説明

開閉扉固定装置

【課題】 開閉扉の振れ止め手段を長期間にわたって安定した状態で作動させ、開閉扉が揺動するのを抑制して蝶番の変形や損傷を防止する。
【解決手段】 側部開閉扉16の端部側とこのサポート28との間にロック機構25及び振れ止め手段27が装着されるが、振れ止め手段27は側部開閉扉16に取り付けた上下一対からなるストッパ部材40と、サポート28に設けた固定側ストッパ受け42及びこの固定側ストッパ受け42の上下に概略ストッパ部材40の上下方向の寸法分だけ離間させた位置に設けた調整側ストッパ受け43とから構成され、ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43はボルト44で固定されるもので、ボルト44の軸部44aを挿通させるボルト挿通孔40b,43bはボルト44の軸部44aの外径より少なくとも上下方向に長手とした孔となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械において、上部旋回体に設けられる機械室の側部開閉カバー等の開閉扉を閉鎖状態にしてロックすると共に。機械の作動中における開閉扉の揺動を抑制できるようにした開閉扉固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械の一例として油圧ショベルがあるが、油圧ショベルは履帯等を備えた下部走行体に上部旋回体を旋回可能に設け、この上部旋回体にブーム,アーム及びバケット等のフロントアタッチメントとからなるフロント作業機構を設ける構成としたものである。油圧ショベルを駆動するために、エンジン及び油圧ポンプが設けられ、また油圧ポンプからの圧油の方向を制御する方向切換弁,作動油から異物を除去するフィルタ等の機器が設置される。これらの各機器等は、上部旋回体の旋回フレームにおいて、フロント作業機構及び運転室を設けた部位の後方に設置されるようになっており、これらの機器を保護するために、周囲及び上部をカバーで覆った機械室を構成している。
【0003】
機械室の側部カバーの一部は開閉可能な開閉扉となっており、この側部開閉扉は機械室の内部に設けた機器類等を点検したり、故障等があれば修理したりすることができるようになっている。また、機械室には隔壁や、側部カバー,上部カバー等を支持するサポート等が固定的に設けられており、側部開閉扉は上部旋回体において、鉛直方向に回動軸を設け、この回動軸回りに回動させるようにして開閉されるものである。この側部開閉扉の回動軸は、通常、蝶番で構成されて、水平方向に開閉される。蝶番は固定的に設けた壁部に直接取り付けられるか、またはこの壁部に連結したブラケット等を支持部として取り付けられる。側部開閉扉は、常時においては閉鎖状態に保持され、必要に応じて開放できるようになっていなければならない。このために、側部開閉扉の回動支点側とは反対側である開閉側の端部は自由状態とするのではなく、係脱可能にロックするロック機構を設けている。また、このロック機構に開閉操作部を設けて、この開閉操作部を操作不能な状態に施錠する手段も備えている。
【0004】
而して、ロック機構は、開閉扉に回動可能に設けた把手等の操作部にフック部材を連結して設ける一方、機械室の内部に設けた他方の支持部としてのサポートにこのフック部材と係合するラッチを固定して設ける構成としたものが、従来から広く用いられている。ここで、建設機械の作動中には振動が生じることから、開閉扉はロック機構により閉鎖状態に保持されているものの、そのままでは安定的に保持できず、上下方向に振動することになる。そこで、開閉扉の振動による騒音や開閉扉及び蝶番等の損傷を防止する等のために、開閉扉にはロック機構に加えて振れ止め手段を装着する構成は従来から広く使用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、上部旋回体に固定されている仕切板のフランジに係止部材を設け、また開閉扉の開閉側には係止孔を設けておき、開閉扉が閉鎖されたときには、その係止孔がフランジに設けた係止部材に嵌合するようになし、この係止部材と係止孔との嵌合により開閉扉の振動を抑制するようにしている。そして、係止部材は先端側に向けて狭くなるテーパ形状となし、また係止孔には、このテーパとほぼ同じ角度のテーパ状のフランジを形成している。
【特許文献1】特開2001−262618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
振れ止め手段を前述したように構成することによって、開閉扉を閉鎖状態にして機械を作動させたときにおける振動が抑制されて、騒音低減が図られ、また開閉扉とそれに連結した蝶番等の部材を保護するという観点から望ましいが、なおこの特許文献1の構成においては問題点がない訳ではない。
【0007】
