説明

長鎖分岐ポリマーを調製するためのワンポット方法及び試薬

長鎖分岐ポリマーを調製するワンポット重合方法が提供される。本発明の長鎖分岐ポリマーの主鎖及び側鎖間の接合点として作用する“T”試薬も記載される。“T”試薬は2以上の官能基を有し、コモノマー及び連鎖移動剤の両方として作用する。任意に、まずα-オレフィン及び“T”試薬間の共重合反応がおこってポリオレフィン主鎖に“T”分子を組み込み、次いで組み込まれた“T”単位が成長ポリオレフィン連鎖と反応する連鎖移動剤として挙動して側鎖を形成する。特別な実施態様において、長鎖分岐ポリエチレン(PCBPE)及び長鎖分岐ポリプロピレン(PCBPP)を調製する重合方法が詳述される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本出願は、そのすべてが参考として本明細書に導入されている2004年7月1日に出願された米国仮特許願第60/584,838号の優先権を主張する。
本発明は、長鎖分岐ポリマー、その合成に有用な方法及び試薬に関する。一実施態様においては、本発明は長鎖分岐ポリプロピレンを含む長鎖分岐ポリオレフィンを調製するワンポット重合方法に関する。
【0002】
(背景技術)
長鎖分岐(LCB)ポリマーは、その長さが臨界からみ合い長さ以上である1以上の側鎖分岐を含むポリマーである。同一分子量の直鎖状ポリマーと比較すると、長鎖分岐ポリマーは高剪断感受性、ゼロ剪断粘度、溶融弾性、及び高耐衝撃性を示す(Graessley, Acc. Chem. Res. 1977, 10, 332; Bersted, et al. J. Applied Polym. Sci. 1981, 26, 1001; Roovers, Macromolecules 1991, 24, 5895)。LCBポリマーは、低剪断速度において高粘度を示し、高剪断速度において低粘度を示す。剪断減粘は、高剪断条件下のようなポリマー加工において有利である。更に、高溶融強度、すなわち、溶融物質の引き延ばし中に伸長抵抗性が増大することは、主に伸長的な流れを含む熱成形、押出被覆、及びブロー成形法において重要な望ましい機械的な性質である。
メタロセン及び非メタロセン触媒系のような単一部位触媒を用いて製造されたポリオレフィンは、一般的には、約2の多分散性指数を特徴とする比較的狭い分子量分布を有する。この狭い分布は優れた機械的性質をもたらすが、剪断減粘の不足のために加工性を悪化させる。他方、多くの活性部位を含む伝統的なチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリオレフィンは幅広い分子量分布を示し、剪断減粘のような良好な加工特性をもたらすが、機械的性質は望ましくない。
【0003】
ポリプロピレンは一般に使用されるポリオレフィンであり、現代の工業的用途においてほぼ至るところに存在する。ポリプロピレンは、高度に精製できて微生物の増殖に対して耐性があるので、医療用途及び半導体業界において使用するのに優れた材料であるため、高品質プラスチックとして特に望ましい。更に、軽量の耐薬品性及び耐熱性物質として、ポリプロピレンは多様な包装材料、繊維製品及び消費財の製造に有用である。しかしながら、チーグラー・ナッタまたはメタロセン触媒により調製される通常アイソタクチック半結晶質熱可塑性物である市販のポリプロピレン(PP)製品は、主として直鎖状の分子構造である。直鎖状PPポリマーは多くの望ましい物性を有するけれども、特に狭い分子量分布を有するメタロセンにより調製されたものは種々の溶融加工上の欠点を示す。溶融強度が低いと溶融熱成形における局所的な薄化、大きな部分のブロー成形における相対的な弱さ、紙またはその他の基質の高速押出コーティング中におけるへり織りの開始、及び積層構造物の共押出における流動不安定性を引き起こす。その結果、PPは、例えば、押出コーティング、ブロー成形、異形押出、及び熱成形のようなある種の最終製造に制限がある。
そのようなポリマーの加工上の欠陥を改良する方法の一は、ポリマーに長鎖分岐を導入する方法である。しかしながら、この分野の克服には多くに問題が残る。例えば、LCBポリマー合成の現場またはワンポット方法は、ポリマー合成に関する経済上及び環境上の懸念を解決するために努力することが望ましい。
更に、きわめて強い関心及び多くの研究の試みにもかかわらず、今までのところでは長鎖分岐ポリプロピレン(LCBPP)を調製する商業的に実現可能な方法はない。
【0004】
直接重合方法においては、LCBPPポリマーを現場で調製することの大きな困難の一は、複雑なPPマクロモノマー構造物に起因する。2種の可能なモノマー挿入様式(1,2-及び2,1-挿入を含む)及び複数の連鎖停止反応機構が、ビニル連鎖末端のみがLCBの形成に有効でありながら、種々の連鎖末端を有するポリプロピレンをもたらしうる(Weng, et al. Macromol. Rapid Commun. 2000, 21, 1103)。更に、最も重要なアイソタクチックポリプロピレンの調製は、マクロモノマーを組み込むための活性サイトにおいて限定された特別な開裂を有するrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAOのようなアイソタクチック特異性触媒が必要である。したがって、すべての要件、すなわち有意量のビニル末端PPマクロモノマーの現場形成及びマクロモノマーのLCBPP構造への更なる組み込みに適合しうる触媒系を見出すことは非常に困難である。
更に、ある種の反応条件下では、組み込まれたジオレフィン単位の少量部分が二重の連鎖形成にかかわる可能性があり、ポリマー内の交差構造の増大が加工できない(架橋)ポリマー網目構造となる。
したがって、LCBポリマー並びにそれらの合成に使用する方法及び試薬が継続的に必要である。
【0005】
(発明の概要)
下式を有する長鎖分岐ポリマーを形成する方法が提供される。
【0006】
【化1】

(式中、各Rは独立してHまたはC1-C30置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分であり、nは500乃至100,000の整数であり、mは100乃至50,000の整数であり、X'は部分Xの残基であり、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基であり、Yは連鎖移動剤(chain transfer agent)であり、Y'はYの残基であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、qは1乃至500の整数であり、かつpは0乃至1,000の整数である。)
【0007】
本発明の方法は、α-オレフィンモノマー及び“T”試薬の提供を含む。“T”試薬は式X-R1-Y(式中、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、かつYは連鎖移動剤である。)を有する。本発明の方法は更に、触媒の提供及び反応混合物を生成するための容器内におけるオレフィンモノマー、“T”試薬、及び触媒の混合を含む。反応混合物は、重合条件下で長鎖分岐ポリマーを形成するのに十分な時間反応させる。
好ましくは、本発明の合成方法は、単一容器内で実施される現場(ワンポット)方法である。
一例においては、Yは、スチレン、アルキルベンゼン、有機ボラン、有機シラン、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛、またはチオフェン部分のような部分を含む連鎖移動剤である。
典型的な“T”試薬には、p-(3-ブテニル)スチレン/水素、p-(エチルノルボレニル)スチレン/水素、5-ヘキセニルアルキルホウ素水素化物、エチルノルボレニルアルキルホウ素水素化物、5-ヘキセニルジアルキル珪素水素化物、及びエチルノルボレニルジアルキル珪素水素化物が含まれる。
任意に、反応混合物は更に、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素またはそれらの組み合わせのような希釈剤を含む。
【0008】
本発明の方法は更に、本発明のグラフトポリマーを生成するための本発明の長鎖分岐ポリマー及びモノマーのグラフト重合反応を含みうる。そのようなグラフト重合反応には、グラフト-フロム(graft-from)、グラフト-オントゥ(graft-onto)またはグラフト-スルー(graft-through)重合反応が含まれうる。
本発明の方法は任意に、架橋ポリマーを生成するための長鎖分岐ポリマーの架橋反応及びペンダント官能基(pendant functional group)を有するポリマーを生成するための長鎖分岐ポリマーの官能化反応を更に含む。
更に、下式を有する本発明の長鎖分岐ポリマーが提供される。
【0009】
【化2】

