説明

防振装置、及び、防振装置用ブラケット

【課題】製造コストを抑制することができると共に、車体への取付部分の強度を高くすることができる防振装置用のブラケット、及び、この防振装置用ブラケットを備えた防振装置を提供する。
【解決手段】第2取付板部54は、防振装置本体12の外側取付部材16の軸方向Sと略直交する方向に板面が配置され、各々の板面に第1取付板部44が重ね合わされている。第2取付板部54は車体側に配置され、第1取付板部44が第2取付板部54の上側に配置されている。第1取付板部44と第2取付板部54は、連結穴44H、54Hへボルトが挿入され、共締めにより密着した状態で車体へ固定されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般産業機械、自動車のエンジンマウント等として用いられ、エンジン等の振動発生部からの振動を吸収して車体等の振動受部への振動伝達を抑制する防振装置、及び、この防振装置に用いられる防振装置用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の振動発生部であるエンジンと振動受部である車体との間にはエンジンマウントとしての防振装置が配設されており、この防振装置はエンジンが発生する振動を吸収し、車体側への振動伝達を抑制する。このような防振装置としては、例えば、防振装置の内部に弾性体及び一対の液室を設けると共に、オリフィスとなる制限通路でこれらの液室を互いに連通した液体封入式のものが知られている。液体封入式の防振装置によれば、搭載されたエンジンが作動して振動が発生した場合には、弾性体の制振機能及び、一対の液室間を連通するオリフィス内の液体の粘性抵抗等で振動を吸収し、車体側への振動伝達を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の防振装置には、防振基体3を保持する下側取付金具1が開示されている。下側取付部材1は、鋼板などの金属材が一体に絞り加工されて、防振基体3を保持する保持筒11と、車体側に連結される支持部12と、かしめ固定部14が形成されている。しかしながら、このように絞り加工を行うと、製造コストが高くなってしまう。
【0004】
また、特許文献2には、絞り加工ではなく、板材を折り曲げて脚部材と保持部材とを別々に構成し、防振装置本体を支持する構成が開示されている。このように、折り曲げ加工であれば、比較的低コストで製造することができる。しかしながら、振動入力時に比較的大きい荷重のかかる車体への取付部分の強度が不足することがある。特に、車体への取付位置から防振装置本体を支持するまでの距離が長い場合には、モーメントが大きくなり、強度不足となることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−280404
【特許文献2】特開2010−65749
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記事実を考慮して成されたものであり、製造コストを抑制すると共に、車体への取付部分の強度を高くすることの可能な防振装置用のブラケット、及び、この防振装置用ブラケットを備えた防振装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る防振装置用ブラケットは、振動発生部及び振動受部の一方に連結される外側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される内側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体、を有する防振装置本体の、前記外側取付部材を挟んで両側に一対設けられて前記防振装置本体を支持する防振装置用ブラケットであって、板状とされ、振動受部に固定される第1取付板部と、前記第1取付板部と一体的に連続され前記外側取付部材と連結される第1翼部と、を有する第1脚部と、板状とされ、前記第1取付板部に板面が重ね合わされ、前記振動受部に固定される第2取付板部と、前記第2取付板部と一体的に連続され前記前記外側取付部材と連結されると共に、前記第1翼部と離間して対向するように配置された第2翼部と、を有する第2脚部と、を備えたものである。
【0008】
上記構成の防振装置用ブラケットでは、振動受部に固定される第1取付板部と一体的に連続される第1翼部は外側取付部材と連結される。当該連結は、外側取付部材と第1翼部とが直接的に連結される場合だけでなく、他の部材を介して連結される間接的な連結も含む。また、第2脚部についても第1脚部と同様に、第2取付板部と一体的に連続される第2翼部は外側取付部材と連結される。当該連結についても、外側取付部材と第2翼部とが直接的に連結される場合だけでなく、他の部材を介して連結される間接的な連結も含む。
