説明

防振ゴム用ゴム組成物

【課題】良好な防振性能(低動倍率)及び破壊特性を有するだけでなく、優れた耐熱性、耐久性及び耐ヘタリ性を兼ね備え、自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント等の高温環境下で使用される防振ゴムとして好適に用いられる防振ゴム用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄0.5質量部以下、下記構造式(1)に示した含硫黄化合物0.5〜2質量部、ビスマレイミド化合物0.5〜3質量部を含有することを特徴とする防振ゴム用ゴム組成物。


(式中、R1はベンジル基又は2−エチルヘキシル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の高温環境下で使用される防振ゴムに好適に使用できる防振ゴム用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の各種車両では、搭乗者の快適性を向上させるために、振動や騒音の発生源となる部位に様々な防振材を配置し、室内への振動や騒音の侵入を低減する試みがなされてきた。例えば、振動や騒音の主たる発生源であるエンジンに対しては、トーショナルダンパー、エンジンマウント等の構成部材に防振ゴムを用いることでエンジン駆動時の振動を吸収し、室内への振動及び騒音の侵入や、周辺環境への騒音の拡散を低減している。
【0003】
このような防振ゴムの基本的な特性としては、エンジン等の重量物を支える強度特性や、その振動を吸収し抑制する防振性能が要求される。更に、エンジンルーム等の高温環境下で使用される場合には、強度特性に優れ、かつ動倍率が低く防振性能に優れるのは勿論のこと、耐熱性、耐久性及び耐ヘタリ性などが高いことが求められる。特に、近年では、エンジンの高出力化や、室内空間拡大などによるエンジンルームの省スペース化に伴い、エンジンルーム内の温度は上昇する傾向にあり、より過酷な環境で使用されることが多くなっていることから、自動車用防振ゴムの耐熱性などに対する要求もより厳しいものとなっている。
【0004】
一般にゴムの耐熱性、耐ヘタリ性を向上させるためには、硫黄の配合量を減らすことが有効であるが、防振ゴムとして重要な特性である動倍率が高くなってしまう傾向にある。これに対しては、特開平3−258840号公報(特許文献1)においてゴム組成物にビスマレイミド化合物を添加することが提案されているが、耐久性になお課題を残している。なお、出願人は特開2006−131871号公報(特許文献2)において、ゴム組成物に特定のビスマレイミド化合物と、シリカゲルと、シランカップリング剤とを配合することにより、防振ゴム部材の防振性能及び耐熱性をより向上させる技術を提案している。このように、防振ゴムの性能向上の技術が種々提案されているが、市場においては上記の事情により更なる高性能化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−258840号公報
【特許文献2】特開2006−131871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、良好な防振性能(低動倍率)及び破壊特性を有するだけでなく、優れた耐熱性、耐久性及び耐ヘタリ性を兼ね備え、自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の高温環境下で使用される防振ゴムとして好適に用いられる防振ゴム用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ジエン系ゴムを主材とするゴム成分に対する硫黄の配合量を減らすと共に、加硫剤として特定の含硫黄化合物及びビスマレイミド化合物を併用して配合したゴム組成物を加硫硬化することにより、良好な防振性能(低動倍率)及び破壊特性を有するだけでなく、耐熱性、耐久性及び耐ヘタリ性にも優れるゴム硬化物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
従って、本発明は下記の防振ゴム用ゴム組成物を提供する。
〔1〕ジエン系ゴム100質量部に対して、
硫黄0.5質量部以下、
下記構造式(1)に示した含硫黄化合物0.5〜2質量部、
ビスマレイミド化合物0.5〜3質量部
を含有することを特徴とする防振ゴム用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R1はベンジル基又は2−エチルヘキシル基を示す。)
〔2〕ジエン系ゴムが、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴムから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕記載の防振ゴム用ゴム組成物。
〔3〕ビスマレイミド化合物が、下記構造式(2)に示したものである〔1〕又は〔2〕記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【化2】

