説明

防振マウント

【課題】比較的簡単な構成で、エンジン支持ブラケットとの衝突による異音の発生を抑えた防振マウントを提供する。
【解決手段】エンジン支持ブラケット8の取付孔8aに外筒体21が嵌合される。外筒体21は、円筒状の筒本体部22と、筒本体部22の軸方向の一端側において径方向に張り出すフランジ部23とを有する。外筒体21内には、円筒状の内筒体25が同心状に配置される。外筒体21と内筒体25とは、ゴム弾性体30により連結される。そして、外筒体21の筒本体部22には、周方向に間隔をあけて複数のスリット22aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振マウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ショベル等の建設機械では、建設機械の作業時にエンジンに与えられる振動を抑制するために防振マウントが用いられている(例えば、特許文献1参照)。この防振マウントは、防振用のゴムブッシュと、ゴムブッシュを保持するリテーナ部とを有している。そして、エンジン支持ブラケットの取付孔内に防振マウントのリテーナ部を嵌入させ、エンジン支持ブラケットと防振マウントとを一体に固定するようにしている。
【0003】
ここで、防振マウントのリテーナ部とエンジン支持ブラケットの取付孔との間には、若干の隙間が設けられている。そのため、建設機械の作業時にエンジンに与えられる水平方向の振動に伴って、防振マウントのリテーナ部が、エンジン支持ブラケットの取付孔の周縁部と衝突を繰り返し、異音が発生することがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、エンジン支持ブラケットの上面と上側防振マウントのリテーナ部の当接部分、及びエンジン支持ブラケットの下面と下側防振マウントのリテーナ部との当接部分に、エンジン支持ブラケットの上面及び下面に沿う方向のリテーナ部の相対移動を規制するための規制手段を設けた技術が開示されている。具体的に、防振マウントに設けた突起と、エンジン支持ブラケットの上面及び下面に設けられた窪みとを係合させることで、リテーナ部の相対移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−215086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のエンジン防振構造では、防振マウントのリテーナ部に突起を設け、エンジン支持ブラケットの上面及び下面に窪みを設けた構成としているから、その当接部分の面加工を精度良く行う必要があり、コストがかかってしまうという問題があった。
【0007】
また、リテーナ部に突起を有する防振マウントを取り付けるためには、エンジン支持ブラケットの当接面に窪みを設けておかなければならないため、特許文献1の防振マウントを他の建設機械に適用しようとしても、防振マウントと一緒にエンジン支持ブラケットも交換しなければならず、作業工数が増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、エンジン支持ブラケットとの衝突による異音の発生を抑えた防振マウントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エンジンを支持するエンジン支持ブラケットに取り付けられ、該エンジンの振動を抑制するための防振マウントを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記エンジン支持ブラケットの取付孔に嵌合させる円筒状の筒本体部を有する外筒体と、
前記外筒体内に同心状に配置された円筒状の内筒体と、
前記外筒体と前記内筒体とを連結するゴム弾性体とを備え、
前記外筒体の筒本体部には、周方向に間隔をあけて複数のスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、エンジン支持ブラケットの取付孔に外筒体が嵌合される。外筒体は、円筒状の筒本体部を有する。外筒体内には、円筒状の内筒体が同心状に配置される。外筒体と内筒体とは、ゴム弾性体により連結される。そして、外筒体の筒本体部には、周方向に間隔をあけて複数のスリットが形成される。
【0012】
このような構成とすれば、防振マウントを組み付けるときにゴム弾性体に付与される予圧縮荷重を利用して、外筒体の筒本体部の外径が大きくなるように変形させることで、エンジン支持ブラケットの取付孔との隙間を無くすことができる。
【0013】