そして、第1翼部と第2翼部とは離間して対向するように配置され、振動受部に固定される第1取付板部と第2取付板部とが重ね合わされている。
【0009】
このように、振動受部への固定部分を2枚の第1取付板部、第2取付板部を重ね合わせて構成することにより、当該部分の強度を高くすることができる。また、第1脚部と第2脚部の各々に一体的に、第1取付板部、第2取付板部を設けることにより、脚部と別体の部材を補強部材として用いる必要がなく、部品点数の増加を抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の防振装置用ブラケットは、主振動入力方向の移動を規制するストッパ部材、を備え、前記ストッパ部材に前記第1翼部及び前記第2翼部が固定されていること、を特徴とする。
【0011】
防振装置を取り付ける場合には、内側取付部材と外側取付部材との過度な相対移動を防止するためにストッパ部材が必要であるが、第1翼部及び第2翼部をストッパ部材に固定して、両者を一体化することにより、ストッパ部材を防振装置用ブラケットの一部に組み込むことにより、別部材としてストッパ部材を設置する必要がなく、部品点数を少なくすることができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の防振装置用ブラケットは、前記第1翼部または前記第2翼部と一体的に連続され、主振動入力方向と直交する方向に屈曲されたストッパ板面が前記ストッパ部材の一部として形成されていること、を特徴とする。
【0013】
このように、第1翼部または第2翼部から延出する部分を屈曲させて、簡易にストッパ板面を構成することができる。
【0014】
本発明の請求項4に記載の防振装置用ブラケットは、前記第1取付板部と前記第2取付板部とが、前記振動受部への取付前に離間されており、締結部材での共締めにより互いに密着して前記振動受部へ締結されること、を特徴とする。
【0015】
振動受部への取付前には、第1取付板部と第2取付板部とを離間させておくことにより、塗装を行った際に、両者の間に塗装液が溜まることを防止することができる。また、予め第1取付板部と第2取付板部とを溶接等により接合しておく場合のように、接合位置の精度を求められることがないと共に、溶接による歪みも発生することがない。
【0016】
本発明の請求項5に記載の防振装置用ブラケットは、前記第1取付板部と前記第2取付板部との離間距離が0.5mm〜1.0mmであること、を特徴とする。
【0017】
このように、第1取付板部と第2取付板部との離間距離を0.5mm以上にすることにより、両者の間への塗装液溜まりを効果的に防止することができる。また、第1取付板部と第2取付板部との離間距離を1.0mm以下にすることにより、共締めの際に歪みなく両者を密着させることができる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の防振装置用ブラケットは、前記第1翼部と一体的に連続され、前記外側取付部材の側面に沿って配置され前記防振装置本体を保持する第1側面保持部と、前記第2翼部と一体的に連続され、前記外側取付部材の側面に沿って配置され前記防振装置本体を保持する第2側面保持部と、を備えている。
【0019】
このように、第1翼部及び第2翼部と一体的に、防振装置本体を保持する第1側面保持部及び第2側面保持部を形成することにより、別部材で防振装置本体を保持する必要がなく、部品点数を少なくすることができる。
【0020】
本発明の請求項7に記載の防振装置用ブラケットは、前記外側取付部材を挟んで両側に一対設けられた一方側の第1脚部と他方側の第1脚部とが、第1連結部を介して一体的に連続して形成され、一方側の第2脚部と他方側の第2脚部とが、第2連結部を介して一体的に連続して形成されていること、を特徴とする。
【0021】
このように、一対の防振装置用ブラケットは、第1連結部または第2連結部を介して、一体的に構成することができる。これにより、別体とした場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0022】
本発明の請求項8に記載の防振装置は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケットと、前記防振装置用ブラケットに固定された外側取付部材と、振動発生部に連結される内側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体と、前記内側取付部材に固定され前記外側取付部材の外側へ延出されるストッパアームと、を備えている。
【0023】
