説明

防振ゴム組成物及び防振ゴム

【課題】本発明の防振ゴム組成物は、熱老化後の引張り物性及び低動倍率を保持しつつ、耐クリープ性を改善させることができ、ゴム練りや加硫時の加工性を向上できる防振ゴムを提供することを目的とする。
【解決手段】ゴム成分として天然ゴム(NR)とエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とを、質量比でNR/EPDM=70/30〜45/55の割合で含むと共に、加硫剤として過酸化物を含み、かつ共架橋剤としてアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛、及び液状ポリブタジエンを含むことを特徴とする防振ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等に使用される防振ゴムのゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
防振ゴムは、自動車等の各種車両において、搭乗者の快適性を向上させるため、振動や騒音の発生源となる部位に配置されるものである。室内への振動や騒音の侵入を低減するために、例えば、振動や騒音の主たる発生源であるエンジンに対しては、トーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の構成部材に防振ゴムを用いることでエンジン駆動時の振動を吸収し、室内への振動及び騒音の侵入や、周辺環境への騒音の拡散を低減している。
【0003】
このような防振ゴムの基本的な特性としては、エンジン等の重量物を支える強度特性や、その振動を吸収し抑制する防振性能が要求される。更に、エンジンルーム等の高温環境下で使用される場合には、強度特性に優れ、かつ動倍率が低く防振性能に優れるのは勿論のこと、耐熱性,耐オゾン性及び耐クリープ性が高いことが求められる。特に、近年では、エンジンの高出力化や、室内空間拡大等によるエンジンルームの省スペース化に伴い、エンジンルーム内の温度は上昇する傾向にあり、自動車用防振ゴムの耐熱性に対する要求もより厳しいものとなっている。
【0004】
これまで、防振ゴムのゴム成分としては、破壊特性などの物性面に優れる天然ゴム(NR)が用いられることが多かった。しかしながら、NRは、破壊特性等に優れるものの、耐熱性や耐オゾン性が合成ゴムに比較して劣るため、高温環境下での使用においては耐熱性及び耐オゾン性等が不十分であった。
【0005】
そのような中で、防振ゴムの耐熱性や耐オゾン性の特性を向上させるためにNRの一部もしくは全部をエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)に置換し、パーオキサイド架橋することが行われている。例えば、特開平4−246448号公報(特許文献1)には、EPDM単独配合に不飽和脂肪酸亜鉛を配合して耐熱性を改良する技術が開示され、特開平7−268147号公報(特許文献2)及び特開平7−268148号公報(特許文献3)には、特定のEPDMをパーオキサイド架橋することにより、耐久性を向上させた耐熱防振ゴムが得られる耐熱性ゴム組成物が提案されている。しかしながら、これら手法では、引張り強度(常温、高温)などのゴム物性及び耐久性が大幅に低下してしまうおそれがある。更に、防振ゴムでは重要な特性である動倍率が上昇し、得られる硬化物が性能として劣ったものとなることが多い。
【0006】
一方、他の手法で性能を向上させた防振ゴムとして、特定のクロロプレン系ゴムをベースとし、これに特定量のカーボンブラックと軟化剤を配合した、高硬度で低い動倍率を有するゴム成形品を得られるゴム組成物(特開平8−127673号公報:特許文献4)や、共役ジエンを含まないエチレン−α−オレフィン共重合ゴムを用いて、有機過酸化物で加硫した耐熱性及び動的ヘタリ性に優れた防振ゴム(特開平1−299806号公報:特許文献5)なども提案されているが、更なる改善が望まれる。また、優れた防振性能を得ることができる耐熱性ゴム組成物を得るために、ジエン系ゴムに特定のビスマレイミド化合物のみを加硫剤として用いる技術(特開2006−273941号公報:特許文献6)も提案されているが、防振ゴムの諸性能を更に改良することも望まれる。
【0007】
また、本出願人は、先に、NR/EPDMのゴム配合に、(メタ)アクリル酸亜鉛とビスマレイミド化合物とを併用することによりゴムの破壊特性、疲労特性及び耐熱性を低下させずに動倍率を下げ、且つ耐セット性を上げる提案をしている(特願2009−195021)。しかしながら、この提案でも、防振ゴムの要求特性の一つである引張り物性の低下が若干見られ、未だ改善の余地があった。
【0008】
従って、実用的に使用される防振ゴムについては、優れた防振性能(低動倍率)を有することのほか、引張り物性や耐クリープ性が改善されたものであることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−246448号公報
【特許文献2】特開平7−268147号公報
【特許文献3】特開平7−268148号公報
【特許文献4】特開平8−127673号公報
【特許文献5】特開平1−299806号公報
【特許文献6】特開2006−273941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、伸び,強度等の引張り物性及び低動倍率を良好に維持しつつ、耐クリープ性を向上させたゴム硬化物が得られ、ゴム練りや加硫時の加工性を改善し得る防振ゴム組成物、及び該ゴム組成物を硬化させてなる防振ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、NR及びEPDMを特定の割合で配合してゴム成分とし、これに加硫剤として過酸化物を、共架橋剤としてアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛を配合するとともに、液状ポリブダジエンを配合したところ、低動倍率、引張り物性を改善し、更には耐クリープ性を改善し、ゴム練りや加硫時の加工性を改善し得ることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は下記の防振ゴム組成物及び防振ゴムを提供する。