(式中、各Rは独立してHまたはC1-C30置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分であり、nは500乃至100,000の整数であり、mは100乃至50,000の整数であり、X'は部分Xの残基であり、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基であり、Yは連鎖移動剤であり、Y'はYの残基であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、qは1乃至500の整数であり、かつpは0乃至1,000の整数である。)
【0010】
一実施態様においては、長鎖分岐ポリマーは長鎖分岐ポリエチレンである。更なる例においては、長鎖分岐ポリマーは長鎖分岐ポリプロピレンである。
本発明の長鎖分岐ポリマーは、公知の立体構造、アタクチック、シンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミアイソタクチック及びアイソタクチックステレオブロックのいずれかを有する。特別な実施態様においては、アイソタクチック長鎖分岐ポリマー、特にアイソタクチック長鎖分岐ポリプロピレンが好ましい。
140℃より高い溶融温度を有する長鎖分岐ポリプロピレンも提供される。
式X-R1-Y(式中、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分であり、かつYは連鎖移動剤である。)を有するポリマー合成において使用するための二重の機能の“T”試薬の使用について詳述する。
更に、オレフィンモノマーを提供すること、式X-R1-Y(式中、Xは末端ビニルまたはノルボルネン基であり、R1はC0-C10の直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、かつYは連鎖移動剤である。)を有する“T”試薬を提供すること、及びオレフィンモノマー及びT試薬を共重合すること、を含む長鎖分岐オレフィンポリマーの合成方法について詳述する。好ましくは本発明の合成方法は、重合の前に反応体(reactant)を移動(remove)させることなく単一の容器で実施される。任意に、重合は触媒、好ましくは遷移金属配位触媒により開始される。
【0011】
長鎖分岐(LCB)ポリマーは、その長さが臨界からみ合い長さ以上である1以上の側鎖分岐を含むポリマーである。長鎖分岐(LCB)ポリオレフィンは、ポリマー加工における利点である剪断減粘、及びとりわけ熱成形、押出被覆、及びブロー成形法において重要な高溶融強度を提供する、工業用途における有意な利点を有する。
長鎖分岐(LCB)ポリオレフィン組成物及びそれらの合成方法が本発明により提供される。更に、長鎖分岐ポリマーの合成において使用するための本発明の“T”試薬が詳述される。本発明の重合は、“T”試薬と呼ばれる新規試薬の使用により容易になる。試薬はオレフィンモノマーと共重合する。更に、“T”試薬は、連鎖移動剤として機能し、ポリマー連鎖の分岐を引き起こす反応性部分を含む範囲で連鎖移動を促進するように機能する。本発明は、試薬を用いる重合方法、ならびに新規試薬自体、及び本発明に従って調製される新規ポリマーに関する。
本発明は、主鎖及び1以上の側鎖を含む長鎖分岐(LCB)ポリオレフィンを調製する重合方法を開示する。任意にそして好ましくは、本発明の方法は現場(ワンポット)重合方法である。得られるLCBポリマーは融液または溶液状態で加工でき、剪断減粘及び高溶融強度を示す。
下式の式1は、本発明の方法による本発明のLCBポリオレフィン(III)の合成の一般的な反応スキームを示す。
【0012】
【化3】

【0013】
式1において示される本発明の方法の実施態様においては、オレフィンモノマー及び“T”試薬(I)を混合して触媒の存在下で反応させるとLCBポリオレフィン(III)を生成する。LCBポリオレフィン構造物を形成する現場方法は特に新規“T”試薬を使用し、これが合成においてコモノマー及び連鎖移動剤の両方として作用する。組み込まれた“T”試薬単位は、本発明のLCBポリマーにおいてポリオレフィン主鎖及び側鎖間の接合点である。ポリマー組成物(III)において示されるX'及びY'は、それぞれポリマー合成後のX及びYの残基である。
オレフィンモノマーはいずれかのオレフィンでもオレフィンの混合物でもよく、特に重合条件下で反応性である末端ビニル基を有するα-オレフィンである。例えば、オレフィンモノマーには、2乃至約30個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状脂肪族α-オレフィンが含まれる。環状オレフィンモノマーには、具体的には二環式モノマーを含む1より多い環を有するモノマーが含まれる。LCBポリオレフィンのポリオレフィン主鎖及び/または側鎖を調製するのに使用される典型的な好ましいオレフィンモノマーには、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、ノルボルネン、フェニルノルボルネン、インダニルノルボルネン、及びビニリデンノルボルネンが含まれる。これらのモノマーは単独でも2種以上のモノマーの組み合わせでも使用しうる。
“T”試薬は下式により表しうる。


【0014】
【化4】

【0015】
(I)で示される“T”試薬は、末端ビニルまたはノルボルネン基を含む部分Xを含む。各“T”試薬中の部分Xは、ポリオレフィン主鎖構造に“T”試薬を組み込むための遷移金属媒介α-オレフィン重合において非常に反応性である。R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールである。好ましい実施態様においては、R1はC2-C6置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、最も好ましくは、R1はC2-C4置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルである。“T”試薬は更に連鎖移動剤である部分Yを含む。特にYは、水素化物をそれ自体または別の水素化物源との組み合わせで放出しうる還元剤である連鎖移動剤である。別の水素化物源には、具体的には水素が含まれる。反応性連鎖移動剤は公知であり、とりわけ、米国特許第6,248,837号に例示されているジアルキルボラン、米国特許第6,479,600号に例示されているp-メチルスチレン/水素、有機ボラン、有機シラン、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛、及びチオフェンが含まれる。組み込まれた“T”分子内のY部分は、本発明の方法の一実施態様においては、成長ポリマー側鎖との連鎖移動反応に関与して“T”分子により側鎖及びポリマー主鎖間の結合を形成する。
典型的な好ましい“T”試薬には、p-(3-ブテニル)スチレン/水素(IV)、p-(エチルノルボレニル)スチレン/水素(V)、5-ヘキセニルアルキルホウ素水素化物(VI)、エチルノルボレニルアルキルホウ素水素化物(VII)、5-ヘキセニルジアルキル珪素水素化物(VIII)、エチルノルボレニルジアルキル珪素水素化物(IX)が含まれる。それらの分子構造を以下に示す。
【0016】
【化5】

(式中、R2及びR3は各々独立してC1-C12置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールである。)
【0017】
好ましくはR2及びR3は各々独立してC1-C8置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、最も好ましくはR2及びR3はC1-C6置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールである。
“T”試薬とともに水素を使用することは任意である。本明細書において詳述される実施例において注目されるように、前述の“T”試薬IV及びVが、好ましくは水素の存在下で使用されることは理解される。
本発明による方法において有用な触媒には、チーグラー・ナッタ、メタロセン、及び非メタロセン触媒を含む均質及び不均質触媒系の両方が含まれる。
本発明の方法において有用な触媒は、α-オレフィンまたはノルボルネン部分の共重合及び本発明の“T”試薬に含まれるような連鎖移動剤との連鎖移動反応の両方を実施しうる。一実施態様においては、両方の機能が同時に実施されうる。
そのような触媒は、好ましくは、LCBポリオレフィンの現場調製に使用されうるオレフィンを重合させうる遷移金属配位触媒である。典型的な適する遷移金属配位触媒には、均質、不均質、及び支持体付き単一部位触媒が含まれる。この種の触媒には、下式で示される活性イオン錯体が含まれる。
【0018】
【化6】

(式中、Lは、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、アミド、ホスフィド、立体的に妨げるα-ジイミン基等のような配位子、または2つの配位子間に共有結合架橋基(例えば、シラン、メチル及びジメチル基)を有する架橋配位子であり、L'は、水素化物、ハロ、アルキル、アリール、アリールオキシ、及びアルコキシから選択され、a及びbは独立して、0、1または2であり、R'は、水素化物または1乃至20個の炭素原子を有する炭化水素であり、cは1または2である。Mは、周期律表の第IIIB乃至VIIB族及び第VIII族の遷移金属である。)
【0019】
典型的な触媒は非配位アニオンを有するブレンステッド酸塩である。
特に適する触媒は、チタン、ジルコニウム及びハフニウムのような第IVB及びVB族金属と特定の架橋シクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル構造とのメタロセン錯体である。
部分A-は非配位適合性アニオンである。特に適するアニオンは、メチルアルミノキサン(MAO)及びテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩及びメチルトリ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩のようなホウ酸塩から誘導されたものである。
本発明の方法に有用なイオン触媒種は当業者に公知の方法により調製されうる。例えば、(a)周期律表の第IIIB乃至VIIB族及び第VIII族の遷移金属化合物及び(b)遷移金属化合物と反応しうる化合物を混合してイオン錯体を形成することにより調製されうる。化合物(a)及び(b)の反応においては、化合物(a)は形式上その原子価より低い配位数のカチオンを形成し、化合物(b)は非配位適合性アニオンになる。
本発明の方法は、前述の式1に示され、以下に再び示す式(III)を有する長鎖分岐(LCB)ポリオレフィン組成物をもたらす。