上記構成の防振装置によれば、請求項1〜請求項7のいずれかの防振装置用ブラケットを用いることにより、製造コストを抑制することができ、車体への取付部分の強度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、製造コストを抑制することができると共に、車体への取付部分の強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る防振装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケット、及び、防振装置本体の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケットの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る防振装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケットの正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケットの側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケット(車体への取付前)の第1取付板部と第2取付板部との間の隙間を示す図である。
【図8】本発明の実施形態の変形例に係る防振装置用ブラケットの斜視図である。
【図9】本発明の実施形態の変形例に係る防振装置用ブラケットの分解斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の他の変形例に係る防振装置用ブラケットの斜視図である。
【図11】本発明の実施形態のストッパ部材の変形例(A)(B)を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態の他の変形例に係る防振装置用ブラケットの斜視図である。
【図13】本発明の実施形態の他の変形例に係る防振装置用ブラケットの分解斜視図である。
【図14】本発明の実施形態の他の変形例に係る防振装置用ブラケットの斜視図である。
【図15】本発明の実施形態の他の変形例に係る防振装置用ブラケットの分解斜視図である。
【図16】本発明の実施形態のブラケット部材の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る防振装置用ブラケット、及び、防振装置について図面を参照して説明する。
【0027】
図1〜6には本発明の実施形態に係る防振装置10が示されている。この防振装置10は、自動車における振動発生部であるエンジンを振動受部である車体へ支持するエンジンマウントとして適用されるものである。なお、図中の符号Sは装置の軸心を示し、この軸心に沿った方向を装置の軸方向Sとし、図の上下方向を防振装置10の上下方向として以下の説明を行う。防振を目的とする主たる振動(主振動)は、軸方向Sに入力される。
【0028】
本実施形態の防振装置10は、図4にも示されるように、防振装置本体12、及び、防振装置用ブラケット40を備えている。
【0029】
防振装置本体12は、内側取付部材14、外側取付部材16、及び、弾性体18を備えている。
図2に示すように、内側取付部材14は、下側が小径となる略円錐台形とされ、上側中央(大径側中央)に、連結ねじ穴14Aが構成されている。連結ねじ穴14Aには、後述するストッパアーム65との連結用ボルト58を螺合するための雌ネジが形成されている。内側取付部材14は、外側取付部材16よりも小径とされている。
【0030】
外側取付部材16は、略円筒形状とされ、軸方向Sでみて内側取付部材14と同軸的に内側取付部材14の径方向外側に配置されている。内側取付部材14は、外側取付部材16に対して軸方向Sの外側(上側)に突出するように配置されている。内側取付部材14及び外側取付部材16の軸心は、軸方向Sに沿って配置されている。外側取付部材16は、防振装置用ブラケット40を介して、車体に連結される。
【0031】
内側取付部材14と外側取付部材16との間には、吸振主体となるゴム製の弾性体18が配置されている。弾性体18は、内側取付部材14の外面に加硫接着されると共に、外側取付部材16の内周に加硫接着されており、内側取付部材14と外側取付部材16とを弾性的に連結している。弾性体18には、外側取付部材16内側で内側取付部材14の軸方向Sの外側に、凹部18Aが構成されている。
【0032】
図3及び図4にも示すように、防振装置用ブラケット40は、ストッパ部材60、及び、一対のブラケット部材50を備えている。
【0033】