具体的に、外筒体の筒本体部をエンジン支持ブラケットの取付孔内に挿入させるためには、筒本体部と取付孔との間に若干の隙間を設けておく必要がある。そのため、建設機械の作業時にエンジンに与えられる水平方向の振動に伴って、外筒体の筒本体部が、エンジン支持ブラケットの取付孔の周縁部と衝突を繰り返し、異音が発生することがある。
【0014】
これに対し、本発明では、周方向に間隔をあけて複数のスリットが外筒体の筒本体部に形成されているから、防振マウントを組み付けるときにゴム弾性体に付与される予圧縮荷重により、筒本体部のスリットが拡大して筒本体部を径方向に拡げるように変形させることができる。その結果、外筒体の筒本体部とエンジン支持ブラケットの取付孔との隙間を無くすことができるため、エンジンの水平方向の振動に伴って、外筒体の筒本体部がエンジン支持ブラケットの取付孔の周縁部と衝突を繰り返して異音が発生するのを抑制できる。
【0015】
また、外筒体の筒本体部に複数のスリットを形成するだけという比較的簡単な構成で、異音の発生を抑えることができるので、特許文献1の発明のように、エンジン支持ブラケットに窪みを形成する等、エンジン支持ブラケット側に特殊な加工を施す必要がなく、コスト低減に有利となる。
【0016】
また、防振マウントを組み付けるときの予圧縮時には、ゴム弾性体がスリットの隙間からはみ出し、このはみ出したゴム弾性体によっても、エンジン支持ブラケットの取付孔との隙間が塞がれることとなり、エンジン支持ブラケットとの衝突による異音の発生を抑える上で有利となる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
前記外筒体の筒本体部は、前記スリットが軸方向全長に延びることで周方向に複数に分割されていることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明では、スリットが軸方向全長に延びている。その結果、外筒体の筒本体部は、周方向に複数に分割される。
【0019】
このような構成とすれば、防振マウントを組み付けるときにゴム弾性体に付与される予圧縮荷重により、分割された筒本体部が互いに径方向に離れるように移動し、筒本体部を径方向に拡げることができる。その結果、外筒体の筒本体部とエンジン支持ブラケットの取付孔との隙間を無くすことができるため、エンジンの水平方向の振動に伴って、外筒体の筒本体部がエンジン支持ブラケットの取付孔の周縁部と衝突を繰り返して異音が発生するのを抑制することができる。
【0020】
第3の発明は、エンジンを支持するエンジン支持ブラケットに取り付けられ、該エンジンの振動を抑制するための防振マウントを対象とし、
前記エンジン支持ブラケットの取付孔に嵌合させる円筒状の筒本体部と、該筒本体部の軸方向の一端側において径方向に張り出すフランジ部とを有する外筒体と、
前記外筒体内に同心状に配置された円筒状の内筒体と、
前記外筒体と前記内筒体とを連結するゴム弾性体とを備え、
前記筒本体部と前記フランジ部とは、その境界位置で分割されるとともに、少なくとも該フランジ部は、周方向に複数に分割されていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、エンジン支持ブラケットの取付孔に外筒体が嵌合される。外筒体は、円筒状の筒本体部と、筒本体部の軸方向の一端側において径方向に張り出すフランジ部とを有する。外筒体内には、円筒状の内筒体が同心状に配置される。外筒体と内筒体とは、ゴム弾性体により連結される。筒本体部とフランジ部とは、その境界位置で分割される。また、少なくともフランジ部は、周方向に複数に分割される。
【0022】
このような構成とすれば、防振マウントを組み付けるときにゴム弾性体に付与される予圧縮荷重により、分割されたフランジ部が互いに径方向に離れるように移動し、エンジン支持ブラケットの平坦面との接触面積を増やすことができる。これにより、水平方向の摩擦力が増大するため、エンジンの水平方向の振動に伴って、外筒体がエンジン支持ブラケットに対して水平方向に相対移動するのを抑制できる。
【0023】
また、エンジン支持ブラケットの取付孔の周縁部と衝突を繰り返しやすい筒本体部とフランジ部との境界位置を分割しているから、異音の発生を抑制する上で有利となる。
【0024】
なお、フランジ部を分割するのに加えて、外筒体の筒本体部に周方向に間隔をあけて複数のスリットを形成したり、筒本体部を周方向に複数に分割するようにしてもよい。このようにすれば、防振マウントを組み付けるときにゴム弾性体に付与される予圧縮荷重を利用して、分割されたフランジ部が互いに径方向に離れるように移動するとともに、外筒体の筒本体部を径方向に拡げることで、エンジン支持ブラケットの取付孔との隙間を無くことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、防振マウントを組み付けるときにゴム弾性体に付与される予圧縮荷重を利用して、外筒体の筒本体部を径方向に拡げることで、エンジン支持ブラケットの取付孔との隙間を無くすことができる。その結果、エンジンの水平方向の振動に伴って、外筒体の筒本体部がエンジン支持ブラケットの取付孔の周縁部と衝突を繰り返して異音が発生するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係る建設機械の構成を示す側面図である。