[式中、x及びyはそれぞれ独立に0〜20のいずれかの整数を示す。R2は炭素数5〜18の芳香族基、又はアルキル基を含む炭素数7〜24の芳香族基を示す。]
〔4〕充填剤を10〜80質量部含有する〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物。
〔5〕充填剤として、カーボンブラックを含有した、又はカーボンブラックとシリカとを含有した〔4〕記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防振ゴム用ゴム組成物は、優れた防振性能(低動倍率)、破壊特性、耐熱性、耐久性及び耐ヘタリ性を兼ね備え、自動車のエンジンルーム等の高温環境下において好適に使用することができる防振ゴムを得ることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の防振ゴム用ゴム組成物は、上述のように、ゴム成分としてジエン系ゴムを用い、加硫剤として配合される硫黄の量を低減すると共に、特定の構造を有する含硫黄化合物及びビスマレイミド化合物を組み合わせて配合してなるものである。
【0011】
ジエン系ゴムとしては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、具体的には、公知の天然ゴムや、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エポキシ化天然ゴム、アクリレートブタジエンゴム等の合成ゴム、及びこれら天然ゴム又は合成ゴムの分子鎖末端が変性されたものなどを用いることができ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、特に天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムを好適に用いることができる。
【0012】
また、場合によっては上記ジエン系ゴム以外のゴムをゴム成分中に配合することもできる。このゴムとしては、アクリルゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムなどが挙げられる。
【0013】
本発明のゴム組成物には、加硫剤として硫黄と、下記構造式(1)に示される含硫黄化合物と、ビスマレイミド化合物とを含む。
本発明では、ゴムの耐熱性及び耐ヘタリ性を確保する観点から、硫黄の配合量を低減した低硫黄配合とすることが好ましく、その具体的な配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.5質量部以下(0〜0.5質量部)とされ、好ましくは0.2〜0.5質量部とされる。配合量が0.5質量部を超えると、要求される耐熱性及び耐ヘタリ性が得られないおそれがある。なお、本発明においては、上記硫黄を配合しない場合でも、下記構造式(1)に示される含硫黄化合物の一部から硫黄が放出されて、加硫に供されることになるため、要求される動倍率を得ることができる。
【0014】
含硫黄化合物としては、下記構造式(1)に示されるものを用いる。
【化3】

(式中、R1はベンジル基又は2−エチルヘキシル基を示す。)
【0015】
上記構造式(1)において、R1はベンジル基又は2−エチルヘキシル基である。より具体的には、R1がベンジル基である1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、及びR1が2−エチルヘキシル基である1,6−ビス(N,N’−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)ヘキサンを好適に用いることができる。その配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.5〜2質量部とされる。上記含硫黄化合物の配合量が0.5質量部未満であると十分な耐久性向上効果が得られないおそれがあり、一方2質量部を超えると動倍率が悪化するおそれがある。
【0016】
上記の含硫黄化合物と併用されるビスマレイミド化合物としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、本発明では下記構造式(2)で表されるビスマレイミド化合物を好適に用いることができる。
【化4】

[式中、x及びyはそれぞれ独立に0〜20のいずれかの整数を示す。R2は炭素数5〜18の芳香族基、又はアルキル基を含む炭素数7〜24の芳香族基を示す。]
【0017】
上記式(2)中、x及びyはそれぞれ独立に0〜20のいずれかの整数を示し、より好ましくは0〜10の整数とされる。また、R2は炭素数5〜18の芳香族基、又はアルキル基を含む炭素数7〜24の芳香族基を示し、具体的には、以下の構造を有する芳香族基が例示される。なお、以下の構造においては二つの結合手が記されていないが、以下の構造中では任意に選択される二つの炭素原子からの二つの結合手により二価の基を構成する。
【化5】