ストッパ部材60は、コ字状に形成され、側面部61及び頂部62を備えている。側面部61は、頂部62の両側に屈曲形成されており、側面部61と頂部62は、一体的に形成されている。頂部62の内面が後述するストッパアーム65に当たって内側取付部材14と外側取付部材16との間の過度な変位を防止するリバウンドストッパ面62Aを構成している。ストッパ部材60の板幅方向の両端部は、側面部61及び頂部62の板面と直交するように立てられ、フランジ部63が形成されている。側面部61には、後述するカップ部材68を溶接するための窓部61Aが構成されている。頂部62には、後述する取付ボルト64を挿通するためのボルト挿通穴62Bが構成されている。
【0034】
カップ部材68は、円筒形状とされ、外側取付部材16よりもわずかに大径とされ、外側取付部材16が筒内に圧入固定されている。カップ部材68は、長方形板状の部材の短辺同士を突き合わせて溶接することにより形成することができる。カップ部材68は、筒軸が頂部62と直交するようにストッパ部材60の内側に配置され、側面部61に構成された窓部61Aで側面部61と溶接されている。
【0035】
カップ部材68の外側面には、ステー69が取り付けられている。ステー69は、板状とされ、径方向外側に延出されている。ステー69には、取付穴69Hが構成されており。取付穴69Hを用いて、ステー69が車体へ取り付けられる。
【0036】
一対のブラケット部材50は、ストッパ部材60のフランジ部63の板面に対向するように防振装置本体12を挟んだ両側に配置されている。以下、一方のブラケット部材50を内側ブラケット部材42、他方のブラケット部材50を外側ブラケット部材52とする。
【0037】
内側ブラケット部材42は、一対の第1脚部43、第1カップ保持部46、及び、バウンドストッパ部48を備えている。一対の第1脚部43を構成する各々は、防振装置本体12の外側取付部材16を挟んで離間して配置され、第1カップ保持部46及びバウンドストッパ部48は、一対の第1脚部43を連結するように、外側取付部材16の外側面に沿って配置されている。一対の第1脚部43、第1カップ保持部46、及び、バウンドストッパ部48は、一枚板で一体的に形成されている。
【0038】
一対の第1脚部43は、各々、第1取付板部44、第1翼部45を備えている。第1取付板部44は、防振装置本体12の外側取付部材16の軸方向Sと略直交する方向に板面が配置されている。第1取付板部44には、板面中央部に、車体BDとの連結用の連結穴44Hが構成されている。
【0039】
第1翼部45は、第1取付板部44から立ち上がるように折り曲げられ、板面が外側取付部材16の軸方向Sに沿った方向で、且つ、外側取付部材16の外周面の周方向と交わる方向となるように配置されている。第1翼部45の第1取付板部44に近い位置には、補強板45Aが形成されている。補強板45Aは、第1翼部45の板面と略直交する方向に折り曲げられ、後述する第2翼部55と連結される。
【0040】
第1翼部45の第1取付板部44と逆側には、第1カップ保持部46が構成されている。第1カップ保持部46は、一対の第1翼部45の各々を連結するように一体的に構成され、カップ部材68の側面に沿った形状とされている。第1カップ保持部46は、カップ部材68の側面に溶接などにより固定されている。
【0041】
バウンドストッパ部48は、第1カップ保持部46及び第1翼部45から延出され、その板面(バウンドストッパ面48F)は、第1翼部45の板面と略直交するように折り曲げられ、リバウンドストッパ面62Aと略平行になるように配置されている。バウンドストッパ部48は、カップ部材68の上端面(頂部62と対向する側の端面)と略面一の位置に上面が配置されている。
【0042】
内側ブラケット部材42は、一枚の金属板を曲げ加工して形成されている。このように、曲げ加工により形成することにより、絞り加工の場合と比較して、容易に製造でき、製造コストも抑えることができる。
【0043】
外側ブラケット部材52は、一対の第2脚部53、及び、第2カップ保持部56を備えている。一対の第2脚部53を構成する各々は、防振装置本体12の外側取付部材16を径方向に挟んで外側に配置され、第2カップ保持部56は、一対の第2脚部53を連結するように、外側取付部材16の外側面に沿って配置されている。一対の第2脚部53、及び、第2カップ保持部56は、一枚板で一体的に形成されている。
【0044】
一対の第2脚部53は、各々、第2取付板部54、第2翼部55を備えている。第2取付板部54には、板面中央部に、車体BDとの連結用の連結穴54Hが構成されている。第2取付板部54は、防振装置本体12の外側取付部材16の軸方向Sと略直交する方向に板面が配置され、各々の板面に第1取付板部44が重ね合わされている。第2取付板部54は車体側に配置され、第1取付板部44が第2取付板部54の上側に配置されている。第1取付板部44と第2取付板部54は、連結穴44H、54HへボルトBLが挿入され、共締めにより密着した状態で車体へ固定されている。