即ち、機械の作動中に開閉扉の動きをなくすには、前述した係止部材と係止孔との嵌合はほぼ密嵌状としなければならない。しかしながら、機械を長期間稼動させる間に、係止部材と係止孔との間で繰り返し摺動することから、磨耗等によりその間に隙間が生じることになり、この隙間は徐々に広がるようになる。その結果、開閉扉の揺動抑制機能が低下することになり、騒音が大きくなるだけでなく、開閉扉が蝶番への連結部を中心として上下に揺動して、この蝶番への連結部が破損したり、軸が変形したりする可能性がある等といった問題点を生じる。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、開閉扉の振れ止め手段を長期間にわたって安定した状態で作動させ、開閉扉が揺動するのを抑制して蝶番の変形や損傷を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、建設機械の上部旋回体に装着され、概略鉛直方向に設けた回動軸を中心として回動させることによって他端側が開閉される開閉扉を閉鎖状態に固定するために、前記開閉扉の開閉側には、この開閉扉を閉鎖状態でロックするためのロック手段と、前記開閉扉が上下方向に揺動するのを抑制するための振れ止め手段とを設けた開閉扉固定装置であって、前記振れ止め手段は、前記開閉扉と前記上部旋回体に固定的に設けた支持部材とのうち、いずれか一方側から突出するように設けたストッパ部材と、他方側に設けられ、このストッパ部材の突出部分における上下の端面との当接面を有するように装着した上下一対のストッパ受けとから構成し、前記ストッパ部材と前記上下いずれか一方のストッパ受けとを上下方向に位置調整可能に固定する構成としたことをその特徴とするものである。
【0010】
開閉扉は一端側が蝶番等を介して上部旋回体の支持部材に連結されて、鉛直方向の回動軸を中心として回動される回動支点側となり、他端側は開閉動作を行なう開閉側となる。ストッパ部材とストッパ受けとにより構成される振れ止め手段は、開閉扉の開放側の端部乃至端部近傍に設けられる。
【0011】
通常、ストッパ部材は開閉扉側に、ストッパ受けは上部旋回体に固定的に設けた支持部材側に設けるが、この逆であっても良い。また、支持部材としては、ロック手段の支持部材と振れ止め手段の支持部材とを共用させることもでき、それぞれ単独の支持部材として構成することもできる。いずれにしろ、開閉扉は回動軸を中心として回動することにより開閉されるので、円滑な開閉操作を行うために、凸状に形成されるストッパ部材は閉鎖時における係合方向に向けて狭くなるテーパ面形状となし、上下のストッパ受け間の間隔は奥側に向かうに応じて狭くなるテーパ形状とするのが望ましい。ストッパ部材は1箇所としても良いが、開閉扉をより安定させるために、ロック手段を挟んだ上下に2箇所設ける構成とすることもできる。この場合、上部側のストッパ部材と下部側のストッパ部材との間に設けられるストッパ受けは上下のストッパ部材に共用することができ、この共用される中間位置に配設したストッパ受けを固定側となし、上部側のストッパ部材の上部位置及び下部側のストッパ部材の下部位置に設けられるストッパ受けを位置調整可能な構成とする。
【0012】
ここで、位置調整可能なストッパ部材及び位置調整可能なストッパ受けの具体的な構成としては、ボルトによりそれぞれ開閉扉及び支持部材に対して着脱可能に固定する構成とすることができる。この場合、これら調整可能なストッパ部材及びストッパ受けには、少なくとも上下方向にボルトの外径より大きな開口を有するボルト挿通孔を形成する構成とする。これによって、磨耗等によりストッパ部材とストッパ受けとの間の隙間が拡大すると、ボルトを緩めた状態でその位置を調整して、その位置でボルトを締め付けることによって、ストッパ部材は、その上下がストッパ受けと当接する状態で固定されることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以上の構成を採用することにより、建設機械に設けられる開閉扉を閉鎖状態で安定的に保持することができ、騒音の低減が図られると共に、蝶番の変形や損傷を抑制できる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の一形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここで、以下の説明においては、油圧ショベルの機械室における側部開閉扉として構成したものを示すが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0015】
