば血液透析、プラズマフェレーシス、心臓肺バイパス術および体外膜型肺における状態、あるいは心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、深部静脈血栓症およびカテーテル閉塞のような状態において血栓溶解を用いる場合、血栓溶解を促進するかまたは血栓溶解後の再閉塞を防止するため。例えば、血液製剤、例えば濃縮血小板の保存が理由である、ex vivoの、機械的な、または他の手段による、血小板活性化および凝集増加の例。
【0036】
本発明にしたがって、上記障害の治療のための薬剤製造における、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用をさらに提供する。特に、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩は、上記障害を治療するのに有用でありうる。本発明はまた、こうした障害を患う患者に、療法的有効量の本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、上記障害の治療法も提供する。
【0037】
本発明はさらに、心臓血管疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用に関する。
【0038】
本発明はまた、心臓血管疾患を予防するかまたは治療するための方法、例えば抗血栓法において使用するための、純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩にも関する。
【0039】
さらに、本発明は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の投与を伴う抗血栓法に関する。
本発明はまた、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、温血動物において、心臓血管疾患を予防するかまたは治療するための方法にも関する。
【0040】
本発明はまた、患者において、ホスホイノシチド3−キナーゼβを阻害する際に有効な量の、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を患者に投与する工程を含む、患者においてホスホイノシチド3−キナーゼβを阻害するための方法も意図する。
【0041】
さらに、本発明は、呼吸器疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用に関する。
【0042】
本発明はまた、呼吸器疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための、純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩にも関する。
本発明はまた、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体の有効量を投与する工程を含む、温血動物において、呼吸器疾患を予防するかまたは治療するための方法にも関する。
【0043】
さらに、PI3−キナーゼは、癌および他の細胞の増殖を仲介する効果、血管形成事象を仲介する効果、ならびに癌細胞の運動性、遊走および侵襲性を仲介する効果の1以上によって、腫瘍形成に寄与することもまた知られる。本発明の純粋な鏡像異性体は、強力な抗腫瘍活性を所持することも可能であり、該活性は、二重鎖DNA破壊の修復(DNA−PKおよびATM)、そして腫瘍細胞の増殖および生存、ならびに転移性腫瘍細胞の侵襲性および遊走能につながるシグナル伝達工程(mTOR)に関与する、クラスI PI3−キナーゼ(クラスIa PI3−キナーゼおよび/またはクラスIb PI3−キナーゼなど)および/またはPI3キナーゼ関連プロテインキナーゼ(DNA−PK、ATMまたはmTORなど)の1以上の阻害によって得られると考えられる。
【0044】
したがって、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体は、抗腫瘍剤として、特に、腫瘍増殖および生存の阻害に、そして転移性腫瘍増殖の阻害につながる、哺乳動物癌細胞の増殖、生存、運動性、播種および侵襲性の選択的阻害剤としての価値がありうる。特に、本発明の純粋な鏡像異性体は、固形腫瘍疾患の封じ込めおよび/または治療における抗増殖剤および抗侵襲剤としての価値がありうる。特に、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体は、腫瘍細胞の増殖および生存、ならびに転移性腫瘍細胞の遊走能および侵襲性につながるシグナル伝達工程に関与する、クラスIa PI3−キナーゼおよびクラスIb PI3−キナーゼなどの多数のPI3−キナーゼの1以上の阻害に感受性である腫瘍の予防または治療に有用であると予期されうる。さらに、本発明の純粋な鏡像異性体は、クラスIa PI3−キナーゼおよびクラスIb PI3−キナーゼなどのPI3−キナーゼの阻害によってのみまたはその阻害によって部分的に仲介される、これらの腫瘍の予防または治療に有用であると予期することも可能であり、すなわち本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体を用いて、こうした治療が必要な温血動物において、PI3−キナーゼ阻害効果を生じることも可能である。
【0045】
さらに、本明細書に記載するような、PI3−キナーゼ活性の阻害剤である純粋な鏡像異性体は、例えば、乳房、結腸直腸、肺(小細胞肺癌、非小細胞肺癌および気管支肺胞上皮癌を含む)および前立腺の癌、ならびに胆管、骨、膀胱、頭部および首、腎臓、肝臓、胃腸組織、食道、卵巣、膵臓、皮膚、精巣、甲状腺、子宮、子宮頸部および外陰部の癌、ならびに白血病(急性リンパ急性白血病(ALL)および慢性骨髄性白血病(CML)を含む)、多発性骨髄腫およびリンパ腫の治療に療法的に価値がありうる。