【0045】
第1取付板部44と第2取付板部54の間には、共締めにより車体へ固定される前は、隙間S1が構成されている(図7参照)。このように、隙間S1を構成することにより、予め溶接等により固定しておく場合のように、第1取付板部44と第2取付板部54の取付穴の位置精度を出す必要がない。また、塗装の際に両者の間へ塗料を通過させることができ、塗装液溜まりを防止することができる。
【0046】
なお、隙間S1は、0.5mm以上、1.0mm以下の範囲とすることが好ましい。隙間S1を0.5mm以上にすることにより、微少隙間への塗装液溜まりを効果的に防止することができる。また、隙間S1を1.0mm以下にすることにより、共締めの際に歪みなく両者を密着させることができる。
【0047】
第2翼部55は、第2取付板部54から立ち上がるように折り曲げられ、板面が外側取付部材16の軸方向Sに沿った方向で、且つ、外側取付部材16の外周面の周方向と交わる方向となるように配置されている。また、第2翼部55は、板面が第1翼部45の板面と略平行な状態で離間するように配置されている。第2翼部55の第2取付板部54に近い位置には、補強板45Aが固定されている。補強板45Aは、第1翼部45の板面から延出されて、第2翼部55に溶接により固定されている。
【0048】
第2翼部55の第2取付板部54と逆側には、第2カップ保持部56が形成されている。第2カップ保持部56は、一対の第2翼部55の各々を連結するように一体的に構成され、カップ部材68の側面に沿った形状とされている。第2カップ保持部56は、カップ部材68の第1カップ保持部46が固定されている位置と対向する位置の側面に溶接などにより固定されている。
【0049】
外側ブラケット部材52は、一枚の金属板を曲げ加工して形成されている。このように、曲げ加工により形成することにより、絞り加工の場合と比較して、容易に製造でき、製造コストも抑えることができる。
【0050】
防振装置本体12は、内側取付部材14がストッパ部材60の頂部62側(上側)になるように、防振装置用ブラケット40の下側から挿入され、外側取付部材16がカップ部材68の内側に固定されている。
【0051】
図2に示されるように、内側取付部材14の上面(大径面)側には、ストッパアーム65が固定されている。ストッパアーム65は、断面長方形の長尺形状とされ、連結穴65Aが穿孔されている。連結穴65AAを介して、ボルトBが内側取付部材14の連結ねじ穴14Aと螺合されることにより、ストッパアーム65は内側取付部材14に固定されている。ストッパアーム65は、バウンドストッパ部48が突出された側で、外側取付部材16の外側へ延出されている。ストッパアーム65の外周は、厚みをもったゴム部材で被覆されており、ストッパアーム65の上面側に上ゴム部66Aが形成され、ストッパアーム65の下面側に下ゴム部66Bが形成されている。上ゴム部66Aは、リバウンドストッパ面62Aと対向するように配置され、下ゴム部66Bは、バウンドストッパ面48Fと対向するように配置されている。ストッパアーム65は、延出された側の端部で、不図示のエンジンと連結されている。
【0052】
次に、防振装置用ブラケット40の製造、及び、防振装置本体12の組み付けについて説明する。
【0053】
内側ブラケット部材42については、金属板を打ち抜き、曲げ加工前の一枚板状態の内側ブラケット部材42を得る。そして、第1翼部45を折り立てると共に、第1カップ保持部46をカップ部材68の側面に沿った弧状に湾曲させ、バウンドストッパ部48を外側へ折り曲げる。さらに、補強部45A部分も折り曲げる。外側ブラケット部材52についても、金属板を打ち抜き、曲げ加工前の一枚板状態の外側ブラケット部材52を得る。そして、第2翼部55を折り立てると共に、第2カップ保持部56をカップ部材68の側面に沿った弧状に湾曲させる。
【0054】
カップ部材68については、長方形状の平板金属を円筒形状に曲げ加工し、端面同士を溶接接合する。また、ストッパ部材60については、ボルト挿通穴62B及び窓穴61Aを打ち抜いた金属板を、絞り加工することによって各部を形成する。ステー69については、取付穴69Hを打ち抜いた金属板を、曲げ加工することにより形成する。
【0055】