まず、図1に建設機械の一例としての油圧ショベルの全体構成を示す。この図1において、10は下部走行体を示し、この下部走行体10には履帯を備えた左右一対の走行手段11,11が設けられている。下部走行体10には上部旋回体12が旋回可能に設置されている。上部旋回体12には、その前方側の位置にブーム13a,アーム13b及びバケット13cからなるフロント作業機構13が設けられており、このフロント作業機構13により土砂の掘削等の作業が行われる。また、フロント作業機構13におけるバケット13cはアーム13bの先端に着脱可能に連結されており、他のフロントアタッチメントを装着することにより掘削以外の作業も行えることになる。そして、フロント作業機構13に隣接するように運転室14が設けられており、オペレータはこの運転室14内で、この運転室14内に設けたレバー等からなる操作手段を操作することによりフロント作業機構13等の操作を行えるようになっている。
【0016】
この油圧ショベルは、走行手段11による走行及び上部旋回体12の旋回、さらにフロント作業機構13の作動等は油圧により駆動される。このために、油圧ショベルには、油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動するエンジンとが設置されている。また、油圧ポンプに作動油を供給するための作動油タンクと、エンジンに燃料を供給するための燃料タンクも設けられる。さらに、油圧ポンプからの圧油の方向を制御する方向切換弁や、フィルタ類等の機器や、運転室14に設けられるコントロールパネルその他の電気機器に電源を供給するためのバッテリも装着される。
【0017】
以上の各種の機器やタンク類は運転室14及びフロント作業機構13の後方に設置される。これらのうち、タンク類は外部に露出した状態に設置することもできるが、少なくともタンク類以外の各機器はカバーで覆われた機械室15内に設置される。機械室15を構成するカバーは、軽量化等の観点から薄い鋼板で構成され、室内における適宜の位置に強度の高い構造部材として支柱や厚肉鋼板からなる隔壁等が固定的に設けられる。カバーのうちの一部はこれら構造部材に固定的に取り付けられるが、他の一部のカバーは開閉可能となっている。これは機械室15内に設置されている各種の機器に故障が発生した時に、各機器の検査を行い、必要な場合には修理等の措置を施すためである。従って、機械室15を構成する側部カバーのうちの一部は、開閉可能な側部開閉扉16として構成される。この側部開閉扉16は前述した構造部材に直接、または構造部材に連結したブラケット等からなる支持部に支持させるように設けられる。
【0018】
そこで、図2に側部開閉扉16の構成を示す。この図から明らかなように、側部開閉扉16の一側の端部には、上下一対の蝶番20,20が取り付けられており、これら両蝶番20における一方の板体からねじ21が突出する状態に設けられ、このねじ21は機械室15に固定的に設けた支持部22にナット23で固定されるようになっている。従って、蝶番20は上部旋回体12の上部旋回体におけるフレームに対して鉛直方向に設けた回動軸を構成し、側部開閉扉16はこの回動軸を支点として水平方向に回動させることによって開閉されて、支持部22を中心として外向きに開くことができるようになる。つまり、側部開閉扉16が支持部22に蝶番20を介して連結されている側が回動支点位置となる。この側部開閉扉16の中間部には第1の補強部24が固着して設けられ、またこの第1の補強部24より先端側の位置(回動支点位置より遠い側の位置)にロック機構25が装着され、さらにこのロック機構25より先端側には第2の補強部26が設けられている。ここで、これら第1,第2の補強部24,26は断面がコ字状となった中空の梁部材であって、側部開閉扉16の上下方向におけるほぼ全長に及ぶ長さを有するものである。そして、この第2の補強部26の部位に振れ止め手段27が設けられている。従って、これらロック機構25と振れ止め手段27とによって、開閉扉固定装置が構成される。
【0019】
側部開閉扉16は蝶番20,20を回動支点位置として、その反対側が開閉される開閉側となる。この側部開閉扉16の開閉側は、この側部開閉扉16を閉鎖した時に、ロック機構25の作用により閉鎖状態に保持され、かつ振れ止め手段27の作用によって、車両の振動により側部開閉扉16が蝶番20からなる回動支点位置を中心として上下に揺動するのを抑制されるようになっている。このために、上部旋回体12のフレームにはサポート28が固定的に設けられ、側部開閉扉16の端部側とこのサポート28との間にロック機構25及び振れ止め手段27が装着される。
【0020】
まず、ロック機構25は、図3に示したように、側部開閉扉16の先端側における所定の位置に透孔が形成されており、この透孔が取付孔16aとなっており、この取付孔16aの部位に金属薄板からなるフック取付部29が溶接手段により固着して設けられている。フック取付部29の外側の部位には支軸30が設けられており、この支軸30にはフック部材31が回動可能に支持されて、フック取付部29に形成した開口部29aから機械室15の内側に突出している。そして、フック部材31にはばね32が作用しており、またフック部材31には操作部33が連結して設けられている。これによって、ばね32によりフック部材31及びその操作部33は図3の矢印方向Aに付勢されており、操作部33がフック取付部29に設けた係止突起29bに当接することによって、その位置に保持される。また、操作部33を手動操作等で図中B方向に回動させて、ロックを解除できるようになっている。フック部材31には係止部31aと、摺動部31bとが形成されており、この係止部31aは側部開閉扉16と概略平行な状態となり、かつ摺動部31bはこの係止部31aに対して鋭角状に傾斜している。