【0046】
本発明にしたがって、本明細書記載のすべての障害の治療のための薬剤製造における、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用をさらに提供する。
【0047】
本発明はまた、本明細書記載のすべての障害の治療法であって、こうした障害を患う患者に、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の療法的有効量を投与する工程を含む、前記治療法も提供する。
【0048】
さらに、本発明は、癌を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用に関する。
【0049】
さらに、本発明はまた、癌を予防するかまたは治療するための方法において使用するための、純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩にも関する。
本発明はまた、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体の有効量を投与する工程を含む、温血動物において、癌を予防するかまたは治療するための方法も意図する。
【0050】
本発明はまた、白血球機能障害に関連する疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用にも関する。
【0051】
さらに、本発明はまた、白血球機能障害に関連する疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための、純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩にも関する。
【0052】
本発明はまた、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体の有効量を投与する工程を含む、温血動物において、白血球機能障害に関連する疾患を予防するかまたは治療するための方法も意図する。
【0053】
したがって、本発明のさらに別の目的は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の量を患者に投与する工程を含む、PI3−キナーゼβを阻害する方法であり、ここで、該量は患者においてPI3−キナーゼβを阻害するのに有効である。
【0054】
本明細書に記載するような、PI3−キナーゼの阻害剤である純粋な鏡像異性体はまた、多様な他の疾患状態における潜在的な療法的使用も有する。例えば、PI3−キナーゼは、血管樹、すなわち血管平滑筋細胞において、Thyberg, 1998, European Journal of Cell Biology 76(1):33−42、そして肺において(気道平滑筋細胞)、Krymskaya, V.P., BioDrugs, 2007. 21(2):85−95、平滑筋増殖を促進する際に重要な役割を果たす。血管平滑筋細胞の過剰な増殖は、動脈硬化プラークの形成に、そして侵襲性血管処置後の新生内膜過形成の発展に重要な役割を果たす、Scwartzら, 1984, Progress in Cardiovascular Disease 26:355−372; Clowesら, 1978, Laboratory Investigations 39:141−150。さらに、気道平滑筋細胞の過剰な増殖は、喘息および慢性気管支炎の設定において、COPDの発展を導く。したがって、PI3−キナーゼ活性の阻害剤を用いて、血管再狭窄、アテローム性動脈硬化症、およびCOPDを予防することも可能である。
【0055】
PI3−キナーゼはまた、腫瘍細胞を制御する際にも、そしてこれらの細胞がアポトーシス成長を経る傾向においても重要な役割を果たす(Sellersら, 1999, The Journal of Clinical Investigation 104:1655−1661)。さらに、脂質ホスファターゼPTENによるPI3−キナーゼ脂質産物PI(3,4,5)PおよびPI(3,4)Pの調節されない制御が、ヒトにおいて、多くの悪性腫瘍の進行に重要な役割を果たす(Leeversら, 1999, Current Opinion in Cell Biology 11:219−225)。したがって、本明細書に記載するような、PI3−キナーゼ阻害剤である純粋な鏡像異性体を用いて、ヒトにおいて新生物を治療することも可能である。
【0056】
PI3−キナーゼはまた、白血球機能(Fullerら, 1999, The Journal of Immunology 162(11):6337−6340; Ederら, 1998, The Journal of Biological Chemistry 273(43):28025−31)およびリンパ球機能(Vicente−Manzanaresら, 1999, The Journal of Immunology 163(7):4001−4012)において重要な役割を果たす。例えば、炎症内皮への白血球接着は、PI3−キナーゼ依存性シグナル伝達プロセスによる内因性白血球インテグリンの活性化を伴う。さらに、好中球における酸化バースト(Nishiokaら, 1998, FEBS Letters 441(1):63−66およびCondliffe, A.M.ら, Blood, 2005. 106(4):1432−40)および細胞骨格再編成(Kirschら, 1999, Proceedings National Academy of Sciences USA 96(11):6211−6216)は、PI3−キナーゼシグナル伝達を伴うようである。好中球遊走および方向性移動もまた、PI3K活性に依存する(Camps, M.ら, Nat Med, 2005. 11(9): p.936−43およびSadhu, C.ら, J Immunol, 2003. 170(5):2647−54)。したがって、PI3−キナーゼの阻害剤は、白血球接着および炎症部位での活性化を減少させる際に有用である可能性もあり、そしてしたがって、急性および/または慢性炎症性障害を治療するのに使用可能である。PI3−キナーゼはまた、リンパ球増殖および活性化においても重要な役割を果たす、Frumanら, 1999, Science 283(5400):393−397。自己免疫疾患におけるリンパ球の重要な役割を考慮すると、PI3−キナーゼ活性の阻害剤をこうした障害の治療に用いてもよい。