次に、ステー69をカップ68の外側面に溶接する。また、カップ部材68をストッパ部材60の内側に挿入して所定位置にセットし、窓部61で両者を溶接する。そして、内側ブラケット部材42については、第1カップ保持部46をカップ部材68に溶接すると共に、第1翼部45をストッパ部材60のフランジ部63に溶接する。外側ブラケット部材52については、内側ブラケット部材42と対向する位置に配置して、第1取付板部44の外側に第2取付板部54を配置し、第2カップ保持部56をカップ部材68に溶接すると共に、第2翼部55をストッパ部材60のフランジ部63に溶接する。そして、第1翼部45から延出された補強部45Aの先端を第2翼部55へ溶接する。これにより、防振装置用ブラケット40が形成される。
【0056】
次に、防振装置用ブラケット40の下側から、防振装置本体12を挿入し、内側取付部材14をストッパ部材60内の頂部62側へ突き出して、外側取付部材16をカップ部材68内に圧入する。そして、ストッパアーム65をストッパ部材60へ挿入し、内側取付部材14の上面へ置き、締結穴65Aを連結ねじ穴14AAに対応した位置へ配置する。そして、締結用ボルト64をストッパ部材60の締結穴65Aから挿入し、連結ねじ穴14Aへねじ込んで、ストッパアーム65と内側取付部材14とを連結する。これにより、防振装置本体12が防振装置用ブラケット40へ組み付けられ、ストッパ部材及びブラケット部材50が一体化された防振装置10が形成される。
【0057】
防振装置10を車体への防振装置10の取り付けは、第1取付板部44及び第2取付板部54の連結穴44H、54Hへ、ボルトBLを挿入し、車体BD(例えば、エンジンルーム内のサイドメンバー)との間で締結する。この締結により、第1取付板部44及び第2取付板部54の板面は互いに密着し、一体となって車体へと固定される。
【0058】
次に、本実施形態に係る防振装置10の作用を説明する。
【0059】
防振装置10では、エンジン又は車体側から振動が入力されると、吸振主体である弾性体18が弾性変形する。この弾性変形により、入力された振動が、減衰吸収される。
【0060】
また、エンジンまたは車体から大振幅の振動が入力した場合には、ストッパアーム65の下ゴム部66Bがバウンドストッパ面48Fに当たり、ストッパアーム65と外側取付部材16との間の相対移動が規制される。続いて、ストッパアーム65は、リバウンドにより、上ゴム部66Aがリバウンドストッパ面62Aに当たり、ストッパアーム65(内側取付部材14に固定)と外側取付部材16との間の相対移動が規制される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の防振装置用ブラケット40は、振動受部である車体への取付部分は、第1取付板部44及び第2取付板部54を重ね合わせた構成とされているので、当該部分の強度を高くすることができる。
【0062】
また、本実施形態の防振装置用ブラケット40は、車体への取付前には、ストッパ部材60及びブラケット部材50が一体化されて1部品で構成されているので、複数部品を取り付ける場合と比較して、簡易に取り付けを行うことができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1取付板部44と第2取付板部54とは、車体への取付前に隙間S1が構成されているので、予め溶接等により固定しておく場合のように、第1取付板部44と第2取付板部54の取付穴の位置精度を出す必要がない。また、塗装の際に両者の間へ塗料を通過させることができ、塗装液溜まりを防止することができる。
【0064】
また、本実施形態では、内側ブラケット部材42、及び、外側ブラケット部材52が、各々一枚の金属板を曲げ加工により形成されているので、絞り加工を行う場合よりも簡易に低コストで製造することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、防振装置本体として、液体が封入されていない、所謂ソリッドタイプの防振ゴムを使用している例について説明したが、防振装置本体としては、他のタイプのもの、例えば、液封式の防振ゴムを用いてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、カップ部材68を用いて防振装置本体12を保持したが、カップ部材68に代えて、内側ブラケット部材42及び外側ブラケット部材52の一部で防振装置本体12を保持してもよい。この場合には、図8及び図9に示すように、内側ブラケット部材42の第1カップ保持部46、及び外側ブラケット部材52の第2カップ保持部56を、各々周方向に沿ってストッパ部材60の側面部61中央部まで延出して、第1延出保持部46E、第2延出保持部56Eとし、両者の先端を突き合わせて、円筒部67を構成し、円筒部67で防振装置本体12の外側取付部材16を保持することができる。なお、バウンドストッパ部48については、長手方向の両端で第1カップ保持部46との間の境界部分に切欠48Kを入れることにより、容易に曲げ加工を行うことができる。また、切欠48K上下方向にも延出することにより、バウンドストッパ面48Fを広く構成することができる。