【0021】
側部開閉扉16に設けたフック部材31は、サポート28に設けたラッチ34と係脱するようになっている。ラッチ34は、金属板を曲成することにより形成され、その一端側における所定の長さ分はフック部材31における係止部31aに係脱する係脱部34aであり、他端側における所定の長さ分はサポート28に固定的に保持される固定部34bとなり、その間は連結部34cとなっている。連結部34cと係脱部34a及び固定部34bとの間は概略直角に曲成されており、それらの曲成方向は反対方向となっている。つまり、連結部34cを挟んで係脱部34aの延在方向と固定部34bの延在方向とは反対方向となる。このラッチ34は、サポート28に溶接手段で固着して設けた取付板35にボルト−ナットによる固定手段を用いて固定的に装着されている。
【0022】
次に、振れ止め手段27の構成を図4乃至図7に示す。この振れ止め手段27は側部開閉扉16における第2の補強部26に取り付けた上下一対からなるストッパ部材40と、サポート28に溶接等の手段で固着した取付板41に設けた中間部における固定側ストッパ受け42及びこの固定側ストッパ受け42の上下に概略ストッパ部材40の上下方向の寸法分だけ離間させた位置に設けた調整側ストッパ受け43とから構成される。ここで、振れ止め手段27は、基本的には、一端側が蝶番20で支持され、他端が自由端となっている側部開閉扉16において、蝶番20を中心として自由端側が上下に揺動するのを規制するためのものである。
【0023】
ストッパ部材40は、図4から明らかなように、フック部材31より端部側の位置であって、このフック部材31の上下の位置に2箇所配置されており、それらの上下の両端面は所定角度傾斜したテーパ面40a,40aとなっている。従って、このストッパ部材40を側面から見れば、台形状となっている。一方、取付板41に設けた固定側ストッパ受け42と上下の調整側ストッパ受け43との間にはストッパ部材40の高さ寸法と一致する間隔が形成されており、側部開閉扉16を閉鎖すると、この側部開閉扉16に設けたストッパ部材40がストッパ受け42,43間の隙間に入り込むことになる。
【0024】
フック部材31とラッチ34とが係合して、側部開閉扉16が閉鎖状態になると、ストッパ部材40の上下の端面がストッパ受け42,43と面接触するようにしている。このために、固定側ストッパ受け42の上下の両端面と、上部に位置する調整側ストッパ受け43の下面及び下部に位置する調整側ストッパ受け43の上端面には、それぞれストッパ部材40のテーパ面40aに対応するように傾斜したテーパ面42a,43aが形成されている。ここで、これらテーパ面42a及び43aは、ストッパ受け42,43の端面全体に形成しても良いが、本実施の形態においては、ストッパ部材40の端面に後述するボルト44が突出する状態に設けられているので、これらと干渉しないようにするために、ストッパ部材40が当接する部位のみに限定して形成されている。
【0025】
これによって、側部開閉扉16が閉鎖状態になると、つまりロック機構25におけるフック部材31がラッチ34と係合する状態になると、この側部開閉扉16が開閉する方向にロックされるが、このときにストッパ部材40の上下のテーパ面40aがストッパ受け42,43のテーパ面42a,43aと面接触するようになり、もってストッパ部材40及びこのストッパ部材40を取り付けた側部開閉扉16の自由端が上下方向に揺動しないように固定されることになる。
【0026】
ここで、ストッパ部材40をストッパ受け42,43間に挟持させるのは、車両の振動時に側部開閉扉16の開閉側が蝶番20を中心として上下に揺動しないように規制するためのものである。従って、これらはゴム等の弾性部材で形成されるのではなく、いずれも非圧縮性部材である金属板体から構成される。そして、軽量で、比較的柔らかい材料、例えばアルミニウムが好適に用いられる。側部開閉扉16を繰り返し開閉すると、これらストッパ部材40及びストッパ受け42,43のテーパ面40a,42a,43aが磨耗する。その結果、側部開閉扉16を閉鎖させたときに、ストッパ部材40とストッパ受け42,43との間に隙間が生じて、この側部開閉扉16の端部の固定機能が低下する。
【0027】