【0018】
上記構造式(2)で表されるビスマレイミド化合物の具体例としては、N,N’−o−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2−ビス−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンなどを例示することができる。本発明ではN,N’−m−フェニレンビスマレイミド及びN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを好適に用いることができる。なお、上記のビスマレイミド化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.5〜3質量部とされる。ビスマレイミド化合物の配合量が0.5質量部未満であると耐ヘタリ性が悪化するおそれがあり、一方3質量部を超えると耐久性が悪化するおそれがある。
【0019】
更に、本発明のゴム組成物では公知の充填剤を配合することもでき、例えば、カーボンブラック、シリカ、微粒子ケイ酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー及びタルク等の無機充填剤、ハイスチレン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂及び石油樹脂等の有機充填剤が例示される。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、防振ゴムの耐久性向上と低動倍率化を図る観点から、特にカーボンブラック及びシリカを好適に使用することができる。
【0020】
カーボンブラックとしては、公知のSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどが例示され、本発明においてはFEFを好適に用いることができる。なお、上記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量が10〜70g/kg、好ましくは12〜60g/kg、DBP吸収量(A法)が30〜180ml/100g、好ましくは60〜180ml/100gの範囲のものを好適に用いることができる。一方、シリカとしては、公知の湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカなどを用いることができ、本発明においては湿式シリカを好適に用いることができる。なお、上記シリカはBET比表面積が70〜230m2/g、特に80〜200m2/gの範囲のものを好適に用いることができる。
【0021】
上記充填剤の配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対し、10〜80質量部とされ、好ましくは15〜60質量部とされる。配合量が10質量部未満であると、得られる防振ゴムの破壊特性が悪化するおそれがあり、一方80質量部を超えると、加工性の低下及び動倍率の上昇を招くおそれがある。なお、複数種の充填剤を併用する場合はその合計量を上記範囲とすればよい。
【0022】
また、充填剤としてシリカを配合する場合は、分散性及び補強性を向上させる観点から、シランカップリング剤を配合するとよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィドなどが例示され、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。上記シランカップリング剤の配合量は、上記シリカの配合量に対して1〜10質量%であり、好ましくは5〜10質量%とされる。配合量が1質量%未満であると分散性及び補強性向上効果を十分に発揮しないおそれがあり、一方10質量%より多く配合しても、配合量に見合った効果が得られない場合があり、経済的に好ましくない。
【0023】
本発明のゴム組成物には、上記以外にも必要に応じて、加硫促進剤、亜鉛華(ZnO)、オイル、ワックス類、老化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤などの公知の添加剤を適量配合することができる。
【0024】
加硫促進剤としては、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBSI(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤、DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤、TMTD(テトラメチルジスルフィド)、TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド)、TBTD(テトラブチルチウラムジスルフィド)、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対し、0.1〜3質量部とされ、好ましくは0.5〜2質量部とされる。
【0025】
本発明においては、加硫を促進する観点から、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等の加硫促進助剤を配合することができる。具体例としては、シクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが例示される。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対し、1〜15質量部とされ、好ましくは2〜10質量部とされる。
【0026】
オイルとしては、アロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油などが例示され、これらの中から1種単独又は2種以上を適量配合すればよい。
【0027】
ワックス類としては、公知のパラフィンワックス及びミクロクリスタリンワックス等のワックス、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミド等のアマイド化合物などが例示され、1種を単独で又は2種以上を併用して用いればよい。特に本発明においては、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックスを好適に用いることができる。これらの配合により、成形作業性を向上させることができる。
【0028】
老化防止剤としては、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジクミルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等のアミン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ・フェニル)プロピオン酸ステアレート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ・フェニル)プロピオネート)メタン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のフェノール系老化防止剤;2−メルカプトベンゾイミダゾール、トリブチルチオウレア、2−メルカプトベンゾイミダゾール亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール亜鉛塩等のイミダゾール系老化防止剤などが例示される。配合量は上記ジエン系ゴム100質量部に対し、0.5〜10質量部とされ、好ましくは1〜5質量部とされる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、上記各成分を混練し、成形して加硫硬化させることにより自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の高温環境下で使用される防振ゴムとして用いられるものである。この場合、混練操作や成形操作は、防振ゴムの大きさや形状、形態などに応じて適宜公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0031】
[実施例1〜9、比較例1〜5]
下記表1に示す配合組成で混練し加硫して、実施例1〜9及び比較例1〜5の14種の防振ゴム用ゴム組成物を得た。得られた各ゴム組成物につき、硬度(Hd)、引張伸び(Eb)、引張強さ(Tb)、モジュラス(Md)、耐熱性、耐ヘタリ性(圧縮永久歪)、耐久性(伸張疲労耐久性)、静バネ定数(Ks)、動倍率(Kd/Ks)を評価した。硬度(Hd)、引張伸び(Eb)、引張強さ(Tb)、モジュラス(Md)、耐熱性、耐ヘタリ性、静バネ定数(Ks)及び動倍率(Kd/Ks)は、下記JIS規格に準拠して測定を行い、耐久性は下記手順に従って評価した。
【0032】
[硬度(Hd)]
JIS K 6253(タイプA)に準拠
[引張伸び(Eb)]
JIS K 6251に準拠
[引張強さ(Tb)]
JIS K 6251に準拠
[モジュラス(Md)]
JIS K 6251に準拠
[耐熱性]
JIS K 6257に準拠し、100℃,96時間の条件下に試験片を放置した後、上記、引張伸び(Eb)、引張強さ(Tb)、100%モジュラス(Md)を測定した。前記特性の測定結果については変化率(%)を示す。
[ヘタリ性(圧縮永久歪)]
JIS K 6262に準拠
[耐久性(伸張疲労耐久性)]
35℃で0−100%伸長を繰り返し、破断するまでの回数を計数した。
なお、表1では比較例1の測定結果を100とし、実施例1〜6及び比較例2〜5の測定結果を比較例1に対する指数で表した。
[静バネ定数(Ks)及び動倍率(Kd/Ks)]
JIS K 6385に準拠し、Kdは100Hzで測定した。
【0033】
【表1】