【0067】
なお、図8、9に示す例では、補強板45Aを備えていない例でブラケット部材50を示しているが、前述の補強板45Aを形成してもよい。また、図8、9では、ストッパ部材60の窓部61Aに代えて切欠部61Kを構成し、切欠部61Kで溶接を行う例を示している。
【0068】
また、本実施形態の外側ブラケット部材52の一対の第2取付板部54は、図10に示すように、一体的に形成してもよい。このように、一体的に形成することにより、強度を高くすることができる。なお、内側ブラケット部材42の一対の第1取付板部44同士を一体的に形成してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、内側ブラケット部材42の一部を折り返して一体的にバウンドストッパ部48を構成したが、バウンドストッパ部48は、溶接等により別部材で構成してもよいし、車体に固定された他の部材で構成することもできる。
【0070】
また、本実施形態では、ストッパ部材として、コ字状のストッパ部材60を用いたが、ストッパ部材の形状は、この形状に限定されるものではなく、図11(A)に示すように、有底円筒状のストッパ部材60Cを用いてもよいし、図11(B)に示すように、四角筒状のストッパ部材60Dを用いてもよい。
【0071】
有底円筒状のストッパ部材60Cを用いる場合には、底部62Cの内側をリバウンドストッパ面とし、側面部61に窓部61Cを開けてストッパアーム65をアクセスさせると共に、下端部にフランジ部61Fを設けてカップ部材68に固定することができる。
【0072】
また、四角筒状のストッパ部材60Dを用いる場合には、主振動入方向Sと四角筒の筒軸とが直交するように配置して頂部62Dと側面部61Dとを構成し、頂部62Dと対向する下側面に挿入穴61H(防振装置本体12を挿入)とバウンドストッパ部61Sを形成することができる。
【0073】
例えば、図12、13には、ストッパ部材として、有底円筒形状の円筒ストッパ部材70を用い、内側ブラケット部材としてバウンドストッパ部48が形成されていない第2内側ブラケット部材42−2を用い、外側取付部材の一対の第2取付板部同士が一体的に連結された第2外側ブラケット部材52−2を用いた、第2防振装置用ブラケット40−2が示されている。この第2防振装置用ブラケット40−2は、第2内側ブラケット部材42−2の第1カップ保持部46を円筒ストッパ部材70の下端周面に溶接固定し、第2外側ブラケット部材52−2の第2翼部55から延出された先端部分55Sを、円筒ストッパ部材70の下端周面に溶接固定して、構成することができる。エンジン側に連結されるストッパアームについては、底部72(頂部)に構成された底部穴70Hを介して内側取付部材14に連結し、円筒外側に配置された不図示のストッパアームの部分が底部72の外面に当接することにより該外面がバウンドストッパ面として機能し、円筒内側に配置されたストッパアームの部分が底部72の内面に当接することにより該内面がリバウンドストッパ面として機能する。
【0074】
また、他の例として、図14、15には、ストッパ部材として、四角筒状の角筒ストッパ部材61D(図11(B)参照)を用い、内側ブラケット部材としてバウンドストッパ部48が形成されておらず、一対の第1脚部が一体的に構成されていない第3内側ブラケット部材42−3を用い、外側ブラケット部材として、一対の第2脚部が一体的に構成されていない第3外側ブラケット部材52−3を用いた、第3防振装置用ブラケット40−3が示されている。この第3防振装置用ブラケット40−3は、第3内側ブラケット部材42−3の第1翼部45から延出された連結片45Eをカップ部材68の側面に溶接固定すると共に第1翼部45の上端部45Uを角筒ストッパ部材60Dに溶接固定し、第3外側ブラケット部材52−3の第2翼部55から延出された連結片55Eを、カップ部材68に溶接固定すると共に第2翼部55の上端部55Uを角筒ストッパ部材60Dに溶接固定して、構成することができる。なお、ここで示した第3防振装置用ブラケット40−3の第3内側ブラケット部材42−3の第1取付板部44は、第3外側ブラケット部材52−3の第2取付板部54よりも外側(車体側)に配置されているが、第3外側ブラケット部材52−3の第2取付板部54を車体側に配置してもよい。
【0075】
また、上記で説明したブラケット部材50は、内側ブラケット部材42と外側ブラケット部材52とが別体とされているが、図16に示すように、一体の一枚板で構成することもできる。この場合には、第1カップ保持部46と第2カップ保持部56との間に連結板51を配置し、連結板51の中央に、カップ部材68を収納する収納穴51Aを構成すればよい。