【図2】建設機械の構成を示す平面断面図である。
【図3】防振マウントの構成を示す側面図である。
【図4】防振マウントの構成を示す側面断面図である。
【図5】防振マウントの使用状態を示す側面断面図である。
【図6】防振マウントの別の構成を示す側面断面図である。
【図7】本実施形態2に係る防振マウントの外筒体の構成を示す平面図である。
【図8】本実施形態3に係る防振マウントの外筒体の構成を示す平面図である。
【図9】ゴム弾性体に予圧縮荷重を付与する前の外筒体を一部拡大して示す側面断面図である。
【図10】予圧縮荷重を付与した後の外筒体を一部拡大して示す側面断面図である。
【図11】防振マウントの外筒体の別の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る建設機械の構成を示す側面図、図2は平面断面図である。図1及び図2に示すように、この建設機械1は、いわゆる油圧ショベルであり、土木工事や建設工事を行う建設現場で土砂の掘削、砕石、建物の解体などを行うものである。建設機械1は、多数の板状部材を無端状に連結してなるクローラ2を備えた下部走行体3と、下部走行体3の上側に旋回装置4を介して取り付けられた上部旋回体5とを備えている。
【0029】
上部旋回体5の下部には基台10が設けられている。基台10の上面には、装置前後方向に延びる一対の補強リブ18が立設している。また、基台10の進行方向前側には、アタッチメント11を接続するためのスイングポスト19が設けられている。
【0030】
アタッチメント11は、基台10に対して上下方向に傾動可能に取り付けられたブーム12と、ブーム12の先端に揺動可能に取り付けられたアーム13と、アーム13の先端に連結されたバケット14とを備えている。
【0031】
基台10の上面におけるアタッチメント11の取付位置の隣りには、オペレータ用のキャビン15が配設されている。キャビン15内には、アタッチメント11を操作するための図示しない操作機器や空調機器が配設されている。
【0032】
また、基台10の後部には、機械室16が設けられている。機械室16には、防振マウント20を介してエンジン6が配設されている。機械室16は、カバー16aによって覆われている。カバー16aの後方には、カウンタウエイト17が装着されている。
【0033】
図3は、防振マウントの構成を示す側面図、図4は側面断面図である。図3及び図4に示すように、防振マウント20は、外筒体21と、外筒体21内に同心状に配置された内筒体25と、外筒体21と内筒体25とを連結するゴム弾性体30とを備えている。
【0034】
外筒体21は、円筒状の筒本体部22と、筒本体部22の軸方向の一端側から径方向に張り出すフランジ部23とを有する。筒本体部22には、周方向に間隔をあけて複数のスリット22aが形成されている。
【0035】
内筒体25は、外筒体21内に同心状に配置され且つ上端部が外筒体21のフランジ部23よりも上方に突出している。
【0036】
ゴム弾性体30は、外筒体21と内筒体25とに一体に加硫接着されることにより構成されている。ゴム弾性体30の外周部は、フランジ部23の上面を覆う下端部から上端部にかけて幅狭となるテーパ状に形成されている。ゴム弾性体30の下端面の内筒体25寄りの位置には、上方へ窪んだ凹部30aが外筒体21の内周方向に沿って環状に形成されている。
【0037】
図5は、防振マウントの使用状態を示す側面断面図である。図5に示すように、上部旋回体5の基台10上には、支持台7が立設している。エンジン6を支持するエンジン支持ブラケット8は、防振マウント20を介して支持台7に設置される。
【0038】
防振マウント20は、上下一対で配置されている。具体的に、上側の防振マウント20の筒本体部22は、エンジン支持ブラケット8に形成された取付孔8aに上側から嵌合される。上側のフランジ部23は、エンジン支持ブラケット8の上面に当接している。下側の防振マウント20は、エンジン支持ブラケット8の取付孔8aに下側から嵌合される。下側のフランジ部23は、エンジン支持ブラケット8の下面に当接している。これにより、上下一対のフランジ部23でエンジン支持ブラケット8が挟持される。
【0039】