[1]ゴム成分として天然ゴム(NR)とエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とを、質量比でNR/EPDM=70/30〜45/55の割合で含むと共に、加硫剤として過酸化物及び共架橋剤としてアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛を含み、更に、液状ポリブタジエンを含むことを特徴とする防振ゴム組成物。
[2]液状ポリブタジエンの数平均分子量が5000以下である[1]記載の防振ゴム組成物。
[3]液状ポリブタジエンの配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部以上である[1]又は[2]記載の防振ゴム組成物。
[4][1]、[2]又は[3]記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防振ゴム組成物は、引張り物性及び低動倍率を良好に維持しつつ、耐クリープ性を向上させることができる。更には、ゴム練りや加硫時の加工性を向上させることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の防振ゴム組成物は、ゴム成分として天然ゴム(NR)とエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とを所定の割合で含み、加硫剤として過酸化物を含み、かつ共架橋剤として、アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛を含むものである。
【0015】
ゴム成分としては、NRとEPDMとを含む。その際、NRとEPDMの配合割合は、質量比で、通常NR/EPDM=70/30〜45/55の範囲とすることが好ましい。EPDMの割合が上記範囲より少なすぎると、耐オゾン性及び耐熱性が低下するおそれがあり、多すぎると、動倍率が上がり、耐久性や強度が低下するおそれがある。なお、上記のNR及びEPDMは、公知のものを適宜選択使用すればよく、特に制限されるものではない。
【0016】
また、本発明では上記のようにNR及びEPDMを含むゴム成分を用いるが、その目的を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて上記ゴム成分のほかに、公知の合成ゴム等の他のゴムを併用してもよい。その具体例としては、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン・イソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エポキシ化天然ゴム、アクリレートブタジエンゴム等の合成ゴム及びこれら合成ゴムまたは天然ゴムの分子鎖末端が変性されたもの等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用すればよい。上記ゴムを配合量する場合は、ゴム成分全量の通常20質量%以下(0〜20質量%)とすることが好ましい。
【0017】
加硫剤としては、本発明においては過酸化物を用いる。本発明では、過酸化物を加硫剤として用いて上記ゴム成分をパーオキサイド架橋することにより、硫黄を用いて架橋した場合と比較して、耐熱性や高温下での耐クリープ性に優れるため、防振ゴムの耐熱性及び耐久性を高めることができる。過酸化物は、この分野において通常使用されるものを配合することができ、その具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられ、本発明においては、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これら加硫剤の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して、通常1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部である。配合量が10質量部を超えると、ゴムが硬化しすぎて、破断伸びの低下及び耐久性の低下等を招くおそれがあり、1質量部未満の場合は、架橋密度が低下し、破断強度の低下、動倍率の悪化、圧縮永久歪みの悪化及び耐久性の低下等を招くおそれがある。
【0018】
なお、本発明の目的を逸脱しない範囲において、架橋助剤として硫黄を配合することもできる。該架橋助剤を配合する場合、その配合量はゴム成分100質量部に対して0.1〜0.5質量部の範囲とすることが好ましい。
【0019】
共架橋剤は、それ自体で架橋点の生成能力はないが、上記過酸化物と併用することによって、ゴム中の架橋反応を起こす添加剤であり、本発明の所望の作用効果を得るために、アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛及び液状ポリブタジエンを必須成分として含む。
【0020】
アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛の配合量については、特に制限はないが、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、上限値として、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.8質量部以下、更に好ましくは3.5質量部以下である。配合量が上記範囲を超えると、ゴムが硬化しすぎ、破断伸びの低下等を招くおそれがあり、また、上記範囲を下回ると、ゴムの架橋が十分になされず、破断強度の低下,動倍率の上昇,圧縮永久歪みの上昇等を招くおそれがある。
【0021】