【0020】
【化7】

【0021】
この式において、各Rは独立してHまたはC1-C30置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分である。好ましくは、各Rは独立してHまたはC1-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分から選択され、最も好ましくは、各Rは独立してHまたはC1-C6置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分から選択される。主鎖及び側鎖中のR基は同一でも異なっていてもよい。主鎖中の繰り返しオレフィン単位の平均数(n)は500乃至100,000である。好ましくは、nは800乃至10,000であり、最も好ましくは、nは1,000乃至5,000である。各側鎖中の繰り返しオレフィン単位の平均数(m)は100乃至50,000である。好ましくは、mは150乃至10,000であり、最も好ましくは、mは200乃至5,000である。部分X'は、ポリマー中に“T”試薬を組み込んだ後のXの残基である。ポリマー組成物(III)中に示されるY部分は、“T”試薬中に含まれる前述のYである。ポリマー組成物(III)中に示される部分Y'は、連鎖移動反応が側鎖を組み込んだ後のYの残基である。R1は、“T”試薬中に含まれる前述の部分R1、すなわち、C0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールである。好ましい実施態様においては、R1はC2-C6置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、最も好ましくは、R1はC2-C4置換または未置換、直鎖状または分岐状アルキル部分である。分岐数(q)は1以上であり、好ましくは2乃至50であり、最も好ましくは2乃至20であり、(p)は0であるか、1,000までの数である。
【0022】
典型的な本発明の長鎖分岐ポリマーを明らかにする図式的な構造は、(n)、(p)、及び(q)回繰り返すサブ単位が示された順序でのみ存在する構造に限定されることを意図しないことは当業者により認められよう。例えば、繰り返しオレフィン単位の部分(n)は、p及びqの間に配置されてもよい。
本発明のLCBポリオレフィンの立体構造は、ポリオレフィンに関して公知の5種類のタクチシチー、つまり、アタクチック、シンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミアイソタクチック及びアイソタクチックステレオブロックのいずれでもよい。ポリオレフィンの立体構造は使用する触媒の個性により制御される。
ポリプロピレン(PP)を含む本発明のLCBポリオレフィンの特定例は、LCBポリプロピレンを示す(IV')で表される。







【0023】
【化8】

【0024】
本発明の方法に従って製造される典型的な本発明の長鎖分岐ポリプロピレン(LCBPP)は、1以上、好ましくは2乃至50、最も好ましくは2乃至20のqを有する。主鎖内の繰り返しプロピレン単位の平均数は500乃至100,000である。好ましくは、主鎖内の繰り返しプロピレン単位の平均数は800乃至10,000であり、最も好ましくは、主鎖内の繰り返しプロピレン単位の平均数は1,000乃至5,000である。各側鎖内の繰り返しプロピレン単位の平均数は100乃至50,000であり、好ましくは150乃至10,000である。典型的な本発明の長鎖分岐ポリプロピレンを明らかにする図式的な構造は、サブ単位PP、p、及びqが示された順序で存在する構造に限定されないことは当業者により認められよう。例えば、PPは、p及びqの間に配置されてもよい。
好ましい実施態様においては、本発明の方法により製造される本発明のLCBPPはアイソタクチック立体規則性構造を有する。
好ましい実施態様においては、本発明の方法により製造される本発明のLCBPPは140℃より高い融解温度を有する。
更なる例においては、本発明のLCBポリオレフィンは、qが1以上、好ましくは2乃至50、最も好ましくは2乃至20である長鎖分岐ポリエチレン(LCBPE)である。主鎖内の繰り返しオレフィン単位の平均数(n)は500乃至100,000である。好ましくは、nは800乃至10,000であり、最も好ましくは、nは1,000乃至5,000である。各側鎖内の繰り返しオレフィン単位の平均数(m)は100乃至50,000である。好ましくは、mは150乃至10,000である。
理論に縛られることをのぞむことなく、本発明の方法の一般的な反応スキームは以下により表されうる。












【0025】
【化9】

【0026】
式中の各Rは、独立してHまたはC1-C30置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分である。好ましくは、各Rは独立してHまたはC1-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分から選択され、最も好ましくは、各Rは独立してHまたはC1-C6置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分から選択される。主鎖及び側鎖中のR基は同一でも異なっていてもよい。主鎖中の繰り返しオレフィン単位の平均数(n)は500乃至100,000である。好ましくは、nは800乃至10,000であり、最も好ましくは、nは1,000乃至5,000である。各側鎖中の繰り返しオレフィン単位の平均数(m)は100乃至50,000である。好ましくは、mは150乃至10,000であり、最も好ましくは、mは200乃至5,000である。部分X'は、ポリマー中に“T”試薬を組み込んだ後のXの残基である。ポリマー組成物(III)中に示されるY部分は、“T”試薬中に含まれる前述のYである。ポリマー組成物(III)中に示される部分Y'は、連鎖移動反応が側鎖を組み込んだ後のYの残基である。R1は、“T”試薬中に含まれる前述の部分R1、すなわち、C0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールである。好ましい実施態様においては、R1はC2-C6置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、最も好ましくは、R1はC2-C4置換または未置換、直鎖状または分岐状アルキル部分である。コポリマー(II)に組み込まれた“T”分子の数(o)は、得られるLCBポリマー(III)においてそれぞれ未分岐及び分岐“T”単位を表す数(p)及び(q)の合計である。数(o)は1以上であり、好ましくは2乃至100であり、最も好ましくは2乃至50であり、qは1以上であり、好ましくは2乃至50であり、最も好ましくは2乃至20であり、pは0であるか、数(o−q)である。Xは、α-オレフィン及びノルボレン部分から選択される。Yは連鎖移動剤であり、Y'は連鎖移動反応後の残基である。前述の反応における文字“M”は、周期律表の第IIIB乃至VIIB族及び第VIII族の遷移金属である。
【0027】
一般的には、本発明の重合反応は、触媒及び任意に希釈剤の存在下、反応器中、重合条件下で“T”試薬とα-オレフィンモノマーを混合することにより実施される。好ましい実施態様においては、重合条件には、約0乃至80℃のような反応温度の制御、好ましくは一定圧力の保持、及び十分な混合が含まれる。反応時間は、約30秒乃至約24時間である。
非常に好ましい実施態様においては、本発明の重合方法は、合成が単一容器中で実施される現場(ワンポット)重合である。
特別な実施態様においては、重合は、不活性雰囲気中及び実質的に水分の不在下のようなバッチ式条件下で実施しうる。好ましくは、重合は、通常,モノマー,触媒及び希釈剤用の注入用の管、温度感知手段、及び保持ドラムまたは急冷タンクへの流出管を具備する典型的な連続溶液、スラリ、または気相重合工程で連続的に実施される。全滞留時間は、触媒活性及び濃度、モノマー濃度、反応温度、モノマー転化率及び所望の分子量のような変数に依存して変化しうるが、一般的には約30分乃至5時間であろう。
モノマー、触媒成分及び重合反応生成物に適する希釈剤には、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、トルエン、ヘプタン、イソオクタン等のような単独または混合物で使用される脂肪族及び芳香族炭化水素の一般的な群が含まれる。本発明の方法は、使用するα-オレフィンに依存して、使用する希釈剤中で形成されるポリマーのスラリの形、または均質溶液法として実施されうる。しかしながら反応器中でより低粘度の混合物が製造され、ポリマーの40質量%までのスラリ濃度が可能であるため、スラリ法の使用のほうが好ましい。
【0028】
その後の現場連鎖移動反応は、ポリオレフィン側鎖を組み込むばかりでなく、遷移金属触媒が高触媒活性を保持しうるように触媒サイトを再生する。
一実施態様においては、連鎖移動反応は共重合のまえに実施されうる。
本発明の別の実施態様によれば、例えば製造工程に使用されるポリマー組成物において、(III)のような長鎖分岐ポリオレフィンは単独でも、長鎖分岐ポリオレフィン(III)と同一の主鎖または側鎖を有するポリオレフィンと物理的に混合されても使用されうる。低濃度の長鎖分岐ポリマーが、分子量分布の狭い対応するポリマーの加工性及び溶融強度を非常に増大させうる。更に、長鎖分岐ポリオレフィン(III)は、存在する複数の反応性Y基を含む未分岐“T”単位の利用により更に化学的に変性されうる。長鎖分岐ポリオレフィン(III)中のY基は、温和な反応条件下で架橋、官能化、及びグラフト反応を含む多くの反応に容易に関与しうる。Yとのそのような反応は、(III)のような長鎖分岐ポリオレフィン中の主鎖及び側鎖を変化させないが、付着性、相容性、彩色適性、及び機械的強度のような性能を非常に増大させうる。
一実施態様においては、本発明のLCBポリオレフィンは、好ましくは主鎖に沿って、ラジカル、カチオン、アニオン及び遷移金属配位反応を含む多くの化学反応において反応性であるペンダント基(pendant group)を含む。これらの基は、官能化LCBポリマーを製造する選択的架橋及び/または官能化反応の反応性サイトとして作用しうる。更に、これらの基は更に、追加のポリマー側鎖を含む変性されたLCBポリマー構造物を製造するグラフト反応のモノマー、開始剤、連鎖移動剤として作用しうる。本発明のLCBポリマーの多角性は、幅広い種類のLCB組成物及び構造物を提供するその後の誘導体化反応を可能にする。
【0029】
特別な実施態様においては、本発明のLCBPPポリマー(IV') は、主鎖に沿って、ラジカル、カチオン、アニオン及び遷移金属配位反応のような多くの化学反応において非常に反応性であるペンダントスチレン基(pendant styrene group)を含む。これらの基は、官能化LCBPPポリマーを製造する選択的架橋及び/または官能化反応の反応性サイトとして作用しうる。更に、これらの基は更に、追加のポリマー側鎖を含む変性されたLCBPPポリマー(IV')構造を製造するその後のグラフト反応のモノマー、開始剤、連鎖移動剤として作用しうる。LCBPPポリマー(IV')の多角性は、幅広い種類のLCBPP組成物及び構造物を提供するその後の誘導体化反応を可能にする。
一実施態様においては、LCBPPポリマー(IV')のような本発明のLCBポリマーの架橋及び官能化反応は、無溶媒で実施され、最終的には分散されたスラリ溶液または均質なポリマー溶液で実施される従来の有機オレフィン化学を含む。無溶媒反応はまた、押出機、またはその他の密閉式ミキサーで効果的であり、適切に変性されて十分な混合がなされる。そのような無溶媒方法の詳細は、例えば、その開示が参考として本明細書に導入されている米国特許第4,548,995号に示されている。溶液方法は、良好な混合及び反応条件の制御が一層容易であるという点で有利である。溶液方法はまた望ましくない副生成物の除去が容易である。LCBPPポリマー中のペンダント官能基は、PP付着性、彩色適性、及び支持体及びその他の物質との相溶性を含み非常に有用である。典型的な有用なペンダント官能基には、OH、エポキシ、NH2、COOH、無水物、Cl、及びBrが含まれる。
【0030】
好ましい実施態様においては、LCBPPポリマー(IV')中のペンダントスチレン部分はその後のオレフィンモノマーとのグラフト反応においてモノマー、開始剤、及び連鎖移動剤として作用する。グラフト反応には、グラフト-フロム、グラフト-オントゥまたはグラフト-スルー方法が含まれる。ペンダントスチレン部分は、ラジカル、カチオン、アニオン及び遷移金属配位重合反応を含む多くの連鎖重合反応において非常に反応性であるスチレンモノマーと似ている。オレフィンモノマー、LCBPPポリマー(IV')及び触媒の存在下においては、LCBPPポリマー(IV')中のペンダントスチレン基を含むグラフト重合反応が起こり、種々のポリマー側鎖を含むグラフトコポリマー(IX')が形成される。実例となる本発明のグラフトコポリマーは下式を有する。
【0031】
【化10】