【0057】
酵素活性の阻害剤としての化合物、例えば本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体の有効性は、例えば、化合物があらかじめ定義された度合いまで活性を阻害する濃度を決定し、そして次いで結果を比較することによって確立可能である。典型的には、好ましい測定は、生化学アッセイにおいて活性の50%を阻害する濃度、すなわち50%阻害濃度または「IC50」である。IC50は、当該技術分野に知られる慣用的技術を用いて測定可能である。
【0058】
さらに、本発明はまた、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩、および異なる作用機構を持つ任意の抗血栓剤(単数または複数)を含む組み合わせであって、前記抗血栓剤(単数または複数)が、例えば1以上の以下:抗凝血剤、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、他のヘパリン誘導体、合成ヘパリン誘導体(例えばフォンダパリヌクス)、ビタミンKアンタゴニスト(例えばワルファリン)、凝固因子の合成またはバイオテクノロジー阻害剤(例えば合成トロンビン、FVIIa、FXa、FXIaおよびFIXa阻害剤、ならびにrNAPc2)、抗血小板剤、アセチルサリチル酸、ジピリダモール、シロスタゾール、チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、AZD6140、ADP/ATP受容体(P2X1、P2Y1、P2Y12)の他の阻害剤;トロンボキサン受容体および/またはシンテターゼ阻害剤;チロフィバン、エプチフィバチド、アブシキシマブまたは他のGPIIb/IIIaアンタゴニスト;プロスタサイクリン模倣体;ホスホジエステラーゼ阻害剤;PAR1アンタゴニストSCH530348のようなプロテアーゼ活性化受容体(PAR1またはPAR4)の阻害剤、p−セレクチン・アンタゴニスト、GPVIアンタゴニスト、GPIbα−vWF−コラーゲン相互作用阻害剤、EP3受容体アンタゴニスト、およびカルボキシペプチダーゼU(CPUまたはTAFIa)を阻害することによって働く線維素溶解刺激剤、またはプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI−1)であってもよい、前記組み合わせにも関する。
【0059】
さらに、本発明は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩、および血栓溶解剤、例えば1以上の組織プラスミノーゲン活性化因子(天然、組換えまたは修飾)、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プルロキナーゼ、アニソイル化(anisoylated)プラスミノーゲン−ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、動物唾液腺プラスミノーゲン活性化因子、ミクロプラスミンまたは他のプラスミン変異体を含む組み合わせに関する。
【0060】
疾患状態を予防するかまたは治療するための本発明の方法において、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の有効量を、用量型で投与してもよい。さらなる態様において、用量は、錠剤(例えば経口、舌下、および頬側投与用に配合された錠剤)、カプセル(例えば粉末、液体、または徐放配合物を含有するカプセル)、静脈内配合物、鼻内配合物、筋肉注射用配合物、シロップ、座薬、エアロゾル、頬側配合物、経皮配合物、またはペッサリーの形であってもよい。さらに、用量は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を約5〜約500mg含有し、そしてさらに言えば、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を約25〜約300mg含有する。
【0061】
本発明の別の側面は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を、1以上の薬学的に許容されうるキャリアーおよび/または希釈剤と一緒に含有する薬学的組成物に関する。以下、用語「活性成分」は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩、溶媒和物、またはその機能的誘導体であってもよい。
【0062】
この薬学的組成物の投与は、任意の慣用的手段によって行われてもよい。用量は、毎日、毎週、毎月、または他の適切な時間間隔で、例えば経口、静脈内、腹腔内、筋内、皮下、皮内または座薬経路によって、あるいは移植によって(例えば緩慢放出配合物を用いて)、投与されてもよい。本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を錠剤型で投与してもよく、錠剤は、結合剤、例えばトラガカント、コーンスターチ、またはゼラチン;崩壊剤、例えばアルギン酸;および潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含有してもよい。