このために、図5及び図6に示したように、ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43を固定側ストッパ受け42を基準として位置調整を行なうことによって、これらストッパ部材及びストッパ受けが磨耗して隙間が生じるようになったときに、側部開閉扉16の閉鎖時にそれらのテーパ面が面接触する状態に復元できるようになっている。具体的には、ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43をそれぞれ側部開閉扉16の第2の補強部26及び取付板41に対して上下各2箇所のボルト44を用いて固定するようにするが、このために第2の補強部26及び取付板41にはナット45を固定して設けておき、このナット45とボルト44の頭部との間でストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43とを挟持させるように締め付けることによって、これらストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43を固定する。そして、このボルト44を締め付けた後に、ワッシャ46によりボルト44の回り止めを行なうようにする。
【0028】
ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43にはボルト挿通孔40b,43bが設けられており、ボルト44の軸部44aはこれらボルト挿通孔40b,43b内に挿通されるが、これらボルト挿通孔40b,43bはボルト44の軸部44aの外径より少なくとも上下方向に長手とした孔となっている。これによって、ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43に所定の調整代が与えられる。
【0029】
ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43を以上のように構成することによって、それらの当接面が磨耗したときに、図7に示したように、ボルト44を緩めることによりストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43の位置を動かしてそれらの位置調整を行なうことができる。この状態で、取付板41に固定的に設けた固定側ストッパ42のテーパ面42aにストッパ部材40のテーパ面40aを当接させて、ストッパ部材40に設けたボルト44を締め付けることによって、このストッパ部材40を固定し、次いで調整側ストッパ受け43のテーパ面43aをストッパ部材40における他側のテーパ面40aに当接させて、それに装着されているボルト44を締め付けて、この調整側ストッパ受け43を固定する。
【0030】
これによって、ストッパ部材40は固定側ストッパ受け42と調整側ストッパ受け43とに対してテーパ面40aと42a及び40aと43aとを容易に、しかも確実に面接触して、側部開閉扉16を安定的に保持できる状態に位置調整することができることになる。
【0031】
本発明による開閉扉固定装置は以上のように構成されるが、側部開閉扉16が閉鎖状態にある時に、それを開くには、操作部33を手前側に引き込むようにする。つまり、図3のB方向に回動させる。これによって、フック部材31とラッチ34とからなるロック機構25の係合が外れて、側部開閉扉16は蝶番20を中心として外側に開くようになる。これと共に、側部開閉扉16に設けたストッパ部材40が固定側及び調整側のストッパ受け42,43間の隙間から離脱することになる。
【0032】
一方、側部開閉扉16を閉鎖するには、この側部開閉扉16の先端をサポート28に近接する方向に押動する。そして、フック部材31における摺動部31bがラッチ34における係脱部34aの先端に当接して、フック部材31がばね32に抗して図3の矢印Aとは反対方向に回動する。ラッチ34の先端が摺動部31bを通過すると、ばね32によってフック部材31が矢印A方向に回動することになる。これによって、フック部材31の係止部31aがラッチ34の係脱部34aと当接することになるので、側部開閉扉16が閉鎖状態にロックされる。このロック状態になると、ストッパ部材40のテーパ面40aがストッパ受け42,43のテーパ面42a,43aと面接触するようにして挟持されることになる。
【0033】
その結果、側部開閉扉16は開閉方向にはフック部材31とラッチ34との係合により動きが規制され、また上下方向にはストッパ部材40がストッパ受け42,43間に挟持されていることにより固定されることになる。従って、側部開閉扉16は固定状態に保持されることになり、機械が振動しても、この側部開閉扉16は固定された状態で安定的に保持されて、騒音が抑制され、またこの側部開閉扉16を構成する各部、特に蝶番20が変形したり、損傷したりするおそれはない。
【0034】