【0032】
式中、qは1以上であり、好ましくは2乃至50であり、最も好ましくは2乃至20であり、pは0または1乃至99の数である。Gは、アニオン重合性モノマーまたはラジカル重合性単位のような組み込まれたビニルモノマー単位である。繰り返し単位数(x)は100乃至50,000である。好ましくは、xは150乃至10,000であり、最も好ましくは、xは200乃至5,000である。主鎖中の繰り返しプロピレン単位の平均数は500乃至100,000である。好ましくは、数は800乃至10,000であり、最も好ましくは、数は1,000乃至5,000である。各側鎖中の繰り返しプロピレン単位の平均数は100乃至50,000である。好ましくは、数は150乃至10,000であり、最も好ましくは、数は200乃至5,000である。
ラジカルグラフト反応方法の例においては、LCBPPポリマー(IV')中のペンダントスチレン単位は直接モノマーとして作用しうる。任意に適する希釈剤中でLCBPPポリマー(IV')とラジカル重合性α-オレフィンモノマーを混合した後、ラジカル開始剤を導入するとラジカルを形成するのに効果的な条件下でグラフト-オントゥまたは/及びグラフト-スルー重合反応を開始する。グラフト反応に有用なラジカル重合性モノマーには、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、二フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、スチレン、α-メチルスチレン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等のような当業者に公知のものが含まれる。これらのラジカル重合性モノマーは単独でも2種以上のモノマーの組み合わせでも使用しうる。
【0033】
アニオングラフト反応の場合には、好ましい反応は、ペンダントスチレン基のリビングアニオン開始剤への変換を含む。そのような方法には、以下に示すように、ペンダントベンジルアニオンを含むポリオレフィンを形成するアルキルリチウム(例えば、n-ブチルリチウム)を用いたLCBPPポリマー(IV')のメタル化反応が含まれうる。反応に添加するアルキルリチウムの量をLCBPPポリマー(IV')中のすべてのジビニルベンゼン単位と反応するのに必要な量より少ない量に限定することにより、スチレン及びアルキルリチウム間のメタル化反応は定量的になるであろう。換言すれば、リビングアニオングラフト-フロム重合方法を継続するためにアニオン重合性モノマーを添加する前に精製の必要はないであろう。好ましいアニオン重合性モノマーには、例えば、スチレン及びアルキル置換スチレンのようなビニル芳香族化合物、アクリルアミド、アルキルアクリレート及びメタクリレート、及びイソプレン及びブタジエンのような共役ジエン、及びそれらの混合物が含まれる。アニオン重合しやすい高分子アニオン及びモノマーが共存しても、例えば、Milkovichらによる米国特許第3,786,116号に記載されているように、リビングアニオン重合が起こる。メチルメタクリレートのような種々のモノマーのアニオン重合が、安定なベンジルアニオン開始剤に付随しうる検出しうるいかなる副反応も引き起こすことなく室温において起こりうるということに注目することは重要である。所望の組成のグラフトコポリマーが得られた後、例えば、メタノールまたはイソプロパノールのようなアルコールのプロトン源、またはその他の従来の重合停止剤を反応原料に添加することによりグラフト-フロム反応を停止しうる。更に、プロトン源を添加する前に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピスルフィド及び二酸化炭素を含む多くの求電子物質のいずれかを用いて停止反応を制御することにより、リビングアニオン連鎖末端を種々の官能基に変換しうる。停止反応は室温において非常に効果的である。しかしながら、重合反応の完全な停止を確実にするために、通常過剰の停止剤が使用される。明確な分子量及び狭い分子量分布を有する、ランダム及びブロックコポリマーを含む、幅広い範囲のポリマーがアニオン重合により調製されうる。したがって、この容易に制御しうるリビンググラフト-フロム反応技術を用いることにより、明確な側鎖セグメントを有する種々のグラフトコポリマー組成物が製造される。
【0034】
LCBポリオレフィンを形成する本発明の方法は更に、制御された分子構造及び高融解温度(Tm〜160℃)を有するLCBアイソタクチックポリプロピレン(LCBPP)の調製により実証される。本発明の現場LCB反応の実施態様は、水素の存在下でアイソタクチック特異性rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒を用いたプロピレンとp-(3-ブテニル)スチレンの重合を含む。理論により縛られることを望むことなしに、反応スキームは以下に示される。