【0063】
注射可能使用に適した薬学的組成物には、無菌水性溶液または分散物、および無菌注射可能溶液または分散物の即時調製用の無菌粉末が含まれるか、あるいは該薬学的組成物は、局所適用に適したクリーム型または他の型であってもよい。キャリアーは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、その適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。例えば、コーティング、例えばレシチンを使用することによって、分散の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤(superfactant)を使用することによって、適切な流動性を維持してもよい。微生物による混入の防止は、多様な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって達成可能である。等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが可能でありうる。吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中で使用することによって、注射可能組成物の延長された吸収を達成してもよい。
【0064】
本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の必要な量を、上に例示するような多様な他の成分とともに、適切な溶媒中に取り込み、その後、フィルター滅菌することによって、適切な無菌注射可能溶液を調製してもよい。一般的に、基本的分散媒体および1以上の上記成分を含有する無菌ビヒクル内に、滅菌された活性純粋鏡像異性体を取り込むことによって、分散物を調製してもよい。無菌注射可能溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製法は、先の無菌ろ過溶液由来の任意のさらなる望ましい成分を加えた、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の粉末を生じうる、真空乾燥および凍結乾燥であってもよい。
【0065】
薬学的組成物は、例えば不活性希釈剤とともに、または吸収可能食用キャリアーとともに経口投与されてもよいし、硬シェルまたは軟シェルゼラチンカプセル中に封入されてもよいし、錠剤内に圧縮されてもよいし、あるいは食物とともに直接取り込まれてもよい。経口投与のため、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩は、賦形剤とともに取り込まれてもよく、そして摂取可能錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁物、シロップ、ウェハー等の形で使用可能である。こうした組成物および調製物は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を重量少なくとも1%含有してもよい。組成物および調製物の割合は多様であってもよく、そして単位の重量の約5〜約80%の間であってもよい。こうした療法的に有用な組成物中の本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の量は、適切な投薬量が得られるであろう量であってもよい。
【0066】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等はまた、結合剤、例えば、ゴム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモ・デンプン、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムも含有してもよく;そして甘味剤、例えばスクロース、ラクトースまたはサッカリン、あるいはフレーバー剤、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリーフレーバーが添加されてもよい。投薬単位型がカプセルである場合、上記タイプの物質に加えて、液体キャリアーも含有してもよい。コーティングとして、または投薬単位の物理的型を別の方式で修飾するために、多様な他の物質が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルを、シェラック、糖、または両方でコーティングしてもよい。シロップまたはエリキシル剤は、本明細書に記載するような純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩、例えば甘味剤としてのスクロース、例えば保存剤としてのメチルまたはプロピルパラベン、例えば色素および例えばフレーバー、例えばチェリーまたはオレンジフレーバーを含有してもよい。もちろん、任意の投薬単位型を調製する際に用いられる、任意の物質は、薬学的に純粋でなければならず、そして使用する量で実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性がある純粋な鏡像異性体は、持続放出調製物および配合物内に取り込まれてもよい。
【0067】
本発明は、限定されるわけではないが、以下の実施例を参照することによって、さらに記載される。
実験セクション
略語