下側の防振マウント20は、支持台7に載置されている。上側の防振マウント20の上部には、建設機械1の本体側ブラケット9が配置されている。締結ボルト35は、本体側ブラケット9のボルト孔9a、上側及び下側の防振マウント20の内筒体25、及び支持台7のボルト孔7aに挿通される。締結ボルト35の下端部は、支持台7の下方に突出し、締結ナット36により締め付けられる。これにより、上下一対の内筒体25同士を対向させるとともにゴム弾性体30を弾性変形させ、防振マウント20を予圧縮状態にセットした上でエンジン6が搭載される。
【0040】
ここで、外筒体21の筒本体部22には、周方向に間隔をあけて複数のスリット22aが形成されているから、防振マウント20を組み付けるときにゴム弾性体30に付与される予圧縮荷重により、筒本体部22のスリット22aが拡大して筒本体部22が径方向に拡がるように変形する。その結果、外筒体21の筒本体部22とエンジン支持ブラケット8の取付孔8aとの隙間が塞がれる。また、この予圧縮時に、ゴム弾性体30がスリット22aの隙間からはみ出す。
【0041】
このような構成とすれば、建設機械1の作業時にエンジン6に与えられる水平方向の振動に伴って防振マウント20に荷重が加わった場合には、ゴム弾性体30が弾性変形して運動エネルギーを吸収することができる。
【0042】
また、外筒体21の筒本体部22とエンジン支持ブラケット8の取付孔8aとの隙間を無くすようにしたため、エンジン6の水平方向の振動に伴って、外筒体21の筒本体部22がエンジン支持ブラケット8の取付孔8aの周縁部と衝突を繰り返して異音が発生するのを抑制できる。
【0043】
さらに、スリット22aの隙間からはみ出したゴム弾性体30によっても、エンジン支持ブラケット8の取付孔8aとの隙間が塞がれることとなり、エンジン支持ブラケット8との衝突による異音の発生を抑える上で有利となる。
【0044】
なお、スリット22aの幅については、ゴム弾性体30のはみ出し量を調整するために適宜変更してもよい。例えば、図6に示すように、スリット22aの幅を大きくして、ゴム弾性体30のはみ出し量を多くしてもよい。
【0045】
《実施形態2》
図7は、本実施形態2に係る防振マウントの外筒体の構成を示す平面図である。前記実施形態1との違いは、外筒体21が分割されている点であるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0046】
図7に示すように、外筒体21は、円筒状の筒本体部22と、筒本体部22の軸方向の一端側から径方向に張り出すフランジ部23とを有する。筒本体部22及びフランジ部23には、軸方向全長に延びるスリット22a,23aが、周方向に間隔をあけて2箇所に形成されている。その結果、外筒体21は、周方向に2分割されている。
【0047】
このような構成とすれば、防振マウント20を組み付けるときにゴム弾性体30に付与される予圧縮荷重により、分割された外筒体21が互いに径方向に離れるように移動し、外筒体21を径方向に拡げることができる。その結果、外筒体21の筒本体部22とエンジン支持ブラケット8の取付孔8aとの隙間を無くすことができるため、エンジン6の水平方向の振動に伴って、外筒体21の筒本体部22がエンジン支持ブラケット8の取付孔8aの周縁部と衝突を繰り返して異音が発生するのを抑制することができる。
【0048】
《実施形態3》
図8は、本実施形態3に係る防振マウントの外筒体の構成を示す平面図である。前記実施形態2との違いは、筒本体部22とフランジ部23とがその境界位置で分割されている点であるため、以下、実施形態2と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0049】
図8に示すように、外筒体21は、円筒状の筒本体部22と、筒本体部22の軸方向の一端側から径方向に張り出すフランジ部23とを有する。筒本体部22及びフランジ部23には、軸方向全長に延びるスリット22a,23aが、周方向に間隔をあけて2箇所に形成されている。その結果、外筒体21は、周方向に2分割される。
【0050】
また、筒本体部22とフランジ部23との境界位置には、周方向の全周にわたって環状スリット21aが形成されている。その結果、筒本体部22とフランジ部23とが境界位置で分割される。
【0051】
図9は、ゴム弾性体に予圧縮荷重を付与する前の外筒体を一部拡大して示す側面断面図、図10は、予圧縮荷重を付与した後の外筒体を一部拡大して示す側面断面図である。図9に示すように、ゴム弾性体30に予圧縮荷重を付与する前においては、外筒体21の筒本体部22の上端縁とフランジ部23の内周縁とが近接した状態となっている。
【0052】