【0035】
【化11】

【0036】
式中、oは1以上であり、好ましくは2乃至100であり、最も好ましくは2乃至50であり、qは1以上であり、好ましくは2乃至50であり、最も好ましくは2乃至20であり、かつpは0または数(o−q)である。主鎖中の繰り返しプロピレン単位の平均数は500乃至100,000である。好ましくは、数は800乃至10,000であり、最も好ましくは、数は1,000乃至5,000である。各側鎖中の繰り返しプロピレン単位の平均数は100乃至50,000である。好ましくは、数は150乃至10,000であり、最も好ましくは、数は200乃至5,000である。
【0037】
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAOにより形成される成長反応C-Zr+サイト(I')が、プロピレンを重合またはp-(3-ブテニル)スチレン(α-オレフィン部分において)と共重合させて、それぞれ直鎖状PPホモポリマー(III')及びペンダントスチレン単位を含むコポリマー(II')を形成する。更に、成長PP連鎖(III')はスチレン単位と反応(2,1-挿入)して、活性サイト(C-Zr+)及び入ってくるモノマー(1,2-挿入のプロピレン)間の立体障害及び隣接フェニル基及びZr+イオン間の錯体形成のために休眠種を形成することが知られている(Chungらによる米国特許第6,479,600号)。他方、水素の存在で休眠種は水素と反応してLCBPP(IV')を形成し、プロピレンの重合を再び開始して重合サイクルを継続することができるH-Zr+種(I')を再生する。換言すれば、理想的な連鎖移動反応は重合速度に有意な影響を及ぼさずにLCBPPポリマーを生成するであろう。分岐密度及び分岐の長さは、便宜上p-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬(IV)により制御され、高濃度であるほど分岐密度が高く分岐の長さが短くなる。
本発明の別の実施態様によれば、長鎖分岐ポリオレフィン(III)は、単独でも、長鎖分岐ポリオレフィン(III)と同一の主鎖または側鎖を有するポリオレフィンと物理的に混合されても使用されうる。低濃度の長鎖分岐ポリマーが、分子量分布の狭い対応するポリマーの加工性及び溶融強度を非常に増大させうる。更に、長鎖分岐ポリオレフィン(III)は、存在する複数の反応性Y基を含む未分岐“T”単位の利用により更に化学的に変性されうる。長鎖分岐ポリオレフィン(III)中のY基は、温和な反応条件下で架橋、官能化、及びグラフト反応を含む多くの反応に容易に関与しうる。そのような反応は、長鎖分岐ポリオレフィン(III)中の主鎖及び側鎖を変化させないが、付着性、相容性、彩色適性、及び機械的強度のような性能を非常に増大させる。
【0038】
本発明の方法及び組成物の実施態様の説明には多くの実施例が含まれる。表1〜4が以下の実施例に含まれ、p-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬の存在下におけるrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒を用いる現場LCBプロピレン重合の系統的研究を要約する。得られるLCBPPポリマー(IV')を、PPホモポリマー、ポリ(プロピレン-co-ブテニルベンゼン)(VII')、及びブチルスチレン末端PP(VIII')を含む数種の対照直鎖状ポリマーと比較する。一般的には、これらの表に要約された実験結果は、特にp-(3-ブテニル)スチレン濃度の低い反応においては大部分のp-(3-ブテニル)スチレン分子が短い反応時間内にまずプロピレンと共重合する式2に示される反応スキームに従って合成される実例となる本発明のポリマーの特徴を説明する。次いでいくつかのペンダントスチレン単位を含む得られるPPコポリマーが、水素の存在下で連鎖移動反応(現場分岐反応)に関与する。
LCB反応のこの特別な実施態様においては、水素の導入が重要な役割を果たす。一実施例においては、少量のp-(3-ブテニル)スチレンがプロピレンの重合を完全に停止した。水素の導入は触媒活性を回復させた。水素は、長鎖分岐反応中の連鎖移動サイクルの完了において重要な因子である。p-(3-ブテニル)スチレン濃度の変更する表1〜4におけるすべての実験を比較すると、p-(3-ブテニル)スチレンの濃度が高いほど必要な水素圧が高く、得られるPPポリマー中に組み込まれるp-(3-ブテニル)スチレン単位が多いことが観察される。
以下の実施例は本発明の説明に役立つ。
【0039】
(実施例1)
LCBポリマーを本発明にしたがって合成し、以下に更に詳細に記載するようにモノマーの転化率、ポリマー組成、熱転移温度、分子量、及びLCB分子構造を決定するために、秤量して、核磁気共鳴(NMR)、差動走査熱量測定(DSC)及び反射指数、光散乱及び固有粘度を含む3種の検出器を具備するゲル透過クロマトグラフィー(GPC-3種の検出器)を含む分析法の組み合わせにより分析した。比較のために、対照直鎖状ポリマーも調製して調べる。それらは、LCBポリオレフィンの対応する主鎖及び側鎖を調製するために、それぞれXまたはY官能基を含む2種類の変性単一機能“T”試薬を用いること以外は同一反応条件下で調製する。
p-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬(IV)の代わりにブテニルベンゼン(V')及びp-ブチルスチレン(VI')を用いるこれら2種の対照反応は、以下に示すように、比較のためにLCBポリマー合成に使用されるのと同一の反応条件下で実施される。
【0040】
【化12】

【0041】
これら2種の対照反応及びそれらの生成物は、rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO媒介プロピレン重合へのp-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬(IV)における各部分(α-オレフィン及びスチレン)の影響の重要な情報を提供する。ポリ(プロピレン-co-ブテニルベンゼン)(VII')及びブチルスチレン末端PP(VIII')を含む得られる2種の直鎖状アイソタクチックPPポリマーは、対応するLCBPPポリマー(IV')のそれぞれ主鎖及び側鎖と共通点がある。
【0042】
(実施例2)
対照反応1−rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒を用いる
プロピレン及びブテニルベンゼンの共重合
直鎖状プロピレン/ブテニルベンゼンコポリマー(VII')を形成するrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒系を用い、プロピレン及びブテニルベンゼン(V')の共重合活性を調べるために対照反応を実施する。ドライボックス中で、50mlのトルエン及び1.5mlのMAO(30質量%トルエン溶液)を、機械的撹拌器を具備するparr450mlのステンレス製オートクレーブに入れる。ドライボックスから除去した後、反応器に1mlのブテニルベンゼンを注入した後、周囲温度においてトルエン溶液を飽和させるために0.69MPa(100psi)のプロピレンを装填する。次いで約1.25×10-6モルのrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2のトルエン溶液をシリンジで反応容器に入れて共重合反応を開始させる。3分後、100mlの希HClのメタノール溶液を添加することによりこのバッチ式スラリ重合を停止させる。得られるPPコポリマー(VII')を更にメタノールで洗浄し、50℃において真空乾燥させる。触媒活性は87,500kgのPP/Zrのモル数・時間であり、同一rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒を用いる対応するプロピレン単独重合の93,000kgのPP/Zrのモル数・時間と同様である。1H NMRによれば、約1.6モル%のブテニルベンゼン単位が得られるPPポリマーに組み込まれていることが示された。GPC-3種の検出器により調べたポリマー構造の直線性は、以下の他の実施例において考察する。
【0043】
(実施例3)
対照反応2−p-ブチルスチレン(VI')/H2連鎖移動剤を用いる
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO媒介プロピレン重合における連鎖移動反応
ドライボックス中で、50mlのトルエン及び1.5mlのMAO(30質量%トルエン溶液)を、機械的撹拌器を具備するparr450mlのステンレス製オートクレーブに入れる。ドライボックスから除去した後、反応器を水素(0.14MPa(20psi))でパージした後0.5mlのp-ブチルスチレンを注入する。次いで周囲温度においてトルエン溶液を飽和させるために0.69MPa(100psi)のプロピレンを装填し、反応器内の総圧力を0.83MPa(120psi)に増大させる。次いで迅速に撹拌しながら約1.25×10-6モルのrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2のトルエン溶液をシリンジで反応容器に入れて重合を開始させる。追加のプロピレンを連続的に反応器に供給して全重合工程中一定の圧力(0.83MPa(120psi))に保持する。30℃における15分間の反応後、ポリマー溶液をメタノールで反応停止させる。得られる直鎖状ブチルスチレン末端PP(VIII')ポリマーをテトラヒドロフラン(THF)で洗浄し、50℃で真空乾燥させる。他の実施例で論述するように、ポリマーの分子量が有意に低下した(Mw=20,500及びMn=9,300g/モル)ブチルスチレン末端PP(VIII')ポリマーが約23g得られる。
プロピレンのメタロセン触媒重合中のp-ブチルスチレン/水素への現場連鎖移動は、水素なしの同一反応条件下において実施される比較実験によっても証明される。この反応においては長い反応時間後においてもポリマーが形成されず、少量の水素が劇的に触媒活性を増大させる(この場合もまた米国特許第6,479,600号を参照されたい)。
【0044】
(実施例4)
図2は、PPホモポリマー及びそれぞれLCBPPポリマー(IV')における主鎖及び側鎖に似ている2種の対照ポリマー(VII')及び(VIII')(実施例2及び3)を含む3種の対照ポリマーの分子量分布及びMark-Houwinkプロットを示す。それらは同一rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒により調製される。対照のMark-Houwinkプロットは、産業用標準直鎖状PPポリマーのそれとも比較される。すべてのプロットは同一勾配で重なり、低分子量から高分子量まで同一の直線関係であることを示す。予想通り、対照及び標準はすべて直鎖状ポリマーであり、連鎖移動反応のために主鎖(VII')の分子量は側鎖(VIII')のそれより数倍高い。
【0045】
(実施例5)
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒及び
p-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬を用いるLCBPPの合成
ドライボックス中で、50mlのトルエン及び1.5mlのMAO(30質量%トルエン溶液)を、機械的撹拌器を具備するparr450mlのステンレス製オートクレーブに入れる。ドライボックスから除去した後、反応器を水素(0.04MPa(6psi))でパージした後0.1ml(0.012M)のp-(3-ブテニル)スチレンを注入する。次いで周囲温度においてトルエン溶液を飽和させるために0.69MPa(100psi)のプロピレンを装填し、反応器内の総圧力を0.83MPa(120psi)に増大させる。次いで迅速に撹拌しながら約1.25×10-6モルのrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2のトルエン溶液をシリンジで反応容器に入れて重合を開始させる。追加のプロピレンを連続的に反応器に供給して全重合工程中一定圧力(0.83MPa(120psi))に保持する。物質移動を最小化して一定の供給比を保持するために、重合は迅速な混合及び短い反応時間で実施する。30℃における3分間の反応後、ポリマー溶液をメタノールで反応停止させる。得られるLCBPPをテトラヒドロフラン(THF)で洗浄し、50℃で真空乾燥させる。触媒活性は、96,250kgのPP/Zrのモル数・時間である。LCBPPポリマーを、1H NMR、13C NMR、差動走査熱量測定(DSC)、及び反射指数、光散乱及び固有粘度を含む一連の検出器を具備するゲル透過クロマトグラフィー(GPC-3種の検出器)により分析する。測定は、溶剤及び移動層として0.7ml/分の流速の1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を用い140℃で実施する。1H及び13C NMR研究は、DISNMRソフトウェアを用いBruker AM-300分光計で記録する。測定は、外部標準として1%のTMS(Me4Si(δ=0.00ppm))を含み、溶剤としてC2D2Cl4を用い140℃で実施する。差動走査熱量測定(DSC)は、Perkin Elmer DSC-7計器制御器を用いて測定する。DSC曲線は、20℃/分の加熱速度で二番目の熱サイクルにおいて記録する。
【0046】
プロピレンのメタロセン触媒重合中にペンダントスチレン単位への連鎖移動反応を含む本発明のLCB重合は、p-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬を用いない、及び水素なしのp-(3-ブテニル)スチレンを用いる、同様な反応条件下、同一触媒及びプロピレン濃度で実施される2種の対照反応と比較することにより証明される。実験結果は表1において比較される。
【0047】
【表1】