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DPPP 1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
THF テトラヒドロフラン
Ms メタンスルホニル
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
s 一重線
d 二重線
dd 二重二重線
dt 三重線の二重
t 三重線
m 多重線
一般的な実験法
H NMRおよび13C NMRスペクトルは、Varian Unity Pluss 400mHz、またはVarian Inova 500MHz上、298Kで得られた。溶媒残渣ピークを内部標準として、化学シフトをppmで示す: CDCl δ 7.26; DMSO−d δ 2.50; δ 39.5ppm。Perkin Elmerモデル341旋光計上、20℃で旋光を記録した。Stuart Scientific SMP3融点装置で融点を記録した。MeOH/ギ酸100/0.1で溶出させる4.6x250mm Chiralpak ASカラム上の分析用キラルクロマトグラフィーによって、表題化合物のeeを決定した。
【0068】
Bruker D8Advance X線粉末回折計上、内部参照なしで、そして可変スリットを用いて、X線粉末回折パターンデータを測定した。
ソフトウェアACD/Nameバージョン9.04を用いて、化学名(IUPAC)を生成した。
【0069】
9−ブロモ−2−ヒドロキシ−7−メチル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン塩酸を、WO2004016607に記載されるように調製した。
【実施例】
【0070】
実施例1
(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸、おそらく(−)2−{[(1R)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸
【0071】
【化1】

【0072】
a)9−ブロモ−7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン
5℃で、N大気下、乾燥THF(4L)中の9−ブロモ−2−ヒドロキシ−7−メチル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン塩酸(407g、1.40mol)の攪拌スラリーに、トリエチルアミン(259g、2.56mol)を10分間に渡って添加した。MsCl(259g、2.26mol)を30分間に渡って添加し、そして生じた混合物を5℃で2.5時間攪拌した。モルホリン(388g、4.45mol)を添加し、そして生じた混合物を60℃で6時間攪拌した。水(8.2L)を添加し、そして生じた混合物を65℃で3時間攪拌した。混合物を4時間の間に20℃に冷却し、そして20℃で一晩攪拌した。産物をろ過し、水(2.0L+1.5L)で洗浄し、そして0〜1mbarの真空下および40℃で乾燥させて、426g(94%)のサブタイトル化合物を得た。
【0073】
【化2】

【0074】
b)9−アセチル−7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン
40℃で、N大気下、10L反応装置中、DMF(3.0L)および水(400mL)中の9−ブロモ−7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(677g、2.09mol)、KCO(375g、2.71mol)の攪拌スラリーを、反応装置から排気し、そして反応装置を窒素で満たすことによって脱気した。n−ブチルビニルエーテル(1267g、12.6mol)を添加し、そして生じた混合物をもう一度脱気した。DMF(340mL)中のDPPP(69.0g、0.17mol)およびPd(OAc)(9.24g、0.041mol)の懸濁物を添加し、そして生じた混合物を90℃で2日間攪拌した。真空下、90℃で反応混合物を濃縮し、総体積2.5Lにした。HO(9L)を添加し、そして生じた懸濁物を20℃で2時間攪拌した。固体をろ過し、そして25L反応装置に移した。水(15L)および3.6M HCl(5L)を添加し、そして混合物を1時間の間で37℃にゆっくりと加熱した。ほぼ透明な溶液をろ過し、そしてろ液を25L反応装置に戻した。45%NaOH(950mL)をpH6まで添加することによって、産物を沈殿させ、そして生じたスラリーを20℃で一晩攪拌した。産物をろ過し、水(2x4L)で洗浄し、そして真空下、40℃および0〜1mbarで乾燥させて、531g(89%)のサブタイトル化合物を得た。
【0075】
【化3】

【0076】
c)9−(1−ヒドロキシエチル)−7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン
MeOH(4.7L)中の9−アセチル−7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(502g、1.75mol)の攪拌スラリーに、NaBH(64.9g、1.72mol)を1時間に渡って添加した。生じた混合物を1時間攪拌し、HO(1L)を添加して、そして真空下、70℃で、2Lの総体積まで、MeOH蒸留した。水(3L)を添加し、そして生じたスラリーを50℃で30分間攪拌し、6時間の間に2℃に冷却し、そして2℃で一晩攪拌した。産物をろ過し、冷水(2x1L)で洗浄し、そして真空オーブン中、40℃および0〜1mbarで乾燥させて、404g(80%)のサブタイトル化合物を得た。
【0077】
【化4】

【0078】
d)2−{[1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸
CHCl(4.0L)中の9−(1−ヒドロキシエチル)−7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン(338g、1.17mol)の攪拌溶液に、PBr(CHCl中、1M、600mL)を添加した。生じた混合物を40℃で2.5時間攪拌した。2−アミノ安息香酸(192g、1.40mol)およびトリエチルアミン(0.66L、4.74mol)を連続して添加し、そして生じた混合物を40℃で一晩攪拌した。水(2.0L)を添加し、混合物を5分間攪拌し、そして相を分離した。有機相を〜1.0Lの体積に濃縮した。20℃の攪拌残渣に、アセトン(3.5L)および4M HCl(800mL)を添加し、そして生じたスラリーを一晩攪拌した。産物をろ過し、アセトン(1.0L)および水(2.0L)で洗浄し、そして真空オーブン中、40℃、0〜1mbarで乾燥させて、330g(69%)のサブタイトル化合物を得た。
【0079】
【化5】

【0080】
e)(−)メチル2−{[(1R)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}ベンゾエート
DMF(1.0L)中の2−{[1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸(115.4g、0.28mol)の攪拌スラリーに、DIPEA(80mL、0.46mol)およびMeI(25mL、0.40mol)を添加した。生じた混合物を室温で一晩攪拌した。MTBE(1L)およびHO(2L)を添加した。混合物を30分間攪拌し、そして相を分離した。水性層をMTBE(0.6+0.5L)で2回抽出し、そして合わせた有機相を0.05M NaHCO(2x0.5L)および0.4L HOで洗浄した。有機相を濃縮し、そしてヘプタン/EtOH 20:80で溶出させるChiralpak AS HPLCカラム上のキラルクロマトグラフィーによって、鏡像異性体を分離した。より遅い溶出化合物を収集して、48g(99.4%ee)のサブタイトル化合物を得た。
【0081】
【化6】

【0082】
f)(−)2−{[(1R)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸
THF(35mL)およびMeOH(35mL)中の(−)メチル2−{[(1R)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}ベンゾエート(5.22g、12.4mmol)の攪拌溶液に、HO(35mL)中に溶解したNaOH(2.7g、67.5mmol)を添加した。室温で3日間置いた後、〜35mL残るまで、混合物を真空下で濃縮し、HO(200mL)で希釈し、そしてCHCl(50mL)で洗浄した。水性層を1M HCl(70mL)で酸性化し、そしてCHCl(50mL)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、そして〜5mLに濃縮した。アセトン(15mL)を残渣に添加し、そして混合物を一晩攪拌した。結晶物質をろ過し、そしてアセトンで洗浄した。EtOH/HOからさらに再結晶させることによって、微量のアセトンおよびCHClを除去して、2.94g(58%)の表題化合物を得た。
【0083】
【化7】

【0084】
実施例2
(+)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸、おそらく(+)2−{[(1S)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸
【0085】
【化8】

【0086】
a)(+)メチル2−{[(1S)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}ベンゾエート
実施例1の工程eから、より速く溶出する化合物を収集して、51g(99.8%ee)のサブタイトル化合物を得た。
【0087】
b)(+)2−{[(1S)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸
実施例1の(−)2−{[(1R)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸(1fを参照されたい)に関するものと同じ方法によって、(+)メチル2−{[(1S)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}ベンゾエート(11.9g、28mmol)から表題化合物を調製して、10.9g(94%)の表題化合物を得た。
【0088】
【化9】

【0089】
酵素阻害のアッセイ
ヒト組換え酵素を用いたAlphaScreenに基づく酵素活性アッセイにおいて、PI3Kβ、PI3Kα、PI3KγおよびPI3Kδの阻害を評価した。該アッセイは、ホスファチジルイノシトール(4,5)二リン酸(PIP2)のホスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸(PIP3)への、PI3Kが仲介する変換を測定する。ビオチン化PIP3、GSTタグ化プレクストリン相同(PH)ドメインおよび2つのAlphaScreenビーズは複合体を形成し、該複合体は680nmでのレーザー励起に際してシグナルを誘発する。酵素反応において形成されるPIP3は、PHドメインへの結合に関して、ビオチン化PIP3と競合し、したがって酵素産物が増加するにつれてシグナルは減少する。
【0090】
10の異なる化合物濃度を試験し、そして最大活性のパーセントとして表したPI3Kβ、PI3Kα、PI3KγおよびPI3Kδの阻害を、阻害剤濃度に対してプロットした。
【0091】
方法
