説明

閉空間用放送装置

【課題】 閉空間向けの放送において、災害情報、防災情報等の緊急情報を的確にかつ迅速に通知可能とする。
【解決手段】 トンネル内に問題がない場合はデジタル放送の受信波をトンネル内に再送信する。このとき、終端抵抗161,162により、再送信信号がトンネル内から漏れず、トンネル外でデジタル放送波に悪影響を与えない。トンネル内で事故が発生した場合は、センサ181〜183がこれを感知して監視センタ19から非常用放送設備20に非常時動作指示が送られる。このとき、非常用放送設備20は受信波の再送信を停止させ、緊急警報情報をトンネル内に放送するとともに、送信アンテナ171,172に放送信号を流すように制御し、緊急警報情報をトンネル出入り口付近にも放送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地上デジタル放送システム等に用いられ、トンネルや地下街等の閉空間内に放送信号を再送する閉空間用放送装置に係り、特に災害情報や防災情報等の緊急情報を的確にかつ迅速に放送するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアナログ放送システムでは、限られた空間(以下、閉空間)内で非常事態が発生した場合に、その閉空間内のみに緊急情報を流す非常放送を行うようにしているため、問題が多い。例えば、トンネル内で事故があった場合には、トンネル内のみに非常放送を流している。このとき、トンネルの手前に配置される電子掲示板に緊急情報を表示してトンネルに向かう車両の運転者に注意を促すようにしている。しかしながら、これでは表示を見逃した場合、あるいは電子掲示板の設置箇所を通過していた場合に、トンネル手前でトンネル内の事故に気がつかず、そのままトンネル内に入ってしまって、二次災害を引き起こす原因となる。
【0003】
ところで、現在、普及が進められている地上デジタル放送の規格では、緊急警報放送を行う場合の条件として、第1種開始(地震警戒)と第2種開始(津波警戒)のみが規定されている。これは、従来の地上アナログ放送の規格を引き継いだからである。
【0004】
一方、放送の分野では、緊急地震速報等の新タイプの緊急情報を放送するための技術開発が行われている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、これらの新タイプの緊急情報のみならず、防災無線システムで伝送されていた自治体の地域防災情報、および、閉空間における緊急放送に未だ対応できていないのが現状である。
【非特許文献1】http://www.geocities.co.jp/Technopolis/1549/kinkei.thm#jissi「緊急警報放送(EWS)とは?」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、閉空間向けの放送装置は、緊急情報の的確かつ迅速な通知手段として期待されているが、未だ十分な対応を行うことができない状況にある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決すべく、閉空間向けの放送において、緊急情報を的確にかつ迅速に通知可能とする閉空間用放送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、本発明に係る閉空間用放送装置は、通常放送信号を受信する受信手段と、非常時情報を生成し非常放送信号として送出する非常用放送設備と、前記受信手段で受信された通常放送信号を閉空間内に再送信し、非常時に前記通常放送信号に代わって前記非常用放送設備から送出される非常放送信号を前記閉空間内に送信する送信手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、閉空間向けの放送において、緊急情報を的確にかつ迅速に通知可能とする閉空間用放送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は本発明に係る閉空間用放送装置をトンネル内放送装置に適用した場合の構成を示すブロック図である。図1において、11は地上放送波を受信するための受信アンテナである。地上放送波としては、AM放送、FM放送、アナログテレビジョン放送、地上デジタル放送のいずれでもよい。この受信アンテナ11で受信された放送信号はヘットエンド設備12でAGC(オート・ゲイン・コントロール)処理、波形等化処理、復調処理が施されて分配器13に送られ、例えばトンネル内中央から上り下りそれぞれの出入り口に向けて接続される送信アンテナ群141〜144に分配される。送信アンテナ群141〜144の両端には、切替器151,152を介して終端抵抗161,162が接続され、通常はトンネル外部に放送信号再送波がトンネル外部に漏れないようになされている。
【0011】
また、トンネル内には監視モニタあるいは火災報知器等のセンサ181〜183が配備されており、これらは監視センタ19で管理されている。監視センタ19では、各センサ181〜183のいずれかに異常の検出があった場合、直ちにその詳細を把握すると共に、非常用放送設備20に非常時動作モードの実行を指示する。この非常用放送設備20では、非常時動作モードの実行指示を受けたとき、予め決められた非常時の緊急警報情報をヘッドエンド設備12に通知して、放送信号に代わって緊急警報情報を送出させる。同時に、切替器151,152を終端抵抗161,162側から送信アンテナ171,172に切り替える。これらの送信アンテナ171,172は、トンネル上下線出入り口付近に放送波を送出するように設置される。
【0012】
すなわち、上記構成による放送装置では、トンネル内に問題がない場合は放送の受信波をトンネル内に再送信する。このとき、終端抵抗161,162により、再送信信号がトンネル内から漏れないようになされており、トンネル外で放送波に悪影響を与えない。