【0048】
p-(3-ブテニル)スチレンのみを用いた対照1-A反応においては、重合はほとんど完全に停止する。水素の導入(試料1)は、プロピレンの単独重合(対照1-B)の触媒活性と同様なそれを再生させる。rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2媒介プロピレンの重合中における連鎖移動サイクルを完了させるためには明らかに水素が必要である。
【0049】
(実施例6)
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒及びp-(3-ブテニル)スチレン/
水素“T”試薬を用いるLCBPPの合成−T試薬濃度の効果
実施例5に記載した手順と同様な手順に従い、p-(3-ブテニル)スチレン濃度の効果を評価するために実験を実施する。実験は、p-(3-ブテニル)スチレンの濃度を2倍にすること以外は、[MAO]/[Zr]=3000で同一のrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2(1.25×10-6モル/l)触媒のトルエン溶液、プロピレン(0.069MPa(100psi))、及び水素(0.04MPa(6psi))を用いて実施する。得られるLCBPPについて、1H及び13C NMR、DSC、及びGPC-3種の検出器を用い同一の構造分析を実施する。表2に示されるように、実験結果を比較するために水素なしの対照反応2-Aも実施する。水素なしでは、30分後でもポリマーは形成されない。他方、触媒活性は、少量の水素を用いたプロピレンの単独重合のそれとほとんど同じで、ほぼすべてのp-(3-ブテニル)スチレン分子が組み込まれ、0.89モル%のp-(3-ブテニル)スチレン単位を有するLCBPP構造となる。








【0050】
【表2】

【0051】
(実施例7〜10)
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒及びp-(3-ブテニル)スチレン/
水素“T”試薬を用いるLCBPPの合成−T試薬及び水素濃度の効果
一連の実施例においては、触媒活性及びp-(3-ブテニル)スチレンの組み込みに及ぼすp-(3-ブテニル)スチレン及び水素濃度の影響を評価するために系統的な研究を実施する。各実験は、実施例5において記載した反応手順及び条件、すなわち、[MAO]/[Zr]=3000でrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2(1.25×10-6モル/l)触媒のトルエン溶液及びプロピレン(0.069MPa(100psi))を用いて実施する。水素圧は、表3に示すように、各実施例において変化するp-(3-ブテニル)スチレンの濃度に応じて調整する。全部で4組の比較反応は、特定の条件下で本発明のLCBポリマーを製造する連鎖移動反応を完了するための水素の必要不可欠な役割を示す。p-(3-ブテニル)スチレン濃度の増大に伴って、高触媒活性及びp-(3-ブテニル)スチレンの高転化率を保持するのに多量の水素が必要とされる。
【0052】
【表3】

【0053】
(実施例11〜13)
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒及びp-(3-ブテニル)スチレン/
水素“T”試薬を用いるLCBPPの合成−触媒の効果
実施例5に記載した手順と同様な手順に従って、LCB構造に及ぼす触媒の影響を評価するために一連の実験を実施する。実験は、[MAO]/[Zr]=3000でrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2(1.25×10-6モル/l)触媒のトルエン溶液、プロピレン(0.069MPa(100psi))を用い、p-(3-ブテニル)スチレンの濃度を変化させて実施する。水素圧は、最高の触媒活性が得られるように調整する。それぞれ、1、3、及び5mlのp-(3-ブテニル)スチレンを用いることにより3種の試料(7、8及び9)が得られ、それらの構造を1H及び13C NMR、DSC、及びGPC-3種の検出器を用い同一の分析を実施する。表2に示されるように、実験結果を比較するために水素なしの対照反応2-Aも実施する。水素なしでは、30分後でもポリマーは形成されない。他方、触媒活性は、少量の水素を用いたプロピレンの単独重合のそれとほとんど同じで、ほぼすべてのp-(3-ブテニル)スチレン分子が組み込まれ、0.89モル%のp-(3-ブテニル)スチレン単位を有するLCBPP構造となる。
【0054】
(実施例14)
NMR技術によるLCB構造の分析
すべてのポリマー試料を1H NMR技術により分析し、得られるLCBPPポリマー(IV')中の“T”試薬の含量及び組み込み様式を決定する。試料3の典型的な1H NMRスペクトルを図1に示す。ポリマーを1H NMR技術により分析し、得られるLCBPPポリマー(IV')中の“T”試薬の含量及び組み込み様式を決定する。図1は、rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒により調製されたLCBPPポリマー(試料3)の典型的な1H NMRスペクトルを示し、組み込まれたp-(3-ブテニル)スチレン“T”単位のピークの帰属を示す。LCBPPポリマー(IV')を2種の対照ポリマー(VII')及び(VIII')と比較することにより、対応するプロトンに関連する化学シフトが定量的に決定されうる。それらは、それぞれ共重合、連鎖移動、及び両方の反応から生ずる3種の可能な構造1、2、及び3からである。PP主鎖及び側鎖中のCH3、CH2、及びCH基に対応する3種の主要なプロトンの化学シフト(δ=0.95、1.35、及び1.65ppm)のほかに、2乃至8ppmにLCBPPポリマー(IV')内に組み込まれた“T”単位に対応するいくつかの小さい化学シフトがある。LCBPPポリマー(試料1〜6)に関する詳細な実験結果は表4に要約する。
【0055】
【表4】