【符号の説明】
【0076】
10 防振装置
12 防振装置本体
14 内側取付部材
16 外側取付部材
18 弾性体
40 防振装置用ブラケット
42 内側ブラケット部材
43 第1脚部
44 第1取付板部
45A 補強板
45 第1翼部
46 第1カップ保持部(第1連結部)
46E 第1延出保持部(第1側面保持部)
48 バウンドストッパ部
50 ブラケット部材
52 外側ブラケット部材
53 第2脚部
54 第2取付板部
55 第2翼部
56 第2カップ保持部(第2連結部)
56E 第2延出保持部(第2側面保持部)
60 ストッパ部材
65 ストッパアーム
BD 車体
BL ボルト
S1 隙間
S 主振動入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部及び振動受部の一方に連結される外側取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される内側取付部材と、前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体、を有する防振装置本体の、前記外側取付部材を挟んで両側に一対設けられて前記防振装置本体を支持する防振装置用ブラケットであって、
板状とされ、振動受部に固定される第1取付板部と、前記第1取付板部と一体的に連続され、前記外側取付部材と連結される第1翼部と、を有する第1脚部と、
板状とされ、前記第1取付板部に板面が重ね合わされ、前記振動受部に固定される第2取付板部と、前記第2取付板部と一体的に連続され前記外側取付部材と連結されると共に、前記第1翼部と離間して対向するように配置された第2翼部と、を有する第2脚部と、
を備えた防振装置用ブラケット。
【請求項2】
主振動入力方向の移動を規制するストッパ部材、を備え、
前記ストッパ部材に前記第1翼部及び前記第2翼部が固定されていること、を特徴とする、請求項1に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項3】
前記第1翼部または前記第2翼部と一体的に連続され、主振動入力方向と直交する方向に屈曲されたストッパ板面が前記ストッパ部材の一部として形成されていること、を特徴とする請求項2に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項4】
前記第1取付板部と前記第2取付板部とは前記振動受部への取付前に離間されており、締結部材での共締めにより互いに密着して前記振動受部へ締結されること、を特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項5】
前記第1取付板部と前記第2取付板部との離間距離が0.5mm〜1.0mmであること、を特徴とする、請求項4に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項6】
前記第1翼部と一体的に連続され、前記外側取付部材の側面に沿って配置され前記防振装置本体を保持する第1側面保持部と、
前記第2翼部と一体的に連続され、前記外側取付部材の側面に沿って配置され前記防振装置本体を保持する第2側面保持部と、
を備えた、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項7】
前記外側取付部材を挟んで両側に一対設けられた一方側の第1脚部と他方側の第1脚部とが、第1連結部を介して一体的に連続して形成され、一方側の第2脚部と他方側の第2脚部とが、第2連結部を介して一体的に連続して形成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケット。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の防振装置用ブラケットと、
前記防振装置用ブラケットに固定された外側取付部材と、
振動発生部に連結される内側取付部材と、
前記内側取付部材と前記外側取付部材の間に配置されて前記内側取付部材と前記外側取付部材とを連結する弾性体と、
前記内側取付部材に固定され前記外側取付部材の外側へ延出されるストッパアームと、
を備えた防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−256958(P2011−256958A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132962(P2010−132962)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】