化合物をDMSO中に溶解し、そして384ウェルプレートに添加した。PI3Kβ、PI3Kα、PI3KγまたはPI3KδをTris緩衝液(50mM Tris pH7.6、0.05% CHAPS、5mM DTTおよび24mM MgCl)中で添加し、そしてPIP2およびATPを含有する基質溶液の添加前に、化合物と20分間プレインキュベーションさせた。EDTAおよびビオチン−PIP3を含有する停止溶液を添加することによって、20分後に酵素反応を停止し、その後、GST−grp1 PHおよびAlphaScreenビーズを含有する検出溶液を添加した。分析前に、プレートを最低5時間、暗所に置いた。アッセイにおけるDMSO、ATPおよびPIP2の最終濃度は、それぞれ、0.8%、4μMおよび40μMであった。
【0092】
データ分析
式、y=(a+((b−a)/(1+(x/IC50)))、式中、y=%阻害剤; a=0%; b=100%; s=濃度−反応曲線の傾き; x=阻害剤濃度にしたがって、IC50値を計算した。データを表2に示す。
【0093】
洗浄血小板凝集(WPA)アッセイ
Venflon針1.545mm(17GA、1.77IN)を用いた静脈穿刺によって、健康な志願者から血液を収集した。クエン酸デキストロース(ACD)を含有する試験管内にアリコットを収集する前に、最初の2mlの血液を廃棄した。血液6体積に関して、ACD 1体積が必要である。
【0094】
抗凝血剤処理した血液を240xgで15分間遠心分離して、血小板リッチ血漿(PRP)を得た。PRPを新規試験管に移し、そして2200xgで15分間遠心分離した。上清を廃棄し、そして1μMヒルジンおよび0.02U/mLアピラーゼを含有するタイロード緩衝液(TB)中、200000x10/Lに血小板ペレットを再懸濁した。血小板懸濁物を放置して、室温で30分間静置させた。アッセイ直前、CaClを添加して、最終濃度2mMにした。該化合物またはワートマニンをDMSO中に溶解し、そして洗浄した血小板懸濁物を添加する前に、96ウェルプレートに添加した。血小板懸濁物を阻害剤と5分間プレインキュベーションした。プレートを5分間振盪する前および振盪した後に、650nmでの光吸収を記録し、そして記録0(R0)およびR1と称した。次の10分間のプレート振盪および光吸収記録;R2前に、マウス抗ヒトCD9抗体を各ウェルに添加した(ドナー特異的濃度で)。
【0095】
化合物の試験前に、各洗浄血小板懸濁物において、1μMワートマニン(完全PI3K阻害)の非存在下または存在下で、CD9抗体が誘導する凝集に関する濃度反応を行った。PI3K阻害の最大の依存を持つCD9抗体濃度を試験に選択した。
【0096】
データ分析
式:[(R1−R2)/R1]x100=%凝集にしたがって、凝集パーセントを計算する前に、すべての読み取り値から、TBを含むウェルにおける光吸収を減じた。自発的凝集または阻害剤の凝集促進効果を、同じ式、[(R0−R1)/R0]x100=%凝集にしたがって評価した。
【0097】
式、y=(a+((b−a)/(1+(x/IC50)))、式中、y=洗浄血小板凝集; a=最小凝集; b=最大凝集; s=濃度−反応曲線の傾き; x=阻害剤濃度にしたがって、IC50値を計算した。データを表2に示す。
【0098】
表2.各鏡像異性体に関する、ならびにラセミ体に関する、PI3Kβ、PI3Kα、PI3KγおよびPI3Kδに関する、ならびにWPAにおける、IC50
【0099】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡像異性的に純粋な(−)2−[1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩。
【請求項2】
≧95%の鏡像異性過剰(ee)である点で特徴付けられる、請求項1記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項3】
≧99.8%、例えば99.9%の鏡像異性過剰(ee)である点で特徴付けられる、請求項1記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項4】
固体状態にある点で特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項5】
部分的に結晶状態にある点で特徴付けられる、請求項1〜4のいずれか記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項6】
実質的に結晶状態にある点で特徴付けられる、請求項1〜5のいずれか記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項7】
以下のおよそのd値:6.8、5.9および3.91ÅでのXRPDピークを有することによって特徴付けられる、請求項1〜6のいずれか記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項8】
以下のおよそのd値:6.8、6.1、5.9、4.98、4.41、4.26および3.91ÅでのXRPDピークを有することによって特徴付けられる、請求項1〜6のいずれか記載の純粋な鏡像異性体。
【請求項9】
図1に本質的に示すようなXRPD−回折図形を有することによって特徴付けられる、請求項7または請求項8記載の(−)2−[(1R)−1−(7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチルアミノ]安息香酸。
【請求項10】
キラルクロマトグラフィー、その後、メチルエステルの加水分解および結晶化による、メチル2−{[−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}ベンゾエートの2つの鏡像異性体の分離を含む、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体を調製するためのプロセス。