ここで、側部開閉扉16が繰り返し開閉操作されることにより、またこの側部開閉扉16が閉鎖状態に保持されている状態で機械が大きく振動したとき等において、ストッパ部材40と固定側及び調整側の各ストッパ受け42,43との間が摺動することによって、それらが磨耗すると、それらの間に隙間が生じて、振れ止め手段27による側部開閉扉16の固定性,安定性が低下することになる。その結果、側部開閉扉16が蝶番20の位置を中心として上下方向に揺動することになる。このように側部開閉扉16が振動すると、大きな騒音が発生することになる結果、振れ止め手段27の機能が低下したことを作業者等が認識することができる。そこで、ボルト44を緩めて、ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43の位置を調整して、側部開閉扉16の閉鎖時にストッパ部材40と固定側及び調整側の各ストッパ受け42,43とが当接する状態に復元することができる。これによって、騒音の低減が図られるだけでなく、側部開閉扉16を支持している蝶番20が変形したり、損傷したりするおそれはない。
【0035】
ここで、ストッパ部材40,ストッパ受け42,43の各テーパ面40a,42a,43aは必ずしも均等に磨耗するのではなく、部分的に磨耗の度合いが異なってくる。従って、ストッパ部材40及び調整側ストッパ受け43の位置調整を行なったときに、テーパ面40a,42a間及びテーパ面40a,43a間は面接触状態ではなく、線接触若しくは点接触状態となることがある。勿論、ストッパ部材40がストッパ受け42,43と当接している限りは側部開閉扉16はみだりに上下方向に揺動することはない。そして、位置調整を行なった後、早期にテーパ面同士が馴染んで、面接触状態になって、側部開閉扉16を閉鎖したときに、より安定的に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】建設機械の一例としての油圧ショベルの外観図である。
【図2】側部開閉扉とその取付部を示す分解斜視図である。
【図3】側部開閉扉の閉鎖状態でのロック機構を含む位置での断面図である。
【図4】図3のX−X断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図5の左側面図である。
【図7】ボルトを緩めた状態を示す図5と同様の図である。
【符号の説明】
【0037】
10 下部走行体 12 上部旋回体
15 機械室 16 側部開閉扉
20 蝶番 22 支持部
25 ロック機構 27 振れ止め手段
28 サポート 31 フック部材
34 ラッチ 40 ストッパ部材
41 取付板 42 固定側ストッパ受け
43 調整側ストッパ受け
40a,42a,43a テーパ面
40b,43b ボルト挿通孔
44 ボルト 45 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の上部旋回体に装着され、概略鉛直方向に設けた回動軸を中心として回動させることによって他端側が開閉される開閉扉を閉鎖状態に固定するために、前記開閉扉の開閉側には、この開閉扉を閉鎖状態でロックするためのロック手段と、前記開閉扉が上下方向に揺動するのを抑制するための振れ止め手段とを設けた開閉扉固定装置において、
前記振れ止め手段は、前記開閉扉と前記上部旋回体に固定的に設けた支持部材とのうち、いずれか一方側から突出するように設けたストッパ部材と、他方側に設けられ、このストッパ部材の突出部分における上下の端面との当接面を有するように装着した上下一対のストッパ受けとから構成し、
前記ストッパ部材と、前記上下いずれか一方のストッパ受けとを上下方向に位置調整可能に固定する
構成としたことを特徴とする開閉扉固定装置。
【請求項2】
前記ストッパ部材及び前記ストッパ受けの前記ストッパ部材との当接面はそれぞれ所定角度を有するテーパ面で形成したことを特徴とする請求項1記載の開閉扉固定装置。
【請求項3】
前記位置調整可能としたストッパ部材及びストッパ受けは、それぞれボルトにより固定されるものであり、これらストッパ部材及びストッパ受けには、少なくとも上下方向に前記ボルトの外径より大きな開口を有するボルト挿通孔を形成する構成としたことを特徴とする請求項1記載の開閉扉固定装置。
【請求項4】
前記ストッパ部材は上下に2箇所設け、前記ストッパ受けはこれら上下のストッパ部材間に配置した固定側ストッパ受けと、この固定側ストッパ受けの上下に配置され、高さ位置が調整可能となった調整側ストッパ受けとを設ける構成としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の開閉扉固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−44441(P2006−44441A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227757(P2004−227757)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】