【0056】
各生成物において非常に低濃度の構造2が観察され、“T”試薬への直接連鎖移動反応の割合が低いことを示す。多くの“T”試薬はまずプロピレンと共重合して複数の“T”単位を含むPP主鎖(II')を形成し、次いで組み込まれた“T”単位の半分以上が成長PP連鎖(III')との連鎖移動反応にかかわってLCBPP生成物(IV')を形成する。組み込まれた“T”単位の含量及びLCB構造(構造3)への転化率に基づいて、各LCBPP試料における平均分岐密度が、主鎖及び側鎖中に1000℃当たり2乃至6で、重合に使用される“T”試薬の濃度に比例することを推定しうる。LCBPP試料の融解温度(Tm)も分岐構造を示す。すなわち、Tmは分岐密度の増大に伴って減少する。
【0057】
(実施例15)
GPC-3種の検出器によるLCB構造の分析
LCBPPポリマー及び対照反応から得られる直鎖状PPポリマーを含むすべての得られるポリマーを3種の検出器(反射指数、光散乱及び固有粘度)を具備するゲル透過クロマトグラフィー(GPC-3種の検出器)により測定してLCB分子構造を決定する。この方法は正確なポリマーの分子量及び分子量分布、ならびにMark-Houwinkプロット、すなわち、固有粘度対分子量のlog-logプロットを提供する。直鎖状ポリマーは直線関係を有することが期待され、(換算固有粘度との)直線性からの逸脱はLCB構造の明らかな徴候である。図3及び4は、種々のp-(3-ブテニル)スチレン濃度の存在下で、それぞれ、rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO及びrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2により調製される9種の比較LCBPP試料に関する2組(試料1236及び7〜9)の分子量分布を示す。ポリマーの分子量は、明らかに分岐密度の増大を示すp-(3-ブテニル)スチレン濃度の増大に伴って増大した。全体として、結果は正確な分岐密度を示すNMRの結果と一致する。ポリマーの分子量分布が比較的狭いまま(Mw/Mn=〜2)で、完全な連鎖移動反応を伴う単一部位共重合を示すことに注目することは興味深い。
図5は 、LCBPPポリマー(試料5)及び3種の対照直鎖状ポリマーのMark-Houwinkプロットを比較する。LCBPPの場合には、特に高分子領域における直線関係からの明らかな逸脱が明らかにLCB構造を裏付ける。
【0058】
(実施例16〜20)
rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAO触媒及びp-(3-ブテニル)スチレン/
水素“T”試薬を用いるLCBPPの合成−反応温度の効果
より高い反応温度で一連のLCBPP試料を調製する。典型的な実施例(表5における試料10)においては、50mlのトルエン及び2.2mlのMAO(10質量%トルエン溶液)を、アルゴンを充填したドライボックス中の機械的撹拌器を具備するparr450mlのステンレス製オートクレーブに入れる。ドライボックスから除去した後、反応器を水素(0.007MPa(1psi))でパージした後0.1ml(0.012M)のp-(3-ブテニル)スチレン(BtSt)を注入する。次いで周囲温度においてトルエン溶液を飽和させるために0.69MPa(100psi)のプロピレンを装填し、反応器内の総圧力を0.70MPa(101psi)に増大させる。次いで迅速に撹拌しながらrac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2のトルエン溶液(約2.2×10-6M)を反応容器に注入して重合を開始させる。追加のプロピレンを連続的に反応器に供給して全重合工程中一定圧力(0.70MPa(101psi))に保持する。物質移動を最小化して一定の供給比を保持するために、重合は迅速な混合及び短い反応時間で実施する。55℃において15分後、ポリマー溶液をメタノールで反応停止させる。得られるLCBPPポリマーをテトラヒドロフラン(THF)で洗浄し、50℃で真空乾燥させる。触媒活性は、350,000kgのPP/Zrのモル数・時間である。LCBPPポリマーを、1H NMR、13C NMR、DSC、及びGPC-3種の検出器により分析する。表5は、種々の反応条件下における5種類のLCBPP試料の調製を要約する。











【0059】
【表5】

【0060】
(実施例21〜28)
C1-対称Me2Si(2-Me-Benz[e]Ind)(2-Me-4-Ph-4HAzu)HfCl2/MAO触媒及び
p-(3-ブテニル)スチレン/水素“T”試薬を用いるLCBPPの合成
C1-対称Me2Si(2-Me-Benz[e]Ind)(2-Me-4-Ph-4HAzu)HfCl2/MAO触媒を用い、高融解温度を有する一連のLCBPP試料を調製する。典型的な実施例(表6中の試料20)においては、50mlのトルエン及び1.5mlのMAO(10質量%トルエン溶液)を、アルゴンを充填したドライボックス中の機械的撹拌器を具備するparr450mlのステンレス製オートクレーブに入れる。ドライボックスから除去した後、反応器に0.1ml(0.013M)のp-(3-ブテニル)スチレン(BtSt)を注入する。次いで周囲温度においてトルエン溶液を飽和させるために0.69MPa(100psi)のプロピレンを装填する。次いで迅速に撹拌しながらMe2Si(2-Me-Benz[e]Ind)(2-Me-4-Ph-4HAzu)HfCl2のトルエン溶液(約2×10-5M)を反応容器に注入して重合を開始させる。追加のプロピレンを連続的に反応器に供給して全重合工程中一定圧力(0.69MPa(100psi))に保持する。55℃において15分後、ポリマー溶液をメタノールで反応停止させる。得られるLCBPPポリマーをテトラヒドロフラン(THF)で洗浄し、50℃で真空乾燥させる。触媒活性は、18,000kgのPP/Hfのモル数・時間である。LCBPPポリマーを、1H NMR、13C NMR、DSC、及びGPC-3種の検出器により分析する。表6は、種々の反応条件下における8種類のLCBPP試料の調製を要約する。















【0061】
【表6】

【0062】
(実施例29)
LCBPPポリマーのリチオ化及びシリル化
アルゴンを充填したドライボックス中において、0.52モル%のペンダントスチレン単位を含むLCBPPポリマー(試料3)0.9gを、電磁撹拌棒を具備する250mlの空気の存在しないフラスコ中で100mlの無水シクロヘキサン中に懸濁させる。次いで、0.5ミリモルのsec-ブチルリチウム(s-BuLi)溶液及び0.5ミリモルのテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をフラスコに入れ、得られる溶液を周囲温度において3時間撹拌した後5mlの塩化トリメチルシラン(Me3SiCl)を添加する。室温において1時間反応させた後、メタノール中で沈殿させることによりシリル化ポリマーを単離する。メタノールを用いて繰り返し洗浄した後、得られるポリマーを減圧下で乾燥させる。1H NMRスペクトルによれば、ビニル基に対応するピークはなく、Siに隣接するメチルプロトンに対応する0.05ppmにおける強いピークが示される。メタル化及びシリル化の効率はほぼ100%である。
【0063】
(実施例30)
LCBPPポリマーのマレエート化
撹拌器及び冷却器を具備する250mlのフラスコ中で、0.52モル%のペンダントスチレン単位を含むLCBPPポリマー(試料3)0.9gを、5gの無水マレイン酸及び0.1gのラジカル開始剤とともに140mlのキシレン中に懸濁させる。窒素雰囲気下で溶液を140℃に5時間加熱する。イソプロパノール中で沈殿させることによりマレエート化ポリマーを単離する。イソプロパノール及びアセトンを用いて繰り返し洗浄した後、得られるポリマーを減圧下で乾燥させる。IRスペクトル分析によれば、ポリマー中に約1質量%の無水マレイン酸が存在することを示す強度の強い無水物(C=O)吸収バンドが示された。
【0064】
(実施例31)
スチレンを用いたLCBPPポリマーのアニオングラフト反応
アルゴンを充填したドライボックス中において、0.52モル%のペンダントスチレン単位を含むLCBPPポリマー(試料3)8gを、電磁撹拌棒を具備する250mlの空気の存在しないフラスコ中で100mlの無水シクロヘキサン中に懸濁させる。約1mlの1.3M s-BuLi及び0.5mlのTMEDAを反応器に添加する。リチオ化反応を70℃において4時間実施した後、得られる黄色ポリマー粉末を濾過し、ヘキサンで繰り返し洗浄する。次いで、約1gのリチオ化ポリマーを30mlのシクロヘキサン中に懸濁させ、2.5gのスチレンをスラリに添加する。次いで溶液を周囲温度において1時間撹拌した後、10mlのイソプロパノールを添加して反応を停止させる。沈殿したポリマーを濾過して分別する。グラフトコポリマーの構造及び組成を、IR、1H NMR、GPC及びDSC研究により決定する。全体に、グラフト-フロム反応が非常に効果的で、1時間以内にスチレンモノマーの添加率は80%を超える。グラフト-フロム反応はリビングアニオン重合を含むので、各ベンジルリチウムが1つのポリマー側鎖を生成し、各側鎖は同様な分子量を有すると仮定することは理にかなっている。グラフト密度はベンジルアニオンの密度と同一であろう。側鎖の長さは基本的に反応時間及びモノマー濃度に比例する。
【0065】
(実施例32)
MMAを用いたLCBPPポリマーのアニオングラフト反応
実施例16に記載した手順と同様な手順に従って、0.52モル%のペンダントスチレン単位を含むLCBPPポリマー(試料3)8gを、s-BuLi/TMEDA試薬によりメタル化する。次いで、約1gのリチオ化ポリマーを30mlのシクロヘキサン中に懸濁させ、4gのメチルメタクリレート(MMA)モノマーをスラリに添加する。次いで溶液を周囲温度において5時間撹拌した後、10mlのイソプロパノールを添加して反応を停止させる。沈殿したポリマーを濾過して分別する。グラフトコポリマーの構造及び組成を、IR、1H NMR、GPC及びDSC研究により決定する。全体に、グラフト-フロム反応が非常に効果的で、MMAモノマーの添加率は60%を超える。
【0066】
(実施例33)
LCBPPポリマーのラジカルグラフト反応
撹拌器を具備し、N2雰囲気下の250mlのフラスコにおいて、0.52モル%のペンダントスチレン単位を含むLCBPPポリマー(試料3)3gを130℃において200gのビフェニル溶剤に溶解させる。4.5gのスチレンモノマーを添加した後、0.3gのジクミルペルオキシド(DPC)ラジカル開始剤を反応器に導入してラジカルグラフト-オントゥ反応を開始させる。反応を130℃において5時間継続した後、50mlのイソプロパノールを添加することにより反応を停止する。沈殿したポリマーを濾過し、イソプロパノールで繰り返し洗浄し、次いで真空オーブン中で乾燥させると6.5gのポリマーが得られる。得られるポリマーをTHFにより分別すると、2.5gのTHF-可溶性未グラフトポリスチレン及び3.7gのPP-g-PSグラフトコポリマー(30質量%のポリスチレンを含む)が得られる。
本明細書において言及されているいずれの特許または印刷物も、各印刷物が特別に個々に参考として導入されるとすればそれと同程度に参考として本明細書に導入されている。特に、2004年7月1日に出願された米国仮特許願第60/584,838号はそのすべてが参考として導入されている。
本明細書に記載した組成物及び方法は、現在のところでは好ましい実施態様の典型であり、本発明の範囲の限定を意図しない。当業者にはそれらにおける変化及びその他の使用もありうるであろう。そのような変化及びその他の使用は、特許請求の範囲に示される本発明の範囲から逸脱することなくなされうる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】LCBPPポリマー(試料3)の典型的な1H NMRスペクトルを示す。
【図2】rac-Me2Si[2-Me-4-Ph(Ind)]2ZrCl2/MAOにより調製された(a)PPホモポリマー、(b)ポリ(プロピレン-co-ブテニルベンゼン)、及び(c)ブチルスチレン末端PPを含む3種の対照直鎖状ポリマーの重ね合わせた分子量分布及びMark-Houwinkプロット、及び標準直鎖状PPポリマーのMark-Houwinkプロットを示す。
【図3】(a)試料1、(b)試料2、(c)試料3、及び(d)試料6を含む4種のLCBPPポリマーの重ね合わせた分子量分布を示す。
【図4】(a)試料7、(b)試料8、及び(c)試料9を含む3種のLCBPPポリマーの重ね合わせた分子量分布を示す。
【図5】(a)LCBPPポリマー(試料5)及び(b)実施例2、(c)実施例3、及び(d)市販のPP標準からの3種の直鎖状PPポリマー間のGPC曲線及びMark-Houwinkプロットの比較を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する長鎖分岐ポリマー。
【化1】