そして、図10に示すように、防振マウント20を組み付けてゴム弾性体30に予圧縮荷重を付与すると、分割された外筒体21の筒本体部22及びフランジ部23が互いに径方向に離れるように移動する。これにより、外筒体21の筒本体部22の上端縁とフランジ部23の内周縁とが離間した状態となる。
【0053】
このような構成とすれば、防振マウント20を組み付けるときにゴム弾性体30に付与される予圧縮荷重により、分割された外筒体21の筒本体部22が互いに径方向に離れるように移動し、筒本体部22を径方向に拡げることができる。その結果、外筒体21の筒本体部22とエンジン支持ブラケット8の取付孔8aとの隙間を無くすことができるため、エンジン6の水平方向の振動に伴って、外筒体21の筒本体部22がエンジン支持ブラケット8の取付孔8aの周縁部と衝突を繰り返して異音が発生するのを抑制することができる。
【0054】
また、ゴム弾性体30に付与される予圧縮荷重により、分割された外筒体21のフランジ部23も互いに径方向に離れるように移動するから、フランジ部23とエンジン支持ブラケット8の上面との接触面積を増やして摩擦力を増大させることができる。
【0055】
具体的に、エンジン支持ブラケット8の取付孔8aの内周縁には、面取り部8bが形成されている。そのため、予圧縮荷重を付与する前には、フランジ部23における面取り部8bに対応する部分は、エンジン支持ブラケット8の上面とは接触していない。そして、予圧縮荷重を付与すると、フランジ部23が互いに径方向に離れるように移動し、フランジ部23における面取り部8bに対応する部分が、エンジン支持ブラケット8と接触することとなり、予圧縮荷重を付与する前に比べて接触面積を増やすことができる。
【0056】
これにより、水平方向の摩擦力が増大するため、エンジン6の水平方向の振動に伴って、外筒体21がエンジン支持ブラケット8に対して水平方向に相対移動するのを抑制できる。
【0057】
また、エンジン支持ブラケット8の取付孔8aの周縁部と衝突を繰り返しやすい筒本体部22とフランジ部23との境界位置を分割しているから、異音の発生を抑制する上で有利となる。
【0058】
なお、本実施形態では、外筒体21の筒本体部22を周方向に2分割した形態について説明したが、図11に示すように、フランジ部23のみを分割して筒本体部22を円筒状のままとした形態であってもよい。また、実施形態1のように、筒本体部22に周方向に間隔をあけて複数のスリット22aを形成した形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、エンジン支持ブラケットとの衝突による異音の発生を抑えた防振マウントを提供できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0060】
6 エンジン
8 エンジン支持ブラケット
8a 取付孔
20 防振マウント
21 外筒体
22 筒本体部
22a スリット
23 フランジ部
25 内筒体
30 ゴム弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを支持するエンジン支持ブラケットに取り付けられ、該エンジンの振動を抑制するための防振マウントであって、
前記エンジン支持ブラケットの取付孔に嵌合させる円筒状の筒本体部を有する外筒体と、
前記外筒体内に同心状に配置された円筒状の内筒体と、
前記外筒体と前記内筒体とを連結するゴム弾性体とを備え、
前記外筒体の筒本体部には、周方向に間隔をあけて複数のスリットが形成されていることを特徴とする防振マウント。
【請求項2】
請求項1において、
前記外筒体の筒本体部は、前記スリットが軸方向全長に延びることで周方向に複数に分割されていることを特徴とする防振マウント。
【請求項3】
エンジンを支持するエンジン支持ブラケットに取り付けられ、該エンジンの振動を抑制するための防振マウントであって、
前記エンジン支持ブラケットの取付孔に嵌合させる円筒状の筒本体部と、該筒本体部の軸方向の一端側において径方向に張り出すフランジ部とを有する外筒体と、
前記外筒体内に同心状に配置された円筒状の内筒体と、
前記外筒体と前記内筒体とを連結するゴム弾性体とを備え、
前記筒本体部と前記フランジ部とは、その境界位置で分割されるとともに、少なくとも該フランジ部は、周方向に複数に分割されていることを特徴とする防振マウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225464(P2012−225464A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95377(P2011−95377)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】