【0013】
トンネル内で事故が発生した場合は、センサ181〜183がこれを感知して監視センタ19から非常用放送設備20に非常時動作モードの実行指示が送られる。このため、受信波の再送信は停止され、非常用放送設備20から送出される緊急警報情報がトンネル内に放送される。このとき、非常用放送設備20は送信アンテナ171,172に放送信号を流すように制御するため、緊急警報情報がトンネル出入り口付近にも放送される。この結果、トンネルに入る前の車両に緊急警報情報を知らせることが可能となり、二次災害を未然に防止することが可能となる。
【0014】
ところで、上記ヘッドエンド設備12は、通常時には、地上のアンテナ11で受けた放送信号をトンネル内に再送し、非常用放送設備20から非常時動作モードの実行指示を受けたとき、アンテナ11からの受信信号(以下、通常放送信号)を切り、非常用のマイク・カメラによる緊急警報情報を放送信号と同じ形式の信号(以下、非常放送信号)で送出する。このとき、ヘッドエンド設備12では、非常時の出力電力を通常時より強くするように電力増幅器を制御する。すなわち、通常時には定格電力で通常放送信号を送信し、非常時は通常時より出力電力を増強して非常放送信号を送信する。このようにすれば、送信エリアと隣接する地域においても非常放送信号を受信できるようになり、非常事態が発生している地域への侵入を防ぐことができる。
【0015】
例えば、AM放送の場合、非常放送信号のAM放送波を通常放送信号のAM放送波の電界強度より35dB以上高い電界強度にする。これにより、隣接地域においても、AM受信機は通常放送信号のAM波を抑圧し、非常放送信号のAM波を受信することができる。また、FM放送の場合、キャプチャ効果を利用して、非常放送信号のFM放送波を通常放送信号のFM放送波の電力強度より6dB以上高い電力強度にする。これにより、隣接地域においても、FM受信機は、通常放送信号のFM波を抑圧し、非常放送信号のFM波を受信することができる。また、地上デジタル放送波(OFDM方式の64QAM・畳み込み符号化7/8)の場合、非常放送信号の放送波を通常放送信号の放送波の電力強度より20dB以上高い電力強度にする。これにより、隣接地域においても地上デジタル放送受信機は、地上デジタル放送の通常放送信号の放送波を抑圧し、非常放送信号の放送波を受信することができる。
【0016】
尚、非常放送信号をトンネル外に向けて送信する場合は、非常放送信号を例えば高速道路上に向けて送信する。これに対し、非常放送信号の送信が例えば高速道路と反対側の隣接地域に妨害を与えないようにするためには、高速道路の隣接地域に向けて、通常放送信号を再送信する。
【0017】
例えば、AM放送の場合、通常放送信号のAM放送再送波を非常放送信号のAM放送波の電界強度より35dB以上高い電界強度にする。これにより、隣接地域においては、AM受信機は非常放送信号のAM波を抑圧し、通常放送信号のAM波を受信することができる。また、FM放送の場合、キャプチャ効果を利用して、通常放送信号のFM放送再送波を非常放送信号のFM放送波の電力強度より6dB以上高い電力強度にする。これにより、隣接地域においても、FM受信機は、非常放送信号のFM波を抑圧し、通常放送信号のFM波を受信することができる。また、地上デジタル放送波(OFDM方式の64QAM・畳み込み符号化7/8)の場合、通常放送信号の放送波を非常放送信号の放送波の電力強度より20dB以上高い電力強度にする。これにより、隣接地域においても地上デジタル放送受信機は、地上デジタル放送の非常放送信号の放送波を抑圧し、通常放送信号の放送波を受信することができる。
【0018】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る閉空間放送装置の一実施形態を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0020】
11…受信アンテナ、12…ヘットエンド設備、13…分配器、141〜144…送信アンテナ群、151,152…切替器、161,162…終端抵抗、171,172…送信アンテナ、181〜183…センサ、19…監視センタ、20…非常用放送設備。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常放送信号を受信する受信手段と、
非常時情報を生成し非常放送信号として送出する非常用放送設備と、
前記受信手段で受信された通常放送信号を閉空間内に再送信し、非常時に前記通常放送信号に代わって前記非常用放送設備から送出される非常放送信号を前記閉空間内に送信する送信手段と
を具備する閉空間用放送装置。
【請求項2】
前記送信手段は、非常時には通常時より出力電力を増強する請求項1記載の閉空間用放送装置。
【請求項3】
前記送信手段は、前記閉空間の隣接地域に対して、非常時に、前記非常放送信号を、その電界強度が通常放送信号の受信強度より高いレベルとなるようにして送信することを特徴とする請求項1記載の閉空間用放送装置。
【請求項4】
前記送信手段は、前記閉空間の隣接地域に対して、非常時に、前記受信手段で受信される通常放送信号を、その電界強度が非常放送信号の受信強度より高いレベルとなるようにして送信することを特徴とする請求項1記載の閉空間用放送装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−243906(P2007−243906A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218469(P2006−218469)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】