(式中、各Rは独立してHまたはC1-C30置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分であり、nは500乃至100,000の整数であり、mは100乃至50,000の整数であり、X'は部分Xの残基であり、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基を有し、Yは連鎖移動剤であり、Y'はYの残基であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、qは1乃至500の整数であり、かつpは0乃至1,000の整数である。)
【請求項2】
前記長鎖分岐ポリマーが長鎖分岐ポリエチレンである、請求項1記載の長鎖分岐ポリマー。
【請求項3】
前記長鎖分岐ポリマーが長鎖分岐ポリプロピレンである、請求項1記載の長鎖分岐ポリマー。
【請求項4】
前記長鎖分岐ポリマーが、アタクチック、シンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミアイソタクチック及びアイソタクチックステレオブロックからなる群から選択される立体構造を有する、請求項1記載の長鎖分岐ポリマー。
【請求項5】
前記長鎖分岐ポリプロピレンが140℃より高い融解温度を有する、請求項3記載の長鎖分岐ポリマー。
【請求項6】
Yからのグラフトポリマーペンダントを更に含む、請求項1記載の長鎖分岐ポリマー。
【請求項7】
Yが、スチレン、アルキルベンゼン、有機ボラン、有機シラン、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛及びチオフェンからなる群から選択される部分を含む連鎖移動剤である、請求項1記載の長鎖分岐ポリマー。
【請求項8】
更にグラフトポリマーを含み、かつ、下式を有する、請求項3記載の長鎖分岐ポリマー。
【化2】

(式中、Gはビニルモノマー単位であり、xは150乃至10,000の整数である。)
【請求項9】
前記ビニルモノマー単位Gが、アニオン重合性モノマー及びラジカル重合性単位からなる群から選択される、請求項8記載のグラフトポリマー。
【請求項10】
前記長鎖分岐ポリマーが更に、ポリマー中に存在する炭素からの官能基ペンダントを含む、請求項1記載のポリマー。
【請求項11】
前記官能基が、OH、エポキシ、NH2、COOH、無水物、Cl、Br及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10記載のポリマー。
【請求項12】
下式:
【化3】

(式中、各Rは独立してHまたはC1-C30置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分であり、nは500乃至100,000の整数であり、mは100乃至50,000の整数であり、X'は部分Xの残基であり、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基であり、Yは連鎖移動剤であり、Y'はYの残基であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、qは1乃至500の整数であり、かつpは0乃至1,000の整数である。)
を有する請求項1記載の長鎖分岐ポリマーを形成する方法であって、
α-オレフィンモノマーを提供すること、
下式:
【化4】

(式中、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基を有する部分であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、かつYは連鎖移動剤である。)
を有する“T”試薬を提供すること、
触媒を提供すること、
容器中でオレフィンモノマー、“T”試薬、及び触媒を混合して反応混合物を与えること、及び
反応混合物を重合条件下で長鎖分岐ポリマーを形成するのに十分な時間反応させること、
を含む方法。
【請求項13】
Yが、スチレン、アルキルベンゼン、有機ボラン、有機シラン、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛及びチオフェンからなる群から選択される部分を含む連鎖移動剤である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記“T”試薬が、p-(3-ブテニル)スチレン/水素、p-(エチルノルボレニル)スチレン/水素、5-ヘキセニルアルキルホウ素水素化物、エチルノルボレニルアルキルホウ素水素化物、5-ヘキセニルジアルキル珪素水素化物、エチルノルボレニルジアルキル珪素水素化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記オレフィンモノマーが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、ノルボルネン、フェニルノルボルネン、インダニルノルボルネン、ビニリデンノルボルネン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるα-オレフィンモノマーである、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記長鎖分岐ポリマーが、アタクチック、シンジオタクチック、アイソタクチック、ヘミアイソタクチック及びアイソタクチックステレオブロックからなる群から選択される立体構造を有する、請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が遷移金属配位触媒である、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記反応混合物が更に希釈剤を含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記希釈剤が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される炭化水素を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記長鎖分岐ポリマーが反応希釈剤中でスラリ粒子として形成される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
グラフトポリマーを与える長鎖分岐ポリマー及びモノマーのグラフト重合反応を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項22】
前記グラフト重合反応が、グラフト-フロム、グラフト-オントゥ及びグラフト-スルー重合反応からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
架橋ポリマーを与える長鎖分岐ポリマーの架橋反応を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項24】
ペンダント官能基を有するポリマーを与える長鎖分岐ポリマーの官能化反応を更に含む、請求項12記載の方法。
【請求項25】
前記ペンダント官能基が、OH、エポキシ、NH2、COOH、無水物、Cl、Br及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
長鎖分岐オレフィンポリマーを合成する方法であって、
オレフィンモノマーを提供すること、
式:X-R1-Y(式中、Xはα-オレフィンまたはノルボルネン部分であり、R1はC0-C10直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリールであり、かつYは連鎖移動剤である。)を有するT試薬を提供すること、及び
前記オレフィンモノマー及び前記T試薬を共重合すること、
を含む方法。
【請求項27】
前記合成が、重合前に反応体を移動させることなく単一の容器中で実施される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
Yが、スチレン、アルキルベンゼン、有機ボラン、有機シラン、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛、またはチオフェンからなる群から選択される部分を含む連鎖移動剤である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記重合が遷移金属配位触媒により開始される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記触媒がメタロセン触媒を含む、請求項26記載の方法。
【請求項31】
下式を有する試薬のポリマー合成における使用。
【化5】

(式中、Xは重合条件下で反応性である末端ビニルまたはノルボルネン基を有する部分であり、R1はC0-C10置換または未置換、直鎖状、分岐状、または環状アルキルまたはアリール部分であり、かつYは連鎖移動剤である。)
【請求項32】
Yが、スチレン、アルキルベンゼン、有機ボラン、有機シラン、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛及びチオフェンからなる群から選択される部分を含む連鎖移動剤である、請求項31記載の使用。
【請求項33】
p-(3-ブテニル)スチレン/水素、p-(エチルノルボレニル)スチレン/水素、5-ヘキセニルアルキルホウ素水素化物、エチルノルボレニルアルキルホウ素水素化物、5-ヘキセニルジアルキル珪素水素化物、及びエチルノルボレニルジアルキル珪素水素化物からなる群から選択される、請求項31記載の試薬の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−505222(P2008−505222A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519403(P2007−519403)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023151
【国際公開番号】WO2006/007512
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(501139858)
【Fターム(参考)】