【請求項11】
医学的療法において使用するための、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩。
【請求項12】
薬学的に許容されうる希釈剤またはキャリアーとともに、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
心臓血管疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用。
【請求項14】
抗血栓法において使用するための薬剤調製における、請求項13記載の、純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用。
【請求項15】
呼吸器疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用。
【請求項16】
癌を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用。
【請求項17】
白血球機能障害に関連する疾患を予防するかまたは治療するための方法において使用するための薬剤調製における、請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩の使用。
【請求項18】
有効量の請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、温血動物において、心臓血管疾患を予防するかまたは治療するための方法。
【請求項19】
有効量の請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、温血動物において、呼吸器疾患を予防するかまたは治療するための方法。
【請求項20】
有効量の請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、温血動物において、癌を予防するかまたは治療するための方法。
【請求項21】
有効量の請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩を投与する工程を含む、温血動物において、白血球機能障害に関連する疾患を予防するかまたは治療するための方法。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩、および異なる作用機構を持つ任意の抗血栓剤(単数または複数)を含む組み合わせであって、前記抗血栓剤(単数または複数)が、例えば1以上の以下:抗凝血剤、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、他のヘパリン誘導体、合成ヘパリン誘導体(例えばフォンダパリヌクス)、ビタミンKアンタゴニスト、凝固因子の合成またはバイオテクノロジー阻害剤(例えば合成トロンビン、FVIIa、FXa、FXIaおよびFIXa阻害剤、ならびにrNAPc2)、抗血小板剤、アセチルサリチル酸、ジピリダモール、シロスタゾール;チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、AZD6140、ADP/ATP受容体(P2X1、P2Y1、P2Y12)の他の阻害剤;トロンボキサン受容体および/またはシンテターゼ阻害剤;チロフィバン、エプチフィバチド、アブシキシマブまたは他のGPIIb/IIIaアンタゴニスト;プロスタサイクリン模倣体;ホスホジエステラーゼ阻害剤;PAR1アンタゴニストSCH530348のようなプロテアーゼ活性化受容体(PAR1またはPAR4)の阻害剤;p−セレクチン・アンタゴニスト;GPVIアンタゴニスト;GPIbα−vWF−コラーゲン相互作用阻害剤;EP3受容体アンタゴニスト、およびカルボキシペプチダーゼU(CPUまたはTAFIa)を阻害することによって働く線維素溶解刺激剤、またはプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI−1)であってもよい、前記組み合わせ。
【請求項23】
請求項1〜9のいずれか記載の純粋な鏡像異性体またはその薬学的に許容されうる塩、および血栓溶解剤、例えば1以上の組織プラスミノーゲン活性化因子(天然、組換えまたは修飾)、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プルロキナーゼ、アニソイル化(anisoylated)プラスミノーゲン−ストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、動物唾液腺プラスミノーゲン活性化因子、ミクロプラスミンまたは他のプラスミン変異体を含む組み合わせ。
【請求項24】
2−{[(1R)−1−(7−メチル−2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル)エチル]アミノ}安息香酸またはその薬学的に許容されうる塩。

【図1】
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【公表番号】特表2011−510071(P2011−510071A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544271(P2010−544271)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050065
【国際公開番号】WO2009/093972
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】