本発明では、脂肪酸エステルを上記アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛と共にゴム成分に対して配合することもでき、これにより、混練時のゴム成分に対する上記アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛の分散性を改善し、加硫後のゴムの力学的特性を向上させることができる。ここで、上記脂肪酸エステルを構成する脂肪酸及びアルコールは、共に直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、また炭素数も特に制限されない。なお、本発明においては、通常、炭素数1〜30の鎖長を有する脂肪酸と炭素数1〜30の鎖長を有するアルコールとで構成される公知の脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ステアリン酸エチルエステル、ステアリン酸プロピルエステル、ステアリン酸ブチルエステル、パルミチン酸エチルエステル、パルミチン酸プロピルエステル、パルミチン酸ブチルエステル等を使用することができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記脂肪酸エステルの配合量は、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.02〜1.2質量部、より好ましくは0.2〜0.6質量部である。配合量が1.2質量部超えると、ゴムの軟化、作業性の悪化及び動倍率の悪化等を招くおそれがあり、0.02質量部未満になると、分散性改善効果を得られないおそれがある。
【0022】
なお、この脂肪酸エステルは、ゴム成分との混練時に上記アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛と別個に配合しても分散性向上の効果を発揮するが、ゴム成分との混練前に予めアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛とプレミックスすることにより、アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛のゴム成分に対する分散性を更に向上させることができる。
【0023】
本発明では、共架橋剤として液状ポリブタジエンを必須成分として用いる。本発明では、液状ポリブタジエンを上記共架橋剤(アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛)と併用することでポリマーを架橋させ、圧縮永久歪み、動特性を改善し、更に、ゴム練り時には粘度を低下させ、加硫時にはスコーチタイムを上昇させ、加工性を改善できる。
【0024】
本発明で用いられる液状ポリブタジエンとしては、特に制限はないが、通常、主鎖の構造として、ビニル1,2‐結合型、トランス1,4‐結合型、シス1,4‐結合型からなり、室温で透明な液状重合体である。
【0025】
本発明で用いられる液状ポリブタジエンの数平均分子量については、上限値が好ましくは5500以下、より好ましくは5,000以下である。液状ポリブタジエンの数平均分子量が上記範囲を超えると、引張り物性が低下するおそれがある。
【0026】
液状ポリブタジエンとしては、具体的には、商品名「Ricon」(SARTOMER社製)等の市販品を使用することができる。
【0027】
本発明では、液状ポリブタジエンを1種のみならず、2種以上を組み合わせて用いることができる。液状ポリブタジエンの配合量については、特に制限はないが、上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、上限値として、好ましくは10質量部以下である。配合量が上記範囲を超えると、ゴム組成物の引張り物性が徐々に悪化してしまい好ましくない。また、上記範囲を下回ると、動特性の改善が見られず、或いは圧縮永久歪みの悪化等を招くおそれがある。
【0028】
また、上記ゴム成分に対して、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、ゴム工業で通常使用されている加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、カーボン、シリカ、亜鉛華(ZnO)、ワックス類、酸化防止剤、充填剤、発泡剤、可塑剤、オイル、滑剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤、相溶化剤、均質化剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0029】
オイルとしては、公知のものを使用することができ、特に制限されないが、具体的には、アロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油等のプロセスオイルや、やし油等の植物油、アルキルベンゼンオイル等の合成油、ヒマシ油等を使用することができる。本発明においては、パラフィン油を好適に用いることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらオイルの配合量は、特に制限されるものではないが、上記ゴム成分100質量部に対し、概ね15〜45質量部とすることができる。配合量が上記範囲を逸脱すると、混練作業性が悪化するおそれがある。なお、油展されたゴムを上記ゴム成分に用いる場合は、該ゴムに含有されるオイルと、混合時に別途添加されるオイルとの合計量が上記範囲となるように調整すればよい。
【0030】
カーボンとしては、公知のものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカーボンブラックを挙げることができ、本発明においては、FTまたはFEFを好適に用いることができる。また、これらのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらカーボンブラックの配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、通常15〜60質量部、好ましくは20〜50質量部である。配合量が60質量部を超えると、作業性が悪化するおそれがあり、15質量部未満になると、接着性の悪化を招くおそれがある。
【0031】
本発明においては、加硫を促進する観点から、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等の加硫促進助剤を配合することができる。脂肪酸としては飽和、不飽和あるいは直鎖状、分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数としても特に制限されるものではないが、例えば炭素数1〜30、好ましくは15〜30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。これら加硫促進助剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜7質量部である。配合量が10質量部を超えると、作業性の悪化及び動倍率の悪化等を招くおそれがあり、1質量部未満になると、加硫遅延等のおそれがある。