【0034】
上記の配合についての詳細は下記の通りである。
天然ゴム:RSS#1
ブタジエンゴム:JSR(株)製「JSR BR01」
カーボンブラック:FEF級カーボンブラック、旭カーボン(株)製「N550」、ヨウ素吸収量43g/kg、DBP吸収量(A法)121ml/100g
シリカ:沈降式シリカ、東ソー・シリカ(株)製「NIPSIL VN3」、BET比表面積175m2/g、
シランカップリング剤:ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド(TESPT)
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルNS−100」
WAX:Rhein Chemie社製「Antilux654」
老化防止剤RD:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製「ノクラック224」
老化防止剤6PPD:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
加硫剤−A1:1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン
加硫剤−A2:1,6−ビス(N,N’−ジ(2−エチルヘキシル)チオカルバモイルジチオ)ヘキサン
加硫剤−B1:N,N’−m−フェニレンビスマレイミド
加硫剤−B2:N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド
加硫促進剤1:テトラメチルジスルフィド(TMTD)、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
加硫促進剤2:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
【0035】
上記表1の通り、本発明にかかる実施例1〜9のゴム組成物は、加硫剤として硫黄と、上記構造式(1)に示した含硫黄化合物と、上記構造式(2)に示したビスマレイミド化合物とを組み合わせて配合したものである。その結果、これら実施例1〜9のゴム組成物では、良好なゴム物性(硬度、引張強さ、伸び)を有するとともに、優れた耐久性、耐ヘタリ性、耐熱性、動特性を兼ね備えたものであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対して、
硫黄0.5質量部以下、
下記構造式(1)に示した含硫黄化合物0.5〜2質量部、
ビスマレイミド化合物0.5〜3質量部
を含有することを特徴とする防振ゴム用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R1はベンジル基又は2−エチルヘキシル基を示す。)
【請求項2】
ジエン系ゴムが、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項3】
ビスマレイミド化合物が、下記構造式(2)に示したものである請求項1又は2記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【化2】

[式中、x及びyはそれぞれ独立に0〜20のいずれかの整数を示す。R2は炭素数5〜18の芳香族基、又はアルキル基を含む炭素数7〜24の芳香族基を示す。]
【請求項4】
充填剤を10〜80質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の防振ゴム用ゴム組成物。
【請求項5】
充填剤として、カーボンブラックを含有した、又はカーボンブラックとシリカとを含有した請求項4記載の防振ゴム用ゴム組成物。

【公開番号】特開2010−254872(P2010−254872A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108700(P2009−108700)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】