【0032】
老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤などを挙げることができる。これら老化防止剤の配合量は上記ゴム成分100質量部に対し、通常2〜10質量部、好ましくは3〜7質量部である。
【0033】
本発明のゴム組成物を得る際、上記各成分の配合方法に特に制限はなく、全ての成分原料を一度に配合して混練しても良いし、2段階あるいは3段階に分けて各成分を配合して混練を行ってもよい。その際、(メタ)アクリル酸亜鉛をゴム成分と混練する前に予め脂肪酸エステルとプレミックスすることにより、上記(メタ)アクリル酸亜鉛の上記ゴム成分に対する分散性が更に向上し、得られるゴムの力学的特性を更に向上させることができる。なお、混練に際してはロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。更に、シート状や帯状等に成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いればよい。
【0034】
また、上記ゴム組成物を硬化させる際の加硫条件としては、特に限定されるものではないが、通常140〜180℃で、5〜120分間の加硫条件を採用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1〜12、比較例1]
下記表1に示す配合組成で混練し加硫して、実施例1〜12及び比較例1の各々の防振ゴム組成物を所定の条件で加硫硬化させ、長さ120mm×幅120mm×厚さ2mmのシート成型物を作製した。このシートを本発明の防振ゴムの評価体とした。得られたゴムシートについて、硬度(Hd)、引張伸び(Eb)、引張強さ(Tb)を測定し、圧縮永久歪み(%)、静バネ定数(Ks)、動倍率(Kd/Ks)を下記JIS規格に準拠して測定を行い評価した。その結果を表1に記載した。
【0037】
[硬度(Hd)]
JIS K 6253(タイプA)に準拠した。
[引張伸び(Eb)]
JIS K 6251に準拠した。
[引張強さ(Tb)]
JIS K 6251に準拠した。
[圧縮永久歪み]
JIS K 6262に準拠した。
[静バネ定数(Ks),動バネ定数(Kd)及び動倍率(Kd/Ks)]
JIS K 6385に準拠し、Kdは100Hzで測定した。
[ムーニー粘度及びムーニースコーチタイムの測定]
JIS K 6300−1:2001(ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方)に準拠した。ムーニースコーチタイムは、ゴム組成物を130℃で測定し、余熱を始めてからの値が最低値Vmより5単位上昇するまでの時間を測定した。ムーニースコーチタイムの数値が大きい程、加工安定性(スコーチ安定性)が良好になることを示す。
【0038】
下記表1の配合についての詳細は下記の通りである。
(1)NR:天然ゴム、「RSS#1」
(2)EPDM:JSR製の「EP96」、ENB含量 6.0質量%、エチレン含量 66質量%(ポリマー成分:30phr,オイル成分:15phr)
(3)FEF級カーボンブラック:旭カーボン製「旭 #65」
(4)老化防止剤:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業(株)製の「ノクラック224」
(5)過酸化物:ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、日油社製「ペロキシモンF−40」
(6)ZMA(メタクリル酸亜鉛)川口化学工業社製「ZMA」
(7)ZA(アクリル酸亜鉛、サートマー社製の「SR633」
(8)液状ポリブタジエン
「Ricon 153」(分子量Mn:4700)
「Ricon 154」(分子量Mn:5200)
「Ricon 150」(分子量Mn:3900)
「Ricon 157」(分子量Mn:1800)
いずれもサートマー社製
【0039】
【表1】

【0040】
上記表1の通り、本発明にかかる実施例のゴム組成物は、NR及びEPDMを特定の割合で配合してゴム成分とし、これに加硫剤として過酸化物を配合するとともに共架橋剤として、アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛を配合し、更に液状ポリブタジエンを所定量配合したものである。その結果、これら実施例のゴム組成物では、低動倍率を良好に維持することができ、伸び及び強度等の引張り物性を保持するとともに、耐クリープ性(圧縮永久歪み)を改善し、ムーニー粘度とムーニースコーチタイムを改善することができた。
これに対して、比較例1では、低動倍率の改善がやや小さく、耐クリープ性(圧縮永久歪み)に劣り、ムーニースコーチタイムが短かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分として天然ゴム(NR)とエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)とを、質量比でNR/EPDM=70/30〜45/55の割合で含むと共に、加硫剤として過酸化物及び共架橋剤としてアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛を含み、更に、液状ポリブタジエンを含むことを特徴とする防振ゴム組成物。
【請求項2】
液状ポリブタジエンの数平均分子量が5000以下である請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
液状ポリブタジエンの配合量がゴム成分100質量部に対して3質量部以上である請求項1又は2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のゴム組成物を硬化させてなる防振ゴム。

【公開番号】特開2012−117004(P2012−117004A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270118(P2